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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】写真測量システム及び写真測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/04 20060101AFI20221004BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G01C7/04
G01C15/00 103A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017163023
(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公開番号】P2019039851
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-087307(JP,A)
【文献】特開2014-167413(JP,A)
【文献】特開2014-145762(JP,A)
【文献】特開2012-175426(JP,A)
【文献】特開2012-199803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131423(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0292883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0032021(US,A1)
【文献】国際公開第2013/005316(WO,A1)
【文献】特開2011-022157(JP,A)
【文献】特開2009-199572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0084052(US,A1)
【文献】特開2017-138288(JP,A)
【文献】特開2017-026552(JP,A)
【文献】特開2007-336314(JP,A)
【文献】特開2015-046812(JP,A)
【文献】特開2015-033108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/04
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられ、撮像面に対し露光部分を一側から他側の一方向に移動させるシャッター部を有し、前記シャッター部が前記撮像面の一側から他側まで露光させることで画像を撮影するカメラと、
前記カメラにより前記画像を撮影した位置を計測する撮影位置計測部と、
前記カメラにより撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記撮影位置計測部により計測した撮影位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間に基づいて、前記特徴点が撮影された特徴点撮影位置を算出して、当該特徴点撮影位置を含む写真測量用のデータを生成する写真測量データ生成部と、
を備える写真測量システム。
【請求項2】
前記写真測量データ生成部は、前記カメラにより撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記特徴点の画像内の位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間との関係から前記画像の撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間を算出し、撮影開始時刻に前記オフセット時間を加えた特徴点撮影時刻に対応する撮影位置を前記特徴点撮影位置として算出する請求項1記載の写真測量システム。
【請求項3】
前記写真測量データ生成部は、前記特徴点撮影時刻と、前記撮影位置計測部が撮影位置を計測した時刻とが一致しない場合、前記特徴点撮影時刻の直前の時刻及び直後の時刻に対応する撮影位置を内挿した位置を、前記特徴点撮影位置として算出する請求項2に記載の写真測量システム。
【請求項4】
前記シャッター部はフォーカルプレーンシャッター又はローリングシャッターである請求項1から3のいずれか一項に記載の写真測量システム。
【請求項5】
前記撮影位置計測部は、前記カメラを追尾して、前記カメラの位置を測量する測量装置である請求項1から4のいずれか一項に記載の写真測量システム。
【請求項6】
