(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】積層シート、及び食品用包装容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221004BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D1/00 111
(21)【出願番号】P 2022085677
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】金▲高▼ 秀成
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大森 望
(72)【発明者】
【氏名】高松 頼信
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-050831(JP,A)
【文献】特開2006-076181(JP,A)
【文献】特開平07-097487(JP,A)
【文献】特開平07-309978(JP,A)
【文献】特開2020-158560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B65D 1/00- 1/48、 65/00- 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、前記内層の両面に積層された外層と、を備える積層シートであって、
前記内層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドを含み、
前記内層において、前記ポリエチレン系樹脂及び前記ポリプロピレン系樹脂の総量と、前記無機物質粉末との質量比が、50:50~60:40であり、
前記ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量が、前記内層全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
前記外層が、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を含み、
前記外層において、前記ポリエチレン系樹脂と、前記ポリプロピレン系樹脂との質量比が、20:80~50:50であ
り、
前記内層及び/又は前記外層における前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
前記高密度ポリエチレンと、前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である、
積層シート。
【請求項2】
前記内層及び/又は前記外層における前記ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウム粒子である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記重質炭酸カルシウム粒子における、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項
3に記載の積層シート。
【請求項5】
前記外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上10.0%以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
前記積層シートが、真空成形用積層シートである、請求項1から
5の何れかに記載の積層シート。
【請求項7】
請求項1から
5の何れかに記載の積層シートから成形された、食品用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、及び食品用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、各種樹脂製品における樹脂成分含有量を低減するための試みが行われている。
このような試みとして、樹脂製品における無機物質(炭酸カルシウム等)の配合量を高めることが挙げられる(例えば、特許文献1、及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6857428号公報
【文献】特開2021-112862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、樹脂組成物に対して無機物質の配合量を高めると、成形加工性が低下し得ることが知られている。
【0005】
また、樹脂製品には、用途等に応じて特定の性質(耐熱性等)を備えることが要求される。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、良好な耐熱性及び成形加工性を有する、無機物質含有積層シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、積層シートの内層において、所定の熱可塑性樹脂や無機物質粉末とともに、所定量のラウリン酸ジエタノールアミドを配合することで、上記課題を解決出来る点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 内層と、前記内層の両面に積層された外層と、を備える積層シートであって、
前記内層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドを含み、
前記内層において、前記ポリエチレン系樹脂及び前記ポリプロピレン系樹脂の総量と、前記無機物質粉末との質量比が、50:50~60:40であり、
前記ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量が、前記内層全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
前記外層が、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を含み、
前記外層において、前記ポリエチレン系樹脂と、前記ポリプロピレン系樹脂との質量比が、20:80~50:50である、
積層シート。
【0009】
(2) 前記内層及び/又は前記外層における前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
前記高密度ポリエチレンと、前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である、(1)に記載の積層シート。
【0010】
(3) 前記内層及び/又は前記外層における前記ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである、(1)に記載の積層シート。
【0011】
(4) 前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウム粒子である、(1)に記載の積層シート。
【0012】
(5) 前記重質炭酸カルシウム粒子における、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、(4)に記載の積層シート。
【0013】
(6) 前記外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上10.0%以下である、(1)に記載の積層シート。
