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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/04 20060101AFI20221004BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G01G11/04
G01G11/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020050013
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148661
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-043011(JP,A)
【文献】特開平11-316153(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141670(WO,A1)
【文献】特開2008-145122(JP,A)
【文献】特開2016-156784(JP,A)
【文献】米国特許第05635679(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送可能な搬送部と、
前記搬送部上の前記物品の重量を計量する計量部と、
予め設定された複数のデジタルフィルタを有し、前記計量部から出力される原信号を処理する処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記搬送部の動作中であって前記搬送部によって前記物品が搬送されていないときに、前記原信号に対して前記複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、前記複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する、
計量装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記原信号に対して前記複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記原信号に対して前記複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の微分値の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
前記計量部は、前記搬送部の上流側に配置されると共に第1原信号を出力する第1計量部と、前記搬送部の下流側に配置されると共に第2原信号を出力する第2計量部と、を有し、
前記処理部は、前記第1原信号と前記第2原信号とのそれぞれに対して、前記複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する、請求項1~3のいずれか一項に記載の計量装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択した日時、当該一のデジタルフィルタ、及び前記原信号を記憶する記憶部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量装置の一例として、搬送コンベアによって搬送される物品(計量対象物)の重量を計量する装置が挙げられる。下記特許文献1には、計量した物品の重量に対応する原信号を出力する計量部と、当該計量部から出力された原信号にフィルタリング処理を行うフィルタ部と、フィルタリング処理後の計量信号の波形を表示部に表示させる制御部とを備える計量装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表特許WO2015-141670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような計量装置においては、フィルタ部には複数のデジタルフィルタが予め設定されることがある。これにより、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタを設定することによって、精度よく物品の重量を計量できる。しかしながら、デジタルフィルタの設定は、単なる計量装置の使用者にとっては困難である。このため、通常、計量装置の設計者もしくは熟練者によってデジタルフィルタの設定がなされる、もしくは、状況に適したデジタルフィルタの設定は実施されずに計量装置に標準設定されたデジタルフィルタのみが用いられる。前者においては、計量装置の作業効率が低下する問題がある。後者においては、計量装置の計量性能が十分に発揮されないことがある。
【0005】
本発明の一側面の目的は、作業効率を向上しつつ計量性能を十分に発揮可能な計量装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る計量装置は、物品を搬送可能な搬送部と、搬送部上の物品の重量を計量する計量部と、予め設定された複数のデジタルフィルタを有し、計量部から出力される原信号を処理する処理部と、を備える。処理部は、搬送部の動作中であって搬送部によって物品が搬送されていないときに、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。
【0007】
この計量装置によれば、処理部は、搬送部の動作中であって搬送部によって物品が搬送されていないときに(いわゆる空運転中に)得られる原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。これにより、計量装置及びその周囲の状況(例えば、計量装置自体の振動、外部から計量装置に伝達される振動等)に適したデジタルフィルタを自動で選択できる。このため、計量装置の設計者等が対応しなくとも、計量装置は、精度よく物品を計量できる。したがって、上記計量装置は、作業効率を向上しつつ計量性能を十分に発揮可能である。
【0008】
処理部は、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択してもよい。この場合、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がされやすくなる。
【0009】
