(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
E02F3/85 D
(21)【出願番号】P 2018062238
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 純仁
(72)【発明者】
【氏名】石橋 永至
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06076029(US,A)
【文献】特開2017-227014(JP,A)
【文献】特開2017-180079(JP,A)
【文献】米国特許第04829418(US,A)
【文献】特開平03-295933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機
と走行装置とを有する作業車両の制御システムであって、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
第1の目標設計地形を決定し、
前記作業車両の走行中に、前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記作業車両の走行中に、前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
目標深さを決定し、
前記目標深さに基づいて前記第1の目標設計地形を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正し、
修正された目標深さに基づいて前記第2の目標設計地形を決定する、
請求項2に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形を鉛直方向に、前記変位量分、変位させるように修正する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
第1の目標設計地形を決定し、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記現況地形を、少なくとも第1の区画と第2の区画とを含む複数の区画に区切り、
前記第1の区画に対して前記第1の目標設計地形を決定し、
前記第2の区画に対して前記第2の目標設計地形を決定する、
作業車両の制御システム。
【請求項6】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
目標深さを決定し、
前記現況地形データに基づいて、前記現況地形上に位置する複数の区画点の位置を取得し、
前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記目標深さ分、変位させた複数の基準点を決定し、
前記複数の基準点に基づいて第1の目標設計地形を決定し、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成する、
作業車両の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記修正された目標深さ分、変位させた前記複数の基準点により、前記第2の目標設計地形を決定する、
請求項6に記載の作業車両の制御システム。
【請求項8】
作業機
と走行装置とを有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
第1の目標設計地形を決定することと、
前記作業車両の走行中に、前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成することと、
操作装置から、オペレータによる操作を示す操作信号を受信することと、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得することと、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定することと、
前記作業車両の走行中に、前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成すること、
を備える方法。
【請求項9】
目標深さを決定することをさらに備え、
前記第1の目標設計地形は、前記目標深さに基づいて決定される、
請求項8に記載の作業車両の制御システム。
【請求項10】
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正することをさらに備え、
前記第2の目標設計地形は、修正された目標深さに基づいて決定される、
請求項9に記載の作業車両の制御システム。
【請求項11】
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときに、前記第1の目標設計地形を鉛直方向に、前記変位量分、変位させるように修正することをさらに備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
作業機を有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
第1の目標設計地形を決定することと、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成することと、
操作装置から、オペレータによる操作を示す操作信号を受信することと、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得することと、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定することと、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成することと、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することと、
前記現況地形を、少なくとも第1の区画と第2の区画とを含む複数の区画に区切ることと、
を備え、
前記第1の区画に対して前記第1の目標設計地形が決定され、
前記第2の区画に対して前記第2の目標設計地形が決定される、
方法。
【請求項13】
作業機を有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することと、
前記現況地形データに基づいて、前記現況地形上に位置する複数の区画点の位置を取得することと、
目標深さを決定することと、
前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記目標深さ分、変位させた複数の基準点を決定することと、
