(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20221004BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F04C29/12 E
F04C25/02 L
(21)【出願番号】P 2018237077
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 崇寛
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044606(JP,A)
【文献】特開2009-041548(JP,A)
【文献】実開昭62-189861(JP,U)
【文献】特開2011-214519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 25/02
F04C 18/344
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、
前記ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、
大気開放された排気口を含み、前記ポンプ室から前記排気口に気体を導く排気通路と、
前記ポンプ室への気体の吸込及び前記ポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
前記排気口を閉塞可能な弁体と、
前記弁体を支持するための支持部と、を備えるバキュームポンプであって、
前記支持部は、前記バキュームポンプの非浸水時に前記排気口が開放されるよう、前記弁体を前記排気口から離間して前記弁体をノーマルオープン状態にて支持する
バキュームポンプ。
【請求項2】
ポンプ室と、
前記ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、
大気開放された排気口を含み、前記ポンプ室から前記排気口に気体を導く排気通路と、
前記ポンプ室への気体の吸込及び前記ポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
前記排気口を閉塞可能な弁体と、
前記弁体を支持するための支持部と、
を備え、
前記弁体は、前記支持部に支持された状態において前記排気口から離間し、
前記排気口は、下方に向けて開口しており、
前記弁体は、前記支持部に支持された状態において前記排気口の下方に位置し、
前記弁体の比重は1未満である
、
バキュームポンプ。
【請求項3】
前記支持部は、前記ポンプ室、前記吸気通路及び前記排気通路を形成するポンプケーシングの少なくとも一部と同一材料で一体的に形成されている
請求項
1又は2に記載のバキュームポンプ。
【請求項4】
前記支持部は、前記弁体を支持した状態で前記排気口と前記バキュームポンプの外部とを連通する切り欠き部を含む
請求項
1~3の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項5】
前記弁体は、球状に形成された
請求項
1~4の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項6】
前記排気口の出口部は、排気の下流側に向けて拡開するテーパ状に形成されている
請求項
1~5の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項7】
前記排気口の周囲を覆う排気口カバー部をさらに備えている
請求項
1~6の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項8】
前記支持部は、前記排気口カバー部の下端部に設けられ、前記排気口カバー部と同一材料で一体的に形成されている
請求項
7に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバキュームポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるように、自動車等の車両におけるブレーキブースターの負圧室内を負圧にするために、バキュームポンプが用いられる場合がある。バキュームポンプは、ポンプ室と、ポンプ室への気体の吸込及びポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のバキュームポンプは、車両のエンジンルームに搭載されることが多いが、場合によっては地面に近い場所に搭載されることもあり、搭載場所によっては車両が深い水溜まりを走行する際にバキュームポンプが浸水することがある。バキュームポンプが浸水した場合、排気口から侵入した液体がポンプ室に流入すると、可動部が正常に動作できなくなり、ポンプ作用を発揮できなくなる恐れがある。特に、バキュームポンプが動作を終えた際(ポンプ電源OFF直後)には、ポンプ室及び消音室内が負圧である為、排気口から大気を吸込むことでポンプ室内を大気圧に戻そうとする。この為、仮にバキュームポンプが浸水した状態で動作を終えた場合、排気口から液体が吸い込まれやすい。
【0005】
