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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】空調制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20221004BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20221004BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221004BHJP
   F24F 120/00 20180101ALN20221004BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/80
F24F110:10
F24F120:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018187972
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020056546
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】本田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】宇野 侑希
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257057(JP,A)
【文献】特開2012-107778(JP,A)
【文献】特開平11-063622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 11/80
F24F 110/10
F24F 120/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された給気温度の空調空気を生成して供給する空調機と、前記空調機から供給された前記空調空気を指定された給気風量で空調対象となる空間に供給する複数の空調機器とを有する空調システムで用いられて、前記空間を分割して設けたN(Nは2以上の整数)個のゾーンZi(i=1,2,…,N)ごとに設定した設定温度Tcriに基づいて、前記空調機から供給すべき前記空調空気に関する給気温度Tsaと、前記ゾーンZiと対応する前記空調機器から当該ゾーンZiに給気すべき前記空調空気に関する給気風量Wziとを計算する空調制御装置であって、
前記ゾーンZiから検出された、当該ゾーンZiに存在する物体に関する表面温度とその表面面積との組からなる表面温度データと、前記ゾーンZiと隣接する各隣接ゾーンZrの接面積を示す隣接ゾーンデータとに基づいて、前記ゾーンZiを前記設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算し、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて前記空調機から供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する熱負荷計算部と、
前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記空調機熱負荷QAHUとに基づいて、前記空調機の前記給気温度Tsaを計算する給気温度計算部と、
前記給気温度Tsa、前記設定温度Tcri、および前記表面温度データに基づいて、前記ゾーンZiごとに前記給気風量Wziを計算する給気風量計算部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記熱負荷計算部は、前記表面温度データに基づいて前記ゾーンZiに存在する物体の表面から前記ゾーンZiに供給される物体供給熱量Qwiを計算し、前記隣接ゾーンデータに基づいて前記ゾーンZiの各隣接ゾーンZrから前記ゾーンZiに供給される隣接ゾーン供給熱量Qriを計算し、前記物体供給熱量Qwiと隣接ゾーン供給熱量Qriとの和を前記ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziとして計算することを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の空調制御装置において、
前記給気温度計算部は、前記ゾーンZiの設定温度Tcriの平均値である平均設定温度Tspを計算し、前記空調機の最小風量WAHUminと空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで前記空調機熱負荷QAHUを除算し、得られた除算結果を前記平均設定温度Tspから減算することにより前記給気温度Tsaを計算することを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空調制御装置において、
前記給気温度計算部は、前記給気温度Tsaが前記空調機の最低給気温度を下回る場合、前記最低給気温度を前記給気温度Tsaとし、前記給気温度Tsaが前記空調機の最高給気温度を上回る場合、前記最高給気温度を前記給気温度Tsaとすることを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の空調制御装置において、
