(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】防火戸
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221004BHJP
A62C 2/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E06B5/16
A62C2/06 502
(21)【出願番号】P 2018203674
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391008582
【氏名又は名称】昭和フロント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 章
(72)【発明者】
【氏名】小山 優貴
(72)【発明者】
【氏名】塩田 容子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-160955(JP,A)
【文献】特開2007-162379(JP,A)
【文献】特開2016-30955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 7/00-7/36
A62C 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、
前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、
前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、
第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、
前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されている
とともに、該凸部材を前記框部材と同じ素材で形成したことを特徴とする防火戸。
【請求項2】
左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、
前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、
前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、
第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、
前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されているとともに、該凸部材の先端には、第二戸先側框の凹溝の溝底に当接する緩衝材が取り付けられていることを特徴とする防火戸。
【請求項3】
左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、
前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、
前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、
第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、
前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されているとともに、該凸部材を前記框部材と同じ素材で形成する一方、凸部材の先端には、第二戸先側框の凹溝の溝底に当接する緩衝材が取り付けられていることを特徴とする防火戸。
【請求項4】
前記第一戸先側框及び第二戸先側框の内部にはそれぞれ、前記框部材よりも融点が高い金属材からなる同形状の補強材が配設されていることを特徴とする請求項1
~3の何れか1記載の防火戸。
【請求項5】
前記凸部材は、先端部が先細形状となっていることを特徴とする請求項1
~4の何れか1記載の防火戸。
【請求項6】
前記凸部材は、前記第一戸先側框の戸先側先端よりも突出した位置から先細形状となっていることを特徴とする請求項1~
5の何れか1記載の防火戸。
【請求項7】
