(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】CTGF発現抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221004BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221004BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221004BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221004BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221004BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C12N15/113 120Z
A61P43/00 105
A61P11/00 ZNA
A61P17/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
A61P27/02
A61P21/00
A61P19/00
A61P35/00
A61P29/00 101
A61K47/04
A61K9/16
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
(21)【出願番号】P 2021505193
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 KR2019095026
(87)【国際公開番号】W WO2020027640
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2019-0065618
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】Seoul National University,1,Gwanak-ro,Gwanak-gu,Seoul,08826,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/178883(WO,A2)
【文献】特表2013-532952(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0010285(KR,A)
【文献】特表2017-529384(JP,A)
【文献】特表2012-508560(JP,A)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2000年,Vol. 278,pp. 119-124
【文献】Gene Therapy,2007年,Vol. 14,pp. 790-803
【文献】THE JOURNAL OF GENE MEDICINE,2006年,Vol. 8,pp. 889-900
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 31/00-31/327
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号52の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号54の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号55の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号57の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号58の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号60の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号61の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号63の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号64の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号66の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号67の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号69の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号70の配列からなるセンスRNA及び配列番号71の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号72の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA及び配列番号87~
94の配列からなる群より選択される一つの配列からなるPNAからなる群より選択される少なくとも一つを含む、核酸分子。
【請求項2】
配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、又は配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAを含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記各センスRNA及びアンチセンスRNAは、その配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含むものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記PNAの少なくとも一つの末端に配列番号101~113からなる群より選択される少なくとも一つの配列からなるペプチド;またはmPEG
5000がさらに結合されたものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子を含む線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物であって、
前記線維増殖性疾患は、肥厚性瘢痕、ケロイド、肺線維症、肝線維症、腎線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、皮膚硬化症、全身硬化症、放射-誘導線維症、心筋線維症、胆道線維症、腎臓硬化症、網膜下線維症、糖尿病性網膜症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、糖尿病性腎臓病、慢性腎不全症、脂肪肝炎、増殖性硝子体網膜症、筋骨格系の腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、サルコイドーシス、黄斑変性、硝子体網膜症、角膜炎、翼状片、瞼裂斑、子宮筋腫、糸球体腎炎、ヒト免疫不全ウイルス腎症、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、多発性筋炎、および血管狭窄症からなる群より選択される疾患である、薬学的組成物。
【請求項6】
前記核酸分子は、多孔性シリカ粒子の表面または気孔内部に担持されたものであり、
前記多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が5nm~100nmであり、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上である、請求項5に記載の線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
[数式1]
A
t/A
0
(式中、A
0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
A
tは、前記A
0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【請求項7】
前記多孔性シリカ粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陽電荷または無電荷を帯びるものである、請求項6に記載の線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記多孔性シリカ粒子は、親水性または疎水性の官能基を有するものである、請求項6に記載の線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA;または配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAである、請求項5に記載の線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記核酸分子の各センスRNA及びアンチセンスRNAは、その配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含むものである、請求項5に記載の線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項11】
前記核酸分子のPNAの少なくとも一つの末端に配列番号101~113からなる群より選択される少なくとも一つの配列からなるペプチド;またはmPEG
5000がさらに結合されたものである、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTGFの発現を高効率で抑制し、優れた線維増殖性疾患の予防または治療効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
組織リモデリングとは、生理学的または病理学的なストレスに反応して組織を再構築することを指す。病理生理学での組織リモデリングは、結合組織成長因子(Connective tissue growth factor,CTGF)、筋線維の分化と活性化、細胞外基質(ECM)の沈着および線維化の過剰発現によって特徴付けられる。様々な信号分子及び因子の中で、CTGFは組織リモデリングにおける中枢的な媒介体として考えられてきた。CTGFは、様々な信号伝達経路に関与し、細胞の付着と移動、ECMリモデリング及び臓器構造の変化を起こす。組織リモデリング及び線維化は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、糖尿病性網膜症および皮膚線維症(ケロイド及び肥厚性瘢痕)のような数多くの線維性障害と関連がある。
【0003】
皮膚の傷治癒過程は非常に複雑であり、炎症、細胞分化及び増殖、組織リモデリング(コラーゲンの生成を含む)の重複した段階で構成される。いくつかのサイトカインと成長因子、特にTGF-βは創傷治癒の初期と後期の段階で重要な役割を果たす。TGF-βはCTGFの上向き調節により、白血球の移動、血管の新生、線維芽細胞の移動、およびECM成分(コラーゲン及びフィブロネクチン)の生産を媒介する。CTGFの過剰発現が肥厚性瘢痕とケロイド患者に観察されたので、CTGF発現の抑制は、線維化の過程を阻害又は逆転できる線維化の機序を調節する魅力的な戦略である。
【0004】
多くの抗体またはアンチセンスオリゴヌクレオチドがCTGFの発現を抑制したり、過剰なコラーゲンの生成および線維化を減少させる作用について調べた。siRNAは、CTGFを抑制するための有望な候補物質の一つである。siRNAに誘導されたRNA干渉は、標的mRNAを配列相補的に認識して切断する、非常に特異で効率的な遺伝子サイレンシング機構によって媒介される。新しい治療薬としての高い潜在能力にもかかわらず、1)生物学的システムでの核酸分解酵素による急速な分解、2)効果的なsiRNA投与量の維持の困難性、3)生物学的障壁を横切る効率的な送達の困難性などのいくつかの限界と障壁が存在する。
【0005】
現在までsiRNAの送達のために、陽イオン性高分子、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルスおよび様々なナノ物質が開発された。陽イオン性高分子とLNPの臨床的適用は、生体内構造の毒性及び/又は不安定性に注意する必要があり、ウイルス性の遺伝子の送達は、低い包装能力のほか突然変異誘発の問題がある。siRNAバックボーンの化学的変形は、安定性と細胞吸収を増加させることができるが、高コスト、労働集約性、時間のかかる工程、及び標的細胞での満足できる効果を得るための多量のsiRNA投与のような欠点を依然として有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CTGF発現を高効率で抑制し、優れた線維増殖性疾患の予防または治療効果を持つ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.配列番号1の配列と10ヌクレオチド以上相補的な配列からなる核酸分子;を含む、CTGF遺伝子発現抑制用組成物。
【0008】
2.前記項目1において、配列番号1の配列と16ヌクレオチド以上相補的な配列からなる核酸分子;を含む組成物。
【0009】
3.前記項目1において、配列番号1の配列全体と相補的な配列からなる核酸分子;を含む組成物。
【0010】
4.前記項目1において、前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの1つの鎖(strand)をなすものである組成物。
【0011】
5.前記項目4において、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号52の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号54の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号55の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号57の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号58の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号60の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号61の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号63の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号64の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号66の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号67の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号69の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号70の配列からなるセンスRNA及び配列番号71の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号72の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む組成物。
【0012】
6.前記項目5において、前記センスRNA及びアンチセンスRNA配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含む組成物。
【0013】
7.前記項目4において、配列番号87~99の配列からなる群より選択される一つの配列からなるPNAを少なくとも一つ含む組成物。
【0014】
8.前記項目7において、前記PNAの少なくとも一つの末端に配列番号101~113からなる群より選択される少なくとも一つの配列からなるペプチド;又はmPEG5000がさらに結合されたものである組成物。
【0015】
9.前記項目1~8のいずれか一つに記載の組成物を含む線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0016】
10.前記項目9において、前記線維増殖性疾患は、肥厚性瘢痕、ケロイド、線維症、肺線維症、特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、皮膚硬化症、糖尿病性網膜症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、放射-誘導線維症、心筋線維症、糖尿病性腎臓病、慢性腎不全症、慢性ウイルス性肝炎、胆道線維症、脂肪肝炎、アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、増殖性硝子体網膜症、筋骨格系の腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、膠芽腫、肺癌、卵巣癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓硬化症、サルコイドーシス、緑内障、黄斑変性、網膜下線維症、脈絡膜血管新生、硝子体網膜症、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、角膜炎、翼状片、瞼裂斑、皮膚硬化症、子宮筋腫、全身硬化症、糸球体腎炎、ヒト免疫不全ウイルス腎症、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、レイノー病、関節リウマチ、多発性筋炎、血管狭窄症、歯周炎、および歯周齦からなる群より選択される少なくとも一つである組成物。
