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特許7152016回路構造と、少なくとも1つの電荷素子、特に少なくとも1つのレーザダイオードの電流を制御および測定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】回路構造と、少なくとも1つの電荷素子、特に少なくとも1つのレーザダイオードの電流を制御および測定するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H01S5/042 630
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018553294
(86)(22)【出願日】2017-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 DE2017100003
(87)【国際公開番号】W WO2017118455
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-25
(31)【優先権主張番号】16150111.9
(32)【優先日】2016-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509348867
【氏名又は名称】シリコン・ライン・ゲー・エム・ベー・ハー
【住所又は居所原語表記】LANDSBERGER STR. 314 / III RGB., 80687 MUENCHEN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ベリングラート,トーマス
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075957(JP,A)
【文献】特開2005-249519(JP,A)
【文献】特開2005-249518(JP,A)
【文献】特開平11-202002(JP,A)
【文献】特開平07-113826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0007328(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0181289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0155662(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0158654(US,A1)
【文献】特開2013-251375(JP,A)
【文献】特開2003-092453(JP,A)
【文献】Tse-ju Liao et al.,Source switching circuit with low-gate-driving loss in high-voltage buck light emitting diode driver,IET Power Electronics,IET,2013年,Volume: 6, Issue: 4,pages 663-671
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
G01R 19/00-19/32
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電荷素子(101)の負荷電流(IL)を制御および測定するための回路構造(100)であって、
前記電荷素子(101)と直列に配置され、前記負荷電流(IL)を制御するように構成された負荷回路素子(102)、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:a;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記負荷回路素子(102)と共通に第1制御信号(S1)によって制御される第1測定路回路素子(104)と、当該第1測定路回路素子(104)と直列に配置された第1電圧制御素子(105)と、を有する少なくとも1つの第1測定路(106)、および、
前記負荷回路素子(102)を介した電圧と前記第1測定路回路素子(104)を介した電圧との間の差に依存して前記第1電圧制御素子(105)を制御する副コントローラ(107)であって、これにより、前記第1測定路回路素子(104)を介した前記電圧が前記負荷回路素子(102)を介した電圧に依存して制御されて、前記負荷電流(IL)に比例する第1測定電流(I1)が前記第1測定路回路素子(104)と前記第1電圧制御素子(105)とにおいて発生される副コントローラ(107)、を備え、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:b;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされた第2測定路回路素子(108)と、当該第2測定路回路素子(108)と直列に配置された第2電圧制御素子(109)と、を有する第2測定路(110)を備え、
前記負荷回路素子(102)、前記第1測定路回路素子(104)、および/または、前記第2測定路回路素子(108)は、一方ではそれぞれがコンデンサ(111、112)に接続され、他方では関連する回路素子供給制御信号(S1;S2)に対して相補的な信号(S2;S1)を供給するように構成されている回路構造(100)。
【請求項2】
少なくとも1つの電荷素子(101)の負荷電流(IL)を制御および測定するための回路構造(100)であって、
前記電荷素子(101)と直列に配置され、前記負荷電流(IL)を制御するように構成された負荷回路素子(102)、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:a;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記負荷回路素子(102)と共通に第1制御信号(S1)によって制御される第1測定路回路素子(104)と、当該第1測定路回路素子(104)と直列に配置された第1電圧制御素子(105)と、を有する少なくとも1つの第1測定路(106)、および、
前記負荷回路素子(102)を介した電圧と前記第1測定路回路素子(104)を介した電圧との間の差に依存して前記第1電圧制御素子(105)を制御する副コントローラ(107)であって、これにより、前記第1測定路回路素子(104)を介した前記電圧が前記負荷回路素子(102)を介した電圧に依存して制御されて、前記負荷電流(IL)に比例する第1測定電流(I1)が前記第1測定路回路素子(104)と前記第1電圧制御素子(105)とにおいて発生される副コントローラ(107)、を備え、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:b;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記第1制御信号(S1)に対して相補的な第2制御信号(S2)により制御されるように構成された第2測定路回路素子(108)と、当該第2測定路回路素子(108)と直列に配置された第2電圧制御素子(109)と、を有する第2測定路(110)を備え、