前記第一戸先側框の凹溝には、前記凸部材を第一戸先側框に係止するための係止部が設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れか1記載の防火戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸式の防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火災時の延焼を防ぐための防火設備として、引戸式の防火戸が知られている。引戸式の防火戸では、閉鎖時に戸先同士又は戸先と縦枠とが突き合わされる突き合わせ部に間隙が生じないようにする構造、すなわち、戸体が閉鎖した際に開口部と直角の方向で火炎を遮る構造が採用されている。このような突き合わせ部の構造としては、例えば相じゃくり構造としたものや、定規縁を設けたもの等が知られている。また、特許文献1、2に記載された引分け式の防火戸では、突き合わせ部において、一方の戸先側框(縦框)に凹部、他方の戸先側框に凸部を設け、閉鎖時に凹部と凸部が重なり合うことで火炎を遮る構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-284544号公報
【文献】特開2017-31613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2に記載されたような凹凸構造を採用した場合、突き合わされる戸先側框の形状が左右でそれぞれ異なるため、生産性に問題があるのみならず、火災時に一方の戸先側框の方が熱変形しやすくなり、その結果として間隙が生じて防火性能が低下することが懸念される。特に、一般的な鋼材よりも融点が低いアルミニウム材を戸先側框に用いたような場合に、その懸念は大きくなる。防火戸の突き合わせ部に凹凸構造を採用しつつ、戸先側框の耐火性や生産性を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため鋭意創作されたものであって、請求項1の発明は、左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されているとともに、該凸部材を前記框部材と同じ素材で形成したことを特徴とする防火戸である。
請求項2の発明は、左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されているとともに、該凸部材の先端には、第二戸先側框の凹溝の溝底に当接する緩衝材が取り付けられていることを特徴とする防火戸である。
請求項3の発明は、左右方向にスライド移動可能であり、互いの戸先が突き合わされて開口部を閉鎖する一対の戸体として、第一戸体及び第二戸体を備え、前記第一戸体及び第二戸体は、戸先にそれぞれ第一戸先側框、第二戸先側框を備えた、引分け式の防火戸において、前記第一戸先側框及び第二戸先側框は、上下方向に長尺な凹溝を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材からなり、第一戸先側框の凹溝には、第一戸体の戸先側に向けて第一戸先側框の凹溝から突出した凸部材が取り付けられており、前記凸部材は、第一戸体と第二戸体との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框の凹溝内に入り込むよう構成されているとともに、該凸部材を前記框部材と同じ素材で形成する一方、凸部材の先端には、第二戸先側框の凹溝の溝底に当接する緩衝材が取り付けられていることを特徴とする防火戸である。
請求項4の発明は、前記第一戸先側框及び第二戸先側框の内部にはそれぞれ、前記框部材よりも融点が高い金属材からなる同形状の補強材が配設されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1記載の防火戸である。
請求項5の発明は、前記凸部材は、先端部が先細形状となっていることを特徴とする請求項1~4の何れか1記載の防火戸である。
請求項6の発明は、前記凸部材は、前記第一戸先側框の戸先側先端よりも突出した位置から先細形状となっていることを特徴とする請求項1~5の何れか1記載の防火戸である。
請求項7の発明は、前記第一戸先側框の凹溝には、前記凸部材を第一戸先側框に係止するための係止部が設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れか1記載の防火戸である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、第一戸先側框及び第二戸先側框の框部材を共通のものとしたうえで凹凸構造を採用することができるため、耐火性・生産性に優れるとともに、防火戸の開放時に凸部材が露出しても違和感が少なく、意匠性に優れる。
請求項2の発明とすることにより、第一戸先側框及び第二戸先側框の框部材を共通のものとしたうえで凹凸構造を採用することができるため、耐火性・生産性に優れるとともに、指詰めに配慮したものとすることができる。
請求項3の発明とすることにより、第一戸先側框及び第二戸先側框の框部材を共通のものとしたうえで凹凸構造を採用することができるため、耐火性・生産性に優れるとともに、防火戸の開放時に凸部材が露出しても違和感が少なく、意匠性に優れ、さらに、指詰めに配慮したものとすることができる。
