IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図1
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図2
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図3
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図4
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図5
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図6
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図7
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図8
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図9
  • 特許-連続遠心分離機及びその運転方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】連続遠心分離機及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B04B 9/08 20060101AFI20221004BHJP
   B04B 15/02 20060101ALI20221004BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20221004BHJP
   B04B 11/04 20060101ALI20221004BHJP
   B04B 1/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B04B9/08
B04B15/02
B04B13/00
B04B11/04
B04B1/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018003188
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019122887
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小村 崇人
(72)【発明者】
【氏名】戸井 寛厚
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082567(JP,A)
【文献】特開2006-021121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分離するための円筒状のロータと、
前記ロータを回転させる駆動部と、
前記ロータに連結され内部に試料通過穴を有する回転軸と、
前記ロータの貫通穴と連通する貫通穴を有し、前記回転軸の先端に接触および離間状態
を制御可能なメカニカルシールと、
前記メカニカルシールを収納し、且つ冷却水が供給される収容室と、
前記収容室から冷却水を抜く冷却水ラインを有し、
前記メカニカルシールと前記回転軸の連通した貫通穴から前記ロータに試料を連続的に
供給および排出可能な試料循環ラインと、を備えた連続遠心分離機において、
前記メカニカルシールと前記回転軸を離間させる方向に移動可能な分離手段を設け、
前記ロータの回転中であって前記試料循環ラインが停止中に、前記冷却水ラインを介して前記収容室から冷却水を抜き、且つ、前記分離手段によって前記メカニカルシールと前記回転軸を離間させることを特徴とする連続遠心分離機。
【請求項2】
前記ロータの回転速度があらかじめ設定された閾値速度以上の時に、前記回転軸と前記メカニカルシールを離間させることを特徴とする請求項1に記載の連続遠心分離機。
【請求項3】
前記ロータが回転して整定状態にある際に、前記メカニカルシールと前記回転軸を離間させた状態で遠心分離運転を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の連続遠心分離機。
【請求項4】
前記回転軸は、前記ロータの軸方向上側に連結された上側回転軸と、軸方向下側に連結された下側回転軸を有し、
前記メカニカルシールは、前記上側回転軸に接触可能な上側メカニカルシールと、前記下側回転軸に接触可能な下側メカニカルシールを有することを特徴とする請求項に記載の連続遠心分離機。
【請求項5】
前記冷却水ラインに高圧エアを流入させる高圧エア供給手段を設け、
前記回転軸と前記メカニカルシールを離間させる際及び接触させる際には、前記冷却水ラインを停止してから前記高圧エアを前記冷却水ラインに流入させて前記収容室から前記冷却水を除去した後に、前記メカニカルシールを移動させることを特徴とする請求項4に記載の連続遠心分離機。
【請求項6】
前記分離手段は、前記メカニカルシールを保持すると共に前記高圧エアによって前記回転軸の軸方向に所定距離だけ移動可能なシールホルダを有することを特徴とする請求項5に記載の連続遠心分離機。
【請求項7】
前記分離手段として、前記ロータの軸方向の上側メカニカルシールを移動させる上側移動手段と、前記ロータの軸方向下側の下側メカニカルシールを移動させる下側移動手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の連続遠心分離機。
【請求項8】
前記上側移動手段と前記下側移動手段は同期して稼働されることを特徴とする請求項7に記載の連続遠心分離機。
【請求項9】
遠心分離運転中に、前記回転軸と前記メカニカルシールを接触させたまま全運転を行う第1の運転モードと、前記分離手段を用いて前記回転軸と前記メカニカルシールを離間させる区間を有する第2の運転モードを設け、
前記第1又は第2の運転モードのいずれかを予め選択可能としたことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の連続遠心分離機。
【請求項10】
試料を分離するための円筒状のロータと、前記ロータを回転させる駆動部と、前記ロータの軸方向に連結され内部に貫通穴を有する回転軸と、前記回転軸と連通する試料供給穴を有し前記回転軸の先端に接触および離間可能なメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの収容空間内に冷却水を満たすように前記冷却水を循環させる冷却水ラインを設け、
前記メカニカルシールおよび前記回転軸の連通した貫通穴から前記ロータに試料を連続的に供給および排出する試料循環ラインを備えた連続遠心分離機において、
前記メカニカルシールと前記回転軸を接触状態にしてから前記試料循環ラインを稼働させて前記ロータに試料を供給しながら前記ロータの加速を行い、さらに、前記収容空間を前記冷却水で満たすようにし、
前記ロータの回転速度が規定の回転速度に達して整定したら、前記試料循環ラインを停止させて前記収容空間から前記冷却水を排出させ、前記メカニカルシールと前記回転軸を離間させ、
前記離間させた状態で設定された運転時間の遠心分離運転を行うことを特徴とする連続遠心分離機の運転方法。
【請求項11】
設定された前記運転時間の遠心分離運転が終了したら、前記メカニカルシールと前記回転軸を接触させた後に前記ロータの減速を開始して前記ロータを停止させることを特徴とする請求項10に記載の連続遠心分離機の運転方法。
【請求項12】
前記メカニカルシールと前記回転軸が離間状態にあるときは、前記冷却水を排出させたままとすることを特徴とする請求項10又は11に記載の連続遠心分離機の運転方法。
【請求項13】
前記回転軸を離間させた後に、前記収容空間内に高圧のエアを供給して前記回転軸を乾燥させることを特徴とする請求項12に記載の連続遠心分離機の運転方法。
【請求項14】
