(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】無線タグシステム、無線通信可能領域整形方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20221004BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20221004BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06K7/10 128
G06K7/10 240
H04B5/02
H04B1/59
(21)【出願番号】P 2018010967
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】内村 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将人
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-152736(JP,A)
【文献】特開2016-172605(JP,A)
【文献】特開平07-093491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
G06K 19/00-19/18
H04B 5/02
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信タグから送信されたタグ信号を受信するタグ信号アンテナと、
前記タグ信号アンテナを基準として前記無線送信タグの方向とは反対側の方向に配置され、前記タグ信号アンテナの受信できる前記タグ信号の送信元の前記無線送信タグの含まれる領域を狭める受信可能領域整形信号を送信する通信可能領域整形アンテナと、
を備える無線タグシステム。
【請求項2】
前記通信可能領域整形アンテナは
、前記無線送信タグからタグ信号の送信を誘発する誘発信号のビームの軸方向を含む方向に前記受信可能領域整形信号を送信する
請求項1に記載の無線タグシステム。
【請求項3】
前記タグ信号アンテナは、前記無線送信タグから前記タグ信号の送信を誘発する誘発信号を送信し、
前記通信可能領域整形アンテナは、前記受信可能領域整形信号がノイズ信号となることに基づく前記無線送信タグの前記誘発信号の受信精度の低下、または前記受信可能領域整形信号がノイズ信号となることに基づく前記タグ信号の前記タグ信号アンテナにおける受信精度の低下、の少なくとも一方の受信精度の低下によって、前記
タグ信号アンテナと信号を送受信できるタグ信号の送信元の前記無線送信タグの含まれる領域を制限する
請求項1または請求項2に記載の無線タグシステム。
【請求項4】
タグ信号アンテナが、無線送信タグから送信されたタグ信号を受信し、
通信可能領域整形アンテナが、
前記タグ信号アンテナを基準として前記無線送信タグの方向とは反対側の方向に配置され、前記タグ信号アンテナの受信できる前記タグ信号の送信元の前記無線送信タグの含まれる領域を狭める受信可能領域整形信号を送信する
無線通信可能領域整形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグシステム、無線通信可能領域整形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品棚に配置された各商品にRFIDタグを取り付け、そのRFIDタグからの信号を読み取って商品管理を行うことが行われている。関連する技術として、上述のようなRFIDタグから送信される信号の検出範囲を限定する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述のような商品管理において、RFIDタグから送信された信号を読み取る読取装置は、隣接して陳列された異なる複数の商品のそれぞれの商品のうちの所望の商品に取り付けられたRFIDタグからの信号が受信できるようにすることが求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる無線タグシステム、無線通信可能領域整形方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、無線タグシステムは、無線送信タグから送信されたタグ信号を受信するタグ信号アンテナと