(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20221004BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221004BHJP
H02P 5/74 20060101ALI20221004BHJP
B25J 13/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B25J19/00 F
H02M7/48 Z
H02P5/74
B25J13/06
(21)【出願番号】P 2018188535
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堺 千恵
(72)【発明者】
【氏名】田頭 毅
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/117609(WO,A1)
【文献】特開2016-046988(JP,A)
【文献】特開2011-167802(JP,A)
【文献】特開2013-172620(JP,A)
【文献】特開2009-159704(JP,A)
【文献】特開2005-117791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
H02M 7/48
H02P 5/74
B25J 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸をそれぞれ駆動し、各軸によって異なる出力の複数のモータを有するロボットの動作を制御する制御装置であって、
前記複数のモータのそれぞれに駆動電力を供給するように構成された複数のパワーモジュールと、
一主面上において、パワーモジュールを配置可能なスペースが複数設けられ、各スペースにはパワーモジュールのピン配置に応じた貫通孔が設けられた1枚の回路基板と、
前記複数のパワーモジュールに取り付けられる一つのヒートシンクと、
を備え、
前記複数のパワーモジュールのうち、少なくとも一のパワーモジュールの定格電流が他の一のパワーモジュールの定格電流と異なり、且つ、各パワーモジュールが同一のピン配置を有
し、
前記ヒートシンクは、前記パワーモジュールに相当しない部分に溝が形成されている、ロボット制御装置。
【請求項2】
前記複数のパワーモジュールの形状及び大きさが同一である、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記パワーモジュールは、複数のパワー半導体スイッチング素子をブリッジ接続した電力変換回路と、前記パワー半導体スイッチング素子を駆動する駆動回路とを1つのパッケージに格納してインテリジェントパワーモジュールとして構成される、請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多関節ロボットでは、基端側の関節に設けられた軸はロボット全体を支えるために大きなトルクが必要となるため、大きな駆動電力(モータ出力)が必要である。一方、先端側の関節に設けられた軸は、支える量が減りトルクも小さくなるため、比較的小さな電力で駆動できる。ロボットの各軸を駆動するモータは、IGBTに代表される複数のパワー半導体チップを備えたパワーモジュールによって駆動するのが一般的である。最近では、パワーモジュールとして、IGBTにその駆動回路や保護回路を一体化したIPM(インテリジェントパワーモジュール)が実用化されている。本発明の先行技術として、車両用のモータを駆動するための複数のパワーモジュールを基板上に実装する技術がある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5260347号
【文献】特許第4313272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、多関節ロボットは、各軸によって異なる出力の複数のモータを有するため、従来のロボットコントローラでは、いろんなパワーの組み合わせに応じて異なる形態の基板を複数用意しなければならず、装置の大型化が避けられなかった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ロボットコントローラの小型化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、複数の軸をそれぞれ駆動し、各軸によって異なる出力の複数のモータを有するロボットの動作を制御する制御装置であって、前記複数のモータのそれぞれに駆動電力を供給するように構成された複数のパワーモジュールと、一主面上において、パワーモジュールを配置可能なスペースが複数設けられ、各スペースにはパワーモジュールのピン配置に応じた貫通孔が設けられた1枚の回路基板と、を備え、前記複数のパワーモジュールのうち、少なくとも一のパワーモジュールの定格電流が他の一のパワーモジュールの定格電流と異なり、且つ、各パワーモジュールが同一のピン配置を有するものである。
【0007】
多関節ロボットは各軸によって異なる出力の複数のモータを有するため、モータの駆動に使用される複数のパワーモジュールは、少なくとも一のパワーモジュールの定格電流が他の一のパワーモジュールの定格電流と異なる仕様が要求される。上記構成によれば、全てのパワーモジュールが同一のピン配置を有するようにパッケージの規格を統一するとともに、一主面上において、予め、パワーモジュールを配置可能なスペースが複数設けられ、各スペースにパワーモジュールのピン配置に応じた貫通孔が設けられた1枚の回路基板を準備することで、複数のパワーモジュールを選択して配置することができ、制御装置の小型化を実現できる。
【0008】
また、前記複数のパワーモジュールの形状及び大きさが同一であってもよい。
【0009】
また、前記パワーモジュールは、複数のパワー半導体スイッチング素子をブリッジ接続した電力変換回路と、前記パワー半導体スイッチング素子を駆動する駆動回路とを1つのパッケージに格納してインテリジェントパワーモジュールとして構成されてもよい。