処理部は、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の微分値の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択してもよい。この場合、計量装置に物品を搬送するときに生じる振動の影響を小さくできるので、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がよりされやすくなる。
【0010】
計量部は、搬送部の上流側に配置されると共に第1原信号を出力する第1計量部と、搬送部の下流側に配置されると共に第2原信号を出力する第2計量部と、を有し、処理部は、第1原信号と第2原信号とのそれぞれに対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択してもよい。この場合、例えば計量装置に長尺の物品が搬送されるとき等においても、計量装置の計量性能を十分に発揮させやすくなる。
【0011】
処理部は、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択した日時、当該一のデジタルフィルタ、及び原信号を記憶する記憶部を有してもよい。この場合、計量装置による計量状況の履歴を容易に確認できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、作業効率を向上しつつ計量性能を十分に発揮可能な計量装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
図2図2は、制御部の機能的な構成を示す図である。
図3図3は、デジタルフィルタの選択方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4(a)は、原信号に含まれる波形を示す図である。図4(b)は、図4(a)に示される波形をフィルタリング処理した後の波形を示す図である。
図5図5(a)は、デフォルトのデジタルフィルタを適用して得られる複数の計量結果を示す拡大図である。図5(b)は、デフォルトのデジタルフィルタとは異なる一のデジタルフィルタを適用して得られる複数の計量結果を示す拡大図である。
図6図6は、第1変形例に係る計量装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一側面に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る計量装置を模式的に示す図である。図1に示される計量装置1は、図1中の矢印の方向(以下、単に「搬送方向」とする)に測定対象物を搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される装置である。測定対象物は、例えば搬送方向に沿って延在する物品Pである。計量装置1は、搬送部2と、架台3と、計量部4と、操作部6とを備える。
【0016】
搬送部2は、物品Pを搬送方向に沿って搬送可能な搬送装置であり、例えばコンベアである。搬送部2は、例えば操作部6を介して指定された搬送速度にて、物品Pを搬送する。搬送速度は、操作部6を介して指定される。搬送部2は、第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとを備える。第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとのそれぞれは、例えば、ローラ、モータ等の回転体、及び搬送ベルトなどを有する。第1コンベア部2a、第2コンベア部2b及び第3コンベア部2cは、搬送方向の上流側から順番に配置される。すなわち、第2コンベア部2bは、搬送方向において第1コンベア部2aと第3コンベア部2cとの間に位置する。第1コンベア部2aは、第2コンベア部2bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部2aは、例えば、図示しない金属検出機等を有してもよい。第2コンベア部2bは、第1コンベア部2aから搬送された物品Pを第3コンベア部2cに搬入するコンベアである。第3コンベア部2cは、第2コンベア部2bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部2cは、例えば、重量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)を有する。
【0017】
第2コンベア部2bには、計量部4が装着されている。このため、搬送部2にて搬送される物品Pは、第2コンベア部2b上にて計量される。また、第2コンベア部2bの上流側及び下流側のそれぞれには、物品Pの有無を検知するセンサが設けられてもよい。この場合、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているか否かを容易に判断できる。
【0018】
架台3は、計量部4を収容する部材であり、搬送部2の下方にて床Fに固定される。架台3は、計量部4を収容する本体3a、及び本体3aと床Fとの間に位置する複数の脚3bを有する。図1においては、本体3aは破線にて示される。
【0019】
計量部4は、第2コンベア部2b上に位置する物品Pの重量を計量する部材であり、搬送部2の中央部に位置する。計量部4は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体11と、第2コンベア部2b上に位置する物品Pを計量する計量セル12とを備える。起歪体11は、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部11aと、架台3に固定される固定剛体部11bとを有する。可動剛体部11aと固定剛体部11bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部11aの一端は第2コンベア部2bの上流側端部に接続され、可動剛体部11aの他端は計量セル12に接続される。固定剛体部11bの一端は計量セル12に接続され、固定剛体部11bの他端は架台3の本体3aに接続される。図示しないが、計量セル12では、起歪体11に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される。
【0020】