前記負荷回路素子(102)、前記第1測定路回路素子(104)、および/または、前記第2測定路回路素子(108)、を制御するための前記第1制御信号(S1)およびオプションとして追加される前記第2制御信号(S2)を形成する回路ブロック(114)を有し、ここで、振幅調節電圧(VA)を供給し、かつ、前記第1制御信号(S1)およびオプションとして追加される前記第2制御信号(S2)を形成する前記回路ブロック(114)は、前記振幅調節電圧(VA)および/または前記回路ブロック(114)に供給可能な動作電圧(VB)に依存する振幅で構成される回路構造(100)。
【請求項3】
前記回路ブロック(114)はCMOSデバイスで構成され、
前記振幅調節電圧(VA)は、前記CMOSデバイスを動作させるために提供される動作電圧(VB)と少なくともほぼ等しく、そして
前記回路ブロック(114)は、前記動作電圧(VB)として供給される前記振幅調節電圧(VA)を受け取り、かつ、前記動作電圧(VB)に比例する出力振幅で、前記第1制御信号(S1)とオプションとしてさらに前記第2制御信号(S2)とを形成するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の回路構造。
【請求項4】
前記回路ブロック(114)は、非対称変調信号(M)を供給するとともに、そこから前記第1制御信号(S1)とオプションとしてさらに前記第2制御信号(S2)とを少なくともほぼ対称的なまたはプッシュ-プル信号として形成するためのデバイス(124;130)によって構成されていることを特徴とする請求項2または3の回路構造。
【請求項5】
前記第2電圧制御素子(109)は、前記副コントローラ(107)によって前記第1電圧制御素子(105)と共通で制御されるように構成され、これにより、第2測定電流(I2)が前記第2測定路回路素子(108)と前記第2電圧制御素子(109)との中で発生され、
前記第1測定電流(I1)とオプションとしてさらに前記第2測定電流(I2)とを供給し、
前記第1測定電流(I1)とオプションとしてさらに前記第2測定電流(I2)とを評価し、そして、
これに基づき、前記回路ブロック(114)に供給可能な前記振幅調節電圧(VA)および/または動作電圧(VB)を形成および調節し、それにより、前記第1測定電流(I1)、または、前記第1測定電流(I1)と前記第2測定電流(I2)との線形結合の標的値、したがって、変調電流、すなわち前記第1制御信号(S1)によって変調される前記負荷電流(IL)、の標的値が達成される、ように構成される制御装置(123)を備えることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の回路構造。
【請求項6】
和信号(IMess)を形成する前記制御装置(123)は、前記第1(I1)および第2(I2)測定電流の和から形成するように構成され、ここで、前記和信号(IMess)は、前記第1(I1)および第2(I2)測定電流に関してより低いおよび/またはより遅い時間変動を有することを特徴とする請求項に記載の回路構造。
【請求項7】
少なくとも1つの電荷素子(101)の負荷電流(IL)を制御および測定するための回路構造(100)であって、
前記電荷素子(101)と直列に配置され、前記負荷電流(IL)を制御するように構成された負荷回路素子(102)、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:a;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記負荷回路素子(102)と共通に第1制御信号(S1)によって制御される第1測定路回路素子(104)と、当該第1測定路回路素子(104)と直列に配置された第1電圧制御素子(105)と、を有する少なくとも1つの第1測定路(106)、および、
前記負荷回路素子(102)を介した電圧と前記第1測定路回路素子(104)を介した電圧との間の差に依存して前記第1電圧制御素子(105)を制御する副コントローラ(107)であって、これにより、前記第1測定路回路素子(104)を介した前記電圧が前記負荷回路素子(102)を介した電圧に依存して制御されて、前記負荷電流(IL)に比例する第1測定電流(I1)が前記第1測定路回路素子(104)と前記第1電圧制御素子(105)とにおいて発生される副コントローラ(107)、を備え、
あらかじめ設定可能なカップリング比(N:b;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされた第2測定路回路素子(108)と、当該第2測定路回路素子(108)と直列に配置された第2電圧制御素子(109)と、を有する第2測定路(110)を備え、
前記負荷回路素子(102)および/または前記第1測定路回路素子(104)および/または前記第2測定路回路素子(108)に対して、各定常電流源(132;133;134)が、前記回路素子(102;104;108)のうちの関連するものとあらかじめ設定可能なカップリング比で並列接続に配置されている回路構造(100)。
【請求項8】
前記定常電流源(132;133;134)は、前記負荷回路素子(102)および/または前記第1測定路回路素子(104)および/または前記第2測定路回路素子(108)と同じまたは類似のカップリング比(N:a:b;N:1:1)で互いに寸法設計されている請求項に記載の回路構造。
【請求項9】
前記電荷素子(101)は、少なくとも1つのレーザダイオードとして構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の回路構造。
【請求項10】
少なくとも1つの電荷素子(101)の負荷電流(IL)を制御および測定するための方法であって、
前記負荷電流(IL)は、前記電荷素子(101)と直列に配置された負荷回路素子(102)によって制御され、
第1測定路回路素子(104)が、あらかじめ設定可能なカップリング比(N:a;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記負荷回路素子(102)と共通に第1制御信号(S1)によって制御され、
前記負荷回路素子(102)を介した電圧と前記第1測定路回路素子(104)を介した電圧との間の差に依存して第1電圧制御素子(105)を制御する副コントローラ(107)によって、少なくとも1つの第1測定路(106)において前記第1測定路回路素子(104)と直列に配置された前記第1電圧制御素子(105)が、前記負荷回路素子(102)を介した電圧に依存して前記第1測定路回路素子(104)を介した電圧が制御され、これによって、前記負荷電流(IL)に比例する第1測定電流(I1)が前記第1測定路回路素子(104)および前記第1電圧制御素子(105)おいて発生され、
第2測定路回路素子(108)が、あらかじめ設定可能なカップリング比(N:b;N:1)で前記負荷回路素子(102)にカップリングされるとともに前記第1制御信号(S1)に対して相補的な第2制御信号(S2)により制御され、
前記負荷回路素子(102)、前記第1測定路回路素子(104)、および/または、前記第2測定路回路素子(108)、を制御するための前記第1制御信号(S1)およびオプションとして追加される前記第2制御信号(S2)は、回路ブロック(114)によって形成され、ここで、振幅調節電圧(VA)が前記回路ブロック(114)によって供給され、そして、前記第1制御信号(S1)およびオプションとして追加される前記第2制御信号(S2)は、前記振幅調節電圧(VA)および/または前記回路ブロック(114)に供給可能な動作電圧(VB)に依存する振幅で構成されている方法。
