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  • 特許-クリーニング手段を有する流体トラップ 図1
  • 特許-クリーニング手段を有する流体トラップ 図2
  • 特許-クリーニング手段を有する流体トラップ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】クリーニング手段を有する流体トラップ
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/48 20060101AFI20221004BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16T1/48 Z
F16K51/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018110115
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019211050
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/48
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を移送する配管系統に接続される本体、
本体に形成され、本体内に滞留した排出対象を排出空間に向けて排出する排出口であって、本体内と排出空間とを連通させる排出口、
本体に接続され、貫通孔を有する筒状保持部、
排出口又はその近傍に位置する異物を除去するクリーニング手段であって、筒状保持部の貫通孔の内面に対してネジ構造によって螺合し、当該ネジ構造の螺合に従って進入または退去し、排出口又はその近傍に進入した作動状態、及び排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能なクリーニング手段、
を備えたクリーニング手段を有する流体トラップにおいて、
排出空間と本体の外部とを、筒状保持部の貫通孔の内面とクリーニング手段とのネジ構造の隙間を介して連通させる確認孔であって、本体の外部に開放された外側確認孔、及び当該ネジ構造の隙間に連通し、外側確認孔よりも小さい内径を有する内側確認孔から構成される確認孔
クリーニング手段に形成された開閉部であって、クリーニング手段が作動状態にあるとき確認孔を開放し、クリーニング手段が待機状態にあるとき確認孔を閉塞する開閉部、
を備えたことを特徴とするクリーニング手段を有する流体トラップ。
【請求項2】
請求項1に係るクリーニング手段を有する流体トラップにおいて、
本体内に位置しており、滞留した流体の水位に従って浮上又は下降する浮動部であって、下降状態にあるとき排出口を閉塞し、浮上状態にあるとき排出口を開放する浮動部、
を備えたことを特徴とするクリーニング手段を有する流体トラップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係るクリーニング手段を有する流体トラップにおいて、
クリーニング手段は排出空間の側に配置されている、
ことを特徴とするクリーニング手段を有する流体トラップ。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に係るクリーニング手段を有する流体トラップにおいて、
確認孔は、排出空間における排出対象の排出経路から外れた箇所に位置している、
ことを特徴とするクリーニング手段を有する流体トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップは、エアートラップやスチームトラップ等の流体トラップのクリーニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、コンプレッサーで圧縮された圧縮エアーや、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて移送する配管系統が設置されていることがある。そして、この配管内で、圧縮エアーや蒸気からドレン(凝縮水)が発生し、ドレンが過度に配管内に滞留した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する。
【0003】
このために、配管系統の随所にエアートラップやスチームトラップ等の自動弁が設けられている。圧縮エアーや蒸気を移送する配管系統の主管には、トラップ設置用の支管が連通して延びており、この支管上にエアートラップやスチームトラップが設けられる。
【0004】
これらのトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式トラップは弁室内に中空のフロートを内蔵している。そして、通常においては、このフロートは弁室の底部付近に形成されたドレン排出口を塞いでいるが、弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従ってこのフロートが浮上し、ドレン排出口を開放する。ドレン排出口が開放されたことにより、弁室内に滞留したドレンは、配管内の高圧を受けて自動的にドレン排出口からドレン回収管に向けて排出される。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞する。
