(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/4008 20100101AFI20221004BHJP
F16H 61/4035 20100101ALI20221004BHJP
F16H 61/4043 20100101ALI20221004BHJP
F16H 61/423 20100101ALI20221004BHJP
F16H 61/433 20100101ALI20221004BHJP
F16H 61/465 20100101ALI20221004BHJP
F16H 61/21 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16H61/4008
F16H61/4035
F16H61/4043
F16H61/423
F16H61/433
F16H61/465
F16H61/21
(21)【出願番号】P 2018024373
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-249339(JP,A)
【文献】特開平5-306768(JP,A)
【文献】特開昭60-189635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025215(US,A1)
【文献】特開2016-044714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/21
F16H 61/40-61/478
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含み前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、第1モータポートと第2モータポートとを含み前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、を含み、前記油圧回路は、前記第1ポンプポートと前記第1モータポートとを接続する第1回路と、前記第2ポンプポートと前記第2モータポートとを接続する第2回路とを含む静油圧式トランスミッションと、
前記エンジンの実回転速度を示す信号を出力するエンジン回転速度センサと、
アクセル操作部材と、
前記アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力するアクセル操作センサと、
前記エンジン回転速度センサからの信号、及び、前記アクセル操作センサからの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記アクセル操作部材の操作量から前記エンジンの目標回転速度を決定し、
車両が惰性減速中であるかを判定し、
前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、前記アクセル操作部材の操作量に応じて、前記第1回路と前記第2回路との間の差圧を減少させる、
作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、前記実回転速度が前記目標回転速度よりも大きいときに、前記車両が惰性減速中であると判定する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラは、前記車両が惰性減速中であるときには、前記走行用ポンプの目標容量の指令値の減少速度を遅くする、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラは、
ローパスフィルタを含み、
前記ローパスフィルタを通して前記目標容量を示す指令信号を前記走行用ポンプに出力し、
前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差
が小さいほど、又は、アクセル操作部材の操作量
が小さいほど、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を小さくする、
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記静油圧式トランスミッションは、前記油圧回路に設けられリリーフ圧を変更可能なリリーフ弁をさらに含み、
前記コントローラは、前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差
が小さいほど、又は、アクセル操作部材の操作量
が小さいほど、前記リリーフ圧を低減する、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記コントローラは、前記車両が惰性減速中であるときには、前記車両が惰性減速中ではない通常時よりも、前記走行用モータの容量の下限値を小さくし、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差の増大、又は、アクセル操作部材の操作量の減少に応じて、前記走行用モータの容量の下限値を減少させる、
請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、を含む静油圧式トランスミッションと、
前記エンジンの実回転速度を示す信号を出力するエンジン回転速度センサと、
アクセル操作部材と、
前記アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力するアクセル操作センサと、
前記エンジン回転速度センサからの信号、及び、前記アクセル操作センサからの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記アクセル操作部材の操作量から前記エンジンの目標回転速度を決定し、
車両が惰性減速中であるかを判定し、
前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差
が大きいほど、又は、前記アクセル操作部材の操作量
が小さいほど、前記走行用モータの容量の下限値を減少させる、
作業車両。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記実回転速度が前記目標回転速度よりも大きいときに、前記車両が惰性減速中であると判定する、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
エンジンと、静油圧式トランスミッションと、アクセル操作部材とを備え、前記静油圧式トランスミッションは、第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含み前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、第1モータポートと第2モータポートとを含み前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータとを含み、前記油圧回路は、前記第1ポンプポートと前記第1モータポートとを接続する第1回路と、前記第2ポンプポートと前記第2モータポートとを接続する第2回路とを含む、作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
前記アクセル操作部材の操作量を示す信号を受信することと、
前記エンジンの実回転速度を示す信号を受信することと、
前記アクセル操作部材の操作量から前記エンジンの目標回転速度を決定することと、
車両が惰性減速中であるかを判定することと、
前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、前記アクセル操作部材の操作量に応じて、前記第1回路と前記第2回路との間の差圧を減少させること、
を備える方法。
【請求項10】
エンジンと、静油圧式トランスミッションと、アクセル操作部材とを備え、前記静油圧式トランスミッションは、前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータとを含む作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