【請求項11】
前記回路ブロック(114)は、前記動作電圧(VB)として供給される前記振幅調節電圧(VA)を受け取り、かつ、前記動作電圧(VB)に比例する出力振幅で前記第1制御信号(S1)とオプションとしてさらに前記第2制御信号(S2)を形成する、ように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の回路構造を用いて、光データ伝送において、少なくとも1つの電荷素子(101)を駆動する方法。
【請求項13】
請求項10または11に記載の方法を含む、光データ伝送において、少なくとも1つの電荷素子(101)を駆動する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電荷素子、特に少なくとも1つのレーザダイオードの電流、特に負荷電流、を、制御および測定するための回路構造と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ光ケーブル(AOC)は、コネクタに組み込まれた送受信素子から構成され、当該素子間の経路上に設けられた光ファイバケーブル上にデータ信号を光送信する。この点において、低い動作電圧用の低電力レーザドライバが必要である。
【0003】
データ信号用のレーザドライバは、一方では、使用されるレーザ電流を変調しなければならず、他方では、それによって発生される平均変調電流を制御しなければならない。一方で最も高いスイッチング速度を達成しながら、他方でレーザの所定の動作ポイントを設定することに困難性がある。
【0004】
レーザ電流とレーザのスイッチング特性とは、多くの場合、別々の回路素子で設定されるため、このために、対応する電圧降下を有する二つの回路素子(トランジスタ)が直列で必要となる。しかしながら、レーザとともに少なくとも電圧の降下が必要であることによって所定の動作電圧限界内での利用可能性が制限される。
【0005】
直接変調のためのデータ信号を用いるCMOS技術によってレーザダイオードを駆動することが、ソースフォロア構造において、レーザダイオードのキャパシタンスの低インピーダンス駆動におけるこの構成の、いわゆるクラスAB特性、すなわち動的電流変動、を利用するためにしばしば実行される。
【0006】
図1は、ソースフォロア回路中の電界効果トランジスタ201による、ここでは電荷素子として使用されるレーザダイオード200のための単純なドライバ回路の略図である。ここで、Dは、電界効果トランジスタ201のドレン接続部、Gは電界効果トランジスタ201のゲート接続部、そしてSは電界効果トランジスタ201のソース接続部である。
【0007】
前記電界効果トランジスタ201の主電流路、すなわちドレン-ソース路は、動作電圧VBが提供される動作電圧接続部202とアース203との間でレーザダイオード200と直列に接続配置されている。
【0008】
前記ゲート接続部Gとソース接続部Sとの間にゲート-ソース電圧VGSが付加されるが、この電圧は動作ポイント直流電圧Vt、またはしきい値電圧と呼ばれ、前記電界効果トランジスタの変調用の電圧とも呼ばれる変調交流電圧がその和として構成される。すなわち、VGS=Vt+ΔVとなる。
【0009】
前記レーザダイオード200を介して負荷として順方向電圧VFが加えられる。
【0010】
したがって、前記レーザダイオード200と、前記駆動トランジスタ(すなわち前記電界効果トランジスタ201、具体的にはMOSFET)と、を介した総所要電圧降下Vsumは、少なくとも以下を必ず含む。
- 前記レーザダイオード200の順方向電圧VF、
- 前記駆動MOSFET201のしきい値電圧Vt、
- 前記駆動MOSFET201の変調用電圧ΔV。
Vsum≧VGS+VF=Vt+ΔV+VF
【0011】
この構成を低電力用途、すなわち低動作電圧用の用途で使用可能にするためには、ドライバが利用可能な動作電圧VBが、図2の回路構造に概略図示されているように、少なくともそれに対応して高いか、もしくは、図3に概略図示されているように、その回路内において、外部第1動作電圧VB1としてより高い第2動作電圧VB2が発生されることが必要である。
【0012】
図2の回路構成において、前記レーザダイオード200と主電流路、すなわち前記電界効果トランジスタ201のドレン-ソース路との直列接続と、レーザドライバ、すなわち前記電界効果トランジスタ201の駆動回路204と、の両方が、動作電圧接続部202とアース203との間に配置されている。駆動のために必要な動作電圧VBは、それに対応して高いものが選択される必要があり、これによって回路構造の消費電力が高くなる。
【0013】
より高い動作電圧を内部で発生するための一例を図示する図3の回路構成においては、前記電界効果トランジスタ201の駆動回路204は、DC-DCコンバータ205を介して、動作電圧接続部202にも供給される第1動作電圧VB1に接続され、これは電界効果トランジスタ201とレーザダイオード200との直列接続が動作可能となるように寸法設計されている。
【0014】
前記駆動回路204に供給するための前記比較的高い第2動作電圧VB2は、前記第1動作電圧VB1が入力部206に供給されるDC-DCコンバータ205の出力部207から取り出される。この構成のためには回路の高度な複雑性が必要であり、さらに、DC-DCコンバータ205を使用する場合には、干渉を避けるために発生する時定数の正確な分析が必要である。
【0015】
前記レーザ電流、すなわち前記レーザダイオード200を通る電流は、多くの場合、直列抵抗でのみ制御または測定されるが、これによってさらなる電圧降下が生じる。
【0016】
いわゆる、共通ソース構成におけるレーザドライバは、トランジスタのミラーキャパシタンス(逆容量)により、高いデータ速度または高速信号用には適さないと考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】U. Tietze,Ch. Schenk,Springer-Verlag、“Halbleiter-Schaltungstechnik”(半導体回路技術)第8版(1986年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した問題点、欠点を出発点として、また、さらに概略した従来技術を考慮して、本発明の課題は、レーザ電流閉ループ制御での低い動作電圧、および/または、低電圧降下、すなわち、いわゆる「低電力」用途に適した、少なくとも1つの電荷素子、特に少なくとも1つのレーザダイオード、の電流を制御および測定するための、回路構造および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴構成を有する回路構造、および、請求項11の特徴構成を有する方法、によって達成される。本発明の有利な実施例およびさらなる発展構成、各従属請求項に記載の特徴を有する。
【0020】
換言すると、本発明は、その電荷素子と直列の負荷回路素子と、測定路回路素子を通る結合路と、を有する、少なくとも1つの電荷素子、特にレーザ電流、を制御および測定するための回路構成および方法を提供し、電圧が副コントローラおよび第1電圧制御素子によって前記負荷回路素子を介する電圧に依存して制御され、前記レーザ電流に比例する測定電流が発生される。
【0021】
