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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】圧縮空気用異物分離除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 50/00 20220101AFI20221004BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20221004BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221004BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221004BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20221004BHJP
   B04C 3/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B01D50/00 501D
B01D50/00 501J
F04B39/16 G
B01D53/04 110
B01J20/26 A
B01J20/20 B
B04C3/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010981
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114618
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-93206(JP,A)
【文献】特開2019-214001(JP,A)
【文献】特開平9-239221(JP,A)
【文献】実公平4-46806(JP,Y2)
【文献】特開2019-832(JP,A)
【文献】特開2020-51260(JP,A)
【文献】特開2003-322084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 50/00
B01D 45/00-45/18
B01D 46/00-46/54
B01D 53/04
F04B 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去し得る異物分離除去装置であって、
中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、
側面所定箇所にソケットを介して圧縮空気を導入する導入口を備えると共に、下面所定箇所にドレン排出口を備えて、前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な下部分離槽と、
所定箇所に排気口を備えて前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、
から成り、
前記中空筒本体の中空部内には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布して所要長さ・幅・厚さの立方体形状に成形して成る油・塵埃吸着材及び活性炭が交互に積層された状態で該中空筒本体の内径の倍以上の高さを有して充填され、
前記下部分離槽には流入した圧縮空気からドレンを分離・除去するためのサイクロン方式のドレン分離装置が内蔵されていることを特徴とする圧縮空気用異物分離除去装置。
【請求項2】
前記中空筒本体の全体若しくは一部が透明であることを特徴とする請求項1に記載の異物分離除去装置。
【請求項3】
前記下部分離層におけるドレン排出口にドレントラップが備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異物分離除去装置。
【請求項4】
前記下部分離層に備えられたソケット内に空気誘導板が内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の異物分離除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気内の異物を分離・除去するための装置に関し、詳しくは、空気圧縮機が吐出する圧縮空気に含有されるドレンや窒素酸化物、オイルミストなどの異物を分離・除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気内には、オイルミストやスラッジなどの異物が含有している。従来、かかる異物を圧縮空気から分離・除去すべく、圧縮空気圧回路の所定中間箇所、特に末端箇所において、グラスファイバーや樹脂を編み込み若しくは中空糸膜により成形されたミストフィルタを使用することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、上記従来のミストフィルタによれば、油滴やスラッジにより目詰まりが発生し易いといった問題があった。また、上記従来のミストフィルタでは、圧縮空気の通過距離が短いためにオイルミストを完全に除去することができず、多量のオイルミストが残留したまま圧縮空気を吐出してしまうといった問題があった
