(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】モータの制御方法、及び、モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/62 20160101AFI20221004BHJP
【FI】
H02P29/62
(21)【出願番号】P 2016222567
(22)【出願日】2016-11-15
【審査請求日】2019-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150638(JP,A)
【文献】特開平9-275696(JP,A)
【文献】特開2009-293907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁量を変化可能な磁石を備えるモータの制御方法であって、
前記モータの回転駆動に用いる基本波に対して該基本波よりも周波数が高い高調波の温調電流を重畳し、該重畳された電流を前記モータに印加することにより、前記磁石の温度を調整する温度調整ステップと、
前記温度調整ステップの後に、着磁量、及び、着磁指令値に応じた着磁電流を前記モータに印加することにより、前記モータにて磁場を発生させて前記磁石の着磁量を変化させる着磁量制御ステップと、を備えるモータの制御方法。
【請求項2】
請求項
1に記載のモータの制御方法であって、
前記温度調整ステップにおいて、前記磁石の温度に応じて、前記温調電流を制御する、モータの制御方法。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のモータの制御方法であって、
前記温度調整ステップにおいて、前記温調電流はd軸電流である、モータの制御方法。
【請求項4】
請求項
3に記載のモータの制御方法であって、
前記d軸電流は、交流電流であり、
前記磁石には、着磁量が変化しない前記d軸電流の大きさの範囲があり、
前記d軸電流は、前記範囲を超えないように位相及び振幅が制御される、モータの制御方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のモータの制御方法であって、
前記d軸電流は、磁石温度及び着磁量に応じて、前記交流電流の中心値が前記範囲の中心となるようにオフセットされる、モータの制御方法。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載のモータの制御方法であって、
前記d軸電流は、前記温度調整ステップの開始から前記着磁量制御ステップまでの許容時間が長いほど、前記d軸電流の前記振幅を小さくする、モータの制御方法。
【請求項7】
請求項
4から
6のいずれか1項に記載のモータの制御方法であって、
前記d軸電流は、前記温度調整ステップの開始から前記着磁量制御ステップまでの許容時間が長いほど、前記d軸電流の周波数を小さくする、モータの制御方法。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のモータの制御方法であって、
前記着磁量制御ステップにおいて、さらに磁石温度に応じて前記着磁電流を制御する、モータの制御方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のモータの制御方法であって、
前記磁石温度に応じて前記着磁指令値だけの着磁の可否を判断し、該着磁ができないと判断する間は、前記温度調整ステップを実行する、モータの制御方法。
【請求項10】
着磁量を変化可能な磁石を備えるモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの回転駆動に用いる基本波に対して該基本波よりも周波数が高い高調波の温調電流を重畳し、該重畳された電流を前記モータに印加することにより、前記磁石の温度を調整する温度調整部と、
前記温度調整部による前記磁石の温度の調整後に、着磁量、及び、着磁指令値に応じた着磁電流を印加することにより、前記モータにて磁場を発生させて前記磁石の着磁量を変化させる着磁量制御部と、を備えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御方法、及び、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
着磁量を可変に制御できる磁石が用いられる同期電動機の一例として、可変磁力モータが知られている。そのような可変磁力モータにおいては、電流を印加して磁場を発生することにより磁石を着減磁させることができる。このような可変磁力モータにおいては、運転状態に応じて着磁量を変化させることにより、運転効率を最適化することができる。
【0003】