請求項4の発明とすることにより、各戸先側框内の補強材同士も同形状とすることができるため、耐火性・生産性に優れる。
請求項5の発明とすることにより、指詰めに配慮したものとすることができる。
請求項6の発明とすることにより、指詰めに配慮しつつ、凹溝内での間隙を可及的に少なくすることができる。
請求項7の発明とすることにより、第一戸先側框及び第二戸先側框の框部材を共通のものとしたうえで凹凸構造を採用することができるため、耐火性・生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】突き合わせ部の動作を示す説明図であって、(A)開放時、(B)閉鎖時のものである。
【
図5】片開き戸に用いられた場合の例を示す要部平面断面図である。
【
図6】(A)実施形態に係る防火戸の変形例を示す要部平面断面図、(B)本発明との対比例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。1は、引戸式の防火戸であって、躯体の開口部に設けられている。防火戸1は、左右方向(見付方向)にスライド移動して開口部を開閉可能な左右一対の引き分け式の戸体として、第一戸体20及び第二戸体30と、開口部の開放時に各戸体20、30と前後(見込方向)に重なり合う一対のFIX部3と、各戸体20、30及びFIX部3の上端部に左右方向全域にわたって設けられた無目4と、を備えている。また、本実施形態に係る防火戸1はいわゆる自動ドア式のものであり、無目4の内部には、各戸体20、30をスライド移動させて開口部を開閉させるための駆動部5と、左右方向に長尺なレール部6とが配されている。各戸体20、30は、その上端部に取り付けられたドアハンガー7を介してレール部6に吊り下げられていて、駆動部5の駆動に基づいて左右方向にスライド移動することで開口部を開閉するよう制御されている。なお、躯体の外部側を前方、内部側を後方として説明するが、便宜上のものであってこれに限定されるものではない。
【0009】
本実施形態では、正面視で右側の戸体を第一戸体20、左側の戸体を第二戸体30とする。第一、第二戸体20、30は、自動式吊戸であって、パネル体である耐熱ガラス2aの四周をアルミニウム材からなる框2bにより囲繞されて構成されている。第一、第二戸体20、30の四周の框2bのうち、上框8、戸尻側框10、下框11は互いに左右対称となった共通な構造が採用されている。上框8にはハンガーローラ7aを有するドアハンガー7が上端部に取り付けらており、ハンガーローラ7aが左右方向に滑動可能にレール部6のレール6bに支持されることで、各戸体20、30が左右方向にスライド移動可能に吊り下げられている。
【0010】
他方、戸先側の框については、第一戸体20のものを第一戸先側框21、第二戸体30のものを第二戸先側框31とし、各戸体20、30の突き合わせ時の防火性能のために、以下の構造が採用されている。第一戸先側框21及び第二戸先側框31はいずれも、上下方向に長尺な凹溝22、32を戸先同士の対向面に備えた、同形状の框部材2eによって構成されている。各戸体20、30は、各戸先側框21、31の端部同士が突き合わされることで開口部を閉鎖することとなるが、第一戸先側框21の凹溝22には、第一戸体20の戸先側(右側)に向けて凹溝22から突出した凸部材40が取り付けられている。そして、第一戸体20と第二戸体30との戸先同士が突き合わされた際に、第二戸先側框21の凹溝32内に凸部材40が入り込むようになっている。これによって、戸先同士の突き合わせ部に間隙が生じてしまうことを防止できるため、防火戸1の防火性能を確保することができる。
【0011】
框部材2eは、長尺なアルミニウム材からなり、第一戸先側框21、第二戸先側框31に共通に用いられる主要部材である。框部材2eは平面視で線対称な形状となっているため、対向する第一戸先側框21、第二戸先側框31に共通して用いることができる。框部材2eの戸先端側は、各戸先側框21、31における凹溝22、32が設けられていて、断面略コ字形状を形成している。そして、凹溝22、32の内周には、溝底から僅かに戸先端側の位置に、内側に向けて突出した係止凸部2fが設けられている。この係止凸部2fは、後述するように凸部材40の後端係止部42と係合することにより、第一戸先側框21に凸部材40を取り付け可能とする係止部である。なお、係止凸部2fは上下方向全域にわたって設けてもよいし、一部に設ける、断続的に設ける等としてもよい。
【0012】