【0004】
上記問題を解決すべく、特開2003-62417号公報(特許文献1)や特開2006-297363号公報(特許文献2)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1及び特許文献2では、夫々2つ若しくはそれ以上の円筒から構成され、外側が外部と接する外筒の内側に該外筒より小径の内筒を配置すると共に、内筒の内側と外側とが連通され、かつ、内筒または外筒のどちらか若しくは両方に油吸着材を充填して成り、長さ方向でオイルミストを吸着させる装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術提案は、長さ方向でオイルミストを分離・除去して通過距離を稼ぐものであるが、圧縮空気は流れ易いところへ集中して流れるため、使用開始直後は略垂直方向のフィルタ詰りが甘いところへより多く流れてしまって、性能が充分に発揮されないことがあり、また油吸着材の充填方法如何では、装置としての吸着量や圧力損失の概算を数値でもって制御することが難しく、経験や勘に基づき実施されるといった問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術提案は、フィルタが保持できなくなったオイルを外筒下部に貯留するものであるため、使用後相当時間の経過に伴い貯留された油でフィルタエレメントが浸油してしまって性能が著しく低下してしまうと共に、貯留した油が排気口まで巻き上げられて圧縮空気と共に吐出されてしまうといった問題があった。
【0007】
さらに、特許文献2に記載の技術提案によれば、圧縮空気を上蓋側から入気した場合に、重力と圧縮空気の圧力で下方へ落ちてきた油滴が底板と多孔板との空間部に貯留することとなって、その貯留した油が排気口から圧縮空気と共に吐出されてしまうといった問題があった。
【0008】
またさらに、特許文献2に記載の技術提案によれば、内筒の内側と外側を連通させる通路の大きさがある程度大きくても、圧縮空気は1箇所あるいは2箇所からの流入に集中することとなり、また、そもそも圧縮空気の流れを折り返す構造であるため、圧力損失が累積し易い構造であった。
【0009】
さらにまた、特許文献1及び特許文献2に記載の技術提案は、油吸着材がポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレート等から成るものであったが、それのみでは一度吸着したオイルの保持力が弱く、また、酸化したオイルミストの分離・除去効率が著しく悪いものであった。
【0010】
上記問題を解決すべく、本出願人は、先に特許第5663789号(特許文献3)に記載の技術提案を行っている。かかる技術提案によれば、圧縮空気内の異物分離、特にオゾンの分離・除去に優れた作用効果を発揮するものとして、有効な技術提案である。しかしながら、該技術提案によれば、フィルタ吸着材と活性炭とで、異物と同時に圧縮空気中に含まれるドレンも除去することとなってしまい、異物除去の性能に少なからず影響してしまうものであった。そこで、圧縮空気が吸着材等を通過する以前に、ある程度のドレンを除去することがフィルタや活性炭の劣化・性能低下を遅らせ、装置全体の機能性向上に資することとなる。
【0011】
本出願人は、以上のような従来の圧縮空気用異物分離除去装置における機能性の問題点に着目し、装置内で圧縮空気がフィルタへ送られる以前にある程度のドレンを除去することができないものかとの着想の下、圧縮空気中のドレンを除去した後に、その他の異物を分離・除去するためのフィルタ等を通過させる異物分離除去装置を開発し、本発明における「圧縮空気用異物分離除去装置」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-62417号公報
【文献】特開2006-297363号公報
【文献】特許第5663789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、圧縮空気中のドレンを除去した後に、その他の異物を分離・除去するためのフィルタ等を通過させることが可能な圧縮空気用異物分離除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去し得る異物分離除去装置であって、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、側面所定箇所にソケットを介して圧縮空気を導入する導入口を備えると共に、下面所定箇所にドレン排出口を備えて、前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な下部分離槽と、所定箇所に排気口を備えて前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、前記中空筒本体の中空部内には油・塵埃吸着材及び活性炭が交互に積層された状態で充填され、前記下部分離槽には流入した圧縮空気からドレンを分離・除去するためのサイクロン方式のドレン分離装置が内蔵された構成となっている。