前記給気風量計算部は、前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記給気温度Tsaとの温度差と空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで、前記ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziを除算することにより、前記ゾーンZiの給気風量Wziを計算することを特徴とする空調制御装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の空調制御装置において、
前記表面面積は、前記物体を撮像したときの撮像面における投影面積からなることを特徴とする空調制御装置。
【請求項7】
指定された給気温度の空調空気を生成して供給する空調機と、前記空調機から供給された前記空調空気を指定された給気風量で空調対象となる空間に供給する複数の空調機器とを有する空調システムの空調制御装置で用いられて、前記空間を分割して設けたN(Nは2以上の整数)個のゾーンZi(i=1,2,…,N)ごとに設定した設定温度Tcriに基づいて、前記空調機から供給すべき前記空調空気に関する給気温度Tsaと、前記ゾーンZiと対応する前記空調機器から当該ゾーンZiに給気すべき前記空調空気に関する給気風量Wziとを計算するための空調制御方法であって、
熱負荷計算部が、前記ゾーンZiから検出された、当該ゾーンZiに存在する物体に関する表面温度とその表面面積との組からなる表面温度データと、前記ゾーンZiと隣接する各隣接ゾーンZrの接面積を示す隣接ゾーンデータとに基づいて、前記ゾーンZiを前記設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算し、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて前記空調機から供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する熱負荷計算ステップと、
給気温度計算部が、前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記空調機熱負荷QAHUとに基づいて、前記空調機の前記給気温度Tsaを計算する給気温度計算ステップと、
給気風量計算部が、前記給気温度Tsa、前記設定温度Tcri、および前記表面温度データに基づいて、前記ゾーンZiごとに前記給気風量Wziを計算する給気風量計算ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VAV(Variable Air Volume)方式のセントラル空調システムで用いられる空調制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルなどの比較的広い空調空間を持つ建物では、空調システムとして、VAV方式のセントラル空調システムが導入されている。VAV方式のセントラル空調システムは、空調空間を複数に分割して設けた各ゾーンに、可変風量型の空調機器(VAV)を配置し、空調機(AHU:Air Handling Unit)で調整した給気を各ゾーンに供給し、各ゾーンのVAVで空調空間に送風する給気風量を制御するシステムである。
【0003】
従来、このようなVAV方式のセントラル空調システムでは、空調空間内のあるゾーンにおける温熱環境を最適制御するための空調制御技術として、分布系シミュレーションの1つであるCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)解析のCFD順解析とCFD逆解析を利用した、負荷連動型の空調制御技術が提案されている(例えば、特許文献1-2など参照)。
【0004】
このような負荷連動型の空調制御技術は、空調制御周期ごとに、CFD順解析処理とCFD逆解析処理を繰り返し実行することにより、AHUの給気温度や各VAVの風量に関する最適値を特定するものである。具体的には、CFD順解析処理により、空調空間に関する、壁体、VAVの吹き出し量(風量)や吹き出し温度などの境界条件や、空調空間内に存在する人体やPCなどの発熱体からの発熱状況に基づいて、空調空間内の温度分布を導出する。また、CFD逆解析処理により、CFD順解析処理で得られた温度分布のうち対象ゾーンの温度を設定温度に修正した温度分布に基づいて、AHUの給気温度や各ゾーンの給気風量などの空調制御パラメータを特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-89677号公報
【文献】特開2015-36589号公報