本実施形態では、計量部4は、起歪体11及び計量セル12に加えて、A/D変換部を有する。計量セル12は、起歪体11から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。この電気信号は、計量セル12による物品Pの計量結果を示すアナログ原信号であり、物品Pが第2コンベア部2b上に位置しているときに得られる。このアナログ原信号は、A/D変換部によってデジタル原信号に変換される。計量部4は、当該デジタル原信号を原信号とし、外部に出力する。これにより、計量部4から操作部6へ送信する原信号のデータ量を低減できる。
【0021】
操作部6は、搬送部2及び計量部4を操作する部材であり、例えば第2コンベア部2bの近傍に立設される。操作部6は、表示インターフェース7と、制御部8とを有する。
【0022】
表示インターフェース7は、制御部8から出力される表示情報に基づく画像を表示する部材(表示部)である。表示インターフェース7は、例えば、原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号、物品Pの重量の計量結果を示す計量値、当該計量値の精度を評価するための精度情報、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの搬送頻度、物品Pの計量ピッチ等を表示する。本実施形態では、表示インターフェース7は、外部入力部として機能するタッチパネル7aを有する。これにより、表示インターフェース7が作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部8に出力される。入力情報は、例えば、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの種類、物品Pの搬送頻度等に関するデータである。物品Pの搬送頻度は、例えば計量装置1の上流に位置する生産機の能力に基づいて設定される。
【0023】
物品Pの計量値と、精度情報とのそれぞれは、計量部4から操作部6に送信される原信号(より具体的には、上記計量信号)に基づいて得られるデータである。計量値は、公知の手法によって算出される。また、物品Pの計量ピッチは、搬送部2の搬送速度、物品Pの上記寸法、物品Pの搬送頻度に基づき、制御部8によって算出される。物品Pの搬送頻度は、例えば計量装置1の上流に位置する生産機の能力に基づいて設定される。
【0024】
制御部8は、計量装置1に含まれる各部材を制御するコントローラであり、操作部6に内蔵される。制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部8は、例えば、表示インターフェース7を介して指定された搬送部2の搬送速度を制御する動作信号を、搬送部2へ出力する。また、例えば、第3コンベア部2cに振分機が設けられている場合であって、制御部8が物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断した場合、制御部8は、当該物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。制御部8は、計量装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する処理部である。制御部8による各種信号の演算の例として、物品Pの計量結果の導出が挙げられる。このため、制御部8は、例えば、搬送部2の制御信号を出力するための駆動回路、計量部4にて生成される原信号から物品Pの計量値を演算するための駆動回路、当該原信号から上記精度情報を演算するための駆動回路、各信号及び各情報を記憶する記憶回路等を有する。
【0025】
図2は、制御部の機能的な構成を示す図である。図2に示されるように、制御部8は、受信部21と、フィルタ部22と、演算部23と、出力部24と、記憶部25とを有する。
【0026】
受信部21は、例えば、計量部4から送信される原信号と、表示インターフェース7から送信される入力情報とを受信する部分である。計量部4から受信部21への原信号の送信と、表示インターフェース7から受信部21への入力情報の送信とのそれぞれは、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。受信部21は、原信号及び入力情報以外のデータを受信してもよい。
【0027】
フィルタ部22は、予め設定される複数のデジタルフィルタを用いて、計量部4から出力される原信号をフィルタリング処理する部分である。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、予め定められた周波数を超える周波数成分を減衰させるローパスフィルタ、搬送部2に含まれる回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)等から構成される。すなわち、複数のデジタルフィルタの少なくとも一部を選択した場合、フィルタ部22は、原信号に対して多段階のフィルタリング処理を実施できる。各デジタルフィルタには、一又は複数のローパスフィルタ、一又は複数のノッチフィルタが含まれ得る。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、互いに周波数帯の減衰量の異なるローパスフィルタを含んでもよいし、互いに異なる周波数帯を減衰させるノッチフィルタを含んでもよい。上記複数のローパスフィルタは、例えば特許5901126号等に記載される可変フィルタであってもよい。
【0028】
フィルタ部22は、搬送部2の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、複数のデジタルフィルタのうち事前に選択された一のデジタルフィルタを用いて、原信号をフィルタリング処理する。そして、フィルタ部22は、原信号をフィルタリング処理することによって得られる信号(計量信号)を出力する。得られた計量信号は、例えば図1に示される制御部8に含まれる演算部23、記憶部25等に出力される。計量信号は、物品Pの重量を演算するために整えられた波形を有する。
【0029】
