(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】放熱シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20221004BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20221004BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221004BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221004BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
H05K7/20 A
B32B7/027
B32B9/00 A
(21)【出願番号】P 2018564533
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001604
(87)【国際公開番号】W WO2018139364
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2017014789
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 茂
(72)【発明者】
【氏名】飯室 善文
(72)【発明者】
【氏名】坂口 佳也
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-090516(JP,A)
【文献】特開2006-093546(JP,A)
【文献】特開2016-082155(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104074(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3208275(JP,U)
【文献】特開2017-014399(JP,A)
【文献】特開2014-061662(JP,A)
【文献】特開2014-187233(JP,A)
【文献】特開2016-063201(JP,A)
【文献】特開2010-070413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトシートと、第1熱伝導層と、第2熱伝導層とが、この順で積層した放熱部材を形成する放熱シートであって、
前記第1熱伝導層は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり
タイプOO硬さが30を超え、
前記第2熱伝導層は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり、
タイプOO硬さが30以下で前記第1熱伝導層よりも柔軟であるとともに、平面視で前記第1熱伝導層と同じかまたは小さい外形を有する放熱シート。
【請求項2】
前記第1熱伝導層は、前記グラファイトシートよりも平面視で大きい外形を有する請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
前記第2熱伝導層は、それを構成する高分子マトリクスの含有量が50質量%以下であり、当該高分子マトリクス単独での硬さがタイプOO硬さで3以下である請求項1
又は請求項2記載の放熱シート。
【請求項4】
前記第1熱伝導層は、平面視で前記グラファイトシートの外形からはみ出す外側の部分が、前記グラファイトシートの外形からはみ出さない内側の部分よりも厚肉に形成されている
請求項1~請求項3何れか1項記載の放熱シート。
【請求項5】
前記第2熱伝導層は、前記第1熱伝導層よりも復元力が小さい請求項1~
請求項4何れか1項記載の放熱シート。
【請求項6】
前記グラファイトシートを有する側の表面に、グラファイトシートを覆う保護層を有する請求項1~
請求項5何れか1項記載の放熱シート。
【請求項7】
前記グラファイトシートを有する側の表面か、その反対側の表面の少なくとも何れかに、剥離層を有する請求項1~
請求項6何れか1項記載の放熱シート。
【請求項8】
前記第1熱伝導層の熱伝導率が、前記第2熱伝導層の熱伝導率より大きい請求項1~
請求項7何れか1項記載の放熱シート。
【請求項9】
前記第2熱伝導層の熱伝導率が、前記第1熱伝導層の熱伝導率より大きい請求項1~
請求項7何れか1項記載の放熱シート。
【請求項10】
前記グラファイトシートが、シート状のグラファイトの表裏両面を保護フィルムで被覆したラミネートグラファイトシートである請求項1~
請求項9何れか1項記載の放熱シート。
【請求項11】
放熱シートと発熱体とからなり、前記発熱体に前記放熱シートが密着した放熱構造であって、
前記放熱シートが、請求項1~請求項10何れか1項記載の放熱シートであり、その第2熱伝導層は、前記発熱体の凹凸の最大高さの1.2倍以上の厚さを有する放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体と放熱体との間に配置して用いられる放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータや自動車部品等の電子機器では、高性能な半導体素子や機械部品等が用いられているが、これらの素子等による局所的な発熱はヒートスポットと呼ばれ、この発熱に対処しなければ素子等の破損の原因となるおそれがある。そこでヒートスポットの解消のために金属シートや、面方向の熱伝導率が極めて高いグラファイトシートを用い、素子等からの発熱を効果的に放熱するようにしている。
【0003】
ところが、こうした金属シートやグラファイトシートは比較的硬い表面を有するため、半導体素子等の発熱体と密には接し難く、発熱体から生じる熱の拡散は、必ずしも効率の良いものではなかった。そこでこうした課題を解決するため、グラファイトシートと発熱体の間に、柔軟な熱伝導性材料を介在させる方法が提案されている。
【0004】
例えば、グラファイトシートに熱伝導性ゴムシートを積層した放熱部材に関する技術が特開2013-102180号公報(特許文献1)に記載されている。また、グラファイトシートにフェイズチェンジシートを積層した放熱部材に関する技術が特開2003-158393号公報(特許文献2)に、グラファイトシートに熱伝導性グリスを塗布した放熱部材に関する技術が特開2007-266518号公報(特許文献3)にそれぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-102180号公報
【文献】特開2003-158393号公報
【文献】特開2007-266518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グラファイトシートに熱伝導性ゴムシートを積層した特開2013-102180号公報(特許文献1)に記載の技術を利用すると、
図14(a)で示すような状態となるように放熱部材を発熱体に圧接して装着しても、その圧接を解くと熱伝導性ゴムシートのゴム弾性により形状が復元し、
図14(b)で示すような状態となり、発熱体の凹部や側面と、熱伝導性ゴムシートとの密着状態が損なわれて空隙が生じるおそれがあった。
【0007】
一方、この熱伝導性ゴムシートの硬さを低くすることで密着性を高めることができる。ところが、熱伝導性ゴムシートの硬さを低くすると、取扱い時に熱伝導性ゴムシートが変形し、これを電子基板上の発熱体に好適に装着できなかったり、厚さが不均一になって発熱体と密着しない部分が生じたりするおそれがあった。
【0008】
