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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ガラス板モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/10 20060101AFI20221004BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20221004BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60J1/10 A
B60R13/04 A
B60J5/04 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017198915
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019073083
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 庸鑑
(72)【発明者】
【氏名】中川 樹代美
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102425356(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第2847404(DE,A1)
【文献】特開2003-260937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0144751(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2858950(FR,A1)
【文献】特開2007-276686(JP,A)
【文献】特開2015-107588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/10
B60R 13/04
B60J 5/04
B60J 10/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両においてスライドする窓ガラスに隣接して取り付けられるガラス板モジュールであって、
ガラス板と、
前記ガラス板の外縁のうち、少なくとも、前記窓ガラスと隣接する一辺に固定されるモール部材と、
前記一辺に沿って延びるように前記モール部材に固定されるガイド部材と、
車外を向くように前記ガイド部材に固定され、車外を向く面の少なくとも一部に意匠が施されている、カバー部材と、を備え、
前記ガイド部材は、少なくとも1つの第1係合部を有し、
前記カバー部材は、少なくとも1つの第2係合部を有し、
前記第1係合部と第2係合部とが係合することで、前記カバー部材が前記ガイド部材に固定され、
前記窓ガラスは、車外側に凸となるように湾曲して、
前記モール部材は、前記一辺に沿う部分に少なくとも1つの押圧部を有し、
前記押圧部が前記第2係合部を前記第1係合部側に押圧するように構成され、
前記ガイド部材と前記カバー部材は、前記窓ガラスをスライド移動可能に保持するガイド部を形成している、ガラス板モジュール。
【請求項2】
前記モール部材が射出成形により成形されることで、前記ガラス板、モール部材、及び前記ガイド部材が一体的に形成されている、請求項に記載のガラス板モジュール。
【請求項3】
前記ガイド部材には少なくとも1つの貫通孔が形成されており、
前記モール部材の一部は、前記ガイド部材の貫通孔を通過して、前記ガイド部材の外周を覆うように形成されている、請求項1または2に記載のガラス板モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、昇降窓と隣接して固定窓が設けられることがある。例えば、特許文献1には、後部ドアに設けられた窓用フレームに、固定窓を有するガラス板モジュールが取付けられ、このガラス板モジュールと隣接するように昇降窓が設けられている。ガラス板モジュールは、固定窓と、昇降窓との境界に配置されるディビジョンバーとを備えており、これら固定窓とディビジョンバーが一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-86708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなディビジョンバーの車外を向く面には、意匠が施されることがある。しかしながら、このディビジョンバーは固定窓とともに一体的に成形されるため、製造中に意匠面に傷が生じる恐れがある。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、車外を向く意匠面に、製造中に傷が生じるのを防止することができる、ガラス板モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両においてスライドする窓ガラスに隣接して取り付けられるガラス板モジュールであって、ガラス板と、前記ガラス板の外縁のうち、少なくとも、前記窓ガラスと隣接する一辺に固定されるモール部材と、前記一辺に沿って延びるように前記モール部材に固定されるガイド部材と、車外を向くように前記ガイド部材または前記モール部材に取り付けられ、車外を向く面の少なくとも一部に意匠が施されている、カバー部材と、を備え、前記ガイド部材と前記カバー部材は、前記窓ガラスをスライド移動可能に保持するガイド部を形成している。