前記撮影位置計測部は、前記移動体に搭載されたGNSSである請求項1から4のいずれか一項に記載の写真測量システム。
【請求項7】
移動体に設けられ、撮像面に対し露光部分を一側から他側の一方向に移動させるシャッター部を有したカメラが、前記シャッター部を前記撮像面の一側から他側まで露光させることで画像を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程にて前記画像を撮影した位置を計測する撮影位置計測工程と、
前記撮影工程にて撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記撮影位置計測工程により計測した撮影位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間に基づいて、前記特徴点が撮影された特徴点撮影位置を算出して、当該特徴点撮影位置を含む写真測量用のデータを生成する写真測量データ生成工程と、
を備える写真測量方法。
【請求項8】
前記写真測量データ生成工程では、前記撮影工程にて撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記特徴点の画像内の位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間との関係から前記画像の撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間を算出し、前記撮影位置計測工程での撮影位置の計測時刻に前記オフセット時間を加えた特徴点撮影時刻に対応する撮影位置を前記特徴点撮影位置として算出する請求項7記載の写真測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体にカメラを設け、当該カメラにより撮影された画像からステレオモデルを生成する写真測量システム及び写真測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に対してカメラ等の撮影装置が相対的な移動をしながら対象物を連続的に撮影し、得られた画像を用い写真測量の手法により自己位置や対象物の位置を計測する技術がある。特に近年では、移動体として無人航空機:UAV(Unmanned Aerial Vehicle)等を用い、UAVにカメラを搭載し、上空から画像を撮影している。
【0003】
このような写真測量では、撮影した画像の中で、地上の工作物や地形に特徴のある点、例えば建物、河川、山頂等の特徴的な部分や評定点となる対空標識等(以下、これら含めて特徴点という)を抽出し、この特徴点を基準として複数の画像からステレオモデルを生成している。
【0004】
例えば、特許文献1では、飛行体が測定対象範囲の上空を葛折状に飛行しつつ画像を撮影する。この撮影は、各画像が進行方向にて隣接する画像、及び隣接するコースにて隣接する画像がそれぞれ所定量オーバーラップするよう、周期的に撮影される。そして、全ての撮影を終えた後、進行方向にて隣接する3画像について、1組の隣接する画像を相互標定して1つのステレオ画像を作成し、もう1組の隣接する画像も相互標定して他のステレオ画像を作成し、この2組のステレオ画像の共通した画像で且つ3画像が重複する部分から抽出した特徴点を用いて2組のステレオ画像を接続する。さらに隣接するコースで隣接する画像から共通のタイポイントを選択し、コースで隣接するステレオ画像を接続していくことで、全測定対象範囲をカバーし、共通の3次元座標系で表される統一ステレオ画像(ステレオモデル)を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-108927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を含めた従来の写真測量では、一般的な一眼デジタルカメラが使用される場合が多く、このようなカメラではシャッター方式にフォーカルプレーンシャッターが用いられることが多い。
【0007】
そして、従来の写真測量において、ある地点で撮影された画像は、画像内の全てが同時に撮影されているという前提で特徴点に基づく写真測量の演算が行われている。
【0008】
しかし、フォーカルプレーンシャッターの場合、同じ画像内であってもシャッター幕(遮光幕)の走行時間に応じて撮像面の位置によって露光されるタイミングが僅かに異なっている。このためUAVのように高速に移動しながら撮影を行うと、画像上の位置関係と実際の地上の位置関係とに誤差(歪み)が生じるという問題がある。
【0009】