、前記タグ信号アンテナを基準として前記無線送信タグの方向とは反対側の方向に配置され、前記タグ信号アンテナの受信できる前記タグ信号の送信元の前記無線送信タグの含まれる領域を狭める受信可能領域整形信号を送信する通信可能領域整形アンテナと、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、無線通信可能領域整形方法は、タグ信号アンテナが、無線送信タグから送信されたタグ信号を受信し、通信可能領域整形アンテナが、前記タグ信号アンテナを基準として前記無線送信タグの方向とは反対側の方向に配置され、前記タグ信号アンテナの受信できる前記タグ信号の送信元の前記無線送信タグの含まれる領域を狭める受信可能領域整形信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、RFIDタグから発信された信号を読み取る読取装置の受信可能領域を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による無線タグシステムの構成を示す第一の図である。
【
図2】本発明の一実施形態による無線タグシステムの構成を示す第二の図である。
【
図3】本発明の一実施形態による無線タグシステムの構成を示す第三の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による無線タグシステム、無線通信可能領域整形方法を、図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による無線タグシステムの構成を示す第一の図である。
この図で示すように無線タグシステム100は、少なくともタグ信号アンテナ1、領域整形アンテナ2(通信可能領域整形アンテナ)を備える。
【0011】
無線タグシステム100は、タグ信号アンテナ1に通信接続されたリーダライタ装置51を備える。リーダライタ装置51は、無線送信タグの一態様であるRFIDタグ3に書き込まれている情報の読み取りや、当該RFIDタグ3への情報の書き込みを行う。タグ信号アンテナ1は、リーダライタ装置51の制御に基づいてRFIDタグ3の起動を誘発する誘発信号を当該RFIDタグ3へ送信するRFIDアンテナである。
【0012】
この誘発信号を受信したRFIDタグ3は、一例としては、その誘発信号に基づいてタグ内のコイルに発生する磁界を電気信号に変換して起動し、タグ信号アンテナ1との間で信号の送受信を行う。RFIDタグ3は、誘発信号が書き込み指示を示す場合には、その信号に含まれる情報を記憶部に書き込む。またRFIDタグ3は、誘発信号が読み取り指示を示す場合には、記憶する情報を含むタグ信号を発信する。リーダライタ装置51はタグ信号アンテナ1を介してタグ信号を受信し、その信号に含まれる情報を読み取る。また無線タグシステム100はリーダライタ装置51を制御する制御端末52を備える。RFIDタグ3は、リーダライタ装置51とタグ信号アンテナ1とRFIDタグ3で構成されるRFIDシステムは、一例としては920Mhz帯の周波数の無線信号(誘発信号、タグ信号)を用いて相互に無線通信を行う。また当該RFIDシステムは、一例としてミラーサブキャリア方式のRFID変調方式を用いる。
【0013】
無線タグシステム100はまた領域整形アンテナ2からの信号の送信を制御する送信装置53を備える。領域整形アンテナ2は、タグ信号アンテナ1を基準としてRFIDタグ3とは反対側に配置される。領域整形アンテナ2は送信装置53の制御に基づいて、タグ信号アンテナ1の受信できるタグ信号の送信元のRFIDタグ3の含まれる領域を限定する受信可能領域整形信号を送信する。領域整形アンテナ2は一例としてはタグ信号アンテナ1と同様の周波数帯域の無線信号を送信する。例えば920MHz帯の無線信号を送信する。この場合、送信装置53は領域整形アンテナ2に920MHz帯の無線信号を送信する、IEEE802.15.4gで規定される無線方式の通信を行うものである。
【0014】
本実施形態において、領域整形アンテナ2の送信する受信可能領域整形信号はノイズ信号となり、タグ信号アンテナ1におけるタグ信号の受信感度の低下や、RFIDタグ3における誘発信号の受信感度の低下をもたらす。領域整形アンテナ2は、これら受信感度等の受信精度の低下をもたらすことによって、タグ信号アンテナ1が精度よく受信できるタグ信号の送信元のRFIDタグ3の含まれる領域を限定する。