前記アクセル操作部材の操作量を示す信号を受信することと、
前記エンジンの実回転速度を示す信号を受信することと、
前記アクセル操作部材の操作量から前記エンジンの目標回転速度を決定することと、
車両が惰性減速中であるかを判定することと、
前記車両が惰性減速中であるときには、前記エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差
が大きいほど、又は、前記アクセル操作部材の操作量
が小さいほど、前記走行用モータの容量の下限値を減少させること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、静油圧式トランスミッションを備えるものがある。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、走行用モータと、走行用ポンプと走行用モータとを接続する油圧回路とを含む。走行用ポンプはエンジンによって駆動され、作動油を吐出する。走行用ポンプから吐出された作動油は、油圧回路を介して、走行用モータに供給される。走行用モータは、走行用ポンプからの作動油によって駆動される。走行用モータは、作業車両の走行装置に接続されており、走行用モータが駆動されることで、作業車両が走行する。静油圧式トランスミッションでは、走行用ポンプの容量と走行用モータの容量とを制御することにより、変速比を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静油圧式トランスミッションを備えた作業車両では、オペレータがアクセルペダルをオフにすると、エンジンブレーキと共に、静油圧式トランスミッションによるブレーキも作用する。そのため、静油圧式トランスミッションを備えた作業車両では、トルクコンバータを備えた作業車両と比べて、減速が強い傾向がある。従って、緩やかに惰性走行をするためには、オペレータは、アクセルペダルを徐々に緩めるなどの調整を行う必要があり、操作が煩雑である。
【0005】
また、降坂走行時には、トルクコンバータを備えた作業車両では、アクセルペダルがオフで走行することができる。それに対して、静油圧式トランスミッションを備えた作業車両では、静油圧式トランスミッションによるブレーキが強すぎるため、降坂走行時においてアクセルペダルがオフでは、車両が停止してしまう。そのため、オペレータはアクセルペダルを踏み込んで積極的にエンジン回転速度を上げる必要があり、燃費が低下する。
【0006】
本発明の目的は、緩やかな惰性走行を容易に行うことができると共に、燃費を向上させることができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、静油圧式トランスミッションと、エンジン回転速度センサと、アクセル操作部材と、アクセル操作センサと、コントローラとを備える。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプは、第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含み、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、第1モータポートと第2モータポートとを含み、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。油圧回路は、第1ポンプポートと第1モータポートとを接続する第1回路と、第2ポンプポートと第2モータポートとを接続する第2回路とを含む。エンジン回転速度センサは、エンジンの実回転速度を示す信号を出力する。アクセル操作センサは、アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力する。コントローラは、エンジン回転速度センサからの信号、及び、アクセル操作センサからの信号を受信する。コントローラは、アクセル操作部材の操作量からエンジンの目標回転速度を決定する。コントローラは、車両が惰性減速中であるかを判定する。コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて、第1回路と第2回路との間の差圧を減少させる。
【0008】
本態様に係る作業車両では、惰性減速時には、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて第1回路と第2回路との間の差圧を減少させることで、静油圧式トランスミッションによるブレーキトルクが低減される。それにより、緩やかな惰性走行を容易に行うことができる。また、アクセル操作部材がオフにされた状態で作業車両が走行する機会が増えることで、燃費を向上させることができる。
【0009】
コントローラは、実回転速度が目標回転速度よりも大きいときに、車両が惰性減速中であると判定してもよい。この場合、車両が惰性減速中であることを精度良く判定することができる。
【0010】
コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、走行用ポンプの目標容量の指令値の減少速度を遅くしてもよい。この場合、走行用ポンプの容量の減少速度を遅くすることで、第1回路と第2回路との間の差圧を減少させることができる。
【0011】
コントローラは、ローパスフィルタを含んでもよい。コントローラは、ローパスフィルタを通して目標容量を示す指令信号を走行用ポンプに出力してもよい。コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて、ローパスフィルタのカットオフ周波数を小さくしてもよい。この場合、ローパスフィルタのカットオフ周波数を小さくすることで、走行用ポンプの容量の減少速度を遅くすることができる。
【0012】
静油圧式トランスミッションは、リリーフ弁をさらに含んでもよい。リリーフ弁は、油圧回路に設けられ、リリーフ圧を変更可能であってもよい。コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて、リリーフ圧を低減してもよい。この場合、リリーフ圧を低減することで、第1回路と第2回路との間の差圧を減少させることができる。
【0013】
コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、車両が惰性減速中ではない通常時よりも、走行用モータの容量の下限値を小さくし、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差の増大、又は、アクセル操作部材の操作量の減少に応じて、走行用モータの容量の下限値を減少させてもよい。この場合、走行用モータの容量の下限値が通常時よりも小さくされることで、静油圧式トランスミッションによるブレーキトルクを低減することができる。また、偏差が小さくなるほど、或いは、又は、アクセル操作部材の操作量が大きくなるほど、モータ容量の下限値が大きくなるため、惰性減速時の制御が終了して通常時の制御に戻るときに、走行用モータの容量を滑らかに変化させることができる。
【0014】
第2の態様に係る作業車両は、エンジンと、静油圧式トランスミッションと、エンジン回転速度センサと、アクセル操作部材と、アクセル操作センサと、コントローラとを備える。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。エンジン回転速度センサは、エンジンの実回転速度を示す信号を出力する。アクセル操作センサは、アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力する。コントローラは、エンジン回転速度センサからの信号、及び、アクセル操作センサからの信号を受信する。コントローラは、アクセル操作部材の操作量からエンジンの目標回転速度を決定する。コントローラは、車両が惰性減速中であるかを判定する。コントローラは、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて、走行用モータの容量の下限値を減少させる。
【0015】