本発明による前記回路構造は、ドライバ回路、特にレーザ電流閉ループ制御および/または低電圧降下での低動作電圧用の省電力レーザドライバを形成し、動作ポイントとスイッチング特性とを直列の単一素子によって制御することを可能にする。これは、低動作電圧の用途、いわゆる「低電力」用途のために有利である。
【0022】
用語を明確化するために、半導体回路素子のマッチングとは、たとえば、適当な半導体トポロジー、すなわちレイアウト手段によって複数のコンポーネントを、それらが同じまたは非常に類似した特性を有するようにレイアウトすることである、ということを追記しななければならない。
【0023】
さらに、そのようなマッチング特性を、スケールファクタを除いて達成することも可能であり、特に、ここでカップリングとは、関連する半導体回路素子を流れる電流の比率であって、この比率は1つの比率と等しいものとなるように構成することも、あるいは、互いに異なるように構成することも、可能である。
【0024】
後者は、以下、「スプリット式に接続されている」と記載される。さらなる説明のために、U. Tietze,Ch. Schenk,Springer-Verlag、“Halbleiter-Schaltungstechnik”(半導体回路技術)第8版(1986年)(非特許文献1)、特にその64頁および69頁を参照されたい。
【0025】
本発明によれば、レーザ電流の可変変調成分は、所定の平均のレーザと直列の単一の回路素子によって発生され、当該回路素子の駆動の閉ループ制御のための接続路(単数または複数)によって、前記変調電流の所望平均値を設定するレベルに決定される。
【0026】
好適実施例によれば、本発明の前記回路構造および/または本発明の前記方法の特徴は、前記負荷回路素子と所定のカップリング比でカップリングされた第2測定路回路素子と、当該第2測定路回路素子と直列に配置された第2電圧制御素子と、を有する第2測定路を有し、ここで、前記第2測定路回路素子は、前記第1制御信号に対して相補的な第2制御信号によって制御するように構成され、前記第2電圧制御素子は、前記第1電圧制御素子と共通の副コントローラによって制御するように構成され、これにより、その変動が前記負荷電流の変動に対して反比例する第2測定電流が前記第2測定路電流素子と前記第2電圧制御素子とにおいて発生される。
【0027】
より発展した回路構成は、相補的に制御されて、相補的交流または信号成分を有する電流を発生する別の結合路を有する。
【0028】
さらに好適な実施例において、前記負荷回路素子、前記第1測定路回路素子および/または前記第2測定路回路素子は、一方では出力接続部において、他方では関連の回路素子要素供給制御信号に対して相補的な信号を供給するために構成される各容量コンポーネントに、接続される。
【0029】
この実施例において、前記第1および/または第2測定路回路素子の、前記スイッチの、すなわち前記負荷回路素子の、入力キャパシタンスは、コンデンサによって相補的信号のためにあらかじめ補正される。
【0030】
好適な発展構成において、本発明による前記回路構造および/または本発明の前記方法は、前記負荷回路素子、前記第1および/または第2測定路回路素子を制御するために前記第1制御信号および/またはオプションとして追加の第2制御信号を形成する回路ブロックを有し、ここで、振幅調節電圧を供給し、前記第1制御信号および前記オプションとして追加の第2制御信号を形成する前記回路ブロックは、前記振幅調節電圧および/または前記回路ブロックに供給可能な動作電圧に依存する振幅で構成される。
【0031】
この発展構成において、本発明による前記回路構造は、本発明による当該回路構造を制御し、出力信号と、好ましくはさらにこの出力信号に対して相補的な可変振幅の信号と、を提供する回路ブロックと組み合わされ、ここで前記可変振幅は、ここで振幅調節電圧と称される制御電圧または回路構造の動作電圧に依存する。
【0032】
本発明の好適実施例によれば、その特徴は、
- 前記回路ブロックはCMOSデバイスで構成され、
- 前記振幅調節電圧は、前記CMOSデバイスを動作させるために提供される動作電圧に少なくともほぼ等しく、そして
- 前記回路ブロックは、前記動作電圧として供給される前記振幅調節電圧を受け取り、かつ、前記第1および前記オプションとして追加の第2制御信号を前記動作電圧に比例する出力振幅で形成するように構成される。
【0033】
したがって、本発明のこの実施例において、前記制御電圧、すなわち前記振幅調節電圧は、CMOSブロックの動作電圧に対応し、これが、前記第1制御信号と、前記動作電圧に比例する前記第1信号に対して相補的なオプションとして追加される第2制御信号と、の出力振幅を提供する。
【0034】
さらに好適な実施例において、前記回路ブロックは、非対称変調信号を供給するとともに、そこから、第1信号と、少なくともほとんど対称的なまたはプッシュプル信号としての、オプションとして追加される前記第2制御信号と、を形成するデバイスによって構成される。
【0035】
詳しくは、前記デバイスは、それに対して前記対称変調信号を並列に供給可能で、かつ、そのそれぞれが、前記非対称変調信号を、反対方向極性、すなわち具体的には正および負の極性の前記振幅調節電圧である制御電圧によって乗算する乗算ステージを含む、二つの並列ブランチで構成される。
【0036】
前記乗算ステージは、好ましくは、その出力側において、そのそれぞれが前記動作電圧とアースとの間のそれらの主電流路と直列接続された、二つのトランジスタ、好ましくは電界効果トランジスタ、のインバータ出力ステージに接続されている。
【0037】
好適な発展構成は、以下を実行するように構成された制御装置により特徴づけられる。
- 前記第1測定電流およびオプションとして追加される前記第2測定電流を供給する、
- 前記第1測定電流およびオプションとして追加される前記第2測定電流を評価する、そして、
- これに基づき、前記振幅調節電圧および/または前記制御ブロックに供給可能な動作電圧を形成/設定し、それによって、前記第1測定電流、または、オプションとして前記第1および第2測定電流の線形の組み合わせ、の標的値、したがって、前記変調電流、すなわち前記第1制御信号によって変調させる前記負荷電流、の標的値、が達成されるようにする。
【0038】
この制御装置(単にコントローラとも称される。)は、上記タイプの回路構造からの、前記負荷電流に比例する単数または複数の測定電流、すなわち前記第1測定電流およびオプションとして追加される第2測定電流を評価し、前記制御電圧(すなわち振幅調節電圧)、または、上述したタイプの制御ブロックへの動作電圧、に基づき調節して、前記第1測定電流の標的値(すなわち所望値)、または、前記測定電流とこれに関連する変調電流との線形の組み合わせ(たとえば和)の標的値、が達成されるように構成される。
【0039】
好適実施例によれば、前記制御装置は、前記第1測定電流および第2測定電流の和から和信号を形成するように構成され、ここで前記和信号は、前記第1測定電流および第2測定電流に関してより小さな、および/または、遅い時間変動を有する。
【0040】
前記制御装置のこの実施例によれば、反対方向に流れる変動する測定電流が加えられ、それによって、得られる和信号は、時間が実質的により遅く変動するものとなり、閉ループ制御のためのより容易に利用可能となる。この追加において、前記両測定電流は異なる重み係数で入ることができ、それにより、単純な加算の他に、両測定電流の重み付け線形結合も可能となる。
【0041】
