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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】駆動装置及びインバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20221004BHJP
   H02M 7/487 20070101ALI20221004BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M7/487
H03K17/16 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019007801
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020120446
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】池脇 枝里
(72)【発明者】
【氏名】諸富 徳行
(72)【発明者】
【氏名】鹿塩 裕史
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-341962(JP,A)
【文献】特開平09-121554(JP,A)
【文献】特開2007-185024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 7/487
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性点を有する電源の電圧を3レベルの電圧に変換して出力点から出力する中性点クランプ型のインバータに含まれる4つのスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
前記電源の一端に一端が接続される第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び前記電源の他端に一端が接続される第4スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第1AND回路と、
前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第2AND回路と
を備え、
前記第1AND回路は、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記中性点に第1ダイオードを介して接続される前記第1スイッチング素子の他端及び前記出力点の間に接続される前記第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてあり、
前記第2AND回路は、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記中性点に第2ダイオードを介して接続される前記第4スイッチング素子の他端及び前記出力点の間に接続される前記第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてあり、
前記第1スイッチング素子は、前記第1AND回路の出力信号に基づいて駆動され、
前記第4スイッチング素子は、前記第2AND回路の出力信号に基づいて駆動される
ようにしてある駆動装置。
【請求項2】
中性点を有する電源の電圧を3レベルの電圧に変換して出力点から出力する中性点クランプ型のインバータに含まれる4つのスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
前記電源の一端に一端が接続される第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び前記電源の他端に一端が接続される第4スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第1AND回路と、
前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第2AND回路と
を備え、
前記第1AND回路は、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記出力点に接続される前記第1スイッチング素子の他端及び前記中性点の間に前記第1スイッチング素子と直列に同極性で接続される第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号と、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてあり、
前記第2AND回路は、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記出力点に接続される前記第4スイッチング素子の他端及び前記中性点の間に前記第3スイッチング素子と直列に逆極性で接続される第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号と、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてあり、
前記第1スイッチング素子は、前記第1AND回路の出力信号に基づいて駆動され、
前記第4スイッチング素子は、前記第2AND回路の出力信号に基づいて駆動される
ようにしてある駆動装置。
【請求項3】
請求項に記載の駆動装置と、
前記駆動信号を生成する制御部と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と、
前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードと
を備えるインバータ。
【請求項4】
請求項に記載の駆動装置と、
前記駆動信号を生成する制御部と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と