フィルタ部22は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないとき(以下、「搬送部2の空運転中」とも称する)に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する。換言すると、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用するフィルタリング処理を実施する。これにより、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果となる複数の計量信号を生成する。そして、フィルタ部22は、複数の計量信号を演算部23、記憶部25等に出力する。なお、搬送部2が空運転中か否かは、作業者によって判断されてもよいし、自動で判断されてもよい。例えば、搬送部2が動作中であって、計量装置1に設けられる物品検知用のセンサの非検知状態が所定時間以上継続しているとき等に、搬送部2が空運転中であると自動で判断されてもよい。
【0030】
本実施形態では、表示インターフェース7を介して指定された実施予定の搬送速度にて搬送部2を空運転したときに計量部4から出力される情報は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないときに得られる原信号に相当する。例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、上記原信号に対して、第1フィルタ~第3フィルタのそれぞれにてフィルタリング処理を実施する。これにより、第1フィルタが適用されることによって得られる第1計量信号と、第2フィルタが適用されることによって得られる第2計量信号と、第3フィルタが適用されることによって得られる第3計量信号とが得られる。
【0031】
演算部23は、入力された各種情報を演算処理する部分である。演算部23は、搬送部2の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、フィルタ部22から出力される計量信号に基づいて物品Pの重量を演算処理する。これにより、演算部23は、物品Pの計量値を生成する。演算部23は、生成された計量値を出力部24に出力する。演算部23は、入力された搬送部2の搬送速度、物品Pの寸法及び搬送頻度によって物品Pの計量ピッチ(計量間隔)を演算する。演算部23は、上記計量値に基づいて、物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱しているか否かを判断する。この判断結果に応じて、演算部23は、例えば振分機に動作信号を出力する。
【0032】
演算部23は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないときに得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。本実施形態では、演算部23は、まず、搬送部2の空運転中に得られた複数の計量信号に基づく複数の精度情報を生成する。続いて、演算部23は、複数の精度情報を比較し、最も適切な精度情報及び/又は計量信号を判定する。続いて、演算部23は、判定された精度情報及び/又は計量信号に対応するデジタルフィルタを選択する。そして、演算部23は、判定された精度情報及び/又は計量信号と、選択されたデジタルフィルタに関する情報とを記憶部25に出力する。
【0033】
精度情報は、例えば、計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出される。この算出結果は、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該標準偏差に基づくパラメータでもよい。本実施形態では、精度情報は、計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差である。このため、演算部23は、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択する。例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、演算部23は、第1計量信号に含まれる波形の振幅の第1標準偏差と、第2計量信号に含まれる波形の振幅の第2標準偏差と、第3計量信号に含まれる波形の振幅の第3標準偏差とを算出する。続いて、演算部23は、第1標準偏差、第2標準偏差及び第3標準偏差のうち、最も小さい値が得られる計量信号を特定する。そして、演算部23は、特定された計量信号にて適用されたデジタルフィルタを選択する。
【0034】
計量信号に含まれる波形は、計量装置1及びその周囲によって発生する振動を含む。当該振動は、物品Pの計量に対するノイズになる。このため、当該波形の振幅の標準偏差が小さいほど、物品Pの計量に対するノイズが小さいと判断できる。計量装置1によって発生する振動は、搬送部2の動作に伴う振動、物品Pが搬送部2に搬送されるときに生じる振動等である。計量装置1の周囲によって発生する振動は、例えば、計量装置1が載置される床面から伝達される振動(床振動)等である。床振動は、例えば、計量装置1を含む物品Pの製造ラインに設置される装置、当該製造ラインには含まれていない装置等に起因した振動である。
【0035】
出力部24は、例えば、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号と、記憶部25に記憶される各種情報及び各種信号を外部に出力する。出力部24は、例えば、物品Pの計量値、精度情報及び計量ピッチなどを表示情報として表示インターフェース7に出力する。出力部24は、搬送部2の搬送速度を制御するための動作信号を搬送部2に出力し、振分機に対する動作信号を当該振分機に出力する。出力部24から搬送部2への動作信号の出力等は、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。
【0036】
記憶部25は、表示インターフェース7を介して入力される入力情報と、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号とを記憶する。記憶部25は、予め設定される複数のデジタルフィルタを記憶する。記憶部25は、搬送部2の空運転中に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択した日時を記憶する。加えて、記憶部25は、当該日時に選択した上記一のデジタルフィルタと、上記原信号自体と、当該原信号に基づいた計量信号、計量値及び精度情報とを記憶する。これにより、作業者は、上記一のデジタルフィルタが選択されたときの計量装置1の計量状況等を容易に確認できる。
【0037】
次に、図3を参照しながら本実施形態に係る計量装置1によるデジタルフィルタの自動選択方法について説明する。図3は、デジタルフィルタの選択方法を説明するためのフローチャートである。
