(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】美容活性有機物質の送達のためのミクロゲル
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221004BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2019564972
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2018001212
(87)【国際公開番号】W WO2019077404
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-09
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】517308334
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ ポー エ デ ペイ ドゥ ラドゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アラルド, バレリエ
(72)【発明者】
【氏名】アギーレ, ギャルビネ
(72)【発明者】
【氏名】ビロン, ローレント
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/110615(WO,A1)
【文献】特表2008-514606(JP,A)
【文献】特開平07-228639(JP,A)
【文献】特開2016-185933(JP,A)
【文献】特表2006-528678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244546(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101547(US,A1)
【文献】Cazares-Cortes E. et al.,Doxorubicin intracellular remote release from biocompatible oligo(ethylene glycol) methyl ether methacrylate-based magnetic nanogels triggered by magnetic hyperthermia.,ACS Applied Materials & Interfaces,2017年07月19日,vol. 9, no. 31,25775-25788
【文献】Wu W. et al.,Multi-functional core-shell hybrid nanogels for pH-dependent magnetic manipulation, fluorescent pH-sensing, and drug delivery.,Biomaterials,2011年,vol. 32, no. 36,9876-9887
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容活性有機物質の、pH誘発性、温度誘発性及び/又は溶媒誘発性送達のためのミクロゲルであって、前記物質が、少なくとも1つの架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーに捕捉されており、前記ミクロゲルの架橋ポリマーに対する美容的に活性な有機物質の重量比が、250マイクログラム/mg~10mg/mgであり、前記架橋ポリマーが、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、6~10個のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、メタクリル酸モノマー単位及び架橋を有するコポリマー鎖を含む、ミクロゲル。
【請求項2】
前記コポリマー鎖が、各々、ジ(メタ)アクリレート末端基並びに-(CH
2-CH
2-O)
n-CH
2-CH
2-(式中、nは0~
6である)、-NH-CH
2-NH-及びそれらの混合物からなる群において選択される部分を有する架橋で連結している、請求項1に記載のミクロゲル。
【請求項3】
ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率が、80mol.%~90mol.
%であり、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率が、5mol.%~15mol.
%であり、(メタ)アクリル酸モノマー単位のモル分率が、2mol.%~8mol.
%であり、前記架橋のモル分率が、1~3mol.%であり、モル分率は、前記架橋ポリマーのモル分率である、請求項1又は2に記載のミクロゲル。
【請求項4】
水性分散体の形状である、又は10~500ミクロンである厚さを有するフィルムの形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載のミクロゲル。
【請求項5】
架橋ポリマーに対する美容活性有機物質の重量比が、10mg/mgより低く
、500マイクログラム/m
gよりも高い、請求項1~4のいずれか一項に記載のミクロゲル。
【請求項6】
前記美容活性有機物質が、サリチル酸オクチル、ヒアルロン酸、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ベンゾフェノン-4、シトロネロール及びサリチル酸からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のミクロゲル。
【請求項7】
前記ミクロゲルが放出媒体と接触した後、及び前記放出媒体が、4.5~7.4であるpH、1mM~20mMであるイオン力、及び/又は25℃若しくは37℃である温度を有するとき、前記ミクロゲルに含まれる前記美容活性有機物質が、少なくとも6時
間である期間の終了時に、100%より低く、10
%よりも高い放出パーセンテージに対応する量で、前記ミクロゲルから前記放出媒体中に出る、請求項1~6のいずれか一項に記載のミクロゲル。
【請求項8】
メーキャップ製品、皮膚ケア製品又はUV保護製品の形状であり、油、界面活性剤、顔料及び染料からなる群から選択される化合物を含み、1mM~20mMであるイオン強度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のミクロゲルを含む美容組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のミクロゲル又は請求項8に記載の美容組成物を、ヒトの皮膚、爪、唇又は髪に適用するステップを含む、美容処置方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のミクロゲルを調製する方法であって、溶媒中の前記美容活性有機物質の供給溶液を調製するステップ、非担持ミクロゲル粒子の水性分散体を調製するステップ、撹拌下で前記溶液と前記水性分散体を混合して、前記物質を前記非担持ミクロゲル粒子に捕捉するステップ、及び前記ミクロゲルを回収するステップを含む、方法。
【請求項11】
フィルムの形状の
請求項1~7のいずれか一項に記載のミクロゲルを調製する方法であって、溶媒中
の美容活性有機物質の供給溶液を調製するステップ、非担持ミクロゲル粒子のフィルムを調製するステップ、前記フィルムを前記供給溶液に浸漬して、前記フィルムの膨潤及び前記フィルムへの前記
美容活性
有機物質の拡散をもたらすステップ、並びに前記ミクロゲルを回収するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記供給物質の前記活性物質の量が、500マイクログラム/(mg非担持ミクロゲル粒子)~10mg/(mg非担持ミクロゲル粒子)であるとき、前記美容活性有機物質の捕捉効率EE%が、50
%よりも高い、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率が、82mol.%~86mol.%であり、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率が、7mol.%~11mol.%であり、(メタ)アクリル酸モノマー単位のモル分率が、3mol.%~7mol.%である、請求項3に記載のミクロゲル。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有機美容活性分子の封入及び制御放出に関する。親水性及び疎水性分子は、その後美容組成物に組み込むことができる、温度応答性及びpH応答性オリゴ(エチレングリコール)ベースの生体適合性ミクロゲルに捕捉される。
【0002】
[先行技術]
静注経路を介した、体内における生物学的活性分子のための送達系として、多数の高分子系が開発されている。
【0003】
多数の高分子系の中で、ミクロゲルと呼ばれる架橋ポリマーの水性コロイド分散体は、特定の組織を標的とする薬物送達の方法としてのミクロゲルの可能性のために、近年需要が高まりつつある溶媒膨潤ネットワークである。ミクロゲルは、通常、pH又は温度変動に誘発される崩壊膨潤機構を介して活性物質を放出することができる。
【0004】
主要な温度応答性ミクロゲルは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、及び一般的ではないが、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)(PVCL)又はポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレートをベースとする。
【0005】
例えば、Pengらは、Nanoscale、2012、4、2694~2704において、親水性分子としてのウシ血清アルブミン(BSA)の送達のためのpH-イオン性ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ポリ(メタクリル酸)ミクロゲルを生成している。ドキソルビシンなどの抗がん薬は、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)コア及びポリ(N-ビニルカプロラクタム)ミクロゲルシェルを含む別の型のコア-シェルミクロゲルに封入されている(Guarbineら、Journal of Polymer Science、2016、54、1694~1705。しかし、別の型のコア-シェルミクロゲルの薬物の封入量は低く、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は生体適合性でない。