【0017】
11.CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含み、
前記多孔性シリカ粒子は、直径5nm未満の気孔を有するシリカ粒子を120℃~180℃で24時間~96時間膨張剤と反応させ、前記直径5nm未満の気孔を膨張させるステップと、前記気孔が膨張されたシリカ粒子を400℃以上の温度で3時間以上か焼するステップとを含んで製造され、
前記多孔性シリカ粒子の平均直径は100nm~1,000nmであり、そのBET表面積は200m2/g~700m2/gであり、そのg当たりの体積は0.7ml~2.2mlであり、
前記多孔性シリカ粒子は、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上である、CTGF遺伝子発現抑制用組成物。
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0018】
12.前記項目11において、前記多孔性シリカ粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陽電荷または無電荷を帯びるものである組成物。
【0019】
13.前記項目11において、前記多孔性シリカ粒子は、親水性または疎水性の官能基を有するものである組成物。
【0020】
14.前記項目11において、前記核酸分子は、配列番号1の配列と10ヌクレオチド以上相補的なものである組成物。
【0021】
15.前記項目11において、前記核酸分子は、配列番号1の配列と16ヌクレオチド以上相補的なものである組成物。
【0022】
16.前記項目11において、配列番号1の配列全体と相補的な配列からなる核酸分子;を含む組成物。
【0023】
17.前記項目11において、前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの1つの鎖(strand)をなすものである組成物。
【0024】
18.前記項目17において、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号52の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号54の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号55の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号57の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号58の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号60の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号61の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号63の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号64の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号66の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号67の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号69の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号70の配列からなるセンスRNA及び配列番号71の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号72の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む組成物。
【0025】
19.前記項目18において、前記センスRNA及びアンチセンスRNA配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含むものである組成物。
【0026】
20.前記項目17において、配列番号87~99の配列からなる群より選択される一つの配列からなるPNAを少なくとも一つ含む組成物。
【0027】
21.前記項目20において、前記PNAの少なくとも一つの末端に配列番号101~113からなる群より選択される少なくとも一つの配列からなるペプチド;またはmPEG5000がさらに結合されたものである組成物。
【0028】
22.前記項目11~21のいずれか一つに記載の組成物を含む線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0029】
23.前記項目22において、前記線維増殖性疾患は、肥厚性瘢痕、ケロイド、線維症、肺線維症、特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、皮膚硬化症、糖尿病性網膜症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、放射-誘導線維症、心筋線維症、糖尿病性腎臓病、慢性腎不全症、慢性ウイルス性肝炎、胆道線維症、脂肪肝炎、アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、増殖性硝子体網膜症、筋骨格系の腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、膠芽腫、肺癌、卵巣癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓硬化症、サルコイドーシス、緑内障、黄斑変性、網膜下線維症、脈絡膜血管新生、硝子体網膜症、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、角膜炎、翼状片、瞼裂斑、皮膚硬化症、子宮筋腫、全身硬化症、糸球体腎炎、ヒト免疫不全ウイルス腎症、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、レイノー病、関節リウマチ、多発性筋炎、血管狭窄症、歯周炎、および歯周齦からなる群より選択される少なくとも一つである組成物。
【発明の効果】
【0030】
本発明の組成物は、CTGF及びコラーゲンの発現を効果的に抑制できる核酸分子を含んでおり、CTGFまたはコラーゲンの過剰発現による様々な線維増殖性疾患の予防または治療が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、病理学的経路によって誘導されたCTGFの過剰発現による肥厚性瘢痕及びケロイドの細胞機序、およびLEM-S401の効果的なCTGF発現抑制の原理を模式的に示すものである。
【
図2-3】
図2、3は、A549(
図2)及びHaCaT(
図3)細胞のそれぞれを様々な容量のLEM-S401(12.5、25、50、100nM)で6時間処理し、CTGFの発現を12ng/mLのTGF-βによって誘導し、CTGF mRNAの発現レベルをRT-PCRを用いて対照群(無処理、siCTGFのみ処理、DegradaBALLのみ処理、scrambled siRNA処理)と比較したものである(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005)。
【
図4-5】
図4、5は、A549(
図4)及びHaCaT(
図5)細胞のそれぞれをLEM-S401及びsiCTGFを担持した脂質ナノ粒子(Lipid nanoparticle,LNP)で処理して比較したものであり、細胞を72時間及び96時間培養し、取得12時間前にTGF-βを処理した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005)。
【
図6】
図6は、LEM-S401をマウスの皮膚に皮下注入し、LEM-S401の注入部位でのsiCTGF及びDegradaBALLの皮膚滞留時間を測定するために、切除されたマウスの皮膚の蛍光画像を異なる時点(1日、3日、5日)で撮影したものであり(左、Scale bar:25mm)、DAPI染色後、同じ方法で処理された皮膚切片の蛍光画像を撮影したものである(右、Scale bar:100μm)。
【
図7】
図7は、DegradaBALLに担持されていないFITC-接合されたsiCTGFを皮下注入した切除された皮膚の蛍光画像を異なる時点で撮影したものであり(左)、DAPI染色後、同じ方法で処理された皮膚切片の蛍光画像を撮影したものである(Scale bar:100μm)。
【
図8-15】
図8~15は、0、4、8、12日にLEM-S401(1nmol)を、マウスの皮膚の傷周囲に皮下注入した結果を示すものである。
図8~10は、CTGF及びコラーゲンタイプ1、3のmRNA発現レベルをRT-PCRを用いて16日目に測定したものである。
図11は、傷ついたマウスの皮膚の画像をLEM-S401の処理群と対照群(緩衝液、DegradaBALLのみ、siCTGFのみ)とで皮膚の不規則及び柔らかさを処理10日目に比較したものである。
図12は、CTGFとコラーゲンタイプ1、3をそれぞれ認識する抗体で組織を染色した後、LEM-S401、自由siCTGF、DegradaBALLのみ、及び緩衝液で処理した皮膚切片の蛍光画像を撮影したもので、続いて2次抗体を皮膚切片に処理したものである(Scale bar:100μm)。
図13~15は、
図12の画像に基づいて免疫組織化学データを定量分析したものである(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005)。
【
図16】
図16は、DegradaBALLの濃度増加によるA549及びHaCaT細胞での毒性をCCK-8分析で測定したものである。
【
図17】
図17は、A549及びHaCaT細胞のそれぞれを2ng/mLのTGF-βで24時間処理した結果である。細胞は異なる時点で取得され、CTGF発現レベルはRT-PCRにより分析された。
【
図18-24】
図18~24は、LEM-S401を傷の形成から10、14、18、22日に傷部位に皮下注入した結果である。
図18~20は、注入部位のCTGF及びコラーゲンタイプ1、3のmRNAの発現レベルをRT-PCRにより測定したものである。
図21は、取得したマウスの皮膚のCTGF及びコラーゲンタイプ1、3の蛍光画像を免疫組織化学法により測定したものである(Scale bar:100μm)。
図22~24は、免疫組織化学データを定量化したものである(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005)。
【
図25】
図25は、siRNAをDDV(多孔性シリカ粒子、DegradaBALL)に担持してマウスに皮下注入した場合と、担持していないfree-siRNAをマウスに皮下注入した場合における体内蛍光画像の検出を比較した結果である。
【
図26-27】
図26、27は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(#1);配列番号4の配列からなるセンスRNA及び配列番号5の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(#2);配列番号7の配列からなるセンスRNA及び配列番号8の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(#3)のA549及びHaCaT細胞内のCTGF発現レベル抑制能を確認したものでる。
図26は、siRNA処理12時間後にTGF-βを処理したものであり、
図27は、TGF-β処理24時間後にsiRNAを処理したものである。
【
図28】
図28は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図29】
図29は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図30】
図30は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の製造工程における小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図31】
図31は、本発明の一実施形態に係る小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図32】
図32は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の気孔直径別の顕微鏡写真である。 DDV(Degradable Delivery Vehicle)は、実施例の粒子であり、括弧内の数字は粒子の直径を、下付き文字の数字は気孔の直径を意味する。例えば、DDV(200)
10は、粒子直径が200nm、気孔直径が10nmである実施例の粒子を意味する。
【
図33】
図33は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の生分解性を確認できる顕微鏡写真である。
【
図34】
図34は、一つの例示による円筒状の透過膜を備えたチューブである。
【
図35】
図35は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図36】
図36は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による粒径別の吸光度の減少の結果である。
【
図37】
図37は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による気孔直径別の吸光度の減少の結果である。
【
図38】
図38は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による環境のpH別の吸光度の減少の結果である。
【
図39】
図39は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図40】
図40は、一つの例示によるsiRNAまたはdsRNAの放出を確認するチューブである。
【
図41】
図41は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子に担持されたsiRNAの時間経過による放出程度を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の具体的な説明において用語の具体的な意味を定義するが、これは当該分野の通常の技術者に理解される意味として受け入れられるものであるだけで、下記に定義された特定の意味に限定しようとする意図ではない。
【0033】
「siRNA」とは、RNA干渉または遺伝子サイレンシングを媒介することができる核酸分子を意味する。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できるので、効率のよい遺伝子のノックダウン方法または遺伝子治療方法として提供される。siRNA分子は、センス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相応する(corresponding)配列)と、アンチセンス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相補的な配列)とが互いに反対側に位置して二重鎖をなす構造を有することができる。また、siRNA分子は、自己相補性(self-complementary)のセンス及びアンチセンス鎖を有する単一鎖の構造を有することができる。siRNAは、RNA同士にペアをなす二重鎖RNAの部分が完全に対をなすものに限定されず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)等によって対を成していない部分が含まれ得る。siRNAの末端構造は、標的遺伝子の発現をRNAi(RNA interference)効果により抑制できるものであれば、平滑(blunt)末端または粘着(cohesive)末端のいずれも可能である。粘着末端構造としては、3’-末端突出構造と5’-末端突出構造のいずれも可能である。また、siRNA分子は、自己相補性のセンスとアンチセンス鎖との間に短いヌクレオチド配列(例えば、約5-15nt)が挿入された形態を有することができる。この場合、ヌクレオチド配列の発現によって形成されたsiRNA分子は、分子内混成化によってヘアピン構造を形成することになり、全体としてはステム・アンド・ループ構造を形成することになる。このステム・アンド・ループ構造は、インビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)でプロセシングされ、RNAiを媒介できる活性のsiRNA分子を生成する。
