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特許7152017強化用複合スレッド、プリプレグ、3D印刷用テープ及びそれを調製するための設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】強化用複合スレッド、プリプレグ、3D印刷用テープ及びそれを調製するための設備
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20221004BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/65 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/37 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/70 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
D06M15/507
D06M15/41
D06M15/564
D06M15/65
D06M15/37
D06M15/70
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018555715
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 RU2017050018
(87)【国際公開番号】W WO2017188861
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-03-04
(31)【優先権主張番号】2016116328
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518372039
【氏名又は名称】リミテッド ライアビリティ カンパニー“アニソプリント”
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】アザロフ,アンドレイ ヴァレリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジリエフ,ヴァレリー ヴィタリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ラジン,アレキサンドル フェドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】サロフ,ヴラジミール アレクシーヴィッチ
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/165777(WO,A1)
【文献】特表2017-500457(JP,A)
【文献】特表2018-516786(JP,A)
【文献】特表2018-505938(JP,A)
【文献】特表2016-527360(JP,A)
【文献】特開平03-151229(JP,A)
【文献】特開2013-193577(JP,A)
【文献】特開2005-281440(JP,A)
【文献】特開2006-069188(JP,A)
【文献】特開2015-025889(JP,A)
【文献】特開平02-271937(JP,A)
【文献】特開平01-174690(JP,A)
【文献】特開平05-302401(JP,A)
【文献】特開2006-137791(JP,A)
【文献】特開2011-057896(JP,A)
【文献】特開2015-168714(JP,A)
【文献】特開2009-172995(JP,A)
【文献】特開2008-179010(JP,A)
【文献】特開2007-321060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04- 5/10、 5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
D06M 13/00-15/715
B60C 1/00-19/12
B32B 1/00-43/00
B29C 70/00-70/88
D07B 1/00- 9/00
G02B 6/44
H05B 3/02- 3/18、 3/40- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性結合剤と熱可塑性結合剤との混合物を含浸させた強化用繊維のロービングを含有し、直径0.1~0.7mmの円形又は楕円率1~2及び最大直径0.1~0.7mmの楕円形の横断面を有する強化用複合フィラメントであって、含浸されたロービングが熱硬化性結合剤の完全硬化に至るまで加熱又は他の処理に付され部品及び構造物の製造に用いられ
