(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】廃プラスチックのリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20221004BHJP
B29B 9/14 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29B9/14
(21)【出願番号】P 2022015208
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2022-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521082008
【氏名又は名称】株式会社日本選別化工
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾野 令奈
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-073028(JP,A)
【文献】特開2004-025734(JP,A)
【文献】特開平09-024516(JP,A)
【文献】特開2004-122576(JP,A)
【文献】特開2003-225646(JP,A)
【文献】特開2003-071838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/00-9/16、17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
C08J 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品分解により製品から分離された部品であってガラス繊維を含有した廃プラスチックを前記製品の部品の再生原料に用いるためのシステムであって、
前記部品を破砕及び粉砕して廃プラスチック片とする破砕粉砕装置と、
前記廃プラスチック片を溶融混練した後、同形同大のペレット片に造粒する造粒装置と、
前記ペレット片を一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片とに選別する選別装置と、を備え、
前記一定重量以上のペレット片だけを前記部品の再生原料に用いることを特徴とする廃プラスチックのリサイクルシステム。
【請求項2】
前記
選別装置は、前記ペレット片の重量を測定する電子はかりと、前記電子はかりの測定結果に基づいて一定重量以上の重量のペレット片と一定重量未満の重量のペレット片とを振り分ける振分け機とを備えていることを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックのリサイクルシステム。
【請求項3】
前記選別装置は、前記ペレット片を乾式比重差によって、一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片とに選別する乾式比重選別機であることを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックのリサイクルシステム。
【請求項4】
前記破砕粉砕装置の下流側に前記廃プラスチック片に塗布されている塗膜を除去する塗膜除去装置が配置されていることを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックのリサイクルシステム。
【請求項5】
前記製品は自動車であり、前記部品はバンパーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の廃プラスチックのリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパー、インストルメントパネルなどの自動車部品、運搬用パレット、通い箱やビールケースなどの運搬部品、ドア、ベッドなどの家具に用いたプラスチックを再利用するためのリサイクルシステムに関し、特に強度保持のためにガラス繊維を含有したプラスチックを再利用するためのリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品である樹脂製バンパーは自動車の廃車時に自動車から取り外されて再生される。この樹脂製のバンパーを再生樹脂材として用いるための方法が特許文献1に開示されている。この方法は、バンパーの粗破砕物を風力選抜方式及び水比重選別方式を用いた選別工程で異物を除去した後、二軸押し出し機内で溶融混錬しながら押し出し成形し、押し出した成形品を切断機で切断してペレット化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法で得られたペレットをバンパーの再生に用いるのには困難が生じる問題点がある。バンパーには、強度保持のためにPP(ポリプロピレン)やポリアミド等の母材樹脂にガラス繊維が含有されている。強度はガラス繊維の含有量に左右されるものであり、バンパーとしての強度を保持するため、再生バンパーの原料であるペレットはガラス繊維を一定量含有したペレットを用いる必要がある。特許文献1の方法では、材料を溶融混錬してペレットに成形するだけであり、得られたペレットにどのくらいのガラス繊維が含有されているかが不明となっている。このため、特許文献1の方法で得られたペレットを用いて再生したバンパーでは、所定の強度を保持することができないことがあり、不合格となる問題がある。