【0034】
「dsRNA」とは、siRNAの前駆体分子であり、標的細胞のDICER酵素(Ribonuclease III)を含むRISC複合体と会合してsiRNAに切断され、この過程でRNAiが発生する。dsRNAは、siRNAよりも数ヌクレオチドだけ長い配列を有し、センス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相応する(corresponding)配列)とアンチセンス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相補的な配列)が互いに反対側に位置して二重鎖をなす構造を有することができる。
【0035】
「PNA」とは、DNA又はRNAと類似の構造を持つが、DNA又はRNAとは異なり、電荷を帯びないように設計され、強い結合力を有する合成ポリマーである。DNAとRNAがデオキシリボース(deoxyribose)又はリボース(ribose)糖バックボーン(backbone)をそれぞれ有するのに対して、PNAのバックボーンは、反復的なN-(2-アミノエチル)-グリシン((N-(2-aminoethyl)-glycine)単位がペプチド結合で連結された構造を有する。プリン(purine)とピリミジン(pyrimidine)塩基がメチレン(-CH2-)とカルボニル基(-C=O-)でバックボーンに連結されている構造であり、ペプチドと同様に両末端にそれぞれN-末端とC-末端を有する。
【0036】
「核酸」とは、任意のPNA、DNAまたはRNA、例えば、組織サンプルに存在する染色体、ミトコンドリア、ウイルス及び/又は細菌核酸を含む意味である。二本鎖核酸分子のいずれか1つ又は2つの鎖を含み、無損傷核酸分子の任意の断片または一部を含む。
【0037】
「遺伝子」とは、タンパク質のコーディングまたは転写時、または他の遺伝子発現の調節時に機能的な役割を持つ任意の核酸配列またはその一部を意味する。遺伝子は、機能的タンパク質をコードするすべての核酸またはタンパク質をコードまたは発現する核酸の一部のみからなり得る。核酸配列は、エクソン、イントロン、開始または終了領域、プロモーター配列、他の調節配列または遺伝子に隣接する特有の配列内に遺伝子異常を含むことができる。
【0038】
用語「遺伝子発現」とは、一般的に生物学的活性のあるポリペプチドがDNA配列から生成され、細胞で生物学的活性を示す細胞プロセスを意味する。その意味で、遺伝子発現は、転写及び解読のプロセスを含むだけでなく、遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性に影響を与えることができる転写後および解読後のプロセスを含む。前記プロセスは、RNAの合成、加工及び輸送だけでなく、ポリペプチドの合成、輸送、およびポリペプチドの解読後の変形を含むが、これらに限定されるものではない。タンパク質産物を暗号化しない遺伝子、例えば、siRNA遺伝子の場合に、「遺伝子発現」という用語は、前駆体siRNAが遺伝子から生成されるプロセスを意味する。通常、前記プロセスは、タンパク質暗号遺伝子に対してRNAポリメラーゼIIによって誘導される転写とは異なり、siRNA遺伝子の転写産物が解読されてタンパク質を生成しないが、転写と呼ばれる。それにもかかわらず、siRNA遺伝子からの成熟siRNAの生成は、その用語が本明細書に使用されるように「遺伝子発現」という用語によって含まれる。
【0039】
用語「標的遺伝子(target gene)」とは、本願に開示される主題の方法および組成物を使用して調整するために標的とする遺伝子を意味する。このため、標的遺伝子は、その発現レベルがmRNAまたはポリペプチドのレベルにsiRNAによって下向き調節される核酸配列を含む。同様に、用語「標的RNA」または「標的mRNA」とは、siRNAが結合して標的遺伝子の発現の調節を誘導する標的遺伝子の転写体を意味する。
【0040】
用語「転写(transcription)」とは、遺伝子の暗号配列に存在する構造情報のRNAへの発現を誘導する遺伝子とRNAポリメラーゼの相互作用を含む細胞プロセスを意味する。
【0041】
「下向き調節(down-regulation)」という表現は、正常組織細胞に比べて、活性化された細胞で細胞内転写(gene transcription)または翻訳(gene translation)によって、特定の遺伝子のmRNAへの発現またはタンパク質への発現量が顕著に減少したことを意味する。
【0042】
「治療」とは、有益な、または望ましい臨床的結果を得るためのアクセスを意味する。本発明の目的のために、有益な、または望ましい臨床的結果は、非限定的に、症状の緩和、疾患の範囲の減少、疾患状態の安定化(即ち、悪化しない)、疾患の進行の遅延化または緩徐化、疾患状態の改善または一時的緩和および軽減(部分的または完全な)、検出可能かまたは検出不可能かを含む。また、「治療」は、治療を受けていないときに予想される生存率と比較して生存率を伸ばすことを意味し得る。治療は、治療学的治療および予防的または予防措置方法のすべてを指す。前記治療は、予防される障害だけでなく、既に発生した障害において要する治療を含む。
【0043】
「予防」とは、関連疾患の発症を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。本願の組成物が、初期症状、または示される前に投与した場合に関連疾患を予防できることは、当業者に自明であろう。
【0044】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0045】
本発明は、配列番号1の配列と10ヌクレオチド以上相補的な配列からなる核酸分子;を含むCTGF遺伝子発現抑制用組成物を提供するものである。
【0046】
配列番号1の配列との相補性は、連続的または非連続的に、10ヌクレオチド(nucleotide;nt)以上、11ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、13ヌクレオチド以上、14ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上、16ヌクレオチド以上、17ヌクレオチド以上、または18ヌクレオチド全体であってもよい。
【0047】
前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの1つの鎖(strand)をなすものであってもよい。この場合、前記siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAは、RNAi(RNA干渉;RNA interference)によって前記CTGF遺伝子の発現を抑制するものであってもよく、より具体的には、CTGF遺伝子の転写体であるmRNA配列のうち、配列番号1の配列からなる部位の少なくとも一部に相補的に結合してCTGF遺伝子の発現を抑制するものであってもよい。
【0048】
前記核酸分子がsiRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの1つの鎖(strand)をなす場合、その配列は、当該分野の通常の技術者のレベルで前記siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの設計時に考慮すべき条件に合致して設計されたものであることは自明である。この場合、回文構造(palindrome)配列を持たないようにして、ヘアピン構造(hairpin shape)、十字型構造(cross shape)によるRNAi効率の低下現象を回避するように設計されたものであってもよい。具体的には、本発明のsiRNAまたはdsRNAの例としては、配列番号100(5’-AACUUGAACU-3’)の配列を含まないように設計されたものであってもよく、本発明のPNAの例としては、両末端がCとGをそれぞれ有して相補的な関係が形成されることを回避するように設計されたものであってもよく、前記核酸分子全体の配列の長さを適切な長さ以上に維持してRNAiの効率を安定的に有するように設計することができる。
【0049】
前記核酸分子の全体配列の長さは、10~30、11~29、12~28、13~27、14~26、15~25、16~24、16~23、16~22、16~21または16~20ヌクレオチド長さであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。適切な長さ以上を維持してRNAiの効率を安定的に有するようにする一方、適切な長さ以下を維持して生体内送達効率を維持するために、好ましくは16~20ヌクレオチド長さであってもよい。
【0050】
前記核酸分子は、具体的には、配列番号1の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号2の配列)であってもよく、配列番号3の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号1の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号53の配列)であってもよく、配列番号54の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号55の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号56の配列)であってもよく、配列番号57の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号58の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号59の配列)であってもよく、配列番号60の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号61の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号62の配列)であってもよく、配列番号63の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号64の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号65の配列)であってもよく、配列番号66の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号67の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号68の配列)であってもよく、配列番号69の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよく、配列番号70の配列からなるセンスRNAと相補的に結合してsiRNAをなすアンチセンスRNA(配列番号71の配列)であってもよく、配列番号72の配列からなる鎖(strand)と相補的に結合してdsRNAをなす鎖であってもよい。
【0051】
前記核酸分子は、具体的には、配列番号87~99の配列からなる群より選択される一つの配列からなるPNAであってもよい。
【0052】
前記記載された配列の具体的な情報は、添付の配列表及び下記表1に具体的に示す。
【0053】
本発明の核酸分子は、ヒトを含む動物、例えば、サル(monkeys)、ブタ(pigs)、ウマ(horses)、ウシ(cows)、ヒツジ(sheeps)、イヌ(dogs)、ネコ(cats)、マウス(mice)、ウサギ(rabbits)などに由来するものであってもよく、好ましくは、ヒト由来のものであってもよい。
【0054】
本発明の核酸分子は、それを構成する核酸分子の作用性等価物、例えば、本発明の核酸分子の一部塩基配列が、欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)によって変形されたが、本発明の核酸分子と機能的に同じ作用をすることができる変異体(variants)を含む概念である。
【0055】
より具体的には、本発明の核酸分子がsiRNAのセンスRNAまたはアンチセンスRNAをなす場合には、前記センスRNA及びアンチセンスRNA配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含むものであってもよい。これは核酸加水分解酵素への抵抗性の増大によるsiRNAまたはdsRNAの構造的安定性の向上、安定したRISCの誘導によるsiRNAまたはdsRNAのRNAi効率性の向上などの利点をsiRNAまたはdsRNAに付与することができる。
【0056】
より具体的には、本発明の核酸分子がPNAをなす場合には、少なくとも一つの末端に配列番号101~113からなる群より選択される少なくとも一つの配列からなるペプチド;またはmPEG5000がさらに結合されたものであってもよい。これはPNAの組成物中の溶解度(solubility)または浸透性(penetration)を上昇させることを目的とすることができ、両末端(N-末端またはC-末端)のうちC-末端に結合されることが、別のリンカーを必要としない点でより好ましい。
【0057】
本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術、例えば、化学的合成方法または組換え方法を用いて分離または製造するか、又は市販のものを使用することができる。また、本発明の組成物は、本発明の核酸分子そのものだけでなく、細胞内で本発明の核酸分子の発現率を増加させることができる他の物質、例えば化合物、天然物、新規タンパク質などを含むことができる。
【0058】
一方、本発明の核酸分子は、細胞内発現のためのベクターに含んで提供することができる。
【0059】
本発明の核酸分子は、DNA及びDEAE-デキストランの複合体、DNA及び核タンパク質の複合体、DNA及び脂質の複合体などの様々な形質転換技術を用いて細胞内に導入できる。そのために、本発明の核酸分子は、細胞内への効率的な導入を可能にする送達体内に含まれたものであってもよい。前記送達体は、好ましくはベクターであり、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターのいずれも使用可能である。ウイルスベクター(viral vector)としては、例えば、レンチウイルス(lentivirus)、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、ヘルペスウイルス(herpes virus)およびアビポックスウイルス(avipox virus)ベクターなどを使用することができ、好ましくはレンチウイルスベクターであるが、これらに限定されるものではない。レンチウイルスは、レトロウイルスの一種であり、核膜孔(nucleopore)や完全な核膜への能動導入を可能にする事前-統合複合体(ウイルス「シェル(shell)」)の求核性により、分裂細胞だけでなく、未分裂細胞も感染させる特徴がある。
【0060】
また、本発明の核酸分子を含むベクターは、選別マーカーをさらに含むことが好ましい。前記「選別マーカー(selection marker)」とは、本発明の核酸分子が導入された細胞の選別を容易にするためのものである。前記ベクターで使用できる選別マーカーとしては、ベクターの導入有無を容易に検出または測定できる遺伝子であれば特に限定されないが、代表的には、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能な表現型を付与するマーカー、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ピューロマイシン(puromycin)、ネオマイシン(Neomycin:Neo)、ハイグロマイシン(hygromycin:Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(histidinol dehydrogenase gene:hisD)、及びグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(guanine phosphosribosyltransferase:Gpt)などがあり、好ましくは、GFP(緑色蛍光タンパク質)及びピューロマイシンマーカーを使用することができる。
【0061】
本発明は、前述した組成物を含む線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0062】
本発明の薬学的組成物は、線維増殖性疾患の予防または治療効果を有するものであって、この効果は本発明の核酸分子のCTGF遺伝子の発現を抑制することにより達成される効果であり得る。
【0063】
