(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】製炭装置
(51)【国際特許分類】
C10B 49/02 20060101AFI20221004BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C10B49/02
C10B53/02
(21)【出願番号】P 2022525371
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032518
【審査請求日】2022-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520187447
【氏名又は名称】有限会社紋珠
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】島田 勇巳
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 英子
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016608(JP,A)
【文献】実公平03-015537(JP,Y2)
【文献】特開2005-127689(JP,A)
【文献】特開2018-021173(JP,A)
【文献】実開平04-118427(JP,U)
【文献】特開平07-258653(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 49/02
C10B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製炭炉と、
排煙装置と、
前記製炭炉と前記排煙装置とを接続する通路と、
を備える製炭装置であって、
前記製炭炉は、
基台と、
前記基台上に設置される、製炭ユニットと、を含み、
前記製炭ユニットは、
製炭対象物が収容され、上面が開放された
第1のカゴと、前記基台の上かつ前記
第1のカゴの下に配置され
、焚き付け材の収容部である第2のカゴとを含む
内部ユニットと、
上壁と側壁とを含み、前記内部ユニットの上面および側面を覆うように設置される筐体と、
を含み、
前記筐体の前記側壁における前記内部ユニットの前記第2のカゴに対応する位置に、
前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開閉可能な第1の炉口と、
前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開状態では前記通路に連通する開閉可能な第2の炉口と、
が備えられ、
前記筐体の前記上壁に、前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開閉可能な開口部
が備えられ、
前記
第1のカゴと前記
第2のカゴとの境界部は、少なくとも一部がメッシュで構成されている、
製炭装置。
【請求項2】
前記
内部ユニットは、前記
第1のカゴと前記
第2のカゴとが一体として構成されている、
請求項1に記載の製炭装置。
【請求項3】
前記
内部ユニットは、前記
第1のカゴと前記
第2のカゴとが互いに分離可能である、
請求項1に記載の製炭装置。
【請求項4】
前記
内部ユニットは、
積み重ねられた複数の前記第1のカゴを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製炭装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製炭装置を用いる炭の製造方法であって、
前記第1のカゴに製炭対象物を、前記第2のカゴに焚き付け材を、それぞれ投入する工程と、
前記第1の炉口を通じて、前記第2のカゴに収容された前記焚き付け材に着火する工程と、
前記第1の炉口または前記筐体の前記上壁の前記開口部から吸気させるとともに、前記第2の炉口から排気させながら前記製炭対象物の炭化を進行させる工程と、
を含む、炭の製造方法。
【請求項6】
製炭炉と、
排煙装置と、
前記製炭炉と前記排煙装置とを接続する通路と、
を備える製炭装置であって、
前記製炭炉は、
基台と、
前記基台上に設置される製炭ユニットと、を含み、
前記製炭ユニットは、
製炭対象物が収容され、上面が開放された
第1のトレイと、前記基台の上かつ前記
第1のトレイの下に配置され
、焚き付け材の収容部である第2のトレイとを含む
炉本体と、
前記炉本体の上面を覆う蓋と、
を含み、
前記
炉本体の前記
第2のトレイの側面に、
前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開閉可能な第1の炉口と、
前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開状態では前記通路に連通する開閉可能な第2の炉口と、
が備えられ、
前記蓋に、前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する、開閉可能な開口部が備えられ、
前記
第1のトレイと前記
第2のトレイとの境界部は、少なくとも一部がメッシュで構成されている、
製炭装置。
【請求項7】
前記製炭ユニットは、前記
第1のトレイと前記
第2のトレイとが一体として構成されている、
請求項
6に記載の製炭装置。
【請求項8】
前記製炭ユニットは、前記
第1のトレイと前記
第2のトレイとが互いに分離可能である、
請求項
6に記載の製炭装置。
【請求項9】
前記製炭ユニットは、
積み重ねられた複数の前記第1のトレイを含む、
請求項
6から請求項
8のいずれか1項に記載の製炭装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の製炭装置を用いる炭の製造方法であって、
前記第1のトレイに製炭対象物を、前記第2のトレイに焚き付け材を、それぞれ投入する工程と、
前記第1の炉口を通じて、前記第2のトレイに収容された前記焚き付け材に着火する工程と、
前記第1の炉口または前記蓋の前記開口部から吸気させるとともに、前記第2の炉口から排気させながら前記製炭対象物の炭化を進行させる工程と、