【0006】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記ガイド部材は、少なくとも1つの第1係合部を有し、前記カバー部材は、少なくとも1つの第2係合部を有し、前記第1係合部と第2係合部とが係合することで、前記カバー部材が前記ガイド部材に固定され、前記窓ガラスは、車外側に凸となるように湾曲しているものとすることができる。
【0007】
上記ガラス板モジュールでは、前記モール部材において、前記一辺に沿う部分には、少なくとも1つの押圧部を有し、前記前記カバー部材が前記ガイド部材に固定されたとき、前記押圧部が前記第2係合部を前記第1係合部側に押圧するように構成することができる。
【0008】
上記ガラス板モジュールにおいては、前記第1係合部、前記第2係合部、及び前記押圧部がそれぞれ複数ずつ設けられ、複数の前記第1係合部は、前記一辺に沿って所定間隔をおいて配置され、前記各押圧部は、隣接する前記第1係合部の間に配置することができる。
【0009】
上記ガラス板モジュールにおいては、前記モール部材及びガイド部材の少なくとも一方により、挿入溝が形成され、前記挿入溝の第1の面に前記第1係合部が配置され、前記挿入溝の前記第1の面と対向する第2の面に前記押圧部が配置され、前記カバー部材は、前記第2係合部が設けられた支持部を備えており、当該支持部が前記挿入溝に挿入されるように構成することができる。
【0010】
上記ガラス板モジュールにおいては、前記押圧部が、前記挿入溝の前記第2の面から突出する凸形状を有し、前記第2係合部は前記支持部から突出する突起部を有し、前記挿入溝の幅A、前記挿入溝に挿入される前記支持部の幅B、及び前記押圧部の前記第2の面からの突出高さDの関係が、以下の式を(1)を充足するものとすることができる。
D>A-B (1)
【0011】
上記ガラス板モジュールにおいては、前記支持部から突出する前記第2係合部の突出高さC、及び前記押圧部の前記第2の面からの突出高さDの関係が、以下の式(2)を充足するものとすることができる。
D>C (2)
【0012】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記押圧部の突出長さDは、0.5~8mmとすることができる。
【0013】
上記各ガラス板モジュールにおいては、前記モール部材が射出成形により成形されることで、前記ガラス板、モール部材、及び前記ガイド部材を一体的に形成することができる。
【0014】
上記各ガラス板モジュールにおいては、前記ガイド部材には少なくとも1つの貫通孔が形成されており、前記モール部材の一部は、前記ガイド部材の貫通孔を通過して、前記ガイド部材の外周を覆うように形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るガラス板モジュールによれば、車外を向く意匠面に、製造中に傷が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられる車両の後部付近の図である。
図2図1のガラス板モジュールを車体外部から見た平面図である。
図3】カバー部材を取り外したガラス板モジュールの平面図である。
図4図3のC-C線断面図である。
図5図3のD-D線断面図である。
図6図2のA-A線断面図である。
図7図2のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガラス板モジュールを車両の後部に固定窓に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられる車両の後部付近の図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス板モジュール10は、車体側面の後部ドア5に配置されている。この後部ドア5は、ドア本体51と、その上部に設けられた窓用フレーム52と、を備えている。窓用フレーム52は、前柱521、後柱522、及びこれらの上端同士を連結する連結部523を有している。前柱521は概ね鉛直方向に延びているが、後柱522は上方にいくにしたがって前方に傾斜するように延びている。また、連結部523は概ね水平に延びている。そして、この窓用フレーム52内には、上記ガラス板モジュール10と、その前側にある昇降窓(窓ガラス)20と、が配置されている。
【0019】
