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特許7152217シャロートレンチアイソレーションにおいて使用するための水性シリカスラリー組成物、及びそれらの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シャロートレンチアイソレーションにおいて使用するための水性シリカスラリー組成物、及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221004BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221004BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221004BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
C09G1/02
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018155324
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2019056108
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】15/691,115
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ナレシュ・クマール・ペンタ
(72)【発明者】
【氏名】ユリア・コジューフ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
(72)【発明者】
【氏名】カンチャーラ-アルン・ケイ・レディ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ヴァン・ハネヘム
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/200660(WO,A1)
【文献】特開2015-189784(JP,A)
【文献】特開2012-142064(JP,A)
【文献】国際公開第2009/131133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性窒素原子を含む、複数の細長いか、湾曲しているか、若しくは節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液、又は球状コロイダルシリカ粒子の分散液とのこれらの混合物、及び0.001~0.5重量%の、カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩と二酸化硫黄とのカチオン性コポリマー、カチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマー、又はこれらの混合物を含む水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨(CMP研磨)組成物であって、1~4.5のpHを有しており、そして更に、細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液の量が、0.5~30重量%の範囲である(全ての重量は組成物の総重量に基づく)、組成物。
【請求項2】
細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液が、平均粒子について、1.8:1~3:1の最長寸法対最長寸法に垂直なその直径のアスペクト比を有する、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項3】
細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液と、球状コロイダルシリカ粒子の分散液との混合物を含む、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物であって、細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液の量が、組成物中のコロイダルシリカ粒子の総固形分重量に基づいて、80~99.9重量%の範囲である、組成物。
【請求項4】
カチオン性コポリマー又はこれらの混合物の量が、10~500ppmの範囲である、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項5】
ジアリルアミン塩の任意のカチオン性コポリマーが、塩化ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄とのコポリマーを含み、そしてジアリルアルキルアミン塩の任意のカチオン性コポリマーが、塩化ジアリルモノメチルアンモニウムと二酸化硫黄とのコポリマーを含む、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項6】
カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩と二酸化硫黄との任意のカチオン性コポリマーが、45~55モル%のカチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩と、45~55モル%の二酸化硫黄とのコポリマーを含み、そしてカチオン性アミン基を有するジアリルモノメチルアミン塩と二酸化硫黄との任意のカチオン性コポリマーが、45~55モル%のカチオン性アミン基を有するジアリルモノメチルアミン塩と、45~55モル%の二酸化硫黄とのコポリマーを含む、請求項5に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項7】
カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩と二酸化硫黄との任意のカチオン性コポリマー、又はカチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄との任意のカチオン性コポリマーが、1,000~15,000の重量平均分子量を有する、請求項5に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項8】
組成物が、2.5~4.3のpHを有する、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項9】
CMP研磨パッド及び水性CMP研磨組成物で基板を研磨することを含む、請求項1に記載の水性CMP研磨組成物の使用方法。
【請求項10】
基板が、二酸化ケイ素と窒化ケイ素の両方を含み、そして研磨によって、3:1~25:1の酸化物:窒化物除去速度比が得られる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物であって、カチオン性窒素原子を含む、複数の球状コロイダルシリカ粒子の、又は細長いか、湾曲しているか、若しくは節のあるシリカ粒子の、又はそれらの混合物の1種以上の分散液、及び塩化ジアリルアンモニウムのようなカチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマー、又は塩化ジアリルモノメチルアンモニウムのようなカチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマーを含む組成物であって、1~4.5のpHを有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントエンド・オブ・ライン(FEOL)半導体加工において、シャロートレンチアイソレーション(STI)は、トランジスタの形成前のような、集積回路製造におけるゲートの形成に重要である。STIにおいて、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)又は二酸化ケイ素のような絶縁体は、シリコンウェーハに形成された開口部、例えば、トレンチ又はアイソレーション領域(窒化ケイ素(SiN)バリアにより集積回路の残部から単離されている)に過剰に堆積される。次にCMPプロセスを用いて過剰な絶縁体を除去すると、所定のパターンの絶縁体がシリコンウェーハに嵌め込まれた構造が得られる。STIのためのCMPは、アイソレーション領域からの二酸化ケイ素のオーバーバーデン(overburden)の除去及び平坦化を必要とし、それによって二酸化ケイ素充填トレンチと同一平面の表面が得られる。STIでは、窒化ケイ素膜表面から二酸化ケイ素又は酸化ケイ素を除去して、下流の加工において窒化物ハードマスクを後で除去できるようにする必要がある。許容し得る酸化物:窒化物除去速度比は、下層のSi活性領域への損傷を防止するために、及び全てのパターン密集域から酸化物が除去されることを保証するための過剰研磨マージンを提供するために必要である。更に、トレンチ内の酸化物のディッシングは、完成したゲートにおける低閾値漏電を防止するために回避する必要がある。
【0003】
現在、基板を研磨するためにCMP研磨パッドと共に使用される水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨(CMP研磨)組成物の使用者は、セリア含有CMP研磨組成物の使用を回避したい。セリアスラリーは、窒化ケイ素を上回る二酸化ケイ素に対する高い選択性を示し、窒化ケイ素の露出時にトレンチ領域内の酸化物の除去を回避するが、コストが高く、除去速度(RR)及びプロセス安定性に問題があり、研磨中に欠陥を引き起こす傾向がある。シリカスラリー配合物は、より低コストで欠陥のない解決策を提供するが、今までのところ、STI用途に使用するには不十分な酸化物ディッシング制御及び不適切な酸化物:窒化物選択性という問題を抱えていた。
【0004】
Grumbineらの米国特許第9,303,188 B2号は、タングステン層を有する基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、水系液体担体、カチオン荷電コロイダルシリカ砥粒及び液体担体中に溶解したポリカチオン性アミン化合物を含む組成物を開示している。この組成物は、ポリアミン類、及び塩化ジアリルアンモニウムのようなアミン官能基を含むポリマーから選択されるアミン系ポリマーを含むことができる。この組成物は、STI用途に使用するのに許容し得る酸化物ディッシング制御及び不適切な酸化物:窒化物選択性を示さない。