を含む、炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製炭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製炭窯として、外殻と、外殻内に収容されるバスケットと、を備えるものが知られている。例えば特許文献1には、先細に形成されたトンネル状の外殻と、穴あき鉄板製のバスケットと、を備える製炭窯が開示されている。特許文献1の製炭窯では、バスケットの内部が複数のセクションに分割されており、複数種類の炭を一つの窯で同時に製造できる。
【0003】
また、製炭装置として、製炭窯と、二次燃焼装置とを備えるものが知られている。例えば特許文献2には、内窯と外窯との二重構造を有する製炭窯と、製炭窯に接続する二次燃焼室とを備える製炭装置が開示されている。特許文献2の製炭装置では、外窯の上部に二次燃焼室が備えられており、製炭窯から排出される排煙を、バーナーで燃焼させてもよく、製炭窯の熱によって直接加熱してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3390757号公報
【文献】特開2001-354971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な場所で発生するバイオマスを利用するために、設置場所に関する制限が少ない製炭装置が望まれている。また、多様な原料を効率的に炭化できる製炭装置が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、設置場所に関する制限が少なく、多様な原料を炭化することが可能な製炭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った製炭装置は、製炭炉と、排煙装置と、前記製炭炉と前記排煙装置とを接続する通路と、を備える。前記製炭炉は、基台と、前記基台上に設置される製炭ユニットと、を含む。前記製炭ユニットは、製炭対象物が収容され、上面が開放された第1部分と、
前記基台の上、かつ、前記第1部分の下に配置される第2部分と、少なくとも前記第1部分の上面を覆う蓋部と、を含む。前記第1部分と前記第2部分との境界部は、少なくとも一部がメッシュで構成されている。前記製炭ユニットには、前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する少なくとも2つの開口部が備えられている。前記開口部の少なくとも1つが前記通路に連通している。
【発明の効果】
【0008】
上記製炭装置によれば、設置場所に関する制限が少なく、多様な原料を炭化することが可能である製炭装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示における製炭装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示における製炭装置の製炭炉の筐体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示における製炭装置の製炭炉の構造を表す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示における製炭炉の内部ユニットおよび基台の構造を分解して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示における製炭炉の内部ユニットの例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示における製炭炉の内部ユニットの例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示における製炭炉の内部ユニットの例を示す正面図および分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示における製炭炉の製炭ユニットの例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示における製炭炉の製炭ユニットの一部を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本開示における製炭炉の製炭ユニットの例を示す正面部および一部断面拡大図である。
【
図11】
図11は、本開示における製炭炉の製炭ユニットに含まれるトレイの斜視図および断面図である。
【
図12】
図12は、本開示における製炭装置の利用形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態の概要]
最初に本開示の実施の形態を列記して説明する。本開示に従った製炭装置は、製炭炉と、排煙装置と、前記製炭炉と前記排煙装置とを接続する通路と、を備える。前記製炭炉は、基台と、前記基台上に設置される製炭ユニットと、を含む。前記製炭ユニットは、製炭対象物が収容され、上面が開放された第1部分と、前記基台の上、かつ、前記第1部分の下に配置される第2部分と、少なくとも前記第1部分の上面を覆う蓋部と、を含む。前記第1部分と前記第2部分との境界部は、少なくとも一部がメッシュで構成されている。前記製炭ユニットには、前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する少なくとも2つの開口部が備えられている。前記開口部の少なくとも1つが前記通路に連通している。
【0011】
従来、製炭窯として、外殻と、外殻内に収容されるバスケットと、を備えるものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1の製炭窯では、外殻の前面に設けられた扉からバスケットを出し入れできる。また、バスケットが複数のセクションに区切られている。これらの構成によって、製炭原料の出し入れが容易であるとともに、セクションごとに異なる原料を入れて製炭を行うことができる。一方で、特許文献1の製炭窯は1つのバスケットに複数の材料が収容されるため、製炭工程の進行中に特定の材料のみを取り出すことはできない。また、この製炭窯では、バスケットの区画のうち一番手前のセクションに焚き付け材が投入される。