前記複数の基準点に基づいて第1の目標設計地形を決定することと、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成することと、
操作装置から、オペレータによる操作を示す操作信号を受信することと、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得することと、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定することと、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成すること、
を備える方法。
【請求項14】
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正することをさらに備え、
前記第2の目標設計地形を決定することは、前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときに、前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記修正された目標深さ分、変位させた前記複数の基準点により、前記第2の目標設計地形を決定することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
作業機と、
走行装置と、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
第1の目標設計地形を決定し、
前記作業車両の走行中に、前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記作業車両の走行中に、前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成する、
作業車両。
【請求項16】
前記コントローラは、
目標深さを決定し、
前記目標深さに基づいて前記第1の目標設計地形を決定する、
請求項15に記載の作業車両。
【請求項17】
前記コントローラは、
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正し、
修正された目標深さに基づいて前記第2の目標設計地形を決定する、
請求項16に記載の作業車両。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形を鉛直方向に、前記変位量分、変位させるように修正する、
請求項15に記載の作業車両。
【請求項19】
作業機と、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
第1の目標設計地形を決定し、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記現況地形を、少なくとも第1の区画と第2の区画とを含む複数の区画に区切り、
前記第1の区画に対して前記第1の目標設計地形を決定し、
前記第2の区画に対して前記第2の目標設計地形を決定する、
作業車両。
【請求項20】
作業機と、
オペレータによる操作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置と通信し、前記作業機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記現況地形データに基づいて、前記現況地形上に位置する複数の区画点の位置を取得し、
目標深さを決定し、
前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記目標深さ分、変位させた複数の基準点を決定し、
前記複数の基準点に基づいて第1の目標設計地形を決定
し、
前記第1の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記第1の目標設計地形に対する前記作業機の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定し、
前記第2の目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成する、
作業車両。
【請求項21】
前記コントローラは、
前記変位量に基づいて前記目標深さを修正し、
前記第1の目標設計地形に従う作業中に前記作業機の操作を示す前記操作信号を受信したときには、前記複数の区画点のそれぞれを鉛直方向に、前記修正された目標深さ分、変位させた前記複数の基準点により、前記第2の目標設計地形を決定する、
請求項20に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業車両において、ブレードなどの作業機の位置を自動的に調整する制御が提案されている。例えば、特許文献1では、掘削作業において、ブレードに係る負荷を目標負荷に一致させる負荷制御により、ブレードの位置が自動調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の制御によれば、ブレードへの負荷が過剰に大きくなったときにブレードを上昇させることにより、シュースリップの発生を抑えることができる。これにより、効率良く作業を行うことができる。
【0005】
しかし、従来の制御では、
図20に示すように、まず設計地形100に沿うようにブレードが制御される。その後、ブレードへの負荷が大きくなると、負荷制御によってブレードを上昇させる(
図20のブレードの軌跡200参照)。従って、現況地形300に対して設計地形100が深い位置にある場合には、ブレードに係る負荷が急速に大きくなることで、ブレードを急速に上昇させてしまうことがあり得る。その場合、凹凸の大きな地形が形成されることになるため、スムーズに掘削作業を行うことは困難である。また、掘削される地形が荒れ易くなり、仕上がりの品質が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を作業車両に行わせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、作業機を有する作業車両の制御システムであって、操作装置とコントローラとを備える。操作装置は、オペレータによる操作を示す操作信号を出力する。コントローラは、操作装置と通信し、作業機を制御する。コントローラは、以下の処理を行うようにプログラムされている。コントローラは、第1の目標設計地形を決定する。コントローラは、第1の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。コントローラは、第1の目標設計地形に従う作業中に作業機の操作を示す操作信号を受信したときには、第1の目標設計地形に対する作業機の変位量を取得する。コントローラは、変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定する。コントローラは、第2の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。
