(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】スポークホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 1/04 20060101AFI20221004BHJP
B60B 21/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60B1/04 A
B60B21/00 C
(21)【出願番号】P 2018155741
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000207425
【氏名又は名称】大同工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏寛
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-339001(JP,A)
【文献】米国特許第04345795(US,A)
【文献】実開昭60-081101(JP,U)
【文献】国際公開第2007/082762(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/04
B60B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽合金製のリムと、ハブと、前記リムとハブとを連結する多数のワイヤスポークと、を備えるスポークホイールにおいて、
前記リムは、該リムの幅方向中央に対して非対称位置に設けられた2個の取付けフランジ部を有し、前記取付けフランジ部に形成されたスポーク孔に前記スポークを組付けて前記リムと前記ハブとを連結し、
前記2個の取付けフランジ部は、前記リムと一体的に成形されており、
前記スポークが前記リムの幅方向中央に対してオフセットして配置され、
前記2個の取付けフランジ部の一方は、
前記リムのビードシート部の幅方向外側において外径方向に立ち上がり、タイヤ外側部を支持する1対の外フランジ部の一方もしくは、前記1対の外フランジ部の一方から突出した突出部であり、
前記2個の取付けフランジ部の他方は、前記リムの内径面から内径方向に突出した内フランジ部である、
ことを特徴とするスポークホイール。
【請求項2】
前記2個の取付けフランジ部は、前記リムの幅方向中央から異なる長さの幅方向位置にある2個の取付けフランジ部である、
請求項1記載のスポークホイール。
【請求項3】
前記2個の取付けフランジ部のいずれか一方に組付けたスポークからなる第1のスポーク群と、
前記2個の取付けフランジ部のいずれか他方に組付けたスポークからなる第2のスポーク群と、を備え、
前記第1のスポーク群のスポークの張り角と前記第2のスポーク群のスポークの張り角とが略等しい、
請求項1又は2記載のスポークホイール。
【請求項4】
前記内フランジ部は、前記リムの内径面にあって幅方向中央位置に配置された内フランジ部又は幅方向中央に対して等距離に配置された内フランジ部の一方であり、
前記リムは、幅方向中央に対して対称に構成されてなる、
請求項1ないし3のいずれか1項記載のスポークホイール。
【請求項5】
前記2個の取付けフランジ部は、前記リムの幅方向中央を含む該幅方向中央に対して一方側に配置されてなる、
請求項1ないし3のいずれか1項記載のスポークホイール。
【請求項6】
前記リムの幅内における前記スポークのない空胴側に、ディスク及びキャリパからなるブレーキ装置を配置する、
請求項1ないし5のいずれか1項記載のスポークホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤスポークでハブとリムとを連結したスポークホイールに係り、詳しくはオートバイ用チューブレスタイヤに適用して好適なスポークホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブレスタイヤ用の軽合金製リムは、リム内径側にフランジ部を設け、該フランジ部にスポークワイヤを抜止め係止してハブと連結している(特許文献1)。上記リム3のフランジ部は、
図5(a)に示すように、その内径側の幅方向中央O-Oに1個又は幅方向中央O-Oから等しい長さに1対設けられており、左右のスポーク群の張り角αが等しくなるように張設される。
【0003】
従って、従来のスポーク(正確にはワイヤスポーク)ホイール1は、縦断面(リムの円形平面に直交する断面)にあって左右対称に構成され、左右のスポーク群2,2は、リム幅方向の中央O-Oに対して左右対称に配置される。このため、ディスク5及びキャリパ6等のブレーキ装置7は、上記対称配置の左右スポーク群2,2と干渉しないように、タイヤ9を装着したワイヤスポークホイール1の幅方向中央O-Oから大きく外れた位置に配置される。
