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特許7152232電気めっき用金型およびその製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電気めっき用金型およびその製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/00 20060101AFI20221004BHJP
   G04B 17/06 20060101ALN20221004BHJP
   G04B 19/247 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
C25D1/00 381
G04B17/06 Z
G04B19/247 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018176935
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019070193
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2018-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】17195237.7
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴェラルド
(72)【発明者】
【氏名】アレクス・ガンデルマン
(72)【発明者】
【氏名】マルシアル・シャブロー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】市川 篤
【審判官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-200396(JP,A)
【文献】特開平4-269514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0241965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0287728(US,A1)
【文献】J.Hormes,et.al.,“Materials for LiGA and LiGA-based microsystems”,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B,2003年,Vol.199,p.332-341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00- 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を電気めっきするための金型(3、3’)を製造するプロセスであって、
a)前記金型(3、3’)の高さに少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板(5)を提供するステップと、
b)前記第1の基板(5)に、前記金型(3、3’)の凹部に対応する窓を有するマスクを通じてUV光線を照射し、照射区域(7、7’)を生成するステップと、
c)ステップb)で得た前記第1の基板(5)に熱処理を実施し、前記照射区域(7、7’)を結晶化するステップと、
d)少なくとも1つの導電層(10)を表面に有する第2の基板(8)を提供するステップと、
e)ステップc)で得た前記第1の基板(5)を前記第2の基板(8)に結合し、それによって前記導電層(10)を前記第1の基板(5)と前記第2の基板(8)との間に配置するステップと、
f)前記第1の基板(5)の前記照射されて結晶化した区域(7、7’)を除去し、前記導電層(10)を露出し、少なくとも1つの空洞(12、12’)を形成するステップであって、前記少なくとも1つの空洞(12、12’)の側壁および前記導電層(10)によって覆われる底面は前記金型(3、3’)を形成するステップと、
を備える、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記第2の基板(8)はシリコン系であることを特徴とする、プロセス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロセスであって、前記導電層(10)は、前記第2の基板(8)上に、クロミウム、チタニウムおよび金を含む群から選択される金属層を堆積することによって形成されることを特徴とする、プロセス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のプロセスであって、前記第1の基板(5)と第2の基板(8)を結合する前記ステップe)は、前記第1の基板(5)と前記導電層(10)との間にレジスト層(16)を配置して実施されることを特徴とする、プロセス。
【請求項5】
請求項に記載のプロセスであって、ステップf)は、前記第1の基板(5)の前記照射されて結晶化した区域(7、7’)を除去した後に、前記空洞(12、12’)内で露出した前記レジスト層(16)を除去し、前記導電層(10)を露出するサブステップf’)を備えることを特徴とする、プロセス。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のプロセスであって、前記第1の基板(5)の前記照射されて結晶化した区域(7、7’)を除去する前記ステップf)は化学エッチングによって実施されることを特徴とする、プロセス。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のプロセスであって、複数の金型(3、3’)は同じ前記第1の基板(5)において製造されることを特徴とする、プロセス。