前記ロービングが、光ファイバー及び/又は導電性ファイバーの形で作製される機能性繊維をさらに含有する、フィラメント。
【請求項2】
強化用繊維が、炭素及び/又はガラス及び/又はアラミド及び/又は玄武岩及び/又はホウ素及び/又は金属繊維の形で作製される、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項3】
熱硬化性結合剤が、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、ウレタン、エポキシ、シリコーン、ポリイミド又はビスマレイミド樹脂の形で生産される、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項4】
熱可塑性結合剤でコーティングされた強化用複合フィラメントを含有するプリプレグであって、強化用複合フィラメントが、直径0.1~0.7mmの円形又は楕円率1~2及び最大直径0.1~0.7mmの楕円形の横断面を有し、このフィラメントが、熱硬化性結合剤と熱可塑性結合剤との混合物を含浸させた強化用繊維のロービングで作製され、この含浸させたロービングが、熱硬化性結合剤の完全硬化に至るまで加熱又は他の処理に付され、熱可塑性結合剤が、硬化した熱硬化性結合剤に適用され部品及び構造物の製造に用いられ
前記ロービングが光ファイバー及び/又は導電性ファイバーの形で作製される機能性繊維をさらに含有する、プリプレグ。
【請求項5】
強化用繊維が、炭素及び/又はガラス及び/又はアラミド及び/又は玄武岩及び/又はホウ素及び/又は金属繊維の形で作製される、請求項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
熱硬化性結合剤が、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、ウレタン、エポキシ、シリコーン、ポリイミド又はビスマレイミド樹脂の形で生産される、請求項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
熱可塑性結合剤が、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はそれらのコポリマーであることができる、請求項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1に記載の強化用複合フィラメントを含有する、又は請求項記載のプリプレグを含有するテープであって、フィラメント又はプリプレグが熱可塑性材料で作製される架橋によって相互連結されている、部品及び構造物の製造に用いられるテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材料の分野に関し、複合材料から作製される部品及び構造物、例えば、航空機、ロケット及び宇宙技術、医薬品、自動車産業等で使用するためのブラケット、フィッティング、基本部品、装着型製品、格子及びハニカム構造の製造に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
現時点では、強化用繊維で作製されるトウ、テープ又は結合剤を含浸させたファブリックの形のプリプレグで作製される複合材料が、当技術分野で広く使われている。部品を作製するために、プリプレグを切断し、技術ツールに供給して、製品を形成する。
【0003】
結合剤として、熱硬化性結合剤、例えばエポキシ類が最も一般的に使用される。この場合、プリプレグ製造工程は強化材に熱硬化性結合剤を含浸させ、続いて乾燥させるが、その間に結合剤の部分的硬化が起こる。
【0004】
熱硬化性結合剤を含有する様々なプリプレグ及びそのようなプリプレグの製造方法が公知であり(例えば、[1]RF特許第2321606号、IPC C08J5/24、B32B27/04、公開日10.04.2008;[2]米国特許出願公開第20120251823号、IPC B29C41/30、公開日04.10.2012)、例えば、分配コームへの、次にエポキシ結合剤の5%濃度溶液による最初の含浸のために第1の浴への、ボビンホルダーからの炭素紡績糸の送達が含まれる。含浸させた強化材は、アルコール-アセトン混合液の溶媒を除去するために、赤外線による乾燥のための装置に入る。次に、乾燥した紡績糸は回転延展機に送られ、次に、同じエポキシ結合剤の49%濃度溶液による第2の浴での2回目の含浸に送られる。さらに、含浸させた強化材は抗接着性基質の上に置かれて、水平乾燥室に送達される。この場合、含浸させた強化材の乾燥温度は、結合剤の糊化温度に対して低減される。
【0005】
熱硬化性結合剤に基づくプリプレグの主な欠点には、それらの限られた有効期間及び保存条件の特別な必要条件が含まれる。そのようなプリプレグは、通常マイナス18℃より低い温度のフリーザーで保存される。