【0004】
スポークホイールをオートバイのスイングアームに着装する場合、スイングアームは、
図5(a)に示す両持ち構造と、
図5(b)に示す片持ち構造とがある。両持ち構造のスイングアーム10
1は、左右に支持アーム10a,10bを有しており、これら左右の支持アーム10a,10bに車軸Sが支持され、スポークホイール1は、安定して支持されるため、上述したようにブレーキ装置7がリム3から幅方向に外れた位置に配置されていても、操安性が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(b)に示すように、片持ち構造のスイングアーム10
2は、一方にのみ支持アーム10cを有しており、該スイングアーム10
2に上述したスポークホイール1を支持する場合、該スポークホイール1は、リムの幅外側にブレーキ装置7が配置されるため、片持ち構造の支持アーム10cとの間に上記ブレーキ装置7が介在して、支持アーム10cとスポークホイールとの間が拡がり、スポークホイールの支持が不安定となり、操安性が充分に保てない虞がある。
【0007】
そのため、片持ち構造のスイングアーム102は、チェーンの調整や、タイヤの交換等の有利な点があるにも拘らず、軽合金製リムからなるスポークホイールを適用することに困難があった。
【0008】
そこで、本発明は、軽合金製のリムを用いたワイヤスポークホイールであって、スポークの位置をリムの幅方向に対して左右対称とせず、もって上述した課題を解決したスポークホイールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、軽合金製のリム(12)と、ハブ(13)と、前記リムとハブとを連結する多数のワイヤスポーク(15)と、を備えるスポークホイール(11)において、
前記リム(12)は、該リムの幅方向中央(O-O)に対して非対称位置に設けられた2個の取付けフランジ部(12a,12g)を有し、前記取付けフランジ部に形成されたスポーク孔に前記スポーク(15)を組付けて前記リムと前記ハブ(13)とを連結し、
前記2個の取付けフランジ部(12a,12g)は、前記リム(12)と一体的に成形されており、
前記スポーク(15)が前記リムの幅方向中央(O-O)に対してオフセットして配置され、
前記2個の取付けフランジ部の一方は、前記リムのビードシート部の幅方向外側において外径方向に立ち上がり、タイヤ外側部を支持する1対の外フランジ部(12a,12b)の一方(12a)もしくは、前記1対の外フランジ部の一方から突出した突出部であり、
前記2個の取付けフランジ部の他方は、前記リムの内径面から内径方向に突出した内フランジ部である、
ことを特徴とするスポークホイールにある。
【0010】
好ましくは、前記2個の取付けフランジ部は、前記リムの幅方向中央(O-O)から異なる長さの幅方向位置にある2個の取付けフランジ部(12a,12g)である。
【0011】
前記2個の取付けフランジ部のいずれか一方(12a)に組付けたスポーク(15)からなる第1のスポーク群(A)と、
前記2個の取付けフランジ部のいずれか他方(12g)に組付けたスポーク(15)からなる第2のスポーク群(B)と、を備え、
前記第1のスポーク群(A)のスポーク(15)の張り角(α)と前記第2のスポーク群(B)のスポーク(15)の張り角(α)とが略等しい。
【0012】
前記内フランジ部は、前記リムの内径面にあって幅方向中央位置に配置された内フランジ部(12g)又は幅方向中央に対して等距離に配置された内フランジ部(12g1,12g2)の一方であり、
前記リム(12,121~126)は、幅方向中央に対して対称に構成されてなる。
【0013】
前記2個の取付けフランジ部(12a,12g)は、前記リム(12)の幅方向中央(O-O)を含む幅方向中央に対して一方側に配置されてなる。
【0015】
例えば