このような問題は、フォーカルプレーンシャッターのような物理的シャッター(メカニカルシャッター)だけでなく、撮像素子の一側から他側に向けてライン状に順次露光する、電子シャッターにおけるローリングシャッターでも生じる。
【0010】
このため、画像内の全てが同時に撮影されているという前提で特徴点に基づく写真測量の演算を行うと、特徴点の位置に誤差が含まれているために、ステレオモデル生成の精度の低下、ひいては写真測量の精度が低下するという問題がある。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、撮像面に対して露光部分が移動して画像を撮影するカメラを用いて行う写真測量において、画像内における特徴点の誤差を解消し、写真測量の精度を向上させることのできる写真測量システム及び写真測量方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明に係る写真測量システムでは、移動体に設けられ、撮像面に対し露光部分を一側から他側の一方向に移動させるシャッター部を有し、前記シャッター部が前記撮像面の一側から他側まで露光させることで画像を撮影するカメラと、前記カメラにより前記画像を撮影した位置を計測する撮影位置計測部と、前記カメラにより撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記撮影位置計測部により計測した撮影位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間に基づいて、前記特徴点が撮影された特徴点撮影位置を算出して、当該特徴点撮影位置を含む写真測量用のデータを生成する写真測量データ生成部と、を備える。
【0013】
上述の写真測量システムとして、前記写真測量データ生成部は、前記カメラにより撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記特徴点の画像内の位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間との関係から前記画像の撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間を算出し、前記撮影計測部による撮影位置の計測時刻に前記オフセット時間を加えた特徴点撮影時刻に対応する撮影位置を前記特徴点撮影位置として算出してもよい。
【0014】
また、上述の写真測量システムにおいて、前記写真測量データ生成部は、前記特徴点撮影時刻と、前記撮影位置検出部が撮影位置を検出した時刻とが一致しない場合、前記特徴点撮影時刻の直前の時刻及び直後の時刻に対応する撮影位置を内挿した位置を、前記特徴点撮影位置として算出してもよい。
【0015】
また、上述の写真測量システムにおいて、前記シャッター部はフォーカルプレーンシャッター又はローリングシャッターであってもよい。
【0016】
また、上述の写真測量システムにおいて、前記撮影位置計測部は、前記カメラを追尾して、前記カメラの位置を測量する測量装置であってもよい。
【0017】
また、上述の写真測量システムにおいて、前記撮影位置計測部は、前記移動体に搭載されたGNSSであってもよい。
【0018】
上記した目的を達成するために、本発明に係る写真測量方法では、移動体に設けられ、撮像面に対し露光部分を一側から他側の一方向に移動させるシャッター部を有したカメラが、前記シャッター部を前記撮像面の一側から他側まで露光させることで画像を撮影する撮影工程と、前記撮影工程にて前記画像を撮影した位置を計測する撮影位置計測工程と、前記撮影工程にて撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記撮影位置計測工程により計測した撮影位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間に基づいて、前記特徴点が撮影された特徴点撮影位置を算出して、当該特徴点撮影位置を含む写真測量用のデータを生成する写真測量データ生成工程と、を備える。
【0019】