【0005】
ところで、エアートラップやスチームトラップの弁室内には、流入するドレンとともに錆やスケール(水垢)等の異物が混入することがある。そして、このような異物がドレン排出口に付着して堆積した場合、この異物によってドレン排出口が塞がれて詰まりが生じ、フロートが浮上しても適正にドレンをドレン回収管に向けて排出することができなくなる。特にドレン排出口は、ドレンの排出効率を高めるために、口径の小さなオリフィス状に形成されていることから、異物による詰まりが生じやすい。
【0006】
このため、エアートラップやスチームトラップ等の流体トラップには、ドレン排出口に付着・堆積した異物を除去するためのクリーニング機構が設けられていることがある。このようなクリーニング機構として、後記特許文献1に開示されている技術がある。
【0007】
後記特許文献1には、排出路側にクリーニング機構が設けられたスチームトラップが開示されており、排出口に向け、ネジ構造によって進退可能なバー形状の異物除去部材が示されている。すなわち、この異物除去部材の後端が、スチームトラップから螺入操作可能に外部に突出しており、排出口が異物によって詰まった場合、後端のネジを螺入操作することによって異物除去部材の先端部を排出口に侵入させる。この先端部の侵入によって異物を除去し、異物が除去されたと判断した後、後端部のネジを逆方向に螺入操作して異物除去部材の先端部を排出口から退避させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4907716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1に開示された技術においては、スチームトラップの外部から、異物除去部材の後端を螺入操作してクリーニング処理を行う。ここで、排出口における異物の付着・堆積の状況によっては、排出口から異物を確実に除去するために、排出口への異物除去部材の先端部の侵入・退避を複数回、連続して繰り返し、又は排出口へ異物除去部材の先端部を浸入させた状態を一定時間、維持しなければならない場合がある。
【0010】
ところが、特許文献1に開示された技術では、スチームトラップの外部からは、排出口から異物を適正に除去することができたか否かを確認することができず、どのようなタイミングでクリーニング動作を終了させればよいか判断することが難しい。
【0011】
このため、たとえば排出路に流量計を設けてドレンの流出を検出し、ドレンが排出路側に適正に排出されたことを確認する構成も考えらえられる。しかし、このような構成では、流量計の設置によって構成が複雑化し、コストも高くなるという新たな問題が生じる。
【0012】
そこで、本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップは、これらの問題を解決することを課題とし、簡易な構成でクリーニング処理の終了を確実に把握することができるクリーニング手段を有する流体トラップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップは、
流体を移送する配管系統に接続される本体、
本体に形成され、本体内に滞留した排出対象を排出空間に向けて排出する排出口であって、本体内と排出空間とを連通させる排出口、
排出口又はその近傍に位置する異物を除去するクリーニング手段であって、排出口又はその近傍に進入した作動状態、及び排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能なクリーニング手段、
を備えたクリーニング手段を有する流体トラップにおいて、
排出空間と本体の外部とを連通させる確認孔、
クリーニング手段に形成された開閉部であって、クリーニング手段が作動状態にあるとき確認孔を開放し、クリーニング手段が待機状態にあるとき確認孔を閉塞する開閉部、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップにおいては、クリーニング手段に形成された開閉部は、クリーニング手段が作動状態にあるとき確認孔を開放し、クリーニング手段が待機状態にあるとき確認孔を閉塞する。
【0015】
このため、クリーニング手段が作動状態にあって、排出対象が排出空間に排出された場合、排出対象は開放された確認孔から外部に流出する。この排出対象の流出によって、排出口のクリーニング処理の終了を視認することが可能であり、簡易な構成でクリーニング処理の終了を確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップの第1の実施形態を示すスチームトラップ90の断面図である。