【0008】
第2の態様は、作業機を有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、以下の処理を備える。第1の処理は、第1の目標設計地形を決定することである。第2の処理は、第1の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成することである。第3の処理は、操作装置から、オペレータによる操作を示す操作信号を受信することである。第4の処理は、第1の目標設計地形に従う作業中に作業機の操作を示す操作信号を受信したときには、第1の目標設計地形に対する作業機の変位量を取得することである。第5の処理は、変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定することである。第6の処理は、第2の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成することである。
【0009】
第3の態様は、作業車両であって、作業機と、操作装置と、コントローラとを備える。操作装置は、オペレータによる操作を示す操作信号を出力する。コントローラは、操作信号を受信し、作業機を制御する。コントローラは、以下の処理を実行するようにプログラムされている。コントローラは、第1の目標設計地形を決定する。コントローラは、第1の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。コントローラは、第1の目標設計地形に従う作業中に作業機の操作を示す操作信号を受信したときには、第1の目標設計地形に対する作業機の変位量を取得する。コントローラは、変位量に基づいて第2の目標設計地形を決定する。コントローラは、第2の目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を作業車両に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
【
図2】作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図4】作業車両の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【
図5】最終設計地形、現況地形、及び目標設計地形の一例を示す図である。
【
図6】目標設計地形を決定するための処理を示すフローチャートである。
【
図7】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図8】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図9】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図10】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図11】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図12】目標設計地形を決定するための処理を示す図である。
【
図13】マニュアル操作が介入したときの処理を示すフローチャートである。
【
図14】マニュアル操作が介入したときの処理を示す図である。
【
図15】マニュアル操作が介入したときの処理を示す図である。
【
図16】マニュアル操作が介入したときの処理を示す図である。
【
図17】第1変形例に係る作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図18】第2変形例に係る作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図19】他の実施形態に係るマニュアル操作が介入したときの処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0013】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。
【0014】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。
【0015】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトフレーム17は、走行装置12に取り付けられてもよい。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0016】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0017】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0018】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0019】
制御システム3は、操作装置25aと、入力装置25bと、コントローラ26と、記憶装置28と、制御弁27とを備える。操作装置25aと入力装置25bとは、運転室14に配置されている。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25aは、運転室14に配置されている。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25aは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0020】
入力装置25bは、後述する作業車両1の自動制御の設定を行うための装置である。入力装置25bは、オペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力装置25bの操作信号は、コントローラ26に出力される。入力装置25bは、例えば、タッチパネル式のディスプレイを含む。ただし、入力装置25bは、タッチパネルに限らず、ハードウェアキーを含んでもよい。
【0021】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ26は、操作装置25aと入力装置25bとから操作信号を取得する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。コントローラ26は、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御することで、作業車両1を走行させる。コントローラ26は、制御弁27を制御することで、ブレード18を上下に移動させる。