しかしながら、着磁量の制御のためには、磁場を発生させるために多くの電力が必要である。例えば、特許文献1には、昇圧回路を有し、この昇圧回路を着磁量制御時に動作させる技術が開示されている。この技術によれば、十分に電力を供給できるので着磁量を適切に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、昇圧回路は動作をしていない間でもエネルギーを消費してしまう。そのため、可変磁力モータを用いることにより駆動時の損失を低減することができても、その低減量を上回る電力を昇圧回路が使用してしまう場合には、全体として運転効率を向上させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの制御方法は、着磁量を変化可能な磁石を備えるモータの制御方法であって、モータの回転駆動に用いる基本波よりも高い高調波の温調電流を重畳させて磁石の温度を調整する温度調整ステップと、温度調整ステップの後に、着磁量、及び、着磁指令値に応じた着磁電流量を算出し、該着磁電流量だけの電流を印加することにより外部磁場を発生させて、磁石の着磁量を変化させる着磁量制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁石の着磁量を少ないエネルギーで変化させることができるので、エネルギー損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態によるモータ制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、d軸電流値と着減率との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、電流指令値生成制御を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、温調指令値の算出に用いるパラメータを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、温調指令値の算出に用いるパラメータを示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態によるモータ制御装置の概略構成図である。
【
図6A】
図6Aは、d軸電流値と着磁量との関係を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、d軸電流値と着磁量との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、d軸電流値と着減率との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態によるモータ制御装置の概略構成図である。
【
図9B】
図9Bは、磁化時間と周波数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるモータ制御装置について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態によるモータ制御装置の概略構成図である。
【0012】
図1においては、モータ制御装置1が開示されており、このモータ制御装置1によってモータ2が制御される。モータ2は、電気自動車などの電動車両の駆動源となる。なお、モータ2は、可変磁力モータであり、回転子が備える磁石の着磁量が、モータ制御装置1によって制御可能に構成されている。以下では、モータ制御装置1の構成の詳細について説明する。なお、磁石の着磁量は、磁束量と称されることもある。
【0013】
着磁状態保持制御部11においては、車両の運転状態に応じたトルク指令値Tr*、及び、磁束オブザーバ24にて推定されるモータ2の磁石の着磁量推定値Ψaが入力される。そして、着磁状態保持制御部11は、これらの入力値に基づいて、モータ2の回転駆動させるための基本波成分、及び、磁石の着磁率を維持するのに必要な維持成分を含むd軸電流指令値id1*、及び、q軸電流指令値iq1*が算出される。
【0014】
そして、着磁状態保持制御部11は、d軸電流指令値id1*をd軸演算器12dに出力するとともに、q軸電流指令値iq1*をq軸演算器12qに出力する。さらに、着磁状態保持制御部11は、d軸電流指令値id1*及びq軸指令値iq1*を、非干渉制御部15に出力する。
【0015】
d軸演算器12dには、d軸指令値id1*、3相-dq変換部21から出力されるモータ2のd軸電流値id、及び、温調電流指令値生成部26から出力される磁石温度の調整に用いられるd軸温調電流指令値idt*が入力される。そして、d軸演算器12dは、d軸電流指令値id1*からd軸電流値idを減ずることにより指令値と測定値との偏差を求め、その偏差に対してd軸温調電流指令値idt*を加える。すなわち、d軸演算器12dは、d軸電流指令値id1*からd軸電流値idを減じた結果に、d軸温調電流指令値idt*を加えることにより、d軸電流指令値id2*を算出する。d軸演算器12dは、d軸電流指令値id2*をPI-dq電流制御器13に出力する。
【0016】