【文献】特開2016-8782号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】田中俊六ほか、「最新 建築環境工学[改訂3版]」、井上書院、2007.7.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の負荷連動型の空調制御技術では、AHUの給気温度や各ゾーンの給気風量などの空調制御パラメータを最適値に収束させるためには、数分程度の空調制御周期ごとにCFD解析を複数回繰り返し実行する必要がある。しかしながら、CDF解析処理は膨大な演算処理を必要とするため、一般的な産業用コントローラからなる空調制御装置では、空調制御周期に処理が追いつかないという問題点があった。このため、演算能力の高い産業用コントローラを用いた場合には、空調制御装置のコストアップ要因となるという問題点があった。また、空調制御周期を延長した場合には、空調制御の応答性が低下するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、少ない処理負担で給気温度や給気風量などの空調制御パラメータを特定できる空調制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、指定された給気温度の空調空気を生成して供給する空調機AHUと、前記空調機AHUから供給された前記空調空気を、空調対象となる空間を分割して設けられたN個のゾーンに対して、指定された給気風量で供給する複数の空調機器VAVとを有する空調システムで用いられて、前記ゾーンZi(i=1,2,…,N)の設定温度Tcriに基づいて、前記空調機AHUから供給すべき前記空調空気に関する給気温度Tsaと、前記ゾーンZiに対して給気すべき前記空調空気に関する給気風量Wziとを計算する空調制御装置であって、前記ゾーンZiから検出された、当該ゾーンZiに存在する物体に関する表面温度とその表面面積との組からなる表面温度データと、前記ゾーンZiと隣接する各隣接ゾーンZrの接面積を示す隣接ゾーンデータとに基づいて、前記ゾーンZiを前記設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算し、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて前記空調機AHUから供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する熱負荷計算部と、前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記空調機熱負荷QAHUとに基づいて、前記空調機AHUの前記給気温度Tsaを計算する給気温度計算部と、前記給気温度Tsa、前記設定温度Tcri、および前記表面温度データに基づいて、前記ゾーンZiごとに前記給気風量Wziを計算する給気風量計算部とを備えている。
【0010】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記熱負荷計算部が、前記表面温度データに基づいて前記ゾーンZiに存在する物体の表面から前記ゾーンZiに供給される物体供給熱量Qwiを計算し、前記隣接ゾーンデータに基づいて前記ゾーンZiの各隣接ゾーンZrから前記ゾーンZiに供給される隣接ゾーン供給熱量Qriを計算し、前記物体供給熱量Qwiと隣接ゾーン供給熱量Qriとの和を前記ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziとして計算するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記給気温度計算部が、前記ゾーンZiの設定温度Tcriの平均値である平均設定温度Tspを計算し、前記空調機AHUの最小風量WAHUminと空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで前記空調機熱負荷QAHUを除算し、得られた除算結果を前記平均設定温度Tspから減算することにより前記給気温度Tsaを計算するようにしたものである。
【0012】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記給気温度計算部が、前記給気温度Tsaが前記空調機AHUの最低給気温度を下回る場合、前記最低給気温度を前記給気温度Tsaとし、前記給気温度Tsaが前記空調機AHUの最高給気温度を上回る場合、前記最高給気温度を前記給気温度Tsaとするようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記給気風量計算部が、前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記給気温度Tsaとの温度差と空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで、前記ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziを除算することにより、前記ゾーンZiの給気風量Wziを計算するようにしたものである。
【0014】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記表面面積が、前記物体を撮像したときの撮像面における投影面積からなるものである。
【0015】
また、本発明にかかる空調制御方法は、指定された給気温度の空調空気を生成して供給する空調機AHUと、指定された給気風量で前記空調空気を空間に供給するN(Nは2以上の整数)個の空調機器VAVとを有する空調システムの空調制御装置で用いられて、前記空調機器VAVi(i=1,2,…,N)とそれぞれ対応するゾーンZiの設定温度Tcriに基づいて、前記空調機AHUの給気温度Tsaおよび前記空調機器VAViの給気風量Wziを計算する空調制御方法であって、熱負荷計算部が、前記ゾーンZiから検出された、当該ゾーンZiに存在する物体に関する表面温度とその表面面積との組からなる表面温度データと、前記ゾーンZiと隣接する各隣接ゾーンZrの接面積を示す隣接ゾーンデータとに基づいて、前記ゾーンZiを前記設