本態様に係る作業車両では、惰性減速時には、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて走行用モータの容量の下限値を減少させることで、静油圧式トランスミッションによるブレーキトルクが低減される。それにより、緩やかな惰性走行を容易に行うことができる。また、アクセル操作部材がオフにされた状態で作業車両が走行する機会が増えることで、燃費を向上させることができる。
【0016】
コントローラは、実回転速度が目標回転速度よりも大きいときに、車両が惰性減速中であると判定してもよい。この場合、車両が惰性減速中であることを精度良く判定することができる。
【0017】
第3の態様に係る方法は、作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法である。作業車両は、エンジンと、静油圧式トランスミッションと、アクセル操作部材とを備える。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプは、第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含みエンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、第1モータポートと第2モータポートとを含み、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。油圧回路は、第1ポンプポートと第1モータポートとを接続する第1回路と、第2ポンプポートと第2モータポートとを接続する第2回路とを含む。
【0018】
本態様に係る方法は以下の処理を備える。第1の処理は、アクセル操作部材の操作量を示す信号を受信することである。第2の処理は、エンジンの実回転速度を示す信号を受信することである。第3の処理は、アクセル操作部材の操作量からエンジンの目標回転速度を決定することである。第4の処理は、車両が惰性減速中であるかを判定することである。第5の処理は、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて第1回路と第2回路との間の差圧を減少させることである。
【0019】
本態様に係る方法では、惰性減速時には、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて第1回路と第2回路との間の差圧を減少させることで、静油圧式トランスミッションによるブレーキトルクが低減される。それにより、緩やかな惰性走行を容易に行うことができる。また、アクセル操作部材がオフにされた状態で作業車両が走行する機会が増えることで、燃費を向上させることができる。
【0020】
第4の態様に係る方法は、作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法である。作業車両は、エンジンと、静油圧式トランスミッションと、アクセル操作部材とを備える。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。
【0021】
本態様に係る方法は以下の処理を備える。第1の処理は、アクセル操作部材の操作量を示す信号を受信することである。第2の処理は、エンジンの実回転速度を示す信号を受信することである。第3の処理は、アクセル操作部材の操作量からエンジンの目標回転速度を決定することである。第4の処理は、車両が惰性減速中であるかを判定することである。第5の処理は、車両が惰性減速中であるときには、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて走行用モータの容量の下限値を減少させることである。
【0022】
本態様に係る方法では、惰性減速時には、エンジンの実回転速度と目標回転速度との偏差、又は、アクセル操作部材の操作量に応じて走行用モータの容量の下限値を減少させることで、静油圧式トランスミッションによるブレーキトルクが低減される。それにより、緩やかな惰性走行を容易に行うことができる。また、アクセル操作部材がオフにされた状態で作業車両が走行する機会が増えることで、燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、作業車両において、緩やかな惰性走行を容易に行うことができると共に、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】作業車両の駆動系の構成を示すブロック図である。
【
図3】作業車両の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】作業車両の車速-牽引力特性を示す図である。
【
図5】アクセル操作部材の操作に応じて変更される車速-牽引力特性の一例を示す図である。
【
図6】コントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図7】エンジントルク-エンジン回転速度特性を示す図である。
【
図8】コントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図9】走行用ポンプと走行用モータとを制御するための処理を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る制御の処理を示すフローチャートである。
【
図12】第1実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る制御の処理を示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
【
図16】第2実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
【
図17】第3実施形態に係る制御の処理を示すフローチャートである。
【
図18】第3実施形態に係る作業車両の駆動系の構成を示すブロック図である。
【
図19】第3実施形態に係る作業車両の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図21】第3実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る作業車両1について、図面を用いて説明する。
図1は、作業車両1の側面図である。作業車両1は、ホイールローダである。作業車両1は、車体2と、作業機3と、複数の走行輪4と、キャブ5と、を含む。作業機3は、車体2の前部に装着されている。作業機3は、ブーム11とバケット12とリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを含む。
【0026】
ブーム11は、車体2に回転可能に取り付けられている。ブーム11は、リフトシリンダ13によって駆動される。バケット12は、ブーム11に回転可能に取り付けられている。バケット12は、バケットシリンダ14によって上下に移動する。キャブ5は、車体2上に配置されている。複数の走行輪4は、車体2に回転可能に取り付けられている。
【0027】
図2は、作業車両1に搭載された駆動系の構成を示すブロック図である。作業車両1は、エンジン21と、作業機用ポンプ22と、静油圧式変速機(Hydro Static Transmission;以下“HST”と呼ぶ)23とを含む。エンジン21は、例えば、ディーゼル式のエンジンである。燃料噴射装置24がエンジン21への燃料噴射量を制御することにより、エンジン21の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)と回転速度とが制御される。エンジン21の実回転速度は、エンジン回転速度センサ25によって検出される。エンジン回転速度センサ25は、エンジン21の実回転速度を示す信号を出力する。
【0028】
作業機用ポンプ22は、エンジン21に接続されている。作業機用ポンプ22は、エンジン21によって駆動されることで、作動油を吐出する。作業機用ポンプ22から吐出された作動油は、作業機用油圧回路26を介してリフトシリンダ13に供給される。これにより、作業機3が駆動される。作業機用ポンプ22の吐出圧は、作業機ポンプ圧センサ27によって検出される。作業機ポンプ圧センサ27は、作業機用ポンプ22の吐出圧を示す信号を出力する。