【0005】
本発明者らは、STI用途に使用するのに許容し得る酸化物ディッシング制御及び酸化物:窒化物選択性を可能にする水性シリカスラリー、更にはこのスラリーの使用方法を提供するという課題を解決しようと努めた。
【0006】
発明の記載
1.本発明により、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨(CMP研磨)組成物は、カチオン性窒素原子を含む、複数の細長いか、湾曲しているか、若しくは節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液、又は複数の球状コロイダルシリカ粒子の分散液とのこれらの混合物(例えば、平均粒子について、1.8:1~3:1の粒子の最長寸法対最長寸法に垂直なその直径のアスペクト比を有するもの)、及び0.001~0.5重量%、又は好ましくは10~500ppmの、ジアリルアンモニウム塩、好ましくはハロゲン化物塩のような、カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩のカチオン性コポリマー(ハロゲン化ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄とのコポリマーなど)、又はハロゲン化ジアリルアルキルアンモニウム、好ましくは、ジアリルモノメチルアンモニウム塩、好ましくは、ハロゲン化物塩など、好ましくは塩化ジアリルモノメチルアンモニウムなどのような、カチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマー、又はこれらの混合物を含み、ここで、組成物は、1~4.5、又は好ましくは2.5~4.3のpHを有しており、そして更に、細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子の分散液の量は、組成物の総重量に基づいて、固形分として0.5~30重量%、又は好ましくは1~25重量%、又は更に好ましくは1~20重量%の範囲である。
2.上記第1項に記載の水性CMP研磨組成物により、組成物は、カチオン性窒素原子を含む、複数の細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液と、複数の球状コロイダルシリカ粒子の分散液との混合物を含み、ここで、細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液の量は、組成物中のコロイダルシリカ粒子の総固形分重量に基づいて、80~99.9重量%、又は好ましくは95~99.9重量%の範囲である。
3.シリカ粒子の分散液中のシリカ粒子の重量平均粒径(CPS)又はシリカ粒子の混合物のそのような粒径の加重平均が、10nm~200nm、又は好ましくは25nm~80nmの範囲である、上記第1又は2項のいずれかに記載の水性CMP研磨組成物。
4.ジアリルアンモニウム塩と二酸化硫黄とのカチオン性コポリマーが、45~55モル%、又は好ましくは48~52モル%のカチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩(ジアリルアンモニウム塩など、好ましくはハロゲン化物塩など)と、45~55モル%、又は好ましくは48~52モル%の二酸化硫黄とのコポリマーを含むか、あるいはジアリルアルキルアンモニウム塩、又はハロゲン化ジアリルアルキルアンモニウム、好ましくはジアリルモノメチルアンモニウム塩など、好ましくはハロゲン化物塩など、好ましくは塩化ジアリルモノメチルアンモニウムのような、カチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのカチオン性コポリマーが、45~55モル%、又は好ましくは48~52モル%のジアリルモノメチルアンモニウム塩と、45~55モル%、又は好ましくは48~52モル%の二酸化硫黄とのコポリマーを含む、上記第1、2又は3項のいずれかに記載の水性CMP研磨組成物。
5.カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩、好ましくはハロゲン化物塩と二酸化硫黄とのカチオン性コポリマー、又はカチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩、好ましくはハロゲン化物塩、若しくは更に好ましくはハロゲン化アンモニウムと二酸化硫黄とのカチオン性コポリマー、又はこれらの混合物の加重平均が、1,000~15,000、又は好ましくは2,000~12,000の重量平均分子量を有する、上記第1、2、3又は4項のいずれかに記載の水性CMP研磨組成物。
6.本発明の別の態様により、水性CMP研磨組成物の使用方法は、CMP研磨パッド及び上記第1~5項のいずれかに記載の水性CMP研磨組成物で基板を研磨することを含む。