【0014】
(7) 前記積層シートが、真空成形用積層シートである、(1)から(6)の何れかに記載の積層シート。
【0015】
(8) (1)から(6)の何れかに記載の積層シートから成形された、食品用包装容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な耐熱性及び成形加工性を有する、無機物質含有積層シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
<積層シート>
本発明の積層シートは、3層構造(すなわち、内層と、内層の両面に積層された外層)を有し、以下の要件を全て満たす。
(要件1)内層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドを含む。
(要件2)内層において、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の総量と、無機物質粉末との質量比が、50:50~60:40である。
(要件3)ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量が、内層全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下である。
(要件4)外層が、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を含み、かつ、外層において、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との質量比が、20:80~50:50である。
【0019】
本発明の積層シートは、その内層の組成に主要な技術的特徴がある。
本発明における内層は、所定の樹脂(ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂)及び無機物質粉末を含み、かつ、該樹脂及び無機物質粉末の配合量が同程度である(要件1及び2)。このような、無機物質粉末の割合が高い樹脂組成物は、通常、成形加工性が劣り易い。
しかし、本発明者らは、要件2を満たす内層において、ラウリン酸ジエタノールアミドを所定量配合することで(要件1及び3)、樹脂組成物の成形加工性を損なわずに、耐熱性をも向上させられるという意外な知見を見出した。
そして、このような効果は、内層の表面にポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を所定比率で含む外層を配しても、損なわれなかった(要件4)。
【0020】
本発明において「耐熱性」とは、JIS S 2029に準じた耐熱性試験に基づき評価される耐熱性を包含する。
本発明において「積層シートの耐熱性が良好である」とは、積層シートをJIS S 2029に準じた耐熱性試験に供した場合に、表面状態全体が良好であること(凹凸、変形等が発生しないこと)等を包含する。
【0021】
積層シートの耐熱性は、実施例に示した方法で評価し得る。
【0022】
本発明において「成形加工性」とは、成形加工(例えば、真空成形加工)のし易さを包含する。
本発明において「積層シートの成形加工性が良好である」とは、積層シートを成形加工した場合に、目的値どおりの寸法に成形でき、得られた成形品に歪等が認められないか、全く認められないことを包含する。
【0023】
積層シートの成形加工性は、実施例に示した方法で評価し得る。
【0024】
以下、本発明の積層シートの構成について詳述する。
【0025】
(1)内層
内層は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドを含む。
【0026】
(内層に配合されるポリエチレン系樹脂の種類)
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位を主成分とする樹脂を使用し得る。ポリエチレン系樹脂は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0027】
本発明におけるポリエチレン系樹脂は、エチレン成分単位が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上の樹脂を包含する。
【0028】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-ブテン1共重合体、エチレン-ヘキセン1共重合体、エチレン-4メチルペンテン1共重合体、エチレン-オクテン1共重合体等が挙げられる。
【0029】
なお、「高密度ポリエチレン(HDPE)」とは、0.942g/cm3以上の密度を有するポリエチレンである。
「中密度ポリエチレン(MDPE)」とは、0.930g/cm3以上0.942g/cm3未満の密度を有するポリエチレンである。
「低密度ポリエチレン(LDPE)」とは、0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満の密度を有するポリエチレンである。
「超低密度ポリエチレン(ULDPE)」とは、0.910g/cm3未満の密度を有するポリエチレンである。
「直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)」とは、0.911g/cm3以上0.940g/cm3未満の密度(好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3未満の密度)を有するポリエチレンである。
【0030】
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる樹脂がより好ましい。
【0031】
高密度ポリエチレンは、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であるものが好ましく、6g/10分以上14g/10分以下であるものがより好ましい。
【0032】
直鎖状低密度ポリエチレンは、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であるものが好ましく、0.6g/10分以上1.4g/10分以下であるものがより好ましい。
【0033】
高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂において、両者の質量比(高密度ポリエチレン:直鎖状低密度ポリエチレン)は、耐熱性及び成形加工性を特に高め易いという観点から、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは85:15~55:45、更に好ましくは80:20~60:40である。
【0034】
本発明の好ましい態様においては、ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
高密度ポリエチレンと、直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である。
【0035】
(内層に配合されるポリプロピレン系樹脂の種類)
