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  • 特許-切断方法及び切断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】切断方法及び切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 45/10 20060101AFI20221004BHJP
   B27B 5/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B23D45/10
B27B5/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018029075
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019141964
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩之
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-295601(JP,A)
【文献】特開平11-010601(JP,A)
【文献】特開2008-246666(JP,A)
【文献】特開昭58-057901(JP,A)
【文献】米国特許第04706535(US,A)
【文献】特開平03-221311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/10
B23D 45/02
B23D 45/04
B27B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被切断材と回転刃とを相対的に移動させることによって、前記被切断材を前記回転刃で切断する方法であって、
前記被切断材は、板状の本体と前記本体の端面から突出する突出部を備え、
前記被切断材はその厚み方向の一方の面である第一面と他方の面である第二面とを有し、
前記第一面は前記本体の一方の片面と前記突出部の第一面側の片面を含み、
前記第二面は前記本体の他方の片面を含み、
前記被切断材は、前記厚み方向における位置が前記第一面及び前記第二面と異なる第三面を有し、
前記第三面は、前記厚み方向における位置が前記第一面及び前記第二面との間に位置し、前記突出部の第二面側の片面を含み、
前記第一面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記第一面から前記被切断材に前記厚み方向で切り込みを形成する工程と、
前記切り込みを形成する工程の後に、前記第二面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記切り込みの位置で前記被切断材を切断する工程とを備え、
前記切り込みを形成する工程は、前記回転刃が、前記突出部及び前記突出部に連続する前記本体の一部において水平に移動することで、前記突出部及び前記突出部に連続する前記本体の一部に前記水平移動による切り込みを形成する工程と、前記回転刃が、前記本体の中央付近において上又は下方向に徐々に移動することで、前記本体に形成された前記水平移動による切り込みに連続する斜めの切り込みを形成する工程と、を備え、
前記切り込みを形成する工程において、前記回転刃が前記第二面及び前記第三面に達しないように、前記回転刃と前記被切断材とを前記厚み方向で相対的に移動させる
切断方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記回転刃は、前記切り込みを形成する工程で使用する切り込み刃と、前記切断する工程で使用する切断刃とを含み、
前記切り込み刃と前記切断刃の両方が前記被切断材に食い込む状態となるように、前記切り込み刃と前記切断刃の少なくとも一方を前記厚み方向で移動させる
切断方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記回転刃は、前記切り込みを形成する工程で使用する切り込み刃と、前記切断する工程で使用する切断刃とを含み、
前記回転刃が前記被切断材を横切るように、前記回転刃と前記被切断材とを相対的に往復移動させ、
往移動における前記切り込み刃が復移動における前記切断刃となり、前記往移動における前記切断刃が前記復移動における前記切り込み刃となるように、前記回転刃を移動させ、前記往移動と前記復移動はそれぞれ前記被切断材の別の箇所を切断する
切断方法。
【請求項4】
板状の被切断材に対して相対的に移動可能な回転刃を備え、請求項1~3のいずれか1項に記載の切断方法により、前記被切断材を前記回転刃で切断する装置であって、
