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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】針板着脱機構及びそれを備えたミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 73/12 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
D05B73/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018096049
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019198556
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 修
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】真船 潤
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036570(JP,A)
【文献】特開昭54-018350(JP,A)
【文献】特開昭57-025886(JP,A)
【文献】特開昭55-091396(JP,A)
【文献】特開2013-048846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモータの駆動力により針を上下運動させて縫目を形成するミシンにおいて、
針板をミシン本体に固定する針板固定部と、
作動することで前記針板の固定状態を解除する解除部と、
前記針が前記針板の上面よりも下側に位置しているとき又は前記ミシンモータ駆動しているときには、前記針板の固定状態の解除を制限する固定解除制限部と、
を備えた針板着脱機構。
【請求項2】
前記固定解除制限部は、
前記針板の固定力を増加させることを特徴とする請求項1に記載の針板着脱機構。
【請求項3】
前記固定解除制限部は、
前記解除部を非作動状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の針板着脱機構。
【請求項4】
前記固定解除制限部が、前記ミシン本体に設けられると共に、前記針板又は前記解除部に着磁可能な電磁石として構成されており、
前記固定解除制限部が、前記針板又は前記解除部を着磁することで、前記解除部による前記固定状態に対する解除を制限することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の針板着脱機構。
【請求項5】
前記固定解除制限部は、前記針板又は前記解除部に係合可能な係合部を有しており、
前記固定解除制限部は、前記針板又は前記解除部と係合して前記解除部による前記固定状態に対する解除を制限する解除制限位置と、前記針板又は前記解除部との係合状態を解除して前記解除部による前記固定状態に対する解除を許可する解除許可位置と、の間を移動可能に構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の針板着脱機構。
【請求項6】
前記固定解除制限部が、ソレノイドとして構成されており、前記係合部が前記ソレノイドのプランジャであることを特徴する請求項5に記載の針板着脱機構。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の針板着脱機構を備えたミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針板着脱機構及びそれを備えたミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、ミシンの針板着脱機構が記載されている。この針板着脱機構では、解除レバーやロック機構を操作することで、針板を取外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-48846号公報
【文献】特開2016-36570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミシンでは、針が上死点から下死点へ下降するときには、針が針板の針孔内を挿通する。一方、上記特許文献1及び2では、針の上下位置にかかわらず、解除レバーやロック機構の操作が可能である。すなわち、上記特許文献1及び2において、例えば、針が下死点に位置しているときに、解除レバーやロック機構を操作すると、針が針孔を挿通した状態で、針板がミシン本体から取外しされた状態になる。この状態では、針板がミシン本体から取外しされているにも関わらす、針が針孔を挿通しているため、針板を針から取外すことができない。このため、このような状況は、針板の交換として適さない状況といえる。
【0005】
また、ミシンモータが作動しているときには、使用者が縫製対象物を縫製中である。このため、このような状況も、針板の交換に対する使用者の意思はなく、針板の交換として適さない状況といえる。
【0006】
以上により、上記のような針板の交換として適さない状況では、針板の交換を阻止する構造にすることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、針板の交換として適さない状況において針板の交換を阻止することができる針板着脱機構及びそれを備えたミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、ミシンモータの駆動力により針を上下運動させて縫目を形成するミシンにおいて、針板をミシン本体に固定する針板固定部と、作動することで前記針板の固定状態を解除する解除部と、前記針が前記針板の上面よりも下側に位置しているとき又は前記ミシンモータの駆動しているときには、前記針板の固定状態の解除を制限する固定解除制限部と、を備えた針板着脱機構である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部は、前記針板の固定力を増加させることを特徴とする針板着脱機構である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部は、前記解除部を非作動状態に維持することを特徴とする針板着脱機構である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部が、前記ミシン本体に設けられると共に、前記針板又は前記解除部に着磁可能な電磁石として構成されており、前記固定解除制限部が、前記針板又は前記解除部を着磁することで、前記解除部による前記固定状態に対する解除を制限することを特徴とする針板着脱機構である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部は、前記針板又は前記解除部に係合可能な係合部を有しており、前記固定解除制限部は、前記針板又は前記解除部と係合して前記解除部による前記固定状態に対する解除を制限する解除制限位置と、前記針板又は前記解除部との係合状態を解除して前記解除部による前記固定状態に対する解除を許可する解除許可位置と、の間を移動可能に構成されている針板着脱機構である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部が、ソレノイドとして構成されており、前記係合部が前記ソレノイドのプランジャであることを特徴する針板着脱機構である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、上記構成の針板着脱機構を備えたミシンである。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部は、前記回転部と連結して前記回転部を回転駆動させる駆動部を有していることを特徴とする針板着脱機構である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記針の上下位置を検出する検出部を備え、前記固定解除制限部は、前記検出部に連動して作用して、前記針が前記針板の上面よりも下側に位置しているときに、前記針板の固定状態の解除を制限する針板着脱機構である。