【0012】
これに対して、本開示に従う製炭装置においては、製炭炉が、基台と、前記基台上に設置される製炭ユニットとを含み、製炭ユニットは、製炭対象物が収容される第1部分と、その下に配置される第2部分と、第1部分の上面を覆う蓋部とを有する。製炭の開始段階では、第2部分に焚き付け材を投入し、投入した焚き付け材を燃焼させることができる。また、第1部分と第2部分の境界部は少なくとも一部がメッシュで構成されている。このため、焚き付け材の燃焼による熱が、第1部分の下面全体から、第1部分に投入された製炭対象物に伝わる。この構造によって、製炭対象物を均一かつ迅速に炭化させることができる。
【0013】
従来、密閉した炉内で炭化を進行させるタイプの製炭炉(以下、「密閉炉」と称することがある)では、炉内に収容された製炭材料の前面に焚き付け材を配置することが多かった。しかしながら、焚き付け材が炉内の前面のみに配置される場合、炉内における熱の循環が不均一になりやすい。このため、炉内での材料の配置や燃焼のコントロールには高い技術が要求されている。一方、上面が開放された炉内で炭化を進行させるタイプの製炭炉炉も知られている(以下、「開放炉」と称することがある)。一般的に、開放炉では、まず炉内の底面に製炭材料に投入して着火し、その上に順次、製炭材料の層を積み重ねていくことによって蒸し焼き状態を作り出し、製炭を行う。しかしながら、開放炉は、密閉炉に比べて高温を維持することが難しく、製炭に要する時間が長くなることがあった。
【0014】
本開示に従う製炭装置は、製炭ユニットに、製炭材料を収容する第1部分と、第1部分の下に位置し、焚き付け材を入れることができる第2部分と、第1部分の上面を覆う蓋部とが設けられている。この構成によって、本開示の製炭装置は、高温による短時間での炭化という密閉炉の長所を有しながら、かつ、材料に対して均一に熱を与えやすいという開放式の製炭炉の長所を併せ持つ。このため、様々な材料を効率的に炭化させることができる。
【0015】
前記製炭装置において、前記排煙装置は、前記排煙装置の内部に収容された燃焼器を含むものとできる。排煙装置の内部に収容された燃焼器は、いわゆる二次燃焼器として機能する。二次燃焼器によって、製炭炉から排出される煙を無色化ないし無臭化することができる。このため、設置場所に関する制限が少なく、市街地や人家に近い場所に製炭装置を設置し、製炭を行うことが可能となる。また、二次燃焼装置から得られる熱エネルギーを利用した発電機等の各種の装置を付帯させることができる。
【0016】
前記製炭装置において、前記通路は、2以上の前記製炭炉と、1つの前記排煙装置とを接続していてもよい。つまり、本開示にかかる製炭装置は、2以上の製炭炉が1つの排煙装置に接続された製炭装置であってよい。製炭炉のそれぞれは、基台と、基台上に設置される製炭ユニットと、を備える。このため、製炭する材料や所望するタイミングに応じて、複数の製炭ユニットを使い分けることが容易である。本開示の製炭装置では、2以上の製炭炉が接続された形態とすることによって、異なる材料を同時に炭化させることができる。また、進行状況が異なる複数の製炭工程を同時に、あるいは、逐次的に進めることができる。複数の製炭工程をずらしながら実施することによって、二次燃焼装置に継続的に排煙を送り、二次燃焼装置を利用したバイナリ発電によって継続的に電力を得ることもできる。
【0017】
前記製炭装置において、製炭炉は、筐体と、内部ユニットと、を含んでよい。前記筐体は、前記蓋部を含んでよい。前記内部ユニットは、前記第1部分および前記第2部分を含み、側面の少なくとも一部がメッシュで構成されてよい。前記筐体は、全体が鋼板で構成されており、前記内部ユニットの上面および側面を覆うように設置されてもよい。この構成とすることで、内部ユニットの第1部分に収容される製炭材料に対して、より均一に熱を与えることができる。また、内部ユニットの側面がメッシュで構成されているため、筐体を取り外すと、内部ユニットの側面を通してユニット内部を容易に視認できる。このため、炭化された材料の状態を確認することが容易となる。
【0018】
前記製炭装置において、前記内部ユニットは、前記第1部分と前記第2部分とが一体として構成されていてもよい。第1部分と第2部分とが一体に構成されていることによって、内部ユニットを移動させる際の扱いが容易になる。
【0019】
前記製炭装置において、前記蓋部の少なくとも一部に、開閉可能な開口部が備えられていてもよい。蓋部の開口部は、製炭の際には吸気口として機能しうる。蓋部に開口部を備えることによって、製炭炉の上部から吸気して炉内における空気の流れを作り出すことができる。このため、炉内の温度分布をより均一にでき、均一な仕上がりの炭を得ることが容易になる。
【0020】
前記製炭装置において、前記第1部分と前記第2部分との境界部は、少なくとも一部に斜面を含む面であってもよい。第1部分と第2部分との境界部は、例えば、周縁に対して中央部が高く形成されていてもよい。この構成によって、製炭材料に対する熱の伝播がより均一になり、均一な仕上がりの炭を得ることが容易になる。
【0021】
[実施の形態の詳細]
以下、本発明にかかる製炭装置の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本開示における製炭装置の一例である実施の形態1を示す。
図1を参照して、製炭装置1は、製炭炉11と、排煙装置81と、通路としての排煙管61とを、備える。製炭装置1では、3つの製炭炉11が、排煙管61を介して、1つの排煙装置81に接続されている。3つの製炭炉11のそれぞれは、地面に設置された基台51と、製炭ユニット31と、を含む。
【0023】
図1を参照して、排煙管61は、複数の第1の排煙管62と、第2の排煙管63と、を含む。第1の排煙管62の一方端は、製炭炉11のそれぞれの背面に設けられた炉口25(
図2)に接続している。第1の排煙管62の他方端は、第2の排煙管63に接続している。つまり、第1の排煙管62は、製炭炉11のそれぞれと、第2の排煙管63との間を接続する。第2の排煙管63の一方端は、排煙装置81に接続している。第2の排煙管63は、第1の排煙管62よりも太い管であってもよい。第1の排煙管62は、少なくとも一部がフレキシブルホースからなることが好ましい。第1の排煙管62がフレキシブルホースで構成される場合、炉口25(