前記回転刃は、前記第一面に食い込む方向に回転しながら、前記被切断材に厚み方向で切り込みを形成するとともに、前記第二面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記切り込みの位置で前記被切断材を切断するように構成され、
前記切り込みを形成する際に、前記回転刃が前記第二面及び前記第三面に達しないように、前記回転刃と前記被切断材とが前記厚み方向で相対的に移動可能に構成される
切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断方法及び切断装置に関する。詳しくは、壁材や屋根材などの建材を切断する際に好適に使用される切断方法及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の建材を割付等に応じて所定の寸法に切断することが行われている。また出隅部材などの建材を作成する材料を得るために、長尺の建材を所定の寸法に切断することが行われている。
【0003】
建材を切断するにあたって、刃物が建材の内側から表面へと移動した場合には、切断端部において建材の表面に、バリ、かえり、ささくれ、欠けなどの表面荒れが発生し、外観の低下や安全性の低下が生じることがあった。
【0004】
そこで、刃物が建材の内側から表面へと移動しないように切断することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された切断装置は、芯材の表裏面に表面板が設けられた建材パネルを切断するものであって、切削刃物として、建材パネルの片側の第1の表面板を切断する第1の切削刃物と、残りの第2の表面板を切断する第2の切削刃物とを有している。第1の切削刃物は、切刃が外側から内側に移動して第1の表面板を切断するように駆動する。第2の切削刃物は、切刃が外側から内側に移動して第2の表面板を切断するように駆動する。従って、両面の表面板をバリ等が外側に突出しないように切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-129115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された切断装置では、建築パネルが凹部や突出部を有する場合、凹部や突出部を構成する表面が建築パネルの他の表面と厚み方向で位置が異なる。このため、切削刃物が凹部や突出部を構成する表面を内側から外側に移動することがあり、建築パネルの表面にバリなどの表面荒れが生じやすかった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、被切断材の表面に切断によるバリなどの表面荒れが生じにくくなる切断方法及び切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の切断方法は、板状の被切断材と回転刃とを相対的に移動させることによって、前記被切断材を前記回転刃で切断する方法である。前記被切断材は、板状の本体と前記本体の端面から突出する突出部を備える。前記被切断材はその厚み方向の一方の面である第一面と他方の面である第二面とを有する。前記第一面は前記本体の一方の片面と前記突出部の第一面側の片面を含む。前記第二面は前記本体の他方の片面を含む。前記被切断材は、前記厚み方向における位置が前記第一面及び前記第二面と異なる第三面を有する。前記第三面は、前記厚み方向における位置が前記第一面及び前記第二面との間に位置し、前記突出部の第二面側の片面を含む。前記第一面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記第一面から前記被切断材に前記厚み方向で切り込みを形成する工程を備える。前記切り込みを形成する工程の後に、前記第二面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記第二面から前記切り込みの位置で前記被切断材を切断する工程とを備える。前記切り込みを形成する工程は、前記回転刃が、前記突出部及び前記突出部に連続する前記本体の一部において水平に移動することで、前記突出部及び前記突出部に連続する前記本体の一部に前記水平移動による切り込みを形成する工程と、前記回転刃が、前記本体の中央付近において上又は下方向に徐々に移動することで、前記本体に形成された前記水平移動による切り込みに連続する斜めの切り込みを形成する工程と、を備える。前記切り込みを形成する工程において、前記回転刃が前記第二面に達しないように、前記回転刃と前記切断材とを前記厚み方向で相対的に移動させる。
【0009】