7.基板が、二酸化ケイ素又はオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と窒化ケイ素(SiN又はSi又はこれらの混合物)の両方を含み、そして研磨によって、少なくとも3:1、例えば、3:1~25:1、又は好ましくは8:1~18:1、例えば、少なくとも8:1の酸化物:窒化物除去速度比が得られる、第6項に記載の本発明の方法。
8.研磨ダウンフォースが、6.9kPa(1psi)~41.5kPa(6psi)、又は好ましくは12kPa(1.8psi)~36kPa(5.2psi)の範囲である、上記第6又は7項のいずれかに記載の基板を研磨するための本発明の方法。
9.CMP研磨組成物が、全部で0.5~5重量%、又は好ましくは1~3重量%の、細長いか、湾曲しているか、若しくは節のあるコロイダルシリカ粒子、球状コロイダルシリカ粒子、又はこれらの混合物の分散液の総固形分含量を含む、上記第6、7又は8項のいずれかに記載の基板を研磨するための本発明の方法。このCMP研磨組成物は、濃縮液として保存及び輸送されて、次に基板の研磨時に水で希釈されてもよい。
【0007】
特に断りない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度及び標準圧力である。列挙された全ての範囲は、包括的かつ組合せ可能である。
【0008】
特に断りない限り、括弧を含む任意の用語は、選択的に、括弧が存在しないかのようにその用語全体及び括弧内を除くその用語、並びに各選択肢の組合せのことをいう。
【0009】
全ての範囲は、包括的かつ組合せ可能である。例えば、「50~3000cP、又は100cP以上の範囲」という用語は、50~100cP、50~3000cP及び100~3000cPのそれぞれを含むだろう。
【0010】
本明細書に使用されるとき、「ASTM」という用語は、ASTM International, West Conshohocken, PAの刊行物のことをいう。
【0011】
本明細書に使用されるとき、「コロイドとして安定な」という用語は、所与の組成物がゲル化又は沈殿しないこと、そして所与の時間後及び所与の温度での目視検査時に透明なままであることを意味する。
【0012】
本明細書に使用されるとき、「硬い塩基」という用語は、NaOH、KOH、又はCa(OH)のようなアルカリ(土類)金属水酸化物を含む、金属水酸化物のことをいう。
【0013】
本明細書に使用されるとき、「ISO」という用語は、国際標準化機構(International Organization for Standardization)(Geneva, CH)の刊行物のことをいう。
【0014】
本明細書に使用されるとき、「粒径(CPS)」という用語は、CPS Instruments(The Netherlands)のディスク遠心分離システムによって測定される組成物の重量平均粒径を意味する。粒子は、溶媒中で遠心力を用いてサイズによって分離され、光学的光散乱を用いて定量化される。
【0015】
本明細書に使用されるとき、「カチオン性アミン基」という用語は、水性媒体中で生じるアミン水酸化物基の塩を含む。
【0016】
本明細書に使用されるとき、「ショアD硬度」という用語は、ASTM D2240-15 (2015), “Standard Test Method for Rubber Property, Durometer Hardness”により測定される、所与の材料の2秒の硬度である。硬度は、Dプローブを取り付けたRex Hybrid硬度試験機(Rex Gauge Company, Inc., Buffalo Grove, IL)で測定された。各硬度測定のために6個の試料を積み重ねて混ぜ;そして各試験パッドを試験前に23℃で5日間50パーセント相対湿度に置き、硬度試験の再現性を改善するためのASTM D2240-15 (2015)に略述される方法を用いてコンディショニングした。本発明において、研磨層又はパッドのポリウレタン反応生成物のショアD硬度は、その反応生成物のショアD硬度を含む。
【0017】
本明細書に使用されるとき、「シリカ粒子固形分」又は「シリカ固形分」という用語は、所与の組成物について、球状シリカ粒子の総量、プラス細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子の総量(これらの粒子が処理されたどんなものも含む)を意味する。
【0018】
本明細書に使用されるとき、「固形分」という用語は、その物理的状態が何であっても、使用条件で揮発しない水又はアンモニア以外のあらゆる材料を意味する。よって、使用条件において揮発しない液体シラン又は添加剤は、「固形分」と考えられる。
【0019】
本明細書に使用されるとき、「強酸」という用語は、硫酸又は硝酸のような無機酸などの、2以下のpKを有するプロトン酸のことをいう。
【0020】
本明細書に使用されるとき、「使用条件」という用語は、所与の組成物が使用される温度及び圧力(使用中の又は使用の結果としての温度及び圧力の上昇を含む)を意味する。
【0021】
本明細書に使用されるとき、「重量分率シリカ」という用語は、組成物の総重量/100%に基づくシリカの総重量%を意味する。よって、30重量%シリカは、0.3の重量分率に等しい。