凸部材40は、框部材2eと同様にアルミニウム材からなり、先細形状の先端部41と、框部材2eの係止凸部2fと係合する後端係止部42と、を備えている。そして、凸部材40の先端部41にはさらに、第二戸先側框31の凹溝32の溝底に緩衝して当接するための緩衝材43が取り付けられている。このように、凸部材40の先端部41を先細形状としたり、緩衝材43を取り付けたりすることにより、防火性能を確保しつつ指詰め等に配慮された構造となっている。また、凸部材40と框部材2eを同じ素材で形成することで、防火戸1の開放時に露出する凸部材40が目立たず、意匠性に優れる。
【0013】
本実施形態における凸部材40は、前後方向に突出した後端係止部42の突出元の部分から、先端部41に向けて先細形状となっている。組付け時には、後端係止部42を第一戸先側框21の溝底22内の係止凸部2fと溝底のあいだに挿通させることで、第一戸先側框21に凸部材40を取り付けることができるようになっている。また凸部材40は、防火戸1の閉鎖時に、第二戸先側框31の溝底32に緩衝材43が当接するよう設計されている。すなわち、凸部材40の左右長さ(突出方向の長さ)は、緩衝材43まで含めると、凹溝22、32の深さの2倍程度となっている。
【0014】
以上のように、第一戸先側框21、第二戸先側框31に共通の框部材2eを用い、一方の第一戸先側框21にのみ凸部材40を取り付ける構造とすることで、凸部材40と凹溝32との凹凸構造による遮断効果を発揮しつつ、生産性を向上することができるとともに、戸先側框同士の熱変形の差異も抑止することができるようになっている。
【0015】
下框11には、下方に突出した振れ止め2dが設けられている。振れ止め2dは、戸体20、30の下方に左右方向長尺に設けられたガイドレールGの凹溝内に左右方向にスライド移動自在に挿入されて、前後方向の移動が規制される。これによって、上部で吊り下げられた戸体20、30が駆動部5の駆動に基づいて左右にスライド移動するに際して、戸体20、30の下部が前後方向に振れてしまうことを抑止するようになっている。
【0016】
上框8は、上端部8aが無目4の下部開口4aから無目4内部に入り込むよう組み付けられている。そして、上框8、第一、第二戸先側框21、31及び戸尻側框10には、その内部に軟鋼からなる断面略コ字状の補強材2cが各見付面に沿って配設されている。補強材2cはアルミニウム材からなる框2bよりも融点が高く、熱伝導率が低い材料である軟鋼からなるため、補強材2cを配することで防火戸1の耐火性が向上することとなる。なお、補強材2cを下框11にも同様に配設してもよい。ここで、第一戸先側框21と第二戸先側框31とは、いずれも同形状の框部材2eからなるため、その内部に配される補強材2cの形状も同形状のものとすることができるようになっている。
【0017】
FIX部3は、耐熱ガラス3aが、上端部を無目4に、下端部を幅木12に、左右方向中央側端部を中間方立13に、他端部を開口部の左右端部に設けられた縦枠14に、それぞれ挿入・シーリング固定されて四周を囲繞された構成となっている。戸体20、30とFIX部3とは、前後に位置ずれして配されており、FIX部3が前側(躯体の外部側)に位置するよう構成されている。これによって、戸体20、30が左右にスライド移動するに際し、開口部の開放時には、戸体20、30とFIX部3とが前後に重なり合うようになっている。
【0018】
躯体の開口部の左右両端部に対向して設けられた一対の縦枠14は、各部材を挿入して取り付けるための上下方向に長尺な凹溝状の挿入部として、前側から順に第一挿入部14a、第二挿入部14b及び第三挿入部14cを備えている。本実施形態では、第一挿入部14aにはFIX部3の耐熱ガラス3aの左右外端部が挿入されシーリングされている一方、第二挿入部14b及び第三挿入部14cはそれぞれ第二カバー部材14d、第三カバー部材14eによって覆蓋されている。第二挿入部14bは、無目4の上部に欄間部を設ける場合に、欄間部の耐熱ガラス等のパネルを挿入固定するために用いることができる。また、第三挿入部14cは、
図5に示されるように、片開き式の開き戸とした場合に、戸体の戸先端部(本実施形態の凸部材40)を挿入可能とすることができるものである。この場合には、第一挿入部14aが第一カバー部材14fに、第二挿入部14bが第二カバー部材14dに、それぞれ覆蓋されている。他方、第一挿入部14aには凸部材40が入り込み、その溝底に緩衝材43が当接するようになっている。このような構造の縦枠14は、種々の構造において採用することができるため、汎用性が高い。
【0019】
戸尻側框10と中間方立13とは、戸体20、30が閉鎖位置にあるときに前後に重なり合うように設計されている。戸尻側框10には、その戸尻端部からFIX部3側(外部側)に向けて鉤状に延出した煙返し部10aが設けられている一方、中間方立13にも戸尻側框10側(内部側)に向けて鉤状に延出した煙返し部13aが設けられている。そして、戸体20、30が閉鎖位置にあるときに、これら煙返し部10a、13a同士が相じゃくり構造をとることにより、火災時に戸体20、30とFIX部3とのあいだから火炎や煙が通過しないように配慮されている。