【0015】
また、本発明は、前記中空筒本体の全体若しくは一部が透明である構成を採用する。なお、透明には半透明も含まれるものとする。
【0016】
さらに、本発明は、前記中空筒本体の中空部内に積層された油・塵埃吸着材及び活性炭の高さは、前記中空筒本体の内径の倍以上であることを特徴とする構成となっている。
【0017】
またさらに、本発明は、前記下部分離層におけるドレン排出口にドレントラップが備えられている構成となっている。
【0018】
さらにまた、本発明は、前記下部分離層に備えられたソケット内に空気誘導板が内蔵されている構成となっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、下部分離槽に流入した圧縮空気がサイクロン式ドレン分離装置を経由することにより、該圧縮空気が異物分離用のフィルタ(油・塵埃吸着材及び活性炭)を通過する以前に予めドレンを分離させることが可能であって、分離したドレンは下方に備えられたドレン排出口から適宜排出されることにより、中空筒本体に積層・充填された油・塵埃吸着材及び活性炭の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0020】
また、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、中空筒本体が透明に形成されているため、充填されている油・塵埃吸着材及び活性炭について、付着した異物により生じた外観変化を目視可能であって、フィルタの過度の使用等による異物分離・除去性能の低下やその他の異常等を未然に防ぐことが可能であると共に、フィルタの交換時期が確実に分かり、メンテナンス性の向上が期待できる。
【0021】
さらに、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、中空筒内部に充填される油・塵埃吸着材及び活性炭の高さの合計が中空筒の内径の2倍以上とすることにより、中空筒本体内に流入した圧縮空気における異物分離・除去の効果が最大限発揮され、且つ、油・塵埃吸着材や活性炭にて除去された異物が圧縮空気内に再度混入したとしても、排気口に至るまでの間に再度分離・除去することが可能である、といった優れた効果を奏するものである。
【0022】
またさらに、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、エアコンプレッサから吐出した圧縮空気を下部分離槽に備えられたソケットを通じ流入させる際、ソケット内に内蔵されている空気誘導板にて圧縮空気の流れを制御し、下部分離槽の内面に沿って流入させることによってサイクロン式ドレン分離装置の効果を最大限に引き出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置の実施形態を示す側断面図である。
図2】本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置における下部分離槽の実施形態を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体5と、所定箇所にソケット13及びドレン排出口11を備え且つ前記中空筒本体5の下方開口端を閉塞可能な下部分離槽4と、所定箇所に排気口15を備え且つ前記中空筒本体5の上方開口端を閉塞可能な蓋体3と、から成り、前記下部分離槽4内にはサイクロン式ドレン分離装置7が内蔵されていることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0025】
尚、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0026】
図1は、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の実施形態を示す側断図面である。また、図2は、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1における下部分離槽4の実施形態を示す平断面図である。
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、空気圧縮機(エアコンプレッサ)2から吐出された圧縮空気中のドレン等の異物を分離・除去するための装置であって、主な構成として中空筒本体5と、下部分離槽4と、蓋体3と、から構成されている。
【0027】
中空筒本体5は、上方及び下方が夫々開口した筒状体から構成されている。中空筒本体5の外形については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状のほか多角形状が考え得る。該中空筒本体5の下方の開口端には下部分離槽4が装着され、上方の開口端には蓋部3が装着される。そしてまた、中空筒本体5内には油・塵埃吸着材8及び活性炭9が積層・充填されることとなる。