【0010】
また、一つのヒートシンクが前記複数のパワーモジュールに取り付けられてもよい。
【0011】
また、前記ロボット制御装置の製造方法としては、ロボットの複数の軸をそれぞれ駆動し、各軸によって異なる出力の複数のモータを有するロボットの動作を制御する制御装置を製造する方法であって、一主面上において、パワーモジュールを配置可能なスペースが複数設けられ、前記複数のスペースの各々にパワーモジュールのピン配置に応じた貫通孔が設けられた1枚の回路基板を準備することと、複数種類の定格電流の各々に対応する少なくとも1のパワーモジュールを準備することと、前記複数のスペースの各々に、前記複数の定格電流のうちの任意の1のものを定格電流とするパワーモジュールを、前記パワーモジュールから選択して配置すること、を含み、前記全てのパワーモジュールのピン配置が同一であるものにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボット制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの構成を示す斜視図である。
【
図3】制御装置のサーボユニットを構成する回路基板及びパワーモジュールを模式的に示した平面図である。
【
図4】回路基板及び一のパワーモジュールの断面を模式的に示した図である。
【
図5】制御装置内部の回路基板を裏側から見た第1の斜視図である。
【
図6】制御装置内部の回路基板を裏側から見た第2の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットの構成を示す斜視図である。本実施形態においてロボットは、動作に必要な複数の可動部材を備えていて、それらを複数のモータによって駆動するよう構成されたものであればよい。従って、本実施形態において、ロボットは、典型的には、多関節ロボットであるが、これには限定されない。
図1に示すように、ロボット1は、工場の床面などの据え付け面に固定されるベースリンク(ベース)10に、第1リンク11、第2リンク(以下、「下部アーム」ともいう)12、第3リンク(以下、「上部アーム」ともいう)13、フランジ14を第1~第6の各関節JT1~JT6により順次連結して構成されている。本実施形態のロボット1は、基端から先端に向かって、ねじり関節(JT1)、曲げ関節(JT2)、曲げ関節(JT3)、捩り関節(JT4)、曲げ関節(JT5)および捩り関節(JT6)を有し、これらの関節を介して複数のリンク(10~14)により順次連結して構成されている。ロボット1は、6軸の垂直多関節型のロボットである。
【0016】
第1リンク11はベース10上に第1関節JT1によって捻り回転可能に連結される。下部アーム12は第1リンク11の上端部に第2関節JT2によって上下(鉛直)方向に旋回可能に支持される。上部アーム13は下部アーム12の先端部に第3関節JT3によって上下方向に旋回可能に支持されるとともに、第4関節JT4によって捻り回転可能に支持される。フランジ14は上部アーム13の先端部に第6関節JT6によって捩り回転可能に支持される。第1関節JT1~第6関節JT6それぞれに対応付けられるように、サーボモータ、サーボモータの回転を制動するブレーキ、及び、サーボモータの回転位置を検出する位置センサがそれぞれ設けられる(いずれも図示せず)。
【0017】
制御装置2は、本実施形態では、マイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラであり、ロボット1とケーブルを介して接続される。制御装置2は単一の装置とは限らず、複数の装置で構成されてもよい。
【0018】
図2は、制御装置2のブロック図である。
図2に示すように、制御装置2は、サーボユニット20と、制御ユニット21と、パワーユニット22と、冷却ユニット23と、を備える。
【0019】
サーボユニット20は、指令入力に応じてロボット1のサーボモータM1~M6に駆動電力を供給する。サーボモータM1~M6は、ロボット1の第1関節JT1~第6関節JT6(
図1参照)にそれぞれ設けられる。本体ベース側にある3つの第1関節JT1~第3関節JT3に設けられたサーボモータM1~M3は、相対的に出力の大きなサーボモータが使用される。一方、本体ベースとは反対側すなわちリスト側にある3つの第4関節JT4~第6関節JT6に設けられたサーボモータM4~M6は、相対的に出力の小さなサーボモータが使用される。つまり、ロボット1では、各軸(各関節)によって、トルク、すなわち駆動電力(モータ出力)が異なる。
【0020】
制御ユニット21は、各種演算を行い、サーボユニット20介してロボット1の動作を制御するとともに、パワーユニット22や冷却ユニット23等の各種ユニットの動作を制御する。
【0021】
パワーユニット22は、サーボユニット20、制御ユニット21及び冷却ユニット23に電力を供給する。パワーユニット22は、例えば、交流電源から出力された三相交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DC変換部と、直流出力電圧を平滑化する平滑用コンデンサ等を備える(図示せず)。また、冷却ユニット23は、冷却用のファンやヒートシンクで構成され、発熱素子によって熱せられた制御装置2内部を冷却する。
【0022】
図3(a)は、サーボユニット20を構成する回路基板200のみを模式的に示した平面図である。
図3(a)に示すように、1枚の回路基板200の一主面上に、パワーモジュール201を配置可能なスペース200aが8つ設けられる。各スペース200aにはパワーモジュール201のピン配置に応じた貫通孔200bが設けられる。各スペース200aの貫通孔200bは、パワーモジュール201の端子201bのピン配置に応じて設けられている。
【0023】
図3(b)は、回路基板200上に配置されたパワーモジュール201を模式的に示した平面図である。