あるいはまた、フェイズチェンジシートを積層した特開2003-158393号公報(特許文献2)に記載された技術では、フェイズチェンジシートの熱伝導性が比較的低く、また加熱により液相に相変化して薄膜化するため、比較的大きな凹凸を備えた発熱体に適用する場合には、凸部は薄膜化して低熱抵抗になるものの、その他の部分は薄膜化することが見込めない。また、加熱したときに液相になるため、厚膜となる凹部においてフェイズチェンジシートが流動してしまうことから、フェイズチェンジシートの広がりの制御が困難であり、所定の範囲からはみ出てしまうおそれがあった。
【0009】
さらに特開2007-266518号公報(特許文献3)に記載された技術では、熱伝導性グリスが反発弾性を有さないため、使用時に復帰して、発熱体の凹部や側面と熱伝導性ゴムシートとの密着状態が損なわれることはない。しかし、比較的大きな凹凸を備えた発熱体に適用すると、圧接時の熱伝導性グリスの広がりの制御が困難であり、所定の範囲からはみ出すおそれがあった。また、そうしたはみ出しや意図しない箇所への付着など、不具合が生じた際に熱伝導性グリスを除去することが難しく、製造時の作業性が悪いという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、発熱体や電子基板等の被着体に対する密着性に優れ、取扱い性が容易な放熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の放熱シートは以下のとおり構成される。
即ち、グラファイトシートと、第1熱伝導層と、第2熱伝導層とが、この順で積層した放熱部材を形成する放熱シートであって、前記第1熱伝導層は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり、前記グラファイトシートよりも平面視で大きい外形を有し、前記第2熱伝導層は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり、前記第1熱伝導層よりも柔軟であるとともに、平面視で前記第1熱伝導層と同じかまたは小さい外形を有する放熱シートである。
【0012】
本発明によれば、グラファイトシートと、第1熱伝導層と、第2熱伝導層とが、この順で積層した放熱部材を形成するため、グラファイトシートを用いたことによる優れた熱伝導性を有し、熱伝導層により発熱体から生じる熱を効率良くグラファイトシートに伝えることができる。そして本発明では、前記熱伝導層を第1熱伝導層と第2熱伝導層との積層とすることで、それぞれの熱伝導層に異なる特徴を持たせることができる。
【0013】
第1熱伝導層は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり、グラファイトシートよりも平面視で大きい外形を有するため、第1熱伝導層がグラファイトシートの端部からの黒鉛粉の脱落を防止することができ、熱伝導性を有し、グラファイトシートの外形を保護することができる。なお、「平面視」とは露出グラファイトシート(を有する)側の表面から放熱シートをその厚み方向に見ることをいう。また、グラファイトシート側を上面、第2熱伝導層側を下面と呼ぶこともあるが説明の便宜のためであり、放熱シートの使用態様を限定するものではない。
【0014】
第1熱伝導層と第2熱伝導層は、いずれも高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなるため、ともに優れた熱伝導性を発揮する。このうち第2熱伝導層は、第1熱伝導層よりも柔軟であるとともに、平面視で前記第1熱伝導層と同じかまたは小さい外形を有するため、第2熱伝導層は発熱体との密着性を高めることができる。これに対して第1熱伝導層は、保形性と、変形し難く取扱い性を高める機能を有するものとして構成することができる。そして、放熱シートの製造工程や、発熱体に放熱シートを装着する作業時には、取扱い性を高める第1熱伝導層によってグラファイトシート及び熱伝導層の変形、並びにグラファイトシートと熱伝導層との剥がれを抑止することができる。
【0015】
前記第1熱伝導層は、グラファイトシートと平面視で同じ外形を有するように構成することができる。本発明によれば、グラファイトシートと第1熱伝導層と第2熱伝導層を何れも同じ外形を有するように構成することが可能である。このため本発明であれば、大きな放熱シートを切断して任意形状の小さな放熱シートを形成することができるため、製造が容易であり低コストで放熱シートを製造することができる。
【0016】
前記第1熱伝導層は、グラファイトシートよりも平面視で大きい外形を有するように構成できる。本発明によれば、第1熱伝導層がグラファイトシートの端部からの黒鉛粉の脱落を防止することができ、熱伝導性を有し、グラファイトシートの外形を保護することができる。なお、「平面視」とは露出グラファイトシート(を有する)側の表面から放熱シートをその厚み方向に見ることをいう。また、グラファイトシート側を上面、第2熱伝導層側を下面と呼ぶこともあるが説明の便宜のためであり、放熱シートの使用態様を限定するものではない。
【0017】
前記本発明は、前記第1熱伝導層のタイプOO硬さが30を超え、前記第2熱伝導層のタイプOO硬さが30以下である放熱シートとして構成することができる。本発明によれば、第1熱伝導層のタイプOO硬さがOO30を超えるため、保形性を備え、また放熱シートの取扱い性を高めることができる。また、第2熱伝導層の硬さをOO30以下としたため、小さな圧接荷重で凹凸に追従させることができ、発熱体となるIC等の種々の電子素子が配置されて凹凸を形成する電子基板に密着させることができる。
【0018】
前記第2熱伝導層は、それを構成する高分子マトリクスの含有量が50質量%以下であり、当該高分子マトリクス単独での硬さがタイプOO硬さで3以下であるように構成できる。本発明では、第2熱伝導層を構成する高分子マトリクスの含有量を50質量%以下とし、熱伝導性充填材を除いてその高分子マトリクスだけで構成した場合の硬さをタイプOO硬さで3以下としたため、高分子マトリクスが発現するゴム弾性を抑えることができ、柔軟でありながら復元力の小さい第2熱伝導層とすることができる。
【0019】
前記第1熱伝導層は、平面視で前記グラファイトシートの外形からはみ出す外側の部分が、前記グラファイトシートの外形からはみ出さない内側の部分よりも厚肉に形成されているように構成できる。本発明では、平面視で第1熱伝導層のグラファイトシートの外形からはみ出す外側の部分が、前記グラファイトシートの外形からはみ出さない内側の部分よりも厚肉に形成したため、放熱シートの外縁の保形性を高めることができる。したがって、離型フィルムから放熱シートを剥がすときに、放熱シートの変形を抑制し易く、放熱シートの取扱い性を高めることができる。そうした一方でグラファイトシートと上下方向に重なる部分(前記内側の部分)では、第1熱伝導層の厚さが薄くなっているため、所定の厚さの放熱シートを想定したときに、相対的に第2熱伝導層の厚さを厚くすることができ、発熱体によって形成される凹凸への追従性を高めることができる。
【0020】
前記第2熱伝導層は、前記第1熱伝導層よりも復元力が小さいように構成できる。第2熱伝導層は第1熱伝導層よりも復元力が小さいため、発熱体となるIC等の種々の電子素子が配置されて凹凸を形成する電子基板への密着性を高めることができる。
【0021】
前記放熱シートは、前記グラファイトシートを有する側の表面に、前記グラファイトシートを覆う保護層を有するように構成できる。本発明によれば、グラファイトシート側の表面を覆う保護層を有するため、放熱シートの耐久性を高め、表面からのグラファイト粉末の脱落を防止するなど、グラファイトシートを保護することができる。
【0022】
前記放熱シートは、前記グラファイトシートを有する側の表面か、その反対側の表面の少なくとも何れかに、剥離層を有するように構成できる。グラファイトシート側の表面か、その反対側の表面の少なくとも何れかに剥離層を有する。そのため剥離層が放熱部材の前記表面とその前記反対側の表面とを覆うことで、放熱部材を塵や埃等の付着から保護することができる。また、電子基板に装着する際には放熱部材から簡単に引き剥がすことができ、取扱い性が良い。