【0005】
このため、個々のペレット内のガラス繊維の含有量を測定し、含有量に合わせてペレットを分別することも考えられるが、個々のペレットに対するガラス繊維の含有量の測定は非常に面倒であり、大量処理ができない新たな問題が発生する。以上のことは、自動車用バンパーだけでなく、プラスチック製の運搬部品、ドアなどの家具においても同様な問題となっている。
【0006】
本発明は、以上の問題を考慮してなされたものであり、廃自動車のバンパー等をはじめとした廃プラスチックを元の部品に再生する際に、廃プラスチック内のガラス繊維の含有量に合わせて合格品、不合格品を選別することができ、これにより元の部品と同様な強度を有した部品に確実に再生することが可能な廃プラスチックのリサイクスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムは、製品分解により製品から分離された部品であってガラス繊維を含有した廃プラスチックを前記製品の部品の再生原料に用いるためのシステムであって、前記部品を破砕及び粉砕して廃プラスチック片とする破砕粉砕装置と、前記廃プラスチック片を溶融混練した後、同形同大のペレット片に造粒する造粒装置と、前記ペレット片を一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片とに選別する選別装置と、を備え、前記一定重量以上のペレット片だけを前記部品の再生原料に用いることを特徴とする。
【0008】
前記選別装置は、前記ペレット片の重量を測定する電子はかりと、前記電子はかりの測定結果に基づいて一定重量以上のペレット片と一定重量未満のペレット片とを振り分ける振分け機とを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記選別装置は、前記ペレット片を乾式比重差によって、一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片とに選別する乾式比重選別機であることを特徴とする。
【0010】
前記破砕粉砕装置の下流側に前記廃プラスチック片に塗布されている塗膜を除去する塗膜除去装置が配置されていることを特徴とする。
【0011】
前記製品は自動車であり、前記部品はバンパーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃プラスチックのリサイクルシステムによれば、破砕粉砕装置からの廃プラスチック片を溶融混練した後、ペレット片に造粒する際に、同形同大のペレット片とする。この同形同大のペレット片はガラス繊維の含入量によって重量が異なるため、一定重量以上のペレット片と一定重量未満のペレット片とに選別することが容易である。そして、本発明では、選別された一定重量以上のペレット片だけを元の部品の再生原料に用いるため、元の部品と同様な強度を有した部品を確実に再生することができる。
【0013】
選抜装置は、電子はかりと振分け機を備えるので、ペレット片の重量を測定し、一定重量以上のペレット片と一定重量未満のペレット片を振り分けできる。
【0014】
選別装置は、ふるいを使用する乾式比重選別機としたので、乾式比重差によって、一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片に選別することができる。
【0015】
自動車の廃バンパーに適用し、再生ペレットの品質を一定にすることにより、再びバンパーを製造するためのペレットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムの処理を示す流れ図である。
【
図2】本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムの装置構成(構成例1)を示す図である。
【
図3】本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムの装置構成(構成例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムを詳しく説明する。以下の実施形態では、製品が自動車、部品がこの自動車の分解により分離されたバンパーを例として説明する。