この点、特許文献1には、バキュームポンプが浸水することによる影響及びその対策に関する知見は開示されていない。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、バキュームポンプの浸水時に排気口から液体が侵入することを抑制できるバキュームポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るバキュームポンプは、
ポンプ室と、
ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、
大気開放された排気口を含み、ポンプ室から排気口に気体を導く排気通路と、
ポンプ室への気体の吸込及びポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
排気口を閉塞可能な弁体と、
を備えている。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
バキュームポンプは、弁体を支持するための支持部を更に備え、
弁体は、支持部に支持された状態において排気口から離間していてもよい。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
排気口は、下方に向けて開口しており、
弁体は、支持部に支持された状態において排気口の下方に位置し、
弁体の比重は1未満であってもよい。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、
支持部は、ポンプ室、吸気通路及び排気通路を形成するポンプケーシングの少なくとも一部と同一材料で一体的に形成されていてもよい。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)~(4)の何れか一つの構成において、
支持部は、弁体を支持した状態で排気口とバキュームポンプの外部とを連通する切り欠き部を含んでいてもよい。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)~(5)の何れか一つの構成において、
弁体は、球状に形成されていてもよい。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)~(6)の何れか一つの構成において、
排気口の出口部は、排気の下流側に向けて拡開するテーパ状に形成されていてもよい。
【0014】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れか一つの構成において、
バキュームポンプは、排気口の周囲を覆う排気口カバー部をさらに備えていてもよい。
【0015】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
支持部は、排気口カバー部の下端部に設けられ、排気口カバー部と同一材料で一体的に形成されていてもよい。
【0016】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
バキュームポンプは、弁体を排気口に向けて付勢する付勢部材をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、バキュームポンプの浸水時に排気口から液体が侵入することを抑制できるバキュームポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係るバキュームポンプ2を示す概略的な分解斜視図である。
【
図2】
図1に示したバキュームポンプ2の一部切り欠き断面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示したバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
【
図4】トップカバー44を取り外した状態におけるバキュームポンプ2の上面図である。
【
図5】一実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図であり、(A)は排気口14の開状態を示し、(B)は排気口14の閉状態を示す。
【
図6】一実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図であり、(A)はポンプ作動時における排気口14の状態を示し、(B)はポンプ停止直後における排気口14の状態を示す。
【
図7】他の実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るバキュームポンプ2を示す概略的な分解斜視図である。
図2は、
図1に示したバキュームポンプ2の一部切り欠き断面図である。
図3は、
図1及び
図2に示したバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