【0006】
他の温度応答性ミクロゲルは、ポリ(ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)の疎水性コア並びにジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)及びペンタ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートのコポリマーからなる親水性シェルを含む、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレートコア-シェル粒子をベースとする。他の温度応答性ミクロゲルは、疎水性モデル薬物(ジピリダモール)の送達について検査されている(Zhouら、Polymer、2010、51、3926~3933頁)。しかし、コア-シェル構造は得るのに手間がかかり、界面活性剤の使用を必要とする。活性分子の放出は、28h後、pH7.4で14%のみである。
【0007】
壊れやすいジスルフィド結合と架橋されるオリゴ(エチレングリコール)オルトエステルも提案されている(Qiao,Z.ら、Journal of Controlled Release、2011、152、57~66)。さらに、ヒアルロン酸ベースのミクロゲルの合成が、C. Luo、J. Zhao、M. Tu、R. Zeng、J. Rong、Mat. Sci. Eng. C.、2014、36、301において報告されている。しかし、これらのミクロゲルの活性分子の封入量は非常に低かった。
【0008】
上記において報告されているすべてのミクロゲルは、pH応答性でないという不利益を被り、多用途且つ調節可能である効率的な送達系として機能することができない。これが、オリゴ(エチレングリコール)-メタクリレート-アクリル酸をベースとする温度応答性及びpH応答性のミクロゲルが、以降、薬学的な送達用途のために提案されてきた理由である。
【0009】
Cai(Nanotech. Biol. And Med.8、2012)は、共有結合しない2つのポリマー、すなわち、テトラ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート及びジ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレートの架橋コポリマーの第1のネットワーク、並びに、ウシ血清アルブミンタンパク質の封入のための分子量137.000のポリアクリル酸の第2のネットワークの混合物を含む、ミクロゲルを開示した。国際公開第2015/027342号において、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート及びジスルフィド結合を有するアクリル酸の架橋コポリマーが、3(R)-[(2(S)-ピロリジニルカルボニル)アミノ]-2-オキソ-ピロリジンアセトアミドの脳への送達のために使用される。しかし、両方の系において活性分子の封入量は非常に低く、量はそれぞれ、10マイクログラム/mg及び39マイクログラム/mgである。
【0010】
これらのすべての過去に開発された熱応答性ミクロゲルは、限られた量の封入される有機分子を含有する不利益、及び有意な量の封入される薬物を放出しないという不利益を被る。その上、すべての過去に開発された熱応答性ミクロゲルは、詳細には、静脈内投与のために設計されている。
【0011】
したがって、同時に、高い封入量の有機分子を含有し、コロイド安定性を維持し、強い崩壊膨潤挙動を提供することが可能な生体適合性ミクロゲルが必要とされ、これらの3つすべてを伴う状態が、薬物の定量的放出のために不可欠である。
【0012】
詳細には、特定の温度及び特定のpHを有する皮膚表面と接触するときに効果的であることができる、美容活性有機分子の皮膚送達のために構成される生体適合性ミクロゲルが必要とされている。実際、静脈内投与状態及び局所性投与状態は異なるため、静脈内投与のために構成されるミクロゲル化学は、局所性投与のためには構成されない。
【0013】
特定のpH及び特定のイオン強度値を有する従来の美容組成物に安定的に組み込むことができるミクロゲルを提供することが、さらに必要とされている。
【0014】
十分な封入効率及び適切な徐放動態を有する多量の有機分子を封入することができる、温度応答性及びpH応答性の生体適合性ミクロゲルも、依然として必要とされている。
【0015】
ミクロゲル粒子の電気二重層の静電反発力による水中での高いコロイド安定性及び高い親水性挙動を有するミクロゲル粒子が必要とされているため、安定した自己組織化ミクロゲルフィルムを形成することは容易ではない。この方針における初期の研究は、主に、自己組織化ミクロゲルフィルムを安定させるため、粒子間の静電又は共有結合的な相互作用の創出に焦点を置いてきた。粒子間の静電又は共有結合的な相互作用の創出の取り組みにおいては、外部誘発因及び長い鋳込期間により、ミクロゲル粒子の架橋が促進された。粒子間の静電又は共有結合的な相互作用の創出の方法及び化学は、皮膚上での自発的なフィルム形成が求められる美容用途には適切でない。
【0016】
したがって、単純な水分蒸発機構を介して皮膚に形成することができ、有意な量の有機分子を封入することができ、有機分子を有効用量で放出することができる、生体適合性ミクロゲルフィルムを提供する必要性が存在する。
【0017】
[定義]
「親水性分子」は、水又は極性溶媒と水素結合で会合することができる。親水性分子は、油又は他の疎水性溶媒よりも容易に、水に溶解することができる。例えば、親水性分子は、25℃で0.1g/Lよりも高い水への溶解度を有することができる。「疎水性分子」は、親水性分子ではない分子である。
【0018】
「捕捉する」という用語は、有機分子がミクロゲルのポリマーネットワークに位置することを意味する。架橋ポリマーのネットワークは、分子の周囲に、ネットワークの幾つかの物理的な変化、例えば、pH変動誘発因、温度変動誘発因又は溶媒変動誘発因により抑制され得る障壁を形成することができる。捕捉される有機分子は、架橋ポリマーと共有結合により連結しないことが好ましい。捕捉される有機分子は、有機分子の-OH基のC=C結合と架橋ポリマーのエチレングリコール部分との間で会合することができる架橋ポリマーと、静電相互作用、ファンデルワールス結合又は水素結合を有することができる。
【0019】
「活性分子又は物質の送達」という用語は、美容活性有機物質の即時放出、持続放出、制御放出、延長放出及び/又は標的放出を包含する。標的放出は、活性分子を体内の生物学的標的に到達及び相互作用させ、ミクロゲル封入の非存在時に低下するであろう生理的効果をもたらすことができる。
【0020】
本発明の意味において、「非担持ミクロゲル粒子」は、乾燥状態(すなわち、2重量%未満の水を含有する)において、100nm~500nm、好ましくは350~450nmの間、より好ましくは400nm程度で変動するサイズを有する球状粒子の形状の架橋ポリマーであると理解される。本発明のミクロゲルは、数種のモノマーの水相共重合により得ることができる。
【0021】
本明細書の意味における「ミクロゲル」は、非担持ミクロゲル粒子の水性分散体の形状又は非担持ミクロゲル粒子を含むフィルムの形状であり、非担持ミクロゲル粒子は上記のように定義したとおりであり、非担持ミクロゲル粒子は美容活性有機分子を捕捉する。本明細書では、ミクロゲルは、「担持ミクロゲル」又は「担持ミクロゲル粒子」とも名付けられることがある。フィルムは、10~500ミクロン又は100~400ミクロンである厚さを有することができる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明のミクロゲルの一部を形成する非担持ミクロゲル粒子は、各部が異なるモノマー組成物を有するコア部及びシェル部を有しないことが好ましい。本発明のミクロゲルは、1つの型のみの架橋コポリマーを含むことが好ましい。
【0023】
ミクロゲルのコポリマーの架橋密度は粒子体積内で変動することができ、それにより、2つの部を含む「コア-シェル」構造を生成し、2つの部のうち1つは、他の部よりも低い架橋密度を有する。
【0024】
「担持ミクロゲルの美容活性有機物質の量」は、担持ミクロゲルの架橋ポリマー1mgあたりの、架橋ポリマーに捕捉される美容活性有機物質の重量(マイクログラム記号「μg」)である。「担持ミクロゲルの美容活性有機物質の量」は、明細書の以下の部分において、「捕捉される物質量」とも言及される。
【0025】
明細書の以下の部分において「供給物質量」とも呼ばれる、「供給溶液の美容活性有機物質の量」は、活性物質を捕捉するのに使用される非担持ミクロゲル粒子1mgあたりの、供給溶液の美容活性有機物質の重量(μg又はmg)である。供給物質量単位は、より短い様式である「mg/mg」又は「マイクログラム/mg」と記すことがある。
【0026】
捕捉効率(EE%)は、担持ミクロゲルに捕捉される美容活性有機物質の重量と供給溶液に含有される美容活性有機物質の量との比として定義される。上記の本明細書で定義されるように、捕捉効率(EE%)は、捕捉される物質量(A)と供給物質量(B)との比A/Bとしても定義され得る。
【0027】
「架橋」は、コポリマー鎖同士を連結する部分(分子の一部)である。この架橋は、架橋ポリマーの重合プロセス中にモノマーと混合される「クロスリンカー」分子に由来する。
【0028】
本発明の意味において、「有機物質」は、炭素及び水素原子を含有する化合物である。有機物質は磁性流体ではない。
【0029】
[発明の説明]
本発明は、美容活性有機物質の送達のためのミクロゲルであって、物質が少なくとも1つの架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーに捕捉され、ミクロゲルの架橋ポリマーに対する美容的に活性な有機物質の重量比が、250マイクログラム/mg~10mg/mgであり、架橋ポリマーが、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、6~10個のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、メタクリル酸モノマー単位及び架橋部分を有するコポリマー鎖を含む、ミクロゲルに関する。
【0030】