図5(b)を参照して、前記リム(12)の幅内における前記スポーク(15)のない空胴(C)側に、ディスク(5)及びキャリパ(6)からなるブレーキ装置(7)を配置する。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、軽合金製のリムに、非対称位置に複数の取付けフランジ部を設け、これら取付けフランジ部にワイヤスポークを組付けてハブに連結したので、軽合金製リム及びワイヤスポークによりスポークホイールの軽量化が図れると共に、チューブレスタイヤを装着することができ、かつスポークがリムの幅方向にオフセットした位置に配置され、スポークのない空胴側にブレーキ装置等を配置することを可能として、スポークホイールの幅方向をコンパクト化することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明によると、リムの幅方向中央からの長さの異なる2個の取付けフランジ部によりワイヤスポークを組付けるので、リムとハブとの連結を確実にし、かつ比較的簡単な構成でオフセット配置したスポークホイールを得ることができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によると、第1のスポーク群のスポークの張り角と第2のスポーク群のスポークの張り角を略等しくして、リムとハブとを安定して連結したスポークホイールを得ることができる。
【0020】
請求項4に係る本発明によると、リムを幅方向中央に対して対称としたので、スポークホイールの加工が容易となり、かつスポークのオフセット配置側をリムの左右に選択することができ、どのようなオートバイに対しても、オフセットスポークホイールを対応することができる。
【0021】
請求項5に係る本発明によると、スポークをリムの幅方向一方に寄せて配置したので、リム幅内にスポークと反対側に比較的大きな空胴スペースを設けて、ブレーキ装置等の配置を容易化することができる。
【0022】
請求項6に係る本発明によると、1対の外フランジ部の一方を取付けフランジ部とし、リム内径面に設けた内フランジ部を他方の取付けフランジ部とするので、比較的簡単な構成でもって、オフセットスポークホイールを得ることができる。
【0023】
請求項7に係る本発明によると、リムの幅内におけるスポークのない空胴側にブレーキ装置を配置して、片持ち構造のスイングアームにスポークホイールを適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態によるスポークホイールを示す全体斜視図(アイソメトリック図)。
【
図4】本発明に係る各実施の形態の概略部分断面図で、(a),(b),(c),(d),(e),(f)は、それぞれ異なる実施の形態を示す。
【
図5】オートバイのスイングアームに支持したスポークホイールを示す図で、(a)は両持ち構造、(b)は片持ち構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。スポークホイール11は、
図1,
図2及び
図3に示すように、リム12とハブ13とこれらリム12及びハブ13を連結する多数のワイヤスポーク15とを備える。リム12は、幅方向外側端において外径方向に立上る左右の外フランジ部12a,12bと、両フランジ部の幅方向内側において略水平に延びるビードシート部12c,12dと、これらビードシート部の幅方向内側において内径方向に凹んだウェル部12eと、ウェル部12eの内径側面12fの中央に配置され、該ウェル部内径側面12fの内径側に環状に突出する内フランジ部12gとを有する。
【0026】
上記リム12は、左右ビードシート部12a,12dにタイヤの左右ビード部が載置され、該タイヤビード部の外側面が上記左右の外フランジ部12a,12bに当接、支持されて、リム12にタイヤが装着される。上記ウェル部12eは、湾曲状に凹んでおり、タイヤ装着時にタイヤビード部が落ち込んでタイヤ全周をリム12へ受入れる。上記左右の外フランジ部12a,12bは、同じ肉厚構造からなり、リム12の剛性を保持すると共に、ワイヤスポーク15係止用のスポーク孔17の形成を可能とする。
【0027】
上記リム12は、軽合金(アルミ合金又はマグネシウム合金等)製からなり、押出し成形された型材を用いて、円形に曲げ加工して両端を溶接して成形され、更に上記一方の外フランジ部12a及び内フランジ部12gに孔明け加工をして成形される。上記一方の外フランジ部12aに貫通してスポーク孔17を多数形成し、該スポーク孔を有する一方の外フランジ部12aが取付けフランジ部となる。上記内フランジ部12gに貫通して多数のスポーク孔19を形成し、該スポーク孔を有する内フランジ部12gが取付けフランジ部となる。前記スポーク孔17は、外フランジ部12aの立上り角に沿って略径方向に延び、上記内フランジ部12gを貫通するスポーク孔19は、略水平方向に延びている。
【0028】
上記ハブ13は、車軸を嵌合する孔13aを有する円筒部材からなり、該円筒部材の幅方向(軸方向)に所定間隔隔てた左右の外周面にそれぞれ、外径方向に突出する左右の耳部13d,13eが周方向に多数形成されている。これら左右の多数の耳部13d,13eにはそれぞれ周方向に貫通する孔20が形成される。
【0029】