【0023】
前記第1熱伝導層の熱伝導率については、前記第2熱伝導層の熱伝導率より大きいように構成できる。即ち、第1熱伝導層は、第2熱伝導層に対して硬質であるとともに高い熱伝導率を有しているため、熱伝導性充填材を多量に配合することができる。したがって、熱伝導率とともに熱伝導性充填材の補強効果によって強度を高めることができ、いっそう取扱い性の良いものとすることができる。また、発熱体からの距離が第2熱伝導層よりも遠い第1熱伝導層の熱伝導率が高くなり、効率的に放熱することができる。
【0024】
前記第2熱伝導層の熱伝導率については、前記第1熱伝導層の熱伝導率より大きいように構成できる。放熱シートは発熱体の形状に応じて第2熱伝導層が変形するため、第2熱伝導層の厚みを比較的大きくすることがある。こうした第2熱伝導層の厚みが大きい場合には、第2熱伝導層の熱伝導率を高めることが、放熱シートの放熱性を高めるために効果的となる。また、第1熱伝導層における熱伝導性充填材の配合量を第2熱伝導層より少なくすることで、薄膜でありながら強靭な第1熱伝導層とすることができる。
【0025】
前記グラファイトシートについては、シート状のグラファイトの表裏両面を保護フィルムで被覆したラミネートグラファイトシートであるように構成できる。グラファイトシートについて、シート状のグラファイトの表裏両面を予め保護フィルムで被覆したラミネートグラファイトシートとしたため、黒鉛粉末の脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の放熱シートによれば、取扱い性が良く、電子素子を設けて表面に凹凸が生じた電子基板等の被着体との密着性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の放熱シートを表し、分
図1(a)はその平面図、分
図1(b)は分
図1(a)のIb-Ib線断面図である。
【
図2】放熱シートの装着方法を表し、分
図2(a)は剥離フィルムが付いた状態の説明図、分
図2(b)は一方の剥離フィルムを剥がす状態の説明図、分
図2(c)はもう一方の剥離フィルムを剥がす状態の説明図である。
【
図3】
図2に続く放熱シートの装着方法を表し、分
図3(a)は放熱シートを電子基板に装着する位置の説明図、分
図3(b)は放熱シートを電子基板に圧接した状態の説明図である。
【
図4】第2実施形態の放熱シートの分
図1(b)相当の断面図である。
【
図5】第3実施形態の放熱シートの分
図1(b)相当の断面図であり、分
図5(a)は保護層がグラファイトシートを覆う態様の放熱シート、分
図5(b)は保護層が一方表面全体を覆う態様の放熱シートをそれぞれ示す。
【
図6】第4実施形態の放熱シートの分
図1(b)相当の断面図であり、分
図6(a)は保護層より外側に第1熱伝導層が露出する態様の放熱シート、分
図7(b)は保護層が第1熱伝導層を覆う態様の放熱シートをそれぞれ示す。
【
図7】第5実施形態の放熱シートの分
図1(b)相当の断面図であり、分
図7(a)は剥離層が表裏両面を覆う態様の放熱シート、分
図7(b)は剥離層が第2熱伝導層側の表面を覆う態様の放熱シート、分
図7(c)は剥離層がグラファイトシート側の表面を覆う態様の放熱シート、をそれぞれ示す。
【
図8】各実施形態の変形例の放熱シートの装着状態を示す説明図である。
【
図9】放熱シートの装着方法の変形例を示す説明図である。
【
図10】放熱シートの装着方法の別の変形例を示す説明図である。
【
図11】放熱シートの装着方法のさらに別の変形例を示す説明図である。
【
図12】放熱シートの熱伝導層の外縁が伸びた状態の説明図である。
【
図13】放熱シートの電子基板に対する密着性の試験方法を示し、分
図13(a)は放熱体上に放熱シートを被せた位置を示す平面図、分
図13(b)はその正面図である。
【
図14】熱伝導層に反発弾性力の高いゴムを用いた放熱シートの装着状態を表し、分
図14(a)は電子基板に放熱シートを圧接した直後の説明図、分
図14(b)は圧接を解いた状態の説明図である。
【
図15】熱伝導層に柔らかな材質を用いた放熱シートの取扱い性を表し、分
図15(a)は剥離フィルムを剥がす状態の説明図、分
図15(b)は熱伝導層の外縁が伸びた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態に即して本発明をさらに詳しく説明する。なお、各実施形態において同一の材質、組成、製法、作用等については重複説明を省略する。
【0029】
【0030】
<放熱シートの形状と材質>
【0031】
本実施形態の放熱シート10を
図1に示す。放熱シート10は、
図1(b)で示すように、グラファイトシート12と、第1熱伝導層13と、第2熱伝導層14とがこの順で積層した放熱部材11を形成している。また、その外形は、
図1(a)で示すように、ここでは矩形状(直角四辺形)であって、グラファイトシート12よりも第1熱伝導層13の方を大きく構成し、グラファイトシート12の端部を第1熱伝導層13の厚肉部13aで囲っている。なお、放熱シートの外形は矩形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。例えば他の多角形、円形、又は所定の部分を避けるような孔を有していても良い。
【0032】
グラファイトシート12は、結晶面が面方向に広がっており、その面内において等方的に極めて高い熱伝導率を備える。そのため、その面方向を所定の方向に揃えることで、特定方向の熱伝導率を高めることができる。
【0033】
グラファイトシート12としては、天然黒鉛や人造黒鉛を原料にシート化した物や、高分子フィルムの熱分解により作製された人造黒鉛シート(以下「フィルム熱分解シート」と略記する)を用いることができる。フィルム熱分解シートは、特にシート面方向への熱伝導率が高いため好適である。
【0034】
フィルム熱分解シートは高分子フィルムを不活性ガス下で2400~3000℃の高温で焼成することで得ることができる。焼成は1段階でも良く、2段階以上に分けて行ってもよい。不活性ガスには窒素やアルゴンが好適である。
【0035】
黒鉛化する高分子フィルムは、ポリイミド等の芳香族高分子を用いることが好ましい。グラファイト構造が発達した熱伝導性の高い黒鉛フィルムを得ることができるからである。高分子フィルムの厚さは400μm以下とすることが好ましく、10~200μmとすることがより好ましい。
【0036】
こうしたグラファイトシート12の厚さは、10~100μmとすることが好ましく、30~100μmとすることがより好ましい。厚さが10μm未満では放熱特性が低くなるおそれがある。一方、100μmを超えるグラファイトシートを用いても、厚みの増加分に見合う放熱特性の向上は小さく、材料の使用量の増加に伴う価格の上昇が懸念される。また、厚みが30μm未満の場合には、グラファイトシートの強度がやや低くなることから、その保護の程度を高めるため保護層を併用することが好ましい形態となる。一方、厚みが30μm以上であれば、グラファイトシートの強度の点で好ましい。
【0037】
第1熱伝導層13は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散してなり、柔軟性を有するとともに定形性を有している。また、第1熱伝導層13は、放熱部材11の外形を形成する。第1熱伝導層13は、グラファイトシート12よりも大きい外形を有し、グラファイトシート12を保護する役割も担う。
【0038】
第1熱伝導層13の厚さは、特に限定されないが、放熱シート10の外周部で保形性が発揮される範囲で薄膜とすることが好ましい。放熱シート10の外周部、特にグラファイトシート12の外形からはみ出す第1熱伝導層13の外側部分に保形性を有することで、後述するように放熱シート10の取扱い性を効果的に高めることができる。第1熱伝導層13の厚さは、例えば、硬さがOO31のときには、300μm以上、OO40のときには200μm以上が好ましく、A50のときには100μm以上とすることができる。第1熱伝導層13は500μmを超えて厚くしても保形性の向上はほとんどなく熱抵抗が上昇する懸念から、500μm以下とすることが好ましい。