【0022】
本明細書に使用されるとき、「加重平均」という用語は、異なる組成物(例えば、球状コロイダルシリカ粒子の分散液及び細長いコロイダルシリカ粒子の分散液)からの2個以上の測定値の平均(例えば、平均粒径又は分子量)であって、それぞれにその固形分重量分率(ここで、総固形分重量分率は合計1(1.00)となる)を掛けることにより得られる平均を意味する。
【0023】
本明細書に使用されるとき、「重量%」という用語は、重量パーセントを表す。
【0024】
本明細書に使用されるとき、「細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子」という用語は、平均粒子において、透過電子顕微鏡法(TEM)のような当業者に公知の任意の方法により測定されるとき、又は粒子の分散液の製造業者により報告されるとき、1.8:1~3:1の最長寸法対最長寸法に垂直なその直径のアスペクト比を有するシリカ粒子のことをいう。
【0025】
驚くべきことに本発明者らは、水性CMP研磨組成物であって、カチオン電荷を有する細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の分散液、及び組成物の総重量に基づいて0.5重量%以下のカチオン性コポリマー[カチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩(ジアリルアンモニウム塩など)又はカチオン性アミン基を有するジアリルアルキルアミン塩(ジアリルアルキルアンモニウム塩など、例えば、ハロゲン化ジアリルアルキルアンモニウム、好ましくは、ジアリルモノメチルアンモニウム塩)と二酸化硫黄とのカチオン性コポリマー]の組成物が、シャロートレンチアイソレーション(STI)処理を受けたシリコンウェーハのような基板を平坦化又は研磨するのに特に適していることを見い出した。ブランケットシリコンウェーハ上の圧力応答特性決定により、これらのスラリーは、非プレストニアン(non-Prestonian)式に酸化ケイ素を研磨することが明らかになった。酸化物除去速度は、低いダウンフォースでは無視でき、「ターンオン」圧力より高い圧力では、ダウンフォースが上昇するにつれて上昇する。このような非プレストニアンの酸化物RR(y軸)対ダウンフォース(x軸)曲線のx切片は、ゼロではない。本発明の水性CMP研磨組成物は、満足のいく除去速度での二酸化ケイ素のCMP研磨を可能にし、ブランケット及びパターンウェーハの両方で窒化ケイ素を上回る酸化ケイ素に対する許容し得る選択性を提供する。最も重要なことに、この組成物は、他のシリカスラリーと比較して、トレンチ酸化物損失及び時間の経過に伴うディッシングを改善することができる。
【0026】
本発明により、適切なコロイダルシリカ組成物は、球状シリカ粒子を含んでいてもよい分散物中又は混合物中の、複数の細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子を製造するために、従来のゾル・ゲル重合によるか、又は水ガラスの懸濁重合により製造されたシリカの分散液を含むことができる。
【0027】
細長いか、湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の適切な分散液は、テトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)のような前駆体から公知の方法で形成されたシラノール類の加水分解縮合による懸濁重合から製造される。細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子の製造方法は公知であり、例えば、Higuchiらの米国特許第8,529,787号に見い出すことができる。加水分解縮合は、塩基性触媒[水酸化アルキルアンモニウム類、アルコキシアルキルアミン類(エトキシプロピルアミン(EOPA)など)、アルキルアミン類又はKOHなど、好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム]の存在下で水性懸濁液中で前駆体を反応させることを含む;加水分解縮合プロセスにより、1個以上のカチオン性窒素原子を細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子に組み込むことができる。好ましくは、細長いか、湾曲しているか、又は節のあるシリカ粒子は、pH4以下でカチオン性である。
【0028】
湾曲しているか、又は節のあるコロイダルシリカ粒子の適切な分散液は、HL-2、HL-3、HL-4、PL-2、PL-3又はBS-2及びBS-3スラリーの商品名の下でFuso Chemical Co., Ltd., Osaka, JP(Fuso)から市販されている。Fuso製のHL及びBSシリーズ粒子は、pH4以下でカチオン電荷を付与する1個以上の窒素原子を含む。
【0029】
本発明の水性CMP研磨組成物のコロイド安定性を保証するために、組成物は、1~4.5、又は好ましくは2.5~4のpH範囲を有する。組成物は、所望のpH範囲を超えるとその安定性を失う傾向がある。
【0030】