を備えるインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性点クランプ型のインバータに含まれるスイッチング素子を駆動する駆動装置及び該駆動装置を備えるインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源の電源電圧を交流電圧に変換する際に、2レベルのインバータを用いた場合、インバータの出力電圧が、例えば電源電圧と同等の波高値を有するパルス波形となる。この波形を正弦波に近づけるにはマルチレベルのインバータが用いられる。特に3レベルのインバータは、回路構成が比較的簡単であり、種々のバリエーションが考案されている。
【0003】
代表的な3レベルのインバータとして、出力電圧を電源の中性点にクランプする中性点クランプ型のインバータがあり、いわゆるNPC(Neutral Point. Clamped )インバータやTNPC(T-type Neutral Point Clamped )インバータが挙げられる。TNPCインバータは、双方向スイッチ方式のインバータとも言われる。これらの3レベルのインバータには、いずれも4つのスイッチング素子が含まれており、各スイッチング素子のオン状態の組み合わせによっては、一部又は全部のスイッチング素子が破壊に至る場合がある。通常はこのような状態に陥ることがないように制御されるが、例えば、外乱ノイズにより、スイッチング素子のオン状態の組み合わせが、制御によるものとは異なるものになることがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、直列接続された複数のIGBTそれぞれについてゲート信号のオフ期間中に主端子間電圧を検出し、この検出電圧とゲート信号との関係から一のIGBTが短絡故障と判定された場合に、他のIGBTのゲートに対するオン信号をブロックして故障が他に波及しないようにする技術が記載されている。また、特許文献2には、上下アームのスイッチング素子に対し、上アームの制御信号がオンである場合は下アームの制御信号を強制的にオフし、下アームの制御信号がオンである場合は上アームの制御信号を強制的にオフすることにより、上下両方のアームが同時にオンすることがないようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-223275号公報
【文献】特開2015-76989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、一のIGBTに故障が生じる前に他のIGBTのオンを阻止することができない。また、特許文献2に記載された技術は、そのままでは3レベルのインバータに適用できるものではない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、3レベルのインバータに含まれるスイッチング素子をより安全に駆動することが可能な駆動装置及びインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る駆動装置は、中性点を有する電源の電圧を3レベルの電圧に変換して出力点から出力する中性点クランプ型のインバータに含まれる4つのスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、前記電源の一端に一端が接続される第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び前記電源の他端に一端が接続される第4スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第1AND回路と、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとる第2AND回路とを備え、前記第1スイッチング素子は、前記第1AND回路の出力信号に基づいて駆動され、前記第4スイッチング素子は、前記第2AND回路の出力信号に基づいて駆動されるようにしてある。
【0009】
本発明にあっては、電源の一端に一端が接続される第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、第3スイッチング素子と、電源の他端に一端が接続される第4スイッチング素子とを駆動するための駆動信号に基づいて、中性点クランプ型のインバータに含まれるこれらのスイッチング素子が駆動される。第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、第2、第3及び第4スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第1AND回路に入力され、第1AND回路の出力信号に基づいて第1スイッチング素子が駆動される。また、第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、第1、第2及び第3スイッチング素子のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第2AND回路に入力され、第2AND回路の出力信号に基づいて第4スイッチング素子が駆動される。これにより、駆動信号によって第1及び第4スイッチング素子それぞれがオンに駆動されるべき状態の一部において、第1及び第4スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。
【0010】
本発明に係る駆動装置は、前記第1AND回路は、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記中性点に第1ダイオードを介して接続される前記第1スイッチング素子の他端及び前記出力点の間に接続される前記第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号とのANDをとるようにしてあり、前記第2AND回路は、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記中性点に第2ダイオードを介して接続される前記第4スイッチング素子の他端及び前記出力点の間に接続される前記第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号とのANDをとるようにしてある。
【0011】