ガラス板モジュール10は、ドア本体51の後端部付近に接する下縁部101、窓用フレーム52の後柱522に接する後縁部102、及び昇降窓20に接する前縁部103を有する三角形状に形成されている。このうち、後縁部102は、後柱522の下端から中央付近まで延びている。また、前縁部103は、前柱521と平行に概ね鉛直方向に延びている。そして、昇降窓20は、窓用フレーム52の前柱521、連結部523、後柱522の中央から上端まで、及びガラス板モジュール10の前縁部103に接するような形状に形成されている。また、この昇降窓20は、前柱521及びガラス板モジュール10の前縁部103にガイドされつつ、昇降するようになっている。なお、昇降窓20を昇降させるためのレギュレータ(図示省略)は、ドア本体51に内蔵されている。
【0020】
<1.ガラス板モジュールの概要>
続いて、ガラス板モジュール10について詳細に説明する。図2はガラス板モジュールを車体外部から見た平面図である。図2に示すように、このガラス板モジュール10は、ガラス板1と、このガラス板1の周縁に沿って取り付けられたモール部材2と、モール部材2の一部に取り付けられたガイド部材3と、このガイド部材3に対向するように車外を向くように取り付けられたカバー部材4と、を備えている。まず、ガラス板1から説明する。
【0021】
<1-1.ガラス板>
図2に示すように、ガラス板1は、前辺11、後辺12、及び下辺13を輪郭とする三角形状に形成されている。前辺11は昇降窓20と隣接し、後辺12は後柱と隣接し、下辺はドア本体に隣接している。
【0022】
ガラス板1としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0023】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al23:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.08~0.14質量%
【0024】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT-Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0025】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al23:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
23:0~5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.02~0.03質量%
【0026】
本実施形態に係るガラス板1の厚みは特には限定されないが、2.4~7.0mmとすることが好ましく、2.8~5.0mmとすることがさらに好ましい。
【0027】
<1-2.モール部材>
モール部材2は、ガラス板1と車体との隙間を埋めるものであり、ガラス板1の周縁全体に亘って形成されている。ここでは、モール部材2において、ガラス板1の前辺11、後辺12、及び下辺13に対応する部分を、前縁部201、後縁部202、及び下縁部203と称することとする。このうち、ガイド部材3及びカバー部材4が取り付けられる前縁部201については、後に詳述する。
【0028】
また、ガラス板モジュール10が車体に取り付けられたとき、モール部材2の後縁部202及び下縁部203が、窓用フレーム52の後柱522及びドア本体51にそれぞれ、接着剤などによって固定され、これによって、窓用フレーム52の後部がガラス板1で覆われるようになっている。
【0029】
このモール部材2を構成する材料は特には限定されないが、例えば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)で形成することができる。その他、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)によって形成することができる。
【0030】
<1-3.ガイド部材>
次に、ガイド部材3及びモール部材2の前縁部について、図3図5も参照しつつ説明する。図3はカバー部材を取り外したガラス板モジュールの平面図、図4図3のC-C線断面図、図5図3のD-D線断面図である。
【0031】
図3図5に示すように、ガイド部材3は、モール部材2の前縁部201に沿って延びており、昇降窓20をガイドするために、前縁部201よりもさらに下方に、ドア本体51の内部まで延びている。ガイド部材3は、ガラス板1よりも車内側に配置され、ガラス板1と平行に板状に延びる基板部31と、この基板部31の端部から起立する延在部32とを有する断面L字状に形成されている。延在部32は、ガラス板1の厚み方向に延びるように、ガラス板1の前辺11から所定間隔をおいて配置されている。一方、基板部31は、ガラス板1とほぼ平行に、ガラス板1から離れる方向に延びている。そして、このガイド部材3は、モール部材2の前縁部201に支持されているように配置されている。
【0032】