【請求項8】
電気めっきによって、金属微細加工部品(1、1’)を製造するプロセスであって、
g)前記微細加工部品(1、1’)の金型(3、3’)を、請求項1~のいずれかに記載の前記金型(3、3’)を製造するプロセスを用いて製造するステップと、
h)前記金型(3、3’)を、前記導電層(10)からガルバニック成長法によって金属で充填し、前記微細加工部品(1、1’)を形成するステップと、
i)ステップh)で得た前記微細加工部品(1、1’)を前記金型(3、3’)から解放するステップと、
を備えることを特徴とする、プロセス。
【請求項9】
少なくとも1つの微細加工部品(1、1’)を電気めっきで製造するための金型板(14)であって、前記微細加工部品(1、1’)の高さと少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板(5)と、前記第1の基板(5)にしっかりと固定される第2の基板(8)と、前記第1の基板(5)と第2の基板(8)との間に配置される少なくとも1つの導電層(10)とを含み、前記第1の基板(5)は前記微細加工部品(1、1’)用の少なくとも1つの金型(3、3’)を含み、前記金型は前記第1の基板(5)に形成される空洞(12、12’)によって形成され、前記金型の底面は前記導電層(10)によって覆われ、金属はガルバニック成長法によって前記空洞(12、12’)内に堆積し、前記微細加工部品(1、1’)を形成可能であることを特徴とする、金型板。
【請求項10】
請求項に記載の金型板(14)であって、前記第2の基板(8)はシリコン系であることを特徴とする、金型板。
【請求項11】
請求項または10に記載の金型板(14)であって、前記導電層(10)はクロミウム、チタニウムおよび金を含む群から選択される金属層であることを特徴とする、金型板。
【請求項12】
請求項11のいずれかに記載の金型板(14)であって、前記第1の基板(5)と前記導電層(10)との間に配置されるレジスト層(16)を備えることを特徴とする、金型板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっきによって微細加工部品を製造することを目的とする金型、およびその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっきは長い間使用され、既知である。(ドイツ語の表現であるLIGAは「Rontgen Lithographie、Galvanoformung&Abformung」の周知の略称である)LIGAプロセスは、1980年代に開発され、高精度金属微細構造の製造に非常に有利であることが分かっている。
【0003】
LIGA技術の原理は、フォトレジスト層を導電基板または導電層で被膜された基板上に堆積させることと、所望する微細構造の輪郭に対応するマスクを通して、シンクロトロンによるX線照射を実施することと、微細構造の輪郭を有する金型を画定するために、物理的または化学的手段によって未露出のフォトレジスト層の部分を現像、つまり除去することと、金属、一般的にはニッケルを、フォトレジスト金型に電着することと、次に微細構造を解放するために金型を除去することからなる。
【0004】
微細構造の品質が批判されることはほとんどないが、高価な機器(シンクロトロン)を用いる必要があり、そのためこの技術は低単価が必要となる微細構造の大量生産には適用できない。
【0005】
そのため、LIGAプロセスに基づくものの、紫外線(UV)に敏感なフォトレジストを用いる類似するプロセスが開発されてきた。このようなプロセスは、たとえば、ポリイミド系フォトレジストからなるレジスト金型に金属を電気めっきすることによって、金属構造を製造するものであり、非特許文献1に記載されている。このプロセスは、以下のステップを備える。
-後続する電気めっきステップをシードするための導電面を含む基板を提供するステップと、
-導電シード面に(ポリイミド)フォトレジスト層を適用するステップと、
-フォトレジスト層に所望する微細構造の輪郭に対応するマスクを通してUVを照射するステップと、
-フォトレジスト金型を得るために、未照射のフォトレジスト層を溶解することによって、未照射のフォトレジスト層の部分を現像するステップと、
-金型の開口部に開口部の高さまでニッケルを電着するステップと、
-得た金属構造を基板から分離するステップと、
-フォトレジスト金型を除去するステップ。
【0006】
このプロセスは、精密な構成部品を製造するために、腕時計および時計分野で広く用いられている。ただし、製造された多数の時計構成部品のうち、多くが「ばね」機能を有することがわかっている。ばねは、構成部品の平面またはムーブメントの平面で動作する。したがって、「構成部品の厚さと求めるばね定数」のパラメータの組み合わせによって、数百ミクロンの厚さの非常に細いばね線形状(数十ミクロン以下)が実現してもよい。
【0007】
同様に、たとえば、構成部品の設計には、2つの部分間、たとえば可動部分と固定部分との間を画定するための細いスリットが必要となることもある。
【0008】
これらの2つの事例において、従来のUV-LIGA技術では、成長過程中に金属で充填すべき隙間のアスペクト比(高さ/幅比)と、2つの隣接した形状を離間するレジストのアスペクト比の両方において限界がある。
【0009】