本発明のカチオン性アミン基を有するカチオン性ジアリルアミン塩又はジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマーは、選択性に役立ち、そして研磨におけるディッシングの防止に役立つ。カチオン性コポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて0.5重量%以下の範囲である。カチオン性コポリマーが多すぎると、基板の絶縁体又はシリカ表面を不動態化することがある。
【0031】
本発明のカチオン性コポリマーは、塩酸又はグリコール酸のような酸、及び過硫酸アンモニウムのようなラジカル重合開始剤の存在下又は非存在下で、水のような極性溶媒中での付加重合により製造されてもよい。このような重合法は、例えば、Yusukeらの米国特許第9,006,383 B2号に詳述されている。
【0032】
本発明の水性CMP研磨組成物は、無機酸、例えば、硝酸のような、又はクエン酸などの有機酸のような、pH調整剤を含むことができる。
【0033】
本発明の水性CMP研磨組成物は、ポリアミン類のような他のカチオン性添加剤を、総固形分に基づいて1重量%以下の量で含むことができる。
【0034】
適切な添加剤はまた、例えば、二水酸化N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム、98重量%(Sachem, Austin, TX)のような、第4級アンモニウム化合物及びジ第4級アンモニウム化合物;並びに例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、98%(Gelest Inc., Morrisville, PA)又はN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、98%(Gelest Inc.)のような、カチオン性アミノシラン類を含むことができる。
【0035】
好ましくは、水性CMP研磨組成物は、本質的に本発明のカチオン性アミン基を有するジアリルアミン塩又はジアリルアルキルアミン塩と二酸化硫黄とのコポリマー及びカチオン性砥粒からなり、砥粒成分又はコポリマーと更に相互作用するであろう材料を含まない。このような組成物は、好ましくは、シリカと相互作用するジ第4級アンモニウム化合物を含まず;そしてコポリマーと相互作用するアニオン性化合物及び非イオン性界面活性剤を含まない。水性CMP研磨組成物は、水で、又は水と混和性の別の液体で希釈されてもよい。
【0036】
望ましくは、本発明のCMP研磨は、本発明のCMP研磨組成物でのSTI処理において、好ましくは窒化ケイ素が実質的に除去されず、そして二酸化ケイ素が、トレンチ内での絶縁体又は二酸化ケイ素の過剰なエロージョン又はディッシングなしに適切に平坦化されるように行われる。
【0037】
使用中、ウェーハ基板のSTI処理は、窒化ケイ素の層が堆積されたシリコン基板を提供することを含む。フォトリソグラフィーに続いて、窒化ケイ素の上層を含む基板上にトレンチがエッチングされ、過剰な誘電体、例えば、二酸化ケイ素がその上に堆積される。次にトレンチ内に残っている誘電体又は酸化ケイ素が窒化ケイ素のエッジとほぼ同じレベルになるように、窒化ケイ素の表面層が露出するが実質的に除去されなくなるまで、基板を平坦化に付す。
【実施例
【0038】
以下の実施例は本発明の種々の特色を説明する。
以下の実施例において、特に断りない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度又は室温及び標準圧力である。
以下の材料が、以下の表Aに列挙されるものを含めて、以下の実施例に使用された:
【0039】
【表1】
【0040】
コポリマー1は、製造業者による報告で5,000の重量平均分子量(MW)(ポリエチレングリコール標準を用いたGPC)を有する、塩化ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との1:1コポリマー(PAS-92A, Nitto Boseke Co. Ltd, Fukushima, JP)である;
コポリマー2は、製造業者による報告で3,000の重量平均分子量(MW)(ポリエチレングリコール標準を用いたGPC)を有する、塩化ジアリルモノメチルアンモニウムと二酸化硫黄との1:1コポリマーで(PAS-2201CL, Nitto Boseke Co. Ltd, Fukushima, JP)ある;
スラリーB:セリアスラリー、pH5.2、ポリアクリル酸分散剤、0.75重量%未希釈セリア固形分、使用時に1:3希釈。
スラリーAは、pH4.5未満で正に荷電する。
実施例に使用される種々のシリカ粒子は上記表Aに列挙される。
【0041】
以下の実施例において以下の略語が使用された:
POU:使用時点(Point of use);RR:除去速度(Removal rate);
【0042】
以下の実施例において以下の試験法が使用された:
POUでのpH:使用時点でのpH(POUでのpH)は、示された濃縮組成物を水で示された固形分含量まで希釈後の除去速度試験中に測定されたものとした。