【0028】
中空筒本体5の中空部内において、油・塵埃吸着材8及び活性炭9を交互に積層した状態で充填するに際し、その最下端面と最上端面にはパンチングプレート6が配設されている。該パンチングプレート6は、中空筒本体5の中空部内に略水平状に挿嵌可能な平板であって、所定径を有する通気孔が複数備えられた構成となっている。かかる通気孔は、好ましくは2mm以上6mm以下の径を有し、また、隣接する通気孔同士が少なくとも1mm以上の間隔をおいて備えられる。かかるパンチングプレート6を配設することで、複数の通気孔により圧縮空気を分流して相当数の流路を形成することが可能となって、積層・充填された油・塵埃吸着材8及び活性炭9の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0029】
かかるパンチングプレート6は、最下端面及び最上端面のほか、油・塵埃吸着材8層と活性炭9層との境界面に配設する態様も可能であり、かかる態様を採用することで、圧縮空気の分流・流路形成作用をより効果的に向上させることが可能となる。
【0030】
該中空筒本体5の材質については、特に限定はなく、金属や強化プラスチックなどが考え得る。尚、該中空筒本体5については、全体若しくは一部を透明若しくは半透明に成形することが好適であり、かかる構成とすることで、充填された油・塵埃吸着材8や活性炭9の状態(汚れや吸着の状況等)を外部から視認的に確認することが可能となる。かかる透明若しくは半透明の構成とする場合、当該構成箇所の材質については、ガラスやプラスチック等といった透過性の高いものが考え得る。
【0031】
油・塵埃吸着材8の材質については、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートといった、従来から用いられている常法のものを使用する。なお、本発明で使用する油・塵埃吸着材8として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布し、それを所要長さ・幅・厚さの立方体形状に成形したものを用いる態様を採用する。
【0032】
上記の通り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布することによって、油・塵埃吸着材8の親油性・オイル保持力を高めることが可能となる。また、油・塵埃吸着材8を立方体形状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば長さ約10mm、幅約5mm、厚さ約5mm程度の小形の直方体形状とすることが考え得る。これにより、小形の集合体であっても充分にオイルを保持することができると共に、表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。
【0033】
活性炭9については、従来から用いられている常法のものを使用すれば足り、原材料等についても植物質や石炭質、石油質など特に限定するものではなく、酸化したオイルの分離・除去と、オゾンの分解とのバランスで、平均的なマクロポアとミクロポアの面積に依存する両者の吸着効率などを考慮して適宜決定される。なお、本発明で使用する活性炭9として、好ましくは、粒状に成形されたものを用いる態様を採用する。活性炭9を粒状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば粒径が約1~5mm程度とすることが考え得る。これにより、活性炭9の表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。
【0034】
中空筒本体5の中空部内に積層される油・塵埃吸着材8と活性炭9を合わせた全体の高さは、該中空筒本体5の内径の2倍以上となるように充填される。かかる態様を採用することにより、中空筒本体5内に流入した圧縮空気における異物分離・除去の効果が最大限発揮されるもので、具体的には、油・塵埃吸着材8や活性炭9にて一度除去された異物が圧縮空気内に再度混入したとしても、排気口15に至るまでの間に再度分離・除去することが可能となる。
【0035】
下部分離槽4は、本発明の主要構成である。すなわち、該下部分離槽4は、前記中空筒本体5における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、圧縮空気の入口として側面所定箇所に導入口12、ドレンの排出口として底面所定箇所にドレン排出口11を備えた構成となっている。該導入口12には、図示の様にソケット13が備えられ、空気圧縮機2から圧縮空気を送るための配管30が該ソケット13に接続する態様となっている。また、該ドレン排出口11には、後述するサイクロン式ドレン分離装置7により取り除かれたドレンを外部放出するためのドレントラップ10が備わる態様が好適である。該下部分離槽4を中空筒本体5の下方の開口端へ締結するための手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0036】