さらに、フォトレジストがその形状(垂直状態、大きさ等)を直流浴で保存することを保証することは困難であり、これが特定の時計構成部品の堅調な製造の妨げとなる。
【0010】
したがって、このような欠点を克服するプロセスが必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】A.B.Frazier et al、 “Metallic Microstructures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating Molds”、 Journal of Microelectromechanical System、 Vol.2、 N. deg.2 1993年6月
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、従来のUV-LIGAプロセスに関する欠点を、従来のUV-LIGAプロセスで用いられる金型を形成するレジストの変形リスクを克服可能な、代替の金型を提供することによって是正することである。
【0013】
本発明の別の目的は、電気めっきによって、高アスペクト比な形状を有する微細加工部品が製造可能となる金型を提供することである。
【0014】
そのため、本発明は、以下のステップを含む金型を製造するプロセスに関する。
a)金型の高さに少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板を提供するステップと、
b)第1の基板に、金型の凹部に対応する窓を有するマスクを通じてUV光線を照射し、照射区域を生成するステップと、
c)ステップb)で得た第1の基板に熱処理を実施し、照射区域を結晶化するステップと、
d)少なくとも1つの導電層を表面に有する第2の基板を提供するステップと、
e)ステップc)で得た第1の基板を第2の基板に結合し、それによって導電層を第1の基板と第2の基板との間に配置するステップと、
f)第1の基板の照射されて結晶化した区域を除去し、導電層を露出し、少なくとも1つの空洞を形成するステップであって、少なくとも1つの空洞の側壁と導電層によって覆われる底面は金型を形成するステップ。
【0015】
このような方法によって、ガラスからなる金型が製造可能となる。ガラスは、剛性が高く、この金型を用いて微細加工部品を形成するために用いられるガルバニック成長法浴の効果に対して敏感ではない。
【0016】
本発明はまた、以下のステップを備える、電気めっきによって金属微細加工部品を製造するプロセスに関する。
g)微細加工部品の金型を、前述の金型を製造するプロセスを用いて製造するステップと、
h)金型を、導電層からガルバニック成長法によって金属で充填し、微細加工部品を形成するステップと、
i)ステップh)で得た微細加工部品を金型から解放するステップ。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの微細加工部品を電気めっきで製造するための複数金型板に関する。複数金型板は、微細加工部品の高さと少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板と、第1の基板にしっかりと固定される第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置される少なくとも1つの導電層とを含む。第1の基板は微細加工部品用の少なくとも1つの金型を含む。金型は第1の基板に形成される空洞によって形成される。金型の底面は導電層によって覆われ、金属はガルバニック成長法によって空洞内に堆積し、微細加工部品を形成可能である。
【0018】
本発明のその他の詳細および有利点は、以下の説明から、添付図を参照して、完全に非限定的な表示によって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図2】本発明の第1の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図3】本発明の第1の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図4】本発明の第1の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図5】本発明の第1の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図6】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図7】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図8】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図9】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図10】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
図11】本発明の第2の実施形態による微細加工部品を製造するプロセスの連続するステップを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から5までを参照すると、本発明は、微細加工部品1、1’を電気めっきによって製造するプロセスに関する。本プロセスは、好ましくは、金型3、3’を製造し、次に電気めっきのステップと、部品1、1’を金型3、3’からそれぞれ解放するステップとのプロセスを含む。