図4は、トップカバー44を取り外した状態におけるバキュームポンプ2の上面図である。図示する例示的なバキュームポンプ2は、自動車等の車両におけるブレーキブースター(マスターバック)の負圧室内を負圧にするための電動バキュームポンプである。以下において「上」及び「下」とは、バキュームポンプ2が車両に設置された状態における「上」及び「下」を意味するものとして説明する。なお、例えば、後述するロータ38の回転軸方向においてトップカバー44側を上、モータ66側を下として上下を規定してもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、バキュームポンプ2は、ポンプ室5と、ポンプ室5に気体を導くための吸気通路6と、大気開放された排気口14を含み、ポンプ室5から排気口14に気体を導く排気通路8と、ポンプ室5への気体の吸込及びポンプ室5からの気体の吐出を行うための可動部4と、排気口14を閉塞可能な栓としての弁体90と、を備えている。また、バキュームポンプ2は、可動部4を収容するポンプケーシング10を備えている。
【0022】
ポンプケーシング10は、可動部4を収容するポンプケーシング本体16と、ポンプケーシング本体16とは別体で設けられ、可動部4の一方側(図示する形態ではロータ38の上側)を覆うポンプカバー18と、ポンプカバー18の上側を覆うトップカバー44と、ポンプケーシング本体16とモータ66との間に設けられ、ポンプケーシング本体16の下側を覆うボトムカバー68とを含む。
図1及び
図2に示すように、ポンプケーシング本体16とポンプカバー18とは分離可能な別部品として構成されて締結部材としてのボルト46により締結される。ポンプカバー18とトップカバー44とは別体で設けられ、トップカバー44、ポンプカバー18及びポンプケーシング本体16は、締結部材としてのボルト48(
図1参照)により共締めされる。ボトムカバー68とポンプケーシング本体16とは別体で設けられ、締結部材としてのボルト49(
図1参照)により締結される。
【0023】
可動部4は、ポンプ室5内に配置され、駆動装置としてのモータ66によって駆動される。この可動部4は、外周面32に複数のスリット36が形成されたロータ38と、複数のスリット36にそれぞれ配置された複数のベーン40と、を含む。ポンプケーシング10のポンプケーシング本体16は、ロータ38の外周面32と対向するカム面42を含む。
【0024】
このように、図示する例示的形態では、バキュームポンプ2はベーン式の電動バキュームポンプとして構成されており、モータ66の不図示のシャフトに連結されたロータ38をモータ66によって回転させることで、ロータ38のスリット36に沿ってベーン40が遠心力でロータ38の径方向外側に向けて移動し、ベーン40の先端部13がカム面42上を摺動する。なお、
図1及び
図2では、ロータ38の軸方向において、トップカバー44側が上側であり、モータ66側が下側である。図示する例示的なバキュームポンプ2では、軸方向において、下側から順に、モータ66、ボトムカバー68、ポンプケーシング本体16、ロータ38、ポンプカバー18及びトップカバー44が配置される。
【0025】
図2に示すように、ボトムカバー68には不図示のブレーキブースターの負圧室から吸気を行うための吸気管部70が設けられる。ポンプカバー18は、吸気通路6からポンプ室5に気体を流入させるように構成された吸気口34を含んでおり、吸気管部70を介して吸気通路6に取り込まれた気体は、ポンプカバー18の吸気口34を介してポンプ室5に流入する。
【0026】
排気通路8は、ポンプケーシング本体16とボトムカバー68との間に形成された拡張型吸音器としての消音室72(拡張室)と、ポンプカバー18とトップカバー44との間に形成された拡張型吸音器としての消音室74(拡張室)とを含む。消音室72には、ポンプケーシング本体16に形成された不図示の吐出口を介してポンプ室5の排気が吐出される。消音室72を通った排気は、ポンプケーシング本体16とポンプカバー18とを貫通する貫通穴76を介して消音室74に流入する。消音室74に流入した排気は、排気口14を通って排気口カバー部12の後述する貫通穴22の下端からポンプケーシング10の外部に排出される。
【0027】
図5は、一実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図であり、(A)はバキュームポンプ2の非浸水時における排気口14の開状態を示し、(B)はバキュームポンプ2の浸水時における排気口14の閉状態を示す。
弁体90は、排気口14の状態を、例えば
図5(A)に示す開状態と、
図5(B)に示す閉状態とに切り替え可能に構成されている。開状態は、弁体90が排気口14から離間して排気通路8内の空間と外気とがバキュームポンプ2の排気側で連通した状態である。閉状態は、弁体90が排気口14に当接して排気口14を閉塞し、排気通路8内の空間と外気とがバキュームポンプ2の排気側で連通していない状態である。
【0028】
かかる構成によれば、
図5(B)に示すように、バキュームポンプ2が浸水した場合であっても、排気口14を弁体90が閉塞することにより、排気口14から排気通路8を介してポンプ室5に水が侵入することを抑制することができる。これにより、バキュームポンプ2の浸水時に水が可動部4の動作に影響を与えることを抑制することができる。
【0029】