【0022】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、ブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0023】
制御システム3は、作業機センサ29を備える。作業機センサ29は、作業機13の位置を検出し、作業機13の位置を示す作業機位置信号を出力する。作業機センサ29は、作業機13の変位を検出する変位センサであってもよい。詳細には、作業機センサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。
図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。作業機センサ29は、作業機13の回転角度を直接検出する回転センサであってもよい。
【0024】
図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
図3では、作業機13の基準位置が二点鎖線で示されている。作業機13の基準位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の基準位置からの角度である。
【0025】
図2に示すように、制御システム3は、位置センサ31を備えている。位置センサ31は、作業車両1の位置を測定する。位置センサ31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。例えばGNSSレシーバ32のアンテナは、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナの位置を演算して車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。コントローラ26は、車体位置データにより、作業車両1の進行方向と車速とを得る。
【0026】
車体位置データは、アンテナ位置のデータでなくてもよい。車体位置データは、作業車両1内、或いは、作業車両1の周辺において、アンテナとの位置関係が固定されている任意の場所の位置を示すデータであってもよい。
【0027】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データを取得する。
【0028】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置データと、車体傾斜角データとから、刃先位置Pbを演算する。
図3に示すように、コントローラ26は、車体位置データに基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法データに基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置Pbのローカル座標を算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置Pbのローカル座標と車体傾斜角データとに基づいて、刃先位置Pbのグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置Pbのグローバル座標を刃先位置データとして取得する。
【0029】
記憶装置28は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサによって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0030】
記憶装置28は、設計地形データとワークサイト地形データとを記憶している。設計地形データは、最終設計地形を示す。最終設計地形は、ワークサイトの表面の最終的な目標形状である。設計地形データは、例えば、三次元データ形式の土木施工図である。ワークサイト地形データは、ワークサイトの広域の地形を示す。ワークサイト地形データは、例えば、三次元データ形式の現況地形測量図である。ワークサイト地形データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。
【0031】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、ワークサイトの現況地形を示す。ワークサイトの現況地形は、作業車両1の進行方向に沿う領域の地形である。現況地形データは、ワークサイト地形データと上述の位置センサ31から得られる作業車両1の位置と進行方向とからコントローラ26での演算により取得される。現況地形データは、車載されたライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)などによる現況地形の測距から取得されてもよい。
【0032】
コントローラ26は、現況地形データと、設計地形データと、刃先位置データとに基づいて、作業機13を自動的に制御する。なお、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。作業車両1の走行は、コントローラ26によって自動的に制御されてもよい。例えば、作業車両1の走行制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。或いは、走行制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業車両1の走行は、オペレータによる手動操作によって行われてもよい。
【0033】
以下、コントローラ26によって実行される、掘削における作業車両1の自動制御について説明する。コントローラ26は、所定の開始条件が満たされたときに、自動制御を開始する。所定の開始条件は、例えば、操作装置25aから作業機13の下げ操作を示す操作信号をコントローラ26が受信したことであってもよい。或いは、所定の開始条件は、入力装置25bから自動制御の開始指令を示す操作信号をコントローラ26が受信したことであってもよい。
【0034】
図4は、自動制御の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置Pbを取得する。
【0035】
ステップS102では、コントローラ26は、設計地形データを取得する。
図5に示すように、設計地形データは、作業車両1の進行方向において、複数の参照点Pn(n=0,1,2,3,...,A)での最終設計地形60の高さZdesignを含む。複数の参照点Pnは、作業車両1の進行方向に沿う所定間隔ごとの複数地点を示す。複数の参照点Pnは、ブレード18の進行パス上にある。なお、