【0021】
本発明による金型3、3’は、金型3、3’を製造することを目的とする連続するステップを含む。
【0022】
金型3、3’を製造するプロセスの第1のステップa)は、金型の高さに少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板5を提供することからなる。
【0023】
このような感光ガラスは、たとえばSchott A.G.からFoturan(登録商標)という商標名、またはHOYA株式会社からPEG3(登録商標)という参照で、またはLife BioScience Inc.からApexTMという商標名で入手可能である。
【0024】
本発明によって有利には、感光ガラスを用いることによって、シリコンまたはセラミック系材料をエッチングするよりも幅広い形状のガラスを生成することができる。
【0025】
金型3、3’を製造するプロセスの第2のステップb)は、照射区域7、7’を生成するために、感光ガラスに対応する波長で、当該波長では不透明なマスクを通して、第1の基板5をUV光線で照射することからなる。その窓は製造される金型の凹みに対応する。このように、照射の量、配向および分布に応じて、UV照射に曝露される第1の基板5の区域7、7’のみが、製造される金型の凹みを形成するように構成される。照射源は、たとえば、UVランプであってもよく、その分光分布のピークは、200と400nmの間にある。
【0026】
金型3、3’を製造するプロセスの第3のステップc)は、図1に示すように、ステップb)で得た第1の基板5に熱処理を実施し、照射区域7、7’を結晶化することからなる。この熱処理は高温で実施され、好ましくは500℃と600℃の間で実施される。この熱処理によって、照射区域7、7’は、以下で述べるように、ステップf)において、除去に関してさらに選択的になる。
【0027】
金型3、3’を製造するプロセスの第4のステップd)は、第2の基板8を提供することからなる。この基板は、少なくとも1つの導電層10を表面上に備える。有利には、導電層は第2の基板8上に、クロミウム、チタニウム、および金を含む群から選択される金属の層10を堆積することによって形成される。この中で、金が好ましい。導電層10は、好ましくは、0.1μmから0.5μmの間の厚さを有する。
【0028】
金属層10は、二重の有利点を有する。一方では、導電性であるため、電気めっきステップh)が可能になる。他方では、後述するように、第2の基板を第1の基板にステップe)において、はんだ付けによって結合することができる。
【0029】
第2の基板8は、好ましくは、酸攻撃に耐性のある素材からなる。有利には、第2の基板8はシリコン系である。
【0030】
金型3、3’を製造するプロセスの第5のステップe)は、図2に示すように、導電層10が第1の基板5と第2の基板8との間に配置されるように、第1の基板5を第2の基板8に結合することからなる。第1の基板5は、照射されて結晶化した区域7、7’、つまり、ステップe)で得た基板を備える。
【0031】
本発明の第1の変形では、2つの基板5および8は、はんだ付けにより、導電金属層10によって結合される。
【0032】
図3に示すように、金型3、3’を製造するプロセスの第6のステップf)は、ステップb)で照射され、ステップc)で結晶化した第1の基板5の区域7、7’を除去することからなる。それによって、導電層10は露出し、少なくとも1つの空洞12、12’を形成する。空洞12、12’の垂直な側壁および導電層10に覆われる底面は金型3、3’を形成する。
【0033】
有利には、照射されて結晶化した第1の基板5の区域7、7’を除去するステップf)は、化学エッチング、好ましくはフッ酸で溶解することによって実施される。たとえば、この化学エッチングは約10%のフッ酸の超音波浴において室温で実施されてもよい。
【0034】
側壁が感光ガラスからなる金型3、3’はこのように製造される。
【0035】
従来の慣行とは反対に、本発明によるプロセスは、残りの感光ガラスを完全に結晶化する最終の高温(600~700℃)結晶化ステップを備えないことに留意されたい。
【0036】
本発明はまた、電気めっきによって金属微細加工部品1、1’を製造するプロセスにも関する。本プロセスはステップg)を備える。ステップg)は、前述の金型3、3’を製造するステップを用いて、微細加工部品1、1’用の金型3、3’を製造することからなる。以下のステップh)は、図4に示すように、導電層10からのガルバニック成長法によって、微細加工部品1、1’を形成するために金型3、3’を金属で充填することからなる。
【0037】
金属は、有利には、ニッケル、銅、金または銀、および金-銅、ニッケル-コバルト、ニッケル-鉄、およびニッケル-リンなどの合金を含む群から選択される。
【0038】
好ましくは、金型の高さは、製造される部品の高さよりわずかに高く、第1の基板5の厚さと等しい。微細加工部品の高さは、50μmから500μmの間である。感光ガラスからなる基板を厚さに応じて用いることによって、得るべき構成部品の所定の形状の最小幅は、10μmから30μmの間であってもよい。したがって、本発明のプロセスを用いて得られる、このような微細加工構成部品の具体的な形状は、1から20の間の高アスペクト比を有していてもよい。このような微細加工部品1、1’は、たとえば、伸縮ばね、ジャンパーばね、一体型の可撓性誘導システム、あそびを低減する弾性形状等でありえる。
【0039】
