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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】扉機構
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/32 20060101AFI20221004BHJP
   E05D 3/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E05D15/32
E05D3/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018199070
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066882
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】須賀 政晴
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-160921(JP,A)
【文献】特開2000-333793(JP,A)
【文献】特表2003-521413(JP,A)
【文献】特開2007-063789(JP,A)
【文献】実開昭58-060767(JP,U)
【文献】特開2012-224176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-15/58
A47F 3/00- 3/026
A47F 3/06- 3/14
A47F 11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を閉鎖可能な扉と、支持固定軸回りに回動可能とされているとともに支持移動軸回りに回動可能とされ前記扉を支持する支持アームと、案内固定軸回りに回動可能とされているとともに案内移動軸回りに回動可能とされ前記扉の開閉時の移動を案内する案内アームと、前記開口に交差し当該開口の奥方向に延びて当該開口側である内側と外側とを隔てる側壁と、を備え、前記扉が開放された状態において当該扉を前記側壁に沿って配置可能な扉機構であって、
前記扉が閉鎖された状態において前記案内移動軸は、前記支持移動軸よりも前記開口から離間しており、
前記案内移動軸は、前記案内アームの途中に設けられていることを特徴とする扉機構。
【請求項2】
開口を閉鎖可能な扉と、支持固定軸回りに回動可能とされているとともに支持移動軸回りに回動可能とされ前記扉を支持する支持アームと、案内固定軸回りに回動可能とされているとともに案内移動軸回りに回動可能とされ前記扉の開閉時の移動を案内する案内アームと、前記開口に交差し当該開口の奥方向に延びて当該開口側である内側と外側とを隔てる側壁と、を備え、前記扉が開放された状態において当該扉を前記側壁に沿って配置可能な扉機構であって、
前記扉が閉鎖された状態において前記案内移動軸は、前記支持移動軸よりも前記開口から離間しており、
前記支持移動軸を回動中心とする前記案内移動軸の支持誘導軌跡、及び前記案内固定軸を回動中心とする前記案内移動軸の案内誘導軌跡は、前記扉が閉鎖された状態において交差角度が45度以上であることを特徴とする扉機構。
【請求項3】
開口を閉鎖可能な扉と、支持固定軸回りに回動可能とされているとともに支持移動軸回りに回動可能とされ前記扉を支持する支持アームと、案内固定軸回りに回動可能とされているとともに案内移動軸回りに回動可能とされ前記扉の開閉時の移動を案内する案内アームと、前記開口に交差し当該開口の奥方向に延びて当該開口側である内側と外側とを隔てる側壁と、を備え、前記扉が開放された状態において当該扉を前記側壁に沿って配置可能な扉機構であって、
前記扉が閉鎖された状態において前記案内移動軸は、前記支持移動軸よりも前記開口から離間しており、
前記扉が閉鎖された状態において前記案内固定軸は、前記側壁から当該側壁と交差する内側方向に離間して配置されていることを特徴とする扉機構。
【請求項4】
前記扉が閉鎖された状態において前記案内アームは、前記開口及び前記側壁を備える筐体内に配置されており、
前記案内固定軸は、前記筐体が有する水平方向に延びるフレームに配置・支持されていることを特徴とする請求項に記載の扉機構。
【請求項5】
前記案内固定軸と前記案内移動軸との離間距離は、前記開口から前記案内固定軸までの離間距離よりも小さいことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の扉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を開閉する扉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