本発明にあっては、第1スイッチング素子の他端と、電源の中性点及びインバータの出力点それぞれとの間に第1ダイオード及び第2スイッチング素子が接続される。また、第4スイッチング素子の他端と、電源の中性点及びインバータの出力点それぞれとの間に第2ダイオード及び第3スイッチング素子が接続される。即ち、インバータがいわゆるNPCインバータである。第1AND回路には、第1及び第2スイッチング信号の駆動信号が入力され、第2AND回路には、第4及び第3スイッチング信号の駆動信号が入力される。これにより、第2スイッチング素子の駆動信号がオフであるときに第1スイッチング素子が強制的にオフに駆動され、第3スイッチング素子の駆動信号がオフであるときに第4スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。
【0012】
本発明に係る駆動装置は、前記第1AND回路は、前記第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDを更にとるようにしてあり、前記第2AND回路は、前記第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDを更にとるようにしてある。
【0013】
本発明にあっては、第1AND回路には、第3スイッチング素子の駆動信号の極性を反転した信号が更に入力され、第2AND回路には、第2スイッチング素子の駆動信号の極性を反転した信号が更に入力される。これにより、第3スイッチング素子の駆動信号がオンであるときに第1スイッチング素子が強制的にオフに駆動され、第2スイッチング素子の駆動信号がオンであるときに第4スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。
【0014】
本発明に係る駆動装置は、前記第1AND回路は、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記出力点に接続される前記第1スイッチング素子の他端及び前記中性点の間に前記第1スイッチング素子と直列に同極性で接続される第3スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号と、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてあり、前記第2AND回路は、前記第4スイッチング素子を駆動するための駆動信号と、前記出力点に接続される前記第4スイッチング素子の他端及び前記中性点の間に前記第3スイッチング素子と直列に逆極性で接続される第2スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号と、前記第1スイッチング素子を駆動するための駆動信号の極性を反転した信号とのANDをとるようにしてある。
【0015】
本発明にあっては、第1及び第4スイッチング素子それぞれの他端がインバータの出力点に接続され、出力点と中性点との間に第2及び第3スイッチング素子が逆直列に接続される。即ち、インバータがいわゆるTNPCインバータである。特に、第1スイッチング素子と第3スイッチング素子とは同極性で直列的に接続される。第1AND回路には、第1スイッチング素子の駆動信号と、第3及び第4スイッチング素子それぞれの駆動信号の極性を反転した信号とが入力される。第2AND回路には、第4スイッチング素子の駆動信号と、第2及び第1スイッチング素子それぞれの駆動信号の極性を反転した信号とが入力される。これにより、第3及び第4スイッチング素子の駆動信号の何れかがオンであるときに第1スイッチング素子が強制的にオフに駆動され、第2及び第1スイッチング素子の駆動信号の何れかがオンであるときに第2スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。
【0016】
本発明に係るインバータは、上述の駆動装置と、前記駆動信号を生成する制御部と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と、前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードとを備える。
【0017】
本発明にあっては、3レベルのインバータに含まれるスイッチング素子をより安全に駆動することが可能な駆動装置をNPCインバータに適用することができる。
【0018】
本発明に係るインバータは、上述の駆動装置と、前記駆動信号を生成する制御部と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子とを備える。
【0019】
本発明にあっては、3レベルのインバータに含まれるスイッチング素子をより安全に駆動することが可能な駆動装置をTNPCインバータに適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、3レベルのインバータに含まれるスイッチング素子をより安全に駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係るインバータの構成例を示す回路図である。
図2】実施形態1に係るインバータにおける各トランジスタの駆動状態を示す図表である。
図3】実施形態1に係る駆動装置で駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。
図4】実施形態2に係るインバータの構成例を示す回路図である。
図5】実施形態2に係る駆動装置で駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。
図6】実施形態3に係るインバータの構成例を示す回路図である。
図7】実施形態3に係るインバータにおける各トランジスタの駆動状態を示す図表である。
図8】実施形態3に係る駆動装置で駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るインバータ100aの構成例を示す回路図である。インバータ100aは、直列に接続されたトランジスタ(IGBT=Insulated Gate Bipolar Transistor )T1、T2、T3及びT4(それぞれ第1、第2、第3及び第4スイッチング素子に相当)と、該トランジスタT1、T2、T3及びT4を駆動するための駆動信号を生成する制御部2aと、これらの駆動信号に基づいてトランジスタT1、T2、T3及びT4を駆動する駆動装置1aとを備える。インバータ100aは、電源4からの直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を負荷3に印加する3レベルのNPCインバータである。