図2)に対する取り付け、取り外しが容易になる。
【0024】
第2の排煙管63の全体は、炉口25(
図2)よりも高い位置に配置される。第2の排煙管63における排煙装置81に近い位置には、管の内部に送風機能を有するファンが設けられていてもよい。ファンの運転レベルが、複数の段階に切り換えられることが好ましい。また、第2の排煙管63は、排煙装置81に近い側が相対的に高く、排煙装置81から遠い側が相対的に低くなるよう傾斜して配置されている。この構成によって、排出される煙の流れがスムーズになる。また、製炭中に生成し、排煙管に排出される木酢液を効率的に収集することができる。第2の排煙管63における、低い方の端部に、木酢液を取り出すための取り出し口やバルブが備えられていてもよい。
【0025】
図2は、製炭炉11における筐体21を示す斜視図である。以下の説明では、
図2におけるX軸の方向を製炭炉(製炭装置)の幅方向という。
図2におけるY軸の正方向を「手前側」、その反対側を「背後側」という。
図2におけるZ軸の正方向を「上」、その反対側を「下」という。
【0026】
図2を参照して、筐体21は、製炭ユニット31を構成する部材である。筐体21は、全体が鋼板で構成されている。筐体21を基台51(
図1)上に設置すると、筐体21と基台51とによって密閉空間が構成されうる。なお、ここでいう密閉空間とは、気体の出入りが完全に遮断された空間のみを意味するのではなく、恣意的に作られた開口部分がない(あるいは閉じられた)空間を意味しており、意図しない若干の空気の流通は許容される。
【0027】
図2を参照して、筐体21は、四面の側壁21aと、上壁21bとを有する。一方、筐体21の底面には壁面がない。筐体21の底面は開口となっている。上壁21bは、奥行き方向(Y軸方向)における中央部の高さが、手前側および背後側の高さよりも大きい。手前側の側壁21aの下部には、3箇所の第1の炉口22が等間隔に設けられている。第1の炉口22は、筐体21の内部と外部とを連通する穴(開口部)である。第1の炉口22は、蓋23を着脱することによって開閉可能である。背後側の側壁21aの下部には、2箇所の第2の炉口25が設けられている。第2の炉口25は、筐体21の内部と外部とを連通する穴(開口部)である。第2の炉口25は、蓋26を着脱することによって開閉可能である。
【0028】
第1の炉口22は、水平方向(Y軸と平行な方向)に開口している。第1の炉口22は、側壁21aの下端付近の、製炭ユニットの第2部分43(
図3)に対応する位置に設けられている。製炭を開始する際には、第1の炉口22にバーナーを差し込んで、製炭ユニットの第2部分43(
図3)に入れられた焚き付け材に着火できる。また、製炭の進行中には、第1の炉口22を吸気口として利用できる。さらに、3つの炉口22のうちで開状態とする炉口22の数を調整することによって、炉内に取り込む空気の量をコントロールできる。なお、
図2の例では3箇所の炉口22が設けられているが、炉口の数は特に制限されず、製炭炉の容量や目的に応じて適宜変更すればよい。
【0029】
第2の炉口25は、鉛直方向(Z軸と平行な方向)に開口している。第2の炉口25は、背後側の側壁21aの下端付近の位置に設けられている。第2の炉口25は、蓋26によって開閉可能であり、また、第1の排煙管62を着脱できる。製炭時には、第2の炉口25を排気口として利用できる。つまり、製炭炉11において、第1の炉口22から吸気し、第2の炉口25から排気するという空気の流れを作り出すことができる。第2の炉口25は2箇所に設けられている。2箇所の炉口25の両方に第1の排煙管62を接続してもよい。また、2箇所の炉口25のうちの1箇所のみに第1の排煙管62を接続し、残る1箇所は蓋26で閉止してもよい。なお、
図2の例では2箇所の炉口25が設けられているが、炉口の数は特に制限されず、製炭炉の容量や目的に応じて適宜変更すればよい。
【0030】
筐体21の上壁21bの中央部には、蓋27が設けられている。蓋27は、略正方形である。蓋27は、一つの辺にヒンジが取り付けられており、開閉可能である。蓋27も、吸気口として利用できる。なお、蓋27の位置は、筐体21の上面の中央に制限されない。例えば、上壁21bの手前側の、幅方向(X軸方向)における中央部に配置してもよい。また、上壁21bの背後側の、幅方向(X軸方向)における中央部に配置してもよい。さらに、蓋27を2箇所以上設けてもよい。形状も、四辺形に限らず例えば円形等であってもよい。蓋27を設けることによって、製炭炉11の上部から吸気し、下部に設けられた第2の炉口25から排気するという空気の流れを作りだすことができる。
【0031】
筐体21の上壁21bには、フック28が設けられている。フック28は、フォークリフトのフォークを差し込み可能である1対の管状部である。フック28にフォークを差し込んで、筐体21を移動させることができる。なお、フック28の形態はこれに制限されない。例えば、筐体の上面の複数個所に輪状のフックを設けて、クレーンで吊り下げ可能としてもよい。
【0032】
図3は、製炭炉11の構造を表す模式図である。理解容易のため、一部の構造を省略している。
図3(a)は製炭炉11を側方から見た状態を表す。
図3(b)は製炭炉11を前方から見た状態であり、筐体21、内部ユニット41、基台51を分離して模式的に示している。
図3(a)、(b)を参照して、製炭炉11は、基台51と、筐体21と、内部ユニット41と、を含む。筐体21と、内部ユニット41とが、製炭ユニット31を構成する。内部ユニット41は、第1部分42および第2部分43を含む。基台51と筐体21とによって形成される空間に、内部ユニット41が収容されている。基台51は、中央に耐熱パネル52が設置されている。耐熱パネル52の上に、内部ユニット41が載置されている。内部ユニット41の全体を覆うように、筐体21が上から被せられる。筐体21は、内部ユニット41の上面および側面を覆う蓋部である。なお、耐熱パネル52は、予め成形されたパネルが載置されたものでもよいし、型枠内に耐熱素材を流し込んで固化させた構造物であってもよい。耐熱パネルは、製炭炉の保温性を向上させるために配置される。