前記ロータの加速中及び減速中は、前記試料循環ラインを用いて前記試料が供給中か停止中かの状態にかかわらずに、前記回転軸と前記メカニカルシールを接触させた状態として前記冷却水ラインを運転することを特徴とする請求項13に記載の連続遠心分離機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転中に液体試料を連続的に流すことができる連続遠心分離機に関し、特にロータと試料循環ラインの接続機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
連続遠心分離機は、上下に接続される貫通穴を有した2本の回転軸を有するロータを用いて、回転中のロータに対して液体試料を注入し、定められた時間だけ一定速度でロータを回転させ、液体試料には強い遠心力をかけることにより密度に応じた分離を行うものである。この際の加速度(遠心加速度)は、重力加速度Gを単位として数万G以上となる場合もあり、この場合には、特にロータの回転速度を高速とするため、ロータは、真空排気されたロータ室に設けられる場合が多い。
【0003】
こうした連続遠心分離機の構成は、例えば特許文献1に記載されている。ここで図7を用いて、従来の連続遠心分離機100の全体構成を説明する。図7において連続遠心分離機100は、大きく分けて、液体試料の遠心分離処理を行う分離ユニット110と、分離ユニット110の運転制御を行う制御ユニット150により構成される。両者は、配管や電源ケーブル等で構成された配管群151で接続されている。
【0004】
分離ユニット110においては、液体試料を内部に保持するロータ135が、円筒形状のチャンバ111内にセットされ、駆動部112によって回転する。駆動部112はモータを含んで構成され、吊り下げた状態にてロータ135を回転させる。チャンバ111はベース113上に固定され、その内部にロータ135を収容する。ロータ135及び駆動部112は、ベース113に固定されたリフト114を用いて上下方向と前後方向で移動可能とされ、ロータ135のチャンバ111への収容、あるいはロータ135のチャンバ111からの取り出しは、リフト114を操作することによって行われる。図7では、ロータ135をチャンバ111から取り出した状態を示しており、この状態は、遠心分離運転準備中のロータ135の回転停止状態に対応している。分離ユニット110は、回転中にもロータ135中に液体試料が連続的に供給できるような構成である。ロータ135の軸方向上下には内部に貫通穴を有する2本の回転軸たるアッパーシャフト115とロアシャフト116が設けられ、液体試料はアッパーシャフト115、ロアシャフト116を介してロータ135中を連続的に流すことが可能である。アッパーシャフト115は、駆動部112に接続されロータ135を回転させる回転軸を兼ねている。この回転軸(アッパーシャフト115)は鉛直方向に沿った形態とされる。
【0005】
ロータ135は、例えば35000~40000rpmの高速で回転駆動されるため、大気との風損や摩擦熱による発熱を抑える目的でチャンバ111の内部は減圧された状態に保たれる。チャンバ111の内部を減圧するために、内部の空気を排出する図示せぬ排出口がチャンバ111の胴部に形成され、図示しない真空ポンプが接続される。さらに、チャンバ111の内部は、所定の温度に冷却するための図示しない冷凍機が接続される。チャンバ111は複数のボルトにてベース113に固定され、ベース113は複数のボルトにより床面に固定される。
【0006】
制御ユニット150には、チャンバ111内部の遠心室全体を冷却するための図示せぬ冷凍機、チャンバ111内部の遠心室を減圧された状態にするための図示せぬ真空ポンプ、ロータ135を所定の場所に移動させるリフト駆動を制御し、駆動部112に含まれるモータの回転制御を行う図示せぬ制御部が収容される。制御ユニット150の筐体の上部には、操作者が操作及び入力を行い、操作者に対して情報の表示を行うための操作パネル155が配置される。制御部は、図示しないマイクロコンピュータ、記憶装置を含んだ電子回路で構成され、ロータ135の回転制御を含む連続遠心分離機全体の制御を行う。
【0007】
図8は、分離ユニット110のロータ135がチャンバ111に収容された状態を示す断面図であり、回転軸(アッパーシャフト115とロアシャフト116)に沿った鉛直方向の断面を示している。この状態は、図7とは異なり、ロータ135が収容された遠心分離処理時の形態に対応している。チャンバ111の上側の開口は、駆動部112に固定されたアッパープレート117によって封止される。これにより、チャンバ111内には遠心室111Aが形成され、遠心室111A内でロータ135が高速で回転する。
【0008】
ロータ135は、円筒形のロータボディ136と、その上下にネジ込み式で取り付けられる上下のロータカバー137、138を有する。ここで、上下のロータカバー137、138の軸中心には試料通過穴がそれぞれ形成される。ロータカバー137は駆動部112と接続されたアッパーシャフト115が取り付けられる構造であり、ロータカバー138はロアシャフト116が取り付けられる構造である。アッパーシャフト115は、中空であって、内部に試料通過穴が形成され、上側に設けられた上側配管接続部120内部の試料通過穴と連通される。上側で駆動部112に装着されるアッパーシャフト115は、駆動部112内に設けられた図示しない軸受で回転自在に支持される。駆動部112の上側には上側シール部121が設けられ、上側配管接続部120及びアッパーシャフト115の内部が外気に曝されないように封止される。
【0009】
ロアシャフト116は中空であって、内部に試料通過穴が形成される。ロータ135の下側においてはロアシャフト116の試料通過穴が、下側配管接続部122と接続され、ベース113に固定された下側シール部123によって、下側配管接続部122及びロアシャフト116の内部が封止される。ロアシャフト116は、下側シール部123内に設けられ図示しない軸受で回転自在に支持される。駆動部112に含まれる図示しないモータの駆動によってアッパーシャフト115が高速回転され、アッパーシャフト115に取り付けられるロータ135と、ロータ135に取り付けられるロアシャフト116が共に高速回転する。アッパーシャフト115とロアシャフト116の軸中心には、試料通過穴がそれぞれ貫通し、これらの試料通過穴は、ロータカバー137、138に形成された試料通過穴と連通してロータボディ136の内部と連通する。
【0010】
分離ユニット110は、遠心分離を行う液体試料を貯蔵する試料タンク140と、試料タンク140に貯蔵された液体試料をロータへ注入するための試料供給手段たる試料送液ポンプ141と、排出された上澄み液を回収するための液体試料回収タンク142を有する。試料タンク140内の液体試料は、試料ライン129Aを通り試料送液ポンプ141によって下側配管接続部122を経由してロータ135の内部に導入され、高速回転するロータ135によって遠心分離され、遠心分離によって半径方向の内側に貯まった上澄み液がアッパーシャフト115および上側配管接続部120を経由し、試料ライン129Bを通り液体試料回収タンク142へと回収される。このようにして、試料の循環ラインが形成される。
【0011】
図9は上側シール部121付近の構造を示す断面図である。図9において、アッパーシャフト115の上端にはシャフトヘッド124が固定される。シャフトヘッド124の内周部に雌ネジが形成され、アッパーシャフト115の先端に形成された雄ネジと螺合される。シャフトヘッド124は外側から上側シール部121に固定されたリップシール125Aで回転自在に支持され、メカニカルシール128Aと接触し、摺動しながら回転することで流路を形成する機能を果たす。またリップシール125Aによって駆動部112内、およびチャンバ111内の図示しない真空部分と大気部分を分断する機能を果たす。上側配管接続部120は接続ブロック126Aに固定され、上側配管接続部120の内部は、その下側に位置するシールホルダ127Aの内部と連通する。接続ブロック126Aは上側シール部121に固定され、この際、シャフトヘッド124の上端部とシールホルダ127Aの間はメカニカルシール128Aが取り付けられ、シールホルダ127Aがスプリング130Aのバネ圧により常に一定の圧力でシャフトヘッド124に押し付けられる。これにより上側配管接続部120及びアッパーシャフト115の内部が封止され試料ライン129Aが形成され、かつ上側配管接続部120を固定させた状態でアッパーシャフト115を円滑に回転させることができる。