扉機構として、一般的に扉を回動させて開口を開閉する扉機構が知られている。このような扉機構は、扉を一つの回動軸を基点に回動させるものであり、構造が簡単である一方、開放時に扉の自由端は開口の前方において円弧を描いて移動するため、開口の前方側に大きなスペースが必要となっていた。このことから、二つの回動軸により回動可能とされたアームを用いることで扉を開口の前方においてコンパクトに回動可能な扉機構が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるアームを用いた扉機構は、前方側に開口を有する箱状の本体に、開口を閉鎖可能な扉が支持アーム及び案内アームを用いて連結されることで構成されている。支持アームは、平面視U字状に形成され、主に扉の荷重を支持するものであり、扉に対して回動可能に配置され当該扉と共に移動する支持移動軸と、本体の側壁に対して回動可能に配置され当該側壁に固定的に支持される支持固定軸とを有している。案内アームは、平面視L字状に形成され、主に開閉時に扉の移動を案内するものであり、扉に対して回動可能に配置され当該扉と共に移動する案内移動軸と、本体の側壁に対して回動可能に配置され当該側壁に固定的に支持される案内固定軸とを有している。扉の開放操作を行うと、支持移動軸及び案内移動軸は側壁の外側に移動するとともに、支持移動軸は開口よりも後方側へと移動する。このように両方のアームが協働することで、開口の前方で扉を側壁側へ横滑りするように移動させながら、開放が進むほどに扉の端部(閉鎖状態において側壁側の端部)を開口よりも後方に引き込むように移動させるため、扉を開口の前方においてコンパクトに回動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-160921号公報(第3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される扉機構910は、図8に示されるように、扉905が閉鎖された状態において、案内アーム970の案内固定軸F92を回動中心とする案内誘導軌跡T92と、支持アーム960の支持移動軸M91を回動中心とする支持誘導軌跡T91との交差角度θ91が小さく、両誘導軌跡T91,T92が互いに近接しており、案内アーム970の案内移動軸M92は開閉時におけるいわゆる思案点に近い状態となっているため、開閉時に扉905に揺動が生じやすく扉905の移動が安定しないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、開閉時に扉を開口に対して安定して案内することのできる扉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の扉機構は、
開口を閉鎖可能な扉と、支持固定軸回りに回動可能とされているとともに支持移動軸回りに回動可能とされ前記扉を支持する支持アームと、案内固定軸回りに回動可能とされているとともに案内移動軸回りに回動可能とされ前記扉の開閉時の移動を案内する案内アームと、前記開口に交差し当該開口の奥方向に延びて当該開口側である内側と外側とを隔てる側壁と、を備え、前記扉が開放された状態において当該扉を前記側壁に沿って配置可能な扉機構であって、
前記扉が閉鎖された状態において前記案内移動軸は、前記支持移動軸よりも前記開口から離間しており、
前記案内移動軸は、前記案内アームの途中に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、扉が閉鎖された状態において案内移動軸は、支持移動軸よりも開口から離間していることから、支持移動軸を回動中心とした案内移動軸の支持誘導軌跡と、案内固定軸を回動中心とした案内移動軸の案内誘導軌跡との交差角度が大きく、両誘導軌跡が離れており、案内誘導軌跡に沿って扉を誘導しやすく、開閉時に扉を安定して案内することができる。
【0009】
前記支持移動軸を回動中心とする前記案内移動軸の支持誘導軌跡、及び前記案内固定軸を回動中心とする前記案内移動軸の案内誘導軌跡は、前記扉が閉鎖された状態において交差角度が45度以上であることを特徴としている。
この特徴によれば、支持誘導軌跡と、案内誘導軌跡とが十分に離間する方向に伸びているため、扉を確実に案内することができる。
【0010】
