(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】人接近検出装置および人接近検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221004BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20221004BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G08B25/00 510M
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2020210067
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2021-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520500705
【氏名又は名称】株式会社ケーメック
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大石 龍太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清孝
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051705(JP,A)
【文献】特開2019-157497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
G06V 30/418
G06V 40/16 、40/20
G08B 19/00 -31/00
G08G 1/00 -99/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視方向の撮影画像を出力するカメラと、前記カメラからの撮影画像を処理して人の接近を検出する制御部と、前記制御部からの接近通知を報知する報知部とを備え、
前記制御部は、前記撮影画像から人画像を検出する検出部と、前記人画像の骨格を推定して、前記人画像に仮想骨格を対応付ける推定部と、前記仮想骨格の一部の長さを測る測定部と、前記一部の仮想骨格の長さ
として測定した肩幅が閾値を超えたときに前記接近通知を前記報知部に出力する判定部とを備えた人接近検出装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記肩幅が前記閾値以下と前記判定部が判定したときに、肩から腰までの長さを測定し、
前記判定部は、前記肩から腰までの長さが閾値を超えたときに接近通知を出力する請求項
1記載の人接近検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記肩から腰までの長さとして、右肩から右腰の長さまたは左肩から左腰の長さのいずれか一方が閾値以下であるとき、他方を閾値と比較して接近通知の出力を決定する請求項
2記載の人接近検出装置。
【請求項4】
前記カメラは、車両における屋根の後端部に、後方の斜め下方を向けて配置された請求項1から
3のいずれかの項に記載の人接近検出装置。
【請求項5】
前記閾値を選択的に指示する設定部を備えた請求項1から
4のいずれかの項に記載の人接近検出装置。
【請求項6】
前記判定部が前記接近通知を出力するときに、車両に停止通知を出力する停止指示部を備えた請求項1から
5のいずれかの項に記載の人接近検出装置。
【請求項7】
監視方向の撮影画像を出力するカメラと、前記カメラからの撮影画像を処理して人の接近を検出する制御部と、前記制御部からの接近通知を報知する報知部とを備えた人接近検出装置の人接近検出方法であって、
前記制御部により、前記撮影画像から人画像を検出し、前記人画像の骨格を推定して、前記人画像に対応付けた仮想骨格の一部の長さ
として肩幅を測り、前記
肩幅の長さが閾値を超えたときに前記接近通知を前記報知部に出力する人接近検出装置の人接近検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近する人を検出する人接近検出装置および人接近検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の周囲に人が位置しているにも関わらず不注意に車両を移動させると、人と接触してしまうおそれがある。このような接触事故を防止するために、接近する人を検出する装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の監視システムは、バックホウに取り付けられ周囲を撮影する撮像装置に接続された制御部を備え、制御部は、撮像装置から、順次、取得した撮像画像について人物及びヘルメットの画像認識を行ない、画像認識された人物又はヘルメットまでの接近距離を算出し、接近距離が第1距離以下で、人が警報エリア内にいる場合、警告音を発生させ、接近距離が第2距離以下で人が停止エリア内にいる場合、建設機械を停止させ、警告音を発生させる、というものである。この接近距離は、制御部の判定部が、ステレオカメラの視差を用いて、目的画像に含まれる被写体(人又はヘルメット)までの距離を算出している。
