(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
H01L21/60 301G
(21)【出願番号】P 2021539455
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027421
(87)【国際公開番号】W WO2022013955
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩章
(72)【発明者】
【氏名】手井 森介
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-222128(JP,A)
【文献】特開2006-278407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0054665(US,A1)
【文献】特開2019-176111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボンド点と第2ボンド点との間をワイヤで接続する半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤが挿通されるキャピラリと、前記キャピラリを移動させる移動機構と、を備えるワイヤボンディング装置を準備する準備工程と、
前記キャピラリに挿通された前記ワイヤの先端にフリーエアボールを形成した後、前記キャピラリの先端を圧着高さまで下降させて前記フリーエアボールを前記第1ボンド点に接合して圧着ボールと前記圧着ボールの上側のボールネックとを形成するボールボンディング工程と、
前記キャピラリの先端を水平方向に移動させて、前記ボールネックと前記圧着ボールとの間に断面積を減らした薄肉部を形成する薄肉部形成工程と、
前記薄肉部を形成した後、前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に円弧状に往復移動させて前記ワイヤを曲げ変形させるワイヤテール曲げ工程と、
前記キャピラリを上昇させてワイヤテールを繰り出した後、前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に移動させて、前記薄肉部において前記ワイヤテールと前記圧着ボールとを切り離すワイヤテール切り離し工程と、
前記キャピラリを下降させて切り離した前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの上に接合するワイヤテール接合工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記薄肉部形成工程は、前記キャピラリを前記圧着高さより高い剪断高さまで上昇させて前記キャピラリを水平方向に移動させること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記薄肉部形成工程は、前記薄肉部を形成する際に前記キャピラリを水平方向に往復動作させること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は3又は4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤテール切り離し工程は、前記薄肉部において前記ワイヤテールを前記圧着ボールから切り離す際に、
前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に向かって斜め上方向に移動させること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は3から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤテール接合工程は、前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの上に接合する際に、前記キャピラリの前記第1ボンド点の側のフェイス部を前記圧着ボールの前記第2ボンド点と反対側の端部の上まで移動させた後、前記キャピラリを下降させて前記キャピラリの前記フェイス部で、曲げ変形した前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの前記第2ボンド点と反対側の前記端部の上に接合すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
第1ボンド点と第2ボンド点との間をワイヤで接続するワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤが挿通されるキャピラリと、
前記キャピラリを移動させる移動機構と、
前記移動機構の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記キャピラリに挿通された前記ワイヤの先端にフリーエアボールを形成した後、前記キャピラリの先端を圧着高さまで下降させて前記フリーエアボールを前記第1ボンド点に接合して圧着ボールと前記圧着ボールの上側のボールネックとを形成し、