【0033】
図4は、内部ユニット41および基台51の構造を分解して示す斜視図である。
図4を参照して、基台51は、四辺形の底面55と、底面55の周縁から立ち上がって延びる周壁54と、底面55の中央部に設置された耐熱パネル52と、を含む。周壁54があることによって、基台51に水や砂利などを溜めることができる。筐体21を基台51の上に載置する前または後に、周壁54と耐熱パネル52の間に水や砂利などを入れることによって、筐体21と基台51の間の密閉性を高めることができる。水や砂利のほかに、ゲル状物質等を用いることもできる。基台51の底面55の寸法は特に制限されないが、一例としては例えば、各辺の長さが2000~2500mmである正方形に形成することができる。周壁54の高さは特に制限されないが、一例としては例えば、50~100mmの高さとすることができる。当然ながら、これら以外の範囲であってもよい。耐熱パネル52は、例えば高さが50~100mm程度であるものを用いるできる。
【0034】
基台51の上に、内部ユニット41を載置する。内部ユニット41は、製炭ユニットの第1部分を構成する第1のカゴ42と、製炭ユニットの第2部分を構成する第2のカゴ43と、を含む。第1のカゴ42は、製炭対象物を収容する。第2のカゴ43は、焚き付け材を収容することができる。
【0035】
第1のカゴ42は、四辺形の底面42aと、底面42aの周縁から立ち上がる4面の側面42bを含む。第1のカゴ42の上面は開放されている。底面42aおよび側面42bによって囲まれる空間が、製炭原料の収容部である第1部分48である。底面42aおよび側面42bは、いずれも金属製のメッシュ材で構成されている。メッシュ材としては、例えば、エキスパンドメタル、パンチングメタルのうち、所望の目開きを有するものを用いることができる。メッシュ材は、製炭原料の種類や細かさによって選択することができる。例えば、もみがらを製炭するためには、目開きが3~5mm程度のメッシュ材を用いることができる。より大きな材料を製炭する際はより目開きの大きなメッシュでカゴを構成することが好ましい。第1のカゴ42は、側面42bの一部が取り外し可能にされている。側面42bの一部を取り外し可能とすることによって、製炭材料や製炭後に得られた炭の出し入れが容易になる。第1のカゴ42の側面42bのうち、手前の面の上部には、2箇所の穴42eが設けられている。2箇所の穴42eはフォークリフトの一対のフォークの間隔に対応する間隔で設けられている。また、第1のカゴ42は、上面の幅方向にわたって取り付けられた補強材42fを含む。穴42eから補強材42fまでフォークが届くように差し込むことができる。第1のカゴ42は、フォークリフトを用いて、移動ないし運搬できる。
【0036】
図4の例では第1のカゴ42の底面42aの全体がメッシュで構成されているが、底面42aの一部のみをメッシュで構成することもできる。例えば、底面42aの幅方向の一部分(例えば中央部分)に底面42aの手前側から背後側へと延びるメッシュ部を構成し、底面42aのその他の部分は鋼板で構成してもよい。側面42bも同様に、一部をメッシュで構成し、一部は鋼板で構成してもよい。
【0037】
第1のカゴ42の寸法は特に制限されない。一例としては例えば、底面42aは、各辺の長さが1000~2500mmである正方形に形成することができる。側面42bの高さも特に制限されないが、一例としては例えば、800~2000mmの高さとすることができる。当然ながら、これら以外の範囲であってもよい。
【0038】
図4を参照して、第2のカゴ43は、四辺形の底面43aと、底面43aの周縁から立ち上がる4面の側面43bと、を含む。第2のカゴ43の上面は開放されている。底面43aおよび側面43bによって囲まれる空間が、焚き付け材を入れることができる第2部分49である。底面43aは、鋼板または耐熱パネルで構成されている。側面43bのうち、手前面および背後面の2面はメッシュ材で構成されている。側面43bのうち両側の2面は鋼板または耐熱パネルで構成されている。メッシュ材としては、第1のカゴ42を構成するメッシュ材と同じものが使用できる。底面43aの上に、手前の面から背後面に至る管路43eが2箇所、平行して設けられている。管路43eはフォークリフトの一対のフォークの間隔に対応する間隔で設けられている。管路43eにフォークを差し込むことによって、フォークリフトを用いて、第2のカゴ43を移動ないし運搬できる。
【0039】
第2のカゴ43の寸法は、第1のカゴ42に対応する寸法にできる。具体的には、第2のカゴ43の底面43aの1辺の長さは、第1のカゴ42の底面42aの1辺の長さと同じであるか、わずかに(10~50mm程度)大きいものとできる。第2のカゴ43の底面の寸法を第1のカゴ42よりもわずかに大きくすることによって、第2のカゴ43の上に第1のカゴ42を重ねる際の位置決めが容易になる。第2のカゴ43の高さは、特に制限されないが、一例としては例えば、200~400mmの高さとすることができる。当然ながら、これら以外の範囲であってもよい。
【0040】
製炭炉11を運転する際には、基台51の上に第2のカゴ43を載置し、第2のカゴ43の上に第1のカゴ42を重ねる。つまり、第2部分49は、基台51の上、かつ第1部分48の下に配置される。第1部分48と第2部分49とは、底面42aによって区切られる。製炭時には、さらに筐体21(
図2)を被せて、内部ユニット41の全体を覆う。
【0041】
なお、
図4に示した内部ユニット41は、第1のカゴ42と第2のカゴ43が分離されているが、第1のカゴ42および第2のカゴ43は一体として構成されてもよい。第1のカゴ42および第2のカゴ43が一体である場合、底面42aの少なくとも一部が取り外し可能にされていてもよい。また、第2のカゴ43の側面の一部が取り外し可能にされていてもよい。また、第2のカゴ43の側面の一部はメッシュや壁面が設けられず、開放されていてもよい。これらの構成によって、第2部分49への焚き付け材の投入が容易にできる。
【0042】