【0004】
特許文献2に記載の周囲監視装置は、カメラの撮影シーンを用いた画像処理の結果や距離センサが計測した距離から、作業機械周囲の作業者や物体等の障害物の存在有無を検出し、障害物が存在した場合、機械本体から障害物と機械までの距離や方向の位置関係を算出し、位置関係と作業機械の掘削や旋回等の姿勢変更の動作から障害物の接触危険度レベルを算出して、接触危険度レベルからレベルを決定し、危険度に応じた警報内容をモニタや音声等の出力装置へ出力する。
特許文献2に記載の周囲監視装置では、カメラが撮影したシーンを用いて画像処理を行い、掘削作業中の障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)を検出すると、ミリ波レーダにより検出した障害物の距離データを統合(フュージョン)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-157497号公報
【文献】特開2010-198519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、車両に接近する人への距離を測定するために、特許文献1に記載の周囲監視装置では、ステレオカメラを用いており、特許文献2に記載の周囲監視装置では、ミリ波レーダを用いている。特許文献1,2に記載の従来の人接近検出装置では、このようなステレオカメラやミリ波レーダのような特殊な装置を用いているため、装置が複雑化してコストが嵩むため、普及を阻害してしまう。
【0007】
そこで本発明は、人の接近を、コストを抑えた簡単な構成で検出することを可能とする人接近検出装置および人接近検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人接近検出装置は、監視方向の撮影画像を出力するカメラと、前記カメラからの撮影画像を処理して人の接近を検出する制御部と、前記制御部からの接近通知を報知する報知部とを備え、前記制御部は、前記撮影画像から人画像を検出する検出部と、前記人画像の骨格を推定して、前記人画像に仮想骨格を対応付ける推定部と、前記仮想骨格の一部の長さを測る測定部と、前記一部の仮想骨格の長さが閾値を超えたときに前記接近通知を前記報知部に出力する判定部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の人接近検出方法は、監視方向の撮影画像を出力するカメラと、前記カメラからの撮影画像を処理して人の接近を検出する制御部と、前記制御部からの接近通知を報知する報知部とを備えた人接近検出装置の人接近検出方法であって、前記制御部により、前記撮影画像から人画像を検出し、前記人画像の骨格を推定して、前記人画像に対応付けた仮想骨格の一部の長さを測り、前記一部の仮想骨格の長さが閾値を超えたときに前記接近通知を前記報知部に出力することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、カメラからの撮影画像から人画像を検出し、人画像に仮想骨格を対応付け、この仮想骨格の一部の長さを測定して閾値と比較することで、人が接近し過ぎているか否かが判定できる。そのため、特殊なカメラを使用したり、レーダを使用したりしなくても、人までの距離を測定することができる。
【0011】
前記測定部は、前記仮想骨格の一部の長さとして肩幅を測定するものとすることができる。測定部が仮想骨格の一部として肩幅の長さにより人の接近位置を判定することで、身長差があっても肩幅の違いは小さいため、体格の違いによる人の位置の誤差を抑えることができる。
【0012】
前記測定部は、前記肩幅が前記閾値以下と前記判定部が判定したときに、肩から腰までの長さを測定し、前記判定部は、前記肩から腰までの長さが閾値を超えたときに接近通知を出力するものとすることができる。人が斜め横向きになって見掛け上の肩幅が小さく見えても、判定部が肩から腰までの長さにより人の接近位置を判定することで、斜め横向きになった人の接近も検出することができる。
【0013】
前記判定部は、前記肩から腰までの長さとして、右肩から右腰の長さまたは左肩から左腰の長さのいずれか一方が閾値以下であるとき、他方を閾値と比較して接近通知の出力を決定するものとすることができる。監視対象の人が真横を向いて右肩から右腰の長さまたは左肩から左腰の長さのいずれか一方が測定できない状況であっても、他方を測定して判定することで、横向きで接近する人であっても接近を検出することができる。