【0039】
高分子マトリクスは、樹脂やゴム等の高分子であり、主剤と硬化剤のような混合系からなる液状の高分子組成物を硬化して形成したものとすることが好ましい。したがってこの液状の高分子組成物は、例えば、未架橋ゴムと架橋剤を含むものであったり、架橋剤を含む未架橋ゴムと架橋促進剤を含むものであったりすることができる。また、その硬化反応は常温硬化であっても熱硬化であっても良い。高分子マトリクスがシリコーンゴムであれば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンなどが例示できる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであれば、ジオールとジカルボン酸とすることができ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーであれば、ジイソシアネートとジオールとすることができる。このような高分子組成物(硬化前高分子マトリクス)の中でも、硬化後の高分子マトリクスの硬さの調整幅が広く、熱伝導性充填材の充填性が良い付加反応型のシリコーンゴムを用いることが好ましい。シリコーンゴムとすることで、柔軟で復元力が小さい第2熱伝導層14の高分子マトリクスとしても用いることができる。
【0040】
熱伝導性充填材は、高分子マトリクスに熱伝導性を付与する材料であり、熱伝導率が高い粉末状の材料を用いることができる。
【0041】
熱伝導性充填材には、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、黒鉛などの粉末が挙げられる。金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英など、金属窒化物としては、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムなどを例示することができる。また、金属炭化物としては、炭化ケイ素が挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。また、黒鉛としては、球状黒鉛や、鱗片状黒鉛、黒鉛化炭素繊維などが挙げられる。これらの熱伝導性充填材の中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く放熱シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。また、黒鉛粉末は、黒鉛の結晶面方向に極めて高い熱伝導性を有しているため、結晶面を一定方向に配向することで、熱伝導層の熱伝導率を高めることができる点で特に好ましい。
【0042】
熱伝導性充填材の形状は、特に限定しないが、アスペクト比が小さい熱伝導性充填材を含むことが好ましい。特にアスペクト比が2以下の熱伝導性充填材は、硬化前の液状高分子マトリクスと混合した組成物の粘度の上昇を抑えることができ、熱伝導性充填材を高充填し易いからである。こうした理由から、熱伝導性充填材の形状は球状であることが好ましい。
【0043】
一方、黒鉛粉末は、鱗片状または繊維状などの高アスペクト比の黒鉛粉末について、鱗片状の場合にはその長軸方向である鱗片面内に黒鉛結晶が広がっており、また繊維状の場合には繊維軸方向に、黒鉛結晶が広がっていることから、前記黒鉛粉末を所定方向に配向することで、黒鉛の結晶方向を揃えることができ、所定方向の熱伝導性を高めることができる。
【0044】
熱伝導性充填材の平均粒径は0.5~100μmであることが好ましい。平均粒径が100μmを超えると、薄膜の第1熱伝導層13の作製が困難になるおそれがある。一方、平均粒径が0.5μm未満の熱伝導性充填材は、比表面積が大きくなるため粘度が上昇し易く高充填し難くなる。但し、充填性に悪影響がない場合は、0.5μm未満の熱伝導性充填材を含んでもよい。熱伝導性充填材の平均粒径は、レーザ回折散乱法(JIS R1629)により測定した粒度分布の体積平均粒径で示すことができる。
【0045】
熱伝導性充填材は、高分子マトリクス100質量部に対して、300~2000質量部含むことが好ましく、300~1700質量部含むことがより好ましい。熱伝導性充填材の含有量が、高分子マトリクス100質量部に対して300質量部未満では、熱伝導性が低くなるおそれがある。一方熱伝導性充填材は配合量が多い程、熱伝導性を高めることができるが、2000質量部を超えると粘度が高くなりすぎ、薄膜状の熱伝導層を製造することが困難になるおそれがある。
【0046】
第1熱伝導層13の硬さは、ASTM D2240で規定されるOO硬度で、OO30を超えるものとすることが好ましい。第1熱伝導層13の硬さがOO30を超えれば、所望の保形性を備えることができ、放熱シート10の取扱い性を高めることができるからである。また、第1熱伝導層13の硬さは、OO40以上であると、第1熱伝導層13の厚さが比較的薄い場合であっても充分な保形性を有することができるためより好ましい。一方、硬さの上限は特にないが、一定の可とう性を備えるものとするため、ASTM D2240で規定されるタイプA硬さがA80以下であることが好ましい。A80を超えると、放熱シート10が脆くなり、破損しやすくなるおそれがあるためである。
【0047】
上記性質を有する第1熱伝導層13は、平面視でグラファイトシート12の外形からはみ出す外側の部分に、厚肉部13aを備える。厚肉部13aは、第1熱伝導層13におけるグラファイトシート12の外形からはみ出さない内側の部分の肉厚よりも厚く形成されている。第1熱伝導層13がそのような厚肉部13aを有することで、放熱シート10の外周における保形性を高めることができる。具体的には、離型フィルムから放熱シート10を剥がすときに、放熱シート10が引き伸ばされて変形してしまうことを効果的に抑制することができる。したがって、放熱シート10を被着体である発熱体や電子基板に貼着したとき、適切な範囲からはみ出したり、厚さが不均一になり発熱体と密着しない部分が生じたりすることを抑止できる。すなわち、放熱シート10の取扱い性を効果的に高めることができる。
【0048】
一方、第1熱伝導層13において、グラファイトシート12と上下方向に重なる部分の厚さは薄く構成されている。したがって、所定の厚さの放熱シート10を想定したとき、相対的に第2熱伝導層14の厚さを厚くすることができることから、発熱体の凹凸への追従性を高めることができる。
【0049】
第2熱伝導層14は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材が分散して形成されている。また、第2熱伝導層14は、第1熱伝導層13よりも柔軟であるとともに、平面視で第1熱伝導層13と同じ外形に形成されている。さらに、第2熱伝導層14は、グラファイトシート12よりも大きい外形を有している。
【0050】
第2熱伝導層14の厚さは、少なくとも被着体である発熱体の凹凸の高さよりも厚くする必要があり、発熱体の凹凸の最大高さの1.2倍以上の厚さを備えることが好ましい。一方、厚さの上限は特に限定されないが、熱抵抗が上昇する懸念から、10mm以下とすることが好ましい。
【0051】
第2熱伝導層14に用いる高分子マトリクスや熱伝導性充填材は、第1熱伝導層13で例示した材質を用いることができるが、その中で高分子マトリクスについては、特に柔軟なゴムを用いること好ましい。具体的には、OO30以下の硬さに調整しやすい付加反応型のシリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0052】