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算し、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて前記空調機AHUから供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する熱負荷計算ステップと、給気温度計算部が、前記ゾーンZiの設定温度Tcriと前記空調機熱負荷QAHUとに基づいて、前記空調機AHUの前記給気温度Tsaを計算する給気温度計算ステップと、給気風量計算部が、前記給気温度Tsa、前記設定温度Tcri、および前記表面温度データに基づいて、前記ゾーンZiごとに前記給気風量Wziを計算する給気風量計算ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各ゾーンのゾーン熱負荷に基づいて、空調機から供給すべき空調機熱負荷が計算され、この空調機熱負荷に基づいて空調機の給気温度が計算され、この給気温度に基づいて各ゾーンの給気風量が計算されることになる。したがって、これらの計算処理はすべて四則演算で実現することができ、従来のCFD解析処理のように、高度で複雑な演算処理を必要とするものではない。このため、少ない処理負担で給気温度や給気風量などの空調制御パラメータを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】空調制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】空調制御パラメータ計算処理を示すフローチャートである。
図3】実験に用いた空間の構成例である。
図4】AHU給気温度の推移を示すグラフである。
図5】ゾーン温度の推移を示すグラフである。
図6】VAV給気風量の推移を示すグラフである。
図7】消費電力の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[空調制御装置]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。図1は、空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
この空調制御装置10は、全体として産業用コントローラやサーバ装置などの演算処理装置からなり、制御対象である空間Rから検出されたデータに基づいて、同じく空間Rに設置されている空調システム20の空調機AHU(Air Handling Unit)および空調機器VAV(Variable Air Volume:可変風量装置)で用いる給気風量や給気温度などの空調制御パラメータを計算して指示する機能を有している。
【0020】
図1に示すように、空間Rには、空調システム20と施設管理システム30とが設置されている。空調制御装置10は、通信回線L1を介して、空調システム20の空調コントローラ21、および、施設管理システム30の施設管理装置31と接続されている。
【0021】
空調システム20は、制御対象である空間Rの空調環境を実際に調整するための既存のシステムであり、主な構成として、通信回線L2を介して相互に接続された、空調コントローラ21、1つのAHU、およびN(Nは2以上の整数)個のVAVを備えている。
空調コントローラ21は、全体として産業用コントローラからなり、空調制御装置10から指示された空調制御パラメータに基づいて、AHUおよびVAVを制御する機能を有している。
【0022】
AHUは、一般的な空調機からなり、空調コントローラ21から指定された給気温度の空調空気を生成して、各VAVへ送風する機能を有している。
VAVは、空間Rを分割して設けた複数のゾーンZごとに設置された一般的な可変風量装置からなり、AHUから送風された空調空気を、空調コントローラ21から指定された給気風量で、空間Rへ給気する機能を有している。
【0023】
図1では、空間Rには3(N=3)つのゾーンZ#1,ゾーンZ#2,ゾーンZ#3と、3つのVAV#1,VAV#2,VAV#3とが設置されており、1つのゾーンZに1対1で1つのVAVが設置されている場合が示されている。以下では、これを一般化して、空間Rに1つのAHUが配置されており、このAHUに対してN個のゾーンZi(i=1,2,…,N)と1対1で対応するN個のVAVi(i=1,2,…,N)が接続されている場合を例として説明する。
【0024】
なお、ゾーンZとVAVの個数やゾーンZとVAVとの関係についてはこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのゾーンZに1つのVAVが配置されていればよい。例えば、1つのゾーンZに複数のVAVが設置されている場合、これら複数のVAVを1つの代表VAVに置換してゾーンZの給気風量を計算し、最終的には得られた給気風量をそれぞれのVAVで案分すれば、以下と同様にして本発明を適用できる。
また、AHUの個数についても、これに限定されるものではない。例えば、空間Rに複数のAHUを配置して、各AHUに複数のVAVを接続した構成である場合でも、それぞれのAHUごと(空調系統ごと)に空調機熱負荷および給気風量を計算すれば、以下と同様にして本発明を適用できる。
【0025】
施設管理システム30は、管理対象施設である空間Rに設けた各ゾーンZにおける状態を管理するための既存のシステムであり、具体的には人検知システムなどのシステムを利用すればよい。施設管理システム30は、主な構成として、通信回線L3を介して相互に接続された、施設管理装置31および複数の赤外線検出センサSを備えている。