【0012】
上側配管接続部120には試料を通過させる管を装着することができる。また、シャフトヘッド124の上端部とメカニカルシール128Aの接触部を冷却するために、上側シール部121の側面には冷却水を注入するための接続口145Aが設けられ、冷却水ライン148Aが上側シール部121内部に接続されることにより、冷却水がシャフトヘッド124とメカニカルシール128Aの接触部周辺の空間たる冷却室146Aを満たし、またシールホルダ127A及びスプリング130Aの周囲を冷却しつつ上昇し、接続ブロック126Aに設けられた排出のための接続口147Aより排出される。冷却水ライン148Aを流れる冷却水は、制御ユニット150内部に設置された図示しない冷却水タンクに貯蔵されており、同じく図示しない冷却水ポンプにより供給される。
【0013】
図10は下側シール部123付近の構造を示す断面図である。下側シール部123付近は、図9の上側シール部121付近の構成を上下反転させたような構造である。即ち、図9におけるリップシール125B、下側配管接続部122、接続ブロック126B、シールホルダ127B、下側シール部123、メカニカルシール128B、試料ライン129B、スプリング130B、冷却水ライン148Bの関係は、それぞれ図9におけるリップシール125A、上側配管接続部120、接続ブロック126A、シールホルダ127A、上側シール部121、メカニカルシール128A、試料ライン129A、スプリング130B、冷却水ライン148Aの関係を上下方向で反転させたものとなっている。またロアシャフト116は直接メカニカルシール128Bと接触している。このため、上記と同様に、下側配管接続部122及び中空のロアシャフト116の内部が封止され、かつ下側配管接続部122を固定させた状態でロアシャフト116を円滑に回転させることができる。下側配管接続部122には試料を通過させる管を装着することができる。冷却水は、接続ブロック126Bに設けられた注入のための接続口145Bより矢印148Bで示す方向に注入され、シールホルダ127B及びスプリング130Bの周囲を冷却しつつ上昇し、接触部の周辺の収容空間たる冷却室146Bを満たし、下側シール部123に設けられた排出のための接続口147Bより矢印148Bで示す方向に排出される。
【0014】
以上のように図9図10に示された構成によって、アッパーシャフト115、ロアシャフト116及びこれらに接続されたロータ135を回転させた状態で、アッパーシャフト115、ロアシャフト116の内部に連続的に試料を流すことができる。このため、上側配管接続部120、下側配管接続部122に外部から試料供給用の管を装着すれば、一方からロータ135内に試料を供給し、他方から試料やロータ135内の空気を排出することができる。通常は、鉛直方向下側にある下側配管接続部122が試料を供給する側とされ、鉛直方向上側にある上側配管接続部120が試料を排出する側とされるが、この関係を逆にして、試料を流す方向(129A、129B)を逆向きにしても良い。
【0015】
運転時には、(1)回転中のロータ135に対して下側配管接続部122を通して試料を流し、上側配管接続部120から排出し続ける運転、又は、(2)回転中のロータ135に対し下側配管接続部122を通して定量の試料を注入した後、上側配管接続部120から試料が排出されることを確認してロータ135内を試料で満たし、試料の流れを停止した後に定められた時間回転する方法等、いくつかの運転パターンがある。運転時には、分離ユニット110から配管群151を介してロータ135の回転速度や温度、駆動部112内部の温度やチャンバ111内部の真空の状況等が送られ、制御ユニット150内部の図示しない制御部(制御装置)により監視、制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2004-322054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の連続遠心分離機では、回転中の試料の注入、取出しを可能とするため高速で回転する中空のシャフトと、シャフトの先端に押し付けられる回転しない中空のメカニカルシールの物理的接触により流路を形成している。シャフトとメカニカルシールは常に接触しながら摺動することで遠心分離する試料が外部に漏れることを防ぎつつ流路を形成する。高い遠心性能を得るためにロータの回転速度を高速にすると、シャフトとメカニカルシールの接触部の摺動速度は高速となる。そのため、通常メカニカルシールには耐熱性を持ち、摩擦係数の低い樹脂材を用いる。しかしながら、シャフトとメカニカルシールは、運転時に常に接触し続けているため、更なる高速化は摩耗を促進させて、寿命が短くなる虞がある。また、シャフトとメカニカルシールの接触部での発熱の影響を防ぐため、周囲に冷却水を流し冷却しているが、さらなる高速化を実現し、さらなる長時間の運転をおこなえば、発熱がシャフトやメカニカルシールおよび内部の試料に悪影響を与えることが懸念される。
【0018】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャフトとメカニカルシールの接触、離間状態を自在に切り替える機能を有する連続遠心分離機及びその運転方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ロータの回転速度に合わせシャフトとメカニカルシールの接触、離間状態および冷却水とクリーンエアの切り替えを自動で行うようにした連続遠心分離機及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、試料を分離するための円筒状のロータと、ロータを回転させる駆動部と、ロータに連結され内部に試料通過穴を有する回転軸と、ロータの貫通穴と連通する貫通穴を有し、回転軸の先端に接触および離間状態を制御可能なメカニカルシールと、メカニカルシールと回転軸の連通した貫通穴からロータに試料を連続的に供給および排出可能な試料循環ラインと、を備えた連続遠心分離機において、メカニカルシールと回転軸を離間させる方向に移動可能な分離手段を設け、ロータの回転速度があらかじめ設定された閾値速度以上で、かつ、試料循環ラインが停止中の場合に、分離手段によってメカニカルシールと回転軸を離間させるようにした。つまり、ロータの回転による試料にかかる遠心加速度が重力加速度以上の時に、回転軸とメカニカルシールを離間させる。また、ロータが回転して際にメカニカルシールと回転軸を離間させ、その状態で長時間の遠心分離運転を行う。このように本発明ではロータの回転速度と試料循環ラインの運転状態に応じて、回転軸とメカニカルシールの接触および離間状態、冷却水ラインの運転状態を制御するようにした。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、ロータの回転状態と試料循環ラインの運転状態に応じて、分離手段によるメカニカルシールの離間方向への移動と、メカニカルシールの収容室から冷却水を抜く冷却水ラインを設けた。ロータの回転軸は、ロータの軸方向上側に連結された上側回転軸と、軸方向下側に連結された下側回転軸を有する。メカニカルシールは、上側回転軸に接触可能な上側メカニカルシールと、下側回転軸に接触可能な下側メカニカルシールを有する。また、冷却水ラインに高圧エアを流入させる高圧エア供給手段を設け、回転軸とメカニカルシールを離間させる際及び接触させる際には、冷却水ラインを停止してから高圧エアを冷却水ラインに流入させて収容室から冷却水を完全に除去した後に、メカニカルシールを移動させるようにした。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、分離手段は、メカニカルシールを保持すると共に高圧エアによって回転軸の軸方向に所定距離だけ移動可能なシールホルダを設けた。また、分離手段として、ロータの軸方向の上側メカニカルシールを移動させる上側移動手段と、ロータの軸方向下側の下側メカニカルシールを移動させる下側移動手段を設けた。上側移動手段と下側移動手段は同期して稼働させると良い。さらに、遠心分離運転中に、回転軸とメカニカルシールを接触させたまま全運転を行う第1の運転モードと、分離手段を用いて回転軸とメカニカルシールを離間させる区間を有する第2の運転モードを設け、本発明の連続遠心分離機は第1又は第2の運転モードのいずれかをユーザによって予め選択して設定可能とした。
