IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レモネックス インコーポレイテッドの特許一覧

特許7152054黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品
<>
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図1
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図2
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図3
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図4
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図5
  • 特許-黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20221004BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221004BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/61
A61P27/02
A23L33/105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020573313
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2019008418
(87)【国際公開番号】W WO2020013571
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0079302
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】Seoul National University,1,Gwanak-ro,Gwanak-gu,Seoul,08826,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/116013(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107412465(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104824675(CN,A)
【文献】CaTalk,2017年12月05日,http://catalk.kr/food/guava-leaves.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/61
A61K 36/185
A61P 27/02
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナバ葉の、水またはC~Cアルコールのうちの少なくとも一つの溶媒によって抽出されたエキスを含む黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記エキスは、メタノールまたはエタノールのうちの少なくとも一つを含む溶媒によって抽出されたエキスである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、アバ葉の、水またはC~Cアルコールのうちの少なくとも一つの溶媒によって抽出されたエキスをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
バナバ葉の、水またはC~Cアルコールのうちの少なくとも一つの溶媒によって抽出されたエキスを含む黄斑変性の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項5】
前記エキスは、メタノールまたはエタノールのうちの少なくとも一つを含む溶媒によって抽出されたエキスである請求項4に記載の健康機能食品。
【請求項6】
前記健康機能食品は、アバ葉エキスをさらに含む請求項に記載の健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物、予防または改善用の健康機能食品に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜の中心部に位置する神経組織を黄斑と言う。この部位は、視細胞が非常に密集しており、物体の像が結ばれる場所で、中心視力を担当するとともに視野の鮮明度と精度に貢献する。黄斑は老化、紫外線や青色光による損傷、遺伝的要因、基礎疾患(糖尿病、脂質異常症、高コレステロール症)、毒性および炎症などの原因により変性が起こり、視力障害を引き起こすことがあるが、これを黄斑変性という。黄斑変性は、白内障、緑内障、糖尿病網膜症とともに失明の主要な原因の一つである。黄斑に変性が生じると、初期には中心視力が損傷を受けて視野の真ん中がぼやけて見えたり、ゆがんで見えたりする現象が起こり、重症化すると失明にまでつながる。