本発明に係る一態様の切断装置は、板状の被切断材に対して相対的に移動可能な回転刃を備え、前記切断方法により、前記被切断材を前記回転刃で切断する装置である。前記回転刃は、前記第一面に食い込む方向に回転しながら、前記被切断材に厚み方向で切り込みを形成するとともに、前記第二面に食い込む方向に前記回転刃を回転させながら、前記切り込みの位置で前記被切断材を切断するように構成され、前記切り込みを形成する際に、前記回転刃が前記第二面及び前記第三面に達しないように、前記回転刃と前記切断材とが前記厚み方向で相対的に移動可能に構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、回転刃が被切断材の第一面と第二面の両面に食い込む方向に回転するため、被切断材の両面に切断によるバリなどの表面荒れが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明で切断される被切断材の一例を示す斜視図である。
図2図2A~Cは、本発明に係る切断方法の一実施の形態を示す概略図である。
図3図3A、Bは、本発明に係る切断方法の一実施の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
[被切断材]
図1は、本実施形態において、切断の対象となる被切断材30を示している。被切断材30は、例えば、窯業系の建築板などであるが、これに限定されるものではない。被切断材30はその短手方向Yと平行な切断線Cに沿って順次切断されていく。
【0014】
被切断材30はほぼ板状に形成され、正面視において、短手方向Yとこれに直交する長手方向Xとを有して矩形状に形成されている。被切断材30は互いに平行な第一面31と第二面32とを備えている。第一面31と第二面32は、長手方向X及び短手方向Yと平行に形成されている。第一面31と第二面32は、長手方向X及び短手方向Yと直交する厚み方向Zに並ぶように形成されている。第一面31は被切断材30の表面として形成され、第二面32は被切断材30の裏面としてそれぞれ形成されている。逆に、第一面31は被切断材30の裏面として形成され、第二面32は被切断材30の表面としてそれぞれ形成されていてもよい。被切断材30は平板状の本体40と突出部50を備えている。
【0015】
本体40は一方の片面が第一片面41として形成されており、他方の片面が第二片面42として形成されている。第一片面41は第一面31の一部を構成している。第二片面42は第二面32の一部を構成している。第一片面41と第二片面42は互いに平行に形成されている。また第一片面41と第二片面42は長手方向X及び短手方向Yと平行に形成されている。第一片面41はフラットに形成することができるが、凹凸模様が形成されていてもよい。
【0016】
突出部50は、厚み方向Zにおいて、本体40よりも薄く形成されている。突出部50の厚みは本体40の厚みの1/3~2/3とすることができるが、これに限定されるものではない。突出部50は長手方向Xにおいて被切断材30の全長にわたって設けられている。突出部50は第一突出部51と第二突出部52とを備えている。
【0017】
厚み方向Zにおいて、第一突出部51は第二片面42よりも第一片面41に近い位置に形成されている。第二突出部52は厚み方向Zにおいて第一片面41よりも第二片面42に近い位置に形成されている。第一突出部51は本体40の一端面から短手方向Yと平行に突出している。第二突出部52は本体40の他の一端面から短手方向Yと平行に突出している。第一突出部51と第二突出部52は本体40から互いに反対向きに突出している。
【0018】
厚み方向Zにおいて、第一突出部51の一方の片面61は第一片面41と同じ位置に形成されており、第一片面41と片面61とで第一面31が形成されている。また第一突出部51の他方の片面63は、厚み方向Zにおいて、片面61よりも第二面32に近い位置に形成されており、片面63が第三面33として形成されている。
【0019】
厚み方向Zにおいて、第二突出部52の一方の片面62は第二片面42と同じ位置に形成されており、第二片面42と片面62とで第二面32が形成されている。また第二突出部52の他方の片面64は、厚み方向Zにおいて、片面62よりも第一面31に近い位置に形成されており、片面64が第四面34として形成されている。
【0020】
第三面33と第四面34は厚み方向Zにおける位置が同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0021】
被切断材30が建築板の場合、第一突出部51は押え部として形成され、第二突出部52は受け部として形成される。隣接する二枚の建築板(被切断材30)は押え部(第一突出部51)と受け部(第二突出部52)とを相じゃくりにより接続することができる。
【0022】
[切断装置]