【0006】
その上、そのようなプリプレグは、熱硬化性結合剤を使用して製造される複合材料に共通する欠点を有する。熱硬化性結合剤に基づく複合体は、生成物へのそれらの変換の間に長い重合工程を必要とする。さらに、重合化熱硬化性結合剤は、複合材料のマトリックスのもろい破壊を引き起こす低い変形性によって特徴付けられる。そのような複合体に対して繊維全体に引張荷重をかけたとき、繊維と平行した微小亀裂がその中に形成される。これらの微小亀裂の形成は、漏出故障、複合体構造の動的負荷の下での残留性変形の発生及び蓄積を含む、いくつかの有害な作用をもたらす。さらに、マトリックスの脆弱性はわずかな衝撃によっても複合体の層割れにつながり、それは圧迫の間の材料の強度の予測不能な低下を引き起こす。これらの状況は構造体における許容応力のレベルを制限し、それはそれらの質量のかなりの増加につながる。
【0007】
これらの欠点を排除するために、熱可塑性プリプレグを作製するために現在活発な取り組みがとられており、それはいくつかの利点を有する。技術的利点には、標準状態下で保存中のプリプレグの無制限の存続性、熱硬化性マトリックスの重合化の長い工程の不在による生産時間の低減、加熱した状態での材料の形成及び処理の可能性が含まれる。熱可塑性マトリックスによる複合体の主な構造的利点は、熱可塑性樹脂の高い(最高約100%)変形性及びそれらの破壊の粘稠性の性質に関連している。衝撃による層割れに対する複合体の抵抗性を特徴付ける破壊靭性係数に関しては、熱可塑性マトリックスによる複合体はエポキシマトリックスによる複合体の6倍を超えて勝り、衝撃後の圧縮強度に関しては2倍を超えて勝る([3]Handbook of Composites、第2版、S.T.Peters編、London、Chapman and Hall、1998を参照する)。
【0008】
しかし、熱可塑性材料に基づくプリプレグの生産は、直径約5μmの何万の基本繊維からなるテープの高品質含浸を不可能にする溶融物の極めて高い粘度によって引き起こされる、大きな技術的困難と関連する。強化テープの断面にわたる高分子の熱可塑性樹脂の比較的均一な分布は、比較的高い温度及び長い時間だけでなく、高い(数十バーで測定される)圧を必要とし、それは繊維の傷害及び一様でない内部構造を有する材料の形成をもたらすことがあり、それは材料の機械的特性を低下させる([4]Lapointe,F.and Laberge Lebel,L.(2018)、Fiber damage and impregnation during multi-die vacuum assisted pultrusion of carbon/PEEK hybrid yarns、Polym.Compos.を参照する)。
【0009】
上記を要約すると、熱硬化性マトリックスによるいくつかの複合体が存在し、それらの欠点には、出発材料(プリプレグ)の長い硬化サイクル、短い保存時間及び特別な保存条件、マトリックスの低い変形量、並びに、それぞれそれらの低い衝撃抵抗性が含まれる。他方、熱可塑性マトリックスによるいくつかの複合体があり、それらは上の問題点のほとんど全てを解決する(硬化が不要、材料の長い保存期間のために特別な条件がない、及び高い衝撃抵抗性)が、それらはかなりの欠点を有する-熱可塑性樹脂の溶融物は非常に粘性が高く、高圧でなければ細い繊維の束の中に浸透することができない。これは、熱可塑性樹脂で複合体部品を製造する科学技術を高コスト及び複雑にする。したがって、熱可塑性マトリックスによる部品は、全ての利点にもかかわらず現在めったに使用されない。
【0010】
熱可塑性樹脂による繊維束の含浸に関連した困難を回避するために、したがって、熱可塑性マトリックスによって提供される利点を利用するために、繊維束が低粘性熱硬化性結合剤で含浸され、熱可塑性樹脂を含有する熱硬化性結合剤によって相互連結される、2マトリックス材料を使用することができる([5]国際出願番号WO2011027160A1、IPC C08J5/24、B32B5/28、公開10.03.2011を参照する)。この特許は、繊維の層及び熱硬化性樹脂の第1の外層を含む硬化したプリプレグを記載し、この場合、樹脂層は、熱可塑性粒子及びガラス-炭素粒子を含む。本発明は硬化されたプリプレグに関し、本発明の本質の記載は、「製造後、硬化した多層材料を得るために、プリプレグのブロックは、高い温度及び必ずしも必要でないが上昇させた圧の作用の下で硬化される」と述べている。その特許で記載される「プリプレグのブロック」は、完成製品である。したがって、このプリプレグは、熱硬化性マトリックスに基づく他の公知のプリプレグの主要な欠点を保持する:生成物へのその処理の間に、長い硬化工程が必要とされる。さらに、熱可塑性マトリックスに基づく複合体と比較して、マトリックスへの熱可塑性粒子の導入は、衝撃荷重に対する材料の抵抗性を少しだけ増加させる。