前記キャピラリの先端を水平方向に移動させて、前記ボールネックと前記圧着ボールとの間に断面積を減らした薄肉部を形成し、
前記薄肉部を形成した後、前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に円弧状に往復移動させて前記ワイヤを曲げ変形させ、
前記キャピラリを上昇させてワイヤテールを繰り出した後、前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に移動させて、前記薄肉部において前記ワイヤテールと前記圧着ボールとを切り離し、
前記キャピラリを下降させて切り離した前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの上に接合すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記制御部は、
前記薄肉部を形成する際に、前記キャピラリを前記圧着高さより高い剪断高さまで上昇させて前記キャピラリを水平方向に往復移動させ、
前記薄肉部において前記ワイヤテールを前記圧着ボールから切り離す際に、前記キャピラリを前記第2ボンド点の方向に向かって斜め上方向に移動させ、
前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの上に接合する際に、前記キャピラリの前記第1ボンド点の側のフェイス部を前記圧着ボールの前記第2ボンド点と反対側の端部の上まで移動させた後、前記キャピラリを下降させて前記キャピラリの前記フェイス部で、曲げ変形した前記ワイヤテールの側面を前記圧着ボールの前記第2ボンド点と反対側の前記端部の上に接合すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置の構造及びそのワイヤボンディング装置を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの薄型化が求められている。この要求を満たすためには、ワイヤボンディングで形成されるループワイヤの高さを低く抑えることが必要となる。そこで、従来から、ループ高さを抑える低ループ技術が多数提案されている。
【0003】
例えば、ボールボンディングを行った後、キャピラリを上昇させてワイヤテールを延出させた後、キャピラリを上昇させてワイヤテールを切断し、切断したワイヤテールを圧着ボールの上にボンディングすることでループ高さを低く抑えるボンディング方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第1ボンド点にボールボンディングを行った後、キャピラリを水平移動させて圧着ボールの上のボールネックを削り取り、その後キャピラリを上昇させてワイヤテールを延出させ、延出させたワイヤテールの側面を圧着ボールの上に複数回押圧した後、キャピラリを第2ボンド点に向かって移動させることによりループ高さを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4860128号公報
【文献】特開2019-176111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された従来技術の様にキャピラリを真上に上昇させてワイヤテールの延出、切断を行っても、ワイヤテールがキャピラリのフェイス部の下側に位置しないため、キャピラリでワイヤテールを圧着ボールの上に接合することが困難で、実現性の問題があった。
【0007】
また、特許文献2の方法では、押し付け部分のワイヤテールの断面積が小さくなってしまい、ワイヤのループ形状が制限される場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、ループ形状の自由度が大きい低ループワイヤを形成可能なワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1ボンド点と第2ボンド点との間をワイヤで接続する半導体装置の製造方法であって、ワイヤが挿通されるキャピラリと、キャピラリを移動させる移動機構と、を備えるワイヤボンディング装置を準備する準備工程と、キャピラリに挿通されたワイヤの先端にフリーエアボールを形成した後、キャピラリの先端を圧着高さまで下降させてフリーエアボールを第1ボンド点に接合して圧着ボールと圧着ボールの上側のボールネックとを形成するボールボンディング工程と、キャピラリの先端を水平方向に移動させて、ボールネックと圧着ボールとの間に断面積を減らした薄肉部を形成する薄肉部形成工程と、キャピラリを上昇させてワイヤテールを繰り出した後、キャピラリを第2ボンド点の方向に移動させて、薄肉部においてワイヤテールと圧着ボールとを切り離すワイヤテール切り離し工程と、キャピラリを下降させて切り離したワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合するワイヤテール接合工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