上述の写真測量方法として、前記写真測量データ生成工程では、前記撮影工程にて撮影した前記画像内から特徴点を抽出し、前記特徴点の画像内の位置と前記シャッター部による露光部分の移動時間との関係から前記画像の撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間を算出し、前記撮影計測工程での撮影位置の計測時刻に前記オフセット時間を加えた特徴点撮影時刻に対応する撮影位置を前記特徴点撮影位置として算出してもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記手段用いる本発明に係る写真測量システム及び写真測量方法によれば、撮像面に対して露光部分が移動して画像を撮影するカメラを用いて行う写真測量において、画像内における特徴点の誤差を解消し、写真測量の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る写真測量システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る測量システムの制御ブロック図である。
図3】シャッター部の概略構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る写真測量ルーチンを示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る写真測量システムの撮影及び測量に関するタイムチャートである。
図6】画像上の特徴点の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1には本発明の一実施形態に係る写真測量システムの全体構成図、図2には当該写真測量システムの制御ブロック図、図3にはシャッター部の概略構成図が示されている。本発明の一実施形態に係る写真測量システムの全体構成と制御系をこれら図1から図3を用いて説明する。
【0024】
写真測量システム1は、移動しつつ写真測量用の画像を複数撮影する移動撮影装置2と、当該移動撮影装置2の位置を測量する測量装置3(撮影位置計測部)と、撮影結果と測量結果を解析して写真測量のためのデータ(写真測量データ)を生成し、ステレオモデルの生成等を行う解析装置4を有している。
【0025】
移動撮影装置2は、移動体であるUAV10に、写真測量用の画像を撮影するカメラ11が搭載されて構成されている。なお、カメラ11が撮影する画像は静止画像及び動画像でもよい。
【0026】
詳しくは、UAV10は、予め定められた飛行経路を飛行したり、遠隔操作により自由に飛行したりすることが可能な飛行移動体である。当該UAV10には飛行を行うための飛行機構10aの下部にジンバル機構10bが設けられている。
【0027】
カメラ11はUAV10のジンバル機構10bより支持されており、当該ジンバル機構10bによって撮影方向を自由に変更可能であるとともに、所定の方向を撮影するよう姿勢を安定化させることが可能である。
【0028】
また、カメラ11は、本体正面にレンズ部12が形成されており、当該レンズ部12の先端横にプリズム13が設けられている。さらに、カメラ11には、GPS信号を受信可能なGPSユニット14が設けられている。
【0029】
測量装置3は、測量対象を自動追尾可能なトータルステーションであり、水平方向に回転駆動可能な水平回転駆動部40上に、鉛直方向に回転可能な鉛直回転駆動部41を介して望遠鏡部42が設けられている。また望遠鏡部42には、ターゲットまでの斜距離を測定する光波距離計(EDM)43が設けられている。
【0030】
詳しくは、測量装置3は、プリズム13を測量対象としたプリズム測量により、測量装置3からプリズム13までの距離測定(測距)が可能であると共に水平角、鉛直角が測定可能である。したがって、測量装置3を既知の位置に設置して、姿勢を整準させてプリズム13の測量を行うことで、測量結果(斜距離、水平角、鉛直角)からプリズム13の座標、即ちカメラ11の位置を算出可能である。
【0031】
解析装置4は、測量装置3により測量した測量結果を、移動撮影装置2により撮影した各画像の撮影位置に対応付けて写真測量用のデータを生成可能なパーソナルコンピュータ等の情報処理端末である。
【0032】
写真測量システム1は、図1に示すように、移動撮影装置2により上空を移動しながら所定の撮影周期ΔSで写真測量用の画像P1、P2、…Pnを複数撮影するとともに、測量装置3により移動撮影装置2(厳密にはカメラ11に設けられたプリズム13)を追尾して測量を行い、解析装置4により移動撮影装置2により撮影した画像P1、P2、…Pnと測量装置3により測量した測量結果R1、R2、…Rmとを対応付ける。さらに解析装置4は、各画像P1、P2、…Pn内から特徴点を抽出し、当該特徴点ごとの撮影位置(特徴点撮影位置)を算出して、当該特徴点撮影位置を含む写真測量データを生成する。その後、当該写真測量データを用いてステレオモデル等を生成する。
【0033】
次に図2を参照しつつ、写真測量システム1のカメラ11、測量装置3、及び解析装置4が搭載するコンピュータに基づく制御系の構成を説明する。
【0034】