前記リム12の一方の外フランジ部(取付けフランジ部)12aに形成されたスポーク孔17と、ハブ13の幅方向内側となる耳部13dに形成された孔20との間にはそれぞれ周方向の所定角度(一般に平面角という)及び幅方向の所定角度(一般に立面角という)でワイヤスポーク15が張設され、また前記リム12の内フランジ部(取付けフランジ部)12gに形成されたスポーク孔19と、ハブ13の幅方向外側となる各耳部13eに形成された孔20との間にはそれぞれ所定平面角及び立面角でワイヤスポーク15が張設されている。即ち、リム12の外フランジ部12aに形成された孔17にその頭部が抜止め係止されるスポーク15からなるスポーク群(以下第1のスポーク群Aという)は、ハブ13における幅方向反対側となる内側の耳部13dの孔20にニップル21により張設され、リム12の内フランジ部12gに形成された孔19に頭部が抜止め係止されたスポーク15からなるスポーク群(以下第2のスポーク群Bという)は、第1のスポーク群Aのスポーク15と幅方向で交差してハブ13における幅方向反対側となる外側の耳部13eの孔20にニップルにて張設される。
【0030】
図3に示すように、幅方向所定間隔離れて張設された第1のスポーク群Aと第2のスポーク群Bとの各ワイヤスポーク15により、リム12とハブ13は、軸線方向が平行となるようにかつ幅方向位置が定められて連結され、上記スポークホイール11となる。また、上記ニップル21の張力調節により、第1のスポーク群Aの各ワイヤスポーク15の幅方向角α(前記立面角、以下張り角という)と、第2のスポーク群Bの各ワイヤスポーク15の張り角αとが略等しくなるように調節される。これにより、上記スポークホイール11は、ワイヤスポーク15がリム12及びハブ13の幅方向中央O-Oから所定量オフセットされて配置され、かつリム12とハブ13とが安定して上記状態に保持される。
【0031】
本スポークホイール11は、リム12の幅方向中央O-Oから一方側に偏倚した位置に第1のスポーク群A及び第2のスポーク群Bの各スポーク15が配置され、リム12内の上記スポーク15のない他方側は、空胴Cとなる。従って、該リム12の幅方向内における上記空間状態となる空胴C側に、前記ハブ13の側面にディスク5が固定され、該ディスク5と、スイングアーム10
2の支持アーム10c[
図5(b)参照]に配置されたキャリパ6とで構成されるブレーキ装置7が、上記リム12の空胴C内に配置される。従って、
図5(b)に示すように、片持ち構造からなるスイングアーム10
2に、スポーク15と干渉することなくリム12の幅内に上記ブレーキ装置7を配置した上記スポークホイール11が支持される。
【0032】
上記スポークホイール11は、内フランジ部12gがウェル部12eの中央、即ちリム12の幅方向中央O-Oに配置される。また、左右の外フランジ部12a,12bは、共に同じ肉厚構造からなる。従って、リム12を形成するアルミ合金製型材は、左右の対称からなる。該型材からなる円形リムの一方の外フランジ部12aにスポーク孔17が形成されて取付けフランジ部となる。本スポークホイール11は、上記一方の外フランジ部12aに第1のスポーク群Aのスポーク15が組付けられ、上記中央の内フランジ部12gに第2のスポーク群Bのスポーク15が組付けられる。
【0033】
本スポークホイール11は、断面が左右対称なため、加工性が向上する。また、左側交通、右側交通等の交通ルールの相違により、スポークホイールに組付けられるスプロケット等の駆源動部材の取付位置及び片持ち構造のスイングアームの支持アームの位置が左右異なる場合がある。この場合にあって、本スポークホイール11は、左右の外フランジ部12a,12bのいずれか一方にスポーク孔17を形成して取付けフランジ部を選択すればよい。例えば、オートバイ進行方向に向って、左側にオフセットしてスポーク15を配置する場合、左側の外フランジ部12bにスポーク孔を形成し、該スポーク孔にスポークを組付けると共に、中央の内フランジ部12gにスポークを組付ける。これにより、スポークの配置を左右どちらにしても、共通のリム12を用いることができる。
【0034】
上記片持ち構造のスイングアーム10
2は、
図5(b)に示すように、一方のみに支持アーム10cを有するが、上記リム12の幅方向内にブレーキ装置7を納めたスポークホイール11は、上記支持アーム10cに片持ち構造にて車軸Sを支持されても、上記スポークホイール11は、支持アーム10cに近い位置にて安定してスイングアーム10
2に支持することが可能となる。これにより、上記スポーク15をオフセット配置したスポークホイール11は、上記片持ち構造のスイングアーム10
2に適用することが可能となる。該スポークホイール11は、片持ち構造のスイングアーム10