本発明の薬学的組成物の予防または治療の対象疾患である線維増殖性疾患の例としては、肥厚性瘢痕、ケロイド、線維症、肺線維症、特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、皮膚硬化症、糖尿病性網膜症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、放射-誘導線維症、心筋線維症、糖尿病性腎臓病、慢性腎不全症、慢性ウイルス性肝炎、胆道線維症、脂肪肝炎、アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、増殖性硝子体網膜症、筋骨格系の腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、膠芽腫、肺癌、卵巣癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓硬化症、サルコイドーシス、緑内障、黄斑変性、網膜下線維症、脈絡膜血管新生、硝子体網膜症、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、角膜炎、翼状片、瞼裂斑、皮膚硬化症、子宮筋腫、全身硬化症、糸球体腎炎、ヒト免疫不全ウイルス腎症、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、レイノー病、関節リウマチ、多発性筋炎、血管狭窄症、歯周炎、および歯周齦からなる群より選択される少なくとも一つの疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、CTGFまたはコラーゲンなどの過剰発現による疾患に該当するものであれば特に制限されない。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物において薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1つの成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、本発明の核酸分子を有効成分として含むいずれの剤型にも適用可能であり、経口用または非経口用の剤形に製造することができる。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量を投与する。有効容量は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定できる。本発明の薬学的組成物は、個々の治療剤として投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよい。また、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0067】
本発明の薬学的組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が非常に多様である。適正な投与量は、例えば、患者の体内に蓄積された薬物の量及び/又は使用される本発明の核酸分子の具体的な効能程度によって異なり得る。一般的に、イン・ビボ動物モデル及びイン・ビトロで効果的なものと測定されたEC50に基づいて計算することができ、例えば、体重1kg当たりに0.01μg~1gであってもよい。日、週、月、または年の単位期間に、単位期間当たりの一回または数回に分けて投与してもよく、若しくはインフュージョンポンプを用いて長期間連続して投与してもよい。反復投与の回数は、薬物の体内滞在時間、体内薬物濃度などを考慮して決定する。疾患の治療経過によっては、治療された後でも再発防止のために組成物を投与することができる。
【0068】
本発明の薬学的組成物は、線維増殖性疾患の治療に関連して同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上、または有効成分の溶解性及び/又は吸収性を維持/増加させる化合物をさらに含有することができる。また必要に応じて、化学治療剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、及び/又は免疫調節剤などをさらに含むことができる。
【0069】
また、本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当該分野で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0070】
本発明の組成物は、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持体に担持したものであってもよい。また、担持体の種類は、核酸分子を担持できるものであって当該分野で公知のものであれば特に制限されないが、例えば、リポソーム、リポフェクタミン、デンドリマー、ミセル、多孔性シリカ粒子、アミノクレイ、及びヒドロゲルからなる群より選択される少なくとも一つであってもよく、好ましくは、高い核酸分子担持率、徐放性、生分解性などの利点を有する多孔性シリカ粒子であってもよい。
【0071】
本発明は、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含むCTGF遺伝子発現抑制用組成物を提供する。前記多孔性シリカ粒子は、シリカ(SiO2)素材の粒子であり、ナノサイズの粒径を有する。
【0072】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、多孔性粒子であり、ナノサイズの気孔を有し、その表面(外部表面)及び/又は気孔内部にCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持することができる。
【0073】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性粒子であり、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持して体内に投与されたとき、体内で生分解されてCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を放出することができる。つまり、本発明の多孔性シリカ粒子は、体内で徐々に分解され、担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子が徐放的に放出されるようにすることができる。例えば、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtは、24以上である。
【0074】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは、7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0075】
前記数式1は、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。
【0076】
前記数式1における吸光度A
0、A
tは、例えば
図34に示されているように、円筒状の透過膜に多孔性シリカ粒子および懸濁液を入れ、透過膜の外部にも同じ懸濁液を入れて測定したものであり得る。
【0077】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性であり、懸濁液中で徐々に分解され得る。直径50kDaは約5nmに相当するものであり、生分解された多孔性シリカ粒子は、直径50kDaの透過膜を通過することができる。円筒状の透過膜は、60rpmの水平攪拌下にあるので、懸濁液を均一に混合することができ、分解された多孔性シリカ粒子は、透過膜の外部に放出され得る。
【0078】
前記数式1での吸光度は、例えば、透過膜の外部の懸濁液が新しい懸濁液に入れ替わる環境下で測定したものであり得る。懸濁液は、持続的に入れ替わるものであってもよく、一定期間ごとに入れ替わるものであってもよい。前記一定期間は、定期的または不定期的な期間であってもよい。例えば、1時間~1週間の範囲内で、1時間おき、2時間おき、3時間おき、6時間おき、12時間おき、24時間おき、2日おき、3日おき、4日おき、7日おき等に入れ替えることができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
前記「吸光度の比が1/2となる」ということは、t時間後の吸光度が初期吸光度の半分になるということであり、これは多孔性シリカ粒子の約半分が分解されたことを意味する。
【0080】
前記懸濁液は緩衝溶液であってもよく、具体例としては、PBS(リン酸緩衝食塩水)およびSBF(疑似体液)からなる群より選択される1種以上であってもよく、より具体的にはPBSであってもよい。
【0081】
本発明の前記数式1の吸光度の比が1/2となるtは24以上であり、例えばtは24~120であってもよく、例えば、前記範囲内で24~96、24~72、30~70、40~70、50~65などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0082】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/5となるtが、例えば70~140であってもよく、例えば、前記範囲内で80~140、80~120、80~110、70~140、70~120、70~110などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/20となるtが、例えば130~220であってもよく、例えば、前記範囲内で130~200、140~200、140~180、150~180などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本発明の多孔性シリカ粒子は、測定される吸光度が0.01以下となるtが、例えば、250以上、300以上、350以上、400以上、500以上、1,000以上などであってもよく、その上限は2,000であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本発明の多孔性シリカ粒子における前記数式1の吸光度の比とtは、高い量の相関関係を有するものであり、例えば、ピアソン相関係数が0.8以上であってもよく、例えば0.9以上、0.95以上であってもよい。
【0086】
前記数式1のtは、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。これは、例えば多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することによって調節できる。
【0087】
例えば、粒子の表面積を増加させてtを減少させるか、表面積を減少させてtを増加させることができる。表面積は、粒子の直径、気孔の直径を調節することによって調節できる。また、表面及び/又は気孔内部に置換基を位置させ、多孔性シリカ粒子が環境(溶媒など)に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、多孔性シリカ粒子にCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持させ、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子と多孔性シリカ粒子間の親和度を増加させ、多孔性シリカ粒子が環境に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、粒子の製造時に表面をより緻密に製造してtを増加させることもできる。前記に数式1のtを調節できる様々な例を示したが、それらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば球状粒子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0089】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均粒径が例えば150nm~1,000nmであってもよく、例えば、前記範囲内で150nm~800nm、150nm~500nm、150nm~400nm、150nm~300nm、150nm~200nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0090】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が例えば1nm~100nmであってもよく、例えば、前記範囲内で5nm~100nm、7nm~100nm、7nm~50nm、10nm~50nm、10nm~30nm、7nm~30nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記のような大きな直径を持って多量のCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持することができ、サイズの大きいCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の担持も可能である。
【0091】
本発明の多孔性シリカ粒子は、BET表面積が、例えば200m2/g~700m2/gであってもよい。例えば、前記範囲内で200m2/g~700m2/g、200m2/g~650m2/g、250m2/g~650m2/g、300m2/g~700m2/g、300m2/g~650m2/g、300m2/g~600m2/g、300m2/g~550m2/g、300m2/g~500m2/g、300m2/g~450m2/gなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0092】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、g当たりの体積が例えば0.7ml~2.2mlであってもよい。例えば、前記範囲内で0.7ml~2.0ml、0.8ml~2.2ml、0.8ml~2.0ml、0.9ml~2.0ml、1.0ml~2.0mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。g当たりの体積が小さすぎると、分解速度が速くなりすぎることがあり、大きすぎると、製造が困難であるか、完全な形状を有しないことがある。
【0093】
本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部に親水性置換基及び/又は疎水性置換基が存在し得る。例えば、表面及び気孔内部の両方に親水性置換基のみが存在するか、疎水性置換基のみが存在してもよく、表面または気孔内部の一方のみに親水性置換基が存在するか、疎水性置換基が存在してもよい。また、表面に親水性置換基が、気孔内部に疎水性置換基が存在してもよく、その逆の場合も可能である。
【0094】
本発明の多孔性シリカ粒子に担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出は、主に、ナノ粒子の分解によって行われるものである。このため、前記置換基の調節によりCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出速度を調節することができる。また、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、ナノ粒子から拡散して放出させることもできるが、前記置換基の調節によりCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子のナノ粒子への結合力を調節し、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。
【0095】
また、難溶性(疎水性)のCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能である。
【0096】
親水性置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などが挙げられる。疎水性置換基としては、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、及びハロゲン含有基などが挙げられる。
【0097】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部が陽電荷、陰電荷、及び/又は無電荷に帯電されたものであってもよい。例えば、表面及び気孔内部の両方が陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよく、表面または気孔内部の一方のみが陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよい。また、表面が陽電荷、気孔内部が陰電荷に帯電されてもよく、その逆の場合も可能であり、無電荷の場合も同様である。
【0098】
前記帯電は、例えば、非イオン性置換基、陽イオン性置換基または陰イオン性置換基が存在することによって行われたものであり得る。
【0099】
前記陽イオン性置換基は、例えば、塩基性基としてアミノ基、その他の窒素含有基などであってもよく、具体的には、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、窒素原子を含むヘテロ環芳香族化合物基、シアン基及びグアニジン基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記陰イオン性置換基は、例えば、酸性基としてカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、チオール基(-SH)などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0101】