磁性無機ナノ粒子を捕捉する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含むミクロゲルは、M. Boularasら、Polym. Chem.、7、(2016)、350~363において、すでに提案されている。無機磁性流体の封入は静電相互作用を介して有効となり、粒子の放出は可能ではなく、本発明のミクロゲルには当てはまらない。
【0031】
架橋ポリマーは、ミクロゲル粒子の全体積中で一定の架橋速度を有することができる。逆に、架橋密度は、粒子の表面でより高い又はより低いことができる。
【0032】
ミクロゲル粒子は、有機化合物からなることが好ましい。例えば、ミクロゲル粒子は、シリカ、とりわけ架橋ポリマーの支持体としてのシリカをまったく含有しない。
【0033】
活性分子の封入量は、封入プロセスに使用される供給活性分子溶液と比例的に増加させることができ、親水性の事例並びに疎水性活性物質の事例においては、750μg/(非担持ミクロゲルのmg)、さらには1,000μg/(非担持ミクロゲルのmg)の予測のつかない高値を達成することができる。封入量は、少なくとも検査された濃度では封入温度と独立であり、つまり、封入量が、膨潤又は崩壊したミクロゲル粒子と同じであったことが観察されている。
【0034】
本発明の合成ミクロゲルは、様々なイオン強度を有する緩衝媒体において熱応答性の膨潤-崩壊転移を有することができる。本発明の合成ミクロゲルは、美容媒体において反応性を示し、したがって、美容活性物質のための送達系として使用することができる点が有利である。本発明者らは、驚くべきことに、ミクロゲルの粒子の平均的な流体力学的直径が、pH、温度及び/又は美容緩衝媒体を模倣する様々な緩衝媒体の疎水性に依存して変動することを発見した。
【0035】
本発明のミクロゲルは、分岐エチレンオキシドモノマー単位及びカルボン酸又はカルボキシレート基を含むモノマー単位の混合物を含む。
【0036】
高い封入量及び高い放出量を有し、両方を制御される方法において実施することができる美容活性分子と組み合わされる、本発明のミクロゲルの緩衝媒体におけるマルチ反応性は、非常に有利な皮膚送達系をもたらす。
【0037】
有機美容分子の美容製品から皮膚への制御可能な放出及び特定の皮膚領域における標的送達は、生物学的効果を観察するため及び最適な生物学的性能を保証するために、不可欠である。生物学的標的での活性分子の送達は、計画される生物学的効果のために、不可欠である。
【0038】
一実施形態によれば、本発明のミクロゲルは、以下の3つのモノマー、
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、
6~10個のエチレングリコール部分、より好ましくは7~9個のエチレングリコール部分、最も好ましいは8~9個のエチレングリコール部分を含む、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、
(メタ)アクリル酸モノマー
の水相沈殿重合により、架橋剤の存在下で、得ることができる。
【0039】
最初のモノマー混合物では、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは、例えば、モノマーの総モル数の50mol%~90mol%を表し、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは好ましくは、モノマーの総モル数の5~50mol%を表し、(メタ)アクリル酸モノマーは好ましくは、モノマーの総モル数の0.1mol%~20mol%、例えば、0.1~5mol%の範囲を表し、これら3つの含有量の和は100%に等しい。
【0040】
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(a)とオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(b)との間のモル比(a:b)は好ましくは、1:1~20:1の間、例えば、5:1~10:1の間である。
【0041】
本発明の意味において、「間」という表現は、それに続く数値限度を除外する。一方、「〇〇~〇〇の範囲である」という表現は、指定される限度を含むものである。
【0042】
本発明の架橋ポリマーを調製するのに使用されるモノマーであるジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは、例えば、3つのモノマーの総モル数の80~90mol%を表し、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマーは好ましくは、モノマーの総モル数の5~15mol%を表し、メタクリル酸は好ましくは、モノマーの総モル数の0.1~10mol%を表し、これらの3つの含有量の和は100%に等しい。
【0043】
(メタ)アクリル酸モノマーは、式CR1R2=CR3R4(式中、R1、R2、R3及びR4は、水素、ハロゲン又は炭化水素基を表し、4つの基の少なくとも1つは、-COOH又は-COO-M+基を含み、M+は陽イオンを表す)を有することができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸モノマーは、メチルアクリル酸、メチルメタクリル酸、エチルアクリル酸、エチルメタクリル酸、n-ブチルアクリル酸及びn-ブチルメタクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸又はアクリル酸からなる群から選択することができる。メタクリル酸が好ましい。
【0045】
特定の実施形態では、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率は、80mol.%~90mol.%、好ましくは82mol.%~86mol.%であり、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率は、5mol.%~15mol.%、好ましくは7mol.%~11mol.%であり、(メタ)アクリル酸モノマー単位のモル分率は、2mol.%~8mol.%、好ましくは3mol.%~7mol.%であり、架橋のモル分率は1~3mol.%であり、モル分率は架橋ポリマーにおけるモル分率である。
【0046】
別の実施形態によれば、架橋ポリマーは、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、4~10個のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位及びメタクリル酸モノマー単位を有するコポリマー鎖を含む。モノマー単位は好ましくは、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、7~9個のエチレングリコール部分を有するオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、及びメタクリル酸である。オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマー単位は、8~9個のエチレングリコール部分を有することもできる。
【0047】
コポリマー鎖は、1~10個のエチレングリコール単位を含むオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレートモノステアレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、N,N-ジビニルベンゼン、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、アリルジスルフィド、ビス(2-メタクリロイル)オキシエチルジスルフィド及びN,N-ビス(アクリロイル)シスタミンからなる群から選択することができる架橋剤に由来する架橋と連結することができる。
【0048】
一実施形態によれば、クロスリンカーは、ジ(メタ)アクリレート末端基並びに-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-(式中、nは0~6である)、-NH-CH2-NH-及びそれらの混合物からなる群において選択される部分を有する。数nは、3~6であることが好ましい。
【0049】
架橋剤は、例えば、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコール)ジメタクリレート又はオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレートである。
【0050】
架橋剤は、例えば、3つのモノマー単位の総モル数の1~5mol.%を表す。
【0051】
特定の架橋ポリマーは、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、8~9個のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位と、ジ(メタ)アクリレート末端基並びに-CH2-CH2-、-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-(式中、nは4~5である)及び-NH-CH2-NH-からなる群において選択される部分を含むリンカーとを含む。
【0052】
ミクロゲルの内部構造は、使用されるクロスリンカーに依存することができる。例えば、1000g/molよりも低い分子量を有する活性物質は、-NH-CH2-NH-橋を有するコポリマーに封入することができ、1,000~4,000g/molの間である分子量を有する活性物質は、-CH2-CH2-橋を有するコポリマーに封入することができ、4,000~10,000g/molである分子量を有する活性物質は、-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-(式中、nは4~5の橋である)を有するコポリマーに封入することができる。
【0053】
本発明による担持ミクロゲルの体積相転移温度(VPTT)は、30~40℃、例えば、33℃~36℃又は39℃~41℃とすることができる。非担持ミクロゲルの体積相転移温度(VPTT)は、37~38℃とすることができる。体積相転移温度は、ミクロゲル粒子構造が崩壊状態から膨潤状態へ変化する温度に対応する。
【0054】
ミクロゲルの平均サイズは、ミクロゲルが水を含有するか否かに依存して変動することができる。乾燥状態における本発明のミクロゲルの平均サイズは、100~1,000nmの範囲とすることができる。60°の角及び20℃の温度で測定されるミクロゲルの流体力学的動径分布関数は、1.1未満(単分散ミクロゲル)とすることができる。