同様に、q軸演算器12qには、q軸電流指令値iq1*、3相-dq変換部21から出力されるモータ2のq軸電流値iq、及び、温調電流指令値生成部26から出力される磁石温度の調整に用いられるq軸温調電流指令値iqt*が入力される。そして、q軸演算器12qは、q軸電流指令値iq1*からq軸電流値iqを減ずることにより指令値と測定値との偏差を求め、その偏差に対してq軸温調電流指令値iqt*を加える。すなわち、q軸演算器12qは、q軸電流指令値iq1*からq軸電流値iqを減じた結果に、q軸温調電流指令値iqt*を加えることにより、q軸電流指令値iq2*を算出する。q軸演算器12qは、q軸電流指令値iq2*をPI-dq電流制御器13に出力する。
【0017】
PI-dq電流制御器13においては、d軸電流指令値id2*及びq軸電流指令値iq2*が入力される。PI-dq電流制御器13は、d軸演算器12d、及び、q軸演算器12qにおける演算途中にて求められる指令値と測定値との偏差を、PI演算によって補正する。そして、PI-dq電流制御器13は、補正後の指令値をもとにd軸電圧指令値vd1をd軸加算器14dに出力するとともに、q軸電圧指令値vq1をq軸加算器14qに出力する。
【0018】
d軸加算器14dにおいては、d軸電圧指令値vd1に加えて、非干渉制御部15から出力されるd軸干渉電圧指令値vd’が入力される。d軸加算器14dは、d軸電圧指令値vd1とd軸干渉電圧指令値vd’とを加算し、その加算結果であるd軸電圧指令値vdをdq-3相変換部16に出力する。
【0019】
q軸加算器14qにおいては、q軸電圧指令値vq1に加えて、非干渉制御部15から出力されるq軸干渉電圧指令値vq’が入力される。q軸加算器14qは、q軸電圧指令値vq1とq軸干渉電圧指令値vq’とを加算し、その加算結果であるq軸電圧指令値vqをdq-3相変換部16に出力する。
【0020】
非干渉制御部15は、d軸電流指令値id1*、q軸電流指令値iq1*、及び、モータ2の電気角速度ωに基づいて、d軸電流とq軸電流における干渉を抑制するための、d軸干渉電圧指令値vd’及びq軸干渉電圧指令値vq’を求める。そして、非干渉制御部15は、d軸干渉電圧指令値vd’をd軸加算器14dに出力するとともに、q軸干渉電圧指令値vq’をq軸加算器14qに出力する。
【0021】
dq-3相変換部16においては、d軸電圧指令値vd、及び、q軸電圧指令値vqに加えて、位相速度演算部22から出力されるモータ2の回転子位相角θが入力される。そして、dq-3相変換部16は、指令値に対して回転子位相角θに基づいて、3相電圧指令値vu、vv、vwを算出する。そして、dq-3相変換部16は、算出した3相電圧指令値vu、vv、vwを変調率演算部17に出力する。
【0022】
変調率演算部17は、3相電圧指令値vu、vv、vwと、モータ2への印可電圧を生成するインバータ19における基準電圧であるDC電圧Vdcとに基づいて、PWM信号の生成に用いる変調率mu、mv、mwを算出すると、それらの変調率を三角波比較部18に出力する。
【0023】
三角波比較部18は、入力される変調率mu、mv、mwと三角波とを比較することにより、PWM信号を生成し、このPWM信号をインバータ19に出力する。
【0024】
インバータ19は、PWM信号に基づいて、上アーム及び下アームからなるスイッチ回路(図示省略)を制御することにより、直流電圧から3相交流信号を生成する。そして、インバータ19は、それらの3相交流信号をモータ2に出力する。これにより、モータ2を回転駆動させることができる。
【0025】
電流センサ20は、インバータ19とモータ2との間に設けられており、u相電流iu、及び、w相電流iwを測定する。そして、電流センサ20は、測定した電流値を、3相-dq変換部21に出力する。
【0026】
3相-dq変換部21には、u相電流iu、及び、w相電流iwが入力されるとともに、位相速度演算部22から回転子位相角θが入力される。そして、3相-dq変換部21は、これらの入力に基づいて、モータ2に流れる電流値をdq軸で示したd軸電流値id、及び、q軸電流値iqを算出する。そして、3相-dq変換部21は、d軸電流値idをd軸演算器12dに出力し、q軸演算器12qをq軸電流値iqに出力する。同時に、3相-dq変換部21は、d軸電流値id及びq軸演算器12qを、非干渉制御部15、及び、磁束オブザーバ24に出力する。
【0027】
位相速度演算部22においては、モータ2に設けられているレゾルバ等の回転角度センサ23により検出された信号に基づいて、モータ2の回転子位相角θを求める。位相速度演算部22は、回転子位相角θを、dq-3相変換部16及び3相-dq変換部21に出力する。更に、位相速度演算部22は、モータ2の電気角速度ωを演算により求め、求めた電気角速度ωを磁束オブザーバ24に出力する。
【0028】
磁束オブザーバ24においては、d軸電流値id、q軸電流値iq、及び、モータ2の電気角速度ωが入力される。磁束オブザーバ24は、これらの入力に基づいて、着磁量推定値Ψaを算出し、算出した着磁量推定値Ψaを、着磁状態保持制御部11、及び、温調電流指令値生成部26に出力する。ここで、着磁量推定値Ψaとは、磁石の着磁量(磁束数)であって、固定子コイルにより発生する磁束と鎖交する磁束の合計数を示す値である。