薄肉部形成工程により、ボールネックと圧着ボールとの接続部分の断面積を減らした薄肉部を形成してからワイヤテールを圧着ボールから切り離すので、小さな引張荷重でワイヤテールを圧着ボールから切り離すことができる。また、キャピラリを第2ボンド点の方向に移動させて、薄肉部においてワイヤテールと圧着ボールとを切り離すので、切断したワイヤテールがキャピラリの第1ボンド点側の下に入り込む。このため、ワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合することができ、ワイヤの延びる方向を水平方向としてループ高さを低くすることができる。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法において、薄肉部を形成した後、キャピラリを第2ボンド点の方向に円弧状に往復移動させてワイヤを曲げ変形させるワイヤテール曲げ工程を含んでもよい。
【0012】
このように、ワイヤを曲げ変形させるので、ワイヤテールを圧着ボールから切り離した際に、ワイヤテールがキャピラリの第1ボンド点側の下に入り込んだ状態を保持することができ、確実にワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合することができループ高さを低くすることができる。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法において、薄肉部形成工程は、キャピラリを圧着高さより高い剪断高さまで上昇させてキャピラリを水平方向に移動させてもよい。
【0014】
これにより、確実にボールネックを変形させて薄肉部を形成することができる。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法において、薄肉部形成工程は、薄肉部を形成する際にキャピラリを水平方向に往復動作させてもよい。
【0016】
これにより、ボールネックと圧着ボールとの接続部分の断面積を極力小さくすると共に、接続部分の断面積の大きさのバラツキを抑制できる。この結果、ワイヤテールを切断した際にキャピラリの先端から延出するワイヤテールの形状を安定させることができる。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法において、ワイヤテール切り離し工程は、薄肉部においてワイヤテールを圧着ボールから切り離す際に、キャピラリを第2ボンド点の方向に向かって斜め上方向に移動させてもよい。
【0018】
これにより、切断したワイヤテールと圧着ボールとが接触して再接合されることを抑制でき、ワイヤボンディングの安定性を高めることができる。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法において、ワイヤテール接合工程は、ワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合する際に、キャピラリの第1ボンド点の側のフェイス部を圧着ボールの第2ボンド点と反対側の端部の上まで移動させた後、キャピラリを下降させてキャピラリのフェイス部で、曲げ変形したワイヤテールの側面を圧着ボールの第2ボンド点と反対側の端部の上に接合してもよい。
【0020】
これにより、ワイヤテールの側面を確実に圧着ボールの上に接合することができる。
【0021】
本発明のワイヤボンディング装置は、第1ボンド点と第2ボンド点との間をワイヤで接続するワイヤボンディング装置であって、ワイヤが挿通されるキャピラリと、キャピラリを移動させる移動機構と、移動機構の駆動を制御する制御部と、を備え、制御部は、キャピラリに挿通されたワイヤの先端にフリーエアボールを形成した後、キャピラリの先端を圧着高さまで下降させてフリーエアボールを第1ボンド点に接合して圧着ボールと圧着ボールの上側のボールネックとを形成し、キャピラリの先端を水平方向に移動させて、ボールネックと圧着ボールとの間に断面積を減らした薄肉部を形成し、キャピラリを上昇させてワイヤテールを繰り出した後、キャピラリを第2ボンド点の方向に移動させて、薄肉部においてワイヤテールと圧着ボールとを切り離し、
キャピラリを下降させて切り離したワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合すること、を特徴とする。
【0022】