【0026】
施設管理装置31は、全体として産業用コントローラからなり、各赤外線検出センサSで検出した温度分布(熱画像)を画像処理することにより、各ゾーンZ内に存在する各物体に関する表面温度とその表面面積との組をそれぞれ検出して、表面温度データとして空調制御装置10へ通知する機能を有している。なお、1つの物体表面に表面温度が異なる領域が存在する場合、これら領域ごとに別個に表面温度とその表面面積との組をそれぞれ検出すればよい。
【0027】
表面面積については、ゾーンZiに存在する物体を赤外線検出センサSにより撮像したときの撮像面における投影面積を用いてもよい。これにより、赤外線検出センサSにより検出した表面温度と対応した表面面積を得ることができ、後述する物体供給熱量Qwiをより正確に計算することができる。なお、物体の表面面積を求めるにあたっては、単一の赤外線検出センサSにより撮像した、2次元的な撮像画像における投影面積に基づいて算出してもよいし、2以上の赤外線検出センサSを用いて撮像した多面的な撮像画像を用いて、立体的に表面面積を求めるよう構成してもよい。
【0028】
赤外線検出センサSは、サーモパイル、サーミスタ、ポロメータタイプなどの赤外線センサからなり、自己の検出範囲内に位置する、壁、床、机、PC、人などの物体Oの表面温度を示す温度分布を検出して施設管理装置31へ出力する機能を有している。
赤外線検出センサSとゾーンZとの関係については、特にない。赤外線検出センサSの検出範囲に基づいて、ゾーンZの全てをカバーするよう、例えば空間Rの天井や壁に分散配置すればよい。
【0029】
次に、図1を参照して、空調制御装置10の構成について詳細に説明する。空調制御装置10は、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、表示部13、記憶部14、および演算処理部15を備えている。
【0030】
通信I/F部11は、通信回線L1を介して空調コントローラ21および施設管理装置31との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボード、タッチパネル、マウス、操作ボタン、スイッチなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
表示部13は、LCDやLEDなどの表示素子からなり、演算処理部15から出力されたデータを可視表示する機能を有している。
【0031】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で実行される空調制御処理に用いるプログラム14Pや各種の処理データを記憶する機能を有している。プログラム14Pは、空調制御装置10に接続された外部装置や記録媒体から、記憶部14に予め格納される。記憶部14で記憶する処理データとしては、空間Rの形状やVAVの配置位置などの形状データのほか、施設管理システム30から取得した表面温度データや人検知データ、ゾーンZの位置や隣接ゾーンとの接面積などのゾーンデータ、AHUやVAVの性能データなどのデータがある。
【0032】
演算処理部15は、CPUとその周辺回路を有し、CPUと記憶部14のプログラム14Pとを協働させることにより、各種の処理部を実現する機能を有している。演算処理部15で実現される主な処理部として、データ取得部15A、熱負荷計算部15B、給気温度計算部15C、給気風量計算部15D、および空調指示部15Eがある。
【0033】
データ取得部15Aは、施設管理システム30の施設管理装置31から、通信I/F部11および通信回線L1を介して、各ゾーンZ内に存在する各物体から検出された表面温度Twとその表面面積Awとの組を取得し、表面温度データとして記憶部14に保存する機能と、各ゾーンZ内に存在する人を検知した人検知結果を取得し、人検知データとして記憶部14に保存する機能とを有している。なお、物体の表面温度や表面面積については、施設管理装置31から取得した熱画像データに基づいて、データ取得部15Aや熱負荷計算部15Bが、表面温度や表面面積を求めるようにしてもよい。
【0034】
熱負荷計算部15Bは、記憶部14から取得した表面温度データと隣接ゾーンデータとに基づいて、ゾーンZiを設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算する機能と、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて空調機AHUから供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する機能とを備えている。
【0035】
より具体的には、熱負荷計算部15Bは、表面温度データに基づいてゾーンZiに存在する物体の表面からゾーンZiに供給される物体供給熱量Qwiを計算する機能と、隣接ゾーンデータに基づいてゾーンZiの各隣接ゾーンZrからゾーンZiに供給される隣接ゾーン供給熱量Qriを計算する機能と、物体供給熱量Qwiと隣接ゾーン供給熱量Qriとの和をゾーンZiのゾーン熱負荷Qziとして計算する機能とを有している。
【0036】
給気温度計算部15Cは、ゾーンZiの設定温度Tcriと空調機熱負荷QAHUとに基づいて、空調機AHUの給気温度Tsaを計算する機能を有している。