【0055】
本発明のミクロゲルは、25℃で水に溶解する(親水性)又は溶解しない(疎水性)美容活性物質を捕捉することができる点が有利である。活性物質は、エタノールなどのアルコールに溶解することができる。エタノールに溶解する(及び最終的には水に溶解する)物質は、特に有利である。活性物質は、25.0℃で固体又は液体とすることができ、活性物質が25.0℃より高い又は低い融解温度を有することができることを意味する。融解点は、当業者に既知の任意の適切な方法により決定することができる。
【0056】
本発明のミクロゲルは、多量の様々な分子、すなわち、疎水性分子、親水性分子及び高分子を封入することができる。封入量及び放出量は、活性物質の化学及び所望の生物学的放出プロフィールに依存して個別に制御することができる。
【0057】
特定の実施形態では、活性物質は、短距離疎水性相互作用を有することができる少なくとも1つの-OH基を有する分子、及びミクロゲルの架橋コポリマーのエーテル酸素原子と水素結合相互作用で会合する分子からなる群から選択される。このような相互作用は、拡散配向分光法NMR(DOSY-NMR)及び核オーバーハウザー強化分光法(NOESY-NMR)測定により観察することができる。
【0058】
一実施形態によれば、美容活性有機物質は疎水性分子である。
【0059】
多数の事例において、ミクロゲル製剤の封入効率が供給物質溶液濃度に依存しないことは、非常に驚くべきことである。
【0060】
活性物質は、最大50,000g/molとすることができる、例えば、50~30,000g/mol、例えば、100~25,000g/mol、50~6,000g/mol、又は50~2,000g/molとすることができる、非常に高い分子量を有することができる。
【0061】
少なくとも1つのC=C二重結合及び少なくとも1つの-OH基を有する活性物質分子は、架橋ポリマーとの疎水性及び親水性相互作用の両方を創出することができる。このような活性分子は、少なくとも1つの-COO-基をさらに含むことができる。活性物質分子は、芳香族化合物であることも、又は芳香族化合物でないこともできる。活性物質分子は、多糖などの高分子から選択することもできる。
【0062】
活性物質は、UVフィルター、香料及び抗加齢活性剤からなる群から選択することができることが好ましい。美容活性有機物質は、サリチル酸オクチル、ヒアルロン酸、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ベンゾフェノン-4、シトロネロール及びサリチル酸からなる群から選択される。
【0063】
例えば、美容活性物質は、
無色から淡黄色の液体であり、エタノールに溶解し、水にわずかに溶解する、2-エチルヘキシルサリチレート(INCI サリチル酸オクチル;例えば、商標名エスカロール(Escalol)(登録商標)587;CAS番号118-60-5のもと販売されている)、
25℃で液体であり、エタノールに15%溶解し、水に溶解する、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウム(例えば、1,000~50,000g/mol、特に22,000g/molである平均分子量Mwを有する)、
融解点が54℃であり、エタノールに溶解し、水に溶解しない、ヘキシル2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]ベンゾエート(INCI ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート;例えば、商標名ユビナール(Uvinul)(登録商標)A;CAS番号302776-68-7で販売されている)、
25℃で粉末であり、エタノールに5%溶解し、水に5%溶解する、4-ヒドロキシ-2-メトキシ-5-(オキソ-フェニルメチル)ベンゼンスルホン酸(INCI ベンゾフェノン-4;CAS番号4065-45-6)、
25℃で液体であり、水への溶解度が25℃で200mg/Lであり、エタノールに非常に溶解する、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール(INCI シトロネロール、CAS番号68916-43-8)、
25℃で固体であり、水溶解度が25℃で2240mg/L、エタノールに溶解する、2-ヒドロキシベンゾエート(INCI サリチル酸、CAS番号69-27-7)
からなる群において選択される。
【0064】
架橋ポリマーに対する活性物質の重量比は、好ましくは250マイクログラム/mg~10mg/mg、例えば、350マイクログラム/mg~8mg/mg、なお好ましくは500マイクログラム/mg~6mg/mgである。
【0065】
架橋ポリマーに対する活性物質の重量比は、10mg/mgよりも低く、250マイクログラム/mg、350マイクログラム/mg、400マイクログラム/mg、450マイクログラム/mg、500マイクログラム/mg、550マイクログラム/mg、600マイクログラム/mg、650マイクログラム/mg、700マイクログラム/mg、750マイクログラム/mg、800マイクログラム/mg、850マイクログラム/mg、900マイクログラム/mg及び1mg/mgからなる群において選択される下限よりも高いことが好ましい。一実施形態によれば、架橋ポリマーに対する活性物質の重量比は、550マイクログラム/mgよりも高い。
【0066】
本発明のミクロゲルは、
水中の非担持ミクロゲル粒子の分散体を調製するステップ、
活性物質の溶液を調製するステップ、
分散体と溶液を混合してミクロゲル粒子に活性物質の封入をもたらすステップ、及び
活性物質担持ミクロゲル粒子を回収するステップ
により調製することができる。
【0067】
本明細書の意味における非担持ミクロゲル粒子は、美容活性有機物質を含有せず、非担持ミクロゲル粒子は、本質的に架橋ポリマー及び水から作られる。
【0068】
非担持ミクロゲル粒子は、例えば、架橋剤、上述の3つのモノマーの存在下で、40℃~90℃の間、好ましくは70℃程度の温度で、水相に接触するステップを含む、沈殿重合方法により調製される。本発明の方法は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などの界面活性剤の存在を必要とせず、重合は、水溶性ラジカル開始剤、例えば、過硫酸カリウム(KPS)の添加により開始することができる。
【0069】
ミクロゲルの内部構造は、使用されるクロスリンカーに依存することができる。数種の実施形態によれば、3つの異なる微細構造、すなわちオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート(OEGDA)を使用して均質に架橋されるミクロゲル、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)を使用して高度に架橋されるシェル及びわずかに架橋されるコアミクロゲル並びに(エチレングリコール)ジメタクリレート(EGDMA)を使用してわずかに架橋されるシェル及び高度に架橋されるコアミクロゲルが得られた。
【0070】
クロスリンカーは、ミクロゲル粒子の膨潤能力、封入量及び放出速度に影響を与えることもできる。ミクロゲルの内部形態は、1H-核磁気共鳴(1H NMR)及び中性子小角散乱(SANS)技術により観察することができる。
【0071】
活性物質分子は、水性分散体の形状であるミクロゲル、又は、前ステップにおいて、上記の明細書によるフィルムの形状に調製されているミクロゲルに封入することができる。
【0072】
活性物質溶液及び非担持ミクロゲル分散体を混合するステップは好ましいは、非担持ミクロゲル粒子の体積相転移温度よりも高い温度に加熱するステップ及び得られる担持ミクロゲルの分散体を周囲温度(25℃)に冷却するステップを含む。
【0073】
本発明の方法は、活性物質の高い捕捉効率EE%を可能にする点が有利であり、非担持ミクロゲル粒子と(ミクロゲル粒子の水性分散体の形状又は組織化されるミクロゲル粒子のフィルムの形状で)混合される、非常に高い割合の初期量の活性物質が、ミクロゲル粒子に首尾よく捕捉されることを意味する。本発明の方法によれば、供給物質の活性物質の量が500マイクログラム/(1mg非担持ミクロゲル)~10mg/(1mg非担持ミクロゲル)であるとき、EE%は、50%、60%、70%、80%、90%、95%の群において選択される上限よりも高い。
【0074】
美容活性有機物質の供給溶液は、規定量の活性物質の、水又はアルコールなどの水と混和する溶媒などの適切な溶媒への溶出により得ることができる。アルコールは、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコールとすることができる。イソドデカン、イソヘキサデカン又はデカメチルシクロペンタシロキサンのような他の溶媒も使用することができる。
【0075】
水に溶解する又は混和する極性溶媒は、ミクロゲルへの活性物質の担持量を増進するために、特に有利であり得る。
【0076】
規定量の活性物質の溶媒への完全な溶出は、周囲温度である温度から、非担持ミクロゲル粒子の体積相転移温度を超える温度で実施することができる。
【0077】
特定の実施形態では、水中の非担持ミクロゲル粒子の分散体(0.1~10mg粒子/mL水)は、プロセス温度に加熱される。活性物質の溶媒中溶液(0.5~125mM又は0.5~2.5mM)も、このプロセス温度に加熱され、その後撹拌下で同じ温度を維持しながら、非担持ミクロゲル粒子水性分散体と混合される。プロセス温度は、非担持ミクロゲル粒子のVPTTより高い又は低い温度とすることができ、粒子はそれぞれ崩壊又は膨潤状態にある。例えば、プロセス温度は、VPTTより、少なくとも10℃高く、好ましくは少なくとも15℃高く、又はVPTTより、少なくとも10℃低く、好ましは少なくとも15℃低い。本発明によるミクロゲルを得るために、溶媒の除去及びミクロゲル粒子に捕捉されていない活性物質分子の除去は、続けて実施することができる。捕捉されていない活性分子の除去は、濾過及び/又は遠心分離により実施することができる。
【0078】
担持ミクロゲルの美容活性有機物質の量と供給溶液の美容活性有機物質の量との比として定義される「捕捉効率(EE%)」は、pH、温度及び溶媒などの担持プロセス状態により調節することができる。
【0079】
捕捉効率(EE%)は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%からなる群において選択される下限から、100%の上限である点が有利である。
【0080】