2であっても、支持アーム10cに安定して支持され、オートバイの操安性を確保できると共に、支持アーム10cの外側にスプロケットが装着される。これにより、本オフセット配置したスポークホイール11を片持ち構造のスイングアーム10
2に装着した場合、チェーンの調整、交換並びにタイヤの交換等の整備性を向上し、スイングアームの同重量比であっては、上記両持ち構造のスイングアーム10
1に比して剛性をも向上することができる。また、上記スポークホイール11は、取付けフランジ部12a,12gによりスポーク15を連結するため、チューブレスタイヤを装着して好適であり、また軽合金製のリム12及びワイヤスポーク15により軽量化を向上して、上記片持ち構造のスイングアーム10
2と相俟って、バネ下重量の軽減化を図ることができる。
【0035】
図4は、スポークをオフセット配置した各種のスポークホイールを示す。
図4(a)に示すスポークホイール11
1は、基本的には
図1~
図3示す先の実施の形態と同一であるが、リムのウェル部12eの形状が若干相違する。即ち、
図1~
図3に示した先の実施の形態のリム12のウェル部12eは、円弧面からなり、同じく円弧面からなるウェル部内径側面12fの中央頂部に内フランジ部12gを設けたが、本実施の形態のリム12
1は、ウェル部12eがビードシート部12c,12dとの間で段差部12hとなっており、角ばった形状からなる。該ウェル部内径側面12fの略平坦面からなる幅方向中央部O-Oに同様に内フランジ部12gを設けている。該内フランジ部12gの位置は、幅方向中央に限らず、例えば段差部12hから延長上の内径側面12fに内径側に突出して形成する等、どの位置にあってもよい。また、ウェル部12eの形状は、どのような形状でもよい。なお、このことは、
図4に示す他の実施の形態にあっても同様である。
【0036】
肉厚形状からなる外フランジ部12a,12bの一方12aにスポーク孔17を形成して一方の取付けフランジ部とし、ハブとの間に第1のスポーク群Aとなるワイヤスポーク15を張設し、取付けフランジ部である内フランジ部12gにスポーク孔19を形成し、ハブとの間に第2のスポーク群Bとなるワイヤスポーク15を張設する。
【0037】
図4(b)は、リム12
2に、ウェル部12eの左右の落込み部分12h,12hの延長線に、ウェル部12eの内径方向に突出して左右の内フランジ部12g1,12g2を形成する。従って、左右の外フランジ部12a,12bが同じ肉厚構造からなることと合せて、リム12
2は、先の実施の形態と同様に、断面において幅方向中央O-Oに対して左右対称となる。これにより、前述と同様に、右外フランジ部12aと右内フランジ部12g1とにそれぞれスポーク15を組込んで、リム12
2の右側にオフセットしたスポークホイール11
2と、左外フランジ部12bと左内フランジ部12g2とにそれぞれスポーク15を組込んで、リム12
2の左側にオフセットしたスポークホイールと、を選択して形成することができる。
【0038】
また、上記スポークホイール112にあっては、リム122の幅方向中央O-Oに対して幅方向同じ側の外フランジ部12a(又は12b)と内フランジ部12g1(又は12g2)を用いたが、幅方向異なる側の外フランジ部12a(又は12b)と内フランジ部12g2(又は12g1)にスポーク15を組付けてもよい。この場合、スポーク15は、リム122に対して幅方向一方側にオフセットしているが、そのオフセット量は小さく、空胴Cの占める割合は小さくなる。従って、本スポークホイール112にあっては、比較的離れた位置に第1のスポーク群Aと第2のスポーク群Bとが配置され、スポークによりリムとハブとの連結性を向上するが、ブレーキ装置等のための空胴スペースは減少する。
【0039】
リムの幅方向中央O-Oからオフセット配置したスポークとは、第1のスポーク群A及び第2のスポーク群Bの両方が共に上記中央O-Oから同じ側の一方向に位置することに限定するものではなく、第1のスポーク群A及び第2のスポーク群Bが、幅方向中央O-Oに対して対称位置とならず、両スポーク群によるリムの支持構造が幅方向中央O-Oに対してオフセットしていることを意味する。なお、本スポークホイール112にあっても、他の実施の形態と同様に、第1のスポーク群Aのスポークの張り角αと第2のスポーク群Bのスポークの張り角αとは同じになるように設計される。
【0040】
図4(c)に示すスポークホイール11
3は、外フランジ部からなるスポーク取付けフランジ部を変更したものである。リム12