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位を主成分とする樹脂を使用し得る。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0036】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン成分単位が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上の樹脂を包含する。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレンと他のα-オレフィン(プロピレンと共重合可能なもの)との共重合体等が挙げられる。
「他のα-オレフィン」としては、例えば、炭素数4~10のα-オレフィン(エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン等)が挙げられる。
【0038】
プロピレン単独重合体としては、種々の立体規則性(アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック等)を示す、直鎖状又は分枝状のポリプロピレン等が包含される。
【0039】
プロピレンの共重合体は、ポリプロピレンランダムコポリマー(ランダム共重合体)、ポリプロピレンブロックコポリマー(ブロック共重合体)、二元共重合体、三元共重合体等の何れであっても良い。具体的には、エチレン-プロピレンランダム共重合体、ブテン-1-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1-プロピレンランダム3元共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0040】
ポリプロピレン系樹脂としては、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレンブロックポリマーのうち1以上を含む樹脂が好ましく、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレンブロックポリマーのうち1以上のみからなる樹脂がより好ましい。
【0041】
(内層に配合される無機物質粉末の種類)
無機物質粉末としては、特に限定されず、通常の樹脂製品等に含まれるものを採用出来る。無機物質粉末は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0042】
無機物質粉末としては、例えば、以下のものが挙げられる。
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、又はホウ酸塩;
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の酸化物;
上記塩又は酸化物の水和物等。
【0043】
無機物質粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。
【0044】
無機物質粉末は合成のものであっても良く、天然鉱物由来のものであっても良い。
【0045】
無機物質粉末の分散性や反応性を高める観点から、無機物質粉末は表面処理されたものであっても良い。
表面処理法としては、物理的方法(プラズマ処理等)、化学的方法(カップリング剤や界面活性剤を用いた方法)等が挙げられる。
【0046】
無機物質粉末の形状は、特に限定されず、粒子状(球形、不定形状等)、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。
【0047】
無機物質粉末の平均粒子径は、特に限定されず、好ましくは0.1μm以上50.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上13.5μm以下である。
【0048】
本発明の好ましい態様は、無機物質粉末の偏在を抑制し易いという観点から、内層が、粒子径50.0μm超の無機物質粉末を実質的に含まない態様が包含される。
本発明の好ましい態様は、成形時の粘度の上昇を抑制し易いという観点から、内層が、粒子径0.1μm未満の無機物質粉末を実質的に含まない態様が包含される。
なお、本発明において「内層が成分を実質的に含まない」とは、当該成分の含有量が、内層に対して0.1質量%未満である態様、より好ましくは0.01質量%以下である態様、更に好ましくは全く含まない態様を包含する。
【0049】
本発明において、無機物質粉末の「平均粒子径」は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値を意味する。測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることが出来る。
【0050】
無機物質粉末としては、炭酸カルシウム粒子が好ましい。樹脂組成物に対して炭酸カルシウム粒子の配合量を高めると、成形加工性が特に低下し得るが、本発明によれば、ラウリン酸ジエタノールアミド等の作用により、成形加工性を損なわずに耐熱性をも高め得る。
【0051】
炭酸カルシウム粒子としては、重質炭酸カルシウム粒子、及び軽質炭酸カルシウム粒子の何れでも良い。
【0052】
熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)に対してより多くの接触界面を有し、本発明の効果が奏され易いうえ、積層シートの機械的特性を向上させ易いという観点から、内層には重質炭酸カルシウム粒子が含まれることが好ましい。
また、内層に含まれる炭酸カルシウム粒子は、重質炭酸カルシウム粒子からなることが好ましく、内層に含まれる無機物質粉末は、重質炭酸カルシウム粒子からなることがより好ましい。
【0053】
「重質炭酸カルシウム」とは、CaCO3を主成分とする天然原料(石灰石等)を機械的に粉砕(乾式法、湿式法等)して得られる炭酸カルシウムである。
「軽質炭酸カルシウム」とは、合成法(化学的沈殿反応等)により調製された炭酸カルシウムである。
したがって、重質炭酸カルシウム、及び軽質炭酸カルシウムは互いに明確に区別される。
【0054】
内層に重質炭酸カルシウム粒子が含まれる場合、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づくその平均粒子径は、本発明の効果が特に奏され易いという観点から、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下である。
【0055】
(内層に配合されるラウリン酸ジエタノールアミド)
ラウリン酸ジエタノールアミド(CAS番号:120-40-1)は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデカンアミド等とも称され、界面活性剤等として知られる成分である。
【0056】
本発明者らは、各種添加剤のうち、ラウリン酸ジエタノールアミドを内層に配合することで、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及び無機物質粉末の相溶性等を高め、その結果、得られる積層シートの成形加工性及び耐熱性を向上させることが出来るという意外な知見を見出した。
【0057】
(内層に配合されるその他の成分)
内層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミド以外のその他の成分を配合しても良く、配合しなくても良い。
【0058】