先行技術では、EE%は、通常、非担持ミクロゲル粒子の200マイクログラム/mgの上限よりも低い供給物質量について50%を超える。この上限を超えると、EE%は、通常、15%に、又はさらに低く降下する。本発明のミクロゲルは、高いパーセンテージの供給物質量、さらには500マイクログラム/(mg非担持ミクロゲル粒子)~5mg/(mg非担持ミクロゲル粒子)又は1mg/(mg非担持ミクロゲル粒子)~10mg/(mg非担持ミクロゲル粒子)の高い供給物質量を捕捉することができる点が有利である。他のミクロゲルを用いる先行技術において観察されるような、活性物質を伴うミクロゲル粒子の担持の飽和効果は存在しない。本明細書では、供給物質量単位は「mg/(mg非担持ミクロゲル粒子)」であり、「mg/mg」とも記載されることがある。
【0081】
例えば、供給物質量が500マイクログラム/mg~10mg/mgであるとき、EE%は、50%、60%、70%、80%、90%、95%の群において選択される上限よりも高い。
【0082】
特定の一実施形態では、10マイクログラム/mg~10mg/mgである量の2-エチルヘキシルサリチレートの供給について、EE%は80%よりも高い。
【0083】
活性物質としてのヒアルロン酸(例えば、1,000~50,000g/molである分子量を有する)の事例においては、EE%は、300マイクログラム/mg~1mg/mgである供給物質量を使用して、50%よりも高くなることがある。
【0084】
活性物質は、ヘキシル2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]ベンゾエート又はサリチル酸であることもできる。この事例においては、EE%は、1mg/mg~10mg/mgである供給物質量について、80%よりも高くなることがある。
【0085】
活性物質分子は、100~400ミクロンである厚さを有するフィルムの形状であるミクロゲルに封入することができる。本願は、上記において開示されるような担持ミクロゲル粒子を含むフィルムも開示する。
【0086】
本発明の担持ミクロゲルを調製するのに使用されるオリゴ(エチレングリコール)メタクリレート非担持ミクロゲルは、周囲温度で粒子の水性分散体に含有される水の単純な蒸発により、粒子の1つ又は複数の層に自己組織化する利点を有する。
【0087】
本発明は、上述のようなミクロゲルを調製する方法であって、溶媒中の美容活性有機物質の供給溶液を調製するステップ、非担持ミクロゲル粒子の水性分散体を調製するステップ、撹拌下で溶液と水性分散体を混合して、物質を非担持ミクロゲル粒子に捕捉するステップ、及びミクロゲルを回収するステップを含む、方法にも関する。
【0088】
本発明は、フィルムの形状の美容活性有機物質担持ミクロゲルを調製する方法であって、
溶媒中の美容活性有機物質の供給溶液を調製するステップ、
非担持ミクロゲル粒子のフィルムを調製するステップ、
フィルムを供給溶液に浸漬して、フィルムの膨潤及び活性物質のフィルムへの拡散をもたらすステップ、並びに
活性物質担持ミクロゲルフィルムの形状であり得るミクロゲルを回収するステップ
を含む、方法にさらに関する。
【0089】
非担持ミクロゲル粒子のフィルム(空のミクロゲルフィルムとも呼ばれる)は、上述のような方法により調製することのできる担持ミクロゲル粒子の水分散体を鋳型に配置する(このような分散体は4~7.5であるpH値を有することができる)ステップ、及び水分散体を乾燥させるステップにより形成することができる。乾燥は、30℃よりも高い又は周囲温度である温度で鋳型を配置することにより実施することができる。
【0090】
フィルムを浸漬するステップは、25℃で、少なくとも12時間又は24時間にわたり実施することができる。
【0091】
本発明の担持ミクロゲルを調製するのに使用されるオリゴ(エチレングリコール)メタクリレート非担持ミクロゲルは、透明フィルムを形成することも可能であり、凝集性及び弾性フィルムを形成することも可能である。フィルムを形成するためにミクロゲルを封入する又は支持することは、本発明の文脈において不可欠ではなく、結果として、ミクロゲル粒子の水性分散体の水蒸発後に形成されるミクロゲルと皮膚との間の相互作用は、最適である。
【0092】
本発明のミクロゲルフィルムは、表面保護、力学的及び光学的特性のような進歩した特性を満たしながら、洗練された送達系として皮膚と相互作用することができるため、皮膚ケア用途に非常に有用である。加えて、皮膚特性を介したより高い水蒸気透過を有するフィルムを用いて、皮膚刺激を避けることができる。
【0093】
本発明は、美容活性有機物質の送達のための上述のようなミクロゲル、特に美容活性有機物質の皮膚送達にも関係する。美容活性疎水性有機物質の送達は、本発明の文脈において特に有利である。
【0094】
送達は、放出媒体、皮膚表面、表皮又は真皮への、美容活性有機物質の、即時放出、持続放出、制御放出、延長放出又は標的放出である。送達は、pH誘発性送達、温度誘発性送達又は溶媒誘発性送達とすることができる。送達動態は、pH、温度、放出媒体の組成物(エタノール、極性溶媒、界面活性剤)又は空のミクロゲルを調製するのに使用されるクロスリンカーに依存して変動させることができる。
【0095】
本発明者らは、様々な放出プロフィールを得られることを発見した。活性物質のミクロゲル外への持続的放出は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間又はさらには少なくとも48時間にわたり、観察することができる。この期間の終了時に、放出は停止することがあり、活性物質の最大総放出パーセンテージは、100%よりも低く、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%及び95%からなる群において選択される値よりも高いことがある。
【0096】
特定の実施形態では、最初にミクロゲルに含まれる美容活性有機物質は、担持ミクロゲルの接触から開始する期間の終了時に、ミクロゲルから放出媒体中に出る。より詳細には、美容活性有機物質は、100%よりも低く、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%及び95%からなる群において選択される値よりも高い放出パーセンテージに対応する量で、ミクロゲルから放出媒体中に出ることができる。期間は、ミクロゲルが放出媒体と接触した後、少なくとも6時間,少なくとも12時間,少なくとも24時間及び少なくとも48時間からなる群から選択することができる。放出媒体は、様々な特徴、すなわち4.5~7.4であるpH、1mM~20mMであるイオン力、及び/又は25℃若しくは37℃である温度を有することができる。放出媒体は、5.0~6.0であるpHを有することができる。
【0097】
その上、架橋分布は、クロスリンカーの適切な選択により調整することができる。均質に架橋されるミクロゲル、密に架橋されるコア及び緩く架橋されるシェル微細構造を伴うミクロゲル、密に架橋される薄いシェルを伴うわずかに架橋されるネットワークを示すミクロゲルとは異なる内部構造のミクロゲルを得ることができる。
【0098】
担持ミクロゲルからの活性物質の送達プロフィールは、ミクロゲル構造及び活性物質の封入量の選択により調整することができる。活性物質の放出は、ミクロゲル微細構造により、並びに封入される活性分子の量により影響を受けることがあり、放出は、多量の活性分子を担持する、均質に架橋されるミクロゲル粒子の事例よりも速い。
【0099】
in vitroの放出プロフィールは、美容活性分子放出を、pH(例えば、pH4.5、pH6又はpH7.4である)により、媒体の温度(25℃又は37℃である)により、並びに媒体疎水性(透析媒体のエタノールの存在又は界面活性剤の存在)により制御することができることを示している。
【0100】
加えて、ミクロゲル粒子が膨潤する状態では、美容活性分子の放出は、フィックの拡散及びケースII輸送により制御することができ、拡散プロセスが優勢である。これらの結果は、マルチ反応性オリゴ(エチレングリコール)ベースのミクロゲルが、美容活性送達系であることを示唆する。
【0101】
本発明の別の目標は、上述のようなミクロゲル、香料、及び保存料を含む美容組成物である。
【0102】
美容組成物は、メーキャップ製品、皮膚ケア製品又はUV保護製品の形状とすることができ、油、界面活性剤、バッファー、溶媒、顔料及び染料からなる群において選択される化合物のような任意の美容添加剤をさらに含むことができ、このような化合物はミクロゲルに捕捉されない。本発明によるミクロゲルの送達は、1mM~20mM、例えば、15~20mMであるイオン強度を有する美容組成物を、特に対象とする。
【0103】
本発明は、ヒトの皮膚、爪、唇又は髪に、上述のようなミクロゲル又は上述のような美容組成物を適用するステップを含む美容処置方法にも関する。前述した、ミクロゲルへ適用するすべての特徴及び美容組成物へ適用するすべての特徴は、美容処置方法にも適用する。
【0104】
i)水性分散体の形状のミクロゲルを含む美容組成物、ii)フィルムの形状のミクロゲルを含む美容組成物、iii)溶媒の分散体の形状のミクロゲル、又はiv)フィルムの形状のミクロゲル及びそれらの混合物からなる群から選択される製品を、ヒトの皮膚、爪、唇又は髪に適用するステップを含む、皮膚ケア美容方法及び美容メーキャップ方法も、本開示の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】
図1は、OEGDAミクロゲルを用いたユビナール-A供給溶液濃度との関数として、ユビナール-Aの封入量を示す。
【
図2】
図2は、OEGDAミクロゲルを用いたエスカロール供給溶液濃度との関数として、エスカロールの封入量を示す。
【
図3】
図3及び
図4は、OEGDAミクロゲル、EGDMAミクロゲル及びMBAミクロゲルについての供給溶液濃度との関数として、ユビナール-A及びサリチル酸の封入量を表示する。
【
図4】
図3及び
図4は、OEGDAミクロゲル、EGDMAミクロゲル及びMBAミクロゲルについての供給溶液濃度との関数として、ユビナール-A及びサリチル酸の封入量を表示する。
【
図5】
図5は、OEGDAミクロゲルを用いた供給溶液濃度との関数として、シトロネロール及びヒアルロン酸活性分子の封入量を表示する。
【
図6】
図6は、OEGDAミクロゲルについての供給溶液濃度との関数として、ベンゾフェノン-4の封入量を表示する。
【
図7】
図7は、OEGDAミクロゲルについての供給溶液濃度との関数として、サリチル酸の封入量を表示する。
【
図8】