本開示に従う製炭炉11では、第2部分49に焚き付け材を入れ、焚き付け材を燃焼させることによって、第1部分48に収容される製炭対象物を下面から加熱できる。このため、製炭対象物を均一に加熱し、均質な炭を得ることが容易になる。さらに、筐体21で内部ユニット41を覆うことによって密閉炉の状態を作り出すことができる。これによって、高温を維持し、効率的に熱を循環させて短時間で製炭を行うことができる。
【0043】
(内部ユニットの変形例1)
図5は、内部ユニットの変形例である内部ユニット411を示す斜視図である。
図5(a)、(b)はいずれも内部ユニット411を示し、見る方向のみが違う図である。以下では主に、内部ユニット411が内部ユニット41と異なる点について述べる。
図5を参照して、内部ユニット411は、第1部分481と第2部分491とを含む。さらに内部ユニット411には、第1部分481および第2部分491の手前側に、第3部分471が設けられている。内部ユニット411では、第1部分481に製炭材料を投入できる。第2部分491は、第1部分481の下に設けられた部分である。第3部分471は、第1部分481および第2部分491の手前に位置し、内部ユニット411の高さ方向の全域にわたる部分である。第3部分471の奥行き方向の寸法は、第1部分481および第2部分491の奥行き方向の寸法よりも小さい。具体的には、第3部分471の奥行き方向の寸法は、第1部分481および第2部分491の奥行き方向の寸法の1/3程度とされている。
【0044】
内部ユニット411において、第1部分481と第2部分491の間は、第1部分481の底面421aによって仕切られている。底面421aはメッシュで構成されている。第1部分481の四方の側面421bも、メッシュで構成されている。第2部分491の底面431bは、第3部分471の底面471bとつながっており、鋼板または耐熱パネルで構成されている。内部ユニット411の底面411bは、第2部分491の底面431bおよび第3部分471の底面471bを含む。第2部分491は側壁面を有さない。また、内部ユニット411の上面(すなわち、第1部分481の上面および第3部分471の上面)は開口である。内部ユニット411は、底面411bと、内部ユニット411の輪郭を構成する枠材とを除いて、大部分がメッシュ材で構成されている。
【0045】
内部ユニット411は、底面411bの上に、奥行き方向に延びる管路411eが2箇所、平行して設けられている。管路411eはフォークリフトの一対のフォークの間隔に対応する間隔で設けられている。管路411eにフォークを差し込むことによって、フォークリフトを用いて、内部ユニット411を移動ないし運搬できる。内部ユニット411は、第1部分481、第2部分491、第3部分471が一体に構成されているため、基台51への設置、基台51からの移動が容易である。
【0046】
内部ユニット411は、第3部分471に焚き付け材を投入できる。第2部分491にも、焚き付け材を投入してよい。内部ユニット411は、第2部分491および第3部分471があることによって、第1部分481に収容される製炭材料に対して迅速かつ均一に熱を与えることができる。内部ユニット411では、製炭材料を前面と下面の双方から加熱することができるため、製炭材料に対して迅速かつ均一に熱を与えることができる。内部ユニット411は前述の基台51の上に設置可能であり、また、前述の筐体21(
図2)の内部に収容可能である。
【0047】
(内部ユニットの変形例2)
図6は、内部ユニットの変形例である内部ユニット412を示す斜視図である。
図6を参照して、内部ユニット412は、第1部分482と第2部分492とを含む。さらに内部ユニット412には、第1部分482および第2部分492の手前側に、第3部分472が設けられている。内部ユニット412では、第1部分482に製炭材料を投入できる。第2部分492は、第1部分482の下に設けられた部分である。第3部分472は、第1部分482および第2部分492の手前に位置し、内部ユニット412の高さ方向の全域にわたる部分である。
【0048】
内部ユニット412は、大部分において内部ユニット411と同じ構成であり、同じ部分については説明を省略する。内部ユニット412において、第1部分482の側面482bは鋼板等の板材で構成されている。側面482bを板材で構成する場合、保温性が向上する、また、細かい材料を収容するために好適であるという利点がある。
【0049】
(内部ユニットの変形例3)
図7は、内部ユニットの変形例である内部ユニット413を示す斜視図である。
図7(a)は内部ユニット413の正面図である。
図7(b)は、内部ユニット413を分解して示す斜視図である。
図7(a)、(b)を参照して、内部ユニット413は、第1のカゴ414と、第2のカゴ43と、を含む。第2のカゴ43は、焚き付け材を収容できる。第2のカゴ43は、
図4に示されたものと同様である。第1のカゴ414は、3つ重ねられて製炭ユニットの第1部分を構成している。第1のカゴ414のそれぞれに、製炭対象物が収容されうる。第1のカゴ414の底面414aは、メッシュで構成されている。第1のカゴ414の両側面414bは、メッシュで構成されている。第1のカゴ414の手前面414cおよび背後面414dは、板材で構成されている。第1のカゴ414の手前面414cおよび背後面414dの上端には、それぞれ2つ、フック415が設けられている。フック415にフォークリフトのフォークを差し込むことができる。また、
図7の例では、四方の側面のうち2面がメッシュ、2面が板材とされているが、これに制限されない。例えば、4面ともメッシュでもよいし、4面とも板材であってもよい。また、
図7の例では第1のカゴ414が3段重ねとされているが、2段であってもよく、4段以上であってもよい。複数であれば特に制限されない。
【0050】
製炭時には、内部ユニット413に筐体を被せて、密閉炉を構成する。筐体としては例えば、筐体21(
図3)を用いることができる。内部ユニット413は、水分の多い材料、重い材料の製炭を行うために特に適している。また、内部ユニット413は、炭化を行う前段階で、材料を乾燥させるための乾燥棚として用いることもできる。さらにこの時、製炭装置における別の製炭ユニットからの排熱または二次燃焼器から得られる熱を利用して、乾燥を行うことも好ましい。