【0011】
我々の問題に関する全ての公知のプリプレグの主要で一般的な欠点は、熱硬化性結合剤で作製されるプリプレグが広く知られているという事実にもかかわらず、それらのいずれも完全硬化熱硬化性マトリックスを含有せず、したがって、製品まで処理するときに、それらの全ては硬化を必要とすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】RF特許第2321606号
【文献】米国特許出願公開第20120251823号
【文献】国際出願番号WO2011027160A1
【非特許文献】
【0013】
【文献】S.T.Peters編,“Handbook of Composites”,第2版,London,Chapman and Hall,1998
【文献】Lapointe.F,and Laberge Lebel.L,“Fiber damage and impregnation during multi-die vacuum assisted pultrusion of carbon/PEEK hybrid yarns”,Polymer Composites.2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許請求の範囲に記載された本発明によって解決される問題は、高重量効率の複合材料からの製品の製造である。これを実行するために、複合材料のマトリックスの変形性の高い特性を、繊維に沿ったこの材料の高い物理的及び機械的特性と並行して達成することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
提案された本発明の技術的結果は、熱可塑性マトリックスによる部品の製造費用のかなりの低減(何倍も低い)につながる、熱可塑性マトリックスによる部品の製造の複雑性を低減すること、結合剤の長期重合の不要性により製品の製造期間を低減すること、出発材料(プリプレグ)の有効期間を増加させること、及び、複合材料からの製品の製造の効率を増加させることである。
【0016】
技術的結果は、直径0.1~0.7mmの円形又は楕円率1~2及び最大直径0.1~0.7mmの楕円形の横断面を有する強化用複合フィラメントであって、熱硬化性結合剤を含浸させた強化用繊維のロービングを含有し、それが、熱硬化性結合剤の完全硬化に至るまで加熱又は他の処理に付される、フィラメントによって達成される。ロービングは、光学及び/又は導電性ファイバーの形で作製される機能性繊維をさらに含有する。強化用繊維は、炭素及び/又はガラス及び/又はアラミド及び/又は玄武岩及び/又はホウ素及び/又は金属繊維の形で作製される。熱硬化性結合剤は、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、ウレタン、エポキシ、シリコーン、ポリイミド又はビスマレイミド樹脂の形で生産される。
【0017】
前記技術的結果は、熱可塑性結合剤をコーティングした強化用複合フィラメントを含有するプリプレグであって、強化用複合フィラメントが、直径0.1~0.7mmの円形又は楕円率1~2及び最大直径0.1~0.7mmの楕円形の横断面を有し、このフィラメントが、熱硬化性結合剤を含浸させた強化用繊維のロービングで作製され;この含浸させたロービングが、熱硬化性結合剤の完全硬化に至るまで加熱又は他の処理に付され、この場合、熱可塑性結合剤が、硬化した熱硬化性結合剤に適用される、プリプレグのおかげで達成される。ロービングは、光学及び/又は導電性ファイバーの形で作製される機能性繊維をさらに含有する。強化用繊維は、炭素及び/又はガラス及び/又はアラミド及び/又は玄武岩及び/又はホウ素及び/又は金属繊維の形で作製される。熱硬化性結合剤は、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、ウレタン、エポキシ、シリコーン、ポリイミド又はビスマレイミド樹脂の形で生産される。熱可塑性結合剤は、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はそれらのコポリマーであることができる。
【0018】
上記の強化用複合フィラメント又はプリプレグを含有するテープを作製することもでき、この場合、フィラメント又はプリプレグは熱可塑性材料で作製される架橋によって相互連結されている。
【0019】