特に好適であるのは、上述した回路構造の構成の1つ、および/または、上述したタイプの制御ブロック(駆動ブロックとも称される。)によって少なくとも1つの電荷素子における負荷電流を制御し測定する方法と、上述したタイプのコントローラと、の組み合わせである。
【0042】
別の実施例によれば、前記負荷回路素子および/または前記第1測定路回路素子および/または前記第2回路測定路素子のために、各定電流源が、これら関連の回路素子の1つと所定のカップリング比で並列接続に配置され、ここで、特に前記定電流源は互いに前記負荷回路素子と同じまたは類似のカップリング比となり、前記第1測定路回路素子および/または前記第2回路測定路素子は互いに同じまたは類似のカップリング比となるように、寸法構成される。
【0043】
したがって追加的に、この実施例において、前記負荷回路素子および前記第1測定路回路素子およびオプションとして追加される前記第2測定路と類似の比率で、結合定電流源が、前記負荷回路素子と、前記第1測定路回路素子とオプションとして追加される前記第2測定路回路素子とに取り付けられ、すなわち前記チャージ路と前記結合測定路とに取り付けられ、それぞれが前記電荷素子と前記測定路または前記両測定路において最小電流を指定する。
【0044】
好適な発展構成において、前記電荷素子はレーザダイオードで構成される。これは本発明の好適な利用例である。本発明による前記回路構造によって、負荷電流、すなわちここでレーザ電流とも称される前記レーザダイオードの電流を、低動作電圧で、したがって低パワー動作で、制御および/または測定することが可能となる。
【0045】
本発明とその好適実施例は、下記の具体的特徴および利点により特徴づけられる。
【0046】
- 電荷素子、特にレーザダイオードが、低ドレン-ソース電圧で、電界効果トランジスタのドレン接続によって制御される。
【0047】
- 回路ブロック、好ましくはCMOSデバイスによって構成される回路ブロック(単にCMOS回路ブロックとも呼ばれる。)において、負荷回路素子、前記第1測定路回路素子およびオプションとして追加される第2測定路回路素子、を制御するために第1制御信号およびオプションとして追加される第2制御信号が形成され、特に、前記第1および第2制御信号は互いに対して相補的である。前記制御ブロックの動作電圧は、前記制御信号の振幅の閉ループ制御のために調節可能である。
【0048】
- 前記負荷回路素子、または、前記測定路回路素子、または、前記測定路回路素子、のすべてのソース接続において、反転または相補的制御信号が関連の回路素子のゲート接続部に供給される前記制御信号に容量カップリングされる。前記各回路素子、すなわち電界効果トランジスタのドレン接続部におけるノードキャパシタンスの補償が、関連の制御信号によるゲート接続部の駆動のミラー効果の補償、前記レーザダイオードキャパシタンスの補償、などを含めて、それにも拘らず高い変調率に達するべく、達成される。
【0049】
- 前記回路素子、すなわち電界効果トランジスタは、所望の電流変調深さに正確にカップリングされたゲート接続部の電圧レベルによって所定のオン抵抗(“R_on”とも称される。)に設定される。
【0050】
- 前記負荷回路素子および電荷素子、すなわちレーザダイオードを備える前記チャージ路(レーザ電流路とも称される。)は、前記チャージ素子の電流、特にレーザ電流を測定するための1つまたは二つの接続路を設定する。これらの接続路において、制御トランジスタによって形成される前記測定路回路素子は、前記負荷回路素子、特にレーザ電流のための駆動FET、と同じ動作ポイントに維持される。
【0051】
- 前記電界効果トランジスタの前記所定のオン抵抗を設定するために必要な電圧レベルが、前記チャージ路、前記負荷回路素子、前記電荷素子、すなわちレーザダイオード、と接続された前記少なくとも1つの路上での電流測定と、前記CMOS回路ブロックの動作電圧の閉ループ制御、とによって確保される。
【0052】
- 上述の電流測定は、コントローラ、「プレドライバ回路」とも称されるプレステージ回路の出力レベルの閉ループ制御、たとえば、上述の回路ブロック、好ましくはCMOSデバイスで構成される回路ブロック(略称CMOS回路ブロック)の動作電圧の閉ループ制御による制御に使用される。
【0053】
- 前記チャージ路または負荷回路素子の、前記測定路または測定路制御素子、とのカップリングは、種々の選択可能なカップリング率で行うことができる。これは、二つの測定路が構成され、そこで測定される個々の測定電流が、1つの測定電流へと組み合わされる場合に特に当てはまる。最も単純なケースにおいて、負荷電流と測定電流との間のカップリングは、N:1:1の比率で選択することができ、これら測定電流を、好ましくは電流ノードでの単純な加算によって組み合わせることができる。あるいは、前記負荷電流と測定電流との間の前記カップリングは、たとえば、N:a:b(ここでaとbは等しくない。)のランダムに偏移する比率で行うことも可能である。次に、それらがそれぞれ異なって重み付けされる、個々の測定電流の任意の線形結合が可能である。前記測定電流を、互いに1:1の率でカップリングし、その後、重畳段階において、異なる重み付け係数によって個々の測定電流を重み付けすることも可能である。
【0054】
- 本発明による前記回路構成は、前記電荷素子(特に前記レーザダイオード)、および、関連の負荷回路素子、好ましくはドライバトランジスタ(特に電界効果トランジスタ)、を介する電圧降下が低くても動作し、より高い動作電圧の発生は不要である。
【0055】
- 前記接続された測定路上の電流測定はチャージ路の電圧低下を必要としない。
【0056】
- 互い相補的な制御信号によって制御される電流測定用の二つのカップリングされた測定路を提供することにより、前記電荷素子、特に前記レーザダイオードの動作ポイント制御に対する変調信号の電流時間プロファイルの影響が防止され、これにより、電荷素子の電流(負荷電流とも称される。)、あるいは、好ましくはここではレーザ電流、の閉ループ制御のための制御されたシステムにおける変調信号から独立したバンド幅が達成される。前記測定電流の変調依存性が、それらの加算または組み合わせ中に低減または補正される。
【0057】
最後に、本発明は、上述したタイプの少なくとも1つの回路構造、少なくとも1つの電荷素子、特に少なくとも1つのレーダイオード、を駆動するための上述したタイプの方法の、光データ伝送、特に少なくとも1つのアクティブ光ケーブル(AOC)における利用に関する。
【0058】
したがって、本発明の一実施例において、チャージ路と二つの測定路とのための三つのMOSFETを、スプリット状に接続して、それらが変調電流と固定比較電流とが一定の比率で提供するように副コントローラを介して同じ動作ポイントに維持されるように構成することができる。
【0059】
前記比較電流は、平均変調電流を決定し、制御装置に供給するために使用することができ、これが、これら、したがって前記平均変調電流を、動作または制御電圧が、前記制御装置によって回路ブロックで変化される所望の値にする。これを行う際に、前記回路ブロックは、前記チャージ路および前記測定路の二つ以上の回路素子を制御する、振幅の動作または制御電圧に応じて出力信号を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
既に述べたように、本発明の教示を好適に実施し、さらに発展するための様々な可能性が存在する。この目的のために、一方では、請求項1と請求項11とに従属する請求項が参照され、他方では、本発明の別実施例、特徴および利点が、特に図4図13によって図示される実施例に基づき以下により詳細に説明される。