具体的には、排気口14を介してポンプ室5内に液体が侵入した場合、ベーン40の表面に液体が付着するとベーン40がスリット36に沿ってスムーズに移動しにくくなり、ポンプ作用を安定的に発揮できなくなってしまう。この点、上記構成のバキュームポンプ2では、ベーン40の表面に液体が付着することを抑制してベーン40をスムーズに移動させることができるので、ポンプ機能を安定的に発揮することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば
図1~
図3、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、バキュームポンプ2は、弁体90を支持するための支持部92を更に備えていてもよい。この場合、例えば
図2及び
図3に示すように、弁体90は、支持部92に支持された状態において排気口14から離間していてもよい。すなわち、支持部92は、通常時(バキュームポンプ2の非浸水時)において排気口14を開状態とする所謂ノーマルオープンの状態に弁体90を支持するように構成されてもよい。
【0031】
このようにすれば、弁体90は、支持部92に支持された状態において排気口14から離間しているため、例えば寒冷地等の低温環境において凍結により弁体90が排気口14に固着して排気が吐出不能となることを抑制することができる。また、弁体90が排気抵抗に与える影響を抑制してポンプ性能の低下を抑制することができることに加え、例えば、弁体90を作動させるためのばね等を設置するスペースを必要とすることがない。さらに、ベーン式回転ポンプの場合でも排気脈動によって弁体90が開閉を繰り返すことがないため、弁体90と排気口14との打音が発生することを抑制することができる。さらにまた、低温環境においても、凍結によって弁体90と排気口14とが固着して排気の吐出ができない状況になることを抑制することができるため、ポンプ室5の破損を抑制することができる。なお、本発明者らによる上記構成のポンプ性能への影響に関する鋭意研究によれば、弁体90の打音に関して問題ないことが確認されている。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば
図1~
図3、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、排気口14は、下方に向けて開口していてもよい。この場合、弁体90は、支持部92に支持された状態において排気口14の下方に位置してもよく、弁体90の比重は1未満であってもよい。弁体90は、例えば樹脂により形成されていてもよい。
【0033】
このように、下方に向けて開口した排気口14の下方に比重が1未満の弁体90が位置する構成によれば、バキュームポンプ2が浸水すると、排気口14の下方に配置された弁体90が
図5(B)に示すように浮力によって浮上し、弁体90の上方に位置する排気口14が弁体90によって閉塞する。一方、バキュームポンプ2が浸水した状態が解消すると弁体90が下降し、
図5(A)に示すように排気口14の下方において支持部92に支持される。従って、浸水時又は非浸水時に弁体90を移動させるための動力源を別に要することなく、弁体90による排気口14の開閉を容易に切り替えることができる。また、バキュームポンプ2が浸水していない通常時には、排気口14が弁体90によって閉塞されない所謂ノーマルオープンの開閉機構が簡素な構成で実現される。よって、排気抵抗の増大を抑制することができるとともに、低温環境において凍結により弁体90が排気口14に固着されて排気が吐出不能となることを抑制することができる。なお、弁体の比重を1よりも十分に低く設定することにより、排気口14を閉じる際における弁体90の応答速度の向上を図ることができる。
【0034】
ここで、バキュームポンプ2を作動状態から非作動状態に切り替えることに伴う弁体90の動作について説明する。
図6は、一実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図であり、(A)はポンプ作動時における排気口14の状態を示し、(B)はポンプ停止直後における排気口14の状態を示す。
図6(A)に示すように、バキュームポンプ2の作動時には、排気口14から排気が排出されるため、液体が排気口14に侵入することが排気圧によって抑制される。その後にバキュームポンプ2が動作を終えた際(ポンプ電源オフ直後、すなわちモータ66の停止直後)には、
図6(B)に示すように、ポンプ室5、消音室72及び消音室74の圧力が負圧であるため、排気口14からの排気の吐出がストップすると、排気口14から空気がポンプ内に吸い込まれる。この負圧によって弁体90が排気口14に引き付けられて排気口14が閉状態となるため排気口14への液体の侵入が抑制される。また、ポンプ停止直後に粉塵や異物が排気口14から侵入することを抑制することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、例えば
図2及び
図3に示すように、支持部92は、ポンプ室5、吸気通路6及び排気通路8を形成するポンプケーシング10の少なくとも一部と同一材料で一体的に形成されていてもよい。すなわち、ポンプケーシング10の少なくとも一部と支持部92とは、分離不能な一部品として同一材料で構成されていてもよい。図示する形態では、支持部92とポンプケーシング本体16とが同一材料で一体的に構成されている。