下部分離槽4の側壁に備えられる導入口12について、図2(a)に示す様に、下部分離槽4の中心点に向けて備えられるのではなく、偏心方向へ向けて備えられることが好適である。偏心方向とは、平面視における下部分離槽4の側壁から中心点を通過しない方向を意味するものである。かかる構造とすることで、導入口12から流入した圧縮空気の方向づけが可能であって、該圧縮空気が下部分離槽4の中で後述するサイクロン式ドレン分離装置7の外周にてスムーズな回転動作に入ることを可能にする。
【0037】
導入口12から流入する圧縮空気の方向づけに関し、図2(b)に示す様に、ソケット13内に空気誘導板14を内蔵させる態様も考え得る。すなわち、圧縮空気が導入口12に至る前段のソケット13内において、空気誘導板14による流入角度の方向づけがなされることで、導入口12の位置に関係なく圧縮空気が下部分離槽4内にて一定方向へ流入する態様である。該空気誘導板14は、ソケット13内に収容可能な大きさの板体であって、平板状や略円弧状を成し、決まった流入角度に固定され、あるいは、必要に応じて適宜角度調整可能な構成となっている。
【0038】
下部分離槽4には、サイクロン式ドレン分離装置7が内蔵されている。該サイクロン式ドレン分離装置7は、下部分離槽4の平面視略中央位置において上下に延伸する所定高さ及び径を有すると共に上方が開放し下方が閉塞された略円筒体18と、該略円筒体18の開放された上端縁から下部分離槽4の側壁までを閉塞する天面板19から構成されており、該略円筒体18の所定箇所には中空部18aと連通する吸入口16が形成されている。尚、略円筒体18における下方の閉塞については、下部分離槽4の下面で閉塞される態様とすることも可能であが、その場合に下部分離槽4の下面に備えられるドレン排出口11の位置について、略円筒体18の位置と違えることを要する。
【0039】
略円筒体18の外形状については、円筒形状のほか、楕円筒形状や多角筒形状であってもよい。該略円筒体18の高さについて、特に限定はないが、下部分離槽4に内蔵されるべく少なくとも該下部分離槽4の側壁の高さよりも低い高さであることが望ましい。また、該略円筒体18の径についても、同様に特に限定するものではないが、流入した圧縮空気の回転効率等に鑑み、概ね下部分離槽4の外径の1/2以下、より好ましくは1/3以下程度に構成される。該略円筒体18に形成される吸入口16の位置について特に限定はなく、また、該吸入口16の径についても特に限定はないが、導入口12と略同径とすることで、圧縮空気の圧力損失を極力抑えることが可能となる。
【0040】
下部分離槽4における天面板19の上面には、図示の様に、流路形成体20を備える態様が好適である。該流路形成体20は、所要高さを有する外周側壁と、該外周側壁で囲まれた空間上方を閉塞する天面板とから構成されており、下方は開放されつつ下端縁が天面板19に接することで、サイクロン式ドレン分離装置7における略円筒体18の中空部18aと連通する様に備えられている。また、流路形成体20の外周側壁には複数の孔部21が備えられている。かかる複数の孔部21は、外周側壁に等間隔で備えられるのが望ましく、さらには4乃至16個の孔部21が外周側壁に備えられる態様が好ましい。
【0041】
該流路形成体20が備えられることで、下部分離槽4のサイクロン式ドレン分離装置7にて吸入口16から流入し略円筒体18の中空部18aを略垂直方向に送られてきた圧縮空気が、該流路形成体20の外周側壁に備えられた複数の孔部21を介して側方へ方向を変えつつ分流され、その後再び上方略垂直方向に向きを変えてパンチングプレート6を介して中空筒本体5の中空部内に均一に流入されることになる。尚、孔部21の径について、特に限定はないが、導入口12並びに吸入口16と略同径とすることで、圧縮空気の圧力損失を極力抑えることが可能となる。
【0042】
蓋体3は、前記中空筒本体5における上方開口部を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排気口15を備えた構成となっている。該蓋体3を中空筒本体5の上方開口端へ締結するための手段については、前記下部分離槽4と同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0043】
以上の各構成要素から、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置は構成される。すなわち、中空筒本体5の下方開口端をサイクロン式ドレン分離装置7が内蔵された下部分離槽4により閉塞し、中空筒本体5の上方開口端から中空部内へ油・塵埃吸着材8及び活性炭9を交互に積層した状態で充填し、最後に中空筒本体5の上方開口端を蓋体3により閉塞することで、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1が完成する。