【0029】
作業機用ポンプ22は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機用ポンプ22には、ポンプ容量制御装置28が接続されている。ポンプ容量制御装置28は、作業機用ポンプ22の容量を制御する。ポンプ容量制御装置28は、サーボピストン28aとポンプ制御弁28bとを含む。サーボピストン28aは、作業機用ポンプ22に接続されている。サーボピストン28aが作業機用ポンプ22の傾転角を変更することで、作業機用ポンプ22の容量が変更される。ポンプ制御弁28bは、サーボピストン28aに供給される油圧を制御することで、サーボピストン28aの動作を制御する。なお、作業機用ポンプ22は、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0030】
作業機用油圧回路26には、作業機制御弁30が配置されている。作業機制御弁30は、作業機制御弁30に印加されるパイロット圧に応じて、リフトシリンダ13に供給される作動油の流量を制御する。図示を省略するが、作業機制御弁30は、バケットシリンダ14に供給される作動油の流量を制御してもよい。なお、作動油の流量とは、単位時間当たりに供給される作動油の量を意味する。作業機制御弁30は、油圧パイロットの制御弁に限らず、電気的に制御される電磁制御弁であってもよい。
【0031】
HST23は、走行用ポンプ31と、駆動油圧回路32と、走行用モータ33とを含む。走行用ポンプ31は、エンジン21に接続されている。走行用ポンプ31は、エンジン21によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行用ポンプ31は、可変容量型の油圧ポンプである。走行用ポンプ31から吐出された作動油は、駆動油圧回路32を通って走行用モータ33へと送られる。
【0032】
駆動油圧回路32は、走行用ポンプ31と走行用モータ33とを接続している。駆動油圧回路32は、第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとを含む。第1駆動回路32aは、走行用ポンプ31の第1ポンプポート31aと走行用モータ33の第1モータポート33aとを接続している。第2駆動回路32bは、走行用ポンプ31の第2ポンプポート31bと走行用モータ33の第2モータポート33bとを接続している。走行用ポンプ31と走行用モータ33と第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとは、閉回路を構成している。
【0033】
作動油が、走行用ポンプ31から第1駆動回路32aを介して走行用モータ33に供給されることにより、走行用モータ33が一方向(例えば、前進方向)に駆動される。この場合、作動油は、走行用モータ33から第2駆動回路32bを介して走行用ポンプ31に戻る。また、作動油が、走行用ポンプ31から第2駆動回路32bを介して走行用モータ33に供給されることにより、走行用モータ33が他方向(例えば、後進方向)に駆動される。この場合、作動油は、走行用モータ33から第1駆動回路32aを介して走行用ポンプ31に戻る。
【0034】
駆動油圧回路32には、駆動回路圧センサ34が設けられている。駆動回路圧センサ34は、第1駆動回路32a又は第2駆動回路32bを介して走行用モータ33に供給される作動油の圧力を検出する。具体的には、駆動回路圧センサ34は、第1回路圧センサ34aと第2回路圧センサ34bとを含む。
【0035】
第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を検出する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を検出する。第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を示す信号を出力する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を示す信号を出力する。
【0036】
走行用モータ33は、可変容量型の油圧モータである。走行用モータ33は、走行用ポンプ31から吐出された作動油によって駆動され、走行のための駆動力を生じさせる。走行用モータ33には、モータ容量制御装置35が接続されている。モータ容量制御装置35は、走行用モータ33の容量を制御する。モータ容量制御装置35は、モータシリンダ35aとモータ制御弁35bとを含む。
【0037】
モータシリンダ35aは、走行用モータ33に接続されている。モータシリンダ35aは、油圧によって駆動され、走行用モータ33の傾転角を変更する。モータ制御弁35bは、モータ制御弁35bに入力される指令信号に基づいて制御される電磁比例制御弁である。モータ制御弁35bが、モータシリンダ35aを動作させることで、走行用モータ33の容量が変更される。
【0038】
走行用モータ33は、駆動軸37に接続されている。駆動軸37は、図示しないアクスルを介して上述した走行輪4に接続されている。走行用モータ33の回転は、駆動軸37を介して走行輪4に伝達される。それにより、作業車両1が走行する。
【0039】
作業車両1には、車速センサ36が設けられている。車速センサ36は、車速を検出する。車速センサ36は、車速を示す信号を出力する。例えば、車速センサ36は、駆動軸37の回転速度を検出することにより、車速を検出する。
【0040】
HST23は、チャージポンプ38とチャージ回路39とを含む。チャージポンプ38は、固定容量型の油圧ポンプである。チャージポンプ38は、エンジン21に接続されている。チャージポンプ38は、エンジン21によって駆動されることで、駆動油圧回路32に作動油を供給する。
【0041】
チャージ回路39は、チャージポンプ38に接続されている。チャージ回路39は、第1チェック弁41を介して、第1駆動回路32aに接続されている。チャージ回路39は、第2チェック弁42を介して、第2駆動回路32bに接続されている。
【0042】
チャージ回路39は、第1リリーフ弁43を介して、第1駆動回路32aに接続されている。第1リリーフ弁43は、第1駆動回路32aの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。チャージ回路39は、第2リリーフ弁44を介して第2駆動回路32bに接続されている。第2リリーフ弁44は、第2駆動回路32bの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。
【0043】
チャージ回路39には、チャージリリーフ弁40が設けられている。チャージリリーフ弁40は、チャージ回路39の油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。それにより、チャージ回路39の油圧が、所定のリリーフ圧を超えないように制限される。
【0044】
走行用ポンプ31には、ポンプ容量制御装置45が接続されている。ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の容量を制御する。なお、油圧ポンプの容量とは、一回転あたりの作動油の吐出量(cc/rev)を意味する。また、ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の吐出方向を制御する。ポンプ容量制御装置45は、ポンプ制御シリンダ46とポンプ制御弁47とを含む。
【0045】
ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31に接続されている。ポンプ制御シリンダ46は、油圧によって駆動され、走行用ポンプ31の傾転角を変更する。これにより、ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31の容量を変更する。ポンプ制御シリンダ46は、ポンプパイロット回路48を介してチャージ回路39に接続されている。
【0046】