技術的結果は、ボビンホルダーを含有する複合強化フィラメント紡糸機であって、強化用繊維又は強化用及び機能性繊維のロービングを有する少なくとも1つのボビン、ロービングに熱硬化性結合剤を含浸させる含浸機、熱硬化性結合剤の完全硬化のための2つの熱処理室(温度は第1の室で70~130℃、第2の室で160~400℃である)、機械の全ての要素を通したロービングの引き取りを確実なものにする駆動装置によって駆動される、少なくとも1つの受け入れボビンを備えた完成フィラメント受け器を備えている、複合強化フィラメント紡糸機によって達成される。
【0020】
さらに、技術的結果は、ボビンホルダーを含有するプリプレグ成形機であって、強化用繊維又は強化用及び機能性繊維のロービングを有する少なくとも1つのボビン、ロービングに熱硬化性結合剤を含浸させる含浸機、熱硬化性結合剤の完全硬化のための2つの熱処理室(温度は第1の室で70~130℃、第2の室で160~400℃である)、熱硬化性結合剤を含浸させた完全硬化ロービングの上に熱可塑性樹脂コーティングを塗布するためのアプリケーター、機械の全ての要素を通したロービングの引き取りを確実なものにする駆動装置によって駆動される、少なくとも1つの受け入れボビンを備えた完成プリプレグ受け器を備えている、プリプレグ成形機で達成される。
【0021】
さらに、技術的結果は、ボビンホルダーを含有するテープ成形機であって、強化用繊維又は強化用及び機能性繊維のロービングを有する少なくとも1つのボビン、ロービングに熱硬化性結合剤を含浸させる含浸機、熱硬化性結合剤の完全硬化のための2つの熱処理室(温度は第1の室で70~130℃、第2の室で160~400℃である)、熱硬化性結合剤を含浸させた完全硬化ロービングの上に熱可塑性樹脂コーティングを塗布するためのアプリケーター、硬化したロービングからテープを成形し、それらを熱可塑性架橋で結合させるための成形ユニット、機械の全ての要素を通したロービングの引き取りを確実なものにする駆動装置によって駆動される、少なくとも1つの受け入れボビンを備えた完成テープ受け器を備えている、テープ成形機で達成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、強化用複合フィラメントの横断面を示す図である。
図2図2は、強化用複合フィラメントの顕微鏡写真である。
図3図3は、強化用複合フィラメントを含有するプリプレグの横断面を示す図である。
図4図4は、プリプレグテープの横断面を示す図である。
図5図5は、フィラメント及び/又はプリプレグの製造のための機械の概略図である。
図6図6は、プリプレグから生成された複合材料の横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面上の以下の位置は、数字によって示される:
1-複合ロービングのマトリックス材料;2-強化用繊維;3-機能性繊維(光学、導電性の);4-複合フィラメント;5-プリプレグコーティング;6-複合フィラメント;7-熱可塑性ポリマー;8-強化用繊維のロービング;9-ボビンホルダー;10-含浸機;11-含浸ローラー;12-含浸ローラー駆動装置;13-結合剤を含む浴;14-スクレーパー;15-熱処理室番号1;16-反転ユニット;17-熱処理室番号2;18-熱可塑性樹脂コーティングアプリケーター;19-受け入れドラム;20-ハンドラーガイド;21-完成プリプレグ受け器;22-完成プリプレグ受け器駆動装置;23-複合フィラメント;24-熱可塑性マトリックス。
【0024】
強化用複合フィラメント(図1)は、マトリックス材料1で含浸させ、硬化させた繊維ロービングである。ロービングは、強化用繊維2、例えば炭素、ガラス、アラミド、玄武岩、ホウ素、金属繊維、又は他の機能性繊維3、例えば光ファイバー及び例えば銅を含有する導電性ファイバーである。束は、異なる数、例えば2、100、1000、3000、6000などの繊維を含むことができる。含浸のために使用されるマトリックス材料1は、フェノールホルムアルデヒド、ポリエステル、エポキシ及び尿素、シリコーン、ポリイミド、ビスマレイミド及び他の結合材料に基づく熱硬化性結合剤、又は熱硬化性結合剤と熱可塑性結合剤との混合物である。熱硬化性物質は、優れた処理特性、特に、低い粘度、並びに、孔及び空隙の不在下でマトリックスによる強化用繊維束の優れた含浸、したがって、繊維及びマトリックスの共同作用を可能にする、任意の現在使用されているタイプの強化用繊維への優れた接着を保有する。強化用複合フィラメントの生産のために、結合剤の体積率が20~40%であるようにロービングは結合剤で含浸される。例えば、繊維及びマトリックス材料の体積率は、60%:40%、70%:30%、80%:20%、その他の比を有することができる。ロービングは、マトリックス材料が完全に硬化するまで加熱又は他の種類の処理にその後付される。温度体系及び硬化の期間は、マトリックス材料の特定のタイプ及びグレードに依存する。フィラメントの横断面は、直径0.1~0.7mmの円形又は楕円率1~2及び最大直径0.1~0.7mmの楕円形を有する。