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定解除制限部は、前記ミシンモータに連動して作動して、前記ミシンモータの駆動時に、前記針板を固定状態にロックし又は前記解除部を非作動状態に維持する針板着脱機構である。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の針板着脱機構及びミシンによれば、針板の交換として適さない状況において、針板の交換を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1の実施の形態に係る針板着脱機構が適用されたミシンのベッド部の要部を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る針板着脱機構が適用されたミシン全体を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図3図3は、図2に示されるミシンの駆動機構を模式的に示す模式図である。
図4図4(A)は、図2に示されるミシンのブロック図であり、図4(B)は、上軸の回転角度に対応する針の上下位置を示すグラフである。
図5図5は、針板着脱機構の動作フローである。
図6図6は、針板着脱機構のタイミングチャートである。
図7図7(A)は、針板が電磁石によってロックされた状態を示す斜視図であり、図7(B)は、針板の固定状態が解除されて針板が押上棒によって押上げられた状態を示す斜視図である。
図8図8(A)は、第1の実施の形態における変形例1の針板着脱機構においてソレノイドの作動前の状態を示す斜視図であり、図8(B)は、(A)の状態からソレノイドが作動して、針板がソレノイドによってロックされた状態を示す斜視図である。
図9図9(A)は、第1の実施の形態における変形例2の針板着脱機構を示す斜視図であり、図9(B)は、第1の実施の形態における変形例3の針板着脱機構を示す斜視図である。
図10図10は、第2の実施の形態に係る針板着脱機構を示す分解斜視図である。
図11図11(A)は、図10に示される針板の固定状態を示す前方側から見た正面図であり、図11(B)は、図11(A)に示される状態から針板着脱機構の回転軸が解除位置に回転されて、針板が押上げられた状態を示す正面図であり、図11(C)は、図11(B)に示される状態から回転軸が非解除位置に回転された状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
以下、図面を用いて、第1の実施の形態に係る針板着脱機構80が適用されたミシン10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UPは、ミシン10の上側を示し、矢印FRはミシン10の前側を示し、矢印RHはミシン10の右側(幅方向一方側)を示している。以下、上下、前後、左右の方向を用いて説明する場合は、ミシン10の上下、前後、左右を示すものとする。
【0021】
(ミシンの全体構成)
図2に示されるように、ミシン10は、全体として、前方側から見た正面視で左側へ開放された略U字形状を成している。具体的には、ミシン10は、ミシン10の右端部を構成し且つ上下方向に延在された脚柱部12と、脚柱部12の上端部から左側へ延出されたアーム部14と、脚柱部12の下端部から左側へ延出された「ミシン本体」としてのベッド部16と、を含んで構成されている。また、ミシン10の内部には、ミシン10の骨格を構成する骨格フレーム(図示省略)が設けられている。
【0022】
また、ミシン10は、ベッド部16における左側部分の上部に固定された針板70を有している。さらに、ミシン10は、針板70を着脱可能に固定する針板着脱機構80(図1参照)と、針36を上下動させる駆動機構20(図3参照)と、を備えている。以下、ミシン10の各構成について説明する。
【0023】
(駆動機構について)
図3に示されるように、駆動機構20は、ミシンモータ22と、上軸26と、連結機構30と、針棒34と、下軸38と、を含んで構成されている。
ミシンモータ22は、左右方向を軸方向として骨格フレームに固定されている。図4(A)に示されるように、ミシンモータ22は、後述する制御部94に電気的に接続されており、制御部94には、操作部24が電気的に接続されている。この操作部24は、開始停止ボタン24A(図2参照)を有している。そして、開始停止ボタン24Aが操作されることで、操作部24から制御部94へ操作信号が出力されて、制御部94によってミシンモータ22が駆動または停止するようになっている。
【0024】
図3に示されるように、上軸26は、アーム部14(図3では不図示)内において、左右方向を軸方向として、骨格フレームに回転可能に支持されている。また、上軸26の右端部とミシンモータ22の出力軸との間には、ベルト28が架け渡されており、ミシンモータ22の回転力が上軸26に伝達される構成になっている。これにより、ミシンモータ22が駆動することで、上軸26が自身の軸回りに回転する構成になっている。また、上軸26の右端部には、はずみ車(図示省略)が連結されており、はずみ車は、ミシン10の脚柱部12の右側に配置されて、ミシン10の外部に露出されている。そして、操作者がはずみ車を回転操作することで、ミシン10(上軸26)を手動によって駆動できるようになっている。また、上軸26の左端部には、連結機構30を構成するクランクロッド32が連結されている。
【0025】
針棒34は、上下方向を軸方向として、連結機構30の左側に配置されている。針棒34には、連結機構30のクランクロッド32が連結されており、上軸26が回転することで、針棒34が上下動する構成になっている。また、針棒34の下端部には、縫製対象物を縫製するための針36が着脱可能に固定されており、針棒34の上下動に伴って、針36が上下運動する構成になっている。すなわち、上軸26の回転角度に対応して、針36の上下位置が決定されるようになっている。
【0026】
具体的には、図4(B)に示されるように、針36は、上死点と下死点との間を上下運動する。また、後述する針板70は、針36の上死点と下死点との間に配置されている。これにより、針36が縫製対象物を刺して針板70の針孔内を挿通することで、縫製対象物を縫製するようになっている。そして、以下の説明では、針36の上下運動の1周期において、針36の針先(下端)が針板70の上面に対して上側に位置するときの上軸26の位相を「解除位相」と称し、針36の先端(下端)が針板70の上面に対して下側に位置するときの上軸26の位相を「非解除位相」と称する。
【0027】
図3に示されるように、下軸38は、ベッド部16(図3では、不図示)内において、左右方向を軸方向として骨格フレームに回転可能に支持されている。また、下軸38の右端部と上軸26の右側部分との間には、ベルト40が架け渡されており、下軸38が上軸26と連動して回転する構成になっている。また、下軸38の左端部には、ギヤ機構44を介して釜46が連結されている。そして、下軸38が回転することで、釜46が上下方向を軸方向として回転する構成になっている。
【0028】
(ベッド部について)
図2に示されるように、ベッド部16は、ベッド部16の上部における外郭を構成するアッパカバー50と、ベッド部16の下部における外郭を構成するロアカバー52と、を含んで構成されており、骨格フレームが、アッパカバー50とロアカバー52とによって覆われている。ロアカバー52は、左右方向に延在されており、左右方向から見た断面視で、上方側へ開放された略U字形状に形成されている。具体的には、図1に示されるように、ロアカバー52は、上下方向を板厚方向とした底壁52Aと、底壁52Aの前端部から上方側へ屈曲された前壁52Bと、底壁52Aの後端部から上方側へ屈曲された後壁52Cと、を含んで構成されている。そして、底壁52Aと前壁52Bとの間の屈曲部及び底壁52Aと後壁52Cとの間の屈曲部が、略円弧状に湾曲されている。
【0029】
また、ロアカバー52の前壁52Bにおける右側部分の下部には、後述する解除レバー88の前端部を配置するための連通孔52Dが前後方向に貫通形成されている。この連通孔52Dは平面視で略矩形状に形成されている。これにより、ロアカバー52の内部と外部とが連通孔52Dによって連通されている。
【0030】
また、ロアカバー52の左端部内には、固定プレート54が設けられている。固定プレート54は、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成されて、骨格フレームに連結固定されている。固定プレート54の上面には、後述する針板70を固定するための板状の第1押え部材56及び第2押え部材58が設けられている。第1押え部材56及び第2押え部材58は、上下方向を板厚方向として、前後方向に並んで配置されて、固定プレート54にネジによって固定されている。第1押え部材56には、押え片56Aが一体に形成されており、押え片56Aは、右側へ向かうに従い上側(固定プレート54から離間する方向)へ傾斜されている。また、第2押え部材58にも、押え片56Aと同様に構成された押え片58Aが一体に形成されており、押え片58Aが、右側へ向かうに従い上側(固定プレート54から離間する方向)へ傾斜されている。