【0003】
黄斑変性は、乾性(非滲出性)黄斑変性と湿性(滲出性)黄斑変性の2つのタイプに大別されるが、乾性黄斑変性が黄斑変性症の全症例の約90%を占める。乾性黄斑変性は、網膜色素上皮(retinal pigment epithelium)とブルッフ膜(Bruch's membrane)の間にドルーゼン(drusen)という老廃物が蓄積し、黄斑部の組織が萎縮したり、薄くなることを特徴とする。一方、患者数の約10%を占める湿性黄斑変性は、黄斑部に正常な血液と栄養素が供給されず、異常な新生血管が形成され、破裂した血管から黄斑に血液や粘液が漏れ出して、深刻な視力喪失を引き起こす。乾性黄斑変性の初期は自覚症状がないか、又は症状があっても老眼のせいと考えて放置しがちである。しかし、乾性黄斑変性を進行抑制又は治療しないと、継続的な網膜の損傷によって視力喪失に至ることがあり、湿性黄斑変性に進行して失明にまで至る可能性があるため、初期に乾性黄斑変性を予防することが重要である。
【0004】
乾性黄斑変性の主要なメカニズムは正確に知られていないが、様々な要因が影響を与える。網膜色素上皮細胞の正常な機能の消失が主な発症原因と考えられている。網膜上皮細胞は、一般的に光受容体細胞(photoreceptor cell)の外側セグメント(Outer segment)部分を摂食(phagocytosis)して分解する役割を果たしており、その他にも、網膜内のストレス調節と恒常性に関与する細胞である。光受容体細胞と網膜上皮細胞は視覚回路プロセスを経るが、このプロセスで、副産物の色素成分であるA2E(N-retinyl-N-retinylidene ethanolamine)と、脂質とタンパク質の混合物であるリポフスチン(lipofuscin)が形成される。網膜色素上皮細胞は、摂食過程によりA2Eとリポフスチンを蓄積させ、このうち、A2Eは細胞内で容易に排出されずに蓄積される。高濃度のA2Eは、網膜色素上皮細胞の死滅に関与する主な原因となる。また、A2Eは、低濃度でも紫外線や青色光に光酸化反応を起こし、エポキシド(epoxide)形態であるパーオキシ-A2E(peroxy-A2E)とフラノ-A2E(furano-A2E)に変化することになる。反応性が高いエポキシド形態のA2Eは酸化的ストレスと炎症反応を起こし、ミトコンドリアのタンパク質の活性を変化させて細胞死滅を誘導する。その結果、網膜色素上皮細胞の正常な機能が消失すると、光受容体細胞の2次的な死滅につながる。特に、光受容体細胞が多く密集している黄斑の場合には、深刻な損傷を受けて黄斑変性が起こってしまうことになる。
【0005】
一方、グアバ(Psidium guajava)はフトモモ科に属する植物で、主に亜熱帯地方で分布し、高さ3~7mの灌木である。グアバは、インド、南メキシコ、南アメリカなどの熱帯から亜熱帯地域にわたって広く分布している。グアバ葉はポリフェノールを多く含んでおり、糖尿病、心血管系疾患、がん、感染症疾患などに効能があると知られている。
【0006】
バナバ(Lagerstroemia speciosa)は、ミソハギ科に属する落葉性の熱帯植物で、根と葉が食用とされている。バナバは、インド、中国南部、ミャンマー、フィリピンなどの熱帯から亜熱帯地域にわたって広く分布している。葉は楕円形であり、長さは18cm、幅は6cm程度であり、コロソリン酸(Corosolic acid)が多量に含まれている。バナバ葉は糖尿病、肥満、感染症疾患、がん、抗酸化、抗炎症などに効能があると知られている。
【0007】
そこで、本発明者らは、長期間使用されてきた人体に安全な天然物を使用して黄斑変性の治療剤を開発していた中、グアバ葉とバナバ葉のエキスが青色光によるA2Eの光酸化を抑制し、青色光誘導網膜色素上皮細胞の死滅を抑制し、また青色光誘導黄斑変性の動物モデルでの視細胞外核層の損傷を抑制することを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物、予防または改善用の健康機能食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.バナバ葉エキス又はグアバ葉エキスを含む黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物。
【0010】
2.前記項目1において、
前記エキスの抽出溶媒は、水又はC~Cアルコールのうちの少なくとも一つを含むものである組成物。
【0011】
3.前記項目1において、
前記エキスの抽出溶媒は、メタノール又はエタノールのうちの少なくとも一つを含むものである組成物。
【0012】
4.前記項目1において、
前記組成物は、バナバ葉エキス及びグアバ葉エキスを含む組成物。
【0013】
5.バナバ葉エキス又はグアバ葉エキスを含む黄斑変性の予防または改善用の健康機能食品。
【0014】
6.前記項目5において、
前記エキスの抽出溶媒は、水またはC~Cアルコールのうちの少なくとも一つを含むものである健康機能食品。
【0015】
7.前記項目5において、