【0029】
具体的には、磁束オブザーバ24は、d軸電流値id、q軸電流値iq、及び、電気角速度ωに基づきモータ電圧方程式を予め記憶している。ここで、モータ電圧方程式においては、磁石温度を予測するために使用されるモータパラメータなどがあり、これらのパラメータも記憶されている。そして、磁束オブザーバ24は、モータ電圧方程式を用いて着磁量推定値Ψaを算出する。
【0030】
磁石温度推定部25は,d軸電流値id、q軸電流値iq、d軸電圧指令値vd、及び、q軸電圧指令値vqからモータ2のインピーダンスを算出する。そして、インピーダンスと磁石温度とは相関があるため、磁石温度推定部25は、算出したインピーダンスを用いて磁石温度推定値Tを推定する。
【0031】
温調電流指令値生成部26の前段には減算器27が設けられている。減算器27には、上位システム(不図示)から出力される磁石の着磁量指令値Ψa*から、磁束オブザーバ24から出力される着磁量推定値Ψaを減じて、着磁量偏差ΔΨaを算出する。なお、上位システムにおいては、運転状態に応じて最適な磁石の着磁量となるような着磁量指令値Ψa*が求められている。
【0032】
そして、温調電流指令値生成部26においては、減算器27から着磁量偏差ΔΨaが入力され、磁束オブザーバ24から着磁量推定値Ψaが入力され、磁石温度推定部25から磁石温度推定値Tが入力される。温調電流指令値生成部26は、これらの入力に応じて、磁石の温度の制御に用いる、d軸温調電流指令値idt*、及び、q軸温調電流指令値iqt*を算出する。なお、温調電流指令値生成部26において生成される、温調電流指令値は、モータ2の回転駆動に用いられる基本波よりも高い周波数の高調波成分により構成される。そして、温調電流指令値生成部26は、d軸温調電流指令値idt*をd軸演算器12dに出力するとともに、q軸温調電流指令値iq*tをq軸演算器12qに出力する。
【0033】
同時に、温調電流指令値生成部26は、磁石の着磁量を着磁量偏差ΔΨaだけ変化させるような、電流指令値を算出する。なお、着磁量を変化させるために電流を印加する時間は極めて短いので、運転状態に応じて定まる着磁量を変化させるタイミングにおいてのみ、着磁量を変化させる電流指令値を、d軸演算器12d、及び、q軸演算器12qに出力する。温調電流指令値生成部26は、温度調整部、及び、着磁量制御部の一例である。
【0034】
このようにして、モータ制御装置1においては、温調電流指令値生成部26が設けられることにより、モータ2における磁石の温度を調整が可能となるとともに、磁石の着磁量を変化させる。なお、磁石の着磁量を変化させるために電流を流す時間は、磁石の温度を調整するために電流を流す時間と比較すると、極めて短い。そのため、温調電流指令値生成部26は、比較的短時間で着磁量変化のための電流を印可するとともに、比較的長い時間、温度調整のための電流を印可する。
【0035】
次に、
図2を用いて、磁石の温度を制御することによる利点について説明する。
【0036】
図2は、本実施形態における磁石温度に応じた、印加するd軸電流値idと磁石の着磁率Jとの関係を示す図である。この図においては、実線で磁石の温度が20℃である場合が、破線で100℃である場合が示されている。なお、
図1で示したように、モータ制御装置1においては、着磁量推定値Ψaに基づいて制御を行うために、装置内部にて着磁量と着磁率との変換を行っている。
【0037】
この図によれば、d軸電流値idを変化させることにより磁石の着磁率Jが変化するが、d軸電流値idと着磁率Jとの関係はヒステリシスがある。また、磁石の温度が高い方が、d軸電流値idが小さくても着磁率Jを変化させることができる。そこで、本実施形態においては、着磁率Jを変化させる前に、温調電流指令値生成部26にて生成される温調電流指令値によって、回転するモータ2が備える磁石において渦電流を誘起させる。このようにすることにより、磁石が加熱されて温度が上昇するので、小さい電流で着磁率Jを制御できることになる。
【0038】
図3は、温調電流指令値生成部26における処理を示すフローチャートである。これらの処理は、モータ制御装置1のコントローラにプログラムされている。
【0039】
ステップS301においては、温調電流指令値生成部26は、着磁量偏差ΔΨaがゼロであるか否かを判定する。着磁量偏差ΔΨaがゼロでない場合には(S301:Yes)、温調電流指令値生成部26は、磁石温度を調整する必要があると判断して、ステップS302へと進む。一方、着磁量偏差ΔΨaがゼロである場合には(S301:No)、温調電流指令値生成部26は、磁石温度を調整する必要がないと判断して、ステップS301へと戻る。
【0040】
ステップS302においては、温調電流指令値生成部26は、磁石温度推定値Tが調整上限温度Tmax未満であるか(T<Tmax)否かを判定する。磁石には、これ以上加熱してしまうと磁石が消磁してしまうような温度があり、この温度が調整上限温度Tmaxとして定められている。なお、調整上限温度Tmaxに、マージンをもたせてもよい。