【0031】
また、ロアカバー52内には、連通孔52Dに対して右側の位置において(詳しくは、後述する針板70の右端部に対して下側の位置において)、針板70を固定するための「針板固定部」としての係合プレート60が設けられている。係合プレート60は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とした略矩形状に形成されて、骨格フレームに固定されている。この係合プレート60の右端部には、上方側へ屈曲された前後一対の係合片60Aが形成されており、係合片60Aには、左右方向に貫通された係合孔60Bが形成されている。なお、係合プレート60は、後述する針板着脱機構80の一部を構成している。
【0032】
さらに、係合プレート60の下側には、支持部材62が設けられている。支持部材62は、上下方向を板厚方向とした略長尺板状に形成されており、支持部材62の基端部が、図示しない位置において、骨格フレームに固定されている。また、支持部材62の先端部には、後述する押上棒82を支持するための円形状の支持孔が上下方向に貫通形成されている。
【0033】
(針板について)
針板70は、磁性体によって構成されている。この針板70は、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成されて、ベッド部16の上部に固定されている(図1では、便宜上、針板70の左前の角部を上側へ持ち上げた状態で図示している)。この針板70の左端部における下面には、前後方向に延在された略長尺板状の固定部材72が設けられており、固定部材72は、針板70にネジによって固定されている。また、固定部材72の長手方向両端部には、前後一対の連結片72Aが一体に形成されており、連結片72Aは、固定部材72の左端部から下側且つ左側へ略クランク状に屈曲されている。そして、連結片72Aの先端部が、固定プレート54と、第1押え部材56の押え片56A及び第2押え部材58の押え片58Aと、間に右側から差し込まれて、針板70の左端部が固定部材72を介して、固定プレート54に固定されている。
【0034】
また、針板70の右端部における下面には、前述した係合プレート60の係合片60Aに対応する位置において、後述する針板着脱機構80の一部を構成する前後一対の「針板固定部」としての板バネ74が設けられている。この板バネ74は、側面視で略逆L字形状に屈曲されている。具体的には、板バネ74は、上下方向を板厚方向として針板70にネジによって固定された固定片74Aと、固定片74Aの右端部から下方側へ屈曲され且つ弾性変形可能に構成された係合片74Bと、を含んで構成されている。また、係合片74Bには、右側へ突出されたフック部74Cが形成されている。そして、板バネ74の係合片74Bが、係合プレート60の係合片60Aの左側にそれぞれ隣接配置され、フック部74Cが係合孔60Bの上縁部に係合することで、板バネ74と係合プレート60とが係合して、針板70の右端部が固定される構成になっている。
【0035】
(針板着脱機構について)
次に、本発明の要部である針板着脱機構80について説明する。図1及び図7に示されるように、針板着脱機構80は、前述した係合プレート60及び板バネ74と、押上棒82と、「解除部」としての解除レバー88と、「固定解除制限部」としての電磁石90と、上軸位相センサ92(広義には、「検出部」として把握される要素であり、図3参照)と、制御部94(図4(A)参照)と、を含んで構成されている。以下、針板着脱機構80の構成について説明する。
【0036】
<押上棒について>
押上棒82は、上下方向を軸方向とした略丸棒状に形成されて、針板70とロアカバー52の底壁52Aとの間に配置されている。そして、押上棒82の下端部が、前述した支持部材62の支持孔内に上側から挿入されて、押上棒82が、支持部材62に上下方向に相対移動可能に支持されている。また、押上棒82の下端側の部分における外周面には、段差部82Aが形成されており、段差部82Aを境界として、押上棒82における上端側の径寸法が、押上棒82における下端側の径寸法と比べて大きく設定されている。そして、押上棒82の段差部82Aが、支持部材62の上面に当接されている。これにより、押上棒82の下側への移動が制限された状態で、押上棒82が、支持部材62に支持されている。そして、段差部82Aが支持部材62の上面に当接された状態の押上棒82の位置を、「待機位置」としており、待機位置では、押上棒82の上端が針板70の下面に近接して配置されている(図7(A)参照)。
【0037】
また、押上棒82の下端部には、支持部材62の下側の位置において、止め輪84が係止されている。さらに、押上棒82には、支持部材62と止め輪84との間に部位において、圧縮コイルバネ86が装着されている。この圧縮コイルバネ86の上端部は支持部材62に係止され、圧縮コイルバネ86の下端部が止め輪84に係止されており、圧縮コイルバネ86が自然状態から圧縮変形した状態で押上棒82に装着されている。これにより、押上棒82が、圧縮コイルバネ86の付勢力によって下側へ付勢されて、待機位置に保持されている。そして、押上棒82が、圧縮コイルバネ86の付勢力に抗して上側へ持ち上げられて、針板70を上側へ押上げることで、針板70の板バネ74と係合プレート60との係合状態が解除されて、針板70のミシン10に対する固定状態が解除される構成になっている(図7(B)に示される位置であり、以下、押上棒82におけるこの位置を「押上位置」と称する)。
【0038】
<解除レバーについて>
解除レバー88は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とした略矩形板状に形成されている。解除レバー88の長手方向中間部には、幅方向両端部において、一対の回転軸88Aが一体に形成されており、回転軸88Aは、左右方向を軸方向とした略円柱状に形成されて、解除レバー88の幅方向外側へ突出されている。そして、解除レバー88の回転軸88Aが、前述したロアカバー52の底壁52Aに形成された軸受部(図示省略)に回転可能に支持されている。
【0039】
解除レバー88の幅方向(左右方向)の寸法は、ロアカバー52の連通孔52Dの幅寸法よりも小さく設定されている。そして、解除レバー88の前端部が、ロアカバー52の連通孔52D内に配置されて、操作可能にロアカバー52の外部に露出されている(図1及び図2参照)。
【0040】
一方、解除レバー88の後端部(詳しくは、回転軸88Aに対して後側の部分)は、押上部88Bとして構成されている。押上部88Bは、押上棒82の真下に配置されており、押上棒82の下端が押上部88Bに当接されている。すなわち、圧縮コイルバネ86の付勢力が押上棒82を介して、解除レバー88の後端部に作用する構成になっている。そして、押上棒82の待機位置では、押上部88Bの下面がロアカバー52の底壁52Aの上面に当接されて、解除レバー88が、図7(A)において示される非押上位置に保持される設定になっている。
【0041】
そして、図7(B)に示されるように、解除レバー88の前端部に下側への操作力が入力されて、解除レバー88が回転軸88Aの軸回りに回転されると、解除レバー88の押上部88Bが、上側へ変位して、押上棒82を待機位置から押上位置に押上げる構成になっている。
【0042】
<電磁石について>
図1及び図7に示されるように、電磁石90は、上下方向を軸方向とした略円柱状に形成されており、ロアカバー52の後壁52Cに固定されている。具体的には、電磁石90は、押上棒82の後側に配置されており、電磁石90の上面が、針板70の下面に隣接している。また、電磁石90は、後述する制御部94に電気的に接続されており、制御部94によって電磁石90が作動する構成になっている。具体的には、制御部94によって電磁石90が通電状態になると、電磁石90に磁気が発生して、針板70を着磁するようになっている。これにより、針板70に対する保持力が、板バネ74による保持力に電磁石90による保持力を加えた保持力になり、針板70の固定状態を電磁石90によってロックする構成になっている。
【0043】
<上軸位相センサについて>