図5では、最終設計地形60は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0036】
ステップS103では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。コントローラ26は、記憶装置28より得られるワークサイト地形データと、位置センサ31より得られる車体の位置データ及び進行方向データから演算により、現況地形データを取得する。
【0037】
現況地形データは、作業車両1の進行方向に位置する地形を示す情報である。
図5は、現況地形50の断面を示す。なお、
図5において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業車両1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0038】
詳細には、現況地形データは、作業車両1の進行方向において、現在位置から所定の地形認識距離dAまでの複数の参照点Pnでの現況地形50の高さZnを含む。本実施形態において、現在位置は、作業車両1の現在の刃先位置Pbに基づいて定められる位置である。ただし、現在位置は、作業車両1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。複数の参照点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる。
【0039】
ステップS104では、コントローラ26は、目標設計地形データを決定する。目標設計地形データは、
図5に破線で記載された目標設計地形70を示す。目標設計地形70は、作業におけるブレード18の刃先の望まれる軌跡を示す。目標設計地形70は、作業対象である地形の目標プロファイルであり、掘削作業の結果として望まれる形状を示す。
図5に示すように、コントローラ26は、少なくとも一部が、現況地形50よりも下方に位置する目標設計地形70を決定する。
【0040】
なお、コントローラ26は、最終設計地形60を下方に越えないように、目標設計地形70を決定する。従って、コントローラ26は、掘削作業時には、最終設計地形60以上、且つ、現況地形50より下方に位置する目標設計地形70を決定する。
【0041】
ステップS105では、コントローラ26は、目標設計地形70に従って作業機13を制御する。コントローラ26は、目標設計地形70に従ってブレード18の刃先位置が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、ブレード18の刃先位置Pbが目標設計地形70に向かって移動する。
【0042】
ステップS106では、コントローラ26は、ワークサイト地形データを更新する。コントローラ26は、刃先位置Pbの最新の軌跡を示す位置データによってワークサイト地形データを更新する。ワークサイト地形データの更新は、随時、行われてもよい。或いは、コントローラ26は、車体位置データと車体寸法データとから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置データによってワークサイト地形データを更新してもよい。この場合、ワークサイト地形データの更新は即時に行うことができる。
【0043】
或いは、ワークサイト地形データは、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データからワークサイト地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。外部の測量装置又はカメラの場合、ワークサイト地形データの更新は、所定周期ごと、あるいは随時に行われてもよい。
【0044】
以上の処理が繰り返されることにより、現況地形50が最終設計地形60に近づくように、掘削が行われる。
【0045】
次に、目標設計地形70を決定するための処理について詳細に説明する。
図6は、目標設計地形70を決定するための処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS201では、コントローラ26は、開始点S0を決定する。
図7に示すように、コントローラ26は、自動制御を開始した時点での刃先位置Pbから前方に所定距離L1の位置を、開始点S0として決定する。所定距離L1は、記憶装置28に保存されている。所定距離L1は、入力装置25bによって設定可能であってもよい。
【0046】
ステップS202では、コントローラ26は、現況地形データに基づいて、複数の区画点An (n=1,2,...)を決定する。
図7に示すように、コントローラ26は、現況地形50を区画点Anによって複数の区画に区切る。区画点Anは、現況地形50上において所定間隔L2ごとに位置する地点である。所定間隔L2は例えば3mである。ただし、所定間隔L2は3mより小さくてもよく、3mより大きくてもよい。所定間隔L2は、記憶装置28に保存されている。所定間隔L2は、入力装置25bによって設定可能であってもよい。コントローラ26は、開始点S0から、作業車両1の進行方向において、所定間隔L2ごとの複数の地点を、区画点Anとして決定する。
【0047】
ステップS203では、コントローラ26は、現況地形データを平滑化する。コントローラ26は、直線補間により、現況地形データを平滑化する。詳細には、
図8に示すように、コントローラ26は、各区画点Anをつなぐ直線で現況地形50を置き換えることにより、現況地形データを平滑化する。
【0048】
ステップS204では、コントローラ26は、目標深さL3を決定する。コントローラ26は、入力装置25bによって設定された制御モードに応じて目標深さL3を決定する。例えば、オペレータは、入力装置25bによって第1モード、第2モード、第3モードにいずれかを選択可能である。第1モードは最も負荷の大きい制御モードであり、第3モードは最も負荷の小さい制御モードである。第2モードは、第1モードと第3モードとの間の負荷の制御モードである。
【0049】
各モードに対応する目標深さL3が記憶装置28に保存されている。コントローラ26は、第1モードでは第1の目標深さ、第2モードでは第2の目標深さ、第3モードでは第3の目標深さを、目標深さL3として選択する。第1の目標深さは、第2の目標深さよりも大きい。第2の目標深さは、第3の目標深さよりも大きい。なお、目標深さL3は、入力装置25bによって任意に設定可能であってもよい。
【0050】
ステップS205では、コントローラ26は、複数の基準点を決定する。
図9に示すように、コントローラ26は、開始点S0の1つ先の区画点A1と、2つ先の区画点A2のそれぞれを目標深さL3分、下方に変位させた地点を、それぞれ基準点B1,B2として決定する。