【0022】
本発明のさらに他の特徴によれば、メカニカルシールおよび回転軸の連通した貫通穴からロータに試料を連続的に供給および排出する試料循環ラインを備えた連続遠心分離機において、メカニカルシールと回転軸を接触状態にしてから試料循環ラインを稼働させてロータに試料を供給しながらロータの加速を行い、ロータの回転速度が規定の回転速度に達して整定したら、試料循環ラインを停止させてメカニカルシールと回転軸を離間させ、離間させた状態で設定された運転時間の遠心分離運転を行うようにした。回転軸とメカニカルシールの接触および離間の制御にスプリング圧力とエア圧力を使用すると良い。また、回転軸とメカニカルシールの離間状態のとき、回転軸とメカニカルシール間が5mm以上の間隔を保つようにすると良い。
【0023】
本発明のさらに他の特徴によれば、設定された運転時間の遠心分離運転が終了したら、メカニカルシールと回転軸を接触させた後にロータの減速を開始してロータを停止させる。また、メカニカルシールの収容空間内に冷却水を満たすように冷却水を循環させる冷却水ラインを設け、メカニカルシールと回転軸が接触状態にあるときには収容空間を冷却水で満たすようにした。さらに、回転軸を離間させる前には収容空間から冷却水を排出させるようにし、メカニカルシールと回転軸が離間状態にあるときは収容空間に冷却水が無い状態とする。さらに、回転軸を離間させた直後には、収容空間内に高圧のエアを供給して回転軸を乾燥させる。ロータの加速中及び減速中は、試料循環ラインを用いて試料が供給中か停止中かの状態にかかわらずに、回転軸とメカニカルシールを接触させた状態として冷却水ラインを運転すると良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の構成により、連続遠心分離機において回転軸とメカニカルシールの接触および離間を自在に制御可能としたので、メカニカルシールの長寿命化を達成できる。
また、本発明により回転軸とメカニカルシールが離間状態になる前にクリーンなエアを流入させて回転軸とメカニカルシール当接部付近の冷却水を除去することで、試料への冷却水の混入リスクを防き、信頼性の高い連続遠心分離機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例に係る連続遠心分離機1の上側シール部付近の構造を示す断面図であって、(1)は接続ブロック226Aへのシールホルダ227Aの移動用エアの供給を停止した状態を示す図であり、(2)は接続ブロック226Aへのシールホルダ227Aの移動用エアの供給をしている状態を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る連続遠心分離機1の下側シール部付近の構造を示す断面図であって、(1)は接続ブロック226Bへのシールホルダ227Bの移動用エアの供給を停止した状態を示す図であり、(2)は接続ブロック226Bへのシールホルダ227Bの移動用エアの供給をしている状態を示す図である。
図3】本実施例の連続遠心分離機1における分離ユニット110における上側シール部221付近の配管状況を示す図である。
図4】本実施例の連続遠心分離機1における分離ユニット110における下側シール部223付近の配管状況を示す図である。
図5】本実施例の連続遠心分離機1の運転状態と各部の制御を説明するための図である。
図6】本実施例の連続遠心分離機1の運転状態に応じた制御モードの切り替え状況の一覧を示す図である。
図7】従来の連続遠心分離機100の全体構成を示す図である。
図8】従来の連続遠心分離機100において、ロータがチャンバに収容された際の構造を示す断面図である。
図9】従来の連続遠心分離機100における上側シール部付近の構造を示す断面図である。
図10】従来の連続遠心分離機100における下側シール部付近の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0026】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、従来の連続遠心分離機100と同じ構成、同じ部品を用いる部分は繰り返しの説明を省略する。
【0027】
本発明の実施例に係る連続遠心分離機1は、従来の連続遠心分離機100と同じ原理や構造であって、ロータ135の構造は、その周囲のチャンバ111を含めて、従来の連続遠心分離機100と同じ部品を用い、ロータ135は減圧雰囲気下で高速回転する。本実施例では、シール部の内部構造と冷却水ラインの構成を改良したことに特徴があって、上下シール部内部の接続ブロックへのホルダ駆動エアを供給/停止することでシャフトヘッドとロアシャフト接触及び離間状態、シャフトヘッドとメカニカルシールの接触及び離間状態を、自在に切り替える機構(分離手段)を持つ。それらの分離手段は、制御部によって任意に制御可能である。
【0028】
図1(1)は、本発明の実施例に係る連続遠心分離機の上側シール部221付近の構造を示す断面図である。接続ブロック226Aには、シールホルダ227Aが上下方向に移動可能なように保持される。上側配管接続部220は接続ブロック226Aに固定され、上側配管接続部220の内部は、シールホルダ227Aの内部に形成される貫通穴と流路的に連通する。接続ブロック226Aは上側シール部221に固定され、シールホルダ227Aは接続ブロック226Aの内部に設置されたスプリング230Aにより押し上げられ、メカニカルシール228Aがシャフトヘッド124の上端部と離間した状態を保っている。スプリング230Aの上端側がシールホルダ227Aのフランジ部の下面に当接し、スプリング230Aの下端側は、スプリング230Aの下端を接続ブロック226Aに保持させるための取付部材231Aに当接する。取付部材231Aは図示しない締結部材、例えばネジによって接続ブロック226Aに固定される。シャフトヘッド124は図示しないモータの回転力を伝達するための出力軸であり、ロータ135のアッパーシャフト115に接続される。この離間状態では液だまりを防ぎクリーンエア流入時にブローされやすいよう、メカニカルシール228Aの下面とシャフトヘッド124の上端124Aの間隔は5mm以上であることが望ましいが、最低限メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124が接触しないだけの隙間があればよい。
【0029】
接続ブロック226Aの側面にはエア供給口251Aが設けられ、シールホルダ227Aを駆動(移動)させるための駆動エアライン252Aと接続される。シールホルダ227A、スプリング230A、高圧エアによってメカニカルシール228Aと回転軸たるシャフトヘッド124を離間又は接触させる分離手段を構成する。図1(1)は駆動エアライン252Aに高圧エアが供給されていない状態を示している。この状態では上側配管接続部220及びアッパーシャフト115の内部を連通させる試料ラインが形成されていない。シャフトヘッド124の上端部とメカニカルシール228Aの接触部を冷却するための冷却水ラインの接続口245Aと接続口247Aは上側シール部221の側面に設けられ、冷却室246Aと連通している。
【0030】