図3に示されるように、上軸位相センサ92は、上軸26の長手方向中間部に設けられている。この上軸位相センサ92は、上軸26の回転位相を検出するセンサとして構成されており、本実施の形態では、上軸位相センサ92が、一例としてロータリーエンコーダとして構成されている。具体的には、上軸位相センサ92は、円板状の回転板92Aと、位相検出部92Bと、を含んで構成されている。回転板92Aは、上軸26と同軸上に配置されて、上軸26に一体回転可能に固定されている。回転板92Aには、回転板92Aの径方向に延在された複数のスリットが形成されており、スリットは、回転板92Aの周方向に所定間隔毎に配置されている。
【0044】
位相検出部92Bは、図示しない発光素子及び受光素子を有している。発光素子及び受光素子は、回転板92Aに板厚方向に対向して配置されており、発光素子及び受光素子の間に回転板92Aが配置されている。また、位相検出部92Bは、後述する制御部94に電気的に接続されている(図4(A)参照)。そして、発光素子が回転板92Aへ向けて光を照射し、受光部が回転板92Aのスリットを通過する光を受光することで、上軸位相センサ92が、上軸26の回転角度(位相)を検出し、制御部94に検出信号を出力する構成になっている。
【0045】
<制御部について>
図4(A)に示されるように、制御部94には、前述した操作部24、ミシンモータ22、電磁石90、及び上軸位相センサ92が、電気的に接続されている。そして、制御部94は、操作部24からの出力信号に基づいて、ミシンモータ22を駆動又は停止させるようになっている。
【0046】
さらに、制御部94は、判断部96を有しており、判断部96において、電磁石90の作動の要否を判断して、制御部94が電磁石90の作動を制御する構成になっている。具体的には、判断部96は、上軸26の位相状態(換言すると、針36の上下位置)及びミシン10の駆動状態に基づいて、電磁石90の作動要否を判断する。
【0047】
より詳しくは、ミシン10がミシンモータ22によって駆動するモータ駆動状態である場合には、判断部96は、電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行うようになっている。
また、判断部96は、上軸位相センサ92からの検出信号に基づいて、上軸26の回転位相が解除位相及び非解除位相の何れであるのか(換言すると、針36の針先が針板70の上面よりも下側に位置しているのか否か)を判定するようになっている。そして、ミシン10がモータ駆動状態ではなく(すなわち、ミシンモータ22の非駆動状態であり)、且つ上軸26の位相が非解除位相である場合には、判断部96は、電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行うようになっている。
そして、判断部96が、電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行うと、制御部94が電磁石90を作動させて、電磁石90によって針板70を固定状態にロックする構成になっている。すなわち、電磁石90は、上軸位相センサ92に連動して作用して、上軸26の位相が非解除位相である場合には、電磁石90によって針板70を固定状態にロックして、針板70の固定状態に対する解除を制限する構成になっている。
【0048】
(作用及び効果について)
次に、図5に示されるフローチャートを用いて、針板着脱機構80の作動を説明する。
【0049】
ミシン10の駆動を開始させるときには、操作者が、操作部24の開始停止ボタン24Aを操作する(ステップS1)。これにより、操作部24から制御部94へ出力信号が出力される。そして、この状態は、ミシン10の駆動状態がモータ駆動状態になる場合である。このため、制御部94の判断部96において電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行い、制御部94によって電磁石90の作動が開始される(ステップS2)。その結果、電磁石90によって針板70の固定状態がロックされる(図7(A)参照)。
【0050】
ステップS2の処理後には、ステップS3に移行して、制御部94によってミシンモータ22の駆動が開始される。これにより、ミシン10が停止状態から駆動状態に遷移して、縫製対象物に対する縫製を行う。
【0051】
ステップS3の処理後、ミシン10の駆動を停止させるときには、操作者が、操作部24の開始停止ボタン24Aを操作する(ステップS4)。これにより、操作部24から制御部94へ出力信号が出力される。そして、操作部24からの信号を受けた制御部94によって、ミシンモータ22の駆動が停止して、ミシン10がモータ駆動状態から停止状態に遷移する(ステップS5)。
【0052】
ステップS5の処理後には、ステップS6に移行して、判断部96が上軸位相センサ92からの検出信号に基づいて、上軸26の位相状態を判定する。具体的には、判断部96において、上軸26の位相が解除位相であるのか否かを判定する。上軸26の位相が解除位相である場合(ステップS6の「Yes」の場合)には、ステップS7に移行する。ステップS7では、判断部96が電磁石90を非作動状態にさせる旨の判断を行い、制御部94によって電磁石90の作動が停止する。これにより、電磁石90による針板70の固定状態のロックが解除される。このため、針板70の取外しが許可された状態になる。この状態において、操作者によって解除レバー88の前端部に下側への操作力が付与されると、解除レバー88が非押上位置から回転する。これにより、解除レバー88の押上部88Bが、上側へ変位して押上棒82を上側へ押上げる。このため、押上棒82が、待機位置から押上位置へ変位すると共に、針板70を上側へ押し上げて、針板70の板バネ74と係合プレート60との係合が解除される。その結果、針板70の固定状態が解除される(図7(B)参照)。
なお、ミシンモータ22の停止後では、操作者が針板70の取外しを行わず、手動操作によって縫製対象物を縫製する場合もある。このため、ステップS7の処理後では、ステップS6戻り、判断部96において上軸26の回転位相に基づく判定を繰り返す。
【0053】
一方、上軸26の位相が非解除位相である場合(ステップS6の「No」の場合)には、ステップS8に移行する。ステップS8では、判断部96が電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行い、制御部94による電磁石90の作動が維持される。これにより、電磁石90による針板70の固定状態のロックが維持される。そして、ステップS8の処理後では、ステップS6戻り、判断部96において上軸26の回転位相に基づく判定を繰り返す。
【0054】
以下、上記フローチャートで説明した針板着脱機構80の動作を、図6に示されるタイミングチャートを用いて、さらに説明する。なお、図6のタイミングチャートにおける(A)は、ミシン10の駆動状態を示しており、(B)は、ミシンモータ22の駆動状態を示しており、(C)は、上軸26の位相を示している。また、図6のタイミングチャートにおける(D)は、電磁石90の作動状態を示しており、(E)は、針板70に対する保持力を示している。
【0055】
ミシン10の停止状態(図6の「a」区間参照)では、ミシンモータ22が非駆動状態(OFF状態)になっており、電磁石90が非作動状態(OFF状態)になっている。また、このときには、上軸26の位相が解除位相になっており、針36が針板70(すなわち、縫製対象部)の上側に位置している。さらに、このときには、針板70に対する保持力が、板バネ74による保持力F1になっている。
【0056】
ミシン10の停止状態から、操作者が操作部24の開始停止ボタン24Aを操作してミシン10の駆動を開始すると、ミシン10が停止状態からモータ駆動状態(図6の「b」区間参照)に遷移する。具体的には、判断部96が電磁石90を作動させる旨の判断をして、制御部94によって電磁石90が作動状態(ON状態)になる。また、このときには、制御部94によってミシンモータ22が駆動して駆動状態(ON状態)になる。これにより、上軸26が回転して、針36が上下運動する。このため、上軸26の位相が、解除位相と非解除位相との間を交互に繰り返す。また、この状態では、電磁石90が作動しているため、針板70に対する保持力が、板バネ74による保持力F1に電磁石90による保持力を加えた、保持力F2になる。
【0057】
この状態から、操作者が操作部24の開始停止ボタン24Aを操作すると、ミシン10がモータ駆動状態から停止状態(図6の「c」区間参照)に遷移する。具体的には、制御部94によってミシンモータ22が駆動状態(ON状態)から非駆動状態(OFF状態)に遷移する。また、図6に示される例では、ミシン10の駆動が停止したときには、上軸26の位相が非解除位相である例として示している。このため、判断部96において、電磁石90を作動状態にさせる旨の判断を行い、制御部94による電磁石90の作動が維持される。したがって、針板70に対する保持力が保持力F2に維持される。