図2図1に示すクリーニング機構10近傍の拡大断面図であり、通常時の状態を示す断面図である。
図3図1に示すクリーニング機構10近傍の拡大断面図であり、クリーニング時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップの下記の要素に対応している。
クリーニングバー2・・・クリーニング手段
バーネジ部2G・・・ねじ構造
ドレン4・・・排出対象
内側滴下路3a、外側滴下路3a・・・確認孔
後退ストッパー22・・・開閉部
フロート30・・・浮動部
弁口50a・・・排出口
排出路52、中間室53・・・排出空間
上部本体91、下部本体92・・・本体
蒸気・・・流体
通常時の状態(図2)・・・待機状態
クリーニング時の状態(図3)・・・作動状態
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップの第1の実施形態を、スチームトラップを例に説明する。
【0019】
(スチームトラップの概要の説明)
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレン(蒸気の凝縮水)が滞留し、蒸気の移送の障害になる。
【0020】
このような事態を回避するために、配管には随所に多数のスチームトラップが設けられている。図1は本実施形態におけるスチームトラップ90の断面図である。このスチームトラップ90は、上部本体91及び下部本体92によって本体を構成している。上部本体91と下部本体92とはボルト94によって固定され、内部に気密性を保った弁室95を形成している。
【0021】
配管の主管(図示せず)には支管81が連通して設けられており、この支管81に、上部本体91に形成された接続口91aが接続される。そして、接続口91a から弁室95内に蒸気やドレンが矢印101方向に流入する。なお、弁室95の上部には網状のストレーナ80が設けられており、蒸気やドレンはこのストレーナ80を透過して弁室95に流入する。
【0022】
弁室95の下方には弁座50が固定して取り付けられており、この弁座50には弁口50aが形成されている。この弁口50aは、弁座50の後方に形成されている中間室53に通じており、さらに中間室53は上部本体91及び下部本体92に連続的に形成されている排出路52に連通している。これによって、弁室95内に滞留したドレン4を、弁口50aからドレン回収管82に向けて矢印102方向に排出可能である。
【0023】
弁座50に形成された弁口50aは、通常時においては、弁室95内に配置されたフロート30によって閉塞されており蒸気漏れが生じないようになっている。フロート30は中空の球状体として構成され、弁室95内において浮動可能に位置している。そして、弁室50内に滞留したドレン4の水位が基準レベルL1にあるとき、フロート30は図1に示す状態(下降状態)に位置し、弁口50aを閉塞する。
【0024】
弁室95にドレンが流入してドレン4の水位が上昇し、開放レベルL2に達したとき、フロート30はこれにともなって矢印103に浮上し(浮上状態)、弁口50aを開放する。これによって、弁室95内に滞留したドレン4は、配管内の高圧に基づく勢いに従い、弁口50aから中間室53及び排出路52を通して矢印102方向に抜け、ドレン回収管82に排出される。排出後は、弁室95内のドレン4の水位が下降するため、これに伴ってフロート30も下降し、ドレン4の水位が基準レベルL1に戻ったとき、フロート30は図1に示す状態に復位して弁口50aを閉塞する。
【0025】
なお、弁室95内の下部にはカーブを描くように屈曲させたバイメタル85が設けられている。バイメタル85は、膨張係数の異なる2枚の合金薄板を張り合わせた感温部材であり、周辺温度が高温のときは端部85aが下降して図1に示す状態に収まるが、周辺温度が低温になったときはこれに反応して形状が変化し、端部85aが上昇してフロート30を押し上げ、ドレン4の水位にかかわらず強制的に弁口50aを開放するようになっている。
【0026】
このバイメタル85は、低温のエアーやドレンを適切に弁口50aから排出するために設けられている。たとえば、設備の稼働を開始した初期段階においては、弁室95内には低温のエアーが充満しているため、バイメタル85はフロート30を押し上げ弁口50aを強制的に開放した状態にある。このため、蒸気移送が開始されるとこの初期のエアーは弁口50aから適正に排出され、エアーバインディング(空気障害)が回避される。また、弁室95内に流入してくる低温のドレンも同様に弁口50aから適正に排出される。
【0027】
そして、続いて弁室95に高温の蒸気が流入したとき、バイメタル85は高温に反応して変形し、端部85aが下降して図1に示す状態に至る。これによって、以後、フロート30はバイメタル85の干渉を受けずに、前述のように滞留するドレン4の水位に従って上昇、下降を繰り返す。
【0028】
(クリーニング機構10の構成の説明)