図1(2)は、接続ブロック226Aへのシールホルダ227Aの移動用エアが供給されることにより、シャフトヘッド124の上端とメカニカルシール228Aの下面が接触している状態を示している。シャフトヘッド124の上端は、曲面状に湾曲した形状であって軸線と同心に試料通過用の貫通穴が形成される。メカニカルシール228Aの下面には、曲面状の窪みが形成され、軸線と同心に試料通過用の貫通穴が形成される。接続ブロック226Aは上側シール部221に固定された状態において、接続ブロック226Aの側面に設けられたエア供給口251Aより高圧のエアを供給する駆動エアライン252Aを形成することにより、接続ブロック226Aとシールホルダ227Aの間に高圧エア室253Aが形成され、シールホルダ227Aが下方向に移動し、シャフトヘッド124の上端とメカニカルシール228Aが接触状態となる。ここで供給される駆動エアライン252Aのエア圧力はスプリング230Aのバネ圧より大きく、適切な力でシャフトヘッド124の上端部とメカニカルシール228Aを接触させる圧力でなければならない。これにより上側配管接続部220及びアッパーシャフト115の内部が封止され試料ライン129Aが形成され、かつ上側配管接続部220を固定させた状態でアッパーシャフト115を円滑に回転させることができる。このシャフトヘッド124の上端部とメカニカルシール228Aの接触状態では、上側シール部221の側面には冷却水を注入するための接続口245Aより冷却水を導入する冷却水ライン248Aを形成し、接触部の周辺の空間たる冷却室246Aを水で満たし、シャフトヘッド124の上端部とメカニカルシール228Aの接触部を冷却することができる。冷却後の冷却水は、接続ブロック126Aに設けられた排出のための接続口247Aより外部に排出される。
【0031】
図2は本発明の実施例に係る連続遠心分離機1の下側シール部付近の構造を示す断面図である。下側シール部の構成は、図1で示した上側シール部の構成を上下反転させたものに対応し、シールホルダ227B、スプリング230B、高圧エアによってメカニカルシール228Bと回転軸たるロアシャフト116を離間又は接触させる分離手段を構成する。下側配管接続部222、接続ブロック226B、シールホルダ227B、下側シール部223、メカニカルシール228B,試料ライン229B、スプリング230B、取付部材231B、冷却水ライン248Bの関係は、それぞれ図1における上側配管接続部220、接続ブロック226A、シールホルダ227A、上側シール部221、メカニカルシール228A、試料ライン229A、スプリング230A、取付部材231A、冷却水ライン248Aの関係を上下方向で反転させたものとなっている。スプリング230Bの下端側がシールホルダ227Bのフランジ部の下面に当接し、スプリング230Bの下端側は、スプリング230Bの下端を接続ブロック226Aに保持させるための取付部材231Bに当接する。取付部材231Bは図示しない締結部材、例えばネジによって接続ブロック226Bに固定される。スプリング230Bは圧縮バネであるため、エア供給口251Bより高圧のエアが供給されているときは、図2(2)のようにシールホルダ227Bが上方に移動し、高圧のエアの供給が停止されるとスプリング230Bの付勢力によりシールホルダ227Bは下方に移動する。つまり、図2(1)では、駆動エアライン252Bが供給されていない状態を示しており、ロアシャフト116とメカニカルシール228Bの離間状態を示す。図2(2)では、駆動エアライン252Bが供給され、ロアシャフト116とメカニカルシール228Bの接触状態を示し、この状態では下側配管接続部222及び中空のロアシャフト116の内部が封止され、かつ下側配管接続部222を固定させた状態でロアシャフト116を円滑に回転させることができる。
【0032】
図3は本発明の実施の形態となる分離ユニット110における上側シール部221付近の配管状況を示す図である。接続ブロック226Aには駆動エアライン252Aが接続されシールホルダ227Aを動かすためのエアが供給される。駆動エアライン252Aの途中には三方弁261Aが設置され、三方弁261Aの一方は図示しないエア供給源262Aに接続されており、適宜駆動エアを供給できる状態を保つ。三方弁261Aのもう一方は排気用フィルタ266Aを介して大気解放口263Aと接続される。三方弁261Aの切り替えにより駆動エアライン252Aとエア供給源262Aが連通し、接続ブロック226A内部に駆動エアを供給する(状態264A)。また、駆動エアライン252Aと大気解放口263Aが連通して、駆動ブロック内のエアを排気用フィルタ266Aを通して大気へ排気することもできる(状態265A)。三方弁261Aは電気的制御装置の付いた電磁三方弁であり、図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部(図示せず)と接続されており、制御部は開閉のコントロールを行うことが可能である。
【0033】
上側シール部221には冷却水ライン248Aが接続口245Aと接続口247Aを介し接続される。接続口245A側の冷却水ライン248Aの途中には三方弁271Aが設置され、一方には制御ユニット150内部に設置された冷却水タンク275Aおよびそのライン上に設けられた冷却水ポンプ276Aと接続される。三方弁271Aのもう一方はクリーンエア供給源272Aとフィルタ274Aを介して接続される。三方弁271Aの切り替えにより冷却水ライン248Aと冷却水タンク275A及び冷却水ポンプ276Aが連通し、冷却水が供給可能とされる(状態281A)。また、三方弁271Aをさらに切り替えると冷却水ライン248Aに対しクリーンエア供給源272Aよりフィルタ274Aを通過しクリーンエアを供給可能となる(状態282A)。三方弁271Aは電気的制御装置の付いた電磁三方弁であり、図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部と接続されており、開閉のコントロールを行うことが可能である。
【0034】
冷却水ポンプ276Aは、図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部に接続されており、ポンプの作動、停止について電気的に制御されている。また、冷却水タンク275Aは図示しない冷却装置が設置され、内部の冷却水が常に一定温度以下になるよう冷却される。
【0035】
上側シール部221を通過した後の冷却水ライン248Aの途中には三方弁277Aが設置される。三方弁277Aの一方は制御ユニット150内部に設置された冷却水タンク275Aに接続される(状態283A)。もう一方は大気解放口273Aと排気フィルタ278Aを介し接続される(状態284A)。三方弁277Aの切り替えにより冷却水ライン248Aに対しは冷却水タンク275Aと連通し冷却水をタンクに戻すことができる(状態283A)。また、三方弁277Aの切り替えにより冷却水ライン248Aに対し大気解放口273Aと連通し排気フィルタ278Aを通してクリーンエアを大気へ排出することができる((状態284A)。三方弁277Aは電気的制御装置の付いた電磁三方弁であり、図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部と接続されており、開閉のコントロールを行うことが可能である。
【0036】
図4は本発明の実施の形態となる分離ユニット110における下側シール部223付近の配管状況を示す図である。 図4の構成は、図3の構成を上下反転させたものに対応する。図3の構成と同様に、三方弁261B、三方弁271B、三方弁277Bは電気的制御装置の付いた電磁三方弁である。三方弁277Bは、図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部と接続されており、開閉のコントロールを行うことが可能である。また、冷却水ポンプ276Bは図示しない配線により制御ユニット150内部の制御部に接続されており、ポンプの作動、停止について電気的に制御されている。冷却水タンク275Bは図示しない冷却装置が設置され、内部の冷却水が常に一定温度以下になるよう冷却される。
【0037】
駆動エア供給源262A(図3参照)と駆動エア供給源262Bの役割は同じであり、十分な圧力を保てる場合、共通の供給源を使用することが可能である。また、クリーンエア供給源272A(図3参照)とクリーンエア供給源272Bも同様に共通の供給源を使用することが可能である。加えて駆動エア供給源262A(図3参照)と駆動エア供給源262Bと、クリーンエア供給源272A(図3参照)とクリーンエア供給源272Bは同じくエアの供給を目的としているので、十分な圧力を保てた上で十分な清潔性が確保できる場合ならば共通の供給源を使用することが可能である。さらに、また冷却水タンク275A(図3参照)、冷却水ポンプ276A(図3参照)と、冷却水タンク275B、冷却水ポンプ276Bの役割は同じであるので、十分な流量および冷却能力を保てる場合ならば共通の供給源を使用し、冷却水ライン248A(図3参照)と248Bを並列的に接続することが可能である。