【0051】
(製炭ユニットの変形例1)
図8は、製炭ユニットの変形例である製炭ユニット311を示す斜視図である。
図9は、製炭ユニット311における炉本体511の内部を示す斜視図である。
図8を参照して、製炭ユニット311は、基台51の上に設置されている。製炭ユニット311は、炉本体511と、蓋211と、を含む。
【0052】
蓋211は、全体が鋼板で構成されている。蓋211は、平面である上面211aと、上面の周縁から下向きに延びる4面の縁面211bと、を有する。蓋211は、炉本体511の上面を覆う。蓋211には、上方に延びる四角形の筒である吸気筒271が設けられている。吸気筒271の上部には蓋が付いており、開閉可能である。吸気筒271は、製炭時に、吸気口として利用できる。蓋211には、フック281が2箇所、平行して設けられている。フック281にフォークリフトのフォークを差し入れて、蓋211を移動ないし運搬できる。
【0053】
図9を参照して、炉本体511の内部は、製炭対象物が収容される第1部分521と、第1部分の下に配置された第2部分531と、に区画されている。第1部分521の底面521aは、メッシュで構成されている。つまり、第1部分521と第2部分531の境界面はメッシュで構成されている。第2部分531には焚き付け材を投入できる。
【0054】
第1部分521の底面521aは、四辺形の中央部522aと、中央部522aの各辺と第1部分521の側面521bとの間を接続する4面の斜面523aと、を含む。つまり、底面521aは、中央部522aが周縁よりも高くなった、底面のない角錐台状に形成されている。また、中央部522aは取り外し可能であり、中央部522aから第2部分531へと焚き付け材を投入できる。なお、底面521aの形状はこれに制限されず、平面であってもよいし、全体的に一方側に傾斜した底面であってもよい。例えば、手前側から背後側へと傾斜する斜面であってもよい。また、中央の平坦部を有さず、全体が中心に向かって傾斜する角錐の側面状に形成されていてもよい。
【0055】
図8を参照して、炉本体511は、第1部分521と第2部分531とが一体に構成されている。第1部分の側面521bと、第2部分531の側面531bのうち側方の2面は、一体の鋼板から構成される。第2部分531の側面531bのうち、手前側は開口となっている。この開口から焚き付け材を入れることができる。
図8では、焚き付け材として細枝や葉を入れた状態を示している。
【0056】
製炭ユニット311は、蓋211によって炉本体511の上面を覆うことができる。製炭ユニット311は、炉本体511の全体を覆う筐体を用いることなく、製炭を行ってもよい。製炭ユニット311にさらに筐体を被せることもできる。このときの筐体としては例えば筐体21(
図2)を用いることができる。筐体21の蓋27を開けて、吸気筒271を筐体21の外に出すことができる。
【0057】
(製炭ユニットの変形例2)
図10は、製炭ユニットの変形例である製炭ユニット312を示す正面図および一部断面拡大図である。
図10を参照して、製炭ユニット312は、炉本体512と、蓋212と、を含む。製炭ユニット312は、基台の上に設置されうる。炉本体512は、製炭対象物が収容され、上面が開放された第1部分513と、第1部分513の下に位置し、焚き付け材が投入される第2部分514と、を含む。第1部分513は、3段に重ねられたトレイ515を含む。
【0058】
図10を参照して、蓋212は、平面である上面212aと、上面の周縁から下向きに延びる4面の縁面212bと、を有する。蓋212の上面212aには、上方に延びる四角形の筒である3箇所の吸気筒272が設けられている。蓋212の上面212aには、フック282が2箇所、平行して設けられている。フック282にフォークリフトのフォークを差し入れて、蓋212を移動ないし運搬できる。また、蓋212は縁面が二重構造になっており、縁面212bよりも内側に、4面の縁面212cを有する。縁面212bは、トレイ515の外周面よりも外側に位置し、トレイ515の上部外周を覆っている。また、縁面212cは、トレイ515の製炭原料収容部である函部516の外周に設けられた外周部517に入り込んでいる。外周部517は砂で満たされている。外周部517に満たされた砂の中に縁面212cが埋まることによって、炉本体512の内部は外部と遮断され、密閉空間が形成される。縁面212bは、炉本体512に雨などが入り込むことを防止する。焚き付け材が投入される第2部分514は、底面、側面ともに板材で構成されている。第2部分514の前面には、フォークリフトのフォークを挿入可能である、管路533の入り口が2箇所設けられている。また、第2部分514の前面には、蓋を取り付け可能である炉口534が3箇所、設けられている。
【0059】
図11は、トレイ515の構造を示す。
図11(a)はトレイ515の斜視図である。
図11(b)は、
図11(a)のA-A断面図である。
図11を参照して、トレイ515は、上面が開放された箱構造を有する。トレイ515は、製炭原料が収容される函部516と、函部516の外側の全周に設けられた外周部517と、外周部517の底面517aから下向きに突出するスカート518と、を含む。函部516の底面516aはメッシュで構成されている。函部516の側面516bは、板材で構成されている。外周部517の底面517aおよび側面517bは板材で構成されている。外周部517は上下2段に構成されていてもよい。外周部517には、砂やゲルなどが充填される。製炭ユニット312では、トレイ515が複数積み重ねられて使用される。
図11の例では、トレイ515が3段重ねられているが、2段であってもよく、4段以上であってもよい。製炭する原料の量や種類に応じて、使用するトレイ515の数を変更することもできる。トレイ515が重ねられる時、上段のトレイ515のスカート518が、下段のトレイ515の外周部517に入りこむことによって、炉本体512の内部は外部と遮断され、密閉空間が形成される。外周部517の側面517bには、2組のフック519が設けられている。フック519にフォークリフトのフォークを差し込むことができる。