図2に示すように、カメラ11は、レンズ部12、プリズム13、GPSユニット14の他に、撮影制御部15を有している。さらに、当該撮影制御部15には操作部16、通信部17、撮像部18、シャッター部19、ストロボ信号端子20が電気的に接続されている。なお、図示しないが、撮影制御部15にはこの他にも記憶部、表示部等が接続されていたり、センサ等が接続されていたりしてもよく、少なくとも撮影した画像は内部又は外部の記憶部に保存される。
【0035】
操作部16は撮影制御部15に対する各種の動作指示や設定を入力するための操作手段である。例えば、動作指示としては、電源のオン、オフの切替、撮影開始とするトリガ、撮影モードの切替、撮影周期の設定、画質の設定、測量装置3との接続オン、オフの切替等がある。また操作部16は、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてもよい。
【0036】
通信部17は、外部機器と通信可能な部分であり、例えばBluetooth(登録商標)等の無線通信手段である。なお、当該通信部17は接続端子を介しての有線通信手段を有していてもよい(以下の通信部も同じ)。
【0037】
撮像部18は、CCDやCMOS等の撮像素子の撮像面に露光された光学像を電気信号に変換する部分である。
【0038】
シャッター部19は、前記撮像部18の直前(レンズ部12側)に配置されたフォーカルプレーンシャッターである。詳しくは図3に示すように、シャッター部19は、矩形の開口を形成するシャッター枠30内を先幕31及び後幕32からなるシャッター幕がシャッター枠30の短手方向に移動可能に設けられている。撮影時においては、図3の白抜き矢印で示すように、先幕31と後幕32がそれぞれ短手方向に移動する。この際、シャッター枠30内で先幕31と後幕32との間に所定の間隔を有しており、長手方向に延びるライン状のスリットである露光開口部33が形成される。なお、先幕31と後幕32との間の所定の間隔、即ち露光開口部33の幅は、露光時間に応じて可変である。
【0039】
つまり、撮影時においては当該露光開口部33が短手方向に移動することとなり、この露光開口部33を通った光が撮像部18の撮像面に露光部分を形成する。例えば、本実施形態における露光開口部33、即ち撮像面における露光部分は、シャッター枠30の一側長辺30aから他側長辺30bまで移動時間M(例えば2ms)で移動する。
【0040】
また、撮影制御部15は、予め設定した撮影周期ΔSで撮影を行うようシャッター部19を制御可能であり、ストロボ信号端子20を介して外部機器にシャッター信号(撮影開始信号)や撮影した画像を伝達させたりすることも可能である。
【0041】
GPSユニット14は、ストロボ信号端子20を介してカメラ11と接続されており、当該GPSユニット14は第1の時刻付与部21と撮影記憶部22とを有している。
【0042】
第1の時刻付与部21は、GPS衛星から時刻情報を含むGPS信号を受信し、当該GPS信号に基づくGPS時刻と定周期パルスであるPPS信号を生成する時計を有している。そして、第1の時刻付与部21は、ストロボ信号端子20を介して伝達されるシャッター信号に応じ、カメラ11により撮影した画像Pに撮影時期に関する第1の時刻Tc(GPS時刻)を付与して、撮影記憶部22に出力する機能を有する。なお、GPS時刻は、例えば、協定世界時(UTC)に基づいた絶対時刻を用いる。
【0043】
撮影記憶部22は、カメラ11により撮影された画像Pに第1の時刻付与部21にて付与された第1の時刻Tcを含む画像データを記憶可能である。
【0044】
測量装置3は、測量制御部44に上述の水平回転駆動部40、鉛直回転駆動部41、EDM43の他に、水平角検出部45、鉛直角検出部46、表示部47、操作部48、追尾光送光部49、追尾光受光部50、通信部51、第2の時刻付与部52、測量記憶部53が接続されている。
【0045】
水平角検出部45は、水平回転駆動部40による水平方向の回転角を検出することで、望遠鏡部42で視準している水平角を検出可能である。鉛直角検出部46は、鉛直回転駆動部41による鉛直方向の回転角を検出することで、望遠鏡部42で視準している鉛直角を検出可能である。これら水平角検出部45及び鉛直角検出部46により、測量結果としての水平角及び鉛直角を検出する。
【0046】
表示部47は、例えば液晶モニタであり、測量結果(斜距離、水平角、鉛直角)等の各種情報を表示可能である。
【0047】
操作部48は、測量制御部44に各種の動作指示や設定を入力するための操作手段である。例えば、動作指示としては、電源のオン、オフの切替、測量開始とするトリガ、測量モードの切替、測量周期の設定等がある。また当該操作部48はカメラ11の操作部16と同様、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてもよい。