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を採用出来る。
このような成分として、熱可塑性樹脂(ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂以外)、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定出来る。
【0059】
ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0060】
本発明の好ましい態様は、内層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドのみからなる積層シートを包含する。
【0061】
(内層に配合される成分の割合)
内層においては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の総量と、無機物質粉末との質量比が、50:50~60:40であり、かつ、ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量が、内層全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0062】
内層において、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の総量と、無機物質粉末との質量比(ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の総量:無機物質粉末)は、50:50~60:40、好ましくは51:49~59:41である。
【0063】
内層において、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂との質量比は、ポリエチレン系樹脂の比率を高めるほど、本発明の効果が奏され易い傾向にある。
内層において、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂との質量比(ポリプロピレン系樹脂:ポリエチレン系樹脂)は、好ましくは40:60~10:90、より好ましくは30:70~10:90である。
【0064】
ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量の下限は、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、内層全体に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。
【0065】
ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量の上限は、耐熱性及び成形加工性を損ない難いという観点から、内層全体に対して、1.0質量%以下、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0066】
ポリエチレン系樹脂の含有量の下限は、成形加工性を高め易いという観点から、内層全体に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは32質量%以上である。
【0067】
ポリエチレン系樹脂の含有量の上限は、耐熱性を高め易いという観点から、内層全体に対して、好ましくは45質量%以下、より好ましくは43質量%以下である。
【0068】
ポリプロピレン系樹脂の含有量の下限は、成形加工性を高め易いという観点から、内層全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。
【0069】
ポリプロピレン系樹脂の含有量の上限は、耐熱性を高め易いという観点から、内層全体に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。
【0070】
無機物質粉末の含有量の下限は、環境保護のニーズに充分応える観点から、内層全体に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは41質量%以上である。
【0071】
無機物質粉末の含有量の上限は、成形加工性を損ない難いという観点から、内層全体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは49質量%以下である。
【0072】
(2)外層
外層は、内層の2つの表面に積層される1対の層である(つまり、本発明の積層シートにおいて、外層は、内層を挟むように2層形成される。)。
本発明において、該1対の層を、第1の外層及び第2の外層と称する。
【0073】
第1の外層及び第2の外層の構成(厚さ、形状等)は同一であっても良く、異なっていても良い。ただし、第1の外層及び第2の外層は、それぞれ、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を含み、かつ、各外層において、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との質量比は、20:80~50:50である。
【0074】
本発明の好ましい態様は、第1の外層及び第2の外層の構成(厚さ、形状等)が全て同一である態様を包含する。
【0075】
(外層に配合されるポリエチレン系樹脂)
外層に配合されるポリエチレン系樹脂としては、上記(内層に配合されるポリエチレン系樹脂の種類)に挙げたものと同様の樹脂を採用出来る。
【0076】
外層に配合されるポリエチレン系樹脂は、内層に配合されるポリエチレン系樹脂と同一であっても良く、異なっていても良い。
本発明の効果が奏され易いという観点から、外層に配合されるポリエチレン系樹脂は、内層に配合されるポリエチレン系樹脂と同一であることが好ましい。
【0077】
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる樹脂がより好ましい。
【0078】
高密度ポリエチレンは、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であるものが好ましく、6g/10分以上14g/10分以下であるものがより好ましい。
【0079】
直鎖状低密度ポリエチレンは、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であるものが好ましく、0.6g/10分以上1.4g/10分以下であるものがより好ましい。
【0080】
高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂において、両者の質量比(高密度ポリエチレン:直鎖状低密度ポリエチレン)は、耐熱性及び成形加工性を特に高め易いという観点から、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは85:15~55:45、更に好ましくは80:20~60:40である。
【0081】
本発明の好ましい態様においては、ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
高密度ポリエチレンと、直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である。
【0082】
(外層に配合されるポリプロピレン系樹脂)