図2Aに示すように、本実施形態の切断装置は、回転刃10と台座20とを備えている。回転刃10は丸鋸などを使用することができるが、この場合、回転刃10の半径が被切断材30の厚み寸法よりも大きい方が好ましい。回転刃10はモーターなどの駆動機で回転駆動される。また回転刃10は駆動機及びレールなどを組合せた移動機により移動可能に形成されている。回転刃10は、例えば、鉛直方向と水平方向とに移動されるが、これに限定されるものではない。回転刃10は第一回転刃11と第二回転刃12とを備えている。
【0023】
台座20は、例えば、定盤などで形成される。台座20の上面は、例えば、水平に形成されている。台座20は駆動機及びレールなどを組合せた移動機により移動駆動自在に形成されている。台座20は、例えば、鉛直方向と水平方向とに移動駆動自在に形成されているが、これに限定されるものではない。
【0024】
[切断方法]
(準備工程)
まず、台座20の上面に被切断材30を載置する。このとき、第二面32が台座20の上面と接触している。また被切断材30は厚み方向Zが鉛直方向と平行となり、長手方向X及び短手方向Yが水平方向と平行となるように保持されている。
【0025】
一方、回転刃10は待機状態から動作状態になるように操作される。待機状態では、回転刃10はその回転駆動の中心位置が待機位置Hにある。待機位置Hは台座20に載置された被切断材30よりも上方にあり、回転刃10は待機位置Hよりも下降して動作状態になる。また稼動状態となった回転刃10は、台座20に載置された被切断材30の長手方向Xと平行な回転軸を中心として回転駆動されている。回転刃10である第一回転刃11と第二回転刃12は互いに逆向きに回転駆動されている。図2Aに示す例では、第一回転刃11は右回転(時計回り)であり、第二回転刃12は左回転(反時計回り)である。第一回転刃11は切り込み刃として被切断材30に切り込みを形成する工程で使用される。第二回転刃12は切断刃として被切断材30を切断する工程で使用される。
【0026】
なお、下降した第二回転刃12の下部は、台座20の上面よりも下側に位置しているが、これは、第二回転刃12が台座20に設けたスリットを通るように回転している状態である。
【0027】
(切り込みを形成する工程)
次に、第一回転刃11により第一面31から被切断材30に厚み方向Zで切り込みを形成する工程が行われる。この工程では、第一面31に食い込む方向(被切断材30の上側から下側に向かう方向)に第一回転刃11を回転させながら被切断材30を横切るように水平に移動させて、被切断材30に切り込みを形成する。また、この工程では、第二面32及び第三面33に第一回転刃11が達しないようにする。図2Aに、第一回転刃11の下端が通過する軌跡を一点鎖線Lで示す。
【0028】
さらに詳述すると、図2Bに示すように、まず、第一回転刃11は回転しながら、第二突出部52の側方から被切断材30に近づくように水平に移動する。次に、第二突出部52の端面に到達した第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第二突出部52の端面と第四面34とに切り込みを形成する。このとき、第二突出部52の片面62には第一回転刃11が達しないようにしている。
【0029】
次に、第二突出部52に切り込みを形成した後の第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、本体40の端面と第一片面41とに切り込みを形成する。このとき、図2Cに示すように、第一回転刃11は本体40に切り込みを形成している途中で徐々に上昇していく。そして、被切断材30の厚み方向において、第一回転刃11はその下端(一点鎖線Lの位置)が第三面33よりも上側の位置まで達すると上昇を止めて、再び、水平に移動していく。
【0030】
次に、第一片面41に切り込みを形成した後の第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第一突出部51の片面61と端面とに切り込みを形成する。このとき、第一突出部51の第三面33には第一回転刃11が達しないようにしている。
【0031】
このようにして切り込みが被切断材30を横切るように第一面31及び第四面34に形成される。切り込みを形成する工程では、第一面31及び第四面34に食い込む方向に第一回転刃11を回転させているので、第一面31及び第四面34にはバリ等の表面荒れが生じにくい。また第二面32及び第三面33には第一回転刃11が達していないので、第二面32及び第三面33にはバリ等の表面荒れが生じない。また被切断材30が建築板の場合、第三面33には軟質材からなる防水材が設けられていることがあるが、第三面33には第一回転刃11が達していないので、切り込みを形成する工程で防水材が剥がれ落ちにくくなる。例えば、切り込みを形成する工程では、第二面32及び第三面33から第一回転刃11の下端(一点鎖線Lの位置)までの寸法が3mm以上となるように、第一回転刃11を移動させるのが好ましい。
