(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20221004BHJP
【FI】
B23K26/38 Z
(21)【出願番号】P 2018241943
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊丹雄大
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176725(JP,A)
【文献】特開平09-246688(JP,A)
【文献】特開2000-068648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層の上下が絶縁体層で覆われたシート状の基板に対し、前記導体層に線状に形成された溝の位置にレーザを照射して当該溝の位置で前記基板を切断するようにしたレーザ加工方法において、前記基板の剛性を補強するものであって前記絶縁体層よりも前記レーザの吸収率が低い材質からなる補強シートを前記基板のレーザ非照射側に貼付け、その後レーザを照射することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、前記絶縁体層の材質はポリイミド樹脂、前記補強シートの材質はPETから成ることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のレーザ加工方法において、レーザを照射する場合、前記溝の
前記導体層端面に前記絶縁
体層を残すようにすることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅箔層から成る導体層が絶縁体層で覆われたシート状の基板にレーザを照射して基板を切断するためのレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザを照射してワークを加工する場合、例えば特許文献1で知られている
ように、ワークを載置するテーブルに設けられた吸着孔でワークを吸着してワーク表面の浮き上がりを防ぐ構造が知られている。
しかしながら、ワークがシート状基板の場合、高密度実装化により基板の薄型化、加工部分の小領域化によりその剛性が低くなっている。従って、従来の吸着構造によるものにおいては、吸着孔の配列の間隔を狭くするのにも限度があり、吸着孔だけでは基板全体をテーブルに完全に密着できず、レーザ焦点が一定とならず安定した精度の加工ができない問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、導体層の上下が絶縁体層で覆われたシート状の基板を切断する場合において、高精度な切断ができるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される代表的なレーザ加工方法は、導体層の上下が絶縁体層で覆われたシート状の基板に対し、前記導体層に線状に形成された溝の位置にレーザを照射して当該溝の位置で前記基板を切断するようにしたレーザ加工方法において、前記基板の剛性を補強するものであって前記絶縁体層よりも前記レーザの吸収率が低い材質からなる補強シートを前記基板のレーザ非照射側に貼付け、その後レーザを照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、導体層の上下が絶縁体層で覆われたシート状の基板を切断する場合において、高精度な切断ができるレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例となるレーザ加工方法の工程を説明するためのもので、(a)~(c)は基板の断面図である。
【
図2】本発明の一実施例において、レーザ加工する前の基板を説明するためのもので、(a)は基板の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図3】本発明の一実施例において、一つの区画内での導体パターンを説明するための平面図である。
【
図4】本発明の一実施例で用いるレーザ加工装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
本発明の一実施例について説明する。
図2は、レーザ加工する前のシート状の基板を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
図2において、1はシート状の基板、2は基板1のベース層となる絶縁体層で、材質はポリイミド樹脂から成る。3はベース層2の上に形成された導体パターンとなる銅箔層、4と5は銅箔層3に形成された溝、6は基板1の表面を覆う絶縁体層で、材質は絶縁体層2と同じポリイミド樹脂から成る。
【0009】
基板1には複数の区画がマトリクス状に形成されており、
図2は本実施例を説明するのに必要な一つの区画を中心に示している。
図2における一つの区画内の銅箔層3は、
図3に示すように導体ライン7で四角形パターン8を囲んだパターンになっている。
溝4は基板1から一つの区画における必要部分を切り出すために、また溝5は一つの区画から最終的に必要な導体ライン7の形成部分と最終的に不要な四角形パターン8の形成部分とを分離するために、それぞれ予め形成されたものである。
【0010】
本発明に従うと、
図2の状態から先ずベース層となる絶縁体層2の下に接着材の付いたPET(ポリエチレンテレフタレート)よりなるシート(以下PETシートと呼ぶ)を貼り付ける。
図1(a)はこのPETシートを貼り付けた状態を示しており、10は接着層、11はPETシートである。ここでの接着層10の接着力は、後述の吸着工程との関係で、弱いものとなっている。
【0011】
次に、この状態の基板1を
図4に示すレーザ加工装置のテーブル21の上に載置し、吸着孔22で下から吸引し、溝4、5の部分の絶縁体層2、6にレーザ発振器23からUVレーザ24を照射する。この切断は、切断線がプログラムによって制御されるいわゆるルーティング加工によって行う。
この場合、UVレーザ24に対して絶縁体層2、6の吸収率は約90%であり、溝4、5の部分の絶縁体層2、6は加工され切断される。一方、PETシート11の吸収率は約35%であり、ここまで加工されて切断されることはない。
なお、
図4に示すレーザ加工装置は、先行技術文献にあげた特許文献1にも開示されており、この分野ではよく知られたものである。
【0012】
図1(b)はレーザ照射後の状態を示すもので、14、15はそれぞれ絶縁体層2、6の切断部である。この場合、切断部14、15は溝4、5の幅より小さくして、銅箔層3の両側の端面に絶縁体層6が残るように、レーザ照射強度が調整される。
次に、この状態の基板1を図示しない吸着装置のワークテーブルの上に載置し、吸着ヘッドにより各区画から導体ライン7の形成部だけを選択的に吸着して取出す。接着層10の接着力は弱いので、この吸着は可能である。
図1(c)は一つの導体ライン7の形成部だけを取出した回路基板17を示す。この回路基板17は電子回路に実装される一つの部品として機能するものである。
【0013】
以上の実施例によれば、基板1を切断する場合に、基板1にPETシート11が貼られているので基板1の剛性が大きくなり、レーザ加工装置におけるテーブル21に密着させることができ、局部的な浮き上がりを防止できる。従って、レーザ照射系23と基板1の表面との間の距離を一定に保つことができ、高精度なトリミングが可能となる。
【符号の説明】
【0014】
1:基板、2、6:絶縁体層、3:銅箔層、4、5:溝、7:導体ライン、
8:四角形パターン、10:接着層、11:PETシート、17:回路基板