【0038】
まず、搬送部2の搬送速度を決定する(ステップS1)。ステップS1では、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度が指定される。このとき、作業者は、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度自体を入力してもよいし、物品Pの搬送頻度を入力してもよい。後者の場合、制御部8によって搬送部2の搬送速度が算出される。制御部8は、入力された速度もしくは算出された速度に対して、所定値(マージン値)を乗じた値を搬送速度としてもよい。この場合、計量装置1よりも上流にて発生した物品Pの供給タイミングのずれを是正できる。上記マージン値は、例えば、1.1以上2以下であり、作業者によって指定される。上記マージン値が1.1である場合、表示インターフェース7には10%と表示されてもよい。なお、マージン値は、1.1未満でもよく、1以下でもよい。例えば、計量装置1の生産能力を敢えて落とす場合、マージン値は1以下に設定される。
【0039】
次に、物品Pが搬送されていない状態にて搬送部2を動作させたとき(すなわち、搬送部2を空運転させたとき)の原信号を取得する(ステップS2)。ステップS2では、例えば、計量部4は、物品Pを計量する前に指定された搬送速度にて搬送部2を約5秒間空運転させたときの原信号を取得する。取得された原信号は、制御部8に出力される。
【0040】
次に、取得された原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する(ステップS3)。ステップS3では、フィルタ部22が、上記原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用してフィルタリング処理する。これにより、フィルタ部22は、複数の計量信号を生成する。
【0041】
次に、フィルタリング処理後の波形毎の振幅の標準偏差を比較する(ステップS4)。ステップS4では、まず、演算部23は、複数の計量信号のそれぞれに含まれる波形の振幅の標準偏差を演算する。続いて、演算部23は、各標準偏差の大小を比較する。ここでは、演算部23は、複数の標準偏差の内、最も小さい標準偏差が得られる波形を決定する。
【0042】
次に、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する(ステップS5)。ステップS5では、演算部23は、最も小さい標準偏差が得られる波形を有する計量信号を生成するために用いたデジタルフィルタを選択する。選択されたデジタルフィルタは、複数のデジタルフィルタのうち、標準設定にて用いられるデジタルフィルタ(デフォルトのデジタルフィルタ)でもよいし、当該デフォルトのデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタでもよい。換言すると、ステップS1~S5を実施した結果、標準設定にて用いられるデフォルトのデジタルフィルタが引き続き選択されてもよいし、デフォルトのデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタが選択されてもよい。以上により、物品Pの計量を実施する前に、指定された搬送速度にて物品Pを計量するときに用いられるデジタルフィルタが自動で設定予約される。
【0043】
次に、本実施形態に係る計量装置1によって奏される作用効果について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4(a)は、原信号に含まれる波形を示す図である。図4(b)は、図4(a)に示される波形をフィルタリング処理した後の波形を示す図である。
【0044】
図4(a)には、搬送部2を所定速度にて搬送したときに計量装置1の計量部4によって取得される物品Pの重量を算出するための波形51が示される。当該波形には、計量装置1及びその周囲に起因するノイズ等を含む。このため、通常、当該波形にフィルタリング処理を実施することによって、上記ノイズの除去を図る。
【0045】
図4(b)には、波形51をフィルタリング処理した後の波形52,53が示される。波形52は、複数のデジタルフィルタのうち標準設定にて用いられるデジタルフィルタ(デフォルトのデジタルフィルタ)を適用して得られた波形である。波形53は、複数のデジタルフィルタのうちデフォルトのデジタルフィルタとは異なる一のデジタルフィルタを適用して得られた波形である。図4(b)によれば、波形53のノイズは、波形52よりも除去されている傾向にある。よって、計量装置1が上記所定速度にて物品Pの重量を計量するとき、デフォルトのデジタルフィルタよりも上記一のデジタルフィルタが適用されることによって、物品Pの重量が精度よく計量されると推定される。
【0046】
上記推定を確認するため、以下にて複数の物品Pの計量結果を比較検討する。図5(a)は、デフォルトのデジタルフィルタを適用して得られる複数の計量結果を示す拡大図である。図5(b)は、デフォルトのデジタルフィルタとは異なる一のデジタルフィルタを適用して得られる複数の計量結果を示す拡大図である。図5(a),(b)に示されるように、複数の波形の振幅は、デフォルトのデジタルフィルタが適用されたときよりも、上記一のデジタルフィルタが適用されたときの方が、小さくなる。このため、上記一のデジタルフィルタが適用されたときの方が、波形の振幅の標準偏差もまた小さくなる。したがって、計量装置1が上記所定速度にて物品Pの重量を計量するときには、デフォルトのデジタルフィルタが適用されたときよりも、上記一のデジタルフィルタが適用されたときの方が、計量装置1の計量性能を十分に発揮できることがわかる。
【0047】
ここで、本実施形態に係る計量装置1によれば、制御部8の演算部23は、搬送部2の空運転中に得られる原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。これにより、計量装置1及びその周囲の状況(例えば、計量装置1自体の振動、外部から計量装置1に伝達される振動等)に適したデジタルフィルタを自動で選択できる。換言すると、計量装置1及びその周囲によって生じるノイズを適切に除去できるデジタルフィルタを自動で選択できる。このため、例えば計量装置1の設計者等が複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果を踏まえて設定しなくとも、計量装置1は、上記ノイズが適切に除去されたデジタルフィルタを用いて物品Pを精度よく計量できる。したがって、計量装置1は、作業効率を向上しつつ計量性能を十分に発揮可能である。