【0060】
(その他の変形例)
上記の実施の形態では基台および製炭ユニットが四辺形の底面を有しているが、これに制限されない。例えば、基台は円盤状であってもよく、製炭ユニットは円筒形状であってもよい。上記の実施の形態では、基台は水盤状であるが、これに制限されない。基台は地上に設置されてもよいし、例えば一部が土中に埋設されてもよい。
【0061】
図12は、本開示に従う製炭装置の利用形態を示す模式図である。
図12を参照して、製炭装置は複数の製炭炉(
図12では4つの製炭炉)を含むことができる。複数の製炭炉が、排煙通路を介して、排煙装置としての二次燃焼器に接続されている。二次燃焼器は、内部に燃焼器を有する。二次燃焼器としては公知の構成を用いることができる。二次燃焼器の燃焼器はガスやガソリンを燃料として、製炭炉から排出される煙を再加熱し、燃焼させる。二次燃焼器における燃料として、本開示に従う製炭装置で製造された炭を用いることもできる。本開示に従う製炭装置は、電源や動力源を必要としない、無動力装置である。
【0062】
各製炭炉における製炭ユニットは、製炭する原料によって適したものを選択して用いることができる。製炭ユニットとしては前述の実施の形態のものを用いることができる。複数の製炭炉で同じ製炭ユニットを用いてもよいし、異なる製炭ユニットを用いてもよい。
【0063】
二次燃焼器には、熱交換器および/またはボイラを備えてもよい。二次燃焼器に付帯する熱交換器を介して、各種媒体を加熱すること、水を加熱して温水を得ること等が可能である。得られた温水は、バイナリ発電装置を用いて電力供給に用いることができる。また、例えばビニールハウスの加温、温泉、養殖業における水温調整等の用途に活用できる。
【0064】
(製炭装置を用いた製炭の方法)
製炭装置1を用いて製炭を行う方法の一例を説明する。概略的には次のとおりである。すなわち、製炭ユニットにおける第1部分に製炭対象物を投入する。複数の製炭ユニットを用いる場合、製炭ユニットに投入する製炭対象物は同じであってもよいし、異なる種類の製炭対象物を同時に炭化することもできる。第1部分に製炭対象物を投入する前もしくは後に、基台上に内部ユニットを設置する。また、第2部分に焚き付け材を入れる。製炭材料と焚き付け材をそれぞれ投入した後に、内部ユニットに筐体を被せる。
【0065】
筐体の前面の穴から着火用のバーナーを差し入れて、焚き付け材に着火する。必要に応じて筐体内に空気を送り込んでもよい。着火後、筐体の前面の穴や吸気筒からの吸気量を測定し、また、排煙通路から排気される排ガスの温度を確認しながら、炭化を進行させる。炭化の進行は、例えば前記の吸気量および/または排ガスの温度に応じて、排煙装置内のファンの運転レベルを調整することによって、調整できる。吸気量の測定には風力計を使用できる。排ガスの温度の測定は、排煙装置内あるいは二次燃焼器内に設置した熱電対を用いて行うことができる。炭化の進行中に排出されるガスは、排煙通路を通じて排煙装置に到達し、二次燃焼器で再加熱される。再加熱されたガスは無色化・無臭化されており、二次燃焼装置の煙突から外部に排気される。また、二次燃焼器で発生する熱は、熱交換器やボイラを介して二次利用される。
【0066】
(実施例)
実施の形態1に示した製炭炉を用いて、製炭を実施した。製炭ユニットにおける製炭対象物の収容部(第1のカゴ)の寸法は、底面が1870mm×1870mm、高さ1100mmである。第1のカゴに3m3の製炭原料を収容した。炭化時間は6~8時間であった。炭化の進行は、排気温度および二次燃焼器の温度をモニタリングすることによって、確認した。約400Kgの製炭原料から、約100Kgの炭を得た。排気温度は当初は常温であり、炭化の進行中は120℃~150℃程度となった。炭化進行中の二次燃焼器内の温度は、800℃程度まで上昇した。排気温度が同じである場合でも、排気に含まれる成分によって、二次燃焼器内の温度は変化する。例えば、製炭の進行中であって排気中に多量の有機物が含まれる場合には、二次燃焼器内で有機物が燃焼するために二次燃焼器内の温度は800℃程度まで上昇する。これに対して、製炭が終了してもっぱら水蒸気が排出される時には、二次燃焼器内の温度は500℃程度となる。
【0067】
一般的に、製炭の進行程度によって排出されるガスの量は変化する。この点、本開示に従う製炭装置では、複数の製炭炉における製炭工程をずらしながら実施することによって、排煙装置に流入するガスの量の増減の程度を少なくすることができる。このため、安定した発電や温水供給等を行うことができる。また、複数の製炭炉のうち、製炭の終了した製炭炉のみを排煙通路から分離できる。このため、冷却や炭の回収を速やかに行うことができる。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製炭装置は、設置場所に関する制限が少なく、多様な原料を炭化することができる製炭装置として、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0070】
1 製炭装置、11 製炭炉、21 筐体、211、212、23、27 蓋、22、25、534 炉口、271、272 吸気筒、28、281、282、415、519 フック、31、311、312 製炭ユニット、41、411、412、413 内部ユニット、42、43、414 カゴ、51 基台、511、512 炉本体、515 トレイ、52 耐熱パネル、61、62、63 排煙管、81 排煙装置
【要約】
製炭炉と、排煙装置と、前記製炭炉と前記排煙装置とを接続する通路と、を備える製炭装置である。前記製炭炉は、基台と、前記基台上に設置される製炭ユニットと、を含む。前記製炭ユニットは、製炭対象物が収容され、上面が開放された第1部分と、前記基台の上、かつ、前記第1部分の下に配置される第2部分と、少なくとも前記第1部分の上面を覆う蓋部と、を含む。前記第1部分と前記第2部分との境界部は、少なくとも一部がメッシュで構成されている。前記製炭ユニットには、前記製炭ユニットの内部と外部とを連通する少なくとも2つの開口部が備えられており、前記開口部の少なくとも1つが前記通路に連通している。