【0015】
タグ信号アンテナ1の送信する誘発信号は誘発信号受信可能領域11(第一受信可能領域)においてRFIDタグ3にとって受信が良好となる電界強度となるような出力で送信される。
また、領域整形アンテナ2の送信する受信可能領域整形信号は、整形信号受信可能領域21においてRFIDタグ3やタグ信号アンテナ1の受信精度に影響を及ぼす電界強度となるような出力で送信される。領域整形アンテナ2は受信可能領域整形信号を少なくとも誘発信号のビームの軸が整形信号受信可能領域21内に含まれるように送信する。
領域整形アンテナ2が受信可能領域整形信号を送信することにより、
タグ信号アンテナ1において受信できるタグ信号の送信元のRFIDタグ3の含まれる誘発信号受信可能領域11は、
図1に占めす整形領域12のように領域の範囲が狭まる。これによりタグ信号アンテナ1は、
図1に示すように領域を狭めた整形領域12内に位置するRFIDタグ3との間で信号の送受信ができるようになり、整形領域12より外側に位置するRFIDタグ3との間では信号の送受信が困難となる。
【0016】
より具体的には、領域整形アンテナ2の送信する受信可能領域整形信号はノイズ信号となり、RFIDタグ3に到達し、またタグ信号アンテナ1に到達する。タグ信号アンテナ1に遮られることよって受信可能領域整形信号の直接波が到達しない領域に位置するRFIDタグ3においては受信可能領域整形信号の受信感度の低下の影響が軽減される。しかしながらタグ信号アンテナ1において受信可能領域整形信号がノイズ信号となり受信感度が低下するため、誘発信号受信可能領域11内の遠方の位置のRFIDタグ3の送信したタグ信号の受信精度が悪くなる。
【0017】
また受信可能領域整形信号の直接波が到達する直接波干渉領域に位置するRFIDタグ3は、当該受信可能領域整形信号の直接波がノイズ信号となり、受信可能領域整形信号を良好に受信することができずにタグ信号の発信可能性が低下する。これにより、無線タグシステム100は、タグ信号アンテナ1において受信できるタグ信号の送信元のRFIDタグ3の含まれる領域を整形領域12のように狭めることができる。
つまり、RFIDタグ3の配置されるフィールドにおいては、整形領域12においてRFIDタグ3の受信感度が増加し、整形領域12の外側においては受信感度が低下する。
【0018】
なお
図1においてタグ信号アンテナ1や領域整形アンテナ2の信号の送信中心軸Oを示す。
図1の破線L1を隔てて中心軸Oとは異なる側、また破線L2を隔てて中心軸Oとは異なる側を説明の便宜上、受信可能領域整形信号の直接波の到達する直接波干渉領域と呼ぶ。また
図1の破線L1を隔てて中心軸O側、また破線L2を隔てて中心軸O側の領域は受信可能領域整形信号の回折波の到達する回折波干渉領域となる。回折波干渉領域において受信可能領域整形信号がノイズ信号となって、タグ信号アンテナ1の受信精度や、RFIDタグ3の受信精度が低下する。これにより、より整形領域12は、誘発信号受信可能領域11の外縁よりもタグ信号アンテナ1に近く中心軸Oを中心により狭い領域に整形される。
【0019】
本実施形態による領域整形アンテナ2は、受信可能領域整形信号がノイズ信号となることに基づくRFIDタグ3の誘発信号の受信精度の低下、または受信可能領域整形信号がノイズ信号となることに基づくタグ信号のタグ信号アンテナ1における受信精度の低下、の少なくとも一方の受信精度の低下をもたらすように構成、配置されてよい。領域整形アンテナ2はこのように何れかの受信精度の低下をもたらすように構成、配置されることで、タグ信号アンテナ1と信号を送受信できるタグ信号の送信元のRFIDタグ3の含まれる領域を制限する。
【0020】
図2は同実施形態による無線タグシステムの構成を示す第二の図である。
ここでタグ信号アンテナ1と領域整形アンテナ2との距離dや、タグ信号アンテナ1の位置を基準としてRFIDタグ3とは反対に設置される領域整形アンテナ2の位置を調整することにより、整形領域12のタグ信号アンテナ1の位置を基準とする形状を変化させることができる。具体的には距離dの長さを大きくすることにより誘発信号受信可能領域における、受信可能領域整形信号の電界強度の影響が小さくなるため、整形領域12のタグ信号アンテナ1から離れた端部位置までの距離が長くなる。またタグ信号アンテナ1と領域整形アンテナ2とを結ぶ直線と、2台のアンテナを結ぶ直線の中心軸O1との角度θ1が大きくなると、それらアンテナを結ぶ直線方向に、誘発信号の無線波のビーム軸(中心軸O1とθ2を成す軸O2)が傾くように変形する。