本発明のワイヤボンディング装置において、制御部は、ボールネックを形成した後、キャピラリを圧着高さより高い剪断高さまで上昇させてキャピラリを水平方向に往復移動させて薄肉部を形成し、薄肉部を形成した後、キャピラリを第2ボンド点の方向に円弧状に往復移動させてワイヤを曲げ変形させ、薄肉部においてワイヤテールを圧着ボールから切り離す際に、キャピラリを第2ボンド点の方向に向かって斜め上方向に移動させ、ワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合する際に、キャピラリの第1ボンド点の側のフェイス部を圧着ボールの第2ボンド点と反対側の端部の上まで移動させた後、キャピラリを下降させてキャピラリのフェイス部で、曲げ変形したワイヤテールの側面を圧着ボールの第2ボンド点と反対側の端部の上に接合してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ループ形状の自由度が大きい低ループワイヤを形成可能なワイヤボンディング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態のワイヤボンディング装置の構成を示す立面図である。
【
図2】実施形態のワイヤボンディング装置に取付けられるキャピラリの断面図である。
【
図3】実施形態のワイヤボンディング装置で形成したループワイヤを示す立面図である。
【
図4】キャピラリの先端の移動を示す説明図である。
【
図5】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う際のボールボンディング工程を示す説明図である。
【
図6A】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う際の薄肉部形成工程においてキャピラリをわずかに上昇させた状態を示す説明図である。
【
図6B】薄肉部形成工程において、
図6Aに示す状態からキャピラリをフォワード方向に向かって水平移動した状態を示す説明図である。
【
図6C】薄肉部形成工程において、
図6Bに示す状態からキャピラリをリバース方向に向かって水平移動した状態を示す説明図である。
【
図6D】薄肉部形成工程において、
図6Cに示す状態からキャピラリを再びフォワード方向に向かって少しだけ水平移動した状態を示す説明図である。
【
図7A】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う際のワイヤテール曲げ工程においてキャピラリを上昇させてワイヤテールを延出させた状態を示す説明図である。
【
図7B】ワイヤテール曲げ工程において、
図7Aに示す状態からキャピラリを第2ボンド点に向かって円弧状に移動させた状態を示す説明図である。
【
図7C】ワイヤテール曲げ工程において、
図7Bに示す状態からキャピラリの先端を第1ボンド点の方向に向かって円弧状に移動させた状態を示す説明図である。
【
図8】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う際のワイヤテール切り離し工程を示す説明図である。
【
図9A】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う際のワイヤテール接合工程においてキャピラリを圧着ボールの上まで移動させた状態を示す説明図である。
【
図9B】ワイヤテール接合工程において、
図9Aに示す状態からキャピラリを下降させてワイヤテールの側面を圧着ボールの上に接合した状態を示す説明図である。
【
図10】実施形態のワイヤボンディング装置を用いて第2ボンド点にループワイヤをステッチボンディングした状態の第1ボンド部とループワイヤとを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施形態のワイヤボンディング装置100について説明する。
図1に示す様に、実施形態のワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ボンディングアーム14と、超音波ホーン15と、キャピラリ20と、クランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19と、制御部60とを備えている。なお、以下の説明では、ボンディングアーム14又は超音波ホーン15の延びる方向をX方向、水平面でX方向と直角方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0026】
XYテーブル11は、ベース10の上に取付けられて上側に搭載されるものをXY方向に移動させる。
【0027】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12の中には、Z方向モータ13とZ方向モータ13によって駆動されるボンディングアーム14とが格納されている。Z方向モータ13は、固定子13bを備えている。ボンディングアーム14は、根元部14aがZ方向モータ13の固定子13bに対向し、Z方向モータ13のシャフト13aの周りに回転自在に取付けられる回転子となっている。
【0028】
ボンディングアーム14のX方向の先端には超音波ホーン15が取付けられており、超音波ホーン15の先端にはキャピラリ20が取付けられている。超音波ホーン15は、図示しない超音波振動子の振動により先端に取付けられたキャピラリ20を超音波加振する。キャピラリ20は後で
図2を参照して説明するように内部に上下方向に貫通する貫通孔21が設けられており、貫通孔21にはワイヤ16が挿通されている。