【0023】
トランジスタT1、T2、T3及びT4それぞれのコレクタ・エミッタ間には、ダイオードD1、D2、D3及びD4が逆並列に接続されている。トランジスタT1のコレクタは、電源4のプラス側端子に接続されている。トランジスタT2のコレクタに接続されたトランジスタT1のエミッタと、電源4の電圧を分圧するコンデンサ41及び42の接続点である中性点43との間には、第1ダイオード44が接続されている。第1ダイオード44は、アノードが中性点43に接続されている。
【0024】
トランジスタT4のエミッタは、電源4のマイナス側端子に接続されている。トランジスタT3のエミッタに接続されたトランジスタT4のコレクタと、中性点43との間には、第2ダイオード45が接続されている。第2ダイオード45は、カソードが中性点43に接続されている。
【0025】
トランジスタT1、T2、T3及びT4はIGBTに限定されず、例えばNチャネル型又はPチャネル型のMOSFET等の他のスイッチング素子であってもよい。例えばトランジスタT1がMOSFETの場合、ダイオードD1は寄生ダイオードで置き換えられる。電源4の電圧が例えば1500Vである場合、トランジスタT1、T2、T3及びT4のコレクタ・エミッタ間の耐圧は例えば1200Vである。
【0026】
トランジスタT2のエミッタ及びトランジスタT3のコレクタの接続点である出力点40は、インダクタL1を介して負荷3の一端に接続されている。負荷3の両端には、インダクタL1との組み合わせによりLCフィルタを構成するコンデンサC1が接続されている。負荷3の他端は共通電位に接続されている。この共通電位は、中性点43であってもよいし、電源4のマイナス側の電位であってもよい。インダクタL1及びコンデンサC1は必須ではなく、例えば負荷3が誘導性である場合、コンデンサC1を削除し、出力点40と負荷3の一端とを直結してもよい。
【0027】
駆動装置1aは、トランジスタT1及びT2それぞれの駆動信号のANDをとる第1AND回路A1aと、トランジスタT4及びT3それぞれの駆動信号のANDをとる第2AND回路A2aとを有する。駆動装置1aは、また、第1AND回路A1a及び第2AND回路A2aそれぞれの出力信号に基づいてトランジスタT1及びT4を駆動する駆動回路Dr1及びDr4と、トランジスタT2及びT3それぞれの駆動信号に基づいてトランジスタT2及びT3を駆動する駆動回路Dr2及びDr3とを有する。
【0028】
駆動回路Dr1、Dr2、Dr3及びDr4それぞれは、トランジスタT1、T2、T3及びT4をオン/オフに駆動するドライバを各別に有する。駆動回路Dr1は、抵抗器R11及びR12それぞれを介してトランジスタT1をオン及びオフに駆動する。駆動回路Dr2は、抵抗器R21及びR22それぞれを介してトランジスタT2をオン及びオフに駆動する。駆動回路Dr3は、抵抗器R31及びR32それぞれを介してトランジスタT3をオン及びオフに駆動する。駆動回路Dr4は、抵抗器R41及びR42それぞれを介してトランジスタT4をオン及びオフに駆動する。
【0029】
制御部2aは、機器全体を制御するCPU(Central Processing Unit )を有し、CPUは、制御プログラム等の情報を記憶するROM(Read Only Memory )、一時的に発生した情報を記憶するRAM(Random Access Memory )及び経過時間等を計時するタイマと互いにバス接続されている。制御部2aが、CPUを有するマイクロコンピュータを含んで構成されていてもよい。CPU又はマイクロコンピュータは、予め処理手順を定めたコンピュータプログラムをROM、RAM等の記憶部から読み出して実行する。例えばPWM制御された3レベルの電圧を負荷3に印加するために、制御部2aが駆動信号を生成する方法については公知であるため、ここでの説明を省略する。
【0030】
図2は、実施形態1に係るインバータ100aにおける各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態を示す図表である。図2では、各トランジスタT1、T2、T3及びT4のオン状態を1、オフ状態を0として示してある。詳細については、公知文献(“SEMIKRON Application Note AN-11001”、https://www.semikron.com/dl/service-support/downloads/download/semikron-application-note-3l-npc-tnpc-topology-ja-2012-09-03-rev-04/、インターネット、平成31年1月9日検索)に詳しい。
【0031】
番号1から6までの状態は許容状態に区分される。トランジスタT1からT4までの全てがオフである番号1の状態は、インバータ100aが稼働していない状態に対応する。許容状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4は、全てがオフであるか、1つのみがオンであるか又は隣接する2つのみがオンであるかの何れかである。許容状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4に印加される最大電圧は、電源4の電圧の半分である略750Vである。このことは、3つのインバータ100aを用いた三相のインバータで三相の負荷を駆動する場合であっても同様である。
【0032】
番号7から11までの状態は潜在的破壊状態に区分される。潜在的破壊状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4は、トランジスタT1とT4の何れか一方のみ若しくは両方のみがオンであるか、トランジスタT1とT3のみがオンであるか又はトランジスタT2とT4のみがオンであるかの何れかである。例えば、3つのインバータ100a,100a,100aを用いた三相のインバータで三相の負荷を駆動する場合、潜在的破壊状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4のいずれかが破壊に至る可能性がある。具体的に、1つの相のインバータ100aにおける各トランジスタT1、T2、T3及びT4が番号7から11の何れかの状態にある場合、これらのトランジスタT1、T2、T3及びT4が破壊するか否かは、他の2つの相における各トランジスタT1、T2、T3及びT4のオン/オフ状態に依存する。