前記扉が閉鎖された状態において前記案内固定軸は、前記側壁から当該側壁と交差する内側方向に離間して配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、案内固定軸と案内移動軸との距離を短くすることができるため、案内誘導軌跡の円弧の径を短くして、該円弧の曲率を大きくできることから、支持誘導軌跡と案内誘導軌跡とがより離間する。
【0011】
前記扉が閉鎖された状態において前記案内アームは、前記開口及び前記側壁を備える筐体内に配置されており、
前記案内固定軸は、前記筐体が有する水平方向に延びるフレームに配置・支持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持強度を有するフレームで案内アームを支持可能なため、簡素な構成で案内アームの支持に必要な強度が得られる。
【0012】
前記案内固定軸と前記案内移動軸との離間距離は、前記開口から前記案内固定軸までの離間距離以下であることを特徴としている。
この特徴によれば、扉の開閉動作途中に案内移動軸が開口よりも外側に突出することを防止して、案内アームに接触することによる怪我の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における扉機構を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の実施例における扉機構が採用された展示ケースを示す斜視図である。
図3】扉機構が採用された展示ケースの扉を開放した状態を示す斜視図である。
図4】扉機構が採用された展示ケースの分解斜視図である。
図5】支持アーム機構を示す斜視図である。
図6】扉が閉鎖された状態における扉機構を示す平面図である。
図7】(a)~(f)は、扉の開閉動作を模式的に示す平面図である。
図8】(a)~(c)は、本発明の扉機構が適用される筐体の一例を示す平面図である。
図9】従来技術の扉機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る扉機構を実施するための形態を説明する。
【実施の形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る扉機構につき、図1を参照して説明する。
【0016】
図1に示されるように、扉機構110は、開空間A(開口)を閉鎖可能な扉105と、扉105に取り付けられ扉105を回動支持する2つのアームである支持アーム160及び案内アーム170と、開空間A(閉位置における扉105)に交差し当該開空間Aの奥方向に延びて当該開空間A側である内側Bと外側Cとを隔てる側壁135と、を備えており、扉105は閉位置で開空間Aを塞ぎ、扉105は開位置で側壁135の外側Cにて当該側壁135と略平行となり開空間Aを開放する(二点鎖線参照)ようになっている。
【0017】
支持アーム160は、固定部に対して相対的に回動可能に配置され固定部に固定的に支持される支持固定軸F11と、扉105に対して相対的に回動可能に配置され扉105と共に移動する支持移動軸M11とにより、主に扉105の荷重を支持するものである。また、案内アーム170は、固定部に対して相対的に回動可能に配置され固定部に固定的に支持される案内固定軸F12と、扉105に対して相対的に回動可能に配置され扉105と共に移動する案内移動軸M12とにより、主に扉105の移動を案内するものである。
【0018】
扉105が閉鎖された状態において案内移動軸M12は、支持移動軸M11よりも開空間Aから離間していることから、支持移動軸M11を回動中心とした案内移動軸M12の支持誘導軌跡T11と、案内固定軸F12を回動中心とした案内移動軸M12の案内誘導軌跡T12との交差角度θ11が大きく、両誘導軌跡T11,T12が離間する方向に伸びており、案内誘導軌跡T12に沿って扉105を誘導しやすく、開閉時に扉105を安定して案内することができるようになっている。
【0019】
上述したように、扉機構110は、開空間Aを閉鎖可能な扉105を支持アーム160及び案内アーム170を用いて側壁135の外側Cに開放可能な構成であれば様々な装置に適用することができる。その具体例として、本発明に係る展示ケースに適用した扉機構を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0020】
実施例に係る扉機構につき、図2から図7を参照して説明する。
【0021】
また、本実施例においては、展示ケースの扉が閉鎖された状態を基準に、展示ケースの内側に面する各面を内面、展示ケースの外側に面する各面を外面として説明する。
【0022】