【0032】
本実施形態では、上記のように、第四面34には切り込みを形成するが、第三面33には切り込みを形成しないようにする。従って、厚み方向Zにおいて、第四面34と第三面33とが同じ位置にある場合、第三面33が第四面34よりも第一面31側に位置する場合、第三面33が第四面34よりも第二面32側に位置し、且つ第三面33と第四面34の位置の差が3mm以内の場合に、上記のように、切り込みを形成している途中で、回転刃10(第一回転刃11)を上昇させるのが好ましい。
【0033】
(切断する工程)
切断する工程は、切り込みを形成する工程の後に、被切断材30を切断する工程である。この工程では、第二面32に食い込む方向(被切断材30の下側から内側に向かう方向)に第二回転刃12を回転させながら被切断材30を横切るように水平に移動させて、被切断材30を切断する。また、この工程では、被切断材30に形成された上記切り込みの位置に沿って第二回転刃12を移動させて、被切断材30の切り込みがない部分を切断する。すなわち、図2Cにおいて、軌跡を示す一点鎖線Lよりも下側において、被切断材30を切断する。
【0034】
さらに詳述すると、まず、第二回転刃12は回転しながら、第二突出部52の側方から被切断材30に近づくように水平に移動する。次に、第二突出部52の端面に到達した第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第二突出部52を切断していく。次に、第二突出部52を切断した後の第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、本体40を切断する。次に、本体40を切断した後の第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第一突出部51を切断する。このようにして被切断材30は切断される。
【0035】
切断する工程では、第二面32に食い込む方向に第二回転刃12を回転させているので、第二面32にはバリ等の表面荒れが生じにくい。また第一面31には既に切り込みが形成されているので、第一面31にはバリ等の表面荒れが生じない。
【0036】
(往復移動)
上記のような切り込みを形成する工程と切断する工程は、被切断材30を横切るように回転刃10を往復移動させて行うのが好ましい。すなわち、上記のようにして、切り込みを形成する工程と切断する工程とを回転刃10の往移動で行った後、この回転刃10を復移動することにより準備工程の直後の状態に戻すことになるが、この復移動の際にも切り込みを形成する工程と切断する工程とを行うことができる。このように回転刃10の往復移動により切り込みを形成する工程と切断する工程とを行うことにより、往移動のみで被切断材30の切断を行うよりも効率良く被切断材30の切断を行うことができる。
【0037】
まず、復移動においては、図3Aに示すように、往移動における切り込み刃と切断刃とを入れ替える。すなわち、第二回転刃12を切り込み刃として使用し、第一回転刃11を切断刃として使用する。第二回転刃12は往移動のときの位置より上昇され、往移動における第一回転刃11と同じ高さ位置に移動される。すなわち、第二回転刃12の下端を一点鎖線Lに一致させる。第一回転刃11は往移動のときの位置より下降され、往移動における第二回転刃12と同じ高さ位置に移動される。第一回転刃11と第二回転刃12は復移動でも往移動と同じ方向に回転駆動している。
【0038】
次に、第二回転刃12により第一面31から被切断材30に厚み方向で切り込みを形成する工程が行われる。この工程では、第一面31に食い込む方向(被切断材30の上側から下側に向かう方向)に第二回転刃12を回転させながら被切断材30を横切るように水平に移動させて、被切断材30に切り込みを形成する。また、この工程では、第二面32及び第三面33に第二回転刃12が達しないようにする。第二回転刃12の下端が通過する軌跡は往移動の場合と同様に一点鎖線Lで示される。
【0039】
さらに詳述すると、図3Bに示すように、まず、第二回転刃12は回転しながら、第一突出部51の側方から被切断材30に近づくように水平に移動する。次に、第一突出部51の端面に到達した第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第一突出部51の端面と片面61とに切り込みを形成する。このとき、第一突出部51の第三面33には第二回転刃12が達しないようにしている。
【0040】