これらのフィラメントのサイズは、以下に関連している。フィラメントのサイズが0.1mm未満であるとき、フィラメントは比較的低い引張強度を有し、それは、その生産のための装置のユニットを通して引き取ることによるその生産をかなり複雑にし、それは、切断の数、すなわち不合格品の増加、及び繊維の製造費用の増加につながり、そのことはその利点を打ち消す。フィラメントのサイズが0.7mmを超え、横断面の形が円とかなり異なるとき、完全硬化状態のフィラメントはかなりの曲げ剛性を有し、それは複雑な形状の部品を成形するためにそれを曲面に置くことを阻止し、その結果として、技術的結果の達成が不可能である。完成複合フィラメントの顕微鏡写真を、図2に示す。
【0025】
コーティングされたフィラメント-プリプレグ(図2)-は、上記の複合フィラメント4(図1)であり、それは、硬化後に、熱可塑性材料5、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリラクチド(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は他の熱可塑性樹脂によって覆われる。コーティング5は、部品の製造工程における熱可塑性樹脂の最小体積率を保証する役目をし、全体のプリプレグ量の20~60%、例えば20%又は30%であることができる。
【0026】
フィラメント又はプリプレグから作製されるテープ(図3)は、熱可塑性樹脂7、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリラクチド(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は他の熱可塑性樹脂によって互いに連結される、複合フィラメント又はロービング6の列からなるテープである。熱可塑性樹脂7の体積率は、全体のプリプレグ量の20~60%、例えば20%又は30%であることができる。
【0027】
フィラメント又はプリプレグの製造は機械を使用することによって実行され、その概略図は図4に示される。機械は、以下の主要な構成部品からなる:ボビンホルダー9、含浸ユニット10、1つ又は複数の熱処理室(15、17)、ハンドラー20、1つ又はいくつかの受け入れボビン及び駆動装置22を備えた完成プリプレグ受け入れユニット21。
【0028】
最初のロービング8を有する1つ又は複数のボビンは、ボビンホルダーに設置される。ボビンから放出するときのロービング引張を確実なものにするために、ボビンホルダーは、軸バネ制動、電磁気ブレーキ又は電動機を使用した引っ張り装置を備えることができる。最初のロービングを有するボビンの数は、プリプレグロービングの製造の場合には同時に含浸させるロービングの数に依存するか、又は、プリプレグテープの製造の場合にはテープの幅に依存する。
【0029】
ボビンホルダーを離れた後に、ロービング8は含浸機10に入る。含浸機は、異なる設計であってもよい。詳細には、それは、電動機12によって駆動される含浸ローラー11からなるシステムであることができる。ローラーの下端は、結合剤浴13に浸漬されている。結合剤浴は取り外し可能であり、温度制御及び調節加熱ユニットを有する。スクレーパー14は、含浸ローラー14から過剰な結合剤を除去するために提供される。ローラー上の結合剤の量は、スクレーパーとローラーの間のクリアランスによって制御される。含浸ローラー11の上表面に沿って通る乾燥ロービング8は、結合剤に浸される。含浸装置の設計は、含浸のために使用される熱硬化性結合剤の種類によって記載される機械と異なってもよい。
【0030】
含浸後、ロービングは熱処理室(15,17)に入る。室は、熱硬化性結合剤の完全硬化を可能にするために、異なる温度のゾーンに分割することができる。ロービングの中の結合剤の一様分布を確実なものにするために、室の縦の配置が好ましい。室の中に位置する加熱器で、又は加熱した空気を室に供給することによって、加熱を実行することができる。室の中のロービングの移動速度、及びそれに応じたそれらの中での滞留時間、並びに室の中の温度は、繊維及び熱硬化性結合剤の種類に依存する。詳細には、Toray T300 3K炭素繊維及びエポキシ結合剤に関しては、室の中のロービングのために、完全硬化には、第1の室15で90℃の温度、第2の室17で160~200℃、5~10分の全体の滞留時間を必要とする。いくつかの縦の室が使用される場合には、反転ユニット16によってロービング反転が提供される。熱硬化性結合剤の組成によって、温度は第1の室で70~130℃、第2の室で160~400℃である。
【0031】
熱硬化性結合剤は、強化用複合フィラメントの製造工程の間に3つの段階を経る:
・段階A-最初の重合生成物が混合され、加熱すると即時に反応することが可能である。反応は加熱なしでも進むが、非常に遅い。混合物は、最初の生成物の相互作用を遅くする溶媒に溶解することができる。結合剤が保存されるのは、この状態においてである。この段階で、ロービングは結合剤で含浸される。
・段階B-溶媒は最初の混合物から除去され、生成物は重合反応に入っているが、それは最初の段階にあるだけである。この段階で、結合剤の構成成分は溶解し、溶融し、成形することができる。溶媒なしでは、それらは乾燥した生成物であり、互いに固着せず、適当な条件の下で長い間保存し、輸送することができる。既知のプリプレグの生産が完了するのはこの段階である。この段階のプリプレグは、複合部品の生産の構成成分として伝統的に使用される。結合剤の重合を完了するために、それらはゲル化温度と呼ばれるある特定の温度まで加熱されなければならない。
・段階C-重合反応が完了し、結合剤は溶融すること、及び溶媒に溶解することがもはやできない;常温で、それは、その形を変えることができない固体の画一的なガラス質の物質である。この段階で、樹脂は完成強化用複合フィラメントの組成物に含有される。
【0032】
機械がコーティングされたプリプレグロービングの生産を目的にする場合は、機械は熱可塑性樹脂コーティングアプリケーター18を備えるべきである。実施形態は、50℃から400℃に維持された温度範囲の中で熱可塑性ポリマー溶融物を含有する、加熱された、及び耐熱性の室である。シリンダーの下部の排出部分は、繊維の表面に塗布される熱可塑性樹脂の量を決定する分粒紡糸口金を備える。室への熱可塑性樹脂の供給は、熱可塑性樹脂がフィラメントの形であるならばローラーによって実行され、熱可塑性樹脂が粉末又は顆粒の形であるならばネジによって実行される。
【0033】
機械がプリプレグテープの生産を目的にするならば、熱可塑性樹脂コーティングアプリケーター18は、例えば長方形の紡糸口金を使用することによってロービングからテープも形成するべきである。
【0034】
完成プリプレグは冷却され、受け入れドラム19の周りを通って、完成プリプレグ受け入れユニット21に入り、そこで、プリプレグは受け入れボビンに巻かれる。受け入れボビンの数は、同時に製造されるロービング/テープの数に対応する。受け入れボビンは、牽引電動機22によって制御された速度で駆動されるシャフトに固定される。ボビンの作業容量にプリプレグを置くことは、ドライブシャフトと同期して作動するハンドラーガイド20の助けを借りて実行される。
【0035】
部品(図4)を製造するとき、プリプレグは熱可塑性マトリックス24の処理温度及び複合ロービング23の熱硬化性マトリックスのガラス転移温度より高い温度まで加熱され、部品を成形する金型の上に広げられる。広げた後に、熱可塑性溶融物は冷却の過程で凝固し、冷却されている複合ロービングは再び強固になり、高い機械的特性を有する強化材料の層を形成する。複合繊維のマトリックス材料は溶融しないが軟化するだけであり、束の中に位置する強化用束繊維がそれらの位置を保持することが必須であり、それは繊維の配置をより規則的にし、材料の物理的及び機械的特性を向上させる。
【0036】
記載された強化用複合フィラメント及びプリプレグは、熱可塑性マトリックスで複合部品を製造するために使用することができる。熱可塑性マトリックスによる複合材料の生産において、従来の束が、熱硬化性結合剤で前含浸されて完全に硬化している記載された強化用複合フィラメントと交換されるならば、フィラメントは大きな直径を有するので、このフィラメントは熱可塑性樹脂で容易に、及び完全に濡らされ、かなりの圧及び複雑な技術装置を使用しなくても熱可塑性マトリックスによる複合部品を得ることを可能にする。本発明は、3D印刷などの、複合材料からの部品の製造の付加工程の実行のために特に有益である。部品は、プラスチックが低圧下にあり、強化用繊維ロービングを含浸させることができないミクロ押出成形機によるそのような工程で成形される。従来のロービングをロービングが結合剤で含浸されて完全に硬化している強化用複合フィラメントと交換することは、最小数の孔及び空隙を含有し、高い物理的及び機械的特性を提供する部品の製造を可能にする。
【0037】
硬化した結合剤に基づくフィラメントの使用のために、熱可塑性マトリックスによる部品の製造の複雑性は低減され、それは、様々なプレスが不必要であり、エネルギー費が低減される事実等のため、熱可塑性マトリックスによる部品の製造費用(何倍以上)のかなりの低減につながる。同時に、製造される部品は、熱可塑性マトリックスを含有する部品の全ての利点を有する-それらの硬化が不要である、それらは衝撃に高度に耐性である、及び標準状態下で原料は無制限の存続性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6