【0058】
この状態から、操作者がミシン10のはずみ車を用いてミシン10を手動操作させると、ミシン10が停止状態から手動駆動状態(図6の「d」区間参照)に遷移する。この状態では、ミシンモータ22の非駆動状態が維持される。また、手動操作では、上軸26が回転するため、上軸26の位相が非解除位相(図6の「d1」の区間参照)と解除位相(図6の「d2」の区間参照)との間を交互に繰り返す。これにより、上軸26の位相が解除位相となる場合には、電磁石90を非作動状態にさせる旨の判断を判断部96が行い、制御部94によって電磁石90の駆動が停止する。一方、上軸26の位相が非解除位相となる場合には、電磁石90を駆動状態にさせる旨の判断を判断部96が行い、制御部94によって電磁石90が作動する。
【0059】
そして、電磁石90の作動が停止する区間では、針板70の保持力がF1となり、針板70の取外しが許可された状態になる。一方、電磁石90が作動する区間では、針板70の保持力がF2となり、針板70の固定状態がロックされる。
【0060】
このように、本実施の形態の針板着脱機構80では、ミシンモータ22の駆動時において、電磁石90が作動して、電磁石90によって針板70の固定状態がロックすることで、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除が制限される。そして、ミシンモータ22の駆動時では、操作者が縫製対象物を縫製中であるため、操作者において針板70の交換の意思のない状況といえる。すなわち、針板70の交換として適さない状況といえる。よって、この状況のときに、針板70の交換を阻止することができる。
また、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるときには、電磁石90が作動して、電磁石90によって針板70の固定状態がロックすることで、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除が制限される。すなわち、ミシンモータ22の非駆動時であっても、針36が針板70の上面よりも下側に位置しているときには、電磁石90によって針板70の固定状態に対する解除が制限される。そして、針36が針板70の上面よりも下側に位置しているときには、針36が針板70の針孔内を挿通しているため、針板70の交換として適さない状況といえる。このため、この状況のときにおいても、針板70の交換を阻止することができる。
以上により、本実施の形態の針板着脱機構80によれば、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、上述のように、電磁石90が作動することで、針板70の固定状態をロックして、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除を制限する。このため、電磁石90の磁力を活用して、針板70をロックさせて、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除を制限することができる。これにより、簡易な構成で、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止できる。
【0062】
また、針板着脱機構80では、上軸26の回転位相を検出する上軸位相センサ92を有している。このため、上軸位相センサ92によって上軸26の回転位相(角度)を検出することで、針36の上下位置を容易に検知することができる。よって、針板着脱機構80において、針36の上下位置を簡易な構成で検知することができる。
【0063】
(第1の実施の形態における針板着脱機構の変形例1)
以下、図8を用いて、第1の実施の形態における変形例1の針板着脱機構100について説明する。変形例1の針板着脱機構100は、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態の針板着脱機構80と同様に構成されている。なお、図8では、第1の実施の形態の針板着脱機構80と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。
【0064】
すなわち、針板着脱機構100は、電磁石90の代わりに、「固定解除制限部」としてのソレノイド102を備えている。ソレノイド102は、針板70の下側且つ側方に配置されて、ロアカバー52(図8では図示省略)やミシン10の骨格フレーム等に固定されている。このソレノイド102は、略直方体状のソレノイド本体102Aと、略円柱状の「係合部」としてのプランジャ102Bと、を含んで構成されている。プランジャ102Bは、ソレノイド本体102Aの一端部から突出されており、自身の軸方向においてソレノイド本体102Aに対して相対移動可能に構成されている。また、ソレノイド102は、制御部94に電気的に接続されており、制御部94によって作動するようになっている。具体的には、図8(A)に示されるように、ソレノイド102の非通電状態では、プランジャ102Bの基端部の大半がソレノイド本体102A内に配置されて、プランジャ102Bの先端部のみがソレノイド本体102Aから突出されている(以下、この位置を「解除許可位置」と称する)。一方、図8(B)に示されるように、制御部94によって、ソレノイド102が通電状態になると、プランジャ102Bが、解除許可位置から先端側へ移動して、プランジャ102Bの大半がソレノイド本体102Aから突出するようになっている(以下、この位置を「解除制限位置」と称する)。つまり、ソレノイド102が、所謂プッシュ型ソレノイドとして構成されている。
【0065】
また、針板70の下面には、係合プレート104(広義には、「係合部材」として把握される要素である)が設けられている。この係合プレート104は、略L字形板状に形成されている。具体的には、係合プレート104は、上下方向を板厚方向とした固定片104Aと、固定片104Aの一端部において下側へ略直角に屈曲された係合片104Bと、を含んで構成されている。そして、係合片104Bが、プランジャ102Bの軸方向において、プランジャ102Bと対向するように、固定片104Aが針板70の下面にネジ等の締結部材等によって固定されている。
【0066】
また、係合片104Bには、略円形状の係合孔104Cが貫通形成されている。この係合孔104Cの直径寸法は、プランジャ102Bの直径寸法に比べて大きく設定されており、係合孔104Cがプランジャ102Bと同軸上に配置されている。そして、ソレノイド102の通電状態において、プランジャ102Bが解除制限位置に移動すると、プランジャ102Bの先端部が係合孔104C内に挿入して、係合片104Bに上下方向に係合する構成になっている(図8(B)参照)。これにより、係合プレート104(すなわち、針板70)の上側への移動がソレノイド102によって阻止されて、針板70の固定状態に対する解除をソレノイド102によって制限する構成になっている。
【0067】
そして、ミシンモータ22の駆動時には、制御部94によってソレノイド102が作動して、ソレノイド102によって針板70の固定状態をロックすることで、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除を制限する。
また、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるときには、制御部94によってソレノイド102が作動して、ソレノイド102によって針板70の固定状態をロックすることで、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除を制限する。すなわち、ミシンモータ22の非駆動時で且つ針36が針板70の上面よりも下側に位置しているときには、ソレノイド102によって針板70が固定状態にロックされる。
したがって、変形例1の針板着脱機構100においても、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止できる。
【0068】
また、変形例1の針板着脱機構100では、ソレノイド102を用いて針板70の固定状態をロックして、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除を制限する。このため、針板着脱機構80と同様に、簡易な構成で、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止できる。