除去速度:除去速度試験において、IC 1010(商標)又は他の示されたCMP研磨パッド(The Dow Chemical Company, Midland, MI (Dow))を有する、Mirra(商標)(200mm)研磨機又は「Mirra RR」(Applied Materials, Santa Clara, CA)研磨装置を使用し、MITマスクでの特定のフィーチャ%(ウェーハにおけるその総面積に対する活性又は高度領域の面積に相当する)を有するSTIパターンウェーハ基板(SKW-3ウェーハ、SKW, Inc. Santa Clara, CA)を、後述の表1に定義されるCMP研磨組成物を用いて、ダウンフォース 20.7kPa(3psi)、スラリー流量 150mL/分、プラテン速度 93rpm及びキャリア速度 87rpmで研磨した。研磨中、3.17kg(7lbf)圧力のKinik(商標)AD3CS-211250-1FNコンディショニングディスク(Kinik Company, Taiwan)で、100%インサイツコンディショニングを用いてパッドをコンディショニングした。
多段階CMP研磨-P1(第1工程)及びP2(後工程):第1工程又はP1プロセスにおいて、オーバーバーデンの高密度プラズマ酸化物(HDP)膜が除去されるようにCMP研磨を行った。この膜を、VP6000(商標)ポリウレタンCMP研磨パッド(Dow、ショアD(2秒)硬度:53)及びスラリーEを使用して、研磨ダウンフォース 20.7kPa(3psi)及びプラテン速度 93rpmを適用することによって研磨した。ウェーハの中央ダイ上の50%パターン密度(PD)フィーチャに完全な平坦化が達成されたとき、P1研磨を停止した。この時点で、50%のフィーチャ上に約500Å HDP膜が残っていた。しかし、10%及び20%PDフィーチャのような、より小さいフィーチャでは、HDP膜は完全に除去され、下層の窒化物膜が露出した。>50% PDのフィーチャは依然として窒化物膜上にかなりの誘電体膜を有していた。P2に移行する前に、OnTrak DSS-200 Synergy(商標)ツール(Lam Research, Fremont, CA)でSP100洗浄化学物質(TMAHを含む)を用いてパターン化ウェーハを洗浄して、ウェーハからセリア粒子を除去した。P2研磨は、1010(商標)グルーヴデザイン(Dow)を有するIC(商標)ポリウレタン研磨パッド(Dow、ショアD(2秒)硬度:70)及び示されたスラリー組成物を使用し、研磨ダウンフォース 20.7kPa(3psi)及びプラテン速度 93rpmを用いて行われた。50%パターン密度フィーチャについて、研磨終点は、HDPが除去され、窒化物膜が露出した時点として定義された。トレンチ酸化物損失は、各段階の研磨イベントの50%パターン密度フィーチャでモニターされた。100%パターン密度フィーチャ上のHDP酸化物の除去も測定した。過剰研磨は、窒化ケイ素が50%パターン密度フィーチャ上に露出した後、100%フィーチャ上で除去されたHDP膜の量として定義される。選択性は、100%フィーチャ上での窒化ケイ素除去速度の比対HDP酸化物除去速度の比として計算された。全ての誘電体膜の厚さ及び除去速度は、KLA-Tencor(商標)FX200計測ツール(KLA Tencor, Milpitas, CA)を使用して、3mmのエッジを除外した49点らせん走査を用いて、研磨前後の膜厚を測定することによって測定された。更なる研磨の詳細は、以下の表Bに記載される。
【0043】
【表2】
【0044】
示された時間間隔で又は示された過剰研磨量の程度まで研磨を続けた。以下の表3、4及び5のそれぞれにおいて、性能基準Aはトレンチ酸化物損失(Å)である:許容し得るトレンチ酸化物損失は500Å 過剰研磨量で250Å未満;好ましくは500Å 過剰研磨量で215Å未満である;性能基準BはSiN損失(Å)である:許容し得るSiN損失は500Å 過剰研磨量で200Å未満、好ましくは500Å 過剰研磨量で150Å未満である;そして性能基準Aはディッシング(Å)である:許容し得るディッシングは500Å 過剰研磨量で200Å未満、好ましくは500Å 過剰研磨量で175Å未満である。
別段の指示がある場合、研磨された基板は、ブランケットウェーハ研究に使用される再生テトラエトキシシリケート(TEOS)ウェーハ(TENR)であった。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例:研磨結果
研磨は、50% PDフィーチャを有するSTIウェーハ基板上に、上記の表1に列挙された示されたスラリーを用いて行われた。研磨は、示されたスラリーを使用して多段階で行われた。結果を以下の表2に示す。性能基準Aはトレンチ酸化物損失(Å)である;性能基準BはSiN損失(Å)である;そして性能基準Aはディッシング(Å)である。
【0047】
【表4】
【0048】
上記表2に示されるとおり、コポリマー1は、比較例1のコポリマーを用いない同じスラリーと比較して、優れた研磨性能を示し、トレンチ酸化物損失A、SiN損失B、及びディッシングCの全てを向上させる。
比較例1の組成物と比較して、実施例2及び3の組成物はより良好なディッシング及びトレンチ酸化物損失を示す。