次に、第一突出部51に切り込みを形成した後の第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第一片面41と本体40の端面とに切り込みを形成する。このとき、第二回転刃12は本体40に切り込みを形成している途中で徐々に下降していく。そして、被切断材30の厚み方向において、第二回転刃12はその下端(一点鎖線Lの位置)が第三面33よりも下側の位置まで達すると下降を止めて、再び、水平に移動していく。
【0041】
次に、第一片面41に切り込みを形成した後の第二回転刃12は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第二突出部52の第四面34と端面とに切り込みを形成する。このとき、第二突出部52の片面62には第二回転刃12が達しないようにしている。
【0042】
このようにして切り込みが被切断材30を横切るように第一面31に形成される。切り込みを形成する工程では、第一面31に食い込む方向に第二回転刃12を回転させているので、第一面31にはバリ等の表面荒れが生じにくい。また第二面32及び第三面33には第二回転刃12が達していないので、第二面32及び第三面33にはバリ等の表面荒れが生じない。また被切断材30が建築板の場合、第三面33にはホットメルトなどで防水材が設けられていることがあるが、第三面33には第二回転刃12が達していないので、切り込みを形成する工程で防水材が剥がれ落ちにくくなる。
【0043】
次に、第一回転刃11により被切断材30を切断する工程を行う。復移動における切断する工程は、復移動における切り込みを形成する工程の後に、被切断材30を切断する工程である。この工程では、第二面32に食い込む方向(被切断材30の下側から内側に向かう方向)に第一回転刃11を回転させながら被切断材30を横切るように水平に移動させて、被切断材30を切断する。また、この工程では、復移動において被切断材30に形成された上記切り込みの位置に沿って第一回転刃11を移動させて、被切断材30の切り込みがない部分を切断する。すなわち、図3Bにおいて、軌跡を示す一点鎖線Lよりも下側において、被切断材30を切断する。
【0044】
さらに詳述すると、まず、第一回転刃11は回転しながら、第一突出部51の側方から被切断材30に近づくように水平に移動する。次に、第一突出部51の端面に到達した第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第一突出部51を切断していく。次に、第一突出部51を切断した後の第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、本体40を切断する。次に、本体40を切断した後の第一回転刃11は被切断材30を横切る方向にさらに水平に移動し、第二突出部52を切断する。このようにして被切断材30は切断される。
【0045】
復移動における切断する工程では、第二面32に食い込む方向に第一回転刃11を回転させているので、第二面32にはバリ等の表面荒れが生じにくい。また復移動においても第一面31には既に切り込みが形成されているので、第一面31にはバリ等の表面荒れが生じない。
【0046】
なお、往移動と復移動では、被切断材30の別の部分を切断している。従って、往移動が終わった後、復移動する前に、被切断材30と回転刃10のいずれか一方を他方に対して相対的に長手方向Xと平行に移動させるようにする。
【0047】
[変形例]
上記の実施形態において、切り込みを形成する工程と切断する工程とが同時に行われている期間があってもよい。すなわち、切り込みを形成する工程が完全に終わった後、切断する工程を行うよりも、両方の回転刃10(第一回転刃11と第二回転刃12)とが被切断材30に食い込んで、切り込みを形成する工程と切断する工程とが同時に行われている期間がある方が効率よく被切断材30を切断することができる。この場合、切り込みを形成している一方の回転刃10(第一回転刃11又は第二回転刃12)の直後に、切断を行う他方の回転刃10(第一回転刃11又は第二回転刃12)を配置し、切り込みを形成した直後に切断を行うようにする。
【0048】
また上記では、回転刃10として第一回転刃11と第二回転刃12とを使用した場合について説明したが、一枚の回転刃10で切り込みを形成する工程と切断する工程の両方を行ってもよい。この場合、切断効率が低下するものの、切断装置の簡素化を図ることができる。また被切断材30の部分によって、回転刃10の枚数を変えても良い。例えば、被切断材30が建築板の場合、防水材が設けられた部分では二枚の回転刃10で切断するものの、その他の部分は一枚の回転刃10のみで化粧面(第一面31)側から食い込むように切断することができる。
【0049】