【0069】
(第1の実施の形態における針板着脱機構の変形例2)
以下、図9(A)を用いて、第1の実施の形態における変形例2の針板着脱機構110について説明する。変形例2の針板着脱機構110は、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態の針板着脱機構80と同様に構成されている。なお、図9(A)では、第1の実施の形態の針板着脱機構80と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。
【0070】
すなわち、針板着脱機構110では、解除レバー88の押上部88Bに、磁性体によって構成されたロックプレート112(広義には、「ロック部材」として把握される要素である)が一体に設けられている。このロックプレート112は、上下方向を板厚方向とした略長尺板状に形成されており、ロックプレート112の長手方向一端部が解除レバー88の押上部88Bに固定されている。
【0071】
また、針板着脱機構110では、電磁石90がロアカバー52(図9(A)では図示省略)の底壁52Aに固定されて、ロックプレート112の長手方向他端部の下側に隣接して配置されている。これにより、制御部94によって電磁石90が作動すると、電磁石90の磁力によってロックプレート112が電磁石90に着磁する。このため、解除レバー88の押上部88Bにおける上側への変位が規制される。その結果、解除レバー88が、非作動状態にロックして、非押上位置に維持される構成になっている。
【0072】
そして、ミシンモータ22の駆動時には、制御部94によって電磁石90が作動して、解除レバー88が電磁石90によって非作動状態にロックされる。すなわち、解除レバー88の回転操作が不能な状態になり、解除レバー88が非押上位置に維持される。これにより、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除が制限されると共に、針板70の交換が阻止される。
また、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるときには、制御部94によって電磁石90が作動して、解除レバー88が電磁石90によって非作動状態にロックされる。よって、この場合にも、解除レバー88の回転操作が不能な状態になり、解除レバー88が非押上位置に維持される。これにより、解除レバー88による針板70の固定状態に対する解除が制限されると共に、針板70の交換が阻止される。
以上により、変形例2の針板着脱機構110においても、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止できる。
【0073】
(第1の実施の形態における針板着脱機構の変形例3)
以下、図9(B)を用いて、第1の実施の形態における変形例3の針板着脱機構120について説明する。変形例3の針板着脱機構120は、以下に示す点を除いて、変形例2の針板着脱機構110と同様に構成されている。なお、図9(B)では、変形例2の針板着脱機構110と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。
【0074】
すなわち、針板着脱機構120は、電磁石90の代わりに、変形例1の針板着脱機構100のソレノイド102を備えている。ソレノイド102は、ロアカバー52(図9(B)では図示省略)の底壁52Aに固定されている。また、ロックプレート112の他端部には、変形例1の針板着脱機構100の係合プレート104が一体に設けられており、係合プレート104の係合片104Bが、ソレノイド102のプランジャ102Bの軸方向において、プランジャ102Bと対向して配置されている。
【0075】
そして、ソレノイド102の通電状態において、プランジャ102Bが解除制限位置に移動すると、プランジャ102Bの先端部が係合プレート104の係合孔104C内に挿入して、係合片104Bに上下方向に係合する構成になっている。これにより、変形例2と同様に、解除レバー88の回転操作が不能な状態になり、針板70の交換が阻止される構成になっている。
【0076】
そして、ミシンモータ22の駆動時には、制御部94の制御によってソレノイド102が作動して、解除レバー88がソレノイド102によって非作動状態にロックされる。すなわち、解除レバー88の回転操作が不能な状態になる。これにより、針板70の交換が阻止される。
また、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるときには、制御部94の制御によってソレノイド102が作動して、解除レバー88がソレノイド102によって非作動状態にロックされる。よって、この場合にも、解除レバー88の回転操作が不能な状態になり、針板70の交換が阻止される。
以上により、変形例3の針板着脱機構120においても、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止できる。
【0077】
(第2の実施の形態)
次に、図10及び図11を用いて、第2の実施の形態に係る針板着脱機構200について説明する。第2の実施の形態の針板着脱機構200は、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態の針板着脱機構80と同様に構成されている。なお、図10及び図11では、第1の実施の形態と同様に構成された部材には、同様の符号を付している。
【0078】
すなわち、針板着脱機構200は、第1の実施の形態の針板着脱機構80における押上棒82、解除レバー88、及び電磁石90の代わりに、「解除部」としての回転部202と、回転部202を回転させるための「固定解除制限部」としての回転軸駆動機構210と、を有している。また、針板着脱機構200では、係合プレート60の一対の係合片60Aが係合プレート60の左端部において、上方側へ屈曲されて、当該係合片60Aに係合孔60Bが貫通形成されている。また、針板70に固定された板バネ74が、係合プレート60の一対の係合片60Aに対応する位置に配置されている。以下、回転部202及び回転軸駆動機構210について説明する。
【0079】
(回転部について)
回転部202は、回転軸204と、回転軸204に一体に設けられたカム206(広義には、「押上部」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。
【0080】
<回転軸について>
回転軸204は、前後方向を軸方向として、針板70の右端部の下側に配置されている。具体的には、回転軸204が、係合プレート60の左側に配置されている。回転軸204は、回転軸204の軸心部を構成する断面円形状の芯部204Aと、芯部204Aの外周部に設けられた略円筒状の外側軸部204Bと、を含んで構成されている。また、本実施の形態では、芯部204Aが金属製とされ、外側軸部204Bが樹脂製(一例として、POM)とされており、芯部204Aと外側軸部204Bとがインサート成形等によって一体に形成されている。具体的には、外側軸部204Bが、芯部204Aの前側部分(軸方向一方側部分)を被覆するように、芯部204Aと一体に形成されている。これにより、芯部204Aの後端側の部分が、外側軸部204Bよりも後側へ突出されている。そして、芯部204Aの後端側の部分が骨格フレームに回転可能に支持されている。また、芯部204Aの後端部は、ロアカバー52(図10及び図11では、不図示)から後側へ突出されている。
【0081】
<カム206について>
カム206は、外側軸部204Bの長手方向中間部に設けられており、カム206は、平面視で、前後一対の板バネ74(すなわち、係合プレート60の前後一対の係合片60A)の間に配置されている。カム206は、前方側から見て、略半楕円状に形成されて、外側軸部204Bの外周部から右斜め下方へ突出されている。具体的には、カム206は、前方側から見て、右斜め上方へ凸に湾曲されたカム面206Aを有しており、回転軸204の軸心からカム面206Aまでの距離が、カム面206Aの基端から先端へ向かうに従い長くなるように構成されている。そして、カム面206Aの基端側の部分が、針板70の下側に近接して(詳しくは、下側へ若干離間して)配置されている(図11(A)に示される位置であり、以下、回転軸204(カム206)における、この位置を「非解除位置」という)。そして、詳細については後述するが、回転軸204が非解除位置から回転方向一方側(図11(A)の矢印A方向側)へ回転すると、カム206(のカム面206A)が針板70を上方側へ押上げて、係合プレート60と板バネ74との係合状態を解除するようになっている(図11(B)に示される位置であり、以下、回転軸204(カム206)における、この位置を「解除位置」という)。