図8は、OEGDA自己組織化ミクロゲルフィルムについての供給溶液濃度との関数として、ユビナール-Aの封入量を提供する。
【
図9】
図9は、OEGDA自己組織化ミクロゲルフィルムについての供給溶液濃度との関数として、エスカロールの封入量を表示する。
【
図10】
図10は、OEGDA自己組織化ミクロゲルフィルムについての供給溶液濃度との関数として、ベンゾフェノン-4の封入量を表示する。
【
図11】
図11は、OEGDA自己組織化ミクロゲルフィルムについての供給溶液濃度との関数として、サリチル酸の封入量を表示する。
【
図12】
図12は、クロスリンカー型に依存したミクロゲル微細構造との関数として、サリチル酸の徐放を表示する。
【
図13】
図13は、クロスリンカー型との関数として、ユビナール-Aの徐放を表示する。
【
図14】
図14は、pH4.5での温度との関数としての、ベンゾフェノン-4の徐放曲線である。
【
図15】
図15は、pH4.5での温度との関数としての、サリチル酸の放出曲線である。
【
図16】
図16、
図17、
図18a及び
図18bは、放出媒体のエタノール含有量との関数としての、サリチル酸、ベンゾフェノン-4、エスカロール及びユビナール-Aの徐放プロフィールである。
【
図17】
図16、
図17、
図18a及び
図18bは、放出媒体のエタノール含有量との関数としての、サリチル酸、ベンゾフェノン-4、エスカロール及びユビナール-Aの徐放プロフィールである。
【
図18a】
図16、
図17、
図18a及び
図18bは、放出媒体のエタノール含有量との関数としての、サリチル酸、ベンゾフェノン-4、エスカロール及びユビナール-Aの徐放プロフィールである。
【
図18b】
図16、
図17、
図18a及び
図18bは、放出媒体のエタノール含有量との関数としての、サリチル酸、ベンゾフェノン-4、エスカロール及びユビナール-Aの徐放プロフィールである。
【
図19a】
図19a、
図19b、
図19c及び
図19dは、それぞれ、放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の経時的な放出を示す。
【
図19b】
図19a、
図19b、
図19c及び
図19dは、それぞれ、放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の経時的な放出を示す。
【
図19c】
図19a、
図19b、
図19c及び
図19dは、それぞれ、放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の経時的な放出を示す。
【
図19d】
図19a、
図19b、
図19c及び
図19dは、それぞれ、放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の経時的な放出を示す。
【
図20a】
図20a、
図20b、
図20c及び
図20dは、それぞれ、ミクロゲル分散体のpH及び放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の徐放プロフィールを示す。
【
図20b】
図20a、
図20b、
図20c及び
図20dは、それぞれ、ミクロゲル分散体のpH及び放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の徐放プロフィールを示す。
【
図20c】
図20a、
図20b、
図20c及び
図20dは、それぞれ、ミクロゲル分散体のpH及び放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の徐放プロフィールを示す。
【
図20d】
図20a、
図20b、
図20c及び
図20dは、それぞれ、ミクロゲル分散体のpH及び放出媒体のpHとの関数として、ユビナール-A、エスカロール、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸の徐放プロフィールを示す。
【
図21a】
図21a、
図21b、
図21c及び
図21dは、それぞれ、様々な受理溶液の、ユビナール-A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4酸の徐放プロフィールを示す。
【
図21b】
図21a、
図21b、
図21c及び
図21dは、それぞれ、様々な受理溶液の、ユビナール-A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4酸の徐放プロフィールを示す。
【
図21c】
図21a、
図21b、
図21c及び
図21dは、それぞれ、様々な受理溶液の、ユビナール-A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4酸の徐放プロフィールを示す。
【
図21d】
図21a、
図21b、
図21c及び
図21dは、それぞれ、様々な受理溶液の、ユビナール-A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4酸の徐放プロフィールを示す。
【実施例】
【0106】
[材料]
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeO2MA 95%、Aldrich)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(OEGMA、8個のEGの繰り返し単位を伴うモノメチル末端、数平均重量Mn=475g mol-1、Aldrich)、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド(MBA、Aldrich)、(エチレングリコール)ジメタクリレート(EGDMA、Aldrich)、メタクリル酸(MAA、Aldrich)、オリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート(OEGDA、数平均重量Mn=250g mol-1、Aldrich)、過硫酸カリウム(KPS 99%、ABCR)及びエタノール(VWR Chemicals)を到着したまま使用した。塩酸(HCl、36w/w、ABCR)及び水酸化カリウム(KOH、Aldrich)を使用して、分散体のpHを制御した。クエン酸(Sigma-Aldrich)及び二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4、Sigma-Aldrich)を使用して、バッファーを調製した。
【0107】
[実施例1:空のミクロゲル分散体への美容活性分子の封入]
(空のミクロゲル分散体の合成)
83.90mmolのMeO2MA、9.36mmolのOEGMA、1.92mmolのクロスリンカー及び930gの「Milli-Q」グレード水を、2Lのジャケットガラス反応器に配置した。クロスリンカーは、OEGDA、MBA、EGDMAとすることができる。反応器の内容物を150rpmで撹拌し、窒素で45分間パージして室温で酸素を除去した。その後、30mLの「Milli-Q」グレード水に溶解した5mmolのMAAをジャケットガラス反応器に加えて、混合物を70℃まで加熱した。開始剤(40mLの脱気水に溶解した0.89mmolのKPS)を加えた後、窒素雰囲気下で6h撹拌しながら、重合反応を継続させた。反応混合物を、続いて、撹拌を維持しながら25℃に冷却し、「Milli-Q」グレード水を用いた遠心分離/再分散サイクル(10,000rpm、30分)により、最終分散体を精製した。OEGDA-ミクロゲル分散体、MBA-ミクロゲル分散体又はEGDMA-ミクロゲル分散体を得る。
【0108】
(封入プロセス)
美容活性物質を、上述のように調製した、OEGDA-ミクロゲル分散体、MBAミクロゲル分散体又はEGDMA-ミクロゲル分散体に担持した。
【0109】
活性物質は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(本明細書でユビナール-Aとも名付けられるユビナール(登録商標)A)、サリチル酸オクチル(本明細書でエスカロールとも名付けられるエスカロール(登録商標)587)、ベンゾフェノン-4、ヒアルロン酸、シトロネロール又はサリチル酸であり得る。
【0110】
a-ユビナール(登録商標)A、サリチル酸オクチル、サリチル酸、ベンゾフェノン-4及びシトロネロールの封入プロセス
OEGDA-ミクロゲル分散体、MBA-ミクロゲル分散体又はEGDMA-ミクロゲル分散体(1mg/L)を加熱して、50℃(体積相転移温度VPTTを超える)で30分間インキュベートした。このミクロゲル分散体に、様々な予熱された濃度のエタノール中の活性分子(0.5~2.5mM)を、磁気撹拌下で加えた。
【0111】
混合物を、30分間、50℃(VPTTを超える)又は20℃(VPTTより低い)で撹拌した。その後、混合した分散体を、50℃で終夜撹拌し、有機溶媒を除去した。
【0112】
分散体を濾過して非担持活性分子沈殿物を除去し、フィルターをエタノールで2回洗浄し、非担持ユビナール-A、非担持サリチル酸又は非担持ベンゾフェノン-4を含有する溶液を得た。非担持活性分子量を、UV-Visにより決定した。
【0113】
他のすべての化合物について、終夜のインキュベーション後に、試料を、30分間、10,000rpmで遠心分離し、水性上清を回収した。
【0114】
サリチル酸オクチルの事例においては、ロータリーエバポレーターを使用して水性上清を蒸発させ、遊離サリチル酸オクチル分子をエタノールに溶解し、UV-Visにより非封入量を決定した。
【0115】
シトロネロールの事例においては、遊離シトロネロール分子を含有する水性上清を1H NMRにより分析した。
【0116】
b-ヒアルロン酸の封入プロセス:
ミクロゲル粒子を凍結乾燥し、ヒアルロン酸の様々な水中溶液に、1mg/mLの粒子濃度で懸濁した。その後、ミクロゲル粒子を、12hにわたり、室温で、振動しながら再水和させた。ミクロゲル粒子を、含有する水性媒体から遠心分離により分離し、平衡活性分子濃度をATR/FTIRにより決定した。
【0117】
(ミクロゲルVPTTの測定)
担持ミクロゲルを、上記のプロトコールにより20℃で調製した。
【0118】
担持OEGDA-ミクロゲル分散体のVPTTは、封入される美容活性分子の型に依存して異なった(表1参照)。VPTT値は、封入されるユビナール-A及びエスカロールについて、より低かった。
【0119】
【0120】
pHとの関数としての担持ミクロゲル粒子の熱挙動の結果として、媒体温度及びpHにより様々な活性分子の放出を制御でき、上記で論じられる結果を裏付けるため、これらの結果は、美容用途の観点から非常に興味深い。