【0033】
番号12から16までの状態は破壊状態に区分される。破壊状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4は、このうち3つがオンであるか、4つ全てがオンであるかの何れかである。例えば、トランジスタT1からT4までが番号12、13、14及び15それぞれの状態にある場合、トランジスタT4、T3、T2及びT1は電源4の電圧が印加されて破壊する。番号16の状態では、トランジスタT1からT4までの全てがオンであるため、電源4が各トランジスタT1、T2、T3及びT4によって短絡される。
【0034】
制御部2aは、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が常に許容状態にあるように駆動信号を生成する。しかしながら、外乱ノイズ、制御部2aによる制御の不具合又はハードウェアの不具合により、一時的に各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が潜在的破壊状態又は破壊状態に陥る可能性がある。この問題の具体的な要因としては、トランジスタT1、T2、T3及びT4それぞれの駆動信号の信号源からトランジスタT1、T2、T3及びT4のゲートに至る配線の断線、これらの配線を接続するコネクタの接続不良、駆動信号の伝搬遅延のバラつき、PWM制御信号を発生する回路の故障等が挙げられる。
【0035】
制御部2aが生成した駆動信号そのものに基づいて、駆動回路Dr1、Dr2、Dr3及びDr4それぞれがトランジスタT1、T2、T3及びT4を駆動する場合は、上述の問題を回避することができない。そこで、本実施形態1では、図1に示すように、第1AND回路A1a及び第2AND回路A2aそれぞれの出力信号に基づいて、駆動回路Dr1及びDr4がトランジスタT1及びT4を駆動するように構成する。駆動回路Dr2及びDr3それぞれは、制御部2aが生成した駆動信号そのものに基づいてトランジスタT2及びT3を駆動する。
【0036】
図3は、実施形態1に係る駆動装置1aで駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。図3の左側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4について制御部2aが生成した駆動信号のオン/オフの状態を示すものであり、右側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態を示すものである。図3では、駆動信号に係るオン/オフの状態の番号を状態N_0(Nは図2に示す状態の番号に対応する数値)で表し、駆動状態の番号を状態N_1で表す。状態7_0から状態11_0までは潜在的破壊状態に対応する。状態12_0及び状態13_0は破壊状態の一部である。
【0037】
なお、図2に示す許容状態に対応する状態1_0から状態6_0までについては、第1AND回路A1a及び第2AND回路A2aそれぞれがトランジスタT1及びT4の駆動状態に影響を与えないことが明らかであるから、図3での説明を省略する。トランジスタT2及びT3については、駆動信号の状態がそのまま駆動状態に反映されるため、図3では、トランジスタT1及びT4の駆動信号及び駆動状態に着目する。
【0038】
状態7_0、9_0及び10_0におけるトランジスタT1の駆動信号の1(オン)は、第1AND回路A1aにより、状態7_1、9_1及び10_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。同様に、状態8_0、9_0及び11_0におけるトランジスタT4の駆動信号の1(オン)は、第2AND回路A2aにより、状態8_1、9_1及び11_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。状態7_1から11_1までの駆動状態は、図2に示す許容状態に含まれる。即ち、潜在的破壊状態に対応する駆動信号に基づいて、各トランジスタT1、T2、T3及びT4は許容状態に駆動される。
【0039】
状態13_0におけるトランジスタT1の駆動信号の1(オン)は、第1AND回路A1aにより、状態13_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。同様に、状態12_0におけるトランジスタT4の駆動信号の1(オン)は、第2AND回路A2aにより、状態12_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。状態12_1及び13_1の駆動状態は、図2に示す許容状態に含まれる。即ち、破壊状態の一部に対応する駆動信号に基づいて、各トランジスタT1、T2、T3及びT4は許容状態に駆動される。
【0040】
以上のように実施形態1によれば、電源4のプラス側端子にコレクタが接続されるトランジスタT1と、トランジスタT2と、トランジスタT3と、電源4のマイナス側端子にエミッタが接続されるトランジスタT4とを駆動するための駆動信号に基づいて、中性点クランプ型のインバータ100aに含まれるこれらのスイッチング素子が駆動される。トランジスタT1を駆動するための駆動信号と、トランジスタT2、トランジスタT3及びトランジスタT4のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第1AND回路A1aに入力され、第1AND回路A1aの出力信号に基づいてトランジスタT1が駆動される。また、トランジスタT4を駆動するための駆動信号と、トランジスタT1、トランジスタT2及びトランジスタT3のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第2AND回路A2aに入力され、第2AND回路A2aの出力信号に基づいてトランジスタT4が駆動される。これにより、駆動信号によってトランジスタT1及びトランジスタT4それぞれがオンに駆動されるべき状態の一部において、第1及び第4スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。従って、3レベルのインバータ100aに含まれる各トランジスタT1、T2、T3及びT4をより安全に駆動することが可能となる。
【0041】