【0029】
また、超音波ホーン15の先端の上側には、クランパ17が設けられている。クランパ17は開閉してワイヤ16の把持、開放を行う。
【0030】
ボンディングステージ19の上側には放電電極18が設けられている。放電電極18は、ベース10に設けられた図示しないフレームに取付けられても良い。放電電極18は、キャピラリ20に挿通してキャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16との間で放電を行い、ワイヤ16を溶融させてフリーエアボール40を形成する。
【0031】
ボンディングステージ19は、上面に半導体チップ34が実装された基板30を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板30と半導体チップ34とを加熱する。
【0032】
ボンディングヘッド12のZ方向モータ13の固定子13bの電磁力によって回転子を構成するボンディングアーム14の根元部14aが
図1中の矢印71に示す様に回転すると、超音波ホーン15の先端に取付けられたキャピラリ20は矢印72に示す様にZ方向に移動する。また、ボンディングステージ19はXYテーブル11によってXY方向に移動する。従って、キャピラリ20は、XYテーブル11とZ方向モータ13によってXYZ方向に移動する。従って、XYテーブル11とZ方向モータ13とはキャピラリ20をXYZ方向に移動させる移動機構11aを構成する。
【0033】
XYテーブル11と、Z方向モータ13と、クランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19とは制御部60に接続されており、制御部60の指令に基づいて駆動される。制御部60は、XYテーブル11とZ方向モータ13とで構成される移動機構11aにより、キャピラリ20のXYZ方向の位置を調整するとともに、クランパ17の開閉、放電電極18の駆動、ボンディングステージ19の加熱制御を行う。
【0034】
制御部60は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU61と、動作プログラムや動作データ等を格納するメモリ62とを含むコンピュータである。
【0035】
次に
図2を参照しながらキャピラリ20の構造についして説明する。
図2は、キャピラリ20の先端部の一例を示す図である。キャピラリ20には、中心線24の方向に貫通する貫通孔21が形成されている。この貫通孔21の中にはワイヤ16が挿通される。したがって、貫通孔21の内径d1は、ワイヤ16の外径d2よりも大きい(d1>d2)。貫通孔21の下端は、円錐状に広がっている。この円錐状に広がるテーパー部は、チャンファー部22と呼ばれる。また、この円錐状の空間のうち最大の直径(すなわち最下端の直径)は、チャンファー径d3と呼ばれる。
【0036】
キャピラリ20の下端面は、
図1に示すフリーエアボール40を押圧するフェイス部23となる。このフェイス部23は、フラットな水平面でもよいし、外側に近づくにつれ上方にすすむような傾斜面でもよい。フェイス部23の幅、すなわち、チャンファー部22とキャピラリ20の下端の外周との距離を、「フェイス幅W」と呼ぶ。フェイス幅Wは、チャンファー径d3とキャピラリ20の外周径d4により、W=(d4-d3)/2で計算される。また、以下の説明では、キャピラリ20の下端の中心線24の上の点をキャピラリ20の先端25という。
【0037】
図2中に一点鎖線で示す様に、キャピラリ20の先端25を高さh1の点aまで加工させて
図1に示すフリーエアボール40をパッド35の上に押圧すると、フリーエアボール40はフェイス部23で押圧されて扁平化して直径d5で厚みhbの扁平円柱状の圧着ボール41が形成される。また、フリーエアボール40を形成する金属の一部は、チャンファー部22から貫通孔21に入り込み、圧着ボール41の上側に接続される円錐状部42aと円錐状部42aの上側に接続する円柱状部42bとで構成されるボールネック42が形成される。
【0038】
図3は、ワイヤボンディング装置100により形成されるループワイヤ52のイメージ図である。半導体チップ34には、複数のパッド35が配設されており、基板30には、複数のリード31が配設されている。ワイヤボンディング装置100は、このパッド35上に位置する第1ボンド点P1と、リード31上に位置する第2ボンド点P2とをループワイヤ52で接続する。
【0039】
第1ボンド点P1には、ワイヤ16の一端をパッド35に押し付けて形成される第1ボンド部50が形成されており、この第1ボンド部50から引き出されたループワイヤ52が、第2ボンド点P2まで延びる。第2ボンド点P2には、ループワイヤ52の他端をリード31に押し付けて形成される第2ボンド部51が形成されている。ここで、第2ボンド部51は、通常、ループワイヤ52をリード31に押し当てて潰したステッチボンドである。
【0040】
以下、
図4~