ポンプ制御弁47は、ポンプ制御弁47に入力される指令信号に基づいて制御される電磁比例制御弁である。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換える。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換えることにより、走行用ポンプ31の吐出方向を切り換える。それにより、走行用モータ33の駆動方向が変更され、作業車両1の前進と後進とが切り換えられる。
【0047】
また、ポンプ制御弁47は、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力(以下、「ポンプパイロット圧」と呼ぶ)を制御する。具体的には、ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46に供給されるポンプパイロット圧を変更することで、走行用ポンプ31の傾転角を調整する。それにより、走行用ポンプ31の容量が制御される。
【0048】
ポンプパイロット回路48は、リリーフ弁52を介して、作動油タンクに接続されている。リリーフ弁52のパイロットポートは、シャトル弁53を介して第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとに接続されている。シャトル弁53は、第1駆動回路32aの油圧と第2駆動回路32bの油圧とのうち大きい方(以下、「駆動回路圧」と呼ぶ)を、リリーフ弁52のパイロットポートに導入する。
【0049】
リリーフ弁52は、駆動回路圧が所定のカットオフ圧以上になると、ポンプパイロット回路48を作動油タンクに連通させる。それにより、ポンプパイロット回路48の油圧が低下することにより、走行用ポンプ31の容量が低減される。その結果、駆動回路圧の上昇が抑えられる。
【0050】
図3は、作業車両1の制御系を示す模式図である。
図3に示すように、作業車両1は、アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とを含む。アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とは、オペレータによって操作可能に配置されている。アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とは、キャブ5内に配置されている。
【0051】
アクセル操作部材61は、例えばアクセルペダルである。ただし、アクセル操作部材61は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材61は、アクセル操作センサ64と接続されている。アクセル操作センサ64は、例えばアクセル操作部材61の位置を検出する位置センサである。アクセル操作センサ64は、アクセル操作部材61の操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を示す信号を出力する。アクセル操作量は、例えば、アクセル操作部材61を全開に操作した状態を100%としたときの割合で表される。後述するように、オペレータは、アクセル操作量を調整することによって、エンジン回転速度を調整することができる。
【0052】
FR操作部材62は、例えばFRレバーである。ただし、FR操作部材62は、スイッチなどの他の部材であってもよい。FR操作部材62は、前進位置と後進位置と中立位置とに切り換えられる。FR操作部材62は、FR操作センサ65に接続されている。FR操作センサ65は、例えばFR操作部材62の位置を検出する位置センサである。FR操作センサ65は、FR操作部材62の位置を示す信号を出力する。オペレータは、FR操作部材62を操作することによって、作業車両1の前進と後進とを切り換えることができる。
【0053】
シフト操作部材63は、例えばダイヤル式のスイッチである。ただし、シフト操作部材63は、レバーなどの他の部材であってもよい。シフト操作部材63は、シフト操作センサ66と接続されている。シフト操作センサ66は、例えばシフト操作部材63の位置(以下、「シフト位置」と呼ぶ)を検出する位置センサである。シフト操作センサ66は、シフト位置を示す信号を出力する。シフト位置は、例えば第1速~第4速の位置を含む。ただし、シフト位置は、第4速より高速の位置を含んでもよい。或いは、シフト位置は、第1速から、第4速より低速の位置までであってもよい。
【0054】
図4は、作業車両1の車速-牽引力特性を示す図である。
図4に示すように、オペレータは、シフト操作部材63を操作することによって、最高車速を規定する変速パターン(L_1st~L_4th)を選択することができる。
【0055】
作業車両1は、作業機操作部材67を含む。作業機操作部材67は、例えば作業機レバーである。ただし、作業機操作部材67は、スイッチ等の他の部材であってもよい。作業機操作部材67の操作に応じたパイロット圧が、作業機制御弁30に印加される。作業機操作部材67は、作業機操作センサ68に接続されている。作業機操作センサ68は、例えば圧力センサである。作業機操作センサ68は、作業機操作部材67の操作量(以下、「作業機操作量」と呼ぶ)と操作方向とを検出し、作業機操作量と操作方向とを示す信号を出力する。なお、作業機制御弁30が、圧力比例制御弁ではなく、電磁比例制御弁である場合には、作業機操作センサ68は、作業機操作部材67の位置を電気的に検出する位置センサであってもよい。オペレータは、作業機操作部材67を操作することによって、作業機3を操作することができる。例えば、オペレータは、作業機操作部材67を操作することによって、バケット12を上昇、或いは下降させることができる。
【0056】
作業車両1は、入力装置69を含む。入力装置69は、例えばタッチパネルである。ただし、入力装置69は、タッチパネルに限らず、スイッチ等の他の装置であってもよい。オペレータは、入力装置69を操作することで、作業車両1の各種の設定を行うことができる。
【0057】
図3に示すように、作業車両1は、記憶装置71とコントローラ72とを含む。記憶装置71は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置71は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置71は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置71は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置71は、処理装置(プロセッサ)によって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記憶している。
【0058】
コントローラ72は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ72は、上述したセンサ、入力装置69、及び記憶装置71と通信可能に接続されている。コントローラ72は、上述した各種のセンサ、入力装置69、及び記憶装置71と有線、或いは無線によって通信可能に接続されている。コントローラ72は、センサ、入力装置69、及び記憶装置71から信号を受信することで各種のデータを取得する。コントローラ72は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。なお、コントローラ72は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。
【0059】
コントローラ72は、上述した制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24と、有線、或いは無線により通信可能に接続されている。コントローラ72は、制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24を制御する。
【0060】
詳細には、コントローラ72は、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、エンジントルク及びエンジン回転速度を制御する。コントローラ72は、モータ制御弁35bに指令信号を出力することで、走行用モータ33の容量を制御する。コントローラ72は、ポンプ制御弁47に指令信号を出力することで、走行用ポンプ31の容量を制御する。コントローラ72は、