3は、薄肉構造のタイヤ支持用の左右の外フランジ部12a,12bの外に、左右の外フランジ部12a,12bの側方における、ビードシート部12cの延長上に、それぞれ外方に突出する鍔状の取付けフランジ部12i,12jを設ける。また、ウェル部内径側面12fの幅方向中央O-Oに、内径方向に突出する内フランジ部12gを有する。上記左右の取付けフランジ部12i,12jのいずれか一方(12i)にスポーク孔17を形成して、第1のスポーク群Aのスポーク15を組付け、上記内フランジ部12gに第2スポーク群Bのスポーク15を組付けて、スポークホイール11
3が形成される。
【0041】
本リム123の形状も左右対称となっており、上述した実施の形態と同様に、左右の取付けフランジ部12i,12jのいずれか一方を選択してスポークを連結し、スポークのオフセット位置を左右いずれにも選択し得る。なお、内フランジ部12gの位置は、幅方向中央位置以外にも設置位置を設計することができる。本スポークホイール113は、スポークの幅方向位置を色々設定することが可能となり、またスポークホイールの軽量化も可能となる。
【0042】
図4(d)の示すリム12
4は、上記左右外側に延びる取付けフランジ部12i,12jに加えて、
図4(b)に示す1対の内フランジ部12g1,12g2を備えたものである。従って、本リム12
4も、他の実施の形態と同様に左右対称となっている。左右の取付けフランジ部12i,12jのいずれか一方と、左右の内フランジ部12g1,12g2のいずれか一方とを選択して組合せて、スポークホイール11
4を構成する。例えば、右側の取付けフランジ部12iにスポーク孔17をあけ、第1のスポーク群Aのスポーク15を組付け、右側の内フランジ部12g1にスポーク孔19を形成して、第2のスポーク群Bのスポーク15を組付ける。上記組合せは、上記の外に、右側の取付けフランジ部12iと左側の内フランジ部12g2、左側の取付けフランジ部12jと右側の内フランジ部12g2、左側の取付けフランジ部12jと左側の内フランジ部12g1がある。本実施の形態では、上述したような各組合せによる様々なスポークホイール11
4を得ることができる。
【0043】
図4(e)に示すリム12
5は、左右の取付けフランジ部12k,12lが、外フランジ部12a,12bの内径方向に延長して、内径側に突出して形成される。内フランジ部12gは、ウェル部内径側面12fの幅方向中央O-O部分に形成される。本実施の形態のリム12
5も、左右対称に形成される。左右の取付けフランジ部12k,12lのいずれか一方、例えば右側の取付けフランジ部12kにスポーク孔17を形成して、第1のスポーク群Aのスポーク15を組付け、内フランジ部12gに第2のスポーク群Bのスポーク15を組付けて、スポークホイール11
5が構成される。本スポークホイール11
5は、取付けフランジ部を薄肉として軽量化を図ると共に、幅方向のコンパクト化を図ることができる。なお、内フランジ部12gは、幅方向中央に限らず、どの位置に設置してもよい。
【0044】
図4(f)に示すリム12
6は、内フランジ部12g1,12g2を対称に1対設けたものである。該リム12
6は、前述と同様の外フランジ部12a,12bから延長した左右の取付けフランジ部12k,12lが形成されており、左右対称となっている。従って、
図4(d)の実施の形態で述べたものと同様に、左右の取付けフランジ部12k,12lのいずれか一方と、左右の内フランジ部12g1,12g2のいずれか一方と、選択的に組合せて、各種のスポークホイール11
6が構成される。一例として、右側の取付けフランジ部12kにスポーク孔17を形成して、第1のスポーク群Aのスポーク15を組付け、右側の内フランジ部12g1にスポーク孔19を形成して、第2のスポーク群Bのスポーク15を組付けて、スポークホイール11
6が構成される。
【0045】
なお、上述した右側(左側)取付けフランジ部等で右側及び左側として説明したが、これは断面を見る方向で定まる便宜的な呼び名であり、見る方向が変われば、左右は変わる。また、取付けフランジ部は、必ずしも2個に限らず、3個以上でもよく、また1個でもよい。前記スポークホイールは、片持ち構造のスイングアームに適用して好適であるが、これに限るものではなく、両持ち構造のスイングアームに適用しても、前輪に適用しても、更にはオートバイ以外のスポークホイールにも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
11,111~116 スポークホイール
12,121~126 リム
12a 取付けフランジ部(外フランジ部)
12g,12g1,12g2 取付けフランジ部(内フランジ部)
12i,12j 取付けフランジ部
13 ハブ
15 ワイヤスポーク
A 第1のスポーク群
B 第2のスポーク群
C 空胴
α 張り角