【0038】
制御ユニット150内部の制御部は試料ポンプ141(図8参照)の稼働状況を監視し、ロータ135の回転速度の状態と合わせて三方弁261A(図3参照)、261B、および冷却水ラインの三方弁271A(図3参照)、271B、277A(図3参照)、277B及び冷却水ポンプ276A(図3参照)、276Bの開閉の制御モードを切り替える。
【0039】
以上のように本実施例の連続遠心分離機1では、図8図10にて説明した従来の連続遠心分離機100に比べて、駆動エアライン248A、248を追加したので、回転軸とメカニカルシールをエアの供給の有無によって離間又は接触させることができる。また、冷却水ラインにもエアを流入させる流路を追加したので、冷却水ラインを停止してからクリーンエアを流入させて冷却水ラインから冷却水を除去することができ、更には、回転軸とメカニカルシールを接触部に高圧のエアを吹き付けることによって水分の除去を行うことができる。
【0040】
図5は本実施例の連続遠心分離機1の運転状態と各部の制御を説明するための図である。ここでは上側に時間の経過とロータ135の回転速度との関係を表にて示し、表の下側に試料ライン129A、129Bによる試料供給状態と、メカニカルシール228A、228Bとシャフトヘッド124、116との接触状態と、冷却水ライン248A、248Bの稼働状態を示している。上側の表において、縦軸はロータ135の回転速度(単位:rpm)であり、横軸は時間の経過(単位:min)である。ロータ135がチャンバ111の所定の位置にセットされ、試料タンク140に試料がセットされ、チャンバ111内の環境が設定された状況(温度、真空度)に到達すると、図示しない制御部は試料ポンプ141(図8参照)を稼働させて下側の試料ライン129Bからロータ135の内部に試料の注入を開始する(状態21)。この試料の注入の際には、駆動エアライン252A、252Bにエア供給源262A、262Bからエアを供給することによって、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116が接触させる(状態31)。
【0041】
時刻tにおいてロータ135の内部が試料で満たされた状態になったら、制御部は駆動部112(図7参照)を回転させることよってロータ135の回転を開始し、所定の加速度にて加速する。時刻tから時刻tまでの加速開始直後(低回転状態)においては、試料ライン129Bからロータ135の内部への試料の注入は継続されており(状態21)、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116は接触している(状態31)。また、ロータ135の停止中及び時刻tからtまでの低回転状態においては、冷却水ライン248A、248Bへの冷却水の供給は停止しており(状態41)、冷却室246A、246Bには水が無い状態にある。
【0042】
時刻tにおいてロータ135の回転速度がある程度の高速回転状態にまで達したら、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116が摺動によって発熱する虞が高くなるので、制御部は冷却水ポンプ276A、276B(図3図4参照)を稼働させて、冷却水ライン248A、248Bへ冷却水を供給することによって冷却室246A、246Bの内部空間を冷却水で満たす(状態42)。メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116の接触部付近は、冷却室246A、246Bの内部空間にあって冷却水内に位置するため、冷却水によって摩擦熱によって発生する熱が効果的に吸収される。このような状態のままロータ135の加速を続けると、時刻tにおいて設定回転速度に到達してロータ135の回転速度10が一定になる整定状態になる。設定回転速度は、例えば最高で40,000rpm程度であり、時刻tから時刻tまでの加速に要する時間は例えば30分である。
【0043】
時刻tにて整定状態になったら試料ライン129Bからロータ135の内部への試料の注入を停止させると共に、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116を切り離すための準備を行う(区間11a)。制御部は最初に冷却水ライン248A、248Bへの冷却水の供給を停止する(状態43)。その後、三方弁271A、277Aを切り替えて状態282A、282Bとし、冷却室246A、246Bに高圧のフレッシュエアを供給して冷却室246A、246B内の水を冷却水タンク275A、275Bに回収する。このフレッシュエアの供給は1分程度行うが(状態52)、連続的に供給されるフレッシュエアの余剰分は、冷却水タンク275A、275Bから大気中に排出される(排出機構は図示していない)。
【0044】
時刻tにて高圧エアの供給を停止したら、三方弁271A、271B、277A、277Bを再び切り替えてフレッシュエアの供給を停止し、さらに冷却水ポンプ276A、276Bも停止状態としたままにする(状態43)。この状態43は、冷却室246A、246Bの内部空間から冷却水が抜かれた状態である。この後、三方弁261A、261Bを切り替えて大気開放口263A、263B側に接続(状態265A、265B)すると、シールホルダ227A、227Bを移動させるための高圧エア室253A、253Bにエアの供給が停止され、シールホルダ227A、227Bは、スプリング230A、230Bの付勢力により移動する。この結果、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124が離反し、メカニカルシール228Bとロアシャフト116が離反して非接触状態となる(状態32)。この非接触を示すのが、図1(1)及び図2(1)である。このようにメカニカルシール228A、228Bとシャフトヘッド124、116の切り離しをした非接触の状態32で、ロータ135の設定速度による運転を設定された時間だけおこなう(状態53)。遠心分離の設定時間の例としては、数時間から数十時間におよび、例えば最長で50時間程度のものもある。ロータ135が高速で回転している際には試料に強い遠心力が加わるため、シャフトヘッド124、ロアシャフト116からメカニカルシール228A、228Bを切り離しても、シャフトヘッド124、ロアシャフト116から試料が漏れる心配は無い。
【0045】
設定された遠心分離運転が終了する直前の時刻t、例えば時刻tの1分前になったら、再びメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、メカニカルシール228Bとロアシャフト116を接触させる為に、必要な準備をおこなう(状態11b)。まず、上側の三方弁271A、277Aを切り替えて状態282A、284Aとし、三方弁261Aを切り替えて大気開放の状態265Aとし、冷却室246Aに高圧のフレッシュエアを供給して冷却室246A内を乾かす。同様にして、下側の三方弁271B、277Bを切り替えて状態282B、284Bとし、三方弁261Bを切り替えて大気開放の状態265Bとし、冷却室246Bに高圧のフレッシュエアを供給して冷却室246B内を乾かす。このフレッシュエアの供給は1分程度行う(状態54)。メカニカルシール228A、228Bの乾燥が終了したら、時刻tにおいてシールホルダ227A、227Bを移動させるための高圧エアの供給を再開させると(状態264A、264B)、シールホルダ227A、227Bは、スプリング230A、230Bの付勢力に反して移動するため、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116が接触する(状態33)。この接触が確認できた後に、冷却室246A、246Bに冷却水ライン248A、248Bを介して冷却水を供給し(状態44)、接触後のメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124の周囲の冷却室246Aを冷却水で満たし、接触後のメカニカルシール228Bとロアシャフト116の周囲の冷却室246Bも水で満たす。このように冷却室246A、246B内を水で満たした後に、制御ユニット150中の制御部はロータ135の減速を開始する。この減速中は、試料ライン129Bからロータ135の内部への試料の注入は停止したままである(状態22)。また、ロータ135の内部から試料ライン129Aへの試料の排出も停止したままである(状態22)。