【0041】
磁石温度推定値Tが調整上限温度Tmax未満である場合には(S302:Yes)、温調電流指令値生成部26は、磁石温度を調整できると判断してステップS303へと進む。一方、磁石温度推定値Tが調整上限温度Tmax以上である場合には(S302:No)、温調電流指令値生成部26は、磁石温度を調整できないと判断してステップS301へと進む。
【0042】
ステップS303においては、温調電流指令値生成部26は、磁石温度を制御するために、d軸温調電流指令値idt*、及び、q軸温調電流指令値iqt*を決定する。磁石温度を上昇させることにより、磁石の保磁力が下がるので、より少ない電流で着磁量の制御が可能となる。
【0043】
本実施形態においては、モータ制御装置1は、磁石温度推定部25を備えているので、あらかじめ着磁量推定値Ψa、着磁量偏差ΔΨa、及び、磁石温度推定値Tに対応した電流指令値マップを記憶しておき、このマップを参照して電流指令値を算出する。モータ制御装置1が磁石温度推定部25を備えていない場合には、着磁量推定値Ψa、及び、着磁量偏差ΔΨaに基づいて電流指令値を決定する。
【0044】
ステップS304においては、温調電流指令値生成部26は、着磁量制御タイミングであるか否かを判定する。そのため、着磁量制御タイミングである場合には(S304:Yes)、着磁量を制御するためにステップS305に進む。一方、着磁量制御タイミングでない場合には(S304:No)、磁石温度を調整するためにステップS306に進む。なお、上述のように、着磁量の制御に要する時間は極めて短い。
【0045】
ステップS305においては、着磁量制御ステップが実行される。着磁量制御ステップが行われるタイミングにおいて、温調電流指令値生成部26は、モータ2が備える磁石の着磁量を変化させるのに必要なd軸電流指令値id1*、及び、q軸電流指令値iq1*を算出して出力する。これにより、モータ2において磁界が発生して磁石の着磁量が変化する。
【0046】
ステップS306においては、温度調整ステップが実行される。温度調整ステップにおいては、温調電流指令値生成部26は、磁石の温度を上昇させる渦電流を発生させるためのd軸電流指令値id1*、及び、q軸電流指令値iq1*を算出して出力する。なお、温度調整が不要であると判断される場合には、温調電流指令値生成部26からの出力はゼロとなる。
【0047】
なお、着磁量制御タイミングでない場合には(S304:No)、温度調整を行う(S305)例について説明したが、これに限らない。例えば、温度調整に要する調整時間を算出し、着磁量制御タイミングから調整時間だけ前のタイミングから温度調整を開始してもよい。このようにすることで、温度調整の直後に着磁量制御が行われることになるので、より適切に着磁量を制御することができる。
【0048】
また、温度調整は複数回行ってもよい。例えば、磁石の温度を30℃上昇させる場合には、10℃ずつ3回に分けて温調制御を行ってもよい。いずれの温度調整も磁石温度推定部25により推定される磁石温度推定値Tに基づいて行われるため、磁石温度の制御の誤差を低減できる。
【0049】
図4A、
図4Bは、
図3に示したステップS303において、温調電流指令値を算出するために用いられるパラメータの関係を示す図である。
図4Aは、モータ制御装置1が磁石温度推定部25を備える場合のパラメータの関係を示す図であり、
図4Bは、モータ制御装置1が磁石温度推定部25を備えない場合のパラメータの関係を示す図である。
【0050】
図4Aによれば、温調電流指令値idt
*、iqt
*は、着磁量偏差ΔΨa、着磁量推定値Ψa、及び、磁石温度推定値Tの3つのパラメータにより求められることが示されている。
図4Aのように、磁石温度推定部25を備えるほうが、温調電流指令値idt
*、iqt
*を精度よく求めることができる。
【0051】
一方、
図4Bによれば、温調電流指令値idt
*、iqt
*は、着磁量偏差ΔΨa、及び、着磁量推定値Ψaの2つのパラメータにより求められることが示されている。また、
図4Bのように、磁石温度推定部25を備えない場合であっても、磁石温度を用いずに、着磁量偏差ΔΨa、及び、着磁量推定値Ψaの2つのパラメータを用いて、温調電流指令値idt
*、iqt
*を求めることができる。たとえば、モータ2の回転時の磁石の温度は所定の範囲内(40℃)にあることが多いため、磁石を高温(100℃)にするのに必要な温調電流指令値をあらかじめ定める事ができる。
【0052】