【0048】
追尾光送光部49は追尾光を照射し、追尾光受光部50はプリズム13により反射された追尾光を受光する部分である。測量制御部44が、この追尾光送光部49からの追尾光を追尾光受光部50が受光し続けるよう水平回転駆動部40及及び鉛直回転駆動部41を制御することでターゲットの追尾機能を実現している。
【0049】
通信部51は、上記カメラ11の通信部17と同様に、外部機器と通信可能な部分であり、例えばBluetooth(登録商標)等の無線通信手段である。
【0050】
第2の時刻付与部52は、第1の時刻付与部21と同様に、GPS衛星から時刻情報を含むGPS信号を受信し、当該GPS信号に基づくGPS時刻と定周期パルスであるPPS信号を生成する時計を有している。そして、第2の時刻付与部52は、測量が実行されるのに応じ、測量結果Rに測量時期に関する第2の時刻Tt(GPS時刻)を付与して、測量記憶部53に出力する機能を有する。
【0051】
測量記憶部53は、上述の追尾機能のプログラムや、所定の測量周期で測量を行うプログラム等の測量に関する各種プログラムや、測量結果Rに第2の時刻付与部52にて付与された第2の時刻Ttを含む測量データ等の各種データを記憶可能である。
【0052】
測量制御部44は、プリズム13の追尾が成立すると所定の測量周期ΔTでの測量を開始する。そして、各測量結果Rに対して第2の時刻付与部52にて第2の時刻Ttを付与した測量データを測量記憶部53に記憶させる。
【0053】
解析装置4は、写真測量データ生成部60と写真測量解析部61を有している。
【0054】
写真測量データ生成部60は、移動撮影装置2と測量装置3と有線又は無線により接続可能であり、移動撮影装置2の撮影記憶部22に記憶されている画像P1、P2、・・・Pnのそれぞれに第1の時刻Tc1、Tc2、・・・Tcnが付与された各画像データと、測量装置3の測量記憶部53に記憶されている測量結果R1、R2、・・・Rmに第2の時刻Tt1、Tt2、・・・Ttmが付与された測量データとを取得し、第1の時刻Tcと第2の時刻Ttに基づいて両データを対応付ける。
【0055】
さらに、写真測量データ生成部60は、各画像データの画像P1、P2、・・・Pn内からそれぞれ複数の特徴点Fを抽出し、測量結果R1、R2、・・・Rmと露光部分の移動時間Mに基づいて、各特徴点Fが撮影された特徴点撮影位置Rfを算出して、当該特徴点撮影位置Rfを含む写真測量データを生成する。
【0056】
詳しくは、本実施形態の写真測量データ生成部60は、特徴点Fの画像内の位置と、露光部分の移動時間Mとの関係から、各画像における撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間ΔOを算出し、撮影開始時刻に相当する第1の時刻から各特徴点Fのオフセット時間ΔOを加えた特徴点撮影時刻に対応する撮影位置を特徴点撮影位置として算出する。
【0057】
そして、写真測量解析部61は、写真測量データ生成部60にて生成された写真測量データに基づきステレオモデルを生成する。さらに写真測量解析部61はステレオモデルと実際の地形との整合性を取り、縮尺や空間位置(方位や座標)を決定し3次元又は2次元の地形図を生成することも可能である。
【0058】
ここで、図4から図6を参照すると、図4には本実施形態の写真測量システムにおける写真測量ルーチンを示すフローチャートが示されており、図5には各特徴点の撮影時期に関するタイムチャート、図6には画像上の特徴点の一例を示す説明図が、ぞれぞれ示されている。以下、図4のフローチャートに沿い、途中図5、6を参照しつつ、本実施形態の写真測量方法について説明する。
【0059】
まず、図4に示す写真測量ルーチンを開始する前提として、移動撮影装置2は写真測量の対象となる範囲の上空を、飛行計画に沿って、葛折状の経路で飛行し且つ所定の撮影周期でカメラ11による撮影を行うよう設定される。
【0060】
そして、写真測量ルーチンのステップS1として、移動撮影装置2が飛行を開始し、カメラ11による写真撮影を開始する(撮影工程)。具体的には移動撮影装置2は、飛行計画に沿って飛行しつつ、カメラ11により所定の撮影周期ΔSで複数回(n回)撮影を行う。カメラ11による撮影が行われると、そのシャッター信号に応じてGPSユニット14の第1の時刻付与部21において、撮影した画像Pの撮影時期に関する第1の時刻Tcが付与され撮影記憶部22に記憶される。例えば、図5のタイムチャートでは、最初に撮影された画像P1には第1の時刻Tc1が付与され、2回目に撮影された画像P2には第1の時刻Tc2が付与され、n回目に撮影された画像Pnには第1の時刻Tcnが付与される。つまり、第1の時刻Tcは各画像Pの撮影開始時刻に相当する。