第2熱伝導層14の硬さは、OO30以下とすることが好ましい。第2熱伝導層14の硬さがOO30以下であれば、小さな圧接荷重でも凹凸に追従することができ、凹凸を備えた発熱体に密着させることができる。また、第2熱伝導層14のより好ましい硬さはOO20以下であり、OO5以下であればさらに好ましい。一方、硬さの下限はOO硬さでは規定が難しく、針入度で200mm以下であることが好ましい。針入度が200mmを越えると、流動性が生じてしまい、放熱シート10を圧接して貼付するときに所定の範囲からはみ出てしまうおそれがあることから、放熱シート10の取扱い性が悪くなるおそれがある。なお、上記針入度はJIS K2207に規定された装置を用いて測定する。すなわち所定形状の針を用い、針と針固定具全体の重さ(すなわち試験片にかかる重さ)を50gとして、5秒間試料に針を進入させたときの進入深さである。
【0053】
また、第2熱伝導層14は、第1熱伝導層13よりも復元力が小さいものとすることが好ましい。一般に、ゴム材料は柔軟であるほど圧縮永久歪が小さく、したがって圧縮状態からの復元力も大きい傾向がある。そのため第1熱伝導層13より柔軟な第2熱伝導層14は、第1熱伝導層13よりも復元力が大きくなると考えられる。しかしながら、ここでは第2熱伝導層14に第1熱伝導層13よりも柔軟でありながら復元力が小さい材料を用いている。
【0054】
復元力は、ICが取り付けられた電子基板に対して放熱シート10(または評価用材料)を圧接し、しばらく圧接状態で保持した後、その圧接を解いて(開放して)一定時間経過した後の電子基板と放熱シート10(または評価用材料)の密着状態について観察して得た結果で判断した。即ち、上記圧接の後、ICの電子基板上の位置から電子基板の平面方向にどの程度の長さだけ放熱シート10(または評価用材料)が剥離したかという剥離幅によって復元力を評価した。この剥離幅が、ICの高さの3倍以下であれば、変形した状態を充分に維持していると見ることができるため復元力が小さく好ましい。最も好ましい場合は、復元力がほとんどなく剥離幅が0となる場合である。
【0055】
柔軟でありながら復元力が小さくなる理由は明らかではないが、復元力が小さい熱伝導層を形成するためには、第2熱伝導層14を以下のように構成することが好ましい。即ち、熱伝導性充填材を含まない硬化物の硬さが略OO3以下、針入度で示すと150以上となる高分子マトリクスを用い、熱伝導性充填材等を含めた全質量中に占めるこの高分子マトリクスの含有量を50質量%以下にする。このように構成することで高分子マトリクスが発現するゴム弾性を抑えることができ、柔軟でありながら復元力の小さい第2熱伝導層14を得ることができる。高分子マトリクスの硬さがOO3を超える場合には、高分子マトリクスのゴム弾性が大きくなり、熱伝導性充填材を多量に充填しても復元力が大きくなるおそれがある。一方、熱伝導性充填材の充填量が50質量%未満の場合についても、ゴム弾性が大きくなり、第2熱伝導層14の復元力が大きくなるおそれがある。
【0056】
第2熱伝導層14は、後述する実施例で示す試験方法による粘着性試験の結果が0.5N/cm2以上であることが好ましい。第2熱伝導層14が0.5N/cm2以上の粘着力を備えることで、圧接しない状態においても電子基板等の被着体との密着性を維持し易くなる。
【0057】
熱伝導性充填材を熱伝導層中に配向させる場合には、第1熱伝導層13において熱伝導性充填材を配向させることが好ましい。放熱シート10を発熱体に圧接した際に、第1熱伝導層13の変形は小さいため配向状態を維持し易いが、第2熱伝導層14は大きく変形するため配向が乱れ易く、配向させる効果が望み難いからである。
【0058】
第1熱伝導層13と第2熱伝導層14には、放熱シート10としての機能を損なわない範囲で種々の添加剤を含ませることができる。例えば、可塑剤、分散剤、カップリング剤、粘着剤などの有機成分を含んでも良い。またその他の成分として難燃剤、酸化防止剤、着色剤などを適宜添加してもよい。
【0059】
<放熱シートの製造方法>
【0060】
放熱シート10の製造方法を説明する。
まず、液状の高分子組成物に熱伝導性充填材を均質に分散させて第1熱伝導層13を形成する第1熱伝導層用組成物(第1熱伝導層用塗液)と、第2熱伝導層14を形成する第2熱伝導層用組成物(第2熱伝導層用塗液)を準備し、一方で予め所定形状にカットしたグラファイトシート12と微粘着性の剥離フィルムを準備する。
【0061】
カットしたグラファイトシート12は、剥離フィルム上に貼付する。次いで、グラファイトシート12を覆うように、第1熱伝導層用組成物をバーコータで均一の膜厚になるように塗布し硬化させることで第1熱伝導層13を形成する。そして、第1熱伝導層13の表面に第2熱伝導層用組成物を塗布し硬化させることで第2熱伝導層14を形成する。最後に、第1熱伝導層13と第2熱伝導層14をグラファイトシート12の外縁から外側にオフセットした位置でカットすることで、放熱シート10を製造することができる。
【0062】
なお、第1熱伝導層13と第2熱伝導層14の成形方法としては、バーコータ法の他に、ドクターブレード法、押出成形法(Tダイ法等)、カレンダー成形法、プレス成形法、注型法等が挙げられる。したがって、第1熱伝導層用組成物と第2熱伝導層用組成物の粘度は、それぞれの形成方法に合わせて所望の薄膜を形成できる範囲とすることが好ましい。
【0063】
また、上記製造方法は一例であってこれに限定されるものではなく、例えば、第1熱伝導層13と第2熱伝導層14を互いに貼合せすることができる程度に粘着性を有する場合には、別々に形成した第1熱伝導層13と第2熱伝導層14とを貼合せて一体化することができる。また、粘着性がない場合には、粘着剤等を介して積層することもできるが、粘着剤層は耐熱性や熱伝導性を低下させる要因となるおそれがあるため介在させない方が好ましい。
【0064】
<放熱シートの装着構造>
【0065】
放熱シート10は、塵や埃等の付着を防ぐ等の目的で、その両面を剥離フィルムで覆った状態で製造される。そのため、これらの剥離フィルムは、発熱体等が設けられた電子基板へ放熱シート10を装着する作業を行う際に、放熱シート10から除去される。この剥離フィルムは放熱シート10の製造に用いた剥離フィルムと同じものであっても良いし、製造に用いた剥離フィルムは除去して、それとは別に付けた剥離フィルムであっても良い。
【0066】
図2および
図3を参照して、放熱シート10の電子基板Pへの装着方法を説明すると、まず
図2(a)で示すように、表裏両面が剥離フィルムf1,f2で覆われた放熱シート10について、
図2(b)で示すように、第2熱伝導層14側の剥離フィルムf1を引き剥がし、次に
図2(c)で示すように、グラファイトシート12側の剥離フィルムf2を引き剥がしながらピンセットGで放熱シート10の端部をつかむ。そして、
図3(a)で示すように、放熱シート10の第2熱伝導層14の側を、電子基板Pの上に実装された電子部品などの発熱体Hを覆うように配置する。そして、
図3(b)で示すように、放熱シート10を電子基板Pに圧接する。このとき、グラファイトシート12が、発熱体Hと上下方向で重なるように注意する。また、放熱シート10の圧接は、発熱体Hが電子基板Pから突出して形成される凹凸に沿って第2熱伝導層14が変形し、この第2熱伝導層14が発熱体Hおよび電子基板Pに密着するまで行なう。その後、放熱シート10のグラファイトシート12側を放熱体である筐体等に接触させることで放熱シート10の装着構造が完成する。こうした放熱シート10は、被着体への装着後にその圧接を解いても被着体との密着性に優れている。
【0067】
ところで、上記放熱シート10と異なり柔軟な熱伝導層bのみをグラファイトシート12に積層した放熱シートA1である場合には、
図15(a)で示すような剥離フィルムf2の引き剥がしの際に、
図15(b)で示すように、熱伝導層bの端部b1が伸ばされて変形するおそれがある。しかしながら、上記放熱シート10では、硬質な第1熱伝導層13を備えるため柔軟な第2熱伝導層14の端部が伸ばされることなく、各剥離フィルムf1,f2から剥がすことができる。