【0014】
前記カメラは、車両における屋根の後端部に、後方の斜め下方を向けて配置されたものとすることができる。夕日や朝日が人と重なる位置に写り込むことによって人の輪郭を誤認することを低減することができる。
【0015】
前記閾値を選択的に指示する設定部を備えたものとすることができる。設定部が閾値を選択的に判定部に指示するため、車両周囲の状況に応じて警告距離を選択することができる。
【0016】
前記判定部が前記接近通知を出力するときに、車両に停止通知を出力する停止指示部を備えたものとすることができる。停止指示部が、車両の制動部に停止通知を出力することにより、人の接近で車両を停止させることができるので、人との接触を事前に回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、特殊なカメラを使用したり、レーダを使用したりしなくても、人までの距離を測定することができるので、人の接近を、コストを抑えた簡単な構成で検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る人接近検出装置を示す図である。
【
図2】
図1に示す人接近検出装置の構成を説明するための図である。
【
図3】記憶部に格納された人定義データの各ポイントを示す図であり。
【
図4】
図1に示す人接近検出装置の人接近検出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1に示す人接近検出装置のカメラからの撮影画像の一例の図であり、(A)は人画像が含まれた撮影画像の一例の図、(B)は人画像に仮想骨格を重畳した一例の図、(C)は人が接近した状態の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る人接近検出装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すように人接近検出装置10は、作業車両(車両)の一例であるフォークリフトFに装着され、フォークリフトFの後方から接近する監視対象となる人を検知するものである。
図2に示すように、人接近検出装置10は、監視方向(後方)の撮影画像を出力するカメラ20と、カメラ20からの撮影画像を処理して人の接近を検出する本体部100と、本体部100からの接近通知を報知する報知部40とを備えている。
【0020】
カメラ20は、撮影画像を動画として出力する単眼カメラである。カメラ20は、操作者の視界から外れるフォークリフトFの後方を監視するために、シートF1の上方に位置するヘッドガードF2(屋根)の後端部に設置され、後方の斜め下方を向いている。カメラ20は、例えば、安価で汎用性があるUSBカメラとすることができる。本実施の形態では、カメラ20として、140°の広角レンズを有しており、約200万画素(1920ピクセル×1080ピクセル)の撮影画像を出力できるものを使用している。
【0021】
本体部100は、ヘッドガードF2の裏面に磁石により設置されているが、操作に支障がなければ、シートF1周辺やハンドルF3周辺、フォークリフトFの後端部でもよい。
図2に示すように、本体部100は、制御部30と、電源部50とを備えている。
制御部30は、検出部31と、推定部32と、測定部33と、判定部34と、設定部35と、記憶部36と、停止指示部37とを備えている。
【0022】
検出部31は、カメラ20から入力した撮影画像から記憶部36に格納された人定義データのデータベースを参照して人画像を検出する。検出部31は、制御部30に形成されたUSBポートを介してカメラ20と有線にて接続されているが、例えば、WIFI(登録商標)などの無線により接続することができる。制御部30とカメラ20とがUSBにより接続されていれば信号を送受信できるだけでなく、電源が制御部30から供給できるので、カメラ20に電源線を別途配線する必要がない。
【0023】
推定部32は、検出した人画像から骨格を推定して人画像に仮想骨格を対応付ける。推定部32による仮想骨格の対応付けにより、撮影画像に仮想骨格が重畳される。
測定部33は、仮想骨格の一部の長さを測る。本実施の形態では、仮想骨格の一部の長さとして、肩幅や、肩から腰までの長さを測定する。
判定部34は、設定部35から読み込んだ値に応じた閾値に基づいて、一部の骨格の長さが超えたときに、人が警告距離L1(
図1参照)より近いことから接近通知を報知部40に出力する。閾値は、車両から人までの警告距離L1について、約3m用、約4m用、約5m用の3種類が準備されている。なお、この距離は、カメラ20が撮影できる距離であれば、適宜決定することができる。