具体的には、モール部材2の前縁部201は、基板部31の車内側の面を覆う板状の第1部位21と、延在部32のガラス板1側の面及び車外側の端面を覆う第2部位22と、断面半円状の複数の押圧部23と、を有し、これらが一体的に形成されている。第2部位22は、ガラス板1の前辺11側に延び、ガラス板1の前辺11を車内側及び車外側から挟むような形状に形成されている。特に、第2部位22の車外側の部分は、延在部32及びガラス板1の車外側の面を覆い、車外側を向く面が平坦な支持面221を構成している。押圧部23については、後述する。
【0033】
ガイド部材3の説明を続ける。基板部31と延在部32との連結部分には、前縁部201に沿ってガラス板側に延びる突出部33が形成されている。各突出部33は、板状に形成され、モール部材2の第2部位22の内部に埋め込まれている。
【0034】
基板部31の車外側の面には、矩形の板状に形成された複数の第1係合部34が配置されている。各第1係合部34は、前縁部201に沿って所定間隔をおいて配置されており、延在部32と平行に延びている。これにより、延在部32と第1係合部34との間には隙間が形成されている。各第1係合部34には、貫通孔341が形成されており、後述する第2係合部421が係合するようになっている。また、基板部31には、隣接する第1係合部34の間に、貫通孔35が形成されている。各貫通孔35は、基板部31と延在部32との連結部分付近に形成されている。なお、延在部32と第1係合部34との間の隙間が、本発明の挿入溝を構成する。
【0035】
図5に示すように、各貫通孔35には、上述したモール部材2の押圧部23が挿入されている。より詳細に説明すると、複数の押圧部23は、ガイド部材3の延在部32を挟んで、第2部位22と反対側に配置されている。そして、各押圧部23は、第2部位22の車外側の端部から延在部32に沿って延び、上述した貫通孔35を通過して、第1部位21に連結されている。モール部材2の第1部位21、第2部位22、及び押圧部23は、一体的に形成されているため、これらによって、ガイド部材3の延在部32の外周が複数箇所において囲まれるようになっている。その結果、ガイド部材3は、モール部材2に強固に固定される。
【0036】
なお、ガイド部材3を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、強化繊維を含有したポリプロピレンを使用することができる。そして、例えば、モール部材2をTPOで形成すると、ガイド部材3とモール部材2とは、後述する射出成形時に熱融着するため、両者を、より強固に固定することができる。
【0037】
<1-4.カバー部材>
次に、カバー部材4について、図6及び図7も参照しつつ説明する。図6図2のA-A線断面図、図7図2のB-B線断面図である。図3図6,及び図7に示すように、カバー部材4は、モール部材2の前縁部201に沿って延びる板状の本体部41と、この本体部41の一方の面から垂直に延びる板状の支持部42と、を備え、断面T字状に形成されている。本体部41は、ガイド部材3の基板部31と平行に車外側に配置され、モール部材2の前縁部201の支持面221に設置される。そして、本体部41の車外側を向く面411には、意匠が施されている。一方、支持部42は、本体部41の車内側の面から垂直に延び、上述したガイド部材3の延在部32と、第1係合部34との間に挿入される。また、支持部42には、所定間隔をおいて凸状の第2係合部421が形成されており、この第2係合部421が上述した第1係合部34の貫通孔341に嵌まるようになっている。
【0038】
このとき、支持部42は、モール部材2の押圧部23によって第1係合部34側に押圧されるになっている。そのため、延在部32と第1係合部34との隙間の距離A(図4参照)、支持部42の厚みB(図6参照)、支持部42から突出する第2係合部421の突出高さC(図6参照)、押圧部23の延在部32からの突出高さD(図5参照)が、以下の関係を充足するようになっている。
D>A-B>0 (1)
D>C (2)
これにより、支持部42が、延在部32と第1係合部34との間に強固に固定される。具体的には、延在部32と第1係合部34との隙間の距離Aは、1.5~9mmであることが好ましく、支持部42の厚みBは、1~8mmであることが好ましい。また、押圧部23の突出高さDは、0.5~8mmであることが好ましく、第2係合部421の突出高さCは、0.3~7mmであることが好ましい。なお、上記式(1)(2)は、両方とも充足されていてもよいが、少なくとも式(1)が充足されていればよい。
【0039】
このようにカバー部材4が取り付けられると、図6及び図7に示すように、カバー部材4の本体部41、支持部42、及びガイド部材3の基板部31によって断面U字状のガイド空間(ガイド部)50が形成される。そして、このガイド空間50に、昇降窓20が嵌め込まれ、昇降窓20はガイド空間50に沿って昇降する。なお、ガイド空間50には、図示を省略するが、ガラスランなどのゴム製品が配置され、このゴム製品に昇降窓20が接触しつつスライドするようにすることができる。これにより、昇降窓20とガラス板モジュール10との隙間を埋めることができ、車内への雨などの進入を防止することができる。
【0040】
<2.ガラス板モジュールの製造方法>