図9Bを参照してワイヤボンディング装置100の第1ボンド部50とループワイヤ52と第2ボンド部51とを形成する動作について説明する。以下の説明では、第1ボンド点P1からみて第2ボンド点P2に近づく方向を「フォワード方向」と呼び、第2ボンド点P2から離れる方向、或いは、第1ボンド点P1から見て第2ボンド点P2と反対方向を「リバース方向」と呼ぶ。各図中に示す「F」の符号はフォワード方法を示し、「R」の符号は、リバース方向を示す。また、
図4に示す矢印81~91は、
図5~
図9B中に示す矢印81~91に対応する。
【0041】
第1ボンド部50を形成する場合、制御部60のプロセッサであるCPU61は、まず、クランパ17を開放して、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25を放電電極18の近傍に移動させる。そして、CPU61は、放電電極18とキャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16との間で放電を発生させ、キャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16をフリーエアボール40に成形する。
【0042】
続いて、CPU61は、
図5に示す様にボールボンディング工程を実行する。CPU61は、
図4に示す様に、キャピラリ20の中心線24のXY座標を第1ボンド点P1の中心線36のXY座標に合わせ、
図4、
図5に示す矢印81の様にキャピラリ20の先端25を第1ボンド点P1に向かって点aまで下降させる。このとき、パッド35の上面からキャピラリ20の先端25までの高さh1、即ち、パッド35の上面から点aまでの高さh1は、圧着ボール41の厚みhb(
図2参照)の目標値に基づいて決められる。以下、この高さh1を「圧着高さh1」という。
【0043】
そして、
図5に示す様に、キャピラリ20のフェイス部23でフリーエアボール40をパッド35の上に押圧する。この際、キャピラリ20の先端25には超音波ホーン15を介して超音波振動が付与されていてもよい。
【0044】
キャピラリ20がフリーエアボール40をパッド35の上に押圧すると、先に
図2を参照して説明したように、フェイス部23とチャンファー部22とは、フリーエアボール40を圧着ボール41とボールネック42とに成形する。CPU61は、圧着ボール41とボールネック42とが形成されたらボールボンディング工程を終了する。
【0045】
次に、CPU61は、
図6A~
図6Dに示す様に薄肉部形成工程を実行する。CPU61は、クランパ17を開としておく。そして、CPU61は、
図6Aに示す様にZ方向モータ13を駆動して、キャピラリ20の先端25を
図4、
図6A中に示す矢印82の様に点bまで高さΔhbだけ僅かに上昇させ、キャピラリ20の先端25の高さを高さh2にする。以下、高さh2を「剪断高さh2」という。剪断高さh2は、圧着ボール41の上端面とボールネック42の上端面との間の高さで、キャピラリ20の先端25がボールネック42の側面に位置する高さである。
【0046】
次に、
図6Bに示す様に、CPU61は、キャピラリ20の先端25の高さを剪断高さh2に保持したまま、XYテーブル11を駆動して、
図4、
図6Bに示す矢印83の様に点cまでキャピラリ20を第2ボンド点P2に向かうフォワード方向に水平に距離Δxcだけ移動する。これにより、キャピラリ20の中心線24は、第1ボンド点P1の中心線36よりも第2ボンド点P2に寄った位置となる。
【0047】
次に、
図6Cに示す様に、CPU61は、キャピラリ20の先端25の高さを剪断高さh2に保持したまま、
図6Bとは逆に、XYテーブル11を駆動して、
図4、
図6Cに示す矢印84の様に点dまでキャピラリ20を第2ボンド点P2から第1ボンド点P1に向かうリバース方向に距離Δxdだけ水平移動させる。Δxdは
図6Bに示すΔxcよりも大きいので、
図6Cに示す様に、キャピラリ20の中心線24は、第1ボンド点P1よりもリバース側となっている。
【0048】
更に、CPU61は、キャピラリ20の先端25の高さを剪断高さh2に保持したまま、XYテーブル11を駆動して、
図4、
図6Bに示す矢印85の様に点eまでキャピラリ20を第2ボンド点P2に向かうフォワード方向に水平に距離Δxeだけ移動する。Δxeは
図6Cに示すΔxdよりも小さいので、
図6Dに示す様に、キャピラリ20の中心線24は、第1ボンド点P1よりもリバース側で、圧着ボール41の第2ボンド点P2と反対側(リバース側)の端部45を通る位置となっている。
【0049】
図6Bから
図6Dに示す様に、キャピラリ20の先端25の高さを剪断高さh2に保持して、キャピラリ20の先端25を水平方向にフォワード側とリバース側とに向かって往復移動させると、
図6C、