【0044】
ところで、中空筒本体5の中空部内に油・塵埃吸着材8と活性炭9とを交互に積層・充填する場合において、該油・塵埃吸着材8と活性炭9の積層順については特に限定はないが、より好ましきは、図面に示すように、最上層及び最下層には油・塵埃吸着材8が積層される構成態様を採用し得る。かかる態様を採用することで、酸化していないオイルの活性炭への付着を極力防げ、活性炭の寿命を延ばすことができ、また、装置の2次側以降にオイルが持ち出されることを極力防ぐことができる。
【0045】
また、中空筒本体5の中空部内に油・塵埃吸着材8と活性炭9を積層・充填する場合において、上方から所定圧力で加圧しつつ油・塵埃吸着材8及び活性炭9を押し込むように積層・充填することが望ましい。これにより、充填むらを無くすことができ、油・塵埃吸着材8・活性炭9夫々の一重量当たりの吸着能力、および夫々の実際の充填量との積で得られる装置としての吸着能力、そして充填密度による圧力損失を、いずれも正確な数値でもって計算・制御することが可能となる。
【0046】
以上の構成態様により完成する圧縮空気用異物分離除去装置1の作用並びに効果については次の通りとなる。
すなわち、空気圧縮機(エアコンプレッサ)2から吐出された圧縮空気は、配管30を通りソケット13を介して導入口12から下部分離槽4へ流入する。下部分離槽4にはサイクロン式ドレン分離装置7が内蔵されており、流入した圧縮空気は、下部分離槽4の内壁に沿って略円筒体18を周回する様に高速で回転する。かかる回転で生じた遠心力により、圧縮空気中に含まれるドレンが分離され除去される。
【0047】
圧縮空気から分離・除去されたドレンは、下部分離槽4の内壁(側壁内側)等に付着し、該内壁等を伝って下方へ移動し、下部分離槽4の下面に備えられたドレン排出口11から外部へ、ドレントラップ10を介して自動的に排出される。
【0048】
ドレンが取り除かれた圧縮空気は、ドレン分離装置7を構成する略円筒体18に備えられた吸入口16から中空部18aに流入して略垂直方向へ上昇し、流路形成体20の天面板に突き当たり、外周側壁に備えられた孔部21を介して側方へ方向を変えつつ分流される。分流された圧縮空気は、その後再び上方略垂直方向に向きを変え、パンチングプレート6を介して中空筒本体5の中空部内に均一に流入されることとなる。
【0049】
中空筒本体5に流入した圧縮空気は、中空部内に充填・積層されている油・塵埃吸着材8や活性炭9を夫々通過しつつ上昇する。このとき、予め圧縮空気からドレンが分離・除去されていることから、油・塵埃吸着材8や活性炭9における圧縮空気中の異物分離除去機能を最大限に発揮させることが可能となり、オイルミストやオゾンなど圧縮空気中に含まれる異物が効果的に除去され、最終的に蓋体3に備えられた排気口15を介してクリーンな圧縮空気が外部へ送気されることとなる。
【0050】
以上、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の基本的構成態様及び作用効果について説明したが、本発明は上記実施形態や図面に示す構成態様に限定されるものではない。
例えば、図面では、油・塵埃吸着材8が最上層及び最下層の二層にのみ積層・充填され、活性炭9が該油・塵埃吸着材8層に挟まれた一層にのみ積層充填されている構成態様について示しているが、油・塵埃吸着材8及び活性炭9を何層にもわたってより多く積層・充填する態様も可能であり、また、その量も各々変更可能である。
【0051】
以上の通り、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1によれば、下部分離槽4に流入した圧縮空気がサイクロン式ドレン分離装置7を経由することにより、該圧縮空気が異物分離用のフィルタ(油・塵埃吸着材8及び活性炭9)を通過する以前に予めドレンを分離させることが可能であって、中空筒本体5内に積層・充填された油・塵埃吸着材8及び活性炭9の能力を最大限に引き出すことが可能であって、よりクリーンな圧縮空気を効率良く送気することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、圧縮空気異物分離除去装置において、よりクリーンな圧縮空気を効率良く送気することが可能であり、食品加工や精密機械における加工、医薬品などの製造等の他、様々な分野において本発明を採用することが可能である。したがって、本発明にかかる「圧縮空気用異物分離除去装置」の産業上の利用可能性は、大であると思料する。
【符号の説明】
【0053】
1 圧縮空気用異物分離除去装置
2 空気圧縮機(エアコンプレッサ)
3 蓋体
4 下部分離槽
5 中空筒本体
6 パンチングプレート
7 サイクロン式ドレン分離装置
8 油・塵埃吸着材
9 活性炭
10 ドレントラップ
11 ドレン排出口
12 導入口
13 ソケット
14 空気誘導板
15 排気口
16 吸入口
18 略円筒体
18a 中空部
19 天面板
20 流路形成体
21 孔部
30 配管
図1
図2