本実施例に係る扉機構10(図3参照)は、美術館、博物館等で彫刻、美術品、骨董品、宝石等の展示品を展示する展示ケース1に使用されている。展示ケース1は、図2に示されるように、扉5が閉鎖された状態では、展示ケース1の隙間を密封し、内側4Bの気密性を高め、展示ケース1内の湿度を一定に保ち、外気に含まれる汚染物質の侵入を防止して、展示品の劣化を抑制できるようになっているとともに、図3に示されるように、扉5が開放された状態では、扉5が側壁35の外側へ沿った位置に配置されているため、展示品の出し入れや展示品のメンテナンスを容易に行うことができるようになっている。
【0023】
図2図4に示されるように、展示ケース1は、前方側に開口3Aを有する箱状の基礎筐体3上に開口4Aを有する箱状の展示筐体4が連結されて構成される本体2と、基礎筐体3の開口3A及び展示筐体4の開口4Aを閉鎖可能な扉5(扉機構10)と、本体2に固定され扉5を開閉動作可能に連結する支持アーム機構6(扉機構10)及び案内アーム機構7(扉機構10)と、から主に構成されている。支持アーム機構6及び案内アーム機構7は、両端部それぞれに蝶番を備えたいわゆる二軸蝶番構造とされており、扉5が開放された状態において扉5を基礎筐体3の側壁35の外側に沿った状態で配置可能となっている。
【0024】
まず、図4を用いて、基礎筐体3について説明する。基礎筐体3は、直方体状のフレーム30の右側面、後側面、左側面にそれぞれ側壁35,36,37が固定され、上側面に気密板39が固定され、気密板39の中央部に載置台38が固定されることによって構成されており、開口3A側である内側3Bと外側Cとが隔てられている。特に、扉5が開放される側に配置された側壁35について詳しくは、後述する縦杆部材30cを挟んで開口3A(閉鎖された状態の扉5(図6参照))に対して直交し開口3Aの奥方向に延びている。
【0025】
フレーム30は、左右方向に延びる前後一対の幅杆部材30a,30aと前後方向に延びる左右一対の奥行杆部材30b,30bとが連結された平面視正方形状の四方枠を2つ形成し、これら2つの四方枠を上下方向に離間配置して、上下方向に対向する各角部同士を上下方向に延びる縦杆部材30c,30c,30c,30cで連結して形成されている。また、前方側上下の幅杆部材30a,30aと前方側左右の縦杆部材30c,30cとによって開口縁30fが形成され、開口縁30fは開口3Aを画成している。
【0026】
また、フレーム30の下方側の四方枠内には、左右方向中央部に前後方向に延びる中央奥行杆部材30dが渡設されており、この中央奥行杆部材30dと左右それぞれの奥行杆部材30bとの間における前後方向中央部に左右方向に延びる中央幅杆部材30eが渡設されている。これらにより、フレーム30の構造強度が高められている。
【0027】
また、基礎筐体3は、ロック機構8及び扉5をマグネットに着磁させて仮固定位置に保持するキャッチャ9を備えている。ロック機構8は、側壁37を開放して図示しないハンドルが操作されることで、仮固定位置の扉5を閉鎖位置にロックするものである。
【0028】
次に、図2図4を用いて、展示筐体4について説明する。展示筐体4は、側面視長方形状のガラス側板41,42,43、平面視正方形状のガラス天板48、及び基礎筐体3の気密板39の縁部同士を、図示しないコーキング剤によって気密に固着して構成されており、開口4A側である内側4Bと外側Cとが隔てられている。また、ガラス側板41,43の前端面は、気密板39の前端面と略同一平面を成している(図3参照)。
【0029】
また、本体2には、図3に示されるように、ガラス側板41,43の上端からフレーム30の上端に亘って、それらの前端面に沿ってパッキンP1,P1が接着剤で固着されている。また、ガラス天板48の前端面、気密板39の前端面それぞれに沿ってパッキンP2,P2が接着剤で固着されており、各パッキンP2はパッキンP1,P1に亘っている。
【0030】
次に、扉5について説明する。図4を参照して、扉5は、金属製の薄板の両側端部を折り曲げて平面視C字状に形成された側壁55のスリットに上方から挿入した側面視長方形状のガラス側板50と、側壁55の内面側にて当該側壁55の前端面と対向配置される薄板状の支持板材56と、側壁55とをコーキング剤で固着することにより形成されている。尚、説明の都合上、扉5の開閉操作時における案内アーム機構7よりも支持アーム機構6側を内径側として、側壁35側の扉5の側端部(右側端部)を内径側端部5R、反対側の側端部(左側端部)を外径側端部5Lとする。
【0031】
図4を参照して、側壁55は、金属の薄板を板金加工して側面視長方形状の板状に形成されている。図6を参照して、支持板材56は、着磁性を有する金属の薄板であり、その内面側には、外径側端部5L側の下端部から内面側に突出し、案内アーム機構7が取り付けられるプレート状の扉側取付部材51が固定されている。尚、扉側取付部材51はプレート状に限らず、ブロック状やフレーム状であってもよく、その形状が限定されるものではない。