【0051】
ステップS206では、コントローラ26は、複数の基準地形を決定する。
図9に示すように、コントローラ26は、第1基準地形C1と第2基準地形C2とを決定する。第1基準地形C1は、開始点S0と、その1つ先の基準点B1とを結ぶ直線で示される。第2基準地形C2は、開始点S0と、その2つ先の基準点B2とを結ぶ直線で示される。
【0052】
ステップS207では、コントローラ26は、目標設計地形70を決定する。コントローラ26は、複数の区画点Anで区切られた区画ごとに目標設計地形70を決定する。
図10に示すように、コントローラ26は、第1基準地形C1と第2基準地形C2との間を通るように第1の目標設計地形70_1を決定する。第1の目標設計地形70_1は、開始点S0と、その1つ先の区画点A1との間の区画(以下、「第1の区画」と呼ぶ)における目標設計地形70である。
【0053】
詳細には、コントローラ26は、第1基準地形C1と第2基準地形C2との平均角度を算出する。平均角度は、第1基準地形C1の水平方向に対する角度と、第2基準地形C2の水平方向に対する角度との平均値である。コントローラ26は、水平方向に対して平均角度で傾斜した直線を、第1の目標設計地形70_1として決定する。
【0054】
以上のように第1の目標設計地形70_1が決定されると、上述したステップS105の処理に従い、コントローラ26は、
図11に示すように、第1の目標設計地形70_1に従って、作業機13を制御する。
【0055】
ステップS208では、コントローラ26は、次の開始点S1を決定する。次の開始点S1は、次の目標設計地形70、すなわち第2の目標設計地形70_2の開始点である。第2の目標設計地形70_2は、次の開始点S1と、その1つ先の区画点A2との間の区画(以下、「第2の区画」と呼ぶ)における目標設計地形70である。
図12に示すように、次の開始点S1は、第1の目標設計地形70_1の終了位置であり、区画点A1の鉛直下方に位置する。
【0056】
コントローラ26は、次の開始点S1を決定すると、ステップS205からステップS207の処理を繰り返すことで第2の目標設計地形70_2を決定する。コントローラ26は、第1の目標設計地形70_1に従う作業中に、第2の目標設計地形70_2を決定する。
【0057】
詳細には、
図12に示すように、コントローラ26は、次の開始点S1と、その1つ先の基準点B2とを結ぶ直線を、次の第1基準地形C1として決定する。また、コントローラ26は、次の開始点S1と、その2つ先の基準点B3とを結ぶ直線を、次の第2基準地形C2として決定する。そして、第1基準地形C1と第2基準地形C2との平均角度から、第2の目標設計地形70_2を決定する。
【0058】
作業車両1が次の開始点S1に到達すると、上述したステップS105の処理に従い、コントローラ26は、第2の目標設計地形70_2に従って、作業機13を制御する。そして、コントローラ26は、上述した処理を繰り返すことで、現況地形50の掘削を続ける。
【0059】
なお、所定の終了条件が満たされたときには、コントローラ26は、上述した目標設計地形70を決定するための処理を終了する。所定の終了条件は、例えば作業機13が保持しているマテリアルの量が所定の上限値に到達したことである。所定の終了条件が満たされると、コントローラ26は、現況地形50に沿うように作業機13を制御する。それにより、掘削されたマテリアルをスムーズに運搬することができる。
【0060】
次に、上述した自動制御中に、オペレータによる作業機13のマニュアル操作が介入したときの処理について説明する。
図13は、マニュアル操作が介入したときの処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、
図14に示すように、第1の目標設計地形70_1に従う作業中にオペレータによる作業機13のマニュアル操作が介入したものとする。
【0061】
ステップS301では、コントローラ26は、マニュアル操作が成されたかを判定する。コントローラ26は、作業機13を上下に動作させる操作を示す操作信号を操作装置25aから受信したときに、マニュアル操作が成されたと判定する。マニュアル操作が成されたときには、処理はステップS302に進む。
【0062】
ステップS302では、コントローラ26は、作業機13の変位量を取得する。詳細には、
図14に示すように、コントローラ26は、第1の目標設計地形70_1に対する刃先位置Pbの鉛直方向の変位量L4を算出する。
【0063】
ステップS303では、コントローラ26は、現在作業中の目標設計地形70を修正する。すなわち、
図15に示すように、コントローラ26は、変更された刃先位置Pbの高さと一致するように第1の目標設計地形70_1を修正する。また、コントローラ26は、修正された第1の目標設計地形70_1に従って、作業機13を制御する。
【0064】
なお、コントローラ26は、作業機13の上げ操作が行われたときには、刃先位置Pbの高さに合わせて第1の目標設計地形70_1を上昇させる。コントローラ26は、作業機13の下げ操作が行われたときには、刃先位置Pbの高さに合わせて第1の目標設計地形70_1を下降させる。
【0065】
ステップS304では、コントローラ26は、変位量L4に基づいて目標深さL3を修正する。作業機13の上げ操作が行われたときには、コントローラ26は、目標深さL3を変位量L4分、小さくする。作業機13の下げ操作が行われたときには、コントローラ26は、目標深さL3を変位量L4分、大きくする。
【0066】
ステップS305では、コントローラ26は、修正された目標深さL3’に基づいて次の区画の目標設計地形70を決定する。すなわち、
図16に示すように、コントローラ26は、修正された目標深さL3’に基づいて第2の目標設計地形70_2を決定する。ここでは、上述したステップS205からステップS207の処理に従い、第2の目標設計地形70_2を決定する。
【0067】
詳細には、コントローラ26は、修正された第1の目標設計地形70_1から次の開始点S1を決定する。コントローラ26は、区画点A2,A3を鉛直方向に、修正された目標深さL3’分、変位させることで、基準点B2,B3を決定する。コントローラ26は、次の開始点S1と、その1つ先の基準点B2とを結ぶ直線を、次の第1基準地形C1として決定する。また、コントローラ26は、次の開始点S1と、その2つ先の基準点B3とを結ぶ直線を、次の第2基準地形C2として決定する。そして、第1基準地形C1と第2基準地形C2との平均角度から、第2の目標設計地形70_2を決定する。
【0068】