【0121】
美容用途の観点から、オリゴ(エチレングリコール)ベースのミクロゲルの最も興味深い特性の1つは、オリゴ(エチレングリコール)ベースのミクロゲルのpH感受性の熱挙動である。
【0122】
(OEGDA-ミクロゲル分散体へのユビナール-A及びエスカロールの封入効率)
ユビナール-A担持OEGDA-ミクロゲル及びエスカロール担持ミクロゲルを、上記のプロトコールにより20℃及び50℃で調製した。
【0123】
ユビナール(登録商標)Aの封入量は、どのような封入温度であろうと(空のミクロゲルのVPTTを超える又は下回る)、供給物質量が、3.000μg/mgミクロゲルまで増加するにつれて、増加する。供給物質量が、1,500μg/mgミクロゲルより低いとき、E.E.%は70%より高い。供給物質量が、1,500~3,000μg/mgミクロゲルの間であるとき、E.E.%は50%より高い(
図1参照)。
【0124】
封入量は、エスカロール濃度が増加するにつれて増加し、封入温度に依存しない。すべての事例において、E.E.値は90%を超える(
図2参照)。その上、使用した疎水性活性分子の型及び封入温度とは独立に、70%を超えるE.E.値が得られた。
【0125】
この挙動は、Qiaoら、J. Control. Release、152、(2011)、57~66による様々な疎水性薬物について観察される挙動とは異なった。Qiaoらは、ナノゲルのVPTTを超えてより高い担持温度が、封入効率に影響を与えることを観察した。
【0126】
ユビナール-A及びエスカロール分子を、P(MeO2MA-OEGMA-MAA)ミクロゲル粒子に封入するための駆動力は、疎水性相互作用並びに美容活性分子及びミクロゲルのエチレングリコール単位のエーテル酸素の両方の-OH基間のH-結合による相互作用であり得る。
【0127】
(ユビナール-A及びサリチル酸の封入に関する、OEGDA-ミクロゲル、MBA-ミクロゲル及びEGDMA-ミクロゲル分散体の比較)
ユビナール-A及びサリチル酸を、20℃で、OEGDA-ミクロゲル分散体、MBA-ミクロゲル分散体又はEGDMA-ミクロゲル分散体へ封入した(
図3及び
図4参照)。
【0128】
疎水性ユビナール-Aの事例においては、ミクロゲル粒子の内部形態は、封入効率への影響を有し、E.E.は、親水性MBA及びユビナール-A分子の進入を妨げ得る高度に架橋されるシェルの事例において、最も低い。
【0129】
サリチル酸封入の事例においては、サリチル酸封入の測定の実験誤差(約10%)を考慮して、活性分子封入に対するミクロゲル微細構造の影響はないと結論付けることができる。
【0130】
(OEGDA-ミクロゲル分散体へのシトロネロール及びヒアルロン酸の封入効率)
(OEGDAクロスリンカーを使用して)均質に架橋されるミクロゲル粒子への、シトロネロール及びヒアルロン酸の封入を試験した。シトロネロールは、天然の非環式モノテルペノイド(芳香族環がなく、したがって架橋ポリマーと疎水性相互作用を有しない)であり、ヒアルロン酸は親水性多糖(高分子)であり、親水性多糖の構造は、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンの繰り返し単位を含有する。
【0131】
両方の分子の封入量は、分子の濃度と共に直線的に増加した(
図5参照)。
【0132】
シトロネロールの事例においては、水素結合は、シトロネロールの良好な封入を得るのに十分であると考えられる(E.E.>70%)。
【0133】
ヒアルロン酸の事例においては、E.E.値は、美容活性小分子(ユビナール-A、サリチル酸及びシトロネロール)の事例において観察されるものよりも低かった。pH6(封入pH)では、ヒアルロン酸分子は、均質に架橋されるミクロゲル粒子のように、負に帯電し(pKa=3)、したがって、負の帯電により、ヒアルロン酸分子とミクロゲル粒子との間に静電反発がもたらされ、封入がより難しくなり得る。これは、ヒアルロン酸の高分子のより大きなサイズと共に、600マイクログラム/mgでE.E.値が50%である理由となり得る。
【0134】
しかし、担持した高分子の総量は、高分子を封入するための他の重合送達系を使用する事例において観察されるものよりもはるかに高かった。例えば、Cunら、(Eur. J. Pharm. Biopharm.、2011、77、26)は、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド酸)(PLGA)ナノ粒子へのsiRNA分子の封入を試験し、70%のE.E.値及びおよそ2マイクログラム/mgのsiRNA封入量を得た。
【0135】
(OEGDA-ミクロゲル分散体へのベンゾフェノン-4及びサリチル酸の封入効率)
〔ベンゾフェノン〕
エタノールを、20℃及び50℃で、前述のような封入プロセスに使用する。担持ミクロゲル分散体を遠心分離し、上清をUV-Visにより分析した。
【0136】
ベンゾフェノン-4は水溶性であるため、非封入ベンゾフェノン-4の一部は水相に溶解し得る。非封入ベンゾフェノン及び水に可溶性の活性分子量を定量するため、遠心分離ステップの前及び遠心分離ステップの後に封入量を計算した。封入プロセスを実施した。
【0137】
観察されるように、非封入ベンゾフェノン-4の一部は水相にあり、したがって、封入量(
図6参照)及びE.E.値は、遠心分離前より遠心分離後でより低い。遠心分離ステップを実施することは、非封入ベンゾフェノン-4の総量を定量するために不可欠である。
【0138】
供給物質量が1mg/(mg非担持ミクロゲル)よりも低い限り、すべての事例において、封入量は活性分子濃度と共に直線的に増加し、E.E.値は80%よりも高かった(
図6参照)。
【0139】
〔サリチル酸〕
同じ試験を、美容活性物質としてのサリチル酸を用いて実施した。
【0140】
図7では、サリチル酸の濃度が増加すると、サリチル酸のE.E.値及び封入量は増加する。加えて、ベンゾフェノン-4の事例のように、遠心分離ステップは、非封入サリチル酸の総量を定量するために不可欠である。
【0141】
[実施例2:空のミクロゲルフィルムへの美容活性分子の封入]
(空のミクロゲルフィルムの調製)
自己組織化ミクロゲルの多層から構成されるフィルムを、以下のように形成した。上記において(水溶性ポリマーの存在下又は非存在下で)調製したような、様々な固体含有量(1.4wt%のような)を有する30mLの水性OEGDA-ミクロゲル分散体を、不活性のプラスチック鋳型に導入し、48hにわたり、35℃(±3℃)、大気圧下で乾燥させた。
【0142】
様々なpH及び様々な型の塩(pH4.5、pH6及びpH7のクエン性/二塩基性リン酸ナトリウム;pH9の炭酸カリウム)の存在下での、非担持ミクロゲル粒子の自己組織化及び凝集性フィルムの形成能力は実証されている。凝集性フィルムは、様々なpH及びイオン強度を有する、空のミクロゲル水性分散体の水性分散体から形成することができる。
【0143】
水和状態のフィルム安定性を、室温で、24hにわたる、自己組織化ミクロゲルフィルムの水性溶液への浸漬を介して試験した。ミクロゲルの再分散体の代わりに、フィルムの膨潤が観察される。さらに、自己組織化ミクロゲルフィルムは、自己組織化ミクロゲルフィルムの形状を失うことなく、可逆的な膨潤-解膨潤プロセスを示す。理由は、ミクロゲル粒子間の凝集を保つオリゴ(エチレングリコール)ポリマー鎖間の、弾性力の存在であり得る。
【0144】
フィルムの膨潤挙動を評価するために、様々な媒体状態を調製した。疎水性(水/エタノール及び水/イソプロパノール)、温度、pH及びミクロゲル粒子調製の副生成物として得られる水溶性ポリマーの精製が媒体基準であった。VPTTを超えると、疎水性媒体のフィルムの膨潤能力は、親水性媒体よりも高い。しかし、水溶性ポリマーの存在下で浸透圧を創出する製品により形成されるフィルムの事例においては、膨潤比はより低い。
【0145】
(空のミクロゲルフィルムへのユビナール(登録商標)-A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4分子の封入)
ユビナール(登録商標)A、エスカロール、サリチル酸及びベンゾフェノン-4分子を、前に調製したような自己組織化非担持ミクロゲルの多層から構成される非担持フィルムへ、個別に封入した。
【0146】
4つの活性物質のうち1つを水/エタノール(75/25)混合物に含有する溶液を調製し、フィルムをこの供給溶液に浸漬し、24hの時間にわたり、フィルムを再水和させた。
【0147】
自己組織化ミクロゲルフィルムへ担持したサリチル酸を、様々なpHを有する媒体で試験した。活性分子の様々な濃度を含有する緩衝媒体において、24時間の間、自己組織化ミクロゲルフィルムを再水和させた。
【0148】
フィルムの活性物質の封入量を、Spectrum One(PerkinElmer)分光計に記録されるUV-Vis特性評価又はATR-FTIR特性評価により評価した。
【0149】
担持フィルムの透過率データを、Shimadzu UV-2101分光計を使用して、300~500nmで収集した。担持フィルムは、担持フィルム自体が試料容器に留まるのに十分な粘着性があり、したがって、空気を参照として使用した。各測定について4回スキャンを行い、すべてのスペクトルを25℃及び大気圧下で記録した。
【0150】
VPTTを超えると、自己組織化ミクロゲルフィルムとユビナール(登録商標)A(又はエスカロール)との間の短距離疎水性相互作用はより強くなった。サリチル酸又はベンゾフェノン-4を用いると、逆のことが観察される。
【0151】
封入効率(E.E.)は、すべての事例において70%を超えた。捕捉効率は、あらゆるベンゾフェノン-4濃度について、約80%である。
【0152】
使用される活性分子の型とは独立に、封入量は、活性分子の濃度が増加するにつれて増加する。
【0153】
図11に示すように、封入量及びE.Eは、両方のpHで、サリチル酸の濃度が増加するにつれて増加する。ミクロゲル粒子を使用する事例においては、同じ挙動が観察された。加えて、活性分子担持に対する媒体のpHの影響はないと考えられる。
【0154】
[実施例3:担持ミクロゲルからの美容活性分子のin vitroの放出]
透析媒体(「放出媒体」とも呼ばれることがある)にミクロゲル拡散が生じないことを確認するため、及び時間に対する美容活性分子放出プロフィールを観察するために、透析方法により、活性分子の放出動態の試験を実行した。
【0155】
そのために、透析媒体に対して、活性分子担持ミクロゲル粒子分散体(1mg/mgミクロゲル)を透析した。両方の媒体の間で平衡濃度に達するまで、担持ミクロゲル分散体媒体から透析媒体への美容活性分子の拡散が観察される。