スチームトラップには、ゴミやスケール等の異物によって弁口が塞がれ、ドレンを適正に排出することができないといったドレンの詰まり状態が発生することがある。このような事態に対処するために、本実施形態におけるスチームトラップ90には、クリーニング機構10が設けられている。以下にこのクリーニング機構10の構成を図2に基づいて説明する。
【0029】
下部本体92の底部には、前述の弁座50と同一軸上に配置された筒状保持部55が螺入されて固定されている。そして、さらにこの筒状保持部55には、押圧部56が螺入されている。そして、押圧部56の内側に設けられたシール57を、押圧部56が加圧することによって、中間室53からのドレンの漏れを防いでいる。
【0030】
これら筒状保持部55、押圧部56及びシール57の中心に形成された貫通孔にはクリーニングバー2が貫通して配置されている。クリーニングバー2の略中間部にはバーネジ部2Gが形成されており、このバーネジ部2Gは、筒状保持部55の中心孔内面に形成されたネジ部に螺合している。
【0031】
クリーニングバー2のバー先端25は細く形成されており、弁口50aに向けて配置されている。このバー先端25の直径は、弁口50aの内径よりもやや小さく形成されている。また、バー先端25に連続させて、傾斜面で形成される前進ストッパー21が形成されている。なお、弁座50には弁口50aの内側に、前進ストッパー21に対応させて斜壁50bが形成されている。
【0032】
さらに、クリーニングバー2の中間部には、クリーニングバー2のバー径よりも大きい径を有する後退ストッパー22が一体的に固定されている。そして、クリーニングバー2の後端部分は押圧部56から突出しており、この後端部分には操作用溝2aが形成されている。
【0033】
操作用溝2aにドライバー等の工具を接続して操作し正回転させれば、バーネジ部2Gと筒状保持部55との螺合に従って、クリーニングバー2は矢印111方向に前進する。この場合、クリーニングバー2の前進ストッパー21が、弁座50内側に形成された斜壁50bに当接した時点で、クリーニングバー2の矢印111方向への動きは規制され、これ以上前進することができなくなる。
【0034】
また、工具の操作でクリーニングバー2を逆回転させれば、クリーニングバー2は矢印112方向に後退する。この場合、クリーニングバー2の後退ストッパー22が筒状保持部55の先端面55aに当接した時点で、クリーニングバー2の矢印112方向への動きは規制され、これ以上後退することができなくなる。
【0035】
ここで、本実施形態においては、筒状保持部55に内側滴下路3aが形成されており、この内側滴下路3aは中間室53に連通している。また、下部本体92には、内側滴下路3aと連通するように外側滴下路3bが形成されており、この外側滴下路3bは下部本体92の外部に開放されている。
【0036】
すなわち、中間室53は、内側滴下路3a及び外側滴下路3bを介し、下部本体92の外部に通じている。なお、内側滴下路3aの内径は、外側滴下路3bの内径よりも小さく形成されている。本実施形態においては、クリーニングバー2が矢印112方向に後退し、後退ストッパー22が筒状保持部55の先端面55aに当接した状態(図2に示す状態)においては、後退ストッパー22が内側滴下路3aを閉塞し、中間室53と下部本体92の外部との連通は遮断される。
【0037】
(クリーニング動作の説明)
次に、クリーニング機構10を用いたスチームトラップ90のクリーニング動作を、図2及び図3に基づいて説明する。スチームトラップ90の弁口50aに詰まり状態が発生していると判断した場合、操作者は、図2に示すスチームトラップ90の状態から、操作用溝2aに対して工具を用い、クリーニングバー2を正回転させ、クリーニングバー2を矢印111方向に前進させる。
【0038】
このとき、クリーニングバー2の後退ストッパー22が、筒状保持部55の先端面55aから離れ、内側滴下路3aが開放されることになる。このため、中間室53内にドレンが残存している場合、クリーニング動作の開始時において、内側滴下路3a及び外側滴下路3bを通して、外部にドレンが滴下するが、残存しているドレンの量は僅かであり、また弁口50aの詰まりによって中間室53内に新たにドレン4が流入することはないため、滴下はすぐに停止する。
【0039】
操作者は引き続きクリーニングバー2を矢印111方向に前進させ、前進ストッパー21が、弁座50内側に形成された斜壁50bに当接し、クリーニングバー2が前進できなくなるまで工具操作による正回転を続ける。クリーニングバー2の回転と前進により、バー先端25も回転しながら弁口50aに進入する。クリーニングバー2の前進ストッパー21が斜壁50bに当接して前進が規制されたとき、バー先端25は弁口50aから中間室53に向けて突出している。このバー先端25の突出によって、弁口50aに付着した異物は剥がれ落とされ、中間室53に一旦、押し入れられる。
【0040】
この後、操作者は、工具を用いてクリーニングバー2を逆回転させ、矢印112方向に後退させる。クリーニングバー2が矢印112方向に後退している途中の状態(クリーニング時の状態)が図3である。