【0021】
制御端末52は、リーダライタ装置51がタグ信号アンテナ1の誘発信号の送信時に指示する第一送信出力値Ptx1、送信装置53が領域整形アンテナ2の受信可能領域整形信号の送信時に指示する第二送信出力値Ptx2、タグ信号アンテナ1における受信電力Prx等の情報を用いて、アンテナ間距離dや角度θ1を算出してもよい。そして制御端末52がそれらアンテナ間距離dや角度θを管理者が視認可能にモニタ等に出力するようにし、管理者がそれら出力された情報を用いて、タグ信号アンテナ1と領域整形アンテナ2の配置を行ってもよい。
【0022】
例えば、制御端末52は、タグ信号アンテナ1における搬送波対雑音比(C/N比)を検出し、このC/N比、タグ信号アンテナ1における受信電力Prx1、第一送信出力値P1、第二送信出力値P2、アンテナ間距離d、角度θ、タグ信号アンテナ1とRFIDタグ3との距離d、RFIDタグ3のタグ信号の出力電力Ptx3、タグ信号の受信電力Prx2を、それらの関係を表す方程式に代入し、アンテナ間距離dや角度θを算出する。
【0023】
図3は同実施形態による無線タグシステムの構成を示す第三の図である。
無線タグシステム100は
図3に示すように複数のタグ信号アンテナ1と、それらタグ信号アンテナ1にそれぞれ対応する複数の領域整形アンテナ2を備えてよい。上述のように配置したタグ信号アンテナ1と対応する領域整形アンテナ2との組み合わせによって、所望に位置にあるRFIDタグ3から発信されたタグ信号を受信できるよう、それぞれのタグ信号アンテナ1に対応する誘発信号受信可能領域11に基づく整形領域12を調整することができる。
【0024】
次に制御端末52の処理フローについて順を追って説明する。
制御端末52はユーザからの制御開始を指示すると、リーダライタ装置51と送信装置53に起動信号を出力する。リーダライタ装置51と送信装置53は起動する。制御端末52はRFIDタグ3の記憶する情報読み取りタイミングを検知する。例えばユーザ操作に基づいてそのタイミングを検知してもよいし、所定のタイミングを自動的に検知してもよい。制御端末52はタグ信号アンテナ1の誘発信号の送信出力である第一送信出力値Ptx1をリーダライタ装置51に通知する。第一送信出力値Ptx1は予めリーダライタ装置51やタグ信号アンテナ1が記憶していてもよい。また制御端末52は領域整形アンテナ2の受信可能領域整形信号の送信出力である第二送信出力値Ptx2を送信装置53に通知する。第二送信出力値Ptx2も予め送信装置53や領域整形アンテナ2が記憶していてよい。
【0025】
リーダライタ装置51はタグ信号アンテナ1に第一送信出力値Ptx1の電力を出力し、タグ信号アンテナ1からの誘発信号の送信を制御する。送信装置53は領域整形アンテナ2に第二送信出力値Ptx2の電力を出力し、領域整形アンテナ2からの受信可能領域整形信号の送信を制御する。送信装置53は制御端末52の制御に基づいて、常に、当該受信可能領域整形信号が送信されるよう領域整形アンテナ2を制御してよい。これにより、誘発信号に基づくタグ信号アンテナ1とRFIDタグ3との送受信可エリアが、整形領域12のように形成される。整形領域12内に位置するRFIDタグ3の発信したタグ信号をタグ信号アンテナ1が受信し、リーダライタ装置51がそのタグ信号に含まれる情報を読み取る。
【0026】
上述の無線タグシステム100によれば、RFIDタグから発信された信号を読み取る読取装置の受信可能領域を制限することができる。
【0027】
上述のリーダライタ装置51、制御端末52、送信装置53は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、通信モジュール105等の各ハードウェアを備えたコンピュータであってよい。
【0028】
上述のリーダライタ装置51、制御端末52、送信装置53は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0029】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・・タグ信号アンテナ、2・・・領域整形アンテナ、3・・・RFIDタグ、51・・・リーダライタ装置、52・・・制御端末、53・・・送信装置