外層に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、上記(内層に配合されるポリプロピレン系樹脂の種類)に挙げたものと同様の樹脂を採用出来る。
【0083】
外層に配合されるポリプロピレン系樹脂は、内層に配合されるポリプロピレン系樹脂と同一であっても良く、異なっていても良い。
本発明の効果が奏され易いという観点から、外層に配合されるポリプロピレン系樹脂は、内層に配合されるポリプロピレン系樹脂と同一であることが好ましい。
【0084】
ポリプロピレン系樹脂としては、耐熱性及び成形加工性を高め易いという観点から、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレンブロックポリマーのうち1以上を含む樹脂が好ましく、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレンブロックポリマーのうち1以上のみからなる樹脂がより好ましい。
【0085】
(外層に配合されるその他の成分)
外層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂以外のその他の成分を配合しても良く、配合しなくても良い。
【0086】
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を採用出来る。
このような成分として、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂以外)、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定出来る。
【0087】
ポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0088】
本発明の好ましい態様は、外層が、ポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂のみからなる積層シートを包含する。
【0089】
(外層に配合される成分の割合)
各外層においては、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との質量比が、20:80~50:50である。
【0090】
各外層において、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との質量比(ポリエチレン系樹脂:ポリプロピレン系樹脂)は、20:80~50:50、好ましくは25:75~45:55である。
【0091】
ポリエチレン系樹脂の含有量の下限は、成形加工性を高め易いという観点から、外層(1層分当たり)に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。
【0092】
ポリエチレン系樹脂の含有量の上限は、耐熱性を高め易いという観点から、外層(1層分当たり)に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0093】
ポリプロピレン系樹脂の含有量の下限は、成形加工性を高め易いという観点から、外層(1層分当たり)に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。
【0094】
ポリプロピレン系樹脂の含有量の上限は、耐熱性を高め易いという観点から、外層(1層分当たり)に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0095】
(3)積層シートの各層の厚さ等
本発明の積層シートにおける各層の厚さ等は、特に限定されないが、内層の厚さに対して外層の厚さを薄くすることで、良好な外観を示しながらも、内層によって奏される優れた特性を発現することが出来る。
【0096】
第1の外層及び第2の外層の厚さの比率は、優れた機械的特性を発現し易いという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、好ましくは2.0%以上10.0%以下である。この態様において、外層の総厚さ(第1の外層及び前記第2の外層の厚さの合計値)は、積層シートの全体厚さに対して、4.0%以上20.0%以下である。
【0097】
第1の外層及び第2の外層の厚さの比率の下限は、外観が良好となり易いという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、好ましくは2.0%以上、より好ましくは3.0%以上、更に好ましくは4.0%以上である。
【0098】
第1の外層及び第2の外層の厚さの比率の上限は、内層による効果が奏し易くなるという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、好ましくは10.0%以下、より好ましくは9.0%以下、更に好ましくは8.0%以下である。
【0099】
本発明の積層シートにおいて、内層の厚さの比率は、外層の厚さに応じて調整され、例えば、積層シートの全体厚さに対して、80.0%以上96.0%以下である。
【0100】
第1の外層及び第2の外層の厚さの下限は、良好な外観が得られ易い等の観点から、それぞれ、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上である。
【0101】
第1の外層及び第2の外層の厚さの上限は、成形性等の観点から、それぞれ、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下である。
【0102】
内層の厚さの下限は、良好な機械的特性が得られ易い等の観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上である。
【0103】
内層の厚さの上限は、成形性等の観点から、好ましくは900μm以下、より好ましくは850μm以下である。
【0104】
積層シートの全体厚さの下限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上である。
【0105】
積層シートの全体厚さの上限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは950μm以下、より好ましくは900μm以下である。
【0106】
積層シートの密度は、特に限定されない。
【0107】
(4)積層シートの製造方法
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、従来知られる多層シートや積層体の製造方法を採用出来る。
【0108】
積層シートの製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。
・シート状に成形した内層及び外層をカレンダーロールで積層する方法
・内層及び外層を共押出する方法
・多層Tダイ方式の二軸押出成形機を用いて、内層用原材料の溶融混練と内外層の共押出成形とを同一工程で行う方法
・複数の環状ダイスを用いた、押出インフレーション方式による方法
【0109】
積層シートは、必要に応じて延伸を行っても良い。
【0110】
(5)積層シートの用途
本発明の積層シートは、任意の成形方法に供することが出来る。また、本発明の積層シートは、通常の樹脂シートにおける任意の用途に採用出来る。
【0111】