【0061】
図1】ソースフォロア回路における電界効果トランジスタを備える電荷素子として使用されるレーザダイオードのための単純な駆動回路の略図である。
図2】レーザダイオードと電界効果トランジスタの主電流路との直列接続および前記電界効果トランジスタ用の駆動回路の両方が共通の動作電圧とアースとの間に配置される回路構成の略図である。
図3図1の回路構成の略図の変形であって、ここでは、前記レーザダイオードと電界効果トランジスタの主電流路との前記直列回路が第1動作電圧に接続され、より高い動作電圧の内部発生のための前記電界効果トランジスタの前記駆動回路がDC-DCコンバータを介して前記第1動作電圧に接続されている。
図4】チャージ路(ここではレーザ電流路)、前記負荷回路素子、電荷素子(すなわち前記レーザダイオード)、および、それらに接続された第1測定路、を備える本発明によって動作する本発明による回路構造の実施例である。
図5】チャージ路、それに接続される第1測定路、および、それに接続される第2測定路、を備える本発明の方法によって動作する図4の本発明による回路構造の実施例の変形例である。
図6】本発明による方法によって動作する図5の本発明による回路構造の変形例であって、ここでは、負荷回路素子および測定路回路素子が、一方では出力接続部においてコンデンサと接続され、他方では関連の回路素子供給制御信号に対する相補的な信号を提供するように構成されている。
図7】負荷回路素子と測定路回路素子とを備える、本発明の方法によって動作する図6の本発明による回路構造の変形例である。
図8】本発明による方法によって動作する図7の本発明による回路構造の変形例であって、ここでは、前記回路ブロックのさらなる詳細が略示されている。
図9】振幅調節電圧および/または動作電圧を供給するための、図7または図8の回路ブロックと協働する制御装置の略図である。
図10】本発明の方法によって動作する本発明による図9の構造の変形例であって、測定路の個々の測定電流の線形結合から得られる測定電流の形成を略示している。
図11図9または図10の実施例による制御装置を備える、本発明の方法によって動作する図7または図8の実施例による完全な回路構成の略図である。
図12】PMOS電界効果トランジスタを備える実施例における、図11の実施例に従う本発明の方法によって動作する本発明による完全な回路構造の略図である。
図13】NMOS電界効果トランジスタを備える、図12の実施例の変形例における、図11の実施例に従う本発明の方法によって動作する本発明による完全な回路構造の略図である。
【0062】
図1図13において類似の実施例、要素または特徴構成には同じ参照番号が付されている。したがって、これらの実施例、要素または特徴構成の反復記載は省略される。
【発明を実施するための形態】
【0063】
不必要な繰り返しを回避するために、本発明の実施例、特徴および利点に関する以下の説明は、特に銘記されない限り、図4図13を参照して例示される本発明の全ての実施例に共通して関連するものである。
【0064】
図4において、参照番号100は、本発明による回路構造の第1実施例を示している。
【0065】
回路構造100は、電荷素子101(ここではレーザダイオード)を備えて構成されるチャージ路103(ここではレーザ電流路)と、負荷回路素子102(ここでは電界効果トランジスタ、特にMOSFET)と、を有し、ここで、レーザダイオード101と主電流路を形成するドレン-ソース路とが、MOFET102の直列接続されたドレン接続部Dとソース接続部Sとの間に配置されている。
【0066】
回路構造100は、さらに、チャージ路103に接続された第1測定路106、第1測定路回路素子104(ここでは電界効果トランジスタ、特にMOSFET)を有し、第1測定路回路素子104と直列に配置、すなわち直列接続された第1電圧制御素子105も、電界効果トランジスタ(特にMOSFET)によって構成されている。
【0067】
詳しくは、そのために、負荷回路素子102と第1測定路回路素子104とは、ここでは、好ましくはN:1の比率でスプリット状に接続されている。このことは、負荷回路素子102と第1測定路回路素子104とが同時に制御される場合に、負荷回路素子102と、したがって電荷素子101と、における負荷電流ILが、第1測定路回路素子104と、さらに第1電圧制御素子105と、における第1測定電流I1のN倍であることを意味する。
IL=N×I1
【0068】
この同時駆動は、ここでは第1制御信号S1によって与えられ、これは、負荷回路素子102のゲート接続部Gと第1測定路回路素子104のゲート接続部Gとの両方に供給される。
【0069】
さらに、負荷回路素子102と第1測定路回路素子104との同時駆動を設定するために副コントローラ107が設けられ、当該コントローラは、ここではオペアンプとして構成されている。
【0070】
副コントローラ107の入力接続部のそれぞれは、負荷回路素子102または第1測定路回路素子104のソース接続部Sに接続されている。副コントローラ107の出力接続部は、第1電圧制御素子105のゲート接続部Gに接続されている。
【0071】
このようにして、負荷回路素子102と第1測定路回路素子104とを介した電圧の差に応じて第1電圧制御素子105を制御するための副コントローラ107は、第1測定路回路素子104を介した電圧が負荷回路素子102を介した電圧に依存して制御されるように構成されている。
【0072】
図5は、図4の発明による回路構造100の変形例を図示している。この変形構造は、チャージ路103と接続された第1測定路106とに加えて、接続された第2測定路110を有し、ここで、チャージ路103、第1測定路106、および、第2測定路110、の間のカップリング比はN:a:bとして一般化され、すなわち、負荷電流IL、第1測定電流I1、および、第2測定路110の第2測定電流I2は、IL:I1:I2=N:a:bの関係で挙動する。
【0073】
第2測定路110は、第2測定路回路素子108(ここでは同様に電界効果トランジスタ、特にMOSFET)と、第2測定路回路素子108に対して直列に配置、すなわち直列接続された第2電圧制御素子109(同様に電界効果トランジスタ、特にMOSFET)と、によって構成されている。具体的には、またそのように構成するにあたって、負荷回路素子102、第1測定路回路素子104、および、第2測定路回路素子108は接続されており、ここで好ましくはN:a:bの比率でスプリット状に接続されている。
【0074】
第1および第2電圧制御素子105、109は、それらが接続されている副コントローラ107の出力接続部から、それらのゲート接続部Gを介して共通に制御される。その結果、負荷回路素子102の電圧が、二つの測定路回路素子104、108における電圧に転嫁される。
【0075】
第1測定路回路素子104と異なり、第2測定路回路素子108にはそのゲート接続部Gに第2制御信号S2が供給される。第2測定路110は、第2制御信号S2によって第1測定路106およびチャージ路103に対して相補的に変調される。
【0076】
以下により詳細に説明するように、両制御信号は、レーサダイオードを介して転送されるバイナリデータのシーケンスから構成される変調信号から得られる。レーザ電流ILに加えて、この変調信号、すなわちデータシーケンスが、両測定電流I1、I2に入り、電流測定、したがってレーザダイオード101の動作ポイント制御に対して妨害作用を及ぼす。
【0077】