【0018】
図1は、本発明による廃プラスチックのリサイクルシステムの処理を示す流れ図であり、
図2及び
図3は、流れ図に沿ったリサイクルシステムの具体的な構造をそれぞれ示している。
図1に示すように、リサイクルシステムは、破砕粉砕段階100と、造粒段階110と、選別段階120とを備え、さらに適宜、塗膜除去段階130を備えている。
【0019】
破砕粉砕段階100では、破砕粉砕装置51が用いられる。破砕粉砕装置51では、廃バンパー1を所定の大きさに切断する破砕と、破砕に続いてさらに小さな細片とする粉砕とを行って、廃バンパー片(廃プラスチック片)2とする。
【0020】
造粒段階110では、造粒装置53が用いられる。造粒装置53では、廃バンパー片2を溶融及び押し出しにより同形同大のペレット片3に造粒する。造粒段階110では、例えば、ヒータ4を有するスクリュー型押し出し機5により、廃バンパー片2を溶融して押し出すことによりペレット片3を造粒する。この形態では、スクリュー型押し出し機5の取り出し口から取り出すときにカッター6によって同じ長さに切断する。このことにより、取り出し口の形状に沿った同じ外形を有し、且つ同じ長さを有した同形同大のペレット片3を連続的に造粒することができる。
【0021】
選別段階120では、選別装置54が用いられる。選別装置54では、同形同大のペレット片を一定重量以上のペレット片3と、一定重量未満のペレット片とに選別する。ここで一定重量とは、自動車の元のバンパーに含有されていたガラス繊維の含有量に相当した重量である。この重量は、自動車の元のバンパーから造粒段階110で同形同大のペレット片に造粒したときの重量に対応する。同形同大のペレット片が一定重量以上の場合には、元のバンパーにおけるガラス繊維の含有量と同じ又は含有量以上となるため、元のバンパーと同程度の強度のバンパーを再生することができる。これに対し、同形同大であっても、一定重量未満のペレット片は、そのガラス繊維の含有量が元のバンパーのガラス繊維の含有量よりも少ないため、このペレット片を用いて再生したバンパーは、元のバンパーと同じ強度とすることができない。このため、本発明では、一定重量以上のペレット片だけをバンパーの再生原料に用いるものである。
【0022】
本発明におけるペレット片3の一定重量は、元のバンパーから得られる同形同大のペレット片の重量と一致することが良好であるが、バンパーの強度に許容範囲がある場合には、その許容範囲における重量の範囲内とすることができる。
【0023】
このような本発明は、同形同大に造粒されたペレット片の内、一定重量以上のペレット片だけを用いて元のバンパーを再生することから元のバンパーと同程度の強度のバンパーに再生することができる。この発明では、ペレット片のガラス繊維の含有量を個々に測定する必要がないため大量処理が可能であり、しかも簡単に元のバンパーの強度を有したバンパーを再生することができる。
【0024】
塗膜除去段階130は、バンパー表面に塗料が塗布されている場合に、この塗膜を除去する段階である。塗膜の除去は、その塗料の溶解力を有した有機溶媒が使用される。なお、塗膜の量は、バンパー全体に対して極めて少ないと共に、塗膜は造粒段階120の造粒で樹脂材に練り込まれることから、実用に支障がなくなることもある。このため、塗膜除去段階130を省いても良い。
【0025】
図2は、本発明による廃プラスチックのリサイクルシステム50の装置構成(構成例1)を示す図である。自動車から取り外された廃ダンパー1は、破砕粉砕装置51を使用して、粗に切断する破砕と、破砕に続いてさらに小さな細片とする粉砕を行って廃バンパー(廃プラスチック片)2とする。詳しくは破砕機7で粗に切断し、略10cm程度のプラスチック片とする。続けて粉砕機8で細かく切断し、略1cm程度の廃バンパー(廃プラスチック片)2とする。図には示さないが、金属片などの異物はあらかじめ除去される。
【0026】
廃バンパー(廃プラスチック片)2は、次に、造粒装置53に投入される。造粒装置53は、ヒータ4を備えたスクリュー型押し出し機5によって、投入された廃バンパー(廃プラスチック片)2を溶融しながら、スクリューで
図2の右側方向に押し出す。取り出し口から棒状に押し出された部材をカッター6で一定長さに切断し、ペレット片3を作製する。ペレット片3は、計量できる間隔に整列され、選別装置54に投入される。
【0027】