電気めっき条件、特にめっき浴の組成、システムの形状、電圧および電流密度は、電気めっき技術で周知の技法を用いて電気めっきされる各金属または合金用に選択される。(たとえば、Di Bari G.A.“electroforming” Electroplating Engineering Handbook 4th Edition、 edited by L.J.Durney、 published by Van Nostrand Reinhold Company Inc.、 N.Y.、 USA 1984参照。)
【0040】
後続するステップh’)において、第1の基板5で電気鋳造される金属堆積を調整することができる。本ステップは、研磨することによって直接的に平坦な上面を有する微細構造を得るために実施されてもよい。平坦な上面は、特に、高級市場向けムーブメント製造に関する腕時計および時計製造業界の要件を満たす表面加工を有する。
【0041】
図5に例示するように、以下のステップi)は、ステップh)またはh’)で得た微細加工部品1、1’をその金型3、3’から解放することからなる。そのために、化学エッチングプロセス(たとえば感光ガラス用HFプロセス、シリコン用KOHプロセス)を用いてもよい。
【0042】
このように開放された微細加工部品1、1’を直接用いてもよく、または適切な機械加工後に必要に応じて用いてもよい。
【0043】
図6から11は、本発明による金型を製造するプロセスを実行する第2の変形を示す。本プロセスは、ステップe)およびf)を除いて実質的に前述の第1の変形と同一である。第1の基板5は、図6に示すように、前述のステップa)からc)で得られる照射されて結晶化した区域7、7’を備える。この第2の変形では、レジスト層16を配置することによって、第1の基板5および第2の基板8は、ステップe)で結合される。図7に示すように、レジスト層16は、第1の基板5と導電層10との間に配置される。そのために、半導体製造プロセスと同じ種類のレジストを一時的はんだ付けステップで用いてもよい。当該のレジスト層16は、2μmから10μmの間の厚さを有する。
【0044】
さらに、この第2の変形では、図8に示すように、ステップf)は、照射されて結晶化した第1の基板5の区域7、7’を除去することによって、レジスト層16を露出することを備える。次に、図9に示すように、ステップf)は、照射されて結晶化した第1の基板5の区域7、7’が除去された後に、露出したレジスト層16を空洞12、12’の底面から除去し、導電層10を露出するサブステップf’)を備える。
【0045】
微細加工部品1、1’は次に、図10および11に示すように、前述の電気めっき製造プロセスで製造される。部品1、1’を金型3、3’から解放するステップi)は、化学エッチングプロセス(たとえば感光ガラス用のHFプロセス、およびシリコン用のKOHプロセス)を用いて実行される。
【0046】
本発明によるプロセスによって、細く剛性な形状を有する微細加工部品をバッチモードにおいて高精度に製造可能となる。
【0047】
具体的には、特に有利な様式で、複数の金型3、3’は、同じ第1の基板5、5’で製造される。これらの金型は互いに同一である必要はない。次に、複数金型板14を図3に例示するように得る。
【0048】
この複数金型板14は、少なくとも1つの微細加工部品1、1’を電気めっきで製造するために用いられることを目的とする。本発明によれば、複数金型板14は、微細加工部品1、1’の高さと少なくとも等しい厚さの感光ガラスからなる第1の基板1、1’と、第1の基板5にしっかりと固定された第2の基板8と、第1の基板5と第2の基板8との間に配置される少なくとも1つの導電層10と、第1の基板5と導電層10との間に配置される任意のレジスト層16とを含む。第1の基板5は、微細加工部品1、1’用の少なくとも1つの金型3、3’を含む。この金型は、第1の基板5内に形成される空洞12、12’によって形成される。金型の底面は導電層10によって覆われ、それによって、金属は、微細加工部品1、1’を形成するために、空洞12、12’にガルバニック成長法によって堆積可能である。第1および第2の基板5および8、導電層10およびレジスト層16は前述のように画定される。
【0049】
さらに、本発明により得られる金型は、感光ガラスからなる。感光ガラスは、従来このような金型を形成するために用いられるレジストよりも剛性であり、ガルバニック成長浴の効果に対して敏感ではない。したがって、本発明による微細加工部品を製造するプロセスは、特に堅調であり、具体的には高アスペクト比の部品を製造する際に特に堅調である。
【0050】
本発明によるプロセスによって、金型3、3’の底面で高品質な導電層10を用いることによって、ステップh)のガルバニック成長法は容易に開始可能である。
【0051】
さらに、本発明による微細加工部品を製造するプロセスは、ガルバニック成長法を開始するために用いられる層を形成するために、複雑かつ局所的な金属の堆積(ステンシルマスク)を必要としないため、実装が容易である。
【0052】
最後に、本発明による微細加工部品を製造するプロセスによって、Bosch(登録商標)DRIEを用いたエッチングによる形状を回避可能である。したがって、扇型の切り欠きは生じないため、追加の平滑ステップは必要ない。
【符号の説明】
【0053】
1 :微細加工部品
1’ :微細加工部品
3 :金型
3’ :金型
5 :第1の基板
7 :照射区域
7’ :照射区域
8 :第2の基板
10 :導電層
12 :空洞
12’ :空洞
14 :複数金型板
16 :レジスト層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11