前記エキスの抽出溶媒は、メタノール又はエタノールのうちの少なくとも一つを含むものである健康機能食品。
【0016】
8.前記項目5において、
前記健康機能食品は、バナバ葉エキス及びグアバ葉エキスを含む健康機能食品。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエキスは、青色光によるA2Eの光酸化を抑制し、青色光によって誘導された網膜色素上皮細胞の死滅を抑制し、また青色光誘導黄斑変性の動物モデルでの視細胞外核層の損傷を抑制することにより、黄斑変性の予防または治療用の組成物および予防または改善用の健康機能食品として有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、グアバ葉、バナバ葉及びそれらの混合物における青色光によるA2E光酸化抑制効果を時間帯(分)ごとに示す図である。
図2図2は、グアバ葉、バナバ葉及びそれらの混合物における青色光によるA2E光酸化抑制効果を特定の時間帯(3分)で示す図である。
図3図3は、グアバ葉、バナバ葉、それらの混合物及びルテインにおける網膜色素上皮細胞死滅の抑制効果を示す図である(###:vs対照群(P<0.001)、a:vs青色光照射群(P<0.001)、b:vs混合物(P<0.001)、c:vsルテイン(P<0.05))。
図4図4は、グアバ葉、バナバ葉及びそれらの混合物の黄斑変性の予防および治療効果を確認するための動物実験日程を示す図である。
図5図5は、青色光誘導黄斑変性の動物モデルでのグアバ葉、バナバ葉、それらの混合物及びルテインの視細胞外核層(ONL)の損傷抑制効果を示す図である。
図6図6は、青色光誘導黄斑変性の動物モデルでのグアバ葉、バナバ葉、それらの混合物及びルテインの視細胞外核層(ONL)の損傷抑制効果を定量的に示す図である(###:vs対照群(P<0.001)、a:vs青色光照射群(P<0.001)、b:vs混合物(P<0.01)、c:vsルテイン(P<0.05))。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、バナバ葉エキス又はグアバ葉エキスを含む黄斑変性の予防または治療用の薬学的組成物および健康機能食品を提供するものである。
【0021】
前記黄斑変性は、乾性黄斑変性と湿性黄斑変性の両方を含む。
【0022】
前記のバナバ葉またはグアバ葉を抽出する方法は、特に制限されず、当該技術分野で通常使用される方法であってもよい。前記抽出方法としては、例えば、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法などが挙げられる。前記抽出方法は、単独で行ってもよく、2種以上の方法を併用して行ってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記のバナバ葉またはグアバ葉の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、当該技術分野で通常使用される溶媒を用いることができる。前記抽出に使用される水溶性溶媒は、例えば、水、C~Cアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種または2種以上の混合溶媒を含むものであってもよい。
【0024】
前記のバナバ葉またはグアバ葉のエキスは、例えば、組成物に対して10~90重量部であってもよいが、好ましくは25~75重量部であってもよい。
【0025】
前記のバナバ葉またはグアバ葉のエキスは、黄斑変性の予防または治療に優れた効果を示す。より具体的には、前記のバナバ葉またはグアバ葉のエキスは、青色光によるA2Eの光酸化を抑制し、青色光によって誘導された網膜色素上皮細胞の死滅を抑制し、また青色光誘導黄斑変性の動物モデルでの視細胞外核層の損傷を抑制することにより、黄斑変性の予防または治療用に使用することができる。
【0026】
前記組成物は、バナバ葉エキス又はグアバ葉エキスを単独で含んでいてもよいが、黄斑変性の予防または治療に相乗効果を得る側面から、好ましくは、各々を互いに適切な比率で混合した混合物を含んでいてもよい。
【0027】
前記混合物におけるバナバ葉エキス又はグアバ葉エキスのそれぞれの重量比は、例えば1:1/3~3であってもよいが、好ましくは1:0.5~2であってもよい。
【0028】
前記エキスを含む予防または治療用の薬学的組成物において、前記「治療」とは、前記エキス又はそれを含む組成物の投与によって黄斑変性の症状を好転させたり、有利に変更させたりするあらゆる行為を意味する。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などにより提示される資料を参照して、本発明のエキス又は組成物が効く疾患の正確な基準を理解し、改善、向上及び治療の程度を判断できるだろう。
【0029】
また、前記「予防」とは、前記エキス又はそれを含む組成物の投与によって黄斑変性の発症を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。黄斑変性に治療効果がある本発明のエキス又は組成物は、初期症状または症状が示される前に服用した場合にこれらの疾患を予防できることは、当業者に自明であろう。