相補的に制御される測定路106から得られる二つの測定電流I1、I2において、制御信号S1、S2からの変調信号成分は反対方向に発生し、両測定電流I1、I2の、線形結合(好ましくは加算)によって少なくとも大幅に相殺することが可能であり、それによって変調信号からの、したがって同様に変調電流からの、すなわちレーザ電流ILの変調によって引き起こされる負荷電流ILのAC成分からの、レーザダイオード101の動作ポイント制御が少なくとも大幅に独立したものとなる。
【0078】
図6は、図5の回路構成の変形例を図示している。この場合、図5に加えて、負荷回路素子102と両測定路回路素子104、108とが出力接続部(ここでは電界効果トランジスタのソース接続部S)に、一方ではそれぞれ1つのコンデンサ111、112または113によって接続されている。
【0079】
他方、関連するコンデンサ111、112または113には、二つの制御信号S1、S2のうち、関連する回路素子に供給される制御信号S1またはS2に対して相補的なものが供給される。
【0080】
詳しくは、このことは以下を意味する。
- 第1制御信号S1が負荷回路素子102に対してそのゲート接続部Gにおいて供給され、この第1制御信号S1に対して相補的な第2制御信号S2がコンデンサ111、112または113の第1のコンポーネント111を介してそのソース接続部Sに供給される。
- 第1制御信号S1が第1測定路回路素子104に対してそのゲート接続部Gにおいて供給され、この第1制御信号S1に対して相補的な第2制御信号S2がコンデンサ111、112または113の第2のコンポーネント112を介してそのソース接続部Sに供給される。
- 第2制御信号S2が第2測定路回路素子108に対してそのゲート接続部Gにおいて供給され、この第2制御信号S2に対して相補的な第1制御信号S1がコンデンサ111、112または113の第3のコンポーネント113を介してそのソース接続部Sに供給される。
【0081】
コンデンサ111、112または113の接続を介して、負荷回路素子102、第1および/または第2測定路回路素子104または108の入力キャパシタンスが、各相補信号に対してあらかじめ補正される。
【0082】
図7は、図6の回路構造100の変形例を図示している。ここで、その他の点では図6と同じ構造が、負荷回路素子102および測定路回路素子104、108を制御するための制御信号S1、S2を形成するための回路ブロック114によって拡張されている。
【0083】
回路ブロック114は入力接続部115を有し、ここに、そこから、負荷回路素子102と測定路回路素子104、108のための制御信号S1、S2が放出される変調信号M、すなわち具体的にはデータ信号、が供給される。回路ブロック114内で形成された制御信号S1、S2は、回路ブロック114の出力接続部116または117に出力信号として出力される。
【0084】
回路ブロック114は、振幅調節電圧VAを供給するとともに、当該振幅調節電圧VAおよび/または回路ブロック114に対して供給可能な動作電圧VBに依存する振幅の第1および第2制御信号S1、S2を形成するように構成されている。
【0085】
図8は、その他の点では図7に対して改変されていない回路構造を有する回路ブロック114の内部構造の詳細の一部を図示している。これは、第1および第2乗算ステージ(multiplication stage)119または120を有し、そのそれぞれの第1入力部は変調信号Mを供給するべく入力接続部115に接続されている。
【0086】
乗算ステージ119または120の各第2入力部には、論理レベル“+1”または“-1”が供給され、その結果、変調信号Mの相互に相補的なバージョンが乗算ステージ119または120の出力部に提供され、プッシュプル最終ステージ121または122につき1つの入力が、それらの主電流路、すなわちドレン-ソース路および直列接続された電界効果トランジスタによってそれぞれ二つから供給される。
【0087】
その後、第1および第2制御信号S1、S2は、回路ブロック114の出力接続部116または117に接続された、直列接続の電界効果トランジスタの出力ポイントに送られる。
【0088】
乗算ステージ119または120における差動対称変調された制御信号S1、S2において単一極性の変調信号Mを使用するため、乗算ステージ119、120を含む回路部分は、片線接地差動回路とも称される。
【0089】
図8の実施例において、回路ブロック114には、一方では動作電圧VBが、そして他方では制御入力部118を介して振幅入力電圧VAが、供給される。好ましくは、制御入力部118は、回路ブロック114のアース接続部を形成することができ、振幅調節電圧VAはそのアース電位にすることができる。振幅調節電圧VAを定動作電圧VBで調節することによって、制御信号S1、S2の振幅調節を行うことが可能となる。
【0090】
このことは、図9にも示され、ここで、制御装置123の概略が図示されており、これは、図7または図8の回路ブロック114と協働して、一方では制御入力部118に振幅調節電圧VAを供給し、他方では動作電圧VBを供給する。
【0091】
この場合、片線接地差動回路124は、概略図示されている。制御装置123は、二つの入力126または127を備える比較ステージ(comparison stage)125を含む。これらの入力126、127の第1のもの126には測定電流が供給され、これらの入力126、127の第2の入力127には参照電流Irefが供給される。
【0092】
測定電流と参照電流Irefとは比較ステージ125で比較される。この比較に基づいて、振幅調節電圧VAが形成され、調節されて、制御アンプ128を介して回路ブロック114に供給される。制御アンプ128は、好ましくはフィルタ特性、特にローパスフィルタを備えて設計することができる。
【0093】
比較ステージ125の第1入力部126に供給される測定電流は、オプションとして、好ましくは、回路構造100が、第1測定路106、第1測定電流I1、または、当該第1測定電流I1と第2測定電流I2との重畳(好ましくは線形結合)、のみを備えて構成される場合に使用することができる。
【0094】
この第2のケースが図10に図示され、これは、図9の構造の変形例を図示、重畳ステージ(superposition stage)129において第1および第2測定電流I1、I2から得られる測定電流IMessの形成を概略図示している。
【0095】
重畳ステージ129において、下記の式により測定電流IMessが形成される。
IMess=ga×I1+gb×I27
ここで、gaおよびgbは、それらによって測定電流I1、12が線形結合において重み付けされる重み付け係数を表す。これらの重み付け係数gaおよびgbは、負荷回路素子102と第1および第2測定路回路素子104、108とのスプリットカップリングの係数a、bに依存して決定することができる。
【0096】
図10において、回路ブロック114が概略図示され、ここでは、片線接地差動回路124とプッシュプル最終ステージ121、122とが回路符号130にまとめられている。上記に鑑みて、振幅調節電圧VAに関して、負の動作電圧-VBが振幅制御電圧VAとして制御入力部118に入力される。
【0097】
図11は、これまでに図6図10に示した回路部分の概略、すなわち図9または図10の実施例による制御装置123を備えた図7または図8の実施例による完全な回路構造100、を図示している。この場合、負の動作電圧-VBが、ここでも制御入力部118での振幅調節電圧VAとして図示されている。