同様に、前記帯電によって前記置換基の調節によりCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出速度を調節することができる。また、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、ナノ粒子から拡散されて放出させることもできるが、前記置換基の調節によりCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子のナノ粒子への結合力を調節し、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。
【0102】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、その表面及び/又は気孔内部に前記の他にCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の担持、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の標的細胞への移動、その他の目的のための物質の担持、又はその他の追加置換基の結合などのための置換基が存在してもよく、それに結合された抗体、リガンド、細胞透過性のペプチドまたはアプタマーなどをさらに含んでいてもよい。
【0103】
前述した表面及び/又は気孔内部の置換基、電荷、結合物質などは、例えば、表面改質によって付加することができる。
【0104】
表面改質は、例えば、導入しようとする置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができ、前記化合物は、例えば、C1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1つ以上有するものであり、例えば1~3つを有することができ、アルコキシ基の結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0105】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程を経て製造したものであってもよく、必要に応じて、か焼(calcination)工程、表面改質工程などをさらに経て製造したものであってもよい。か焼及び表面改質工程をすべて経た場合は、か焼後に表面改質されたものであってもよい。
【0106】
前記小気孔の粒子は、例えば、平均気孔直径が1nm~5nmの粒子であってもよい。
【0107】
前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌及び均質化して得ることができる。
【0108】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはメタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
前記溶媒において、水と有機溶媒の混合溶媒の使用時の割合は、例えば、水と有機溶媒を1:0.7~1.5の体積比、例えば1:0.8~1.3の体積比で使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
前記界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる。
【0111】
前記界面活性剤は、例えば、溶媒1リットル当たりに1g~10g、例えば、前記範囲内で1g~8g、2g~8g、3g~8gなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
前記シリカ前駆物質は、溶媒に界面活性剤を添加して攪拌した後に添加することができる。シリカ前駆物質は、例えば、TMOS(テトラメチルオルソシリケート)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0113】
前記攪拌は、例えば10分~30分間行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0114】
前記シリカ前駆物質は、例えば溶媒1リットル当たりに0.5ml~5ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~4ml、0.5ml~3ml、0.5ml~2ml、1ml~2mlなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
必要に応じて、触媒として水酸化ナトリウムをさらに使用することができるが、これは溶媒に界面活性剤を添加した後、シリカ前駆物質の添加前に撹拌しながら添加することができる。
【0116】
前記水酸化ナトリウムは、例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液を基準で溶媒1リットル当たりに0.5ml~8ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~5ml、0.5ml~4ml、1ml~4ml、1ml~3ml、2ml~3mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0117】
前記シリカ前駆物質の添加後に溶液を攪拌して反応させることができる。攪拌は、例えば2時間~15時間行うことができ、例えば、前記範囲内で3時間~15時間、4時間~15時間、4時間~13時間、5時間~12時間、6時間~12時間、6時間~10時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。攪拌時間(反応時間)が短すぎると、結晶核生成(nucleation)が不足することがある。
【0118】
前記攪拌の後には、溶液を熟成(aging)させることができる。熟成は、例えば、8時間~24時間行うことができ、例えば、前記範囲内で8時間~20時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~16時間、10時間~14時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0119】
その後、反応産物を洗浄及び乾燥して多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0120】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0121】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができ、具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0122】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0124】
前記洗浄は、遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0125】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば、2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0126】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これらに限定されず、真空状態で行うこともできる。
【0127】
その後、前記で得られた多孔性シリカ粒子の気孔を拡張する。気孔の拡張は、気孔膨張剤を用いて行うことができる。
【0128】
前記気孔膨張剤としては、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、トリヘキシルベンゼン、トルエン、ベンゼンなどを使用でき、具体的にはトリメチルベンゼンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
また、前記気孔膨張剤としては、例えばN,N-ジメチルヘキサデシルアミン(N,N-dimethylhexadecylamine、DMHA)を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0130】
前記気孔の拡張は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子を気孔膨張剤と混合し、加熱して反応させて行うことができる。
【0131】
前記溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
前記多孔性シリカ粒子は、例えば、溶媒1リットル当たりに10g~200g、例えば、前記範囲内で10g~150g、10g~100g、30g~100g、40g~100g、50g~100g、50g~80g、60g~80gなどの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
前記多孔性シリカ粒子は、溶媒中に均一に分散されているものであってもよく、例えば、溶媒に多孔性シリカ粒子を添加して超音波分散したものであってもよい。混合溶媒を使用する場合には、第1の溶媒に多孔性シリカ粒子を分散した後、第2の溶媒を添加したものであってもよい。
【0134】
前記気孔膨張剤は、例えば、溶媒100体積部に対して10~200体積部、前記範囲内で10~150体積部、10~100体積部、10~80体積部、30~80体積部、30~70体積部などの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
前記反応は、例えば120℃~190℃で行うことができる。例えば、前記範囲内で120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、130℃~170℃、130℃~160℃、130℃~150℃、130℃~140℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
前記反応は、例えば6時間~96時間行うことができる。例えば、前記範囲内で30時間~96時間、30時間~96時間、30時間~80時間、30時間~72時間、24時間~80時間、24時間~72時間、36時間~96時間、36時間~80時間、36時間~72時間、36時間~66時間、36時間~60時間、48時間~96時間、48時間~88時間、48時間~80時間、48時間~72時間、6時間~96時間、7時間~96時間、8時間~80時間、9時間~72時間、9時間~80時間、6時間~72時間、9時間~96時間、10時間~80時間、10時間~72時間、12時間~66時間、13時間~60時間、14時間~96時間、15時間~88時間、16時間~80時間、17時間~72時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0137】
前記例示した範囲内で時間および温度を調節して、反応が過剰せずに十分に行われるようにすることができる。例えば、反応温度が低くなると反応時間を増やしたり、反応温度が高くなると反応時間を短くしたりすることができる。反応が十分でないと、気孔の拡張が十分でないことがあり、反応が進行しすぎると、気孔の過剰拡張により粒子が崩壊することがある。
【0138】
前記反応は、例えば、段階的に昇温して行うことができる。具体的には、常温から前記温度まで0.5℃/分~15℃/分の速度で段階的に昇温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~15℃/分、3℃/分~15℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0139】
前記反応は、攪拌下で行うことができる。例えば100rpm以上の速度で攪拌することができ、具体的には100rpm~1,000rpmの速度で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
前記反応後は、反応液を徐々に冷却することができ、例えば、段階的に減温して冷却することができる。具体的には、前記温度から常温まで0.5℃/分~20℃/分の速度で段階的に減温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~20℃/分、3℃/分~20℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0141】
前記冷却後に反応産物を洗浄および乾燥し、気孔が拡張された多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0142】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0143】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上、10回以下、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回などであってもよい。
【0144】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができ、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0146】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0147】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0148】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0149】
その後、得られた粒子は、か焼することができる。か焼は、粒子を加熱してその表面および内部のシラノール基を除去して粒子の反応性を下げ、より緻密な構造にし、気孔を満たす有機物を除去する工程であり、例えば400℃以上の温度に加熱して行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば、1,000℃、900℃、800℃、700℃等であってもよい。加熱は、例えば3時間以上行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば、24時間、12時間、10時間、8時間、6時間などであってもよい。より具体的には、400℃~700℃で3時間~8時間、具体的には500℃~600℃で4時間~5時間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
気孔を満たす有機物を除去することにより、残存有機物によって示される細胞毒性、泡の発生などの問題を防止することができる。
【0151】
その後、得られた多孔性シリカ粒子は、表面改質することができる。表面改質は、表面及び/又は気孔内部に行うことができる。粒子表面と気孔内部は、同じように表面改質してもよく、異なるように表面改質してもよい。
【0152】
前記表面改質により粒子が帯電されるようにするか、または親水性及び/又は疎水性の性質を持つようにすることができる。
【0153】
より具体的には、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の効果的な担持のために、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、窒素原子を含むヘテロ環芳香族化合物基、シアン基及びグアニジン基からなる群より選択される少なくとも一つの置換基を有するようにして、前記多孔性シリカ粒子の表面改質を行うことができる。
【0154】
表面改質は、例えば、導入しようとする親水性、疎水性、陽イオン性、陰イオン性などの置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができる。前記化合物は、例えばC1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0155】
前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1個以上有するものであり、例えば1~3個有することができ、アルコキシ基が結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0156】
前記アルコキシシランを多孔性シリカ粒子と反応させると、シリコン原子と酸素原子との共有結合が形成され、アルコキシシランが多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部と結合することができる。前記アルコキシシランは、導入しようとする置換基を有しているので、当該置換基を多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に導入することができる。
【0157】
前記反応は、溶媒に分散した多孔性シリカ粒子をアルコキシシランと反応させて行うことができる。
【0158】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0159】