【0048】
本実施形態では、制御部8の演算部23は、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを選択する。このため、計量装置1及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がされやすくなる。
【0049】
本実施形態では、制御部8は、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択した日時、当該一のデジタルフィルタ、及び原信号を記憶する記憶部25を有する。この場合、計量装置1による計量状況の履歴を容易に確認できる。
【0050】
以下では、上記実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0051】
図6は、第1変形例に係る計量装置の概略構成図である。図6に示されるように、計量装置1Aは、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を計量するための装置であり、第1計量部4A及び第2計量部5を有する。第1計量部4Aは、第2コンベア部2bの上流側に位置する。第2計量部5は、第2コンベア部2bの下流側に位置し、起歪体31と計量セル32とを有する。起歪体31は、起歪体11と同様に、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部31aと、架台3に固定される固定剛体部31bとを有する。
【0052】
搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないとき、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とのそれぞれに対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、第1原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタと、第2原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタとは、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2による物品Pの搬送中、第1計量部4Aから出力される計量信号をフィルタリング処理して得られる計量信号と、第2計量部5から出力される計量信号をフィルタリング処理して得られる計量信号とを合算する。これにより得られた合算計量信号に基づいて、制御部8の演算部23は、物品Pの計量値を生成する。
【0053】
もしくは、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号との合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、制御部8は、まず、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とを合算した合算原信号を生成する。そして、演算部23は、当該合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2による物品Pの搬送中、第1計量部4Aから出力される原信号と、第2計量部5から出力される原信号とを合算する。これに得られた合算原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号に基づいて、制御部8の演算部23は、物品Pの計量値を生成する。
【0054】
このような第1変形例に係る計量装置1Aにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、第1変形例によれば、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を精度よく計量できる。
【0055】
以上、本発明の一側面に係る計量装置の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態及び上記変形例に限定されない。
【0056】
上記実施形態及び上記変形例では、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出されるが、これに限られない。例えば、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の微分値の標準偏差自体でもよい。これらの場合、計量装置に物品を搬送するときに生じる振動の影響を小さくできる。したがって、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がよりされやすくなる。もしくは、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の二次微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の二次微分値の標準偏差自体でもよい。あるいは、精度情報は、上記波形の振幅の最大値から当該振幅の最小値を減じることによって、算出されてもよい。この場合、精度情報を容易に算出できる。
【0057】
上記実施形態及び上記変形例では、計量部は、デジタル原信号を原信号とし、外部に出力するが、これに限られない。計量部は、取得したアナログ原信号を原信号とし、外部に出力してもよい。この場合、例えば制御部がアナログ原信号をデジタル変換してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1A…計量装置、2…搬送部、3…架台、4…計量部、4A…第1計量部、5…第2計量部、6…操作部、7…表示インターフェース、8…制御部、11,31…起歪体、11a,31a…可動剛体部、11b,31b…固定剛体部、12,32…計量セル、21…受信部、22…フィルタ部、23…演算部、24…出力部、25…記憶部、P…物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6