選別装置54は、電子はかり12、振分け機11、排出箱9、10を備える。排出箱9には、一定重量未満の軽いペレット片3が収納される。排出箱10には一定重量以上の重いペレット片3が収納される。具体的には、バンパーとして使用可能な強度を有する重量のペレット片3を排出箱10に収納し、バンパーに適さない軽い重量のペレット片3を排出箱9に収納する。すなわちペレット片3を重量により、左右2方向に選別する。振分け機11は、制御部(図示せず)の指示により左右どちらかの方向にスライドし、電子はかり12に載ったペレット片3を排出箱9又は排出箱10に落下させる。
【0028】
図3は、本発明による廃プラスチックのリサイクルシステム50の装置構成(構成例2)を示す図である。自動車から取り外された廃ダンパー1は、破砕粉砕装置51を使用して、粗に切断する破砕と、さらに小さな細片とする粉砕により、廃ダンパー片(廃プラスチック片)2にする。廃ダンパー片(廃プラスチック片)2は、次に造粒装置53に投入される。造粒装置53は、ヒータ4を備えたスクリュー型押し出し機5で、投入された廃バンパー片(廃プラスチック片)2を溶融しながら、スクリューで
図2の右側方向に押し出し、棒状に押し出された部材をカッター6で一定長さに切断し、ペレット片3を作製する。ここまでの動作は、
図2の構成例1と同じである。
【0029】
図3に示すように、構成例2では、選別装置54として乾式比重選別機13を使用している。乾式比重選別機13は、メッシュ構造の傾斜板15と、ブロア14と、傾斜板15の高い方に向けて振動する振動手段16(図示せず)を備える。造粒機53で同形同大に造粒されたペレット片3は、傾斜板15の中央付近に投入する。一定重量以上の重いペレット片3は、振動により傾斜板15を登り、傾斜板15の上端から落下する。一定重量未満の軽いペレット片3は、ブロア14の風で浮上し、傾斜板15の傾斜の低い方に落下する。すなわちペレット片3を重量により、左右2方向に選別する。この場合、どれくらいの重さを選別するかで、風力と振動が調整される。
【0030】
図4は、廃バンパー1の断面図である。バンパーの基材18は、一般に熱可塑性のポリプロピレンにガラス繊維を混入したものが使用される。基材10の表面には、熱可塑性樹脂のプライマ17を塗布し、その上に熱硬化樹脂の塗膜16を形成している。例として、基材18の厚さが5mmの場合、プライマ17の厚さは10μm、塗膜16の厚さは40μmとすることができる。厚さ5mmの基材18はプライマ17と膜厚16を合わせた50μmの100倍の体積となっているため、プライマ17と膜厚16は重量には影響しない。一方、ガラス繊維は、比重が2.6g/cm
3で、ポリプロピレンの比重0.9g/cm
3と比較しても重い。バンパーの所定の強度を得るためには、約80重量%のガラス繊維を混入しており、30重量%程度のガラス繊維を混入したポリプロピレンの基材とは、重量で区別できる。
【0031】
図5は、塗膜除去装置52の構造図である。破砕粉砕装置51と造粒装置53の間に塗膜除去装置52を配置する。塗膜は粉砕してもペレット片3の品質に影響する場合があり、塗膜除去装置52で除去することができる。塗膜除去装置52はドラム19の内部に攪拌棒20を備えて、廃バンパー片(廃プラスチック片)2を投入して攪拌する。塗膜剥離剤もドラム19に投入し、塗膜の剥離を促進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、同形同大のペレット片の重量を測定し、一定重量以上のペレット片だけをプラスチックの再生原料とするため、再生プラスチックの強度を保持することができる。このためガラス繊維を含有したプラスチックを再利用するためのリサイクルシステムとして好適である。
【符号の説明】
【0033】
1 廃バンパー
2 廃プラスチック片(廃バンパー片)
3 ペレット片
4 ヒータ
5 スクリュー型押し出し機
6 カッター
7 破砕機
8 粉砕機
9 排出箱(一定重量以上にある物)
10 排出箱(一定重量未満にある物)
11 振分け機
12 電子はかり
13 乾式比重選別機
14 ブロア
15 傾斜面
16 塗膜
17 プライマ
18 基材
19 ドラム
20 攪拌棒
50 廃プラスチックのリサイクルシステム
51 破砕粉砕装置
52 塗膜除去装置
53 造粒装置
54 選別装置
100 破砕粉砕段階
110 造粒段階
120 選別段階
130 塗膜除去段階
【要約】
【課題】廃プラスチック内のガラス繊維の含有量でペレットを選別することができる廃プラスチックのリサイクルシステムを提供する。
【解決手段】製品分解により製品から分離された部品であってガラス繊維を含有した廃プラスチックを前記製品の部品の再生原料に用いるためのシステムであり、部品を破砕及び粉砕して廃プラスチック片とする破砕粉砕装置と、廃プラスチック片を溶融混練した後、同形同大のペレット片に造粒する造粒装置と、ペレット片を一定重量以上のペレット片と、一定重量未満のペレット片とに選別する選別装置とを備え、一定重量以上のペレット片だけを部品の再生原料に用いる。
【選択図】
図1