前記陽電荷での帯電は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などの窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
前記陰電荷での帯電は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、チオール基などの酸性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0161】
前記無電荷(陽電荷または陰電荷でなない、電荷がない状態)での帯電は、電荷を持たない通常の官能基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができ、前記陽電荷での帯電と陰電荷での帯電を適宜組み合わせて、陽電荷と陰電荷の相殺による無電荷に帯電させることができるが、これに限定されるものではない。
【0162】
前記親水性の性質は、親水性基、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、 N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
前記疎水性の性質は、疎水性置換基、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、ハロゲン含有基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、トリメトキシ(オクタデシル)シラン(Trimethoxy(octadecyl)silane)、トリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)、トリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)、イソブチル(トリメトキシ)シラン(Isobutyl(trimethoxy)silane)、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン(Trimethoxy(7-octen-1-yl)silane)、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン(Trimethoxy(3,3,3-trifluoropropyl)silane)、トリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン(Trimethoxy(2-phenylethyl)silane)、ビニルトリメトキシシラン(Vinyltrimethoxysilane)、シアノメチル(Cyanomethyl)、[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート([3-(trimethoxysilyl)propyl]trithiocarbonate)、(3-ブロモプロピル)トリメトキシシラン((3-Bromopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
そのほか、前記表面改質により難溶性(疎水性)のCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能であり、表面に他のCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を結合するための置換基が存在してもよい。
【0165】
また、前記表面改質は、複合的に行うこともできる。例えば、外部表面または気孔内部に2回以上の表面改質を行うこともできる。具体例として、アミノ基が導入されたシリカ粒子にカルボキシル基を含む化合物をアミド結合で結合して陽電荷に帯電した粒子を、他の表面特性を持つように変化させることができるが、これに限定されるものではない。
【0166】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0167】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
前記反応温度、時間、そして表面改質に使用される化合物の量などは、表面改質しようとする程度によって選択できる。本発明の核酸分子または物質の親水性、疎水性、電荷の程度によって反応条件を変えて多孔性シリカ粒子の親水性、疎水性、電荷の程度を調節することにより、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質の放出速度を調節することができる。例えば、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで強い陰電荷を帯びる場合には、多孔性シリカ粒子が強い陽電荷を帯びるようにするために、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたり、化合物の処理量を増やすことができるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造、気孔の拡張、表面改質、気孔内部の改質工程を経て製造されたものであってもよい。
【0170】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程は前述通りの工程によって行うことができ、小気孔の粒子の製造後、そして気孔拡張工程の後に洗浄及び乾燥工程を行うことができる。
【0171】
必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。未反応物質の分離は、例えば遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。
【0172】
前記遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0173】
前記小気孔の粒子の製造後の洗浄は、先に例示した範囲内の方法/条件で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
前記気孔拡張後の洗浄は、先の例示よりは緩和された条件で行うことができる。例えば、洗浄を3回以内行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0175】
前記表面改質と気孔内部改質のそれぞれは、前述通りの工程によって行うことができる。表面改質と気孔内部改質の順に工程を行うことができ、前記両工程の間に粒子の洗浄工程をさらに行うことができる。
【0176】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張の後に洗浄をより緩和された条件で行う場合、気孔内部には粒子製造、気孔拡張に使用された界面活性剤などの反応液が満たされているため、表面改質時に気孔内部が改質されずに、表面だけが改質され得る。その後、粒子を洗浄すると、気孔内部の反応液が除去され得る。
【0177】
前記表面改質工程と気孔内部改質工程との間の粒子の洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0178】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0179】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液をそのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0180】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0181】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0182】
CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に担持することができる。担持は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子とを混合して行うことができる。
【0183】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0184】
また、前記溶媒として、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、Borate-buffered saline、Tris-buffered salineなどを使用することもできる。
【0185】
前記多孔性シリカ粒子と本発明の核酸分子の割合は、特に限定されず、例えば、重量比が1:0.05~0.8、例えば、前記範囲内で1:0.05~0.7、1:0.05~0.6、1:0.1~0.8、1:0.1~0.6、1:0.2~0.8、1:0.2~0.6等であってもよい。
【0186】
前記多孔性シリカ粒子に担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、延長された時間をかけて段階的に放出され得る。このような遅い放出は、連続または非連続性、線形または非線形であってもよく、多孔性シリカ粒子の特徴及び/又はそれとCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子との相互作用に起因して異なり得る。
【0187】
前記多孔性シリカ粒子に担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子が生分解されながら放出されるが、本発明に係る多孔性シリカ粒子は徐々に分解され、担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子が徐放的に放出されるようにすることができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することで調節できるが、これらに限定されるものではない。
【0188】
また、前記多孔性シリカ粒子に担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子から離脱して拡散しながらも放出できる。これは多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境との関係に影響を受けるものであるところ、これを調整して、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。例えば、表面改質によって多孔性シリカ粒子のCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子との結合力を強化または弱化させることによって調節することができる。
【0189】
より具体的な例として、担持されるCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が難溶性(疎水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が疎水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が疎水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0190】
本明細書で「難溶性」とは、(水に対して)不溶性(insoluble)、実質的に不溶性(practically insoluble)、またはごくわずかの可溶性(only slightly soluble)を含む意味である。これは「Pharmaceutical Science」18th Edition(USP、Remington、Mack Publishing Company発行)に定義されている用語である。
【0191】
前記難溶性の物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L未満、具体的には5g/L未満、より具体的には1g/L未満であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0192】
担持されるCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が水溶性(親水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が親水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が親水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0193】
水溶性物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0194】
担持されるCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が電荷を帯びる場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部がその逆の電荷に帯電することにより、多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が酸性基または塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0195】
具体的には、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで陽電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が中性のpHで陰電荷に帯電するものであってよい。これにより、多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加して、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)などの酸性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0196】
また、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで陰電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が陽電荷に帯電するものであってもよい。これにより、多孔性シリカ粒子とCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加して、CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がアミノ基、その他窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0197】
CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質は、必要な治療の種類、放出環境、使用される多孔性シリカ粒子に依存して、例えば7日~1年またはそれ以上の期間にわたって放出され得る。
【0198】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性で100%分解され得るので、これに担持されたCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質は、100%放出され得る。
【0199】
前記CTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、前述の通り、配列番号1の配列との相補性が10ヌクレオチド(nucleotide;nt)以上、11ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、13ヌクレオチド以上、14ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上、16ヌクレオチド以上、17ヌクレオチド以上、または18ヌクレオチド全体であってもよい。これに関する具体的な説明は前述の通りである。
【0200】
本発明は、前述したCTGF遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含むCTGF遺伝子発現抑制用組成物;を含む線維増殖性疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0201】
前記核酸分子、多孔性シリカ粒子、CTGF遺伝子発現の抑制、線維増殖性疾患、薬学的組成物の様々な剤形などの具体的な内容は、前述の通りである。
【0202】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することにする。
【0203】
以下、本発明で使用されるsiRNAは「siCTGF」、本発明の多孔性シリカ粒子は「DegradaBALLまたはDDV」、siCTGFが担持されたDegradaBALLは「LEM-S401」と略称することがある。
【0204】
実験方法
1.実験材料