【0156】
図12~21に、in vitroの美容活性分子パーセンテージ放出結果を、時間との関数としての曲線の形状で表す。
【0157】
実施例において他に言及されない限り、担持ミクロゲル分散体は担持OEGDA-ミクロゲル分散体である(空のミクロゲル粒子を調製するのに使用されるクロスリンカーがOEGDAであることを意味する)。
【0158】
(方法)
i)透析方法によるin vitroの放出
活性分子を1mg/(mg非担持ミクロゲル)の量で含む担持ミクロゲル粒子を、透析チューブに配置し、様々な緩衝透析媒体(様々なpHを有し、様々な温度を有し、溶媒及び/又は界面活性剤を含有する)において透析した。緩衝透析媒体は、エタノール、クエン酸、二塩基性リン酸ナトリウム又は/及びポリオキシエチレンモノオレエートソルビタン(Polysorbate 80、Tween(登録商標) 80又はINCI オレイン酸ソルビタンとも名付けられる)を含有することができる。透析媒体における活性物質濃度を、UV-Visにより決定した。
【0159】
ii)リアルタイムATR/FTIR分光法によるin vitroの放出
in vitroの放出の後に、代替的に、リアルタイムATR/FTIR分光法を続けることができる。リアルタイムATR/FTIR分光法の事例においては、分散体に透析膜を配置しない。
【0160】
1mg活性分子/(mg非担持ミクロゲル)を含む担持ミクロゲル粒子を、pH6及び25℃で緩衝媒体に配置した。ReactIR 15をダイヤモンド減衰全反射DiCompプローブと共に使用して、in situのATR/FTIRモニタリングを実施し、液体窒素冷却MCT検出器に搭載した。放出媒体において直接、様々なインキュベーション時間で、スペクトルを収集した。
【0161】
(美容活性分子徐放プロフィールに対するミクロゲル微細構造の影響)
a)サリチル酸
活性分子を担持する3つの異なるミクロゲル分散体、すなわち、サリチル酸担持OEGDA-ミクロゲル分散体(均質に架橋される粒子)、サリチル酸担持MBA-ミクロゲル分散体(緩く架橋されるコア及び高度に架橋されるシェル)及びサリチル酸担持EGDMA-ミクロゲル分散体(高度に架橋されるコア及び緩く架橋されるシェル)を使用した。前に説明したように、「OEGDA-ミクロゲル分散体」は、空のミクロゲル粒子がOEGDAクロスリンカーを用いて調製されていることを意味する。
【0162】
ミクロゲル粒子のクロスリンカー(OEGDA)の均質な分布により、T0~T40Hの間でサリチル酸のより速い放出が促進された。T160Hの後、3つすべての事例において、同じ量の活性分子が放出された(
図12参照)。したがって、ミクロゲルの微細構造はサリチル酸の放出動態に影響を有するが、放出される量には影響を有しないと考えられる。
【0163】
b)ユビナール-A
1mg活性分子/(mgミクロゲル)濃度で担持した3つの異なるミクロゲル分散体、すなわち、ユビナール-A担持OEGDA-ミクロゲル分散体、ユビナール-A担持MBA-ミクロゲル分散体及びユビナール-A担持EGDMA-ミクロゲル分散体を使用した。
【0164】
in vitroのユビナール-A放出の後に、リアルタイムATR-FTIR分光法を続けた。放出媒体(25℃及びpH6)において直接、様々なインキュベーション時間で、スペクトルを収集した(
図13参照)。
【0165】
(徐放プロフィールに対する温度の影響)
透析方法を用いて、透析媒体のpHを4.5で一定に維持しながら、活性分子の放出動態に対する温度の影響を、調査した。2つの異なる温度、すなわち25℃(VPTTより低い)及び37℃(VPTTを超える)で、in vitroの放出を試験した。
【0166】
ベンゾフェノン-4の事例においては、温度は、放出動態に対する影響を有しないと考えられる。
【0167】
一方、サリチル酸の事例においては、放出は、37℃(ミクロゲルは疎水性である)よりも、25℃(ミクロゲルは親水性である)で、より高い。
【0168】
【0169】
(徐放プロフィールに対する放出媒体の疎水性の影響)
4つの異なる活性分子、すなわち、サリチル酸、ベンゾフェノン-4、エスカロール及びユビナール-Aの担持ミクロゲル分散体を検査した。
【0170】
透析媒体の疎水性は、透析方法により変動した。pH及び温度(pH6及び25℃)を一定に維持しながら、透析媒体に、様々な量のエタノール(0%、25%、35%又は50%のエタノール)を加えた。
【0171】
エタノールパーセンテージを0から25%に増加させて、サリチル酸の完全放出を得る(
図16参照)。対照的に、ベンゾフェノン-4の事例においては、放出動態に対するエタノールパーセンテージの影響はより低く、どの事例においても、ベンゾフェノン-4の完全放出は達成されない。加えて、ベンゾフェノン-4の放出は、50%のエタノールよりも、35%のエタノールでより高い(
図17参照)。
【0172】
すべての事例において、疎水性分子であるユビナール-A及びエスカロールの活性分子の放出は、増加するエタノールパーセンテージに伴い増加する。これらの結果は、増加するエタノールパーセンテージにより透析媒体の疎水性が増加し、それにより疎水性活性分子の放出が増進したために、予測される。
【0173】
35%のエタノールパーセンテージ及び168hのインキュベーション時間で、活性分子の放出は、ユビナール-Aについては20%から40%に増加し、エスカロールについては10%から100%に増加する。エスカロールの事例においては、インキュベーションの最初の6時間で100%が放出されるため、活性分子の放出は持続しない(
図18a及び
図18b参照)。
【0174】
(活性物質徐放プロフィールに対する放出媒体のpHの影響)
a)in vitroの活性分子放出に対するpHの影響を試験する目的で、様々な緩衝透析媒体(pH4.5又はpH6で1mM)に、25℃で、担持ミクロゲル粒子(1mg/mgミクロゲル)を配置した。数種の活性分子を試験した。担持ミクロゲル分散体のpHは変動しなかった。
【0175】
図19aでは、すべてのpHで停滞状態に達する。ユビナール-A担持ミクロゲル粒子と透析媒体との間で平衡に達すると考えられる。注目すべきことに、pH4.5での放出量よりも、pH6で、放出量は高い。理由は、ユビナール-Aの疎水性特性であり得る。pH4.5で、ミクロゲルはより疎水性になり崩壊し、したがって、ユビナール-Aは緩衝媒体に出ていく代わりに、ミクロゲルに存在することを好むであろう。対照的に、pH6では、ミクロゲルは膨潤し(親水性である)、ユビナール-A放出が増進する。
【0176】
一方、エスカロールの事例においては(
図19b)、放出値は5%を下回る。理由は、活性分子とミクロゲルとの間の強い相互作用(この相互作用はDOSY-NMRにより裏付けられる)であり得る。
【0177】
図19c及び
図19dは、pHとの関数としての、親水性活性分子(ベンゾフェノン-4及びサリチル酸)のin vitroの放出を示す。両方の活性分子について、pH4.5での放出の放出パーセンテージは、pH6での放出パーセンテージよりも高い。pH4.5では、ミクロゲルは疎水性である傾向があり、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸がミクロゲル粒子外に動くことを好むように(このことは、pH6の事例において得られる放出値と比較した放出の最高値を説明する)、親水性活性分子とミクロゲル粒子との間の親和性が低いことを意味する。加えて、pH6では、ミクロゲル粒子は負に帯電する(カルボン酸基の脱プロトン化)。pH6では、ベンゾフェノン-4及びサリチル酸も負に帯電し、したがって、負の帯電により、活性分子とミクロゲル粒子との間の静電反発がもたらされ得る。しかし、ミクロゲル粒子と親水性活性分子との間の静電反発は存在しないと考えられる。したがって、これらの結果は、疎水性/親水性相互作用が、放出動態において優勢であることを示唆する。
【0178】
b)前に議論したように、様々な透析緩衝媒体(透析チューブ外)に透析チューブを設置して、様々な美容活性分子のin vitroの放出を試験した。しかし、担持ミクロゲル分散体のpHは変動しなかった。したがって、次のステップは、担持ミクロゲル粒子(透析チューブに配置される分散体)のpHも変動させることであった。そのため、1mg/(mgミクロゲル)の濃度での様々な活性分子の封入後、HCl及びNaOH溶液を使用して、担持ミクロゲル分散体のpHを4.5へ調節した。
【0179】
図20a及び20bは、in vitroの疎水性活性分子(ユビナール-A及びエスカロール)の経時的な放出を示す。図に示すように、すべての事例において、放出値は非常に低い。加えて、おそらくpH4.5ではミクロゲル粒子は崩壊するため、担持ミクロゲル粒子のpHを制御しても差異は観察されない。
【0180】
図20c及び20dは、親水性活性分子(ベンゾフェノン-4及びサリチル酸)の経時的なin vitroの放出を示す。観察されるように、担持ミクロゲル分散体のpHを調節した後、活性分子の放出動態はより遅い。
【0181】
c)4つの活性分子放出プロフィールに対するpH透析媒体組成物の影響を、他の状態において再び試験した。
【0182】
様々な透析媒体溶液、すなわち、i)pH6に緩衝、ii)pH7.4に緩衝、iii)0.5% Tween 80及びpH7.4に緩衝、並びにiv)2.5% Tween 80及びpH7.4に緩衝を、25℃で使用した。0.1%アジ化ナトリウム及びPBSバッファーの混合物を、pH7.4(pH7.4で、担持ミクロゲル粒子は膨潤する)とするために使用した。
【0183】
ユビナール-Aの放出量は、透析媒体において、pH6で最も高い。理由は、ユビナール-Aの沈殿を招く、透析媒体におけるユビナール-Aの低い溶解度、及び、したがって、透析チューブからのより低い放出であり得る。エスカロールの事例においては、エスカロールは受理溶液に溶解しないが、持続的及びほぼ完全な放出が得られる。加えて、Tween 80の濃度が増加するほど、エスカロールの放出はより速くなる。Tween 80は、ミクロゲル粒子からのエスカロールの放出を増進させると考えられる(
図21a及び21b参照)。
【0184】
親水性活性分子(ベンゾフェノン-4及びサリチル酸)の事例においては、pH6の放出動態とpH7.4の放出動態との間には差異がない。しかし、「受理溶液」を使用して、完全放出は得られない。したがって、この部分の主要な結論は、水/エタノール混合物を放出媒体として使用して、すべての美容活性分子の完全放出が得られることである。(
図21c及び21d参照)。