【0030】
本発明の組成物は、同時または連続して投与可能であり、それらの混合物を単独で又は黄斑変性の治療のための他の薬学的な活性成分と併用して投与することができる。
【0031】
本発明の組成物は、薬学組成物の調製に通常使用される適切な担体、希釈剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、溶解剤、甘味剤、着色剤、浸透圧調整剤、酸化防止剤などの賦形剤をさらに含んでいてもよい。具体的には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0032】
本発明の組成物の投与方法は剤形によって容易に選択でき、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与することができる。例えば、散剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質または軟質のカプセル剤、液、エマルション、懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液などの形態に製形化して全身または局所的に経口または非経口投与してもよく、特に経口投与が好ましい。
【0033】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれる。これらの固形製剤は、本発明の組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース又はゼラチンなどを混合して調製される。また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、広く用いられる単純希釈剤である水、液体パラフィンの他に、種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。
【0034】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどを用いることができる。
【0035】
さらに、本発明の組成物を含む薬学組成物は、当該技術分野に公知の適切な方法、又はレミントンの文献(Remington's Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を用いて、好適に製剤化することができる。
【0036】
本発明の組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が異なり、様々な条件によって変動可能である。投与回数は所望の範囲内で1日につき1回、または数回に分けて投与してもよく、投与期間も特に限定されない。また、本発明の組成物は、そのまま経口投与すること以外、任意の飲食物に添加して日常的に摂取することもできる。このとき、添加される組成物の含有量は目的によって決定されてもよく、一般的には食品の全重量の0.01~90重量部であってもよい。
【0037】
前記エキスを含む黄斑変性の予防または治療用の健康機能食品の形態および種類は、特に制限されないが、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態で製造及び加工することができる。
【0038】
本発明で「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号の規定による人体に有用な機能性を持った原料や成分を用いて製造及び加工した食品をいい、人体の構造および機能に対して栄養素を調整したり、生理学的作用などの保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0039】
本発明の健康機能食品は、通常の食品添加物を含んでもよく、食品添加物としての適否は他の規定がない限り、食品医薬品安全庁により承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などにより、当該品目に係わる規格及び基準によって判定する。
【0040】
前記食品添加物公典に収載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カルシウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成物;柿色素、甘草エキス、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物;L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
例えば、錠剤形態の健康機能食品は、前記ペプチドを賦形剤、結合剤、崩壊剤および他の添加剤と混合した混合物を通常の方法で顆粒化した後、滑沢剤などを入れて圧縮成形するか、または前記混合物を直接圧縮成形することができる。また、前記錠剤形態の健康機能食品は、必要に応じて矯味剤などを含有してもよい。
【0042】