【0041】
ここで、前述のようにバー先端25の直径は弁口50aの内径よりもやや小さく形成されている。このため、バー先端25が弁口50aに進入している状態(図3)においても、バー先端25と弁口50aの内径との間には隙間が生じるようになっており、弁室95内の高圧の勢いに従って、ドレン4とともに異物がこの隙間から中間室53側に一気に流入し、排出路52を通じて矢印102方向に排出されて弁口50aの詰まり状態が解消する。
【0042】
また、図3に示す状態からさらにクリーニングバー2が後退し、バー先端25が弁口50aから退去した時点で、弁口50aは完全に開放される。これによって、ドレン4や異物はさらに勢いよく中間室53側に流入して排出される。
【0043】
こうして弁口50aの詰まり状態が解消したことによって、弁口50aを通じてドレン4が中間室53に流入し、図3に示す状態において、内側滴下路3a及び外側滴下路3bを通してドレン4が外部に滴下する。この滴下を操作者が視認することによって、操作者は弁口50aの詰まり状態が解消したことを確実に認識することができ、クリーニング処理の終了を把握する。
【0044】
ところで、弁口50aへの異物の付着状態によっては、クリーニングバー2のバー先端25を一度、弁口50aに進退させただけでは、詰まり状態が解消されない場合がある。この場合、外側滴下路3bからドレン4が滴下されないため、操作者は詰まり状態が未だ解消されていないと判断し、再度、クリーニングバー2を矢印111方向に前進させて、ドレン4の滴下が確認されるまで前述のクリーニングバー2の進退動作を繰り返す。そして、外側滴下路3bからドレン4が滴下したことを確認して、操作者はクリーニング処理の終了を把握する。
【0045】
ドレン4の滴下が確認された後は、後退ストッパー22が筒状保持部55の先端面55aに当接するまでクリーニングバー2を矢印112方向に後退させ、図2に示す通常時の状態に復位させる。これによって、内側滴下路3aは再び後退ストッパー22によって閉塞され、以後ドレン4や蒸気が内側滴下路3a及び外側滴下路3bから外部に漏れることはない。
【0046】
本実施形態においては、クリーニングバー2は螺入操作によって進退する構成であるため、進退動作にある程度の時間を確保することができ、この間に異物を確実に排出路52に排出することができる。なお、本実施形態においては、クリーニングバー2の後退を規制するための後退ストッパー22を、内側滴下路3aを閉塞するための開閉部として用いているため、新たに開閉部を別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0047】
また、弁口50aの詰まり状態が解消されたときにドレン4の滴下が確認されれば目的を達すことができるため、本実施形態においては、内側滴下路3aの内径をドレン4の滴下が可能な程度に小さく形成している。これによって、必要以上にドレン4が外部に流出することが防止される。
【0048】
さらに、本実施形態においては、内側滴下路3aが、中間室53から排出路52に向かう矢印102方向に沿った排出経路から外れた個所に形成されているため、中間室53に流入した異物によって内側滴下路3aが詰まる事態を回避することができる。
【0049】
[その他の実施形態]
前記実施形態においては、本願に係るクリーニング手段を有する流体トラップを、スチームトラップに適用した例を掲げたが、他の流体トラップ、たとえばエアートラップに適用することもできる。
【0050】
また、前記実施形態においては、開閉部として、クリーニングバー2に固定された後退ストッパー22を例示したが、クリーニングバー2(クリーニング手段)が作動状態にあるとき内側滴下路3a(確認孔)を開放し、待機状態にあるとき内側滴下路3a(確認孔)を閉塞するものである限り、他の構成を採用してもよい。たとえば、クリーニング手段とは別部品として開閉部を配置し、クリーニング手段の状態の変位に応じて開閉動作を行う構成を採用することができる。
【0051】
なお、前記実施形態において示した後退ストッパー22が、確実に内側滴下路3aを閉塞するように、シール等の弾力部材を後退ストッパー22と筒状保持部55の先端面55aとの間に介在させることもできる。この場合、弾性部材は後退ストッパー22側に固定させても良いし、先端面55a側に固定させても良い。また、後退ストッパー22自体を弾性部材で構成することもできる。
【0052】
さらに、前記実施形態においては、クリーニング手段としてクリーニング機構10が有するクリーニングバー2を例示したが、これに限定されるものではなく、他の構造や形状を採用することもできる。
【符号の説明】
【0053】
2:クリーニングバー 2G:バーネジ部 4:ドレン
10:クリーニング機構 3a:内側滴下路 3b:外側滴下路
22:後退ストッパー 30:フロート 50a:弁口 52:排出路
55:筒孔 53:中間室 91:上部本体 92:下部本体

図1
図2
図3