図4及び
図5に示すような車速-牽引力特性が実現されるように、走行用ポンプの容量と走行用モータの容量とを制御して、HST23の変速比を制御する。
【0061】
図5は、オペレータによるアクセル操作部材61の操作に応じて変更される車速-牽引力特性の一例を示す図である。
図5において、T100は、アクセル操作量が100%であるときの車速-牽引力特性を示している。T80は、アクセル操作量が80%であるときの車速-牽引力特性を示している。T60は、アクセル操作量が60%であるときの車速-牽引力特性を示している。
【0062】
以下、コントローラ72によって実行される処理について説明する。
図6は、走行用ポンプ31を制御するためにコントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、作業車両1が前進するときの制御について説明する。ただし、作業車両1が後進するときにも同様の制御が行われてもよい。
【0063】
図6に示すように、S101では、コントローラ72は、アクセル操作量に基づき、エンジン回転速度を制御する。ここでは、コントローラ72は、アクセル操作センサ64からの信号により、アクセル操作量を取得する。コントローラ72は、アクセル操作量に応じて、目標エンジン回転速度を決定する。
【0064】
図7は、エンジントルクとエンジン回転速度との関係を規定するエンジントルク特性を示す図である。
図7において、Nt100, Nt80, Nt50, Nt0は、それぞれ、アクセル操作量が100%、80%、50%、0%であるときの目標エンジン回転速度を示している。目標エンジン回転速度Nt100, Nt80, Nt50, Nt0は、無負荷状態でのエンジン回転速度を示している。コントローラ72は、オールスピードガバナ方式で、アクセル操作量と負荷に応じて、燃料噴射装置24を制御する。詳細には、コントローラ72は、アクセル操作量に応じたレギュレーションライン上で、負荷に応じたエンジン回転速度となるように、燃料噴射装置24に指令信号を出力する。なお、
図7において、L100, L80, L50, L0は、それぞれ、アクセル操作量が100%、80%、50%、0%であるときのレギュレーションラインを示している。アクセル操作量が0%であることは、アクセル操作部材が操作されていないオフ状態であることを意味する。
【0065】
ステップS102において、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度を取得する。コントローラ72は、エンジン回転速度センサ25からの信号により、エンジン21の実回転速度を取得する。
【0066】
ステップS103において、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度に基づき、走行用ポンプ31のポンプパイロット圧を決定する。詳細には、
図9Aに示すように、ポンプパイロット圧特性D1を参照して、エンジン21の実回転速度からポンプパイロット圧を決定する。ポンプパイロット圧特性D1は、エンジン21の実回転速度に対するポンプパイロット圧を規定する。コントローラ72は、ローパスフィルタ72aを有している。コントローラ72は、ポンプパイロット圧を示す指令信号を、ローパスフィルタ72aを通して、ポンプ容量制御装置45に出力する。
【0067】
図8は、走行用モータ33を制御するためにコントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS201において、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度に基づき、目標駆動回路圧を決定する。詳細には、
図9Bに示すように、コントローラ72は、駆動回路圧特性D2を参照して、エンジン21の実回転速度から、目標駆動回路圧を決定する。駆動回路圧特性D2は、エンジン21の実回転速度に対する目標駆動回路圧を規定する。
【0068】
ステップS202において、コントローラ72は、実駆動回路圧を取得する。コントローラ72は、駆動回路圧センサ34からの信号により、実駆動回路圧を取得する。ステップS203において、コントローラ72は、目標駆動回路圧と実駆動回路圧とに基づき、走行用モータ33の目標容量を決定する。詳細には、
図9Bに示すように、コントローラ72は、実駆動回路圧が目標駆動回路圧に近づくように、目標駆動回路圧と実駆動回路圧との差に基づき、PID制御により、走行用モータ33の目標容量を決定する。
【0069】
コントローラ72は、ローパスフィルタ72bを有している。コントローラ72は、走行用モータ33の目標容量を示す指令信号を、ローパスフィルタ72bを通して、モータ容量制御装置35に出力する。
【0070】
本実施形態では、コントローラ72は、作業車両1が惰性減速中であるかを判定し、作業車両1が惰性減速中であるときには、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差に応じてHST23によるブレーキトルク(以下、HSTブレーキトルク)を低減するように、HST23を制御する。以下、HSTブレーキトルクを抑えるための第1実施形態に係る制御について説明する。
【0071】
図10は、第1実施形態において、コントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。
【0072】
ステップS201では、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度を取得する。ステップS202では、コントローラ72は、作業車両1が惰性減速中であるかを判定する。コントローラ72は、以下の式(1)で示す判定条件が満たされたときに、作業車両1が惰性減速中であると判定する。
Na > Nt + b1 (1)
“Na”は、エンジン21の実回転速度である。“Nt”は、上述した目標エンジン回転速度である。“b1”は、所定の定数であり、例えばヒステリシスのために設定される。上記の判定条件は、エンジン21の実回転速度が無負荷状態でのエンジン回転速度を越えていることを示している。作業車両1が惰性減速中であるとコントローラ72が判定したときには、処理はステップS203に進む。
【0073】
ステップS203では、コントローラ72は、走行用ポンプ31の目標容量の指令値の減少速度を遅くする。惰性減速時には、詳細には、コントローラ72は、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を通常時よりも小さくすることで、走行用ポンプ31の目標容量の指令値の減少速度を遅くする。
【0074】
図11において実線は、惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数との関係を示している。
図11において破線は、通常時のカットオフ周波数を示している。
図11に示すように、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差に応じて、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を小さくする。通常時のカットオフ周波数は値Fp1で一定である。それに対して、惰性減速時のカットオフ周波数は、偏差が所定値dN1以上では値Fp1で一定であるが、偏差が所定値dN1より小さいときには、偏差の減少に応じて小さくなる。
【0075】
なお、コントローラ72は、以下の式(2)で示す解除条件が満たされたときに、上述した惰性減速中の制御を終了して、通常時の制御に戻す。
Na < Nt - b2 (2)
“b2”は、所定の定数であり、例えばヒステリシスのために設定される。上記の判定条件は、エンジン21の実回転速度が無負荷状態でのエンジン回転速度を下回ったことを示している。
【0076】