【0082】
また、回転軸204(芯部204A)の後端部には、操作ダイヤル208が一体回転可能に設けられている。操作ダイヤル208は、前後方向を軸方向とした略円盤状に形成されており、操作ダイヤル208の軸心部に回転軸204の後端部が固定されている。これにより、操作ダイヤル208が、ロアカバー52の外側(詳しくは、後側)に、操作可能に配置されている。そして、操作者が、操作ダイヤル208を回転させることで、手動で回転軸204を回転させることができる構成になっている。
【0083】
(回転軸駆動機構について)
回転軸駆動機構210は、ベースプレート212と、針板モータ214(広義には、「駆動部」として把握される要素である)と、伝達機構220と、リンク機構226と、を含んで構成されている。
【0084】
<ベースプレートについて>
ベースプレート212は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略矩形プレート状に形成されている。このベースプレート212は、回転軸204の右側に離間して配置されており、ベースプレート212の後端部が、骨格フレームに固定されている。ベースプレート212の前部には、左右方向の略中央部において、後述する針板モータ214の出力軸214Aを露出させるための円形の露出孔212Aが貫通形成されている。また、ベースプレート212の後端部には、後述する伝達機構220の揺動アーム224を回転可能に支持するための支持シャフト212Sが設けられている。支持シャフト212Sは、上下方向を軸方向とした略円柱状に形成されて、ベースプレート212から上側へ突出されている。
【0085】
<針板モータについて>
針板モータ214は、上下方向を軸方向として、ベースプレート212における前部の下側に隣接して配置されて、図示しない位置において、ベースプレート212に固定されている。具体的には、針板モータ214は、ベースプレート212の露出孔212Aと同軸上に配置されており、針板モータ214の出力軸214Aが、露出孔212A内に配置されている。また、出力軸214Aには、後述する伝達機構220を構成するピニオンギヤ222が一体回転可能に設けられており、ピニオンギヤ222は、ベースプレート212の上側に配置されている。また、針板モータ214は、ステッピングモータとして構成されて、制御部94に電気的に接続されている。そして、制御部94の制御によって、針板モータ214が作動するようになっている。
【0086】
<伝達機構について>
伝達機構220は、前述したピニオンギヤ222と、揺動アーム224と、を含んで構成されている。
揺動アーム224は、平面視で上下方向を板厚方向とした略扇形板状に形成されて、ベースプレート212の上側に配置されている。この揺動アーム224の基端部(後端部)には、支持ボス224Aが設けられており、支持ボス224Aは、上下方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。そして、支持ボス224A内にベースプレート212の支持シャフト212Sが相対回転可能に挿入されている。これにより、揺動アーム224が支持シャフト212Sに回動可能に支持されている。なお、支持シャフト212Sの先端部(上端部)には、EリングERが係止されており、揺動アーム224の上方側への移動をEリングERによって制限している。
【0087】
揺動アーム224の先端部(前端部)には、ラック部224Bが形成されており、ラック部224Bは、平面視で、支持ボス224A(支持シャフト212S)の軸心を中心とする略円弧状に湾曲されて、針板モータ214のピニオンギヤ222の後側に配置されている。また、ラック部224Bには、複数のラック歯が形成されており、ラック歯が、ピニオンギヤ222に噛合されている。これにより、針板モータ214が作動することで、揺動アーム224が、支持シャフト212Sの軸回りに揺動(回動)するようになっている。具体的には、揺動アーム224が、図10において実線にて示される「第1位置」と、図10において2点鎖線にて示される「第2位置」と、の間を、往復揺動(回動)する構成になっている。
【0088】
さらに、揺動アーム224の先端側の部分には、連結ピン224Pが設けられており、連結ピン224Pは、上下方向を軸方向とした略円柱状に形成されて、揺動アーム224から上方側へ突出している。
【0089】
<リンク機構について>
リンク機構226は、回転軸204(外側軸部204B)の前端部に一体に設けられた第1リンク228と、第2リンク230と、を含んで構成されている。
第1リンク228は、前後方向を板厚方向とした板状に形成されて、正面視で、外側軸部204Bの前端部から左斜め下方側へ延出している。
【0090】
第2リンク230は、左右方向に延在された略長尺板状に形成されている。具体的には、第2リンク230は、第2リンク230の左側部分を構成するリンク部230Lと、第2リンク230の右側部分を構成するリンク部230Rと、を含んで構成されている。リンク部230Lは、前後方向を板厚方向として、第1リンク228の後側に隣接して配置されている。そして、リンク部230Lの左端部(第2リンク230の長手方向一端部)が、前後方向を軸方向とした連結ピンPによって第1リンク228の先端部に回転可能に連結されている。
【0091】
リンク部230Rは、上下方向を板厚方向として、リンク部230Lの後側に配置されており、リンク部230Rの左端部における前端部が、リンク部230Lの右端部における上端部に接続されている。これにより、リンク部230Rが、リンク部230Lよりも上側に配置されている。そして、リンク部230Rの右端部(第2リンク230の長手方向他端部)が、揺動アーム224の連結ピン224Pに回転可能に連結されている。
【0092】
これにより、揺動アーム224の往復揺動に連動して、第2リンク230が前後方向に往復移動すると共に、第1リンク228(すなわち、回転軸204)が回転軸204の軸回りに往復回転するようになっている。具体的には、揺動アーム224の第1位置では、回転軸204が非解除位置に配置されており、揺動アーム224が第1位置から第2位置へ揺動することで、回転軸204が解除位置に配置される構成になっている。
【0093】
そして、第2の実施の形態では、ミシン10がミシンモータ22によって駆動するモータ駆動状態である場合には、制御部94の判断部96が、針板モータ214の作動を禁止する旨の判断を行うようになっている。
また、判断部96は、ミシン10がモータ駆動状態ではなく(すなわち、ミシンモータ22の非駆動状態であり)、且つ上軸26の位相が非解除位相である場合には、判断部96が、針板モータ214の作動を禁止する旨の判断を行うようになっている。
一方、ミシン10がモータ駆動状態ではなく、且つ上軸26の位相が解除位相である場合には、判断部96は、針板モータ214の作動を許可する旨の判断を行うようになっている。そして、判断部96が、針板モータ214の作動を許可する旨の判断を行うと、制御部94は、操作部24からの操作信号(針板モータ214の作動させる旨の操作信号)に基づいて、針板モータ214を作動させる構成になっている。
【0094】
そして、第2の実施の形態の針板着脱機構200では、制御部94によって回転軸駆動機構210の針板モータ214が作動することで、回転軸204が回転される。また、回転軸204には、カム206が一体回転可能に設けられている。このため、カム206が、回転軸204と共に回転して、針板70を上側へ押上げる。これにより、係合プレート60と板バネ74との係合状態が解除されて、針板70の固定状態が解除される。したがって、針板70を交換するときの利便性を向上することができる。
【0095】
ここで、上述のように、ミシンモータ22の非作動時で且つ針36(の針先)が針板70の上面よりも下側に位置しているときには、制御部94が、針板モータ214の作動を禁止して、回転軸204(回転部202)が非解除位置に維持される。また、ミシンモータ22の作動時には、制御部94が、針板モータ214の作動を禁止して、回転軸204(回転部202)が非解除位置に維持される。このため、第2の実施の形態においても、針板70の交換として適さない状況において、回転部202のカム206による針板70の固定状態に対する解除を制限することができる。