本発明の積層シートの成形方法としては、特に限定されず、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形等が挙げられる。
これらのうち、成形効率の観点から、真空成形が好ましい。したがって、本発明の積層シートは、真空成形用積層シートである態様を包含する。
【0112】
本発明の積層シートの好適な用途として、包装容器の材料が挙げられる。
したがって、本発明は、本発明の積層シートから成形された包装容器、特に、食品用包装容器を包含する。
【0113】
食品用包装容器としては任意の容器が包含され、トレイ、カップ、各種容器、袋等が挙げられる。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0115】
<積層シートの作製及び評価>
以下の方法で積層シートを作製し、その評価を行った。
【0116】
(1)材料の準備
各層の材料を以下のとおり準備した。
【0117】
(ポリエチレン系樹脂)
ポリエチレン系樹脂(PE):HDPE及びLLDPEのブレンド(HDPE:LLDPE(質量比)=70:30)
なお、上記HDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)は、10g/10分である。
上記LLDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)は、1.0g/10分である。
【0118】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂-1(PP-1):ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン単独重合体、融点160℃)
ポリプロピレン系樹脂-2(PP-2):ポリプロピレンブロックコポリマー(融点160℃)
【0119】
(無機物質粉末)
炭酸カルシウム粒子-1(Ca-1):重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径0.3μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子-2(Ca-2):重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径2.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子-3(Ca-3):重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径10.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子-4(Ca-4):軽質炭酸カルシウム粒子(平均粒径2.0μm、表面処理なし)
【0120】
炭酸カルシウム粒子群の平均粒径は、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づき特定された値である。
【0121】
(添加剤)
ラウリン酸ジエタノールアミド(LDEA)
【0122】
(2)積層シートの作製
表に示す材料を用いて、多層Tダイ法により、3層の積層シートを作製した。
積層シートの全体厚さは、400μmに設定した。
内層の厚さは、360μm(積層シートの全体厚さに対して90%)に設定した。
内層の両面に外層を設け、それぞれの外層の厚さは、20μm(積層シートの全体厚さに対して、それぞれ5%)に設定した。
【0123】
表中、「外層」に示す値は、1層分の外層における値である。本例では、内層の両面に、組成や厚さが同一である外層(合計2層)を設けた。
【0124】
(3)積層シートの評価
以下の方法で、積層シートについて、耐熱性、及び成形加工性を評価した。その結果を表中の「評価」の項に示す。
【0125】
(耐熱性)
以下の方法で、積層シートの耐熱性を評価した。
【0126】
[耐熱性の評価方法]
JIS S 2029に準じた耐熱性試験を行った。
具体的には、積層シートを130℃に調整した恒温槽に入れ、1時間保持後、取り出し、常温で30分間放冷した。
放冷後、積層シートの外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0127】
[耐熱性の評価基準]
A:表面状態全体が非常に良好である(凹凸、変形等が全く発生しなかった)。
B:表面状態全体が良好である(凹凸、変形等が少々発生した)。
C:表面状態全体が不良である(凹凸、変形等が明確に発生した)。
【0128】
(成形加工性)
以下の方法で、積層シートの成形加工性を評価した。
【0129】
[成形加工性の評価方法]
積層シートを、遠赤外線ヒーターで予熱した後、真空成形機によって底径50mmφ、開口径50mmφ、高さ30mm、フランジ幅5mmのトレイ状の容器に成形した。
得られた容器について、成形加工性を、以下の基準で評価した。
【0130】
[成形加工性の評価基準]
各容器を目視観察及び採寸し、各積層シートの成形加工のし易さを以下の基準で評価した。
A:ほぼ目的値とおりの寸法に成形され、容器形状の歪が観察されなかった。
B:容器形状の歪が僅かに観察された。
C:容器形状の歪が明確に観察された。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
表に示されるとおり、本発明の要件を満たす積層シートは、成形加工性が良好であり、得られる成形品の耐熱性にも優れていた。
【0136】
データは示していないが、炭酸カルシウム粒子の代わりに各種無機物質粉末(タルク等)を用いたところ、上記同様の傾向が得られた。ただし、コストや効果の面で、重質炭酸カルシウム粒子が特に好ましかった。
【0137】
データは示していないが、内層中のポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂との質量比にかかわらず、上記同様の傾向が得られた。ただし、ポリプロピレン系樹脂に対するポリエチレン系樹脂の比率が高い場合、より良好な結果が得られる傾向にあった。
【0138】
データは示していないが、外層中のポリプロピレン系樹脂として、「PP-1」の代わりに「PP-2」を用いた場合であっても、上記同様の傾向が得られた。
【要約】
【課題】本発明の課題は、良好な耐熱性及び成形加工性を有する、無機物質含有積層シートを提供することである。
【解決手段】本発明は、内層と、前記内層の両面に積層された外層と、を備える積層シートであって、前記内層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、無機物質粉末、及びラウリン酸ジエタノールアミドを含み、前記内層において、前記ポリエチレン系樹脂及び前記ポリプロピレン系樹脂の総量と、前記無機物質粉末との質量比が、50:50~60:40であり、前記ラウリン酸ジエタノールアミドの含有量が、前記内層全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であり、前記外層が、ポリエチレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂を含み、前記外層において、前記ポリエチレン系樹脂と、前記ポリプロピレン系樹脂との質量比が、20:80~50:50である、積層シートを提供する。
【選択図】なし