より具体的には、給気温度計算部15Cは、ゾーンZiの設定温度Tcriの平均値である平均設定温度Tspを計算する機能と、空調機AHUの最小風量WAHUminと空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで空調機熱負荷QAHUを除算し、得られた除算結果を平均設定温度Tspから減算することにより給気温度Tsaを計算する機能とを有している。
【0037】
また、給気温度計算部15Cは、得られた給気温度Tsaが空調機AHUの最低給気温度を下回る場合、最低給気温度を給気温度Tsaとする機能と、得られた給気温度Tsaが空調機AHUの最高給気温度を上回る場合、最高給気温度を給気温度Tsaとする機能とを有している。
【0038】
給気風量計算部15Dは、給気温度Tsa、設定温度Tcri、および表面温度データに基づいて、ゾーンZiの給気風量Wziを計算する機能を有している。
より具体的には、給気風量計算部15Dは、ゾーンZiの設定温度Tcriと給気温度Tsaとの温度差と空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで、ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziを除算することにより、ゾーンZiの給気風量Wziを計算する機能を有している。
【0039】
空調指示部15Eは、給気温度計算部15Cで計算された空調機AHUの給気温度Tsaや、給気風量計算部15Dで計算されたゾーンZiの給気風量Wziを、通信I/F部11および通信回線L1を介して、空調システム20の空調コントローラ21へ指示する機能を有している。
【0040】
[本実施の形態の動作]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作として、空調システム20で用いる空調制御パラメータ、具体的には、AHUの給気温度Tsaおよび各ゾーンZiの給気風量Wziを計算する空調制御パラメータ計算動作について説明する。図2は、空調制御パラメータ計算処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10の演算処理部15は、予め設定されている空調制御周期の到来に応じて、図2の空調制御パラメータ計算処理を実行する。
【0041】
まず、データ取得部15Aは、施設管理システム30の施設管理装置31から、通信I/F部11および通信回線L1を介して、各ゾーンZi内に存在する各物体に関する表面温度データを取得し、記憶部14に保存する(ステップS100)。
【0042】
次に、熱負荷計算部15Bは、記憶部14から、表面温度データおよび隣接ゾーンデータと、各ゾーンZiの設定温度Tcriとを取得し(ステップS101)、これら表面温度データおよび隣接ゾーンデータと、各ゾーンZiの設定温度Tcriとに基づいて、ゾーンZiを設定温度Tcriへ制御するのに必要となるゾーン熱負荷Qziを計算する(ステップS102)。
【0043】
各ゾーンZiにおけるゾーン熱負荷Qziは、ゾーンZi内に存在する物体からゾーンZiに供給される物体供給熱量Qwiと、ゾーンZiに隣接する隣接ゾーンZrからゾーンZiに供給される隣接ゾーン供給熱量Qriとに要約される。したがって、ゾーン熱負荷Qziは、次の式(1)に示すように、これら物体供給熱量Qwiと隣接ゾーン供給熱量Qriとの和から求められる。
【数1】
【0044】
また、表面温度データに含まれるゾーンZiの各物体から検出された組m(m=1,2,…,M:Mは2以上の整数)の表面温度および表面面積を、それぞれTw(i,m)およびAw(i,m)とし、物体からゾーンZiの空気への対流熱伝導率をKwとし、ゾーンZiの設定温度をTcriとした場合、物体供給熱量Qwiは、次の式(2)で求められる。なお、Kwは、非特許文献1(p. 194)などに記載の公知の値を用いればよい。
【数2】
【0045】
また、隣接ゾーンデータに含まれるゾーンZiに隣接する隣接ゾーンZrとの接面積をAz(i,r)とし、隣接ゾーンZrからゾーンZiの空気への対流熱伝導率をKzとし、隣接ゾーンZrの設定温度をTn(i,r)とした場合、隣接ゾーン供給熱量Qriは、次の式(3)で求められる。なお、Kzは、空間Rでのフィールド実験や実運用などにより経験的に決定すればよい。
【数3】
【0046】
この後、熱負荷計算部15Bは、次の式(4)に示すように、これらゾーン熱負荷Qziを合計することにより、AHUから各VAVへ供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算する(ステップS103)。
【数4】
【0047】
次に、給気温度計算部15Cは、次の式(5)に示すように、設定温度Tcriの平均値である平均設定温度Tspを計算する(ステップS104)。ここでは、空調機熱負荷QAHUにおける各ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziの重み付けにより、設定温度Tcriを加重平均したものを平均設定温度Tspとしている。
【数5】
【0048】
続いて、給気温度計算部15Cは、ゾーンZiの設定温度Tcriと空調機熱負荷QAHUとに基づいて、空調機AHUの給気温度Tsaを計算する(ステップS105)。記憶部14の性能データで設定されているAHUの最小風量をWAHUminとし、空気の低圧比熱をC(=1006[J/(kg・K)])とし、空気の密度をρ(=1.2[kg/m3])とした場合、給気温度Tsaは次の式(6)で求められる。