図3(b)に示すように、8つの配置スペース200aのうち、6つの配置スペース200aそれぞれに6つのパワーモジュール201が配置されている。6つのパワーモジュール201は、6つの関節JT1~JT6のサーボモータM1~M6のそれぞれに駆動電力を供給するように構成されている。サーボモータM1~M6の駆動に使用される6つのパワーモジュール201は、少なくとも一のパワーモジュールの定格電流が他の一のパワーモジュールの定格電流と異なる仕様が要求される。本実施形態では、サーボモータM1~M6の出力に対応すべく、サーボモータM1~M3のそれぞれを駆動する3つのパワーモジュール201は定格電流(100A)が相対的に大きいものを使用している。一方、サーボモータM4~M6のそれぞれを駆動する3つのパワーモジュール201は定格電流(50A)が相対的に小さいものを使用している。
【0024】
パワーモジュール201は、複数のパワー半導体スイッチング素子をブリッジ接続した電力変換回路と、パワー半導体スイッチング素子を駆動する駆動回路とを1つのパッケージに格納してインテリジェントパワーモジュール(IPM)として構成される。本実施形態では、全てのパワーモジュール201のピン配置が同じになるようにパッケージの規格を統一している。
【0025】
図4は、
図3(b)の回路基板200上の一のパワーモジュール201(IV-IV部)の断面を模式的に示した図である。
図4に示すように、回路基板200上に設けられたスペース200aに応じてパワーモジュール201が配置される。パワーモジュール201の端子201aが回路基板200上のスペース200aに設けられた貫通孔200bに挿入される。
【0026】
図5は、制御装置2内部の回路基板200を裏側から見た第1の斜視図である。
図5では、制御装置2の筐体203の底板パネル及び正面側の側板パネルは取り付け前の状態を示している。
図5に示すように、制御装置2の筐体203は、略直方体形状を有する。筐体203の内部の空間は、平板形状を有する中段パネル210の主面によって、上部の第1空間と下部の第2空間に分割されている。第2空間において中段パネル210の主面上には回路基板200が配置されている。回路基板200上には6つのパワーモジュール201が配置されている。全てのパワーモジュール201のパッケージは、平面視で略矩形状を有し、パッケージの形状及び大きさは同一である。
【0027】
上部の第1空間は密閉空間であるのに対し下部の第2空間は密閉されていない。下部の空間において、一方の側板パネル211には冷却ユニット23を構成する空冷ファンが設けられ、他方の側板パネル212には通風口が設けられる。
【0028】
図6は、制御装置2内部の回路基板200を裏側から見た第2の斜視図である。
図6に示すように、回路基板200上にはヒートシンク204が取り付けられている。ヒートシンク204は、回路基板200上の6つのパワーモジュール201の上面を覆うように取り付けられる。6つのパワーモジュール201のパッケージの形状及び大きさは同一であるので、発熱素子であるパワーモジュール201を上部から効率的に冷却することができる。ヒートシンク204は一体的に形成されたものが使用される。ヒートシンク204には、空気が流れやすくなるように一方の側板パネル211から他方の側板パネル211に向かう方向に沿って溝が形成される。また、ヒートシンク204は、軽量化のために、パワーモジュール201に相当しない部分に溝が形成される。
【0029】
本実施形態によれば、全てのパワーモジュール201が同一のピン配置を有するようにパッケージの規格を統一するとともに、回路基板200の一主面上において、予め、パワーモジュール201を配置可能なスペース200aが複数設けられ、各スペース200aにパワーモジュールのピン配置に応じた貫通孔が設けられた1枚の回路基板を準備することで、パワーモジュールを選択して配置することができ、制御装置の小型化を実現できる。
【0030】
尚、本実施形態は、ロボット1の複数の軸をそれぞれ駆動し、各軸によって異なる出力の複数のモータを有するロボット1の動作を制御する制御装置2を製造する方法についても開示する。この方法は、一主面上において、パワーモジュール201を配置可能なスペース200aが8つ設けられ、8つのスペース200aの各々にパワーモジュール201のピン配置に応じた貫通孔200bが設けられた1枚の回路基板200を準備することと、二種類の定格電流(100A,50A)の各々に対応する少なくとも1のパワーモジュール201を準備することと、6つの配置スペース200aの各々に、二種類の定格電流(100A,50A)のうちの任意の1のものを定格電流とするパワーモジュール201を、パワーモジュール201から選択して配置すること、を含み、全てのパワーモジュール201のピン配置が同一であることを特徴とするものである。
【0031】
尚、上記各実施形態のロボット1は、垂直多関節型のロボットであったが、水平多関節型のロボットであってもよい。
【0032】
尚、上記実施形態の回路基板200は、1枚の基板であったが、複数の基板要素によって結合されて構成されてもよい。
【0033】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び機能の双方又は一方の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、多関節ロボットの制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 ロボット
2 制御装置
20 サーボユニット
21 制御ユニット
22 パワーユニット
23 冷却ユニット
200 回路基板
200a 配置スペース
200b 貫通孔
201 パワーモジュール
201a ピン
203 筐体
204 ヒートシンク
210 中段パネル
211,212 側板パネル
213 天板パネル
JT1~JT6 関節
M1~M6 サーボモータ