この構成によれば、弁体90を支持する支持部92がポンプケーシング10の少なくとも一部と同一材料で一体的に形成されるから、部品点数の増加を抑制しつつ、バキュームポンプ2の浸水時に水が可動部4の動作に影響を与えることを抑制することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば
図2~
図5に示すように、バキュームポンプ2は、排気口14の周囲を覆う排気口カバー部12を備えていてもよい。排気口カバー部12は、例えば
図1~
図3に示すように、ポンプケーシング10の少なくとも一部と同一材料で一体的に構成してもよい。すなわち、ポンプケーシング10の少なくとも一部と排気口カバー部12とは、分離不能な一部品として同一材料で構成されていてもよい。
【0037】
このように排気口カバー部12を備えた構成によれば、排気口14の周囲が排気口カバー部12で覆われることにより、排気口14に水しぶき等の液体がかかることを抑制することができるため、排気口14の腐食を抑制するとともに該液体の凍結に起因する排気口14の閉塞を抑制することができる。また、排気口14が直接外気や走行中に受ける冷気に晒されにくくなるため、排気口14の凍結による閉塞を効果的に抑制することができる。したがって、排気口14の口径を小さくして排気騒音を抑制しつつ、バキュームポンプ2のポンプ性能の低下を抑制することができる。また、飛石等による排気口14の変形及び破損を抑制することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とは、同一材料で一体的に構成される。すなわち、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とは分離不能な一部品として同一材料で構成される。
【0039】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とを同一材料で一体的に構成することにより、部品点数の増加及び排気口14の腐食や凍結を抑制する上述の効果に加えて、排気口カバー部12の高い剛性を実現し、振動等に起因する排気口カバー部12の変形を抑制することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、ポンプカバー18は、排気口14を形成する排気管部20を含み、排気口カバー部12は、排気管部20が挿通された貫通穴22を含む。このように、ポンプケーシング10は、排気管部20と排気口カバー部12とを有する二重管構造59を含む。図示する形態では、排気管部20はポンプカバー18の下側の面39から下方に向かって突出するように設けられており、排気口14及び貫通穴22の各々は、上下方向に沿って延在する。貫通穴22の下端78は大気開放されている。ここで、排気管部20の長さは貫通穴22の長さよりも短く設定されており、排気管部20の先端79は貫通穴22の途中に位置する。
【0041】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16と一体的に構成された排気口カバー部12の貫通穴22にポンプカバー18の排気管部20を挿通することにより、排気管部20及び貫通穴22をポンプケーシング本体16に対するポンプカバー18の位置決め手段として利用することができる。また、排気管部20の長さが貫通穴22の長さよりも短く設定されているため、排気口14に水しぶき等の液体がかかることを効果的に抑制することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、排気管部20の外周面50は、排気口カバー部12の貫通穴22と嵌合するインロー部としての大径部52を含む。図示する形態では、排気管部20の外周面50は、円形の断面形状を有する大径部52と、大径部52に対して排気管部20の先端側に設けられ、円形の断面形状を有する小径部56とを含む。小径部56の直径は大径部52の直径よりも小さく、小径部56と大径部52とは段差面54を介して接続される。貫通穴22は、円形の断面形状を有して大径部52と嵌合する大径部60と、大径部60に対して段差面62を介して接続され、小径部56と対向して配置され、大径部60よりも直径が小さい小径部64とを含む。排気管部20の段差面54が貫通穴22の段差面62に突き当てられた状態で排気管部20の大径部52が排気口カバー部12の大径部60に嵌合することで、インロー構造28が構成される。
【0043】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16に対するポンプカバー18の位置決めを精度よく行うことができる。このため、ポンプカバー18をポンプケーシング本体16に組み付ける際に、
図4に示すようにポンプ室5に対する吸気口34の位置を容易に精度よく設定することができる。したがって、バキュームポンプ2の組立を容易にするとともにポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば
図2及び