また上記では、台座20に載置された被切断材30に対して回転刃10を鉛直方向で上昇及び下降させたり、水平方向に移動させたりする場合について説明したが、これに限らない。例えば、回転刃10を所定位置に固定しておいて、台座20を鉛直方向で上昇及び下降させたり、水平方向に移動させたりしてもよい。また回転刃10と台座20の両方を鉛直方向で上昇及び下降させたり、水平方向に移動させたりしてもよい。つまり、回転刃10と被切断材30のいずれか一方が他方に対して相対的に移動すればよい。
【0050】
また上記では、本体40の端面から突出する第一突出部51の下面(第二面32側の面)を第三面33としたが、これに限らない。例えば、第二面32に開口する凹部の内面を第三面33とすることができる。また被切断材30として相じゃくりで接続される建築板を記載したが、これに限らず、例えば、本実で接続される建築板が被切断材30であってもよい。
【0051】
[本実施形態の特徴]
本実施形態は以下の態様を有する。
【0052】
第1の態様は、板状の被切断材30と回転刃10とを相対的に移動させることによって、被切断材30を回転刃10で切断する方法である。被切断材30はその厚み方向の一方の面である第一面31と他方の面である第二面32とを有する。第一面31に食い込む方向に回転刃10を回転させながら、第一面31から被切断材30に厚み方向で切り込みを形成する工程を備える。切り込みを形成する工程の後に、第二面32に食い込む方向に回転刃10を回転させながら、切り込みの位置で被切断材30を切断する工程とを備える。切り込みを形成する工程において、回転刃10が第二面32に達しないように、回転刃10と被切断材30とを厚み方向で相対的に移動させる。
【0053】
この場合、被切断材30の第一面31と第二面32の両面に切断によるバリなどの表面荒れが生じにくくなる。
【0054】
第2の態様は、第1の形態において、回転刃10は、切り込みを形成する工程で使用する切り込み刃と、切断する工程で使用する切断刃とを含んでいる。切り込み刃と切断刃の両方が被切断材30に食い込む状態となるように、切り込み刃と切断刃の少なくとも一方を厚み方向で移動させることが好ましい。
【0055】
この場合、切り込みを形成する工程と切断する工程とを連続的に行うことができ、生産効率が向上する。
【0056】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、回転刃10は、切り込みを形成する工程で使用する切り込み刃と、切断する工程で使用する切断刃とを含んでいる。回転刃10が被切断材30を横切るように、回転刃10と被切断材30とを相対的に往復移動させる。往移動における切り込み刃が復移動における切断刃となり、往移動における切断刃が復移動における切り込み刃となるように、回転刃10を移動させる。往移動と復移動はそれぞれ被切断材30の別の箇所を切断する。
【0057】
この場合、回転刃が往移動する場合と復移動する場合の両方で被切断材を切断することができて被切断材を効率よく切断することができる。
【0058】
第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一つの態様において、被切断材30は、厚み方向における位置が第一面31及び第二面32と異なる第三面33を有する。切り込みを形成する工程において、回転刃10が第三面33に達しないように、回転刃10と被切断材30とを厚み方向で相対的に移動させる。
【0059】
この場合、被切断材30の第三面33に切断によるバリなどの表面荒れが生じにくくなる。
【0060】
第5の態様は、第4の態様において、被切断材30は、板状の本体40と本体40の端面から突出する突出部50を備える。第二面32は本体40の片面で形成される。第三面33は突出部50の第二面32側の片面で形成される。
【0061】
この場合、被切断材30が相じゃくりで接続される建築板であっても、実部の表面に切断によるバリなどの表面荒れが生じにくくなる。
【0062】
第6の態様は、板状の被切断材30に対して相対的に移動可能な回転刃10を備え、被切断材30を回転刃10で切断する装置である。被切断材30はその厚み方向の一方の面である第一面31と他方の面である第二面32とを有する。回転刃10は、第一面31に食い込む方向に回転しながら、被切断材30に厚み方向で切り込みを形成するとともに、第二面32に食い込む方向に回転刃10を回転させながら、切り込みの位置で被切断材30を切断するように構成される。切り込みを形成する際に、回転刃10が第二面32に達しないように、回転刃10と被切断材30とが厚み方向で相対的に移動可能に構成される。
【0063】
この場合、被切断材30の第一面31と第二面32の両面に切断によるバリが生じにくくなる。
【符号の説明】
【0064】
10 回転刃
30 被切断材
31 第一面
32 第二面
33 第三面
50 突出部
図1
図2
図3