DegradaBALLとTAMRAが結合したDegradaBALLは、Lemonex,Inc.(ソウル、大韓民国)から提供された。細胞計数キット-8(Cell counting kit-8)は、Dojindo molecular technologies、Inc.(Maryland、USA)から購入した。TGF-βは、Peprotech(New Jersey、USA)から購入した。10%リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、胎児ウシ血清(FBS)、ロズウェルパーク記念研究所1640(RPMI 1640)、ペニシリン-ストレプトマイシン及び0.05%トリプシン-EDTAは、WelGene(大韓民国)から購入した。核酸分子は、いずれもLemonex(ソウル、大韓民国)により合成された。その配列及び本明細書で使用される核酸分子の配列を下記表1に示す。PCRプライマーは、いずれもCosmogenetech(ソウル、大韓民国)から購入した。抗マウスCTGF抗体は、Abcam(Cambridge、UK)から購入し、抗マウスコラーゲン1、3抗体は、Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)から購入した。Trizol細胞溶解液は、Molecular Probes Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)から購入した。PCR試薬は、いずれもTaKaRa Bio Inc.(Shiga、Japan)から購入した。すべての化学物質は、受領してそのまま使用した。なお、以下に示す表1において、「Target sequence」は「標的配列」を、「Position in gene sequence」は「遺伝子配列の位置」を、「GC content」は「GC含有量」を、「Sense strand」は「センス鎖」を、「Antisense strand」は「アンチセンス鎖」を、それぞれ意味する。
【0205】
【0206】
2.動物モデル
すべての動物実験は、大韓民国のソウル大学のIACUC(Institutional Animal Care and Use Committees)に準拠して行った。C57BL/6雄マウス(5週)は、ORIENT BIO社(城南市、大韓民国)から購入した。
【0207】
3.細胞生存の測定
A549及びHaCaT細胞を100μlの成長培地(50~70%コンフルエント)を有する96ウェル培養プレートにウェル当たり10,000細胞の密度で接種した。細胞を血清含有培地で適切な濃度のDegradaBALLで処理し、37℃で24時間培養した。培養後、細胞を1xPBSで2回洗浄した後、10μlのCCK-8を含有した100μlの無血清培地を添加し、さらに1時間培養した。培養プレート内の各ウェルの光学密度を450nmの波長で測定した。三重項(deviation of triplicates)の平均及び標準偏差が計算され、プロットされた。
【0208】
4.細胞ベースのCTGFノックダウン(knockdown)の分析
イン・ビトロでのLEM-S401のCTGF遺伝子サイレンシング効率を証明するために、無血清培地のLEM-S401(12.5、25、50及び100nM)の500μlを、ウェル当たり25,000細胞のコンフルエントで接種したプレート内のA549及びHaCaT細胞に処理した。37℃の加湿された5%CO2培養器で6時間培養した後、無血清培養液を除去した。1xPBSで2回洗浄した後、血清含有細胞培地を入れ替えた。さらに6時間後、血清含有培養培地を除去し、1xPBSで洗浄した。血清を含有した培地でTGF-β(2ng/mL)500μlを細胞で処理し、CTGF誘導のために培養12時間後、Trizolを用いてs総RNAを抽出した。
【0209】
LEM-S401によるCTGFノックダウン(knockdown)の持続期間を測定するために、A549及びHaCaT細胞を無血清培地でLNPを含有したLEM-S401(50nM siCTGF)及びsiCTGF(50nM)500μlで処理した。加湿された5%CO2培養器中で37℃で6時間培養した後、無血清培養液を除去した。1xPBSで2回洗浄した後、血清含有細胞培地を入れ替えた。指示された時間培養を行った後、細胞を血清含有培養培地でTGF-β(2ng/mL)500μlで処理し、CTGF誘導のために、さらに細胞を24時間培養した。総RNAは、Trizolを用いて抽出した。
【0210】
5.RT-PCR
すべてのイン・ビトロ及びイン・ビボで抽出したRNAは、以下の反応条件下で熱循環反応に用いられた。cDNAの合成:65℃で5分、42℃で2分、42℃で50分、70℃で15分間不活性化1サイクル、増幅過程:95℃で30秒、55℃で60秒、72℃で30秒の30サイクル。
【0211】
6.siCTGF及び多孔性シリカ粒子のインビボ・イメージング
LEM-S401(33mM)(FITC-接合siCTGF及びTAMRA-結合DegradaBALL)の30μlを7つの他の部位でマウスの皮膚に注射した。犠牲にした後、FOBI生体内イメージング機器(NeoScience Co.,Ltd.、ソウル市、大韓民国)を用いて、切除されたマウスの皮膚の蛍光画像を撮影した。得られた皮膚サンプルを4%PFA溶液に入れた。サンプルをパラフィンに包埋し、10μmの厚さに切断した。脱水過程の後、切片されたサンプルをDAPIで染色した。サンプルは20x対物レンズ(Olympus、Tokyo、Japan)が装着されたBX71顕微鏡により観察した。
【0212】
7.マウス皮膚傷モデルを用いたインビボ実験
マウスの皮膚に生検パンチ(4mm)を用いて傷を作成すようにパンチングした。時間が経過し、傷を明確に観察するために、黒いシルク糸を用いて、シリコン副木(外側15mm、内側8mm)を傷の周りに縫合した。1xPBSでLEM-S401(3mM)30μLを4日ごとに(4日、8日、12日)、傷の周りの4つの異なる部位に皮下注入した。傷はテガダーム(Tegaderm)と包帯を2日に一回ずつ交換して管理した。16日後、マウスを犠牲にした。
【0213】
LEM-S401が組織リモデリングの過程でCTGFの発現を抑制することを証明するために、マウスの皮膚に穴を開けて、生検パンチ(4mm)を用いて傷を作成してバンドで包んだ。傷が完全に閉じた後、1xPBSでLEM-S401(33mM)30μlを4日ごとに(10日、14日、18日、22日)4つの異なる部位の傷部位に皮下注入した。マウスを26日目に犠牲にした。
【0214】
8.免疫組織化学
マウスの皮膚サンプルを24時間4℃で4%PFA溶液で培養した。その後、サンプルをパラフィンに包埋し、10μmの厚さで切片を作成した。切片化したサンプルを脱水させ、透過溶液(1xPBS中0.2%tween 20)でそれぞれ10分ずつ2回培養した。その後、サンプルを加湿された大気下でブロッキング溶液(5%正常ヤギ血清、1xPBS中0.2%tween 20)で45分間インキュベートした。サンプルを室温で3時間、加湿チャンバーで2%正常ヤギ血清およびPBS中の抗体の1:100希釈液を有する0.2%tween 20を含有する1次抗体溶液と共にインキュベートした。サンプルを透過溶液でそれぞれ10分間3回洗い、室温で2時間1xPBSで、2%正常ヤギ血清及び0.2%tween 20を含有する2次抗体希釈溶液と共に培養した。サンプルを透過溶液で洗浄し、DAPIで染色した。サンプルは20x対物レンズ(Olympus、Tokyo、Japan)が装着されたBX71顕微鏡により観察した。
【0215】
9.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
9-1.多孔性シリカ粒子の製造
(1)多孔性シリカ粒子の製造
1)小気孔粒子の製造
2L丸底フラスコに蒸留水(DW)の960mlとMeOHの810mlを入れた。前記フラスコにCTABを7.88g入れた後、攪拌しながら1M NaOHの4.52mlを素早く入れた。10分間攪拌して均一な混合液を得た後、TMOSの2.6mlを入れた。6時間攪拌して均一に混合した後、24時間熟成し、反応液を得た。
その後、前記反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブンで乾燥し、1.5gの粉末状の小気孔多孔性シリカ粒子(気孔平均直径2nm、粒径200nm)を得た。
【0216】
2)気孔の拡張
1.5gの小気孔多孔性シリカ粒子の粉末をエタノール10mlに添加して超音波分散し、水10ml、TMB(trimethyl benzene)10mlを添加して超音波分散し、分散液を得た。
その後、前記分散液をオートクレーブに入れて160℃、48時間反応させた。
反応は25℃で開始し、10℃/分の速度で昇温して行った。その後、オートクレーブ内で1~10℃/分の速度で徐々に冷却した。
冷却した反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後70℃のオーブンで乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0217】
3)か焼
前記2)で製造された多孔性シリカ粒子をガラスバイアル(vial)に入れて550℃で5時間加熱し、反応終了後、常温まで徐々に冷却して粒子を製造した。
【0218】
(2)多孔性シリカ粒子の製造
気孔拡張時の反応条件を140℃、72時間に変更した以外は、前記9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0219】
(3)多孔性シリカ粒子の製造(10Lスケール)
5倍大きな容器を使用し、各物質をいずれも5倍の容量で使用した以外は、実施例9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0220】
(4)多孔性シリカ粒子の製造(粒径300nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0221】
(5)多孔性シリカ粒子の製造(粒径500nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水800ml、メタノール1,010ml、CTAB 10.6gを使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0222】
(6)多孔性シリカ粒子の製造(粒径1,000nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水620ml、メタノール1,380ml、CTAB 7.88gを使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0223】
(7)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径4nm)
気孔拡張時にTMBを2.5ml使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0224】
(8)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径7nm)
気孔拡張時にTMBを4.5ml使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0225】
(9)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径17nm)
気孔拡張時にTMBを11ml使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0226】
(10)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径23nm)
気孔拡張時にTMBを12.5ml使用した以外は、9-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0227】
(11)多孔性シリカ粒子の製造(二重改質)
1)小気孔粒子の製造
実施例9-1-(1)-1)の方法と同様にして小気孔粒子を製造した。
【0228】
2)気孔の拡張
実施例9-1-(1)-2)の方法と同様にして小気孔粒子をTMBと反応させ、冷却し、遠心分離して上澄み液を除去した。その後、実施例9-1-(1)-2)と同じ条件で遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に3回洗浄した。その後、実施例9-1-(1)-2)と同じ条件で乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0229】
3)表面改質
気孔が拡張された多孔性シリカ粒子0.8g~1gを50mlのトルエンに分散した後、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)を5ml入れて120℃で還流したまま12時間加熱した。この過程では、前述の洗浄過程および乾燥過程を経た後、1mlのトリエチレングリコール(PEG3,2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy] acetic acid)と、100mgのEDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)と、200mgのN-ヒドロキシコハク酸イミド(N-Hydroxysuccinimide,NHS)を30mlのPBSに分散して常温で攪拌したまま12時間反応する。その後、生成物は、前記の洗浄及び乾燥過程を経る。
気孔内部に、前のステップの反応液が残っているため、気孔内部は改質されない。
【0230】
4)気孔内部の洗浄
表面改質された粒子粉末800mgを2M HCl/エタノール40mlに溶かし、12時間強く撹拌下で還流した。
その後、冷却された反応液を10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブン中で乾燥して粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0231】
5)気孔内部の改質
i)後述する実施例9-2-(2)-1)の方法と同様にして気孔内部にプロピル基を導入した。
ii)後述する実施例9-2-(2)-2)の方法と同様にして気孔内部にオクチル基を導入した。
【0232】
9-2.多孔性シリカ粒子の表面改質
(1)陽電荷での帯電
1)粒径300nmの粒子
実施例9-1-(4)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて、陽電荷に帯電させた。
具体的には、100mL丸底フラスコにおいて、100mgの多孔性シリカ粒子を10mLのトルエンに洗浄器(bath sonicator)で分散させた。その後、1mLのAPTESを添加し、400rpmで攪拌し、130℃で攪拌して12時間反応させた。
反応後、常温まで徐々に冷却し、10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブン中で乾燥し、表面および気孔内部にアミノ基を有する粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0233】
2)粒径200nmの粒子
i)実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、APTESを0.4ml添加し、反応時間を3時間とした以外は、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
ii)実施例9-1-(9)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
iii)実施例9-1-(10)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0234】
(2)疎水性基の導入
1)プロピル基
前記実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)を0.35ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例9-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0235】
2)オクチル基
前記実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)を0.5ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例9-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0236】
(3)陰電荷での帯電
1)カルボキシル基
前記実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子を無水コハク酸(succinic anhydride)と反応させて陰電荷に帯電させ、トルエンの代わりにDMSO(ジメチルスルホキシド)を使用し、APTESの代わりに80mgの無水コハク酸(succinic anhydride)を添加して24時間常温で攪拌し反応させ、洗浄時に蒸留水の代わりにDMSOを使用した以外は、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0237】
2)チオール基
APTESの代わりにMPTESの1.1mLを使用した以外は、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0238】