【0024】
設定部35は、判定部34が判定に使用する閾値を選択するための設定値を出力する。設定部35は、設定値に対応する設定距離として約3m、約4m、約5mの3つの状態が選択できる3接点のスライドスイッチとしているが、他のスイッチとしてもよい。また、設定部35は、外部からデータが書き込めるフラッシュメモリとすることも可能である。
【0025】
記憶部36には、様々な姿勢の人定義データがデータベース化されて格納されている。この人定義データは、
図3に示すように、右目P11、左目P12,右耳P21、左耳P22、鼻P3、右肩P41、左肩P42、右肘P51、左肘P52、右手P61、左手P62、右腰P71、左腰P72、右膝P81、左膝P82、右足P91、左足P92の合計17ポイントが定義されている。
【0026】
停止指示部37は、判定部34が接近通知を出力するときに、フォークリフトFに停止通知を出力する。この機能は、制御部30の設定により有効と無効とが選択でき、フォークリフトF側でも選択可能とすることができる。
【0027】
報知部40は、制御部30からの接近通知を車両の操作者に報知する。報知部40は、音の鳴動や光の点灯により、周囲に報知するものとすることができ、本実施の形態では、報知部40は、フォークリフトF(
図1参照)に取り付けられた第1報知部41と、制御部30内に内蔵された第2報知部42とを備えている。
【0028】
第1報知部41は、フォークリフトFのヘッドガードF2を支持する支柱F4であり、前側の支柱F4に取り付けられた回転灯(警告灯)とすることができる。第1報知部41として機能する回転灯は、底面に設けられた磁石により支柱F4に直接設置することができるが、ステイにより間接的に取り付けるようにしてもよい。第2報知部42は、放音するスピーカーとすることができる。
【0029】
電源部50は、フォークリフトFの電源となるバッテリからの12Vを制御部30で使用される5Vへ降圧するDC-DCコンバータである。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る人接近検出装置10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
まず、カメラ20は、作業車であるフォークリフトFの後方を撮影した撮影画像を制御部30へ出力する(
図4のステップS10参照)。例えば、
図5(A)に示すような撮影画像C1がカメラ20から出力される。この撮影画像C1には背景の中に人が人画像Mとして含まれている。
【0031】
カメラ20からの撮影画像を入力した、
図2に示す制御部30は、検出部31が記憶部36のデータベースを参照して、データベースに含まれる人定義データのパターンにマッチした人画像が撮影画像に含まれているか否かを判定する。
この判定は、撮影画像からキーポイントが検出された場合、正確を示す信頼度をスコアとして0.0~1.0を割り当て、スコアが0.6以上のとき、撮影画像の検出座標を人体として推定する。
【0032】
そして、カメラ20からの撮影画像に含まれていると推定すれば、検出部31は、人画像を検出したことを推定部32に通知する(ステップS20参照)。
【0033】
次に、推定部32は、
図5(B)に示すように、撮影画像C2の人画像Mに、人型を模した仮想線として仮想骨格Bを対応付ける(ステップS30参照)。
ここで、仮想骨格Bの形状について詳細に説明する。
図6に示すように、仮想骨格Bは、頭部B
Hと、肩部B
Sと、右腕部B
ARと、左腕部B
ALと、右上半身部B
URと、左上半身部B
ULと、右脚部B
LRと、左脚部B
LLとから形成されている。
【0034】
頭部BHは、右耳P21と、右目P11と、鼻P3と、左目P12と、左耳P22とを結ぶ仮想線である。肩部BSは、右肩P41と左肩P42とを結ぶ仮想線である。右腕部BARは、右肩P41から右肘P51と右手P61とを結ぶ仮想線である。左腕部BALは、左肩P42から左肘P52と、左手P62とを結ぶ仮想線である。右上半身部BURは、右肩P41と右腰P71とを結ぶ仮想線である。左上半身部BULは、左肩P42と左腰P72とを結ぶ仮想線である。右脚部BLRは、右腰P71から右膝P81と、右足P91とを結ぶ仮想線である。左脚部BLLは、左腰P72から左膝P82と左足P92とを結ぶ仮想線である。
【0035】
次に、
図2に示す測定部33は、肩幅の長さを測定する(ステップS40参照)。肩幅の長さは、
図6に示す画像に含まれる仮想骨格Bにおける肩部B
Sの長さとして肩幅のピクセル数をカウントすることにより測定することができる。測定部33による測定された肩幅の長さは、判定部34(