【0061】
また、ステップS2として、測量装置3は、飛行している移動撮影装置2の追尾測量を開始する(撮影位置計測工程)。詳しくは、測量装置3は、移動撮影装置2を追尾しつつ、所定の測量周期ΔTでカメラ11の位置を測量する。なお、測量周期ΔTは撮影周期ΔSよりも短い周期(高周波数)であり、例えば撮影周期ΔS=1~3sに対して測量周期ΔT=20ms~100msで測量を行う。ただし図5では、説明の便宜上、測量周期ΔTを撮影周期ΔSの1/10の周期で示している。
【0062】
そして、測量装置3では、測量する度に、その測量結果(斜距離、水平角、鉛直角)Rの測量時刻に対応する第2の時刻Ttが付与され、測量記憶部53に記憶される。
【0063】
例えば、図5では、追尾開始から3回目の測量結果R3には第2の時刻Tt3が付与され、13回目の測量結果R13には第2の時刻Tt13が付与され、m回目の測量結果Rmには第2の時刻Ttmが付与される。
【0064】
そして、ステップS3において、移動撮影装置2は、飛行計画により定められた撮影を全て終えると飛行を完了する。
【0065】
次のステップ4において、写真測量データ生成部60が、撮影記憶部22に記憶されている各画像P及びこれに対応する第1の時刻Tcからなる複数の画像データと、測量記憶部53に記憶されている各測量結果R及びこれに対応する第2の時刻Ttからなる複数の測量データとを取得し、当該画像データと測量データとの対応付けを行う。詳しくは、写真測量データ生成部60は、画像Pに付与された第1の時刻Tcと適合する第2の時刻Ttの測量結果Rを抽出して、抽出された測量結果Rを画像Pの撮影位置として対応付ける。
【0066】
例えば図5では1枚目の画像P1に対応する第1の時刻Tc1と、測量結果R3に対応する第2の時刻Tt3とが一致していることから、この測量結果R3を画像P1の撮影位置として対応付ける。
【0067】
なお、第1の時刻Tcと第2の時刻Ttとが一致しない場合は、第1の時刻Tcの直前の第2の時刻Ttaと直後の第2の時刻Ttbを適合する第2の時刻とし、これらの第2の時刻Tta、Ttbに対応する測量結果Ra、Rbを内挿した内挿測量結果Riを算出して、当該内挿測量結果Riを対応付けてもよい。
【0068】
次のステップS5において、写真測量データ生成部60は、各画像データの画像P内から複数の特徴点Fを抽出する(写真測量データ生成工程)。
【0069】
そして、ステップS6において、写真測量データ生成部60は、各特徴点の画像上の位置から撮影開始時点からのオフセット時間ΔOを算出する(写真測量データ生成工程)。
【0070】
具体的には図6に示すように、1枚目の画像P1上に3つの特徴点Fa、Fb、Fcが抽出された場合、写真測量データ生成部60は、シャッター枠30の一側長辺30aに対応する画像P1の一側長辺P1aを基準とし、各特徴点Fa、Fb、Fcの当該一側長辺P1aからのオフセット距離ΔD1a、ΔD1b、ΔD1cを、各特徴点の画像上の位置として算出する。
【0071】
そして、露光部分の移動時間に相当する露光開口部33の移動時間Mと画像P1の短辺の長さLに基づき、各オフセット距離ΔD1a、ΔD1b、ΔD1cに対応するオフセット時間ΔO1a、ΔO1b、ΔO1cを算出する(ΔO=ΔD・M/L)。つまり、各オフセット時間ΔO1a、ΔO1b、ΔO1cは、撮影開始時点に対応する画像P1の一側長辺P1aから、図6にて一点鎖線で示している露光開口部33が各特徴点Fa、Fb、Fcに対応する位置を通過した時間である。
【0072】
さらに、ステップS7において、写真測量データ生成部60は、各特徴点撮影位置Rfを算出する(写真測量データ生成工程)。これは具体的には、各画像Pの撮影開始時刻(第1の時刻)Tcにオフセット時間ΔOを加えた特徴点撮影時刻Tfに対応する撮影位置Rを特徴点撮影位置Rfとして算出する。
【0073】
例えば図5では、1枚目の画像P1の撮影時刻Tc1に各特徴点Fa、Fb、Fcのオフセット時間ΔO1a、ΔO1b、ΔO1cを加えた時刻が各特徴点撮影時刻Tf1a、Tf1b、Tf1cとなる。
【0074】
そして、各特徴点撮影時刻Tf1a、Tf1b、Tf1cに適合する第2の時刻Ttの測量結果Rを抽出する。図5では第1の特徴点Faに適合する第2の時刻Tt4の測量結果R4が、第1の特徴点F1aの特徴点撮影位置Rf1aとして算出される。また、第2の特徴点Fbに適合する第2の時刻Tt6の測量結果R6が、第2の特徴点F1bの特徴点撮影位置Rf1bとして算出される。