上述したガラス板モジュール10の製造方法は特には限定されないが、例えば、以下のように製造することができる。例えば、ガラス板1及びガイド部材3を成形型に配置し、射出成形によって、モール部材2を成形することができる。これにより、図3に示すような中間部材が形成される。その後、この中間部材を後部ドア5に固定した後、カバー部材4を中間部材に取り付ける。すなわち、カバー部材4の支持部42を、ガイド部材3の延在部32と第1係合部34との間に挿入し、第2係合部421を第1係合部34の貫通孔341に嵌め込む。こうして、カバー部材4の取り付けが完了する。なお、カバー部材4を中間部材に先に取り付けて、ガラス板モジュール10を構成した後、これを後部ドア5に取り付けることもできる。
【0041】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)意匠が施されたカバー部材4を、事後的にモール部材2及びガイド部材3に固定できるように構成されている。したがって、傷が生じやすい、モール部材2の成形時には、カバー部材4が取り付けられていない。よって、製造時にカバー部材4に傷が生じるのを防止することができる。特に、カバー部材4には意匠が施されているため、傷が付きやすい工程を経ることなく、カバー部材4を取り付けることができることは大きい意義がある。
【0042】
(2)カバー部材4は取り付けるには、支持部42を延在部32と第1係合部34との間に挿入し、第1係合部34の貫通孔341に第2係合部421を嵌め込むだけでよいため、カバー部材4の取付を容易に行うことができる。特に、モール部材2には押圧部23が設けられているため、支持部42を延在部32と第1係合部34との間に強固に挟むことができる。その結果、カバー部材4をガイド部材3及びモール部材2に強固に取付けることができる。但し、押圧部23は前縁部201の全体に亘って形成されておらず、所定間隔をおいて形成されているため、支持部42の挿入には大きい力を要さない。
【0043】
(3)昇降窓20は、カバー部材4とガイド部材3との間のガイド空間50にガイドされながら昇降するが、昇降窓20は湾曲しているため、カバー部材4は、昇降窓50から車外へ押し出すような荷重を受ける。しかしながら、上記のように、カバー部材4はガイド部材3及びモール部材2に強固に取付けられているため、昇降窓20に押圧されても、カバー部材4が外れるのを防止することができる。
【0044】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は適宜組合せが可能である。
【0045】
<4-1>
モール部材2は、前記ガラス板の全周に亘って形成されていなくてもよく、少なくともガイド部材が取り付けられる前縁部201が形成されていればよい。
【0046】
<4-2>
ガラス板1の形状は特には限定されず、上記のような三角形状以外でも多角形状、円形など、種々の形状にすることができる。そして、昇降窓20と隣接する一辺に、上述したモール部材2、ガイド部材3、及びカバー部材4が設けられていればよい。
【0047】
<4-3>
上記実施形態におけるカバー部材4の取付けにおいて、第1係合部34、押圧部23、貫通孔35、第2係合部421の形状は一例でありは、他の形状であってもよい。例えば、押圧部23は、上述したような断面半円状のほか、種々の形状にすることができ、断面三角形状等のように支持部42に近づくにしたがって幅が細くなるような形状であってもよい。このような形状とすることで、カバー部材4の支持部42を押圧部23と第1係合部34との間に嵌め込みやすくなる。あるいは、押圧部23を前縁部201の全体に亘って設けることもできる。また、押圧部23やこれを固定する貫通孔35、あるいはガイド部材の突出部33は必須ではなく、設けなくてもよい。押圧部23を設けない場合には、第1係合部34と延在部32との間の距離を調整する必要がある。
【0048】
<4-4>
カバー部材4をモール部材2及びガイド部材3に事後的に取り付けることができる方法であれば、特には限定されない。したがって、上述したように、第1係合部34及び第2係合部421を係合させる以外の方法を採用することもできる。
【0049】
<4-5>
カバー部材の意匠面411に施される意匠は、特には限定されない。模様、凹凸、色などを付するほか、単に平坦であってもよく、要するに、車外に露出する面として適切なデザインが施されていればよい。
【0050】
<4-6>
上記実施形態では、昇降窓(窓ガラス)20が車外側に湾曲しているが、湾曲の程度や方向は特には限定されない。また、湾曲していない平坦な昇降窓を用いることもできる。さらに、本発明のガラス板モジュールのガラス板は湾曲していてもよいし、平坦であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス板
2 モール部材
23 押圧部
3 ガイド部材
34 第1係合部
35 貫通孔
4 カバー部材
421 第2係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7