図2参照)に出力される。
【0036】
判定部34では、まず、設定部35からの設定値(設定距離)を読み込む。判定部34は、設定値に基づいて肩幅の長さ用の閾値(第1閾値)を決定する。例えば、撮影画像が1920ピクセル×1080ピクセルで、設定部35の設定距離が3mを示すものであれば第1閾値を40ピクセル、設定距離4mを示すものであれば第1閾値を31ピクセル、設定距離5mを示すものであれば第1閾値を25ピクセルとすることができる。本実施の形態では、4mに設定されているものとする。
【0037】
次に、判定部34は、
図7に示す肩幅LS2の長さと第1閾値とを比較する(ステップS50参照)。例えば、
図5(C)に示す撮影画像C3に写る腰を落とした低い姿勢の人が、
図5(B)に示す撮影画像C2より接近した位置であったとする。
このとき、肩幅の長さが第1閾値より大きいと判定された場合には、フォークリフトFの後方に位置する人の距離(検出距離)が、警告距離L1の4mより近い状態であることを示している。従って、判定部34は、第1報知部41および第2報知部42に接近通知を出力する。
【0038】
第1報知部41では、光により操作者に報知する。第1報知部41としての回転灯が前側の支柱F4に設置されていることで、前方を向く操作者の視界に第1報知部41が入るため、前方を向く操作者であっても、後方からの人の接近を気付かせることができる。
また、第2報知部42では、音(警告音)により操作者に報知する。また、制御部30から警告音が放音されることで、後方から接近する人にも警告音により接近が危険であることを認知させることができる(ステップS60参照)。
【0039】
また、判定部34から接近通知を入力した停止指示部37は、フォークリフトFが受信可能な信号に電気レベルを合わせ、増幅した停止通知を出力する。
そうすることで、フォークリフトFでは、停止通知を受信すると、制動部が制動が掛け停止させたり、エンジンを停止させたりすることができる。
【0040】
例えば、
図7に示すように、肩幅(肩部B
Sの長さ(
図6参照))がLS1であった場合には、判定部34は、肩幅LS1と第1閾値とを比較し、肩幅の長さLS1が第1閾値以下と判定したとする(ステップS50での判定参照)。
図7に示す例では、人が警告距離L1より遠い距離L2の位置にいるため問題は無いが、人が横向きになって、見掛けの肩幅が短く見えている可能性がある。
【0041】
その場合には、
図2に示す判定部34からの通知により測定部33は、仮想骨格に基づいて肩から腰までの長さを測定する。
まず、測定部33は、
図6に示す右上半身部B
URの長さにより、右側の肩から腰までの長さを測定する(ステップS70参照)。そして、判定部34は、設定値に基づいて肩から腰までの長さ用の閾値(第2閾値)を決定する。例えば、設定部35が設定距離3mを示すものであれば第2閾値を60ピクセル、設定距離4mを示すものであれば第2閾値を50ピクセル、設定距離5mを示すものであれば第2閾値を40ピクセルとすることができる。
【0042】
次に、判定部34は、右側の肩から腰(右側の上半身)までの長さと第2閾値とを比較する(ステップS80参照)。
右側の上半身の長さが第2閾値より大きいと判定された場合には、フォークリフトFの後方に位置する人が警告距離L1(
図1および
図7参照)以内であることを示している。従って、
図2に示す判定部34は、第1報知部41および第2報知部42に接近通知を出力する。この接近通知により報知部40は、肩幅により接近を検出したときと同様に報知する(ステップS60参照)。
【0043】
判定部34は、右側の上半身の長さと第2閾値とを比較して、右側の上半身の長さが第2閾値以下であると判定した場合には、フォークリフトFの後方に位置する人が警告距離L1以上であることを示している。
【0044】
そこで、測定部33は、次に、
図6に示す左上半身部B
ULの長さにより、左側の肩から腰までの長さを測定し(ステップS90参照)、判定部34は、左側の肩から腰(左側の上半身)までの長さと第2閾値とを比較する(ステップS100参照)。
このように、一方側の上半身の長さを判定した後に、他方側の上半身の長さを第2閾値と比較して判定することで、接近通知の出力を決定しているので、フォークリフトFの後方に位置する人が横を向いて、一方側の上半身の長さが測定できなくても、他方側の上半身の長さにて、人の接近を判定することができる。なお、本実施の形態では、右側の上半身を判定し、次に、左側の上半身を判定しているが、左側の上半身を判定した後に、右側の上半身を判定してもよい。
【0045】
このようにして制御部30は、1回の処理を終了して、最初のステップS10からステップS100までを繰り返す。
【0046】