3)スルホン酸基
前記実施例9-2-(3)-2)の多孔性シリカナノ粒子100mgを、1M硫酸水溶液1mLと30%過酸化水素水20mLに分散して常温で攪拌し、酸化反応を誘導してチオール基をスルホン酸基に酸化した。その後、前記実施例9-2-(1)-1)の方法と同様にして洗浄および乾燥した。
【0239】
9-3.核酸分子の担持
実施例9-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子10μgと50pmolの核酸分子を1xPBS条件下で混合した後、常温で30分間置いて積載した。
【0240】
実験結果
1.本発明の核酸分子のCTGF発現抑制の分析
前記実施例に基づいて製造された核酸分子(PNA、siRNAまたはdsRNA;前記表1を参照)のCTGFの発現抑制率を下記表2、3に示す。
【0241】
下記の表1、2を参照すると、配列番号1の配列と相補性が10ヌクレオチド以上相補性を有する鎖を含む核酸分子(配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号52の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号54の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号55の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号57の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号58の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号60の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号61の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号63の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号64の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号66の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号67の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号69の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号70の配列からなるセンスRNA及び配列番号71の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号72の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号87~99の配列からなる群より選択される一つの配列からなるアンチセンスPNA)の場合には、90%を上回る抑制率を示すのに対し、それを満たしていない他の核酸分子の場合には、75%未満の低い抑制率を示すことが確認できた。
【0242】
特に、7ヌクレオチドのみの相補性を有する鎖を含む核酸分子(配列番号4の配列からなるセンスRNA及び配列番号5の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA;配列番号6の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA)の場合には、60%前後の顕著に低い発現抑制率を示した。このことから、配列番号1の配列との相補性が10ヌクレオチド以上であることに技術的意義が存在すると判断される。
【0243】
このうち、発現抑制率が最も高く、配列番号1の配列と18ヌクレオチド全体が相補的な鎖を含む、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号2の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA;または配列番号3の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAを選択して以下の実験を行った。
【0244】
【0245】
2.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
2-1.粒子の形成及び気孔拡張の確認
実験方法の実施例9-1-(1)~(3)の粒子の小気孔粒子、製造された多孔性シリカ粒子を顕微鏡で観察し、小気孔粒子が均一に生成されているか、気孔が十分に拡張されて多孔性シリカ粒子が均一に形成されているかを確認した(
図28~31)。
図28は、実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子の写真、
図29は、実施例9-1-(2)の多孔性シリカ粒子の写真であり、気孔が十分に拡張された球状の多孔性シリカ粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
図30は、実施例9-1-(1)の小気孔粒子の写真、
図31は、実施例9-1-(1)と9-1-(3)の小気孔粒子の比較写真であり、球状の小気孔粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0246】
2-2.BET表面積および気孔体積の計算
実験方法の実施例9-1-(1)の小気孔粒子、実施例9-1-(1)、(7)、(8)、(10)の多孔性シリカ粒子の表面積と気孔体積を計算した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)方法により計算し、気孔サイズの分布は、バーレット-ジョイナー-ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)方法により計算した。
前記各粒子の顕微鏡写真は
図32に、計算の結果は下記表4に示す。
【0247】
【0248】
2-3.生分解性の確認
実験方法の実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子の生分解性を確認するために、37℃、SBF(pH7.4)における生分解の程度を0時間、120時間、360時間に顕微鏡で観察し、それを
図33に示す。
これを参照すると、多孔性シリカ粒子が生分解され、360時間経過後はほぼすべてが分解されたことを確認することができる。
【0249】
2-4.吸光度比の測定
時間別に下記数式1による吸光度比を測定した。
【0250】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0251】
具体的には、多孔性シリカ粒子粉末5mgをSBF(pH7.4)5mlに溶かした。その後、5mlの多孔性シリカ粒子溶液を、
図34に示す直径50kDaの気孔を有する透過膜に入れた。外部膜に15mlのSBFを添加し、外部膜のSBFは12時間ごとに入れ替えた。多孔性シリカ粒子の分解は、37℃で60rpmで水平攪拌して行った。
その後、紫外・可視分光法(UV-vis spectroscopy)によって吸光度を測定し、λ=640nmで分析した。
【0252】
(1)吸光度比の測定
実験方法の実施例9-1-(1)の多孔性シリカ粒子の吸光度比を前記方法に従って測定し、その結果を
図35に示す。
これを参照すると、吸光度比が1/2となるtは約58時間であり、非常にゆっくりと分解されることが確認できた。
【0253】
(2)粒径別
実験方法の実施例9-1-(1)、(5)、(6)の多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定し、その結果を
図36に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、粒径の増加によってtが減少することが分かる。
【0254】
(3)気孔の平均直径別
実験方法の実施例9-1-(1)、(9)の多孔性シリカ粒子、そしてコントロールとして実験方法の実施例9-1-(1)の小気孔多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定した。その結果を
図37に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、実施例の多孔性シリカ粒子は、コントロールに比べてtが非常に大きいことが確認できる。
【0255】
(4)pH別
実験方法の実施例9-1-(4)の多孔性シリカ粒子のpH別吸光度を測定した。吸光度は、SBFで、そしてpH2、5及び7.4のTrisで測定し、その結果を
図38に示す。
これを参照すると、pH別にtの差はあるが、いずれも吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0256】
(5)帯電
実験方法の実施例9-2-(1)-1)の多孔性シリカ粒子の吸光度を測定し、その結果を
図39に示す(懸濁液と溶媒としては、トリス(Tris,pH7.4)を使用した。)。
これを参照すると、陽電荷に帯電した粒子も吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0257】
2-5.担持した核酸分子の放出
Cy5-siRNAをロードした多孔性シリカ粒子10μlをSBF(pH7.4、37℃)に再浮遊させ、気孔直径20kDaの透過膜(
図40のチューブ)に入れた。
その後、透過チューブを1.5mlのSBFに浸漬した。
siRNAの放出は、37℃で60rpmで水平攪拌して行われた。
24時間の前には、0.5、1、2、4、8、12、24時間経過した時間に放出溶媒を回収した。その後は24時間間隔で0.5mlの放出溶媒を蛍光測定のために回収し、等量のSBFを添加した。
Cy5-siRNAの蛍光強度は、670nmの波長(λ
ex=647nm)で測定し、siRNAの放出程度を測定した。その結果は
図41に示す。
これを参照すると、siRNAが50%放出された時間は約48時間であることを確認することができる。
【0258】
3.イン・ビトロ上のLEM-S401のCTGF mRNAノックダウンの効果的誘導の確認
LEM-S401のターゲット遺伝子ノックダウン効率を測定するために、A549(ヒト肺癌非小細胞)細胞とHaCaT(ヒトケラチノサイト細胞)細胞を、siCTGFを担持したDegradaBALL(LEM-S401)で処理した。両細胞株は、いずれも機能的に活性なCTGF転写経路を持っているため、A549及びHaCaT細胞は線維症の研究でイン・ビトロモデル細胞として広く用いられている。まず、A549細胞を様々な濃度のLEM-S401(12.5、25、50及び100nM)で処理した後、CTGFの発現を誘導するために2ng/mLのTGF-βと共に培養した(
図1)。以前の研究では、TGF-βがイン・ビトロでCTGFの発現を誘導することを示したことがあり、TGF-βをA549及びHaCaT細胞に処理することにより、CTGFの発現レベルが顕著に増加することを確認した(
図17)。細胞株に対するLEM-S401の処理は、濃度依存的にCTGFのmRNA発現レベルを減少させた。一方、対照群(siCTGF only、scrambled siRNA及びvehicle(DegradaBALL)only)は、A549及びHaCaT細胞の両方において、CTGFのmRNAレベルに有意な差を示さなかった(
図2、3)。この結果は、LEM-S401が細胞内へsiCTGFを効率的にトランスフェクション(transfection)させ、CTGF遺伝子のノックダウンを誘導することを示す。
【0259】
4.イン・ビトロ上のLEM-S401の徐放的なsiCTGFの放出
本実験では、LEM-S401は、A549及びHaCaT細胞においてLNPよりもCTGFノックダウン効果をより長く維持した。A549及びHaCaT細胞をLEM-S401(50nM)及びLNP(50nM)に担持されたsiCTGFで処理した後、TGF-β処理によってCTGFの発現を誘導した。A549細胞において、CTGFの下向き調節は、LEM-S401の処理後96時間まで持続された(CTGF発現レベル、72時間:26.3%、96時間:26.9%)。これに対して、LNPに担持されたsiCTGFのノックダウン効率は72時間、96時間の両方で高くなかった(CTGF発現レベル、72時間:46.4%、96時間:58.6%)。また、HaCaT細胞において、LEM-S401のノックダウン効率(CTGF発現レベル、72時間:34.3%、96時間:35.8%)は、LNPに担持されたsiCTGF(CTGF発現レベル、72時間:62.5%、96時間:78.8%)と比べて持続的で、優れていた(
図4、5)。これをまとめると、LEM-S401は、細胞でLNPに担持されたsiCTGFに比べて、より長期間、ターゲットmRNAの発現レベルを抑制することが分かった。
【0260】
5.マウス皮膚傷モデルにおけるLEM-S401のCTGF発現及び肥厚性瘢痕の形成抑制能の確認
次に、LEM-S401が生体内でCTGFの発現を下向き調節できるかを決定するための実験を行った。生体内での遺伝子ノックダウン効果を測定する前に、C57BL/6マウスにTAMRA-接合されたDegradaBALLに担持されたFITC-接合されたsiCTGFで構成された蛍光標識LEM-S401を注入し、担持されていない(自由)FITC-接合されたsiCTGFのみを皮下注入経路から注入して、LEM-S401と自由siCTGFの注入部位での持続時間を比較した。そして、切除されたマウスの皮膚と切片化された皮膚の蛍光画像解析は、注入後1,3,5日目に行った。FITC-siCTGFを担持したTAMRA-DegradaBALLの蛍光は、1日目に注入部位で強い発光を示した。そして、蛍光は時間の経過によって徐々に減少したが、注入後5日目まで注入部位での蛍光は維持された(
図6)。このように時間の経過によって注入部位での蛍光が減少する傾向は、皮膚切片スライドの傾向による(
図6)。一方、担持されていない自由FITC-siCTGFのみを注入したマウスから切除した皮膚や切片化した皮膚のスライドでは蛍光シグナルが観察されなかったが、これは自由siCTGFが体内で急速に分散してしまったり、非常に迅速な拡散を誘導する小さな断片に分解されることを暗示する(
図7)。前記データは、自由siCTGFと比べて、LEM-S401の方が皮膚内で顕著に高い濃度レベルのsiCTGFを、少なくとも注入後3日目まで維持できることを示す。
【0261】
次に、LEM-S401がCTGF遺伝子ノックダウンを誘導でき、コラーゲンの過剰生産を減少させることをマウス皮膚傷モデルによって証明した。マウスの背中の皮膚に生検パンチで傷を作成した後(0日)、管理及び観察のためにシリコン副木を傷の周りに縫合した。LEM-S401は、傷の周りに0,4,8,12日目に皮下注入した。マウスは16日目に犠牲にした。皮膚でのCTGFの発現レベルはRT-PCRにより分析した。CTGFの発現レベルは、LEM-S401の処理群で顕著に減少したのに対し、siCTGFまたはDegradaBALLのみを処理した群では、無処理群と比べて変化が観察されなかった。さらに、コラーゲンタイプ1、3の発現レベルもまた、LEM-S401の処理群で顕著に下向き調節された(
図8~10)。CTGFにより誘導されることが知られているコラーゲンタイプ1、3は、肥厚性瘢痕及びケロイドの主な構成要素である。このことから、LEM-S401によって発現が抑制されたCTGFがコラーゲンタイプ1、3の発現レベルに影響を与えたことを確認することができる。
【0262】
傷部位の結合組織の過剰成長によって引き起こされた、不均一で凸凹になった不規則な皮膚表面は、肥厚性瘢痕とケロイドの主な特徴である。10日目の傷ついた皮膚の写真では、対照群は不規則であったが、LEM-S401処理群は、規則的で柔らかった(
図11)。これはLEM-S401が制御できない不均一な皮膚の形成を抑制し、肥厚性瘢痕の形成を防止することを証明する。免疫組織化学分析は、また、対照群よりもLEM-S401処理群でCTGF及びコラーゲンタイプ1、3の発現が有意に低いことを示した(
図12~15)。皮膚の傷回復過程中、組織リモデリング過程は、表皮が回復した後に真皮で起こる。この過程で、コラーゲン線維の発現が増加するが、コラーゲン形成を制御できない場合には肥厚性瘢痕やケロイドが誘発されることがある。そこで、組織リモデリングの過程でLEM-S401がCTGFとコラーゲンの発現を抑制できるかどうかを確認するために、表皮が回復した後にLEM-S401を注入した。具体的には、生検パンチを用いてマウスの皮膚に穴を開け(0日)、表皮が完全に回復した後、10,14,18,22日にLEM-S401を傷部位に注入した。通常、マウス傷モデルでは、傷の形成後、表皮の完全な回復は10日で十分であった。26日目にマウスを犠牲にした後、CTGF及びコラーゲンタイプ1、3の発現レベルをRT-PCRで分析した。LEM-S401処理群のCTGFとコラーゲンの発現レベルは、対照群に比べて有意に低かった(
図18~20)。免疫組織化学分析は、CTGFとコラーゲンタイプ1、3タンパク質の発現レベルがLEM-S401処理群で顕著に減少することを示した(
図21~24)。
【配列表】