【0046】
ロータ135の回転が低下して時刻tにてメカニカルシール228A、228Bの冷却が不要になる程度の低速回転状態になったら、制御部は冷却水ポンプ276A、276Bの供給を停止する(状態45)。その後の時刻tにおいて、ロータ135の回転が完全に停止する。このロータ135の減速に要する時間は、例えば30分である(状態55)。
ロータ135が停止したら、試料の回収手順をおこなうが(状態23)、この状態ではメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、メカニカルシール228Bとロアシャフト116が接触状態にあって、従来の連続遠心分離機100と同じ状態であるので、従来と同じ手順にてロータ135内の試料の回収手順を実行すれば良い。この際には試料の回収が終わるまでメカニカルシール228A、228Bとシャフト124、ロアシャフト116は外さない。
【0047】
以上、本発明の実施例では、連続遠心分離機1の整定時間内において、メカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、メカニカルシール228Bとロアシャフト116を非接触状態として回転させる、いわゆる“非接触回転区間”を設けたが、“非接触回転区間”を必ず設ければならないものではない。例えば、連続遠心分離をおこなう試料によっては、ロータ135の整定中も試料ライン129A、129Bを連通状態にして試料を流し続ける場合がある。また、クライアントの希望によって整定時に“非接触回転”とせずに、従来と同じ“接触回転”としたいと希望する場合もある。そこで、本実施例の連続遠心分離機1では、実行可能な運転モードとして、従来と同じように整定時にメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、メカニカルシール228Bとロアシャフト116を接触状態のまま回転させる“通常回転モード(接触回転モード又は第1の運転モード)”と、上述したような非接触状態として回転させる“非接触回転モード(第2の運転モード)”を選択できるようにしても良い。尚、“非接触回転モード”が選択されている場合であっても、整定中に試料ライン129A、129Bに試料を流し続ける等の非接触状態を実現するための前提条件が満たされない場合は、制御部は従来と同じように“通常回転モード”のまま運転を継続するように制御すれば良い。
【0048】
図6は連続遠心分離機1の運転状態に応じた制御モードの切り替え状況の一覧を示す図である。左列61は制御モードを示すもので、ここでは丸1から丸6までの6パターンあって、さらに丸6の制御モードには4つのモードに分類できる。稼働状況62はロータ135と試料送液ポンプ141の稼働状況を示すものである。ロータ135は、回転していないことを示す“停止”状態と、回転していることを示す“回転”状態がある。“回転状態”には、さらに低速回転と高速回転の2つの状態に分類できる。“低速回転”は、ロータ135は回転しているが回転速度が低く、試料にかかる遠心力<重力の状態で内部の試料が自重によりロータ135より自然排出される状態を示す。“高速回転”では試料にかかる遠心力が大きい状態を示す。試料送液ポンプ141は“停止”と“稼働”の2つの状態がある。
【0049】
上側シール部221の表示欄63は、メカニカルシール228Aの状態と、冷却水の連通状況(冷却水ポンプ276Aのオンオフ、三方弁271Aと277Aの状態)を示すものである。同様にして下側シール部223の表示欄64は、メカニカルシール228Bの状態と、冷却水の連通状況(冷却水ポンプ276Bのオンオフ、三方弁271Bと277Bの状態)を示すものである。
【0050】
図6において、丸1、丸2はロータ135が回転していない停止状態の状態を示す。丸1の状態はロータ135の停止状態であって試料ポンプ141が停止し試料を流していない状態である。ここでは試料ラインを形成する必要がないため、三方弁261A、261Bは駆動エアライン252A、252Bが大気解放口263A、263Bと連通した状態265A、265Bであり、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bは接触していない状態である。また、冷却水ライン248A、248Bの三方弁271A、277A及び271B、277Bはそれぞれ状態281A、283A、および281B、283Bで冷却水タンクと連通しているが、メカニカルシール228A、228Bの冷却は不要であるため冷却水ポンプ276A、276Bは停止しており、冷却水ライン248A、248Bに冷却水は流れていない状態である。図8に示されるようなロータ135をチャンバ111への出し入れが行われる際にはこの丸1の状態を保つ。
【0051】
丸2の状態は、ロータ135の停止状態において試料ポンプ141が稼働して試料ラインに試料を流し、分離ユニット110内に格納されロータ135の中へ試料を注入するための状態である。試料ポンプ141の稼働と合わせて駆動エアライン中の三方弁261A、261Bが切り替わり、駆動エアライン252A、252Bとエア供給源262A、262Bと連通した状態264A、264Bになり、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bが接合(接触)している状態となる。冷却水ライン248A、248Bについては丸1と同様に三方弁271A、277A及び271B、277Bがそれぞれ状態281A、283A、および281B、283Bで冷却水タンクと連通しているが、メカニカルシールの冷却は不要であるため、冷却水ポンプ276A、276Bは停止しており、冷却水ライン248A、248Bに冷却水は流れていない状態である。
【0052】
丸2の状態で試料の注入が完了し、ロータ135が満水となったところで回転を開始することが可能となる。ここで、ロータ135が満水となる前に回転を開始した場合、図示しないロータ135の内部において、空の空間の影響により注入された試料に乱流などが発生してロータ135全体の回転振動へ悪影響を与えてしまう。そのため通常ロータ135の中が試料で満水となるまで回転は開始せず、回転中もロータ135内部の試料が抜けて空の空間が発生することがないよう注意が必要である。また、回転速度が増加し遠心力が大きくなるとロータ135を構成するロータボディ136、上側ロータカバー137、下側ロータカバー138には大きな負荷がかかり、回転軸外周方向に変形が発生しロータ135の内部容量が若干増加する。そのため、加速中は試料を流し続ける必要がある。
【0053】
丸3、丸4の状態はロータ135の回転を開始し、低速回転である状態を示す。低速回転状態では、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bを離間させた場合、試料にかかる遠心力が小さいためロータ135内部の試料が自重によりロータ135より自然排出されてしまう。そのため駆動エアライン中の三方弁261A、261Bは試料ポンプ141の稼働状況にかかわらず常に駆動エアライン252A、252Bがエア供給源262A、262Bと連通した状態264A、264Bを保ち、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bが接触している状態を維持する。なお、回転速度が低速であり接触部分での発熱は小さいため、冷却水による冷却は必要なく冷却水ポンプ276A、276Bは停止した状態を維持する。ただし、若干の冷却と接触面より漏れる可能性のある試料の除去のため、冷却水ライン248A、248B中の三方弁271A、277A及び271B、277Bをそれぞれ状態282A、284A、および282B、284Bに切り替え、クリーンエア供給源と連通させ、接触部にクリーンエアを供給することが望ましい。
【0054】