以上のように、本発明の実施の形態に係る人接近検出装置10は、カメラ20からの撮影画像から検出部31が人画像を検出し、人画像に仮想骨格を対応付け、この仮想骨格の一部の長さを測定して閾値(第1閾値,第2閾値)と比較することで、人の位置がフォークリフトFに接近し過ぎているか否かが判定できる。そのため、特殊なカメラを使用したり、レーダを使用したりしなくても、人までの距離を測定することができる。従って、人接近検出装置10は、人の接近を、簡単な構成で検出することで、安全性の向上を図りつつ、コストを抑えることができる。
【0047】
また、判定部34が、仮想骨格における肩幅の長さにより人の接近位置を判定することで、身長差があっても肩幅の違いは小さいため、体格の違いによる人の位置の誤差を抑えることができる。
【0048】
更に、人が横向きになって見掛け上の肩幅が小さく見えても、判定部34が上半身の長さ(肩から腰までの長さ)により人の接近位置を判定することで、斜め横向きになった人の接近も検出することができる。また、判定を上半身の長さとすることで、全身の長さ(身長)とするより体格の違いによる人の位置の誤差を抑えることができる。また、上半身であれば、脚を曲げた状態で人の高さが低くなった状態でも、その影響を排除することができる。
【0049】
図1に示すようにカメラ20は、フォークリフトFにおけるヘッドガードF2の後端部に、後方の斜め下方を向けて配置されているため、夕日や朝日が人と重なる位置に写り込むことによって人の輪郭を誤認することを低減することができる。また、フォークリフトには、車体後部にはカウンタウェイトが出っ張っているため、カウンタウェイトの近傍は運転席からは死角になり、カメラ20をカウンタウェイトの後端部に設置したとしても検出できない範囲ができるおそれがある。カメラ20を、ヘッドガードF2の後端部に設置することで、カウンタウェイトによる死角を減らすことができる。
【0050】
設定部35は、閾値(第1閾値および第2閾値)を3m、4m、5mと、選択的に判定部34に指示するため、作業場(フォークリフトFの周囲)の状況に応じて警告距離を選択することができる。
【0051】
本実施の形態では、警告距離L1より人が接近すると報知部40が報知するようにしているが、警告距離を段階的に設定するようにしてもよい。例えば、5m、4m、3mのように人が近づく距離に応じて報知部40が段階的に報知する。このとき報知部40による放音の種類や、光の色などを変えると、接近距離を容易に把握することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、車両として作業車両、特に、フォークリフトを例に説明したが、本発明は、クレーン車やシャベルカー、トラックなどの他の作業車両でもよく、普通自動車でも採用できる。
【0053】
また、操作者の視界から外れやすい後方を監視方向としているが、前方や側方を合わせて監視方向としてカメラを設置するようにしてもよい。この場合、複数台のカメラを周囲に向けて配置することになるが、その場合には、人の接近を検出した方向に応じて報知部により放音の種類を変えることで、検出方向を識別できるようにしてもよい。
【0054】
また、本発明は、移動する車両に限らず、カメラを固定設置して、この位置への人の接近の検出にも利用することができる。例えば、建物や造形物の周囲領域への無断な侵入など防犯にも活用することができる。なお、人の接近を検出して遠隔地に所在する管理者に報知するときには、報知部は、音や光でなく、電子通信回線の一例であるインターネットを通じてメッセージを送信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、人の接近が検出でき、報知部により人の接近を報知することができるため、人との接触を回避したり、人の無用な侵入を防止したりすることが必要なところに有効に設置できる。
【符号の説明】
【0056】
10 人接近検出装置
20 カメラ
30 制御部
31 検出部
32 推定部
33 測定部
34 判定部
35 設定部
36 記憶部
37 停止指示部
40 報知部
41 第1報知部
42 第2報知部
50 電源部
100 本体部
F フォークリフト
F1 シート
F2 ヘッドガード
F3 ハンドル
F4 支柱
C1,C2,C3 撮影画像
M 人画像
P11 右目
P12 左目
P21 右耳
P22 左耳
P3 鼻
P41 右肩
P42 左肩
P51 右肘
P52 左肘
P61 右手
P62 左手
P71 右腰
P72 左腰
P81 右膝
P82 左膝
P91 右足
P92 左足
B 仮想骨格
BH 頭部
BS 肩部
BAR 右腕部
BAL 左腕部
BUR 右上半身部
BUL 左上半身部
BLR 右脚部
BLL 左脚部
L1 警告距離
L2 距離
LS1,LS2 肩幅