なお、磁石温度が低い場合には、磁石の着磁量を変化させるのに必要な指令値を出力して磁界を発生させても、着磁量指令値Ψa*だけの着磁をできないことがある。そのため、モータ制御装置1は、d軸電流値を変動させている間、磁石温度推定値Tと着磁量指令値Ψa*とに基づいて着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができるか否かを判断し、着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができないと判断している間は、温度調整ステップを継続する。そして、磁石温度が上昇し、着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができると判断した後に、着磁量制御ステップを実行する。このようにすることにより、磁石を、着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができる温度に確実に制御することができる。
【0053】
第1実施形態によれば以下の効果を得る事ができる。
【0054】
第1実施形態のモータ2の制御方法によれば、温調電流指令値生成部26において温調電流指令値が生成され、この温調電流指令値がd軸演算器12d、q軸演算器12qにて重畳される。ここで、温調電流指令値は高調波であるので、モータ2へ印加される電流に高調成分が生じる。そのため、モータ2の回転子が備える磁石においては、固定子コイルの巻線電流によって作られる交番磁界によって渦電流が発生するので、磁石の温度を上昇させることができる。
【0055】
ここで、磁石は、温度が高い方が磁石の保磁力が弱く、着磁量制御に用い電流が小さくなる。そこで、温度調整ステップを行うことにより、磁石の温度を上昇させると、少ない電流で着磁量制御が可能となる。このようにすることにより、着磁量制御ステップにおいて、少ない電流で着磁量制御が行えるようになるので、エネルギー損失を低減できる。
【0056】
また、第1実施形態のモータ2の制御方法によれば、着磁量制御タイミングが到来するまでの間(S304:No)のうち、着磁量制御タイミングから予め算出した着磁量制御に要する調整時間だけ前のタイミングから、磁石の温度調整を行ってもよい(S306)。このようにすることで、着磁量制御タイミングが到来した時には(S304:No)、磁石が所望の温度になった直後であり、このタイミングから着磁量制御が行われることになる(S305)。したがって、磁石において加熱後の温度低下などがないため、さらにエネルギー損失を抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態のモータ2の制御方法によれば、温度調整ステップにおいて、温調電流指令値生成部26は、磁石温度推定部25により推定される磁石温度推定値Tに応じて、温調電流指令値を生成する。このようにすることで、磁石の現在の温度から、目標温度までの加熱に必要なエネルギーをより正確に求めることができるので、不要な加熱が行われず、エネルギー損失を抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態のモータ2の制御方法によれば、
図4Bに示すように、着磁量偏差ΔΨa、及び、着磁量推定値Ψaの2つのパラメータのみで温調電流指令値を定めることができる。このようにすることで、磁石温度推定部25を省略することができるので、モータ制御装置1の構成を簡略化できるとともに、フィードフォーワード制御が行われるので応答速度を高めることができる。また、
図4Aに示すように、磁石温度推定部25により推定される磁石温度を用いて温調電流指令値を定める場合には、温調電流指令値の算出精度が上がるとともに、磁石温度に基づくフィードバック制御が行われるので、磁石の温度を適切に制御することができる。
【0059】
第1実施形態のモータ2の制御方法によれば、磁石の温度調整のためにd軸電流を印加している間に磁石温度推定部25が磁石温度の推定を行う。そして、モータ制御装置1は、磁石温度推定値Tと着磁量指令値Ψa*とに基づいて着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができるか否かを判断する。着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができないと判断している間は、温度調整ステップを継続し、磁石温度が上昇して着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができると判断した後に、着磁量制御ステップを実行する。このようにすることにより、磁石を、着磁量指令値Ψa*だけの着磁ができる温度に確実に制御することができるので、不要なエネルギー損失を抑制することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、温調電流指令値生成部26は、d軸温調電流指令値idt*、及び、q軸温調電流指令値iqt*を出力する例を用いて説明した。本実施形態においては、温調電流指令値生成部26が、d軸温調電流指令値idt*のみを出力する例について説明する。
【0061】
図5は、本実施形態による磁石温度調整システムの概略構成図である。第1実施形態の磁石温度調整システムと比較すると、温調電流指令値生成部26が、q軸温調電流指令値iqt
*を出力せずに、d軸温調電流指令値idt
*のみを出力する点が異なる。
【0062】