カプセル形態の健康機能食品のうち、硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルに前記ペプチドを賦形剤などの添加剤と混合した混合物を充填して製造することができる。また、軟質カプセル剤は、前記ペプチドを賦形剤などの添加剤と混合した混合物をゼラチンのようなカプセル基剤に充填して製造することができる。前記軟質カプセル剤は、必要に応じてグリセリン又はソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有してもよい。
【0043】
丸剤形態の健康機能食品は、前記ペプチドと賦形剤、結合剤、崩壊剤などを混合した混合物を、従来の公知の方法で成形して調製することができる。必要に応じて白糖や他のコーティング剤でコーティングしてもよく、澱粉、タルクのような物質で表面をコーティングしてもよい。
【0044】
顆粒形態の健康機能食品は、前記ペプチドと賦形剤、結合剤、崩壊剤などを混合した混合物を、従来の公知の方法で粒状に製造することができ、必要に応じて着香剤、矯味剤などを含有してもよい。
【0045】
前記健康機能食品は、飲料類、肉類、チョコレート、食品類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、キャンデー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、複合ビタミン剤および健康補助食品類などであってもよい。
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明することとする。
【0047】
実施例1.各エキス及びそれらの混合物の製造
1.グアバ葉エキスの製造
乾燥されたグアバ葉の粉末(100%、インド産)はPHYTOTECH EXTRACTS PVT LTDから購入した。乾燥された粉末は、100℃の蒸留水に100g/1Lの割合で2時間抽出した。抽出された濃縮液はフィルタリングし、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、凍結乾燥して本発明のグアバ葉エキスを製造した。
【0048】
2.バナバ葉エキスの製造
乾燥されたバナバ葉の粉末(100%、インドネシア産)は、サンボ食品社から購入した。乾燥された粉末は、100g/1Lの割合で酒精抽出した。抽出された濃縮液はフィルタリングし、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、凍結乾燥して本発明のバナバ葉エキスを製造した。
【0049】
3.前記エキスの混合物の製造
前記のグアバ葉エキスとバナバ葉エキスを1:1の重量比で混合して混合物を得た。
実施例2.各エキス及びそれらの混合物の青色光に対するA2E光酸化抑制能の分析
1.各エキス及び混合物の青色光に対するA2E光酸化抑制能の分析
(1)実験方法
A2E(100μM最終濃度)100μLを96-ウェルプレートに加えた後、前記プレートの溶液に、対照群(control)またはグアバ葉エキス、バナバ葉エキス、混合物(最終濃度50、100μg/ml)を蒸留水に溶かし、それぞれ100μLずつ添加した。
【0050】
また、エキス自体の吸光度を補正するために、PBS(phosphate buffered saline)を100μL添加した後、グアバ葉エキス、バナバ葉エキス、混合物(最終濃度50、100μg/ml)をそれぞれ100μLずつ添加した。その後、ELISAマイクロプレートリーダーを用いて430nmの波長(A2E吸光波長)における吸光度を測定した。その後、青色光(4,000lux)を30秒、1分、3分、5分、8分、12分間照射した後、吸光度を測定した。測定された吸光度の値からサンプルの固有の吸光度の値を差し引いた後、A2E標準曲線を用いて濃度を計算した。
【0051】
(2)実験結果
図1を参照すると、サンプルを処理していない対照群(CTL)は、青色光を照射した時間によってA2Eが酸化され、酸化されていないA2Eの量が1分代では約50%に減少し、3分代では約28.5%まで減少し、12分代では約12.5%まで減少したことを確認できる。これに対して、バナバ葉エキス、グアバ葉エキス、混合物を50、100μg/mlの濃度で処理した群では、対照群と比較して、A2Eの光酸化を有意に抑制する傾向を確認することができる。
【0052】
図1において、酸化されていないA2Eの量は、混合物100>グアバ葉100>混合物50>グアバ葉50≧バナバ葉100>バナバ葉50>CTLの順である。各数値は濃度(μg/ml)を示す。
【0053】
図2を参照すると、青色光を照射後、1分代におけるA2E光酸化保護効果を比較したところ、青色光を照射していない対照群と比較して、青色光を照射した群では、酸化されていないA2Eの量が約50%減少したことを確認できる。これに対して、バナバ葉、グアバ葉、混合物をそれぞれ50、100μg/mlの濃度で処理した群では、対照群と比較して、それぞれ約43%、39%、35%、30%、33%、27%減少したことを確認できる。
【0054】