【0068】
また、上記放熱シート10と異なり硬質な(反発弾性力の高い)熱伝導層cのみをグラファイトシート12に積層した放熱シートA2である場合には、電子基板P上の発熱体Hへの装着の際に、圧接時には
図14(a)で示すように、放熱シートA2が電子基板Pに密着しても、
図14(b)で示すように、圧接状態から押圧を解除すると密着状態を維持できずに隙間が生じるおそれがある。しかしながら、上記放熱シート10では、柔軟な第2熱伝導層14を備えるため隙間が生じることを抑制し、密着状態を維持できる。
【0069】
【0070】
本実施形態の放熱シート20は、
図4で示すように、第1熱伝導層23が、その外周部において第2熱伝導層24側に突出する周壁部23bを備える点で第1実施形態の放熱シート10と異なる。
【0071】
周壁部23bを放熱シート20の外周部に設けたため、外周部における第1熱伝導層23の厚さを増すことで、放熱シート20の保形性をよりいっそう高めることができる。一方、放熱シート10と同様に、平面視でグラファイトシート22と重なる部分には第2熱伝導層24を備えるため、発熱体Hの凹凸に追従して密着させることができる。
【0072】
また、周壁部23bを設けたため、放熱シート20の外縁を第1熱伝導層23で形成することができる。そのため、剥離フィルムf1,f2から放熱シート20を剥がすときに、第1熱伝導層23と剥離フィルムf1,f2との界面から剥離させることになり、引き剥がしの「きっかけ」を掴みやすく、作業性を良くすることができる。
【0073】
【0074】
本実施形態の放熱シート30は、
図5で示すように、グラファイトシート32側の表面を覆う保護層35を設けた点で第1実施形態の放熱シート10と異なる。
【0075】
保護層35には、シート状のゴム、樹脂、金属などを用いることができる。絶縁性が要求される場合には、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性樹脂フィルムを用いることが好ましい。その中でも特に安価なポリエチレンテレフタレートフィルムや、耐熱性のあるポリイミドフィルムが好適である。また、導電性の保護層35とする場合には、金属の中でも比較的熱伝導率が高く安価なアルミニウムや銅または耐食性に優れるステンレススチールが好適である。
【0076】
図5(a)で示す放熱シート30a(30)は、その保護層35a(35)を平面視でグラファイトシート32と同じ外形を有するものとしている。即ち、保護層35aはグラファイトシート32の表面に設け、その外縁の第1熱伝導層33を覆わずに第1熱伝導層33が露出している。この放熱シート30aでは、第1熱伝導層33の厚肉部33aが上面側に露出するため、その上面側(グラファイトシート32側)に密着させる放熱体等に対して第1熱伝導層33の粘着性を利用して密着させることができる点で好ましい。
【0077】
また、
図5(b)で示す放熱シート30b(30)は、その保護層35b(35)を平面視で放熱シート30bの全体を覆うものとしている。即ち、保護層35bはグラファイトシート32と第1熱伝導層33の両方を覆っている。この放熱シート30bでは、保護層35bが付いたまま電子基板Pに装着することで、例えば放熱シート30bの装着時においては、放熱シート30bの上面を摺動させながら組立てることができ、また、その後の利用時においては、放熱シート30bの上面を固着させずに放熱体との間で動かすことができるように設定でき、放熱シート30bに対して放熱体が動くことがある用途に有用である。
【0078】
何れの放熱シート30a,30bの場合でも、保護層35を設けることで、グラファイトシート32の破損防止や、グラファイトシート32からの黒鉛粉末の脱落を防止することができる。
【0079】
【0080】
本実施形態の放熱シート40は、
図6で示すように、グラファイトシート42の下面を覆う第2保護層46aを設けた点で第3実施形態の放熱シート30と異なる。放熱シート40では、保護層46bをグラファイトシート42の表面に設けるとともに、第2保護層46aはグラファイトシート42の下面に設け、保護層46bの外縁と第2保護層46aの外縁を固着してグラファイトシート42を覆う構成としている。
【0081】
第2保護層46aや保護層(第1保護層)46bの材質は、放熱シート30の保護層35と同じ材質とすることができるが、異なる材質としても良い。また、第2保護層46aと保護層46bを同じ材質とした方が、熱収縮の違いに起因する反りが少なく、グラファイトシート42とのラミネートが容易である点で好ましい。
【0082】
図6(a)で示す放熱シート40a(40)では、表面側の外縁に第1熱伝導層43が露出している。このように、第1熱伝導層43の厚肉部43aが上表面に露出するため、その粘着性を利用して放熱体等に対して密着させることができる点で好ましい。
【0083】
一方、
図6(b)で示す放熱シート40b(40)は、その保護層46dおよび第2保護層46cの外形が平面視で放熱シート40bの外形を形成するように、第1熱伝導層43に積層している。即ち、保護層46dはグラファイトシート42と第1熱伝導層43の両方を覆っている。この放熱シート40bでは、保護層46bを付けたまま電子基板Pに装着することで、放熱シート40bの上面を摺動させながら組立てることができ、また、その後の利用時においては、放熱シート40bの上面を固着させずに放熱体等との間で動かすことができるように設定でき、放熱シート40bに対して放熱体等が動くことがある用途に好適である。
【0084】
何れの放熱シート40a,40bの場合でも、保護層46b,46dおよび第2保護層46a,46cを設けることで、グラファイトシート42の破損防止や、グラファイトシート42からの黒鉛粉末の脱落を防止することができる。また、第2保護層46a,46cを設けることで、第1熱伝導層43と一体化する前の作業において、グラファイトシート42の破損防止や、グラファイトシート42からの黒鉛粉末の脱落を防止することもできる。加えて、グラファイトシート42と第1熱伝導層43の密着性が小さい場合に、第2保護層46a,46cを介在させることで、第1熱伝導層43の密着性を高めることができる。
【0085】
なお、上記例では、グラファイトシート42の端部を保護層46b,46dおよび第2保護層46a,46cで覆う構成を示したが、覆わないように構成することも一態様である。また、放熱シート40では、グラファイトシート12と保護層46b,46d、第2保護層46a,46cの構成体について、シート状のグラファイトの表裏両面を保護層となる保護フィルムでラミネートしたグラファイトシート(ラミネートグラファイトシート)を用いることができる。
【0086】
【0087】
本実施形態の放熱シート50は、
図7で示すように、その表面を覆う剥離層57を設けた点で第1実施形態の放熱シート10と異なる。
【0088】
剥離層57には、フッ素系樹脂、メラミン、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂フィルム、またはそれらの樹脂でコーティングされたフィルムを用いることができる。これらの中で、放熱シート50の高分子マトリクスとしてシリコーンを用いる場合には、フッ素系樹脂を用いることが好ましい。
【0089】
また、放熱シート10の電子基板Pへの装着方法について説明した際の剥離フィルムや放熱シート10の製造に用いた剥離フィルムを本実施形態における剥離層57とすることもできる。
【0090】
図7(a)で示す放熱シート50a(50)は、放熱シート50aの両面に剥離層57a,57bを有するものとしている。放熱シート50aの両面を塵や埃等の付着から保護することができ、放熱シートの何れか一面に剥離フィルムを設ける場合よりも好ましい。
【0091】