図6Dに示す様に、キャピラリ20の先端25によってボールネック42の一部が剪断高さh2で剪断破断して水平方向に削り取られる。これにより、フォワード側の剪断面44と、リバース側の剪断面43とが形成される。ここでフォワード側の剪断面44は、圧着ボール41の上端面近傍に出現する。また、フォワード側の剪断面43は、ボールネック42の下端面近傍に出現する。剪断面43と圧着ボール41の第2ボンド点P2と反対側(リバース側)の端部45の上面との間には、わずかに隙間が空いている。フォワード側の剪断面44と、リバース側の剪断面43との間には、ボールネック42と圧着ボール41との間を接続する細い接続部46が形成される。接続部46は、ワイヤ16よりも断面積が減少した薄肉部である。
【0050】
このように、キャピラリ20の先端25を水平方向にフォワード側とリバース側とに向かって往復移動させ、剪断面43,44と、接続部46とを形成すると、接続部46の断面積を極力小さくすることができると共に、接続部46の断面積の大きさのバラツキを抑制できる。
【0051】
次に、CPU61は、
図7A~
図7Cに示す様に、ワイヤテール曲げ工程を実行する。CPU61は、
図7Aに示す様にZ方向モータ13を駆動して、キャピラリ20の先端25を
図4、
図7A中に示す矢印86の様に点fまで上昇させ、キャピラリ20の先端25の高さを高さh3にする。以下、高さh3は、「移動高さh3」という。移動高さh3は、剪断高さh2よりも高い。この際、ボールネック42と圧着ボール41との間は、接続部46によって接続されており、クランパ17が開となっているので、キャピラリ20が上昇するとキャピラリ20の先端25からワイヤテール47が繰り出される。
【0052】
キャピラリ20の先端25を移動高さh3まで上昇させたら、CPU61は、キャピラリ20の先端25を
図4、
図7B中に示す矢印87の様に点fから点gまで円弧状に移動させる。円弧状の移動は、
図7Aに示す点eを中心として点fと点eとの距離を半径とする円弧に沿って高さh4の点gまで移動させてもよい。これにより、ワイヤテール47は、接続部46からフォワード側に折り曲げられて下側の側面は、圧着ボール41の上端面に向かって折り曲げられる。
【0053】
次に、CPU61は、
図7Bとは反対に、キャピラリ20の先端25を
図4、
図7Cに中に示す矢印88の様に点gから点fまで円弧状に移動させ、キャピラリ20の先端25の位置を点fまで戻す。これにより、ワイヤテール47は、接続部46からフォワード側に向かって湾曲した後、リバース側に湾曲する形状となる。
【0054】
次に、CPU61は、
図8に示す様に、ワイヤテール切り離し工程を実行する。CPU61は、
図4、
図8に示す様に、クランパ17を閉として、XYテーブル11とZ方向モータ13とを駆動してキャピラリ20の先端25を第2ボンド点P2の方向に向かって斜め上方向に高さh5の点hまで移動させる。この移動によってキャピラリ20の先端25から延出していたワイヤテール47は、接続部46から第2ボンド点P2の方向の向かって斜め上方向に延びるように変形する。また、移動の際、CPU61はクランパ17を閉としているので、移動により、接続部46はキャピラリ20とクランパ17とによって第2ボンド点P2の方向に向かって斜め上方向に引っ張られる。これにより、
図8に示す様に 、接続部46が破断して圧着ボール側破断面48と、ワイヤテール側破断面49とが形成される。接続部46が破断した際には、
図8に示す様に、ワイヤテール47は、キャピラリ20の先端25から第1ボンド点P1に向かってリバース側に向かって斜め下方向に延びて、キャピラリ20のリバース側のフェイス部23の下側に回り込んでいる。
【0055】
次にCPU61は、
図9A、
図9Bに示す様にワイヤテール接合工程を実行する。CPU61は、
図4の矢印90に示す様に、XYテーブル11とZ方向モータ13とを駆動してキャピラリ20の先端25を点hから点iにまで上昇させた後、点iからリバース方向に向かって移動させる。そして、
図9Aに示す様に、キャピラリ20の第1ボンド点側(リバース側)のフェイス部23が圧着ボール41のリバース側の端部45の上方となるようにキャピラリ20の先端25の位置を高さh6の点jまで移動させる。
【0056】
次に、CPU61は、
図4、
図9Bに示す矢印91の様にキャピラリ20のリバース側のフェイス部23を圧着ボール41のリバース側の端部45に向かって点kまで下降させる。そして、
図9Bに示す様に、キャピラリ20のリバース側のフェイス部23でキャピラリ20の先端25からリバース側に向かって斜め下方向に延びているワイヤテール47の側面を圧着ボール41のリバース側の端部45の上に押圧する。これにより、ワイヤテール47は、端部45の上に接合されて、第1ボンド部50が形成される。この際、パッド35の上面からキャピラリ20の先端25までの高さh7、即ち、パッド35の上面から点kまでの高さh7は、第1ボンド部50の厚みの目標値に基づいて決められる。
【0057】
図9Bに示す様に、第1ボンド部50は、圧着ボール41のリバース側の端部45の上に接合され、第2ボンド点P2の側は、圧着ボール41の上の剪断面44に沿って水平方向に第2ボンド点P2に向かって延びている。
【0058】
次に、CPU61は、ステッチボンディング工程を実行する。CPU61は、クランパ17を開として