作業車両1が次の開始点S1に到達すると、上述したステップS105の処理に従い、コントローラ26は、第2の目標設計地形70_2に従って、作業機13を制御する。そして、コントローラ26は、上述した処理を繰り返すことで、現況地形50の掘削を続ける。
【0069】
なお、上記の例では、第1の目標設計地形70_1は、自動制御が開始された最初の区画の目標設計地形70である。しかし、第1の目標設計地形70_1は、他の区画に対する目標設計地形であってもよい。すなわち、第1の区画は、マニュアル介入が行われたときに作業されている区画を意味し、必ずしも自動制御が開始された最初の区画を意味するものではない。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る作業車両1の制御システム3では、コントローラ26は、目標設計地形70に従って、作業機13を動作させる。そのため、最終設計地形60がまだ深い位置にある場合には、最終設計地形60よりも上方に位置する目標設計地形70に従って、作業機13による掘削が行われる。そのため、作業機13への負荷が過剰に大きくなることが抑えられる。また、作業機13を急速に上下させることが抑えられる。それにより、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を作業車両1に行わせることができる。
【0071】
自動制御中にオペレータによる作業機13のマニュアル操作が介入すると、コントローラ26は、作業機13の変位量L4に応じて第1の目標設計地形70_1を修正する。また、コントローラ26は、作業機13の変位量L4に応じて目標深さL3を修正し、修正された目標深さL3’に基づいて、第2の目標設計地形70_2を決定する。そのため、自動制御においてオペレータの意思を反映させることができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
作業車両1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、油圧ショベル等の他の車両であってもよい。
【0074】
作業車両1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業車両1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、ワークサイトから離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。その場合、作業車両1は、運転室14を備えない車両であってもよい。
【0075】
作業車両1は、電動モータで駆動される車両であってもよい。その場合、電源は作業車両1の外部に配置されてもよい。電源が外部から供給される作業車両1は、内燃エンジン及びエンジン室を備えない車両であってよい。
【0076】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラ26を有してもよい。例えば、
図17に示すように、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業車両1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、目標設計地形70と作業順序を決定する処理とがリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0077】
操作装置25a及び入力装置25bは、作業車両1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両1から省略されてもよい。或いは、操作装置25a及び入力装置25bが作業車両1から省略されてもよい。
【0078】
現況地形50は、上述した位置センサ31に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、
図18に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ-ス装置37によって現況地形50が取得されてもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形データを記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0079】
目標設計地形70の決定方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、開始点から2つ先までの基準点に基づいて目標設計地形70を決定している。しかし、開始点から3つ先、或いはそれ以上先までの基準点に基づいて目標設計地形70を決定してもよい。コントローラ26は、目標深さに限らず、他のパラメータに基づいて第1の目標設計地形70_1を決定してもよい。例えば、コントローラ26は、作業機13への負荷、目標角度、目標位置などのパラメータに基づいて第1の目標設計地形70_1を決定してもよい。或いは、第1の目標設計地形70_1は予め決定されていてもよい。
【0080】
上記の実施形態では、コントローラ26は、第1基準地形C1と第2基準地形C2との平均角度に基づいて、目標設計地形70を決定している。しかし、コントローラ26は、平均角度に限らず、第1基準地形C1の角度と第2基準地形C2の角度とに重み付けなどの処理を施すことで、目標設計地形70を決定してもよい。
【0081】
上記の実施形態では、コントローラ26は、第1の目標設計地形70_1に従う作業中であって次の開始点S1に到達する前に、第2の目標設計地形70_2を決定している。しかし、コントローラ26は、次の開始点S1に到達したときに、第2の目標設計地形70_2を決定してもよい。
【0082】
コントローラ26は、現況地形50よりも上方に目標設計地形70を決定してもよい。例えば、
図19に示すように、オペレータが刃先位置Pbを現況地形50よりも上方の位置まで上げたときには、コントローラ26は、刃先位置Pbの高さに合わせて、第1の目標設計地形70_1を現況地形50よりも上方の位置まで上昇させてもよい。コントローラ26は、第2の目標設計地形70_2を現況地形50よりも上方に位置するように決定してもよい。それにより、例えば作業機13に保持しているマテリアルを現況地形50上に敷き均すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を作業車両に行わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
3 制御システム
13 作業機
26 コントローラ
50 現況地形
70_1 第1の目標設計地形
70_2 第2の目標設計地形
A1,A2,A3 区画点
B1,B2,B3 基準点
L3’ 修正された目標深さ