【数6】
【0049】
また、給気温度計算部15Cは、上記式(6)で得られた給気温度Tsaが、記憶部14の性能データで設定されている、AHUの最低給気温度Tsaminと最高給気温度Tsamaxとからなる動作可能範囲に収まるよう調整する(ステップS106)。具体的には、給気温度Tsaが、最低給気温度Tsaminを下回る場合、最低給気温度Tsaminを給気温度Tsaとし、最高給気温度Tsamaxを上回る場合、最高給気温度Tsamaxを給気温度Tsaとする。
【0050】
この後、給気風量計算部15Dは、給気温度Tsa、設定温度Tcri、および表面温度データに基づいて、各ゾーンZiの給気風量Wziを計算し(ステップS107)、一連の空調制御パラメータ計算処理を終了する。
ゾーンZiの物体供給熱量をQwiとするとともに隣接ゾーン供給熱量をQriとし、空気の低圧比熱をCとし、空気の密度をρとし、ゾーンZiの設定温度をTcriとした場合、ゾーンZiの給気風量Wziは、次の式(7)で求められる。
【数7】
【0051】
[空調制御方法の比較]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10による空調制御方法の比較について説明する。図3は、実験に用いた空間の構成例である。
図3に示すように、15m×8mの大きさの矩形形状をなす空間Rを、3×2の6(N=6)つのゾーンに分割し、各ゾーンZi(i=1,2,…,6)に対して1対1でVAViを配置した。これらVAViは、1つのAHUに共通接続されているため、AHUの給気温度Tsaは、各ゾーンZiで共通となる。一方、各ゾーンZiには個別のVAViが設置されているため、各ゾーンZiでの給気風量Wziは、個別に制御可能である。
【0052】
実験では、夏場の暑い日中を想定し、空間Rに対する屋外からの熱負荷を生成する外気チャンバーを50℃に設定し、空間Rに対する隣室からの熱負荷を制御する隣室チャンバーを32℃に設定した。
各ゾーンZiのうち1つのゾーンZpを執務ゾーンに想定し、この執務ゾーンZpの設定温度Tcrpを25.5℃に設定して、A,B,Cの3種類の空調制御方法で冷房運転を行った。
【0053】
このうち、方法Aは、執務ゾーンZpのみに従来の空調コントローラに搭載されているPID制御を適用したもので、方法Bは、すべてのゾーンZiに従来の空調コントローラに搭載されているPID制御を適用したものである(例えば、特許文献3など参照)。方法Cは、本実施の形態にかかる空調制御方法を適用したものである。
なお、これら方法A,B,Cのうち、執務ゾーンZp以外のゾーンZiにおける設定温度が必要な場合には、Zpと同じく25.5℃に設定した。また、方法A,Bでは、給気温度Tsaの初期値を20℃とした。また、各ゾーンZiには、発熱する物体は存在せず、壁、床、天井などの内壁以外からの熱量は供給されないものとし、内壁温度は、各内壁に設置した温度センサで計測した。
【0054】
図4は、AHU給気温度の推移を示すグラフである。図5は、ゾーン温度の推移を示すグラフである。図6は、VAV給気風量の推移を示すグラフである。図7は、消費電力の推移を示すグラフである。
【0055】
図4のグラフによれば、方法A,Bに比べて方法Cの給気温度が運転開始から低く設定できている。これは方法Cが、計算により得られたAHUの熱負荷に基づいて給気温度を決定しているからである。このため、図5に示されているように、温度変化が運転開始から早期に始まっており、応答性が改善されていることがわかる。一方、方法A,Bは、PID制御により給気風量を決定し、これら給気風量が最大風量に達した時点で給気温度を低減しているため、このような制御遅延が応答性に現れている。
【0056】
また、図6のグラフによれば、方法Bに比べて方法Cのほうが給気風量が小さいことがわかる。このため、図7に示すように、空気搬送動力に要する消費電力が削減されていることがわかる。なお、方法Aは、執務ゾーンZp以外のゾーンZiにおけるVAVはすべて停止しているため、方法B,Cとの直接的な比較は行えない。
【0057】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、熱負荷計算部15Bが、当該ゾーンZiに存在する物体に関する表面温度とその表面面積との組からなる表面温度データと、ゾーンZiと隣接する各隣接ゾーンZrの接面積を示す隣接ゾーンデータとに基づいて、ゾーンZiを設定温度Tcriへ制御するのに必要なゾーン熱負荷Qziを計算し、これらゾーン熱負荷Qziに基づいて空調機AHUから供給すべき空調機熱負荷QAHUを計算し、給気温度計算部15Cが、ゾーンZiの設定温度Tcriと空調機熱負荷QAHUとに基づいて、空調機AHUの給気温度Tsaを計算し、給気風量計算部15Dが、給気温度Tsa、設定温度Tcri、および表面温度データに基づいて、ゾーンZiごとに給気風量Wziを計算するようにしたものである。
【0058】
これにより、各ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziに基づいて、空調機AHUから供給すべき空調機熱負荷QAHUが計算され、このQAHUに基づいて空調機AHUの給気温度Tsaが計算され、このTsaに基づいて各ゾーンZiの給気風量Wziが計算されることになる。
したがって、これらの計算処理はすべて四則演算で実現することができ、従来のCFD解析処理のように、高度で複雑な演算処理を必要とするものではない。このため、少ない処理負担で給気温度や給気風量などの空調制御パラメータを特定することができる。