図4に示す矢印92のようにキャピラリ20を上昇させてループワイヤ52をキャピラリ20の先端25から延出させた後、
図4に示す一点鎖線の矢印93に示す様に、キャピラリ20の先端25をルーピングさせ、キャピラリ20の中心線24の位置を第2ボンド点P2の中心線37(
図3参照)の位置に合わせる。そして、キャピラリ20の先端25を基板30のリード31の上に押圧してループワイヤ52の側面をリード31の上にステッチボンディングして第2ボンド部51を形成する。
【0059】
これにより、
図3、
図10に示す様に、ループワイヤ52は、圧着ボール41のリバース側の端部45の上に接合された第1ボンド部50から圧着ボール41の剪断面44の上を越えて第2ボンド点P2に向かって水平方向に延びる形状となる。
【0060】
尚、
図4では、キャピラリ20の先端25のルーピングの軌跡は単純化して記載しているが、形成しようとするループワイヤ52の形状に応じて様々な経路としてもよい。
【0061】
その後、CPU61は、クランパ17を閉としてキャピラリ20を上昇させてワイヤ16を切断する。このようにして、ワイヤボンディング装置100は、
図3に示すような第1ボンド点P1と第2ボンド点P2とを第1ボンド部50と、ループワイヤ52と、第2ボンド部51とで接続する。
【0062】
以上、説明したように、実施形態のワイヤボンディング装置100は、薄肉部形成工程により、ボールネック42と圧着ボール41との接続部46の断面積を小さくしてから、ワイヤテール47を曲げ変形させ、キャピラリ20を第2ボンド点P2に向かって移動させてワイヤテール47を圧着ボール41から切断するので、切断したワイヤテール47がキャピラリ20のリバース側のフェイス部23の下側に入り込んだ状態を保持できる。このため、ワイヤテール47の側面を圧着ボール41の上に接合して第1ボンド部50を形成した際に、第1ボンド部50の第2ボンド点側が圧着ボール41の上に沿って水平方向に第2ボンド点P2に向かって延びるようにできる。このため、
図3、
図10に示す様に、ループワイヤ52を圧着ボール41の上から水平に第2ボンド点P2に向かうように形成することができ、ループワイヤ52の高さを低くすることができる。
【0063】
また、特許文献2に記載された従来技術のように、ワイヤテール47の側面を圧着ボール41の上に複数回押圧しなくても、第1ボンド部50の第2ボンド点側が圧着ボール41の上に沿って水平方向に第2ボンド点P2に向かって延びるようにできる。このため、第1ボンド部50とループワイヤ52との接続部分の断面積を従来技術よりも大きくできるので、ステッチボンディング工程において、キャピラリ20の先端25を自由に移動させることができ、ループワイヤ52の形状の自由度を大きくすることができる。
【0064】
また、実施形態のワイヤボンディング装置100では、薄肉部形成工程において、キャピラリ20の先端25を水平方向にフォワード側とリバース側とに向かって往復移動させて接続部46の断面積を極力小さくすると共に、接続部46の断面積の大きさのバラツキを抑制するようにしている。このため、ワイヤテール切り離し工程において、ワイヤテール47と接続部46との破断荷重が小さく、且つ、一定となるので、接続部46が破断した際にキャピラリ20のリバース側のフェイス部23の下側に入り込むワイヤテール47の形状がバラつかず、安定した形状となる。これにより、圧着ボール41のリバース側の端部45の上に形成する第1ボンド部50の形状が一定となり、安定したワイヤボンディングを行うことができる。
【0065】
更に、実施形態のワイヤボンディング装置100では、ワイヤテール切り離し工程において、キャピラリ20の先端25を第2ボンド点P2の方向に向かって斜め上方向に移動させているので、切断したワイヤテール47と圧着ボール41とが接触して再接合されることを抑制でき、ワイヤボンディングの安定性を高めることができる。
【0066】
尚、接続部46の断面積を更に小さくすることにより、ワイヤテール47と接続部46との破断荷重を更に小さくし、キャピラリ20を水平方向に移動させることにより、ワイヤテール47の切断を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 ベース、11 XYテーブル、11a 移動機構、12 ボンディングヘッド、13 Z方向モータ、13a シャフト、13b 固定子、14 ボンディングアーム、14a 根元部、15 超音波ホーン、16 ワイヤ、17 クランパ、18 放電電極、19 ボンディングステージ、20 キャピラリ、21 貫通孔、22 チャンファー部、23 フェイス部、24,36,37 中心線、25 先端、30 基板、31 リード、34 半導体チップ、35 パッド、40 フリーエアボール、41 圧着ボール、42 ボールネック、42a 円錐状部、42b 円柱状部、43,44 剪断面、45 端部、46 接続部、47 ワイヤテール、48 圧着ボール側破断面、49 ワイヤテール側破断面、52 ループワイヤ、60 制御部、61 CPU、62 メモリ、100 ワイヤボンディング装置。