【0032】
次に、図5図6を用いて、支持アーム機構6について説明する。尚、以降の説明については、主に基礎筐体3側について説明し、特に断らない限り展示筐体4側の説明を省略する。さらに尚、図6図7では、説明の都合上、フレーム30の上方側の四方枠の図示を省略している。
【0033】
図5図6を参照して、支持アーム機構6は、平面視J字状に形成された2つの管状の支持アーム60を上下方向に離間配置し、各短管部60a同士を上下方向に延びるC字チャンネル杆状の連結杆65で連結し、各長管部60c同士を上下方向に延びるC字チャンネル杆状の連結杆68で連結することで形成されている。尚、短管部60a及び長管部60cは、直線状に延びる連結部60bにより連結され、互いに略平行となっている。
【0034】
支持アーム機構6のフレーム30に固定される側について説明する。連結杆65の上下端部それぞれに連結板66a、支持固定軸F1及び連結板66bからなる固定軸支部66が設けられている。連結板66aは連結杆65の上端部または下端部にボルトナットで固定され、連結板66aと連結板66bとは支持固定軸F1により連結され、連結板66bはフレーム30の幅杆部材30aに側壁35から離間して固定されている。連結板66aは支持固定軸F1を基点として垂直軸回りに回動可能となっている。
【0035】
支持アーム機構6の扉5に固定される側について説明する。連結杆68の側端部の上下端部それぞれに連結板69a、支持移動軸M1及び連結板69bからなる移動軸支部69が設けられている。連結板69aは連結杆68の側端部の上端部または下端部にボルトナットで固定され、連結板69aと連結板69bとは支持移動軸M1により連結され、連結板69bは扉5の幅方向中央部にて支持板材56の上端部または下端部に固定されている。連結板69a,69bは、それぞれ支持移動軸M1を基点として垂直軸回りに回動可能に構成されている。
【0036】
次に、図6を用いて、案内アーム機構7について説明する。案内アーム機構7は、プレート状のフレーム側取付部材73と、金属製の直管を折り曲げることで平面視L字状に形成された本体片72と、金属製の直管を折り曲げることで平面視L字状に形成された延設片71と、から主に構成されている。尚、フレーム側取付部材73はプレート状に限らず、ブロック状やフレーム状であってもよく、その形状が限定されるものではない。
【0037】
延設片71は、直線状に延びる短管部71aの端部から長管部71bが略垂直方向に延びており、延設片71の長管部71bの端部は、扉5の扉側取付部材51に回動不能にボルトナットにより固定されている。
【0038】
本体片72は、直線状に延びる短管部72aの端部から長管部72bが略垂直方向に延びており、本体片72の長管部72bの端部は、延設片71の短管部71aの端部に案内移動軸M2によって垂直軸回りに回動可能に軸支されている。これら延設片71、案内移動軸M2及び本体片72により案内アーム70が構成されている。
【0039】
また、本体片72の短管部72aの端部は、フレーム側取付部材73に案内固定軸F2によって垂直軸回りに回動可能に軸支されており、フレーム側取付部材73はフレーム30の中央幅杆部材30eにボルトナットによって回動不能に固定されている。このように、案内固定軸F2は、側壁35と開口3Aとから離間してフレーム30の下方側の四方枠の略中央部に配置されている。
【0040】
また、扉5が閉鎖された状態において案内移動軸M2は支持移動軸M1よりも開口3Aから離間して内側Bに配置されるとともに、支持移動軸M1は案内固定軸F2と案内移動軸M2との略中央に位置している。
【0041】
次に、図6図7を用いて、扉5の開放について説明する。まず、図7(a)を参照して、扉5が閉鎖された状態においてロック機構8による扉5のロックを解除する。次いで、扉5の開放操作を開始すると、扉5は、支持アーム機構6に支持されながら当該支持アーム機構6の回動に伴って移動し始める。扉5が閉鎖された状態において、支持固定軸F1と支持移動軸M1とを結ぶ線分L3と、案内固定軸F2と案内移動軸M2とを結ぶ線分L2とが略並行になっているため、扉5の移動が案内アーム機構7に案内されて、図7(b),(c)に示されるように、開口3Aに対して略平行に前方側へと移動する。これにより、開放時にパッキンP1,P2に対してねじれ方向に作用する力を低減することができるため、扉5は円滑に開放方向に移動できる。
【0042】