【0059】
実際の検証では、同一処理能力の産業用コントローラで比較すると、従来のCFD解析処理では、前述したCFD順解析とCFD逆解析を行うために必要な所要時間は数分程度であるのに比較して、本実施の形態にかかる所要時間は1秒以下であった。したがって、本実施の形態によれば、演算能力の高い産業用コントローラを用いる必要はなく、空調制御装置10のコストアップを回避することが可能である。また、計算処理がすべて四則演算で実現できるため、1分程度の空調制御周期にも十分追従でき、空調制御において高い応答性を得ることが可能となる。
【0060】
また、CFD解析のような高度で複雑な演算処理を必要としない、従来の空調コントローラに搭載されているPID制御に基づく空調制御もある。しかし、このような従来の空調制御では、温度センサで検出した室温に基づいてPID制御により給気風量を決定し、これら給気風量が最大風量に達した時点で給気温度を低下させるというような調整を行っている。このため、空間の壁、床、人などの物体から、空間内の空気が温度変化し、その温度変化を温度センサで検出するという、熱伝搬過程に起因して給気温度の調整に遅延が発生する。
【0061】
これに比べて、本実施の形態では、空間内に存在する物体から検出した表面温度に基づいて、AHUの熱負荷を計算し、このAHUの熱負荷に基づいて給気温度を決定しているため、このような遅延は発生せず、これに伴う給気風量の増大も回避される。このため、空調制御において良好な応答性を得ることができるとともに、給気風量の増大により発生する空気搬送動力の低減、すなわち省エネ効果を得ることが可能となる。また、装置の稼働後に、熱伝搬過程に起因した給気温度の調整を行う必要が無くなるという利点も得られる。
【0062】
また、本実施の形態において、熱負荷計算部15Bが、表面温度データに基づいてゾーンZiに存在する物体の表面からゾーンZiに供給される物体供給熱量Qwiを計算し、隣接ゾーンデータに基づいてゾーンZiの各隣接ゾーンZrからゾーンZiに供給される隣接ゾーン供給熱量Qriを計算し、物体供給熱量Qwiと隣接ゾーン供給熱量Qriとの和をゾーンZiのゾーン熱負荷Qziとして計算するようにしてもよい。
これにより、より正確に各ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziを計算することができる。
【0063】
また、本実施の形態において、給気温度計算部15Cが、ゾーンZiの設定温度Tcriの平均値である平均設定温度Tspを計算し、空調機AHUの最小風量WAHUminと空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで空調機熱負荷QAHUを除算し、得られた除算結果を平均設定温度Tspから減算することにより給気温度Tsaを計算するようにしてもよい。
これにより、空気搬送動力が最も少ない状況を前提とした給気温度Tsaを得ることができ、空気搬送動力の低減による省エネ効果を得ることが可能となる。
【0064】
これに加えて、本実施の形態において、給気温度計算部15Cが、計算した給気温度Tsaが空調機AHUの最低給気温度を下回る場合、最低給気温度を給気温度Tsaとし、給気温度Tsaが空調機AHUの最高給気温度を上回る場合、最高給気温度を給気温度Tsaとするようにしてもよい。
これにより、計算した給気温度Tsaが極端な場合でも、空気搬送動力が最も少ない状況を前提とした実用可能な給気温度Tsaを得ることができ、空気搬送動力の低減による省エネ効果を得ることが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態において、給気風量計算部15Dが、ゾーンZiの設定温度Tcriと給気温度Tsaとの温度差と空気の低圧比熱Cおよび密度ρとで、ゾーンZiのゾーン熱負荷Qziを除算することにより、ゾーンZiの給気風量Wziを計算するようにしてもよい。
これにより、ゾーンZiごとに異なる設定温度Tcriとが設定されている場合でも、各ゾーンZiで必要となる給気風量Wziを正確に計算することができる。したがって、空調機AHUから供給された空調空気を、各ゾーンZiに対して正しく配分することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態において、表面面積として、物体を撮像したときの撮像面における投影面積を用いてもよい。これにより、赤外線検出センサSにより検出した表面温度と対応した表面面積を得ることができ、ゾーンZiにおける物体供給熱量Qwiをより正確に計算することができる。
【0067】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…空調制御装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…表示部、14…記憶部、15…演算処理部、15A…データ取得部、15B…熱負荷計算部、15C…給気温度計算部、15D…給気風量計算部、15E…空調指示部、20…空調システム、21…空調コントローラ、30…施設管理システム、31…施設管理装置、AHU…空調機、VAV…空調機器、R…空間、Z,Zi…ゾーン、S…赤外線検出センサ、L1,L2,L3…通信回線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7