【0075】
なお、測量結果Rと画像Pの撮影位置との対応付けと同様に、特徴点撮影時刻Tfと第2の時刻Ttとが一致しない場合は、特徴点撮影時刻Tfの直前の第2の時刻Ttaと直後の第2の時刻Ttbを適合する第2の時刻とし、これらの第2の時刻Tta、Ttbに対応する測量結果Ra、Rbを内挿した内挿測量結果Riを算出して、当該内挿測量結果Riを対応付けてもよい。例えば図5では、1枚目の画像P1の第3の特徴点撮影時間Tf1c(=Tc1+ΔO1c)は、第2の時刻Tt8と第2の時刻Tt9との中間時点であることから、内挿した内挿測量結果R8-9が特徴点撮影位置Rf1cとして算出される。
【0076】
続いて、ステップ8において、写真測量データ生成部60は、以上のように算出した各特徴点の特徴点撮影位置を含めた写真測量データを生成する(写真測量データ生成工程)。
【0077】
そして、ステップ9において、写真測量解析部61は、写真測量用データに基づきステレオモデルを生成する等の写真測量解析を行い、当該ルーチンを終了する。
【0078】
以上のように、本実施形態の写真測量システム1及び写真測量方法では、画像の撮影位置だけでなく、当該画像内の各特徴点の撮影位置(特徴点撮影位置)を算出している。これにより、撮像面に対して露光部分が移動して画像を撮影するフォーカルプレーンシャッター方式のカメラ11においても、各特徴点の誤差を解消することができ、このような誤差を解消した特徴点を基準として、写真測量データを生成することで、写真測量の精度を向上させることができる。
【0079】
具体的には、特徴点Fの画像P内の位置とシャッター部19による露光部分の移動時間Mとの関係から画像の撮影開始から特徴点部分が露光されるまでのオフセット時間ΔOを算出し、撮影開始時刻にオフセット時間を加えた特徴点撮影時刻Tfに対応する撮影位置を特徴点撮影位置Rfとして算出することで、正確に特徴点撮影位置Rfを算出することができる。
【0080】
これらのことから、本実施形態の写真測量システム1及び写真測量方法によれば、撮像面に対して露光部分が移動して画像Pを撮影するカメラ11を用いて行う写真測量において、画像P内における特徴点Fの誤差を解消し、写真測量の精度を向上させることができる。
【0081】
以上で本発明の一実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0082】
例えば、上記実施形態では、カメラ11のシャッター部19はフォーカルプレーンシャッターとして説明したが、シャッター部が物理的な遮光幕を有さず、電子的に撮像面の露光部分を移動させるローリングシャッターのカメラにも適用可能であり、その場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0083】
また、上記実施形態では、移動撮影装置2及び測量装置3においてそれぞれGPS時刻を取得して、当該GPS時刻に基づいて撮影された画像Pと測量結果Rとの対応付けを行うことで画像の撮影位置を算出しているが、画像の撮影位置の算出手法はこれに限られるものではない。例えば、移動撮影装置と測量装置とが同精度のタイマを有し、両タイマの同期を取ることで画像と測量結果とを対応付けてもよい。
【0084】
さらに、上記実施形態では、移動撮影装置2における撮影位置を地上に設置した測量装置3により測量しているが、例えば移動撮影装置2に設けられたGPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)により取得した位置情報から画像の撮影位置を計測してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、移動撮影装置2はUAV10を移動体として用いているが、移動体はこれに限られず、例えば、有人の飛行体や、地上を移動する移動体であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 写真測量システム
2 移動撮影装置
3 測量装置
4 解析装置
10 UAV(移動体)
11 カメラ
14 GPSユニット
15 撮影制御部
18 撮像部
19 シャッター部
21 第1の時刻付与部
22 撮影記憶部
43 光波距離計(EDM)
44 測量制御部
52 第2の時刻付与部
53 測量記憶部
60 写真測量データ生成部
61 写真測量解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6