丸5、丸6の状況はロータ135の回転速度が上昇し高速回転となった状態を示す。
低速回転から加速し、高速回転に変化したことを制御部が感知すると丸5の状態に切り替わる。この状態では低速状態より引き続き駆動エアライン中の三方弁261A、261Bは常に駆動エアライン252A、252Bがクリーンエア供給源262A、262Bと連通した状態264A、264Bを保ち、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bが接触している状態を維持する。
また高速回転では接触部分での発熱量が大きくなるため、冷却水ライン248A、248Bの三方弁271A、277A及び271B、277Bをそれぞれ状態281A、283A、および281B、283Bに切り替え冷却水タンクと連通させた後、冷却水ポンプ276A、276Bを作動させ、冷却水ライン248A、248Bに冷却水が流れている状態にする。これにより接触部は冷却水により、冷却され過大な発熱は防がれる。冷却に使用された冷却水は冷却水タンク275A、275Bに戻される。
【0055】
丸6の状態は高速回転において目的の回転速度に達し、加速が終了した状態の動きを示す。目的の回転速度において試料を連続的に流す必要のない方式の遠心分離を行う場合、試料ポンプ141を停止する。試料ポンプ141の停止を確認した制御部は冷却水ポンプ276A、276Bを停止させ、冷却水の流れを止める(丸6-1)。続いて、冷却水ライン248A、248B中の三方弁271A、271Bをそれぞれ状態282A、282B、に切り替えてクリーンエア供給源272A、272Bと連通した状態にし、冷却水ライン248A、248Bにクリーンエアが供給される状態にする。クリーンエアが供給されることで、冷却ライン248A、248B内部の冷却水は押し出され、冷却水タンク275A、275Bへ戻される(丸6-2)。その後、三方弁277A、277Bをそれぞれ状態284A、284Bに切り替え、クリーンエアが排気フィルタ278A、278Bを通して大気解放口273A、273Bより大気中へ排出される状態にする。この状態で一定時間置くことで接触部周りをドライな状態にすることができ、後述するシャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bを離間させた際に冷却水が試料に混入することを防ぐことが可能である(丸6-3)。その後、駆動エアライン中の三方弁261A、261Bを大気解放口263A、263Bと連通した状態265A、265Bに切り替え、シールホルダ227A、227Bを押している駆動エアを外部に放出することで、シャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bが離間している状態になる(丸6-4)。高速回転では試料にかかる遠心力が大きいため、メカニカルシールが離間している状態でもロータ135内部の試料が自重によりロータ135より自然排出されることはない。従来の技術では高速回転で接触したまま長時間回転することでメカニカルシールの摩耗や発熱による試料への影響が懸念されたが、この機能により過度な発熱や摩耗は防止され、長寿命化が図れる。また、離間後もクリーンエアを流入させ、シャフト先端及びメカニカルシール接触面をブローすることで残留する試料を除去し乾燥させることができる。このようにシャフト先端及びメカニカルシール接触面をドライな状態で維持することにより再び接触する際の摩擦の発生を低く抑えることが可能となる。
【0056】
離間状態で任意の時間遠心分離した後は停止に向け減速を開始する。減速が開始されると、遠心力により変形し内容量の増加していたロータ135がものと形状に戻るため、ロータ135より試料が押し出されてくる。試料の冷却水ラインへの侵入を防ぐため、減速時はシャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bは接触している必要がある。そのため、減速開始と合わせて、丸6-4から丸6-3の状態に戻して、さらに丸5の状態にすることによりシャフトヘッド124およびロアシャフト116の先端部とメカニカルシール228A、228Bの接触部が冷却水により冷却されている状況にする。ロータ135の減速中は、回転状況に合わせ丸6-2から丸5、丸3の状態に切り替える。停止後、ロータ135内部の試料の排出を行った後、状態を丸1に切り替え、ロータ135の取り出しを行えるようにする。
【0057】
以上、本願発明によれば連続遠心分離機において前記回転軸とメカニカルシールの接触および離間を自在に制御することができるので、メカニカルシールの寿命を大幅に伸ばすことが可能となった。尚、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例ではシールホルダの駆動にエア圧を用いるようにしたが、駆動源はエア圧だけに限られず、ソレノイドなどの電磁石や、モータ等を用いて制御部によって電気的に駆動するように構成してもよい。また、上述の実施例ではメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124、及び、メカニカルシール228Bとロアシャフト116の双方を同時に離反又は接触させるようにしたが、これらを非連動で離反又は接触させるようにしても良い。例えば、下側のメカニカルシール228Bとロアシャフト116だけを離反又は接触させるようにして、上側のメカニカルシール228Aとシャフトヘッド124は接触させたままとしても良いし、上側のメカニカルシール228A部付近の構造は、図9と同様に固定式としても良い。
【符号の説明】
【0058】
1、100 連続遠心分離機 110 分離ユニット
111 チャンバ 111A 遠心室
112 駆動部 113 ベース
114 リフト 115 アッパーシャフト
116 ロアシャフト 117 アッパープレート
120 上側配管接続部 121 上側シール部
122 下側配管接続部 123 下側シール部
124 シャフトヘッド 125A、125B リップシール
126A、126B 接続ブロック 127A、127B シールホルダ
128A、128B メカニカルシール
129A、129B 試料ライン(試料循環ライン)
130A、130B スプリング 135 ロータ
136 ロータボディ 137 上側ロータカバー
138 下側ロータカバー 140 試料タンク
141 試料ポンプ 142 液体試料回収タンク
145A、145B 接続口(注入) 146A、146B 冷却室(収容室)
147A、147B 接続口(排出) 148A、148B 冷却水ライン
150 制御ユニット 151 配管群
155 操作パネル 220 上側配管接続部
221 上側シール部 222 下側配管接続部
223 下側シール部 226A、226B 接続ブロック
227A、227B シールホルダ(移動手段)
228A、228B メカニカルシール
229A、229B ハンドル部 230A、230B スプリング
231A、231B 固定部材
245A、245B 接続口(注入) 246A、246B 冷却室
247A、247B 接続口(排出) 248A、248B 冷却水ライン
251A、251B エア供給口 252A、252B 駆動エアライン
253A、253B 高圧エア室
261A、261B 駆動エアライン電磁三方弁
262A、262B 駆動エア供給源
263A、263B 大気解放口
264A、264B 駆動エア供給状態の流路
265A、265B 駆動エア停止状態の流路
266A、266B 排気用フィルタ
271A、271B 冷却水ライン電磁三方弁(供給)
272A、272B クリーンエア供給源
273A、273B 大気解放口
274A、274B フィルタ
275A、275B 冷却水タンク
276A、276B 冷却水ポンプ
277A、277B 冷却水ライン電磁三方弁(排出)
278A、278B 排気用フィルタ
281A、281B 冷却水供給状態の流路
282A、282B クリーンエア供給状態の流路
283A、283B 冷却水通過状態の流路
284A、284B クリーンエア排気状態の流路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10