同期回転機の中には、リラクタンストルクを用いない磁気回路構成となっているものもある。そのような同期電動機においては、d軸電流はトルクへの影響がないため、d軸電流を変動させてもトルク変動は発生しない。そのため、d軸温調電流指令値idt*のみを用いて温度調整をすることにより、トルクリプルの発生を抑制することができる。具体的には、交流であるd軸電流の振幅を脈動させることによって回転子速度と非同期な周波数の交番磁界を発生させることで、磁石において渦電流を発生させて加熱する。
【0063】
次に、d軸電流を振動させる場合の、その振幅及び中心値について、
図6、
図7を用いて説明する。
【0064】
図6Aには、磁石温度が100℃であり、かつ、着磁率が70%である状態において、d軸電流値idを印可した場合の着磁率Jの変化を示す図である。なお、d軸電流値idは、-idmaxから+idmaxまでの範囲で変化させることができる。この図によれば、d軸電流値idがi1を上回ると着磁率が上昇する。一方、d軸電流値idがi2を下回ると着磁率Jが減少する。また、d軸電流値idがi2とi1との間にある場合には、着磁率Jは変化しない。このような着磁率が変化しない範囲を、着磁率不変領域と称するものとする。
【0065】
図6Bには、磁石温度が100℃であり、かつ、着磁率が100%である状態において、d軸電流値idを印可した場合の着磁率Jの変化を示す図である。この図によれば、すでに着磁率が100%であるので、d軸電流を大きくしても着磁率Jは変化しない。一方、d軸電流値idがi3を下回ると着磁率Jは減少する。そのため、着磁率変化領域は、i3から+idmaxまでの範囲となる。
【0066】
ここで、
図7用いて上述の着磁率の変化について説明する。
【0067】
図7は、d軸電流値idと磁石の着磁率Jとの関係を示す図である。この図において、1点鎖線で示される関係は
図6Aと対応し、2点鎖線で示される関係は
図6Bと対応する。
【0068】
図6Aと対応する1点鎖線で示される特性を参照すれば、d軸電流値idと磁石の着磁率Jとの関係にはヒステリシス特性があるため、d軸電流値idがi1とi2との間にある場合には、着磁率Jは変化しない。そして、d軸電流値idがi1を上回ると着磁率Jの増加が開始する。一方、d軸電流値idがi2を下回るまでは着磁率は変化せず、d軸電流値idがi2を下回ると着磁率Jは減少を開始する。
【0069】
ここで、モータ2がリラクタンストルクを用いない同期電動機である場合には、d軸電流値idを交流振動させることにより磁石の着磁率を変化させることなく、磁石温度を制御することができる。具体的には、d軸電流値idの振幅を変化させる。そのため、d軸電流値idが、i1とi2との間の着磁率不変領域にあるような振幅を設定することにより、着磁率Jを変化させずに磁石の温度を制御することができる。
【0070】
一方、
図6Bと対応する2点鎖線で示される特性を参照すれば、d軸電流値idを大きくしても着磁率Jは変化せず、d軸電流値idがi3を下ると着磁率が減少を開始する。したがって、d軸電流値idがi3を下回らないように制御することで、着磁率Jを変化させずに磁石の温度を制御できる。さらに、d軸電流値idは最大電流+idmaxまで大きくなるので、渦電流が大きくなり、加熱効率を向上させることができる。
【0071】
具体的には、振幅の上限値であるid_maxとi3とより定まる着磁率不変領域の中間点imが交流電流の振動の中心となるように、交流電流のゼロ点をオフセットするとともに、振幅Aがid_maxと中間点imとの差となるように設定する。このようにすることで、着磁率Jを変化させることなく、効率よく渦電流を発生させることができる。
【0072】
なお、着磁率不変領域は、現在の着磁率J、及び、磁石温度に基づいて、
図2に示したような着磁率特性に従って定まる。そのため、着磁量推定値Ψa、及び、磁石温度推定値Tに応じて、交流であるd軸電流値idの振動の中心をオフセットするとともに、d軸電流値の交流電流の振幅を設定する。このようにすることで、着磁率を変化させることなく、高効率に温度を制御することができる。
【0073】
第2実施形態によれば以下の効果を得る事ができる。
【0074】
第2実施形態のモータ2の制御方法によれば、温調電流指令値生成部26は、d軸温調電流指令値idt*を生成する。ここで、d軸成分の電流は、モータ2の回転トルクに影響を与えずに、交番磁界を生成して磁石に渦電流を発生させることができる。そのため、トルクに影響を与えることなく磁石の温度調整できるので、モータ2の回転駆動の制御精度を向上することができる。
【0075】
第2実施形態のモータ2の制御方法によれば、磁石には、着磁量が変化しないd軸交流電流の大きさの範囲(着磁量不変領域)がある。これは、着減量の制御において電流値と磁化量との関係にヒステリシスがあるためである。そこで、d軸電流が着磁量不変領域の全体を使用するように、d軸交流電流の振幅と位相を調整することにより、磁化量を変化させることなく渦電流を大きくすることができる。このようにすることで、着磁率Jを変化させずに渦電流を大きくできるので、磁石温度の調整効率を向上することができる。