【0098】
図12図13とにおいて、図11の、本発明による回路構造の二つの完全な実施例、すなわちPMOS電界効果トランジスタを備える1つの実施例と、NMOS電界効果トランジスタを備える他方の実施例と、が概略図示されている。
【0099】
この場合、両方の実施例の回路素子に関する前の図と同じ参照番号が使用されている。PMOS電界効果トランジスタまたはNMOS電界効果トランジスタの極性と、これら回路構造における電圧電位もそれに応じて選択される。
【0100】
図12においても、チャージ路103と測定路106、110との比率N:1:1のカップリングが仮定されている。それにより重畳ステージ129は、測定電流I1、I2の同じ重み付けで、単純な加算装置に、あるいは、図12に図示されているように単純な電流ノードに単純化されている。
【0101】
図12において、参照電流Irefを比較ステージ125の第2入力127に供給するための参照電流源131も加えられている。
【0102】
さらに、負荷回路素子102と、第1測定路回路素子104および第2測定路回路素子108と、に関する図12および図13の実施例においては、回路素子102、104または108のうちの関連するものに接続された定電流源132、133または134が、あらかじめ設定可能なカップリング比で並列に配置されている。
【0103】
具体的には、定電流源132、133、134は、互いに、負荷回路素子102、第1測定路回路素子104および第2測定路回路素子108相互と同じまたは類似のカップリング比で設計されている。この場合、定電流源132、133、134は、チャージ路103または測定路106、110において最小電流を提供する。
【0104】
したがって、要約すると、負荷回路素子102(ここではMOSFET)は、レーザダイオード101と直列で変調電流を提供する(スプリット式に提供してよい)ものであって、単数または複数の測定路回路素子104、108によってエミュレートまたはカップリングされ、これらが変調電流に対して固定比率で、平均変調電流を決める単数または複数の定常測定電流I1、I2を発生する。
【0105】
この目的のために、副コントローラ107と電圧制御素子105、109(たとえばカスコードトランジスタ)を利用して、負荷回路素子102を介する電圧が、カップリングの目的のために測定路回路素子104、108を介する電圧に送られる。したがって、それらが、もしもそれらが負荷電流(すなわちレーザ電流IL)に対する、スプリット状であってよいカップリングされたコンポーネントとして使用される場合には、N:a.bの所定の比率で定常測定電流I1、I2を提供する。
【0106】
定義の目的で、変調電流は負荷電流IL中の交流電流成分であり、これに対して、用語、変調信号Mは、そこから負荷回路素子102と測定路回路素子104、108とのための制御信号S1、S2が放出される信号(具体的にはデータ信号)を指すということを繰り返す必要がある。
【0107】
このように接続された二つの測定路106、110は、相補的に制御することができ、それにより、得られる和信号IMessは比較的ゆっくりと変化し、変調信号Mにほとんど依存しないものとなる。ただし、必要な場合には、レーザ電流路103に接続された1つの測定路のみを使用することも可能である。
【0108】
本発明によれば、レーザ電流IL、または、レーザ電流部分I1、I2、または、このようにして決定されたIMessが、参照電流Irefと比較され、回路素子102、104、108の駆動が再調節されて、それによって、所望の値が設定される。
【0109】
回路素子102、104、108に対応する可変駆動を作り出すために、可変制御電圧VAまたは動作電圧VBで動作される回路ブロック114が使用され、そこから、その振幅が調節可能な制御信号S1または、それらの振幅が調節可能な二つの相補的制御信号S1、S2を作り出すことができる。
【符号の説明】
【0110】
100: 回路構造
101: 電荷素子(特にレーザダイオード)
102: 負荷回路素子(特に電界効果トランジスタ、たとえばMOSFET)
103: チャージ路(特にレーザ電流路)
104: 第1測定路回路素子(特に電界効果トランジスタ(MOSFET))
105: 第1電圧制御素子(特に電界効果トランジスタ(MOSFET))
106: 第1測定路
107: 副コントローラ(特にオペアンプ)
108: 第2測定路回路素子(特に電界効果トランジスタ(MOSFET))
109: 第2電圧制御素子(特に電界効果トランジスタ(MOSFET))
110: 第2測定路
111: 第1コンデンサ
112: 第2コンデンサ
113: 第3コンデンサ
114: 回路ブロック
115: 回路ブロック114の入力接続部
116: 回路ブロック114の第1制御信号S1用の第1出力接続部
117: 回路ブロック114の第2制御信号S2用の第2出力接続部
118: 回路ブロック114の振幅調節電圧および/または制御電圧VAおよび/または動作電圧VB用の制御入力部
119: 回路ブロック114の第1乗算ステージ
120: 回路ブロック114の第2乗算ステージ
121: 回路ブロック114の第1プッシュプル最終ステージ
122: 回路ブロック114の第2プッシュプル最終ステージ
123: 制御装置
124: 回路ブロック114の片線接地差動回路
125: 制御装置123の比較ステージ
126: 比較ステージ125の第1入力部
127: 比較ステージ125の第2入力部
128: 制御装置123の制御アンプ
129: 重畳ステージ
130: 第1プッシュプル最終ステージ121、第2プッシュプル最終ステージ122、および、片線接地差動回路124、がまとめられた回路の符号
131: 参照電流源
132: 定電流源
133: 定電流源
134: 定電流源
200: レーザダイオード
201: 電界効果トランジスタ(特にMOSFET)
202: 動作電圧接続部
203: 参照電位(特にマス(mass)またはゼロ電位または信号アース)
204: 電界効果トランジスタ201用の駆動回路
205: DC-DCコンバータ
206: DC-DCコンバータ205の入力部
207: DC-DCコンバータ205の出力部
a: 負荷回路素子102と第1測定路回路素子104との(特にスプリット状の)カップリング係数
b: 負荷回路素子102と第2測定路回路素子108との(特にスプリット状の)カップリング係数
D: ドレン接続部
G: ゲート接続部
ga: 得られる測定電流IMessの第1測定電流I1の重み付け係数
gb: 得られる測定電流IMessの第2測定電流I2の重み付け係数
I1: 第1測定電流
I2: 第2測定電流
IL: 負荷電流(特にレーザ電流)
IMess: 得られる測定電流
Iref: 参照電流
M: 変調信号
N: 負荷回路素子102と測定路回路素子104、108の(特にスプリット状の)カップリング係数
S: ソース接続部
S1: 第1制御信号
S2: 第2制御信号(特に第1制御信号S1に対して相補的な第2制御信号)
VA: 振幅調節電圧および/または制御電圧
VB: 動作電圧
VB1: 第1動作電圧
VB2: 第2動作電圧
VF: レーザダイオード200の順方向電圧
VGS: 電界効果トランジスタ201のゲート-ソース電圧
Vsu: 総所要電圧降下
Vt: しきい値電圧
ΔV: 変調電圧ACおよび/または電界効果トランジスタ201の変調用の電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13