図7(b)で示す放熱シート50b(50)は、放熱シート50bの第2熱伝導層54側の表面に剥離層57aを有するものとしている。柔らかく塵や埃等の付着が起こり易い第2熱伝導層54に剥離層57aを設けたため、こうした塵や埃等の付着を効果的に防止することができる。また、第2熱伝導層54は柔らかく変形を起こし易いため、電子基板Pへの装着前の不意な変形を防止することもできる。
【0092】
そして、
図7(c)で示す放熱シート50c(50)は、放熱シート50cのグラファイトシート52側の表面に剥離層57bを有するものとしている。グラファイトシート52が保護層35で保護されていない態様の放熱シートであってもグラファイトシート52を保護することができる。また、グラファイトシート52の表面に塵や埃等が付着するのを防止でき、放熱体との間に塵や埃等が介在して熱伝導性が下がることを防止することができる。
【0093】
【0094】
上記各実施形態で説明した放熱シート10,20,30,40,50では、平坦なシート状の例を示したが、表面に凹凸を備えるものであっても良い。例えば
図8で示すように、発熱体Hを有する電子基板Pの外形に沿った凹部68を第2熱伝導層54に備える放熱シート60とすることができる。発熱体Hの表面に凹部68を確実に密着させるために、凹部68の深さは発熱体Hの高さよりも浅くすることが好ましい。
【0095】
上記各実施形態で説明した放熱シート10,20,30,50,60では、第1熱伝導層13,23,33,43,53,63が、グラファイトシート12、22,32,52,62よりも平面視で大きい外形を有する例を示した。しかしながら、第1熱伝導層13,23,33,43,53,63が、グラファイトシート12、22,32,52,62と同じ外形を有するように変形して実施することもできる。これによれば、大きなシートを切断して任意形状の小さな放熱シート10,20,30,50,60を形成することができるため、製造が容易であり低コストで放熱シート10,20,30,50,60を製造することができる。
【0096】
【0097】
上記各実施形態で説明した放熱シート10,20,30,40は、電子基板Pへの装着方法として、「装着時には放熱シートを圧接して発熱体Hに密着させて、その後の使用時には圧接を解いて使用する構成」を示したが、以下に示すような装着、使用方法としても良い。なお、以下では放熱シート30(30b)の使用例を説明する。
【0098】
図9で示す例は、ヒートシンクSのような放熱体や金属板等で放熱シート30を発熱体Hに圧接して使用する変更例である。ヒートシンクSと放熱シート30は、固着せずに圧接しても良いが、粘着材や接着材で固着させることもできる。グラファイトシートが露出する上面側にも第1熱伝導層が露出する厚肉部を備えた態様の放熱シート30を用いることが好ましい。こうした放熱シート30を利用すれば、別途接着剤等を用いることなく、放熱シート30を放熱体Sに固着できるからである。また、保護層35を備えない放熱シート30であっても好ましい。ヒートシンクSと第1熱伝導層でグラファイトシートを覆うことができるため、グラファイトシートの破損を防止することができるからである。接着剤等を用いる場合は熱伝導性接着剤を用いることが好ましい。熱伝導性接着剤を放熱シートとヒートシンクSとの間に介在させることで、グラファイトシートとヒートシンクSとの間の熱抵抗を低減して、放熱効率を高めることができる。
【0099】
図10で示す例は、上述のヒートシンクSに変えて、筐体やケースE等によって、放熱シート30を発熱体Hに圧接する変更例である。小型のウェアラブル機器や防水機器では、ヒートシンクSの空冷のために空気の循環・排気構造を設けることが困難なことが多い。そうした場合には、電子基板Pを通じて放熱するか、筐体やケースE等を介して放熱することになるが、筐体やケースE等に発熱体Hを直接密着させるとヒートスポットが生じ、筐体やケースE等の変形や、火傷等の原因となるおそれがある。こうした場合に、
図10で示すように、筐体やケースE等に放熱シート30を密着させると、放熱シート30がそのシート面内に熱を拡散しつつ筐体やケース等に熱を伝えることができる。そのため、ヒートスポットを解消し、筐体やケースE等の広い面積内で放熱できるため、機器の放熱性を高めることができる。
【0100】
また、
図10で示すように、筐体やケースE等は、その形状が平面的なものに限らず湾曲したようなものであっても良い。放熱シート30は取扱い性を高める第1熱伝導層と、柔軟な第2熱伝導層とを積層しているため、湾曲した筐体やケースE等であっても、第2熱伝導層が筐体やケース等と電子基板Pとの間の隙間の大きさの違いを吸収して、電子基板P全体に放熱シート30を密着させることができるからである。
【0101】
図11で示す例は、ネジやピン等の固定具Dで放熱シート30を発熱体に圧接、固定する変更例である。固定具Dは発熱体Hと重ならない位置に設けられる。固定具Dで固定される放熱シート30の表面は硬いことが望まれるため、硬質の保護層35を備える放熱シート30に対して適用することが好ましい。
【0102】
各実施形態や変形例の特徴的な構成は、不具合のない範囲で組合せることができる。例えば、周壁部と保護層を備える放熱シートとすることもでき、また、周壁部や保護層を部分的に設けた放熱シートとすることもできる。
【実施例】
【0103】
<放熱シートの作製>
【0104】
次に示す試料1~試料9の放熱シートを調製した。
【0105】
試料1:
外形が20×20mmの矩形で厚さが40μmのグラファイトシートと、剥離フィルムをまず準備した。ここでの剥離フィルムは、フロロシリコーン系フィルム(ニッパ社製「SS4C」(商品名))上に両面テープ(寺岡製作所社製「No.7071」(商品名))を介して、20×20mmの微粘着フィルム(パナック社製「GN75」(商品名))の微粘着面とは反対面を貼り付けて形成したものである。そして、この剥離フィルムの微粘着面上に前記グラファイトシートを配置した。続いて、前記グラファイトシートを完全に覆うようにグラファイトシートと剥離フィルムの微粘着面に第1熱伝導層と第2熱伝導層とを積層した。具体的には、第1熱伝導層用塗液を塗布して硬化して第1熱伝導層を形成した。第1熱伝導層はグラファイトシートと積層した部分の厚さを0.16mm、グラファイトシートと積層していない周囲の厚さを0.2mmとした。さらに、第1熱伝導層の表面に第2熱伝導層用塗液を塗布して硬化して第2熱伝導層を形成した。第2熱伝導層の厚さは1.8mmとした。したがって、全体としては厚さを2mmとした。そして、グラファイトシートの外縁より外側に2.5mmオフセットした位置で両熱伝導層をカットして放熱部材の外形が25×25mmである
図1で示すような構成の放熱シートを得た。これを取扱い性試験用の試料1とした。
【0106】
また、上記と同様にして、グラファイトの外形が8×8mm(厚さ40μm)で、放熱部材の外形が10×10mm(厚さ2mm)である放熱シートを成形し、中央で切断して密着性試験用の試料1の放熱シートを得た。
【0107】
第1熱伝導層用塗液と第2熱伝導層用塗液は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン90質量部とハイドロジェンオルガノポリシロキサン10質量部に、平均粒径が10μmの不定形水酸化アルミニウム400質量部を混合したシリコーン組成物であり、第2熱伝導層用塗液は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン93質量部とハイドロジェンオルガノポリシロキサン7質量部に、平均粒径が10μmの不定形水酸化アルミニウム400質量部を混合したシリコーン組成物である。
【0108】
このように、第1熱伝導層用塗液も第2熱伝導層用塗液もともに同じ原料を用いているが、硬化剤の配合量を調整することで、第1熱伝導層用塗液は硬化後の硬さがOO40となるように、第2熱伝導層用塗液は硬化後の硬さがOO15となるように、それぞれ調整した。
【0109】