以上説明した第1実施形態に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を低減する。それにより、第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとの間の差圧(以下、「HST差圧」)が低減される。HST差圧が小さいほど、HSTブレーキトルクは小さくなる。従って、惰性減速時に、HST差圧が低減されることで、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0077】
また、コントローラ72は、惰性減速時には、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差が小さくなるほど、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を小さくする。従って、惰性減速によりエンジン21の実回転速度が低下して目標回転速度に近づくほど、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数が小さくなる。そのため、惰性減速の終わりに近づくほど、HSTブレーキトルクが小さくなる。それにより、惰性減速の終わり際の減速感を緩めることができる。
【0078】
以上のように、本実施形態では、緩やかな惰性減速を容易に行うことができる。また、アクセル操作部材61がオフにされた状態で作業車両1が走行する機会が増えることで、燃費を向上させることができる。
【0079】
なお、コントローラ72は、作業車両1が惰性減速中であるときには、上述したステップS203において、アクセル操作量に応じて、走行用ポンプ31の目標容量の減少速度を遅くしてもよい。
図12は、第1実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
図12において実線は、惰性減速時における、アクセル操作量と、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数との関係を示している。
図12において破線は、通常時のカットオフ周波数を示している。
図12に示すように、通常時のカットオフ周波数は値Fp2で一定である。それに対して、惰性減速時のカットオフ周波数は、アクセル操作量がAc1以上では値Fp2で一定であるが、アクセル操作量が所定値AC1より小さいときには、アクセル操作量の減少に応じて小さくなる。
【0080】
以上説明した第1実施形態の変形例に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を低減する。それにより、惰性減速時に、HST差圧が低減されることで、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0081】
また、コントローラ72は、惰性減速には、アクセル操作量が小さくなるほど、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数を小さくする。従って、アクセル操作部材61がオフにされたときに、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。それにより、アクセル操作部材61がオフにされたときの減速感を緩めることができる。
【0082】
次に、HSTブレーキトルクを抑えるための第2実施形態に係る制御について説明する。
図13は、第2実施形態において、コントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。ステップS301及びS302は、上述したステップS201及びS202と同様である。
【0083】
ステップS303では、コントローラ72は、走行用モータ33の容量の下限値(以下「モータ容量の下限値」)を通常時よりも低減する。
図14において実線は、惰性減速時における、アクセル操作量と、モータ容量の下限値との関係を示している。
図14において破線は、通常時のモータ容量の下限値を示している。
図14に示すように、コントローラ72は、アクセル操作量に応じて、モータ容量の下限値を小さくする。通常時のモータ容量の下限値は、シフト位置に応じた値Qm1で一定である。それに対して、惰性減速時のモータ容量の下限値は、アクセル操作量が所定値Ac2以上では値Qm1で一定であるが、アクセル操作量が所定値Ac2より小さいときには、アクセル操作量の減少に応じて小さくなる。
【0084】
以上説明した第2実施形態に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、モータ容量の下限値を低減する。モータ容量が小さいほど、HSTブレーキトルクは小さくなる。従って、惰性減速時に、モータ容量の下限値が低減され、モータ容量が下限値の低減に追従して低減することで、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0085】
また、コントローラ72は、アクセル操作量が小さくなるほど、モータ容量の下限値を小さくする。従って、アクセル操作部材61がオフにされたときに、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。それにより、アクセル操作部材61がオフにされたときの減速感を緩めることができる。
【0086】
なお、コントローラ72は、車両が惰性減速中であるときには、上述したステップS303において、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差に応じて、モータ容量の下限値を増大させてもよい。
図15は、第2実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
図15において実線は、惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、モータ容量の下限値との関係を示している。
図15において破線は、通常時のモータ容量の下限値を示している。
【0087】
図15に示すように、コントローラ72は、惰性減速時には、通常時よりもモータ容量の下限値を小さくする。また、コントローラ72は、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差の減少に応じて、モータ容量の下限値を大きくする。通常時のモータ容量の下限値は、シフト位置に応じた値Qm1で一定である。それに対して、惰性減速時のモータ容量の下限値は、偏差が所定値dN2以上では、値Qm1よりも小さい値Qm2で一定である。また、惰性減速時のモータ容量の下限値は、偏差が所定値dN2より小さいときには、偏差の減少に応じて大きくなり、偏差が所定値dN2より小さい所定値dN3以下で、通常時の値Qm1に戻る。なお、所定値dN3は0であってもよい。
【0088】
以上説明した第2実施形態の変形例に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、モータ容量の下限値を低減する。それにより、惰性減速時に、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0089】
また、コントローラ72は、惰性減速時には、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差が小さくなるほど、モータ容量の下限値を大きくする。惰性減速時の制御が終了して通常時の制御に戻るときに、走行用モータ33の容量を滑らかに変化させることができる。
【0090】
なお、上述したアクセル操作量とモータ容量の下限値との関係、及び、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差とモータ容量の下限値との関係は、シフト位置ごとに設定されてもよい。例えば、
図16は、シフト位置ごとのアクセル操作量とモータ容量の下限値との関係を示している。
図16に示すように、コントローラ72は、高速側のシフト位置ほど、惰性減速時のモータ容量の下限値を小さくしてもよい。或いは、コントローラ72は、複数のシフト位置の一部のみにおいて、惰性減速時のモータ容量の下限値を通常時よりも低減してもよい。
【0091】