【0020】
無目4は、各戸体20、30の上部と上枠19とのあいだに設けられ、外周部としてアルミニウム材からなるケース体15を備えており、その内部に駆動部5やレール部6が配設されている。駆動部5は、図示しない検知センサにより防火戸1への人等の近接を感知することにより、戸体20、30を開方向に移動させるよう制御されている。本実施形態における駆動部5は、電動モータの動力を伝達されたチェーンを変位させることで、チェーンに連結されたドアハンガー7を介して戸体20、30をスライド移動させるよう構成された一般的なものとしているが、これに限られず、適宜のものとすることができる。また、無目4の後面には着脱可能なカバー部材18が設けられており、カバー部材18を開閉することにより無目4内部の駆動部5やレール部等の点検や調節等が可能となっている。
【0021】
框部材2e及び凸部材40の変形例として、
図6(A)に示すものとすることができる。この変形例では、框部材2eの凹溝22、32の溝底が第一実施形態のものより深くなっている。また凸部材40の左右長さは、突き合わせ時の各凹溝22、32の溝底間の左右長さに近くなるため、第一実施形態のものよりも長くなっている。そして、凸部材40の形状は、前後方向に突出した後端係止部42を有する後端部から、凹溝22の先端近傍までは先細形状とならず真っ直ぐに延出した直線部44を有し、その先から先細形状となっている。このように凹溝の深さを深くし、凸部材40の左右長さをそれに応じて長くすることで、第一戸体20と第二戸体30の突き合わせ時のかかり代を長くすることができ、防火性能が向上する。また、凸部材40の先端部41が、第一戸先側框21の戸先側先端よりも突出した位置から先細形状となっていることにより、間隙が生じてしまうことを可及的に避けることができる。
【0022】
叙述の如く構成された本発明の実施形態によれば、防火戸1は、第一戸先側框21及び第二戸先側框31が上下方向に長尺な凹溝22、32を戸先同士の対向面に備えた同形状の框部材2eからなり、第一戸先側框21の凹溝22には、第一戸体20の戸先側に向けて凹溝22から突出した凸部材40が取り付けられており、第一戸体20と第二戸体30との戸先同士が突き合わされた際に、凸部材40が第二戸先側框31の凹溝内に入り込むよう構成されている。これによって、戸先側框の框部材を共通のものとしながら、凹凸構造による防火性能を確保することができるため、耐火性・生産性に優れたものとなっている。また、第一、第二戸先側框21、31に共通の框部材2eが用いられているため、その内部に框部材2eよりも融点が高い金属材からなる補強材2cを配設するに際し、互いに同形状の補強材2cを用いることができる。
【0023】
この点、
図6(B)で示される対比例のように、左右の戸先側框100、101で框部材の形状が異なるものとした場合、戸先側框の前後面は外観上同形状であることが求められる結果、補強材102、103も左右で異なる形状にせざるを得ないことになる。そうすると、左右の戸先側框100、101で耐火性が異なり、一方にのみ熱変形が生じて防火性能が維持できなくなるといった事態が懸念される。本発明ではこうした問題点が解消されている。
【0024】
また、本実施形態において、凸部材40は先端部41が先細形状となっており、その先端には第二戸先側框31の凹溝32の溝底に当接する緩衝材43が取り付けられており、指詰めに配慮されたものとなっている。
図6(A)の変形例においては、凸部材40の先端部41が、第一戸先側框21の戸先側先端よりも突出した位置から先細形状となっていることにより、間隙が生じてしまうことを可及的に避けられる。
【0025】
さらに、凸部材40は框部材2eと同じ素材であるアルミニウム材で形成されているため、防火戸1の開放時に凸部材40が露出した場合であっても違和感が少なく、意匠性に優れる。
【0026】
上記実施形態においては、いわゆる自動ドアについて説明したが、これに限られず、駆動部を有さない、手動開閉式の防火戸においても本発明を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、防火設備に係る分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 防火戸
2c 補強材
2e 框部材
2f 係止凸部(係止部)
20 第一戸体
21 第一戸先側框
22 凹溝
30 第二戸体
31 第二戸先側框
32 凹溝
40 凸部材
41 先端部
43 緩衝材