図6を参照して、詳しくは、支持移動軸M1を回動中心とした案内移動軸M2の支持誘導軌跡T1は、支持移動軸M1と案内移動軸M2とを結ぶ線分L1を半径とした円弧となる。扉5が閉鎖された状態において案内移動軸M2は、支持移動軸M1よりも開口3Aから離間しているとともに、支持移動軸M1よりも外径側端部5L側へ離間している。この位置は扉5の開放を開始する時の支持誘導軌跡T1の始点となっている。
【0043】
また、案内固定軸F2を回動中心とした案内移動軸M2の案内誘導軌跡T2は、案内固定軸F2と案内移動軸M2とを結ぶ線分L2を半径とした円弧となる。扉5が閉鎖された状態において案内移動軸M2は、案内固定軸F2よりも開口3Aに近接しているとともに、案内固定軸F2よりも外径側端部5L側へ離間している。この位置は扉5の開放を開始する時の案内誘導軌跡T2の始点となっている。
【0044】
そして、案内移動軸M2上にて交差する支持誘導軌跡T1及び案内誘導軌跡T2は、扉5が閉鎖された状態において、交差角度θ1(略60度)が大きく、相対的に離間する方向へ延びていることから、扉5は扉5の開放方向(側壁35)側へ延びる案内誘導軌跡T2に沿って扉5を誘導されやすく、閉鎖された状態から扉5を安定して開方向に案内することができる。交差角度θ1として略60度である例について説明したが、好ましくは45度以上であればよく、90度前後であればほぼいわゆる思案点が生じないこととなる。
【0045】
尚、交差角度θ1は、接弦定理により、線分L1と線分L2との交差角度θ2と等しい。このことから、交差角度θ2を考慮して支持移動軸M1、案内移動軸M2、及び案内固定軸F2の配置を決めるようにしてもよい。
【0046】
図7(c)の状態から扉5の開放を進めると、図7(d)に示されるように、内径側端部5Rが側壁35側(右側)にスライド移動して側壁35を越えて外側に突出するとともに、開放が進むほどに内径側端部5Rが開口3Aの後方へ引き込まれるように扉5が傾きながら外径側端部5Lが前方へと突出して、図7(e)に示されるように、側壁35の外側へと回り込み始める。
【0047】
また、図7(d)においては、案内固定軸F2、案内移動軸M2、及び延設片71の長管部71bの自由端部が固定された扉5の扉側取付部材51(図6図7参照)が略直線状に並んだ状態であり、案内固定軸F2と延設片71の長管部71bの自由端部との離間距離が略最大であり、扉5が前方側へ最も突出したその寸法は、扉5の幅寸法と比較して略半部である。すなわち、案内アーム機構7によって扉5を案内することによって、扉5開放時に、開口3Aの前方に必要なスペースを扉5の幅寸法よりも小さくすることができる。
【0048】
図7(e)の状態から扉5の開放を進めると、図7(f)に示されるように、支持アーム機構6の連結部60bと延設片71の長管部71bとが略平行に配置され、側壁35と支持アーム機構6の長管部60cと扉5とが略平行に配置され、扉5の開放操作が完了し、扉5が開放された状態となる。
【0049】
また、扉5の閉鎖については、上述した扉5の開放を逆の手順で(図7(f)~(a)の順)で行えばよい。図6を参照して、扉5開放の開始時と同様に閉鎖の終了時においても、案内移動軸M2上にて交差して開口3Aから離間方向に延びる支持誘導軌跡T1及び案内誘導軌跡T2は、交差角度θ1の対頂角である交差角度θ3が大きく(略60度)、相対的に離間する方向へ延びていることから、扉5の閉鎖方向(側壁35とは反対)側へ延びる案内誘導軌跡T2に沿って扉5を誘導しやすいため、閉鎖時に扉5を安定して案内することができる。
【0050】
以上説明してきたように、本実施例の扉機構10は、案内移動軸M2は、案内アーム70の途中に設けられていることから、扉5が閉鎖された状態において、簡素な構成で、案内移動軸M2を開口3Aから離間させて配置することができる。
【0051】
また、扉5が閉鎖された状態において案内固定軸F2は、側壁35から当該側壁35と直交する内側B方向に側へ離間して配置されていることから、案内固定軸F2と案内移動軸M2とを結ぶ線分L2を短くすることができるため、案内誘導軌跡T2の円弧の径を短くして、該円弧の曲率を大きくできることから、支持誘導軌跡T1と案内誘導軌跡T2とがより離間する。
【0052】
また、案内固定軸F2は、水平方向に延びる中央幅杆部材30eに配置・支持されていることから、支持強度を有するフレーム30で案内アーム70を支持可能なため、簡素な構成で案内アーム70の支持に必要な強度が得られる。
【0053】