図3に示すように、支持部92は、排気口カバー部12の下端部に設けられ、排気口カバー部12と同一材料で一体的に形成されていてもよい。すなわち、排気口カバー部12と支持部92とは、分離不能な一部品として同一材料で構成されていてもよい。なお、図示する形態では、支持部92は、排気口カバー部12とともにポンプケーシング本体16と同一材料で一体的に構成されている。
このように、弁体90を支持する支持部92を排気口カバー部12と同一材料で一体的に形成することにより、部品点数の増加を抑制しつつ、排気口14から液体が侵入することを抑制できるバキュームポンプ2を提供することができる。また、排気口カバー部12の貫通穴22を、支持部92と排気口14との間で弁体90の移動をガイドするガイド部として機能させることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図5(A)に示すように、支持部92は、弁体90を支持した状態で排気口14とバキュームポンプ2の外部とを連通する切り欠き部94を含んでいてもよい。切り欠き部94は、上下方向に延在するスリットとして構成されていてもよい。このような切り欠き部94は、例えば排気口カバー部12から下方に向けて垂下された爪状の支持部92によって形成されていてもよい。支持部92に形成される切り欠き部94の数は任意であってよく、例えば1本であってもよいし、2本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0046】
このように支持部92が切り欠き部94を含む構成によれば、弁体90が支持部92に支持された状態で排気口14からの排気を外部に排出することができる。また、切り欠き部94を介して排水することができるため、支持部92に水が溜まることを抑制できる。したがって、支持部92に溜まった水の凍結に起因して弁体90が支持部92に固着してしまうことを抑制することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、例えば
図1~
図3に示すように、弁体90は、球状に形成されていてもよい。球状に形成された弁体90の直径は、排気管部20の内径すなわち排気口14の直径よりも大きく設定される。その際、弁体90の直径は、長期の使用による摩耗や変形によっても排気口14の径以下とならないように、排気口14の開閉に必要とされる応答速度や耐摩耗性等を考慮して決定される弁体90の材質に応じて任意に設定され得る。
このように弁体90を球状に形成することにより、バキュームポンプ2の姿勢が変化しても弁体90がスムーズに移動できるので、バキュームポンプ2の浸水時にバキュームポンプ2の姿勢によらずに速やかに排気口14を閉塞することができる。
なお、他の実施形態における弁体90の形状は、例えば円錐形状、円錐台形状、ロケット型、又は樽型等であってもよく、排気口14を塞ぐことができる形状であればよい。
【0048】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、排気管部20の出口部15の内周面は、排気の下流側に向けて拡径するテーパ状に形成されていてもよい。
このように排気口14の出口部15の内周面をテーパ状に形成することにより、弁体90の中心と排気口14の軸線とがずれた状態で弁体90が排気口14に当接しても、テーパに沿って弁体90が移動することにより弁体90の中心と排気口14の軸線とのずれを低減することができる。したがって、排気口14をより確実に閉塞して、排気口14からの水の侵入を抑制することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、例えば
図7に示すように、バキュームポンプ2は、弁体90を排気口14に向けて付勢する付勢部材98をさらに備えていてもよい。付勢部材98は、例えばコイルばねや板ばね等のばねを含んでいてもよい。
このように付勢部材98を備えた構成によれば、付勢部材98により、弁体90が排気口14に付勢されるので、バキュームポンプ2の非作動中は、弁体90が常に排気口14を閉塞する所謂ノーマルクローズの開閉機構が実現される。すなわち、バキュームポンプ2が作動していない場合は、弁体90が付勢部材98の弾性力によって排気口14に接触した状態で保持される。一方、バキュームポンプ2の作動時に弁体90が排圧により受ける力が上記付勢部材98の付勢力を超えると弁体90が排気口14から離れて排気口14が開放される。したがって排気口14からの液体の侵入抑制効果が高いバキュームポンプ2を得ることができる。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、バキュームポンプの一例として回転式のベーンポンプについて説明したが、バキュームポンプは、例えばピストン式のポンプであってもよいし、ダイヤフラム式のポンプであってもよい。また、バキュームポンプがベーンポンプである場合には、平衡型ベーンポンプであってもよいし、非平衡型ベーンポンプであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 バキュームポンプ
4 可動部
5 ポンプ室
6 吸気通路
8 排気通路
10 ポンプケーシング
12 排気口カバー部
14 排気口
15 出口部
90 弁体
92 支持部
94 切り欠き部
98 付勢部材