実施例3.各エキス及びそれらの混合物の青色光誘導光酸化に対する網膜色素上皮細胞の保護能の分析
【0055】
1.各エキス及び混合物の青色光誘導光酸化に対する網膜色素上皮細胞の保護能の分析
(1)実験方法
A2Eが蓄積された網膜色素上皮細胞に青色光を照射すると、光酸化が起こって細胞死滅を誘発することは既に知られているところ、ARPE-19細胞に20μMのA2Eを蓄積後、青色光を照射して誘発される細胞毒性をバナバ葉、グアバ葉のエキス及び混合物が抑制できるかを確認した。
【0056】
具体的には、すべてのARPE-19細胞にA2Eを20μMの濃度で24時間処理し、前記実施例1のバナバ葉エキス、グアバ葉エキス、混合物をそれぞれ100μg/mL又はルテイン17.04μg/mL(30μM)を24時間処理した。その後、青色光(4,000lux)を10分間照射した。青色光照射から24時間後、ARPE-19細胞の細胞生存率をセルカウンティングキット(cell counting kit-8(Dojindo Labs、Japan))で測定した。青色光を照射していない対照群に対する各処理群の細胞生存率を百分率(%)で示した。ルテインは陽性対照群として用いられた。
【0057】
(2)実験結果
図3を参照すると、青色光を照射した青色光照射群の細胞生存率が、青色光を照射していない対照群と比較して有意に減少したことから(P<0.001)、細胞死滅が誘導されることを確認できる。青色光を照射していない対照群と青色光照射群との間の細胞生存率の差を100%とし、青色光照射群と処理群の差から細胞保護効果を算出して各エキスの細胞保護効果を計算した。その結果、ルテインの細胞保護効果は48.4%、バナバ葉エキスの細胞保護効果は56.7%であった。グアバ葉エキスの細胞保護効果は63.6%、混合物の細胞保護効果は75.2%であった。これは混合物、グアバ葉、バナバ葉エキス処理群が、ルテイン17.04μg/mL(30μM)処理群よりも優れた細胞保護効果を有することを示し、またグアバ葉、バナバ葉エキスの単一の保護効果よりも混合物の方がさらに優れた保護効果を有することを示している。
【0058】
実施例4.各エキス及びそれらの混合物の青色光誘導黄斑変性の抑制能の分析
1.各エキス及びそれらの混合物の青色光誘導黄斑変性の抑制能の分析
(1)実験方法
Balb-c mice(5週齢、オス)を2日間馴化飼育した後、バナバ葉、グアバ葉のエキス、混合物またはルテイン(50mg/kg)を7日間、1日1回の周期で経口投与した。その後、24時間の暗順応を経て、14日間、前記エキス、混合物及びルテインを経口投与し、30分後に青色光を10,000luxで1日1時間照射した。青色光の照射及びエキスの投与を終了した後、24時間後にマウスを犠牲にして眼球を摘出し、組織染色により網膜視細胞の保護効果を測定した(図4)。
【0059】
摘出された眼球組織は、中性緩衝ホルマリン溶液で固定した。固定された眼球は、流水で水洗した後、アルコールを用いて脱水プロセスを行った。その後、キシレン(Xylene)を用いて透明プロセスを行い、パラフィンを用いて組織の適当な強直度を付与した。眼球を一定の形状のパラフィン・ブロックとした後、4μmの厚さに削正した。削正した眼球に対して、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を行った。ヘマトキシリンを優先して処理して室温で30秒間放置した後、流水で10分間水洗した。その後、エオシンを1分間処理した。染色された臓器を顕微鏡(Olympus Optical、Tokyo、Japan)を用いて、視神経から600~900μm離れた位置を観察した。ImageJソフトウェア(National Institute of Health、Starkville、MD、USA)を用いて視細胞外核層(Outer nuclear layer)の厚さを測定し、核の数を数えた。
【0060】
(2)実験結果
図5及び図6を参照すると、視細胞外核層(outer nuclear layer、ONL)の厚さを測定したところ、青色光を照射していない対照群と比べて、青色光を照射した青色光照射群で42%程度減少し(P<0.001)、バナバ葉、グアバ葉のエキス、混合物またはルテイン投与群において青色光照射群に比べていずれも有意に増加したことを確認することができる。青色光を照射していない対照群と青色光を照射した青色光照射群との厚さの差を100%とし、青色光照射群と処理群の差から細胞外核層の保護効果を算出し、各投与群の青色光による視細胞外核層の厚さ保護効果を計算した。その結果、ルテイン投与群は28.2%、バナバ葉、グアバ葉のエキス、混合物投与群は、それぞれ39.0%、47.6%、60.9%と示された。
【0061】
これは青色光誘導黄斑変性のモデルでは、バナバ葉、グアバ葉のエキス及び混合物がルテインよりも優れたレベルに網膜視細胞の損傷を有意に回復させる効果があることを示す。また、バナバ葉、グアバ葉エキスの単一の保護効果に比べて、混合物の方がより優れた網膜視細胞の損傷保護効果を有することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6