また、案内固定軸F2と案内移動軸M2との離間距離である線分L2の寸法は、開口3Aから案内固定軸F2までの離間距離である寸法Sよりも僅かに短い略同一寸法であるため、図7(d)~(f)に示されるように、扉5の開閉動作途中に案内移動軸M2が開口3Aよりも外側Cに突出することを防止して、案内アーム70に接触することによる怪我の発生を防止することができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、支持アーム機構6は、支持アーム60の一端に連結板66a、支持固定軸F1及び連結板66bを備えた固定軸支部66、他端に連結板69a、支持移動軸M1及び連結板66bを備えた移動軸支部69からなるいわゆる二軸蝶番構造の態様として説明したが、これに限らず、支持アームの両端部にピン(軸)が形成され該ピンがフレーム30または扉5に設けられた貫通孔(軸受)に挿通されて垂直軸回りに回動可能に軸支されていてもよく、支持アームの両端部に形成された貫通孔にフレーム30または扉5に設けられたピンが挿通されて垂直軸回りに回動可能に軸支されていてもよい。案内アーム70についても同様である。
【0056】
支持アーム機構6は、固定軸支部66の連結板66bが幅杆部材30a,30aに固定されている態様として説明したが、これに限らず、載置台38または底板に固定されていてもよく、開口3A側の縦杆部材30c,30cに渡設された梁材に固定されていてもよく、限定されるものではない。より詳しくは、支持アーム機構6(支持アーム60)及び案内アーム機構7(案内アーム70)の回動軌跡を確保して、支持固定軸F1を固定部に取り付け可能な構成であればよい。
【0057】
また、案内アーム70は、延設片71及び本体片72が案内移動軸M2によって連結されることで構成されている態様として説明したが、これに限らず、一部材で形成されたその両端部に案内移動軸及び案内固定軸を有する態様であってもよく、限定されるものではない。さらに、扉が内面側に延出する延出部を備え、該延出部に本体片72が案内移動軸M2によって連結されている態様であってもよい。
【0058】
また、案内アーム機構7は、フレーム側取付部材73が中央幅杆部材30eに固定されている態様として説明したが、これに限らず、中央奥行杆部材30dや中央幅杆部材30eに直接軸支されていてもよく、載置台38や底板に軸支されていてもよく、対角線上に位置する縦杆部材30c,30cに渡設される梁材等に軸支されていてもよく、限定されるものではない。より詳しくは、支持アーム機構6(支持アーム60)及び案内アーム機構7(案内アーム70)の回動軌跡を確保して、案内固定軸F2を固定部に取り付け可能な構成であればよい。
【0059】
展示筐体4及び基礎筐体3は、平面視矩形状である態様として説明したが、これに限らず、前記実施の形態で説明したように、開空間Aを閉鎖可能な扉105を支持アーム160及び案内アーム170を用いて側壁135の外側に開放可能な構成であればよいことから、その形状についても限定されるものではない。形状の一例として、図9(a)に示されるように、開口A1と側壁235とが略直交して配置されて内側B1と外側Cとを隔てる平面視直角三角形状の筐体203に本発明の扉205、支持アーム260及び案内アーム270から構成され内側B2と外側Cとを隔てる扉機構210が適用されていてもよく、図9(b)に示されるように、開口A2に対して略135度傾斜して配置された側壁335を有する略平面視八角形状の筐体303に本発明の扉305、支持アーム360及び案内アーム370から構成され内側B3と外側Cとを隔てる扉機構310が適用されていてもよく、図9(c)に示されるように、開口A3の一端部から他端部にかけて半円弧状に延設された側壁435を有する平面視半円状の筐体403に本発明の扉405、支持アーム460及び案内アーム470から構成される扉機構410が適用されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 展示ケース
3 基礎筐体
3A 開口
3B 内側
4 展示筐体
4A 開口
4B 内側
5 扉
6 二軸蝶番
7 案内アーム
10 扉機構
30 フレーム
35 側壁
60 支持アーム
105 扉
107 案内アーム
110 扉機構
135 側壁
160 支持アーム
A 開空間(開口)
B 内側
C 外側
A1~A3 開口
B1~B3 内側
F1 支持固定軸
F11 支持固定軸
F12 案内固定軸
F2 案内固定軸
L1 線分
L2 線分
M1 支持移動軸
M11 支持移動軸
M12 案内移動軸
M2 案内移動軸
T1 支持誘導軌跡
T11 支持誘導軌跡
T12 案内誘導軌跡
T2 案内誘導軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9