なお、第1熱伝導層用塗液の高分子マトリクスであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン90質量部とハイドロジェンオルガノポリシロキサン10質量部のみを硬化した硬化物の硬さはOO10(針入度110)となり、第2熱伝導層用塗液の高分子マトリクスであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン93質量部とハイドロジェンオルガノポリシロキサン7質量部のみを硬化した硬化物の硬さはOO0(針入度400)となる。また、第1熱伝導層用塗液および第2熱伝導層用塗液中における高分子マトリクスの割合はともに43体積%であり、その硬化物である第1熱伝導層と第2熱伝導層の熱伝導率はともに1.4W/m・Kである。
【0110】
試料2:
試料1で第1熱伝導層用塗液と第2熱伝導層用塗液を用いた代わりに、第1熱伝導層用塗液のみを用いて試料1と同様にして同形状の試料2の放熱シートを得た。
【0111】
試料3:
試料1で第1熱伝導層用塗液と第2熱伝導層用塗液を用いた代わりに、第2熱伝導層用塗液のみを用いて試料1と同様にして同形状の試料3の放熱シートを得た。
【0112】
試料4~試料8:
第1熱伝導層および第2熱伝導層の硬さを以下の表1に示す硬さとなるように、試料1で用いた第1熱伝導層用塗液と第2熱伝導層用塗液の原料は変えずに硬化剤の割合を変更した第1熱伝導層用塗液と第2熱伝導層用塗液を用いて試料1と同様にして同形状の試料4~試料8の放熱シートを得た。なお、硬化後にOO20となる熱伝導層の高分子マトリクスのみを硬化した硬化物の硬さはOO0(針入度320)、硬化後にOO28となる熱伝導層の高分子マトリクスのみを硬化した硬化物の硬さはOO2(針入度160)、硬化後にOO33となる熱伝導層の高分子マトリクスのみを硬化した硬化物の硬さはOO4(針入度130)であった。
【0113】
試料9:
試料1で
図1に示すような構成の放熱シートを作製した代わりに、
図4で示すような構成に変更した以外は、原材料、大きさ等を試料1と同様にして試料9の放熱シートを得た。作製上で試料1と異なる点は、第1熱伝導層用塗液を塗布後、その上から第2熱伝導層の大きさ形状の型枠を配置し、その型枠の表面が第1熱伝導層用塗液と面一になるように第1熱伝導層用塗液中に押し込んでから第1熱伝導層用塗液を硬化した。そして、この型枠を外して形成される第1熱伝導層の凹部に第2熱伝導層用塗液を充てんし、硬化した。第2熱伝導層の外形はグラファイトシートと同じである。
【0114】
【0115】
<放熱シートの取扱い性試験について>
【0116】
取扱い性の試験方法:
前記放熱シートから剥離フィルムを剥がすときの、放熱シートの変形の大きさを評価した。具体的には、放熱部材の角端部である第1熱伝導層と第2熱伝導層を先端幅が6mmのフラットピンセットで挟み、これを剥離フィルムに対して120°の方向に、約10mm/sの速度で引っ張ることで、放熱部材を剥離フィルムから剥がした。続いて、この放熱部材を平坦な台紙の上に置き、剥離フィルムを剥がす前の外形に対する変形の程度を観察した。具体的には、例えば
図12で示すような変形があったとして、外側にはみ出した面積をR1、はみ出しに伴い初期形状から減じた面積をR2とすると、それぞれの面積の絶対値を足して、初期形状(面積S0)に対する比(これを変形率という)を計算した。そして、変形率が1%以下のものを「◎」、1%を超え3%以下のものを「○」、3%を超えたものを「×」と評価した。
【0117】
変形率=(|R1|+|R2|)/S0 ・・・(式1)
【0118】
取扱い性の評価結果:
試料1~試料9の取扱い性の評価結果を表1に示した。第1熱伝導層および第2熱伝導層の一方、または双方の硬さがOO40以上の試料では「◎」、OO33以上の試料では「○」以上となった。これより、少なくともOO33以上の硬さを備える熱伝導層を第1熱伝導層と第2熱伝導層の何れかに設ければ、取扱い性の良好な放熱シートが得られることがわかった。
【0119】
<放熱シートの密着性について>
【0120】
密着性の試験方法:
放熱シートと、電子部品が設けられて表面に凹凸のある電子基板との密着性は、放熱部材を電子基板に対して押圧して圧接し、その後に圧接を解いたときに、熱伝導層が初期の形状に復帰して電子基板から離れてしまうか、熱伝導層が電子基板にそのまま付いているかが問題となる。そこで、この密着性について以下の試験を実施して評価した。
【0121】
縦横3.3mm×1.5mm、高さ0.5mmの略直方体形状のICが固着した電子基板を準備した。電子基板はその表面がレジストで覆われており、ICはエポキシ樹脂製である。そうした一方で、上述の本試験用の各試料の放熱シート(外形10mm×5mm、厚さ2mm)を準備した。
【0122】
続いて、
図13(a)、
図13(b)に示すように、放熱シートの一辺を前記ICの3.3mmの辺と面一になるように配置し、厚さが1.6mmになるまで圧接する。この圧接状態を10秒維持した後に、開放して5分後の密着状態を観察し、
図13(b)に示す剥離幅T1を測定した。また、各試料に対して、グラファイトシート側の表面全面に厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる保護層を積層した放熱シートを用いて同様の試験を行い、剥離幅T2を測定した。そして、剥離幅が0.5mm以下のもの「◎」、0.5mmを超え1.5mm以下のものを「○」、1.5mmを超えたものを「×」と評価した。
【0123】
密着性の評価結果:
試料1~試料9の密着性の評価結果を表1に示した。第2熱伝導層の硬さが柔軟なほど密着性が良く、硬さがOO28以下の試料が良好な結果であった。一方、第2熱伝導層の硬さがOO40まで硬くなると、剥離幅が極端に大きくなり、密着性が低くなることがわかった。この結果より第2熱伝導層の硬さは、少なくともOO28以下であれば、密着性の良好な放熱シートが得られることがわかった。
【0124】
<放熱シートの粘着力について>
【0125】
粘着性の試験と結果:
各試料のグラファイトシート側の表面とは反対側の表面の粘着力を測定した。より具体的には、接触部の外形がφ20mmの平坦な平面で、表面がクロムめっきされた接触子を、各試料のグラファイトシート側とは反対側の表面に対して荷重3N/cm2で10秒間圧接した後に、5mm/minの速さで垂直に引き上げた時の荷重を測定した。その結果、上記試料1~9の何れも、その粘着力は0.8~1.2N/cm2であった。
【符号の説明】
【0126】
10 放熱シート(第1実施形態)
11 放熱部材
12 グラファイトシート
13 第1熱伝導層
13a 厚肉部
14 第2熱伝導層
20 放熱シート(第2実施形態)
21 放熱部材
22 グラファイトシート
23 第1熱伝導層
23a 厚肉部
23b 周壁部
24 第2熱伝導層
30,30a,30b 放熱シート(第3実施形態)
31 放熱部材
32 グラファイトシート
33 第1熱伝導層
33a 厚肉部
34 第2熱伝導層
35,35a,35b 保護層
40,40a,40b 放熱シート(第4実施形態)
41 放熱部材
42 グラファイトシート
43 第1熱伝導層
43a 厚肉部
44 第2熱伝導層
46a,46c 第2保護層
46b,46d 保護層(第1保護層)
50,50a,50b 放熱シート(第5実施形態)
51 放熱部材
52 グラファイトシート
53 第1熱伝導層
54 第2熱伝導層
57,57a,57b 剥離層
60 放熱シート(変形例)
61 放熱部材
62 グラファイトシート
63 第1熱伝導層
64 第2熱伝導層
68 凹部
A1,A2 放熱シート
b (柔軟な)熱伝導層
b1 端部
c (硬質な)熱伝導層
D 固定具
E 筐体、ケース
f1,f2 剥離フィルム
G ピンセット
H 発熱体(電子部品)
P 電子基板
R1,R2 面積
S ヒートシンク(放熱体)
T1,T2 剥離幅