以上により、第2の実施の形態においても、針板70の交換として適さない状況において、針板70の交換を阻止することができる。
【0096】
また、回転部202では、回転軸204に一体回転可能に設けられたカム206が、カム面206Aを有しており、カム面206Aは、針板70の下面を摺動可能に構成されている。そして、回転軸204の軸心からカム面206Aまでの距離が、カム面206Aの基端から先端へ向かうに従い長くなるように構成されている。このため、回転軸204が非解除位置から解除位置へ回転するときに、カム206のカム面206Aによって、針板70を上側へ徐々に押上げることができる。これにより、係合プレート60と板バネ74との係合状態を徐々に解除して、針板70をベッド部16から取外すことができる。その結果、板バネ74と係合プレート60との係合状態が解除されたときに、針板70がベッド部16から一気に跳ね上げられることを抑制することができる。
【0097】
また、回転軸204は、回転軸204の軸心部を構成する金属製の芯部204Aと、回転軸204の外周部を構成する樹脂製の外側軸部204Bと、を含んで構成されており、カム206が外側軸部204Bに一体に形成されている。このため、回転軸204の強度を確保しつつ、カム206を有する回転軸204を安価に製作することができる。
また、例えば、外側軸部204Bを、比較的摺動性のよい材料(POM)で構成することで、回転軸204の回転時にカム面206Aを針板70に良好に摺動させて、カム206によって針板70を上側へ押上げることができる。
さらに、外側軸部204Bを樹脂製とすることで、カム面206Aが針板70の下面を摺動するときの異音の発生を抑制することができる。
【0098】
また、回転軸204の後端部には、操作ダイヤル208が一体回転可能に設けられており、操作ダイヤル208がロアカバー52の外部に操作可能に露出されている。このため、操作ダイヤル208を回転操作することで、回転軸204を手動で回転させて、針板70の固定状態を解除することができる。これにより、例えば、針板モータ214が仮に故障したとき等の緊急時において、針板70をベッド部16から取外すことができる。
【0099】
また、針板着脱機構200では、針板70を押上げるカム206が、前後方向において、前後一対の板バネ74の間に配置されている。このため、係合プレート60と板バネ74との係合状態をカム206によって解除するときの解除力を、一対の板バネ74に対してバランスよく付与することができる。これにより、係合プレート60と一対の板バネ74との係合状態を良好に解除させることができる。
【0100】
また、回転軸駆動機構210は、回転軸204に連結されたリンク機構226と、針板モータ214の駆動力をリンク機構226に伝達する伝達機構220と、を含んで構成されている。これにより、針板モータ214の駆動力をリンク機構226に伝達して、回転軸204を非解除位置と解除位置との間で回転させることができる。また、リンク機構226を用いることで、針板モータ214を回転軸204に離間させたベッド部16内の任意の位置に設置することができる。
【0101】
また、回転軸駆動機構210の伝達機構220は、針板モータ214の出力軸214Aに一体回転可能に設けられたピニオンギヤ222と、ピニオンギヤ222に噛合されたラック部224Bを有する揺動アーム224と、を含んで構成されており、揺動アーム224にリンク機構226の第2リンク230が相対回転可能に連結されている。これにより、簡易な構成で、針板モータ214の回転力を直線運動に変換して、回転軸204をリンク機構226によって往復回転させることができる。
【0102】
なお、第2の実施の形態では、針板着脱機構200が、回転軸駆動機構210(針板モータ214)を有しており、回転軸駆動機構210(針板モータ214)によって、回転部202が自動で回転する構成になっているが、針板着脱機構200において回転軸駆動機構210を省略して、回転部202を手動で回転させる構成にしてもよい。この場合には、第1の実施の形態の電磁石90やソレノイド102を針板着脱機構200に適用してもよい。針板着脱機構200に電磁石90を適用する場合には、例えば、第1の実施の形態と同様に、電磁石90によって針板70を着磁することで、針板70の固定状態をロックするように構成してもよい。また、針板着脱機構200にソレノイド102を適用する場合には、例えば、第1の実施の形態と同様に、ソレノイド102のプランジャ102Bを針板70の係合プレート104に係合させることで、針板70の固定状態をロックするように構成してもよい。
【0103】
また、第1の実施の形態(変形例1~3を含む)及び第2の実施の形態では、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるとき、及び、ミシンモータ22の駆動時に、針板70の交換が阻止される構成になっている。これに代えて、ミシンモータ22の非駆動時で且つ上軸26の位相が非解除位相であるとき、又は、ミシンモータ22の駆動時に、針板70の交換を阻止する構成にしてもよい。
【0104】
また、第1の実施の形態(変形例1~3を含む)及び第2の実施の形態において電磁石90やソレノイド102を適用した場合では、ミシンモータ22の駆動時において、電磁石90(ソレノイド102)が、制御部94によって作動する構成になっているが、電磁石90(ソレノイド102)を、制御部94の制御によらずに、ミシンモータ22に連動して作動する構成にしてもよい。この場合には、例えば、ミシンモータ22に電力を供給する電源に、電磁石90(ソレノイド102)をミシンモータ22と並列に接続する。これにより、電源からミシンモータ22へ電力を供給するときには、電磁石90(ソレノイド102)にも電源から電力が供給される。このため、電磁石90(ソレノイド102)を、ミシンモータ22に連動して作動させることができる。したがって、簡易な構成で、電磁石90(ソレノイド102)を作動させて、ミシンモータ22の駆動時における針板70の交換を阻止することができる。
【0105】
また、第1の実施の形態では、針板70そのものが磁性体である構成になっているが、必ずしも針板70の全体が磁性体である必要はない。電磁石90が針板70に着磁可能であればよいため、固定状態であるときの針板70において、電磁石90の上面付近にあたる部分だけが磁性体であってもよい。よって、例えば金属プレート(磁性体)を一部に貼り付けた樹脂製の針板70であっても発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0106】
10 ミシン
12 脚柱部
14 アーム部
16 ベッド部(ミシン本体)
20 駆動機構
22 ミシンモータ
24 操作部
24A 開始停止ボタン
26 上軸
28 ベルト
30 連結機構
32 クランクロッド
34 針棒
36 針
38 下軸
40 ベルト
44 ギヤ機構
46 釜
50 アッパカバー
52 ロアカバー
52A 底壁
52B 前壁
52C 後壁
52D 連通孔
54 固定プレート
56 第1押え部材
56A 押え片
58 第2押え部材
58A 押え片
60 係合プレート(針板固定部)
60A 係合片
60B 係合孔
62 支持部材
70 針板
72 固定部材
72A 連結片
74 板バネ(針板固定部)
74A 固定片
74B 係合片
74C フック部
80 針板着脱機構
82 押上棒
82A 段差部
84 止め輪
86 圧縮コイルバネ
88 解除レバー(解除部)
88A 回転軸
88B 押上部
90 電磁石(固定解除制限部)
92 上軸位相センサ
92A 回転板
92B 位相検出部
94 制御部
96 判断部
100 針板着脱機構
102 ソレノイド(固定解除制限部)
102A ソレノイド本体
102B プランジャ(係合部)
104 係合プレート
104A 固定片
104B 係合片
104C 係合孔
110 針板着脱機構
112 ロックプレート
120 針板着脱機構
200 針板着脱機構
202 回転部(解除部)
204 回転軸
204A 芯部
204B 外側軸部
206 カム
206A カム面
208 操作ダイヤル
210 回転軸駆動機構
212 ベースプレート
212A 露出孔
212S 支持シャフト
214 針板モータ
214A 出力軸
220 伝達機構
222 ピニオンギヤ
224 揺動アーム
224A 支持ボス
224B ラック部
224P 連結ピン
226 リンク機構
228 第1リンク
230 第2リンク
230L リンク部
230R リンク部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11