【0076】
第2実施形態のモータ2の制御方法によれば、さらに、d軸交流電流が着磁量不変領域を超えないように、振幅の中心である交流電流のゼロ点をオフセットする。ここで、例えば、着磁率が100%に近い値の場合には、
図7にて2点鎖線で示したように、d軸電流を大きくしても着磁率は変化しにくい。そこで、d軸交流電流を、印加できるd軸電流の最大値であるidmaxと、着磁率が減少を開始するi3との間にて変化するように、交流電流の振動中心であるゼロ点がidmaxとi2との中間点imとなるようにオフセットする。このようにすることで、着磁量不変領域の全体でd軸交流電流が変化することになるので、着磁率Jに影響を与えることなく渦電流を大きくすることができるので、磁石温度の調整効率を向上することができる。
【0077】
(第3実施形態)
第1実施形態、及び、第2実施形態においては、温調電流指令値生成部26に着磁量偏差ΔΨa、着磁量推定値Ψa、磁石温度推定値Tが入力される例について説明した。本実施形態においては、温調電流指令値生成部26に、さらに温調許可時間taが入力される例について説明する。
【0078】
図8は、本実施形態によるモータ制御装置の概略構成図である。第1実施形態の磁石温度調整システムと比較すると、温調電流指令値生成部26に、温調許可時間taが入力される点が異なる。ここで、温調許可時間taは、温度調整を開始するタイミングから、次に着磁量を制御するタイミング(着磁量制御ステップの開始タイミング)に至るまでの時間である。
【0079】
ここで、磁石において発生する渦電流が小さい方が、磁石の加熱時間が長くなるので、磁石の一部だけが加熱されることが抑制され、磁石温度が均一になり好ましい。そこで、温調許可時間taが長いほど、温調電流の振幅A及び周波数fを小さく設定する。一方、温調許可時間taが短いほど、短時間で磁石温度を上昇させるために、温調電流の振幅A及び周波数fを大きく設定する。なお、温調電流の振幅Aについては、第2実施形態にて示した着磁量不変領域によって、その上限が定められ、モータ制御装置1の分解能に応じて下限が定められる。また、周波数fについては、インバータ19のスイッチング素子の性能に基づいて上限及び下限が定められる。
【0080】
図9Aには、温調許可時間taと温調電流振幅Aとの関係が示されている。この図において、温調電流振幅の最大値であるAmaxは、着磁率Jが変化しないd軸交流電流の最大値である。また、温調電流振幅の最小値であるAminは、着磁率Jが変化しないd軸交流電流の最小値である。
【0081】
磁石温度を温調許可時間taかけて所望の温度にするように、最大振幅Amaxと対応して温調許可時間ta1が、最小振幅Aminと対応して温調許可時間ta2が示されている。そして、温調許可時間taがta1とta2との間にある場合には、温調許可時間taが長くなるほど温調電流振幅Aは小さくなるように設定される。なお、温調許可時間taがta1よりも短い場合には、最大振幅Amaxが用いられる。一方、モータ制御装置1の分解能の下限に応じて、最小振幅Aminが用いられる。
【0082】
図9Bには、温調許可時間taと温調電流周波数との関係が示されている。この図において、温調電流周波数の最大周波数fmax、及び、最小周波数fminは、インバータ19の性能にて定まる値である。
【0083】
磁石温度を温調許可時間taかけて所望の温度にするように、最大周波数fmaxと対応して温調許可時間がta3が、最小周波数fminと対応して温調許可時間ta4が示されている。そして、温調許可時間taがta3とta4との間にある場合には、温調許可時間taが長くなるほど温調電流周波数は小さくなるように設定される。なお、温調許可時間taがta3よりも短い場合には、最大周波数fmaxが用いられ、温調許可時間taがta4よりも長い場合には、最小周波数fminが用いられる。
【0084】
第3実施形態によれば以下の効果を得る事ができる。
【0085】
第3実施形態のモータ2の制御方法によれば、さらに、温度調整制御の開始までに許容される時間である温調許可時間taに応じて磁石温度調整に用いるd軸交流電流の振幅、及び、周波数を決定する。温調許可時間taが短いほど、短時間で温度を上げる必要があるため、振幅、及び、周波数を高くして渦電流による発熱量を増加させる。一方、温調許可時間taが長いほど、時間をかけで温度を上昇させることにより磁石の温度が均一になりやすくなるため、振幅、及び、周波数を低くして渦電流による発熱量を小さくする。このようにすることで、設計の自由度が上がるとともに、時間をかけて磁石の温度を上昇させることにより磁石温度の偏りが抑制されるのでモータ2の制御精度の向上を図ることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 モータ制御装置
2 モータ
11 着磁状態保持制御部
15 非干渉制御部
19 インバータ
22 位相速度演算部
24 磁束オブザーバ
25 磁石温度推定部
26 温調電流指令値生成部