通常時の制御から上述した惰性減速時の制御に切り換える時には、コントローラ72は、モータ容量の下限値にモジュレーションをかけて変更してもよい。また、惰性減速時の制御から通常時の制御に切り換える時には、コントローラ72は、モータ容量の下限値にモジュレーションをかけて変更してもよい。
【0092】
次に、HSTブレーキトルクを抑えるための第3実施形態に係る制御について説明する。
図17は、第3実施形態において、コントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。
図18は、第3実施形態に係る作業車両1の駆動系の構成を示すブロック図である。
図19は、第3実施形態に係る作業車両1の制御系の構成を示すブロック図である。第3実施形態に係る作業車両1では、上述した第1実施形態の作業車両1の駆動系において、第1リリーフ弁43と第2リリーフ弁44とに代えて、第1リリーフ弁73と第2リリーフ弁74とが設けられている。第1リリーフ弁73と第2リリーフ弁74とは、リリーフ圧を可変に制御できる電磁比例制御弁である。コントローラ72は、リリーフ弁73,74と有線、或いは無線により接続されている。コントローラ72は、リリーフ弁73,74に指令信号を出力することで、リリーフ圧を可変に制御する。
【0093】
図17において、ステップS401及びS402は、上述したステップS201及びS202と同様である。ステップS403では、コントローラ72は、リリーフ弁73,74のリリーフ圧を通常時よりも低減する。
図20において実線は、惰性減速時における、アクセル操作量と、リリーフ弁73,74のリリーフ圧との関係を示している。
図20において破線は、通常時のリリーフ弁73,74のリリーフ圧を示している。
図20に示すように、コントローラ72は、アクセル操作量に応じて、リリーフ圧を小さくする。通常時のリリーフ圧は、値Pl1で一定である。それに対して、惰性減速時のリリーフ圧は、アクセル操作量が所定値Ac3以上では値Pl1で一定であるが、アクセル操作量が所定値Ac3より小さいときには、アクセル操作量の減少に応じて小さくなる。
【0094】
以上説明した第3実施形態に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、リリーフ圧を低減する。リリーフ圧が小さいほど、HST差圧が小さくなるため、HSTブレーキトルクは小さくなる。従って、惰性減速時に、リリーフ圧が低減されることで、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0095】
また、コントローラ72は、アクセル操作量が小さくなるほど、リリーフ圧を小さくする。従って、アクセル操作部材61がオフにされたときに、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。それにより、アクセル操作部材61がオフにされたときの減速感を緩めることができる。
【0096】
なお、コントローラ72は、作業車両1が惰性減速中であるときには、上述したステップS403において、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差に応じて、リリーフ弁73,74のリリーフ圧を低減させてもよい。
図21は、第3実施形態の変形例に係る処理を示す図である。
図21において実線は、惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、リリーフ弁73,74のリリーフ圧との関係を示している。
図20において破線は、通常時のリリーフ弁73,74のリリーフ圧を示している。
【0097】
図21に示すように、通常時のリリーフ圧は値Pl1で一定である。それに対して、惰性減速時のリリーフ圧は、偏差が所定値dN4以上では、値Pl1より小さい値Pl2で一定であるが、偏差が所定値dN4より小さいときには、偏差の減少に応じて小さくなる。
【0098】
以上説明した第3実施形態の変形例に係る制御では、コントローラ72は、惰性減速時には通常時よりも、リリーフ圧を低減する。それにより、惰性減速時に、HST差圧が低減されることで、HSTブレーキトルクを小さく抑えることができる。
【0099】
また、コントローラ72は、惰性減速には、偏差が小さくなるほど、リリーフ圧を小さくする。従って、惰性減速によりエンジン21の実回転速度が低下して目標回転速度に近づほど、リリーフ圧が小さくなる。そのため、惰性減速の終わりに近づくほど、HSTブレーキトルクが小さくなる。それにより、惰性減速の終わり際の減速感を緩めることができる。
【0100】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0101】
作業車両1は、ホイールローダに限らず、モータグレーダ等の他の種類の車両であってもよい。作業車両1の駆動系及び制御系の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、走行用ポンプ31の容量は、ポンプ制御弁47に限らず、他の制御弁によって制御されてもよい。すなわち、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を制御するための制御弁が、ポンプ制御弁47とは別に設けられてもよい。
【0102】
上述した各種の演算に用いられるパラメータは、上述したものに限らず、変更されてもよい。或いは、上述したパラメータ以外のパラメータが演算に用いられてもよい。上述した各種のデータは、例えば式で表されてもよく、或いは、テーブル、マップなどの形式であってもよい。
【0103】
コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行用ポンプ31の目標容量を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行用モータ33の目標容量を決定してもよい。
【0104】
コントローラ72は、上述した第1~第3実施形態に係る制御、及び、それらの変形例に係る制御のうちの2つ以上を組み合わせて実行してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法で、作業車両1が惰性減速中であるかを判定してもよい。例えば、コントローラ72は、車速センサ36が検出した車速とアクセル操作量とによって、作業車両1が惰性減速中であるかを判定してもよい。
【0105】
惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数との関係は、
図11に示すものに限らず、変更されてもよい。惰性減速時における、アクセル操作量と、ローパスフィルタ72aのカットオフ周波数との関係は、
図12に示すものに限らず、変更されてもよい。
【0106】
惰性減速時における、アクセル操作量とモータ容量の下限値との関係は、
図14、或いは
図16に示すものに限らず、変更されてもよい。惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、モータ容量の下限値との関係は、
図15に示すものに限らず、変更されてもよい。
【0107】
惰性減速時における、アクセル操作量と、リリーフ弁73,74のリリーフ圧との関係は、
図20に示すものに限らず、変更されてもよい。惰性減速時における、エンジン21の実回転速度と目標回転速度との偏差と、リリーフ弁73,74のリリーフ圧との関係は、
図21に示すものに限らず、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、作業車両において、緩やかな惰性走行を容易に行うことができると共に、燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
21・・エンジン、31・・走行用ポンプ、32・・駆動油圧回路、33・・走行用モータ、23・・HST、25・・エンジン回転速度センサ、61・・アクセル操作部材、64・・アクセル操作センサ、72・・コントローラ、31a・・第1ポンプポート、31b・・第2ポンプポート、33a・・第1モータポート、33b・・第2モータポート、32a・・第1駆動回路、32b・・第2駆動回路、72a・・ローパスフィルタ、73,74・・リリーフ弁