また、実施形態1によれば、トランジスタT1のエミッタと、電源4の中性点43及びインバータ100aの出力点40それぞれとの間に第1ダイオード44及びトランジスタT2が接続される。また、トランジスタT4のコレクタと、電源4の中性点43及びインバータ100aの出力点40それぞれとの間に第2ダイオード45及びトランジスタT3が接続される。第1AND回路A1aには、トランジスタT1及びT2の駆動信号が入力され、第2AND回路A2aには、トランジスタT4及びT3の駆動信号が入力される。従って、トランジスタT2の駆動信号がオフであるときにトランジスタT1を強制的にオフに駆動し、トランジスタT3の駆動信号がオフであるときにトランジスタT4を強制的にオフに駆動することができる。
【0042】
更に、実施形態1によれば、3レベルのインバータ100aに含まれるトランジスタT1、トランジスタT2、トランジスタT3及びトランジスタT4を安全に駆動することが可能な駆動装置1aをNPCインバータに適用することができる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態1が、第1AND回路A1a及び第2AND回路A2aに2入力のAND回路を用いる形態であるのに対し、実施形態2は、第1AND回路A1b及び第2AND回路A2bに3入力のAND回路を用いる形態である。実施形態1では、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が破壊状態の一部に陥るのを防止することができたが、破壊状態の他の一部に陥るのを防止することができなかった。本実施形態2は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が破壊状態に陥るのを完全に防止することを目的とするものである。
【0044】
図4は、実施形態2に係るインバータ100bの構成例を示す回路図である。インバータ100bと実施形態1に係るインバータ100aとの違いは、駆動装置1bと駆動装置1aとの違いのみである。インバータ100bが備える駆動装置1bは、3入力の第1AND回路A1b及び第2AND回路A2bと、2つのNOT回路N2及びN3とを有する。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
第1AND回路A1bは、トランジスタT1の駆動信号と、トランジスタT2の駆動信号と、トランジスタT3の駆動信号をNOT回路N3で極性反転させた信号とのANDをとる。第2AND回路A2bは、トランジスタT4の駆動信号と、トランジスタT3の駆動信号と、トランジスタT2の駆動信号をNOT回路N2で極性反転させた信号とのANDをとる。駆動回路Dr1及びDr4それぞれが第1AND回路A1b及び第2AND回路A2bそれぞれの出力信号に基づいてトランジスタT1及びT4を駆動するのは、実施形態1に係る駆動装置1aの場合と同様である。
【0046】
図5は、実施形態2に係る駆動装置1bで駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。図5の左側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4について制御部2aが生成した駆動信号のオン/オフの状態を示すものであり、右側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態を示すものである。駆動信号の状態の番号及び駆動状態の番号それぞれを状態N_0及び状態N_1(Nは図2に示す状態の番号に対応する数値)で表すのは、実施形態1の図3の場合と同様である。
【0047】
なお、図2に示す許容状態に対応する状態1_0から状態6_0までのうち、トランジスタT1及びトランジスタT4それぞれの駆動に係る第1AND回路A1b及び第2AND回路A2bの出力が1(オン)となるべき状態は、状態4_0及び6_0である。これらの状態ではトランジスタT2及びT3の駆動信号によって第1AND回路A1b及び第2AND回路A2bそれぞれの出力が0(オフ)になることがないのは明らかであるから、図5での説明を省略する。
【0048】
状態7_0、9_0及び10_0におけるトランジスタT1の駆動信号の1(オン)は、第1AND回路A1bにより、状態7_1、9_1及び10_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。同様に、状態8_0、9_0及び11_0におけるトランジスタT4の駆動信号の1(オン)は、第2AND回路A2bにより、状態8_1、9_1及び11_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。状態7_1から11_1までの駆動状態は、図2に示す許容状態に含まれる。即ち、潜在的破壊状態に対応する駆動信号に基づいて、各トランジスタT1、T2、T3及びT4は許容状態に駆動される。
【0049】
状態12_0、14_0及び16_0におけるトランジスタT1の駆動信号の1(オン)は、第1AND回路A1baにより、状態12_1、14_1及び16_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。同様に、状態13_0、15_0及び16_0におけるトランジスタT4の駆動信号の1(オン)は、第2AND回路A2bにより、状態13_1、15_1及び16_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。状態12_1から16_1までの駆動状態は、図2に示す許容状態に含まれる。即ち、破壊状態に対応する駆動信号に基づいて、各トランジスタT1、T2、T3及びT4は許容状態に駆動される。
【0050】
以上のように本実施形態2によれば、第1AND回路A1bには、トランジスタT3の駆動信号の極性をNOT回路N3で反転した信号が更に入力され、第2AND回路A2bには、トランジスタT2の駆動信号の極性をNOT回路N2で反転した信号が更に入力される。これにより、トランジスタT3の駆動信号がオンであるときにトランジスタT1が強制的にオフに駆動され、トランジスタT2の駆動信号がオンであるときにトランジスタT4が強制的にオフに駆動される。従って、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が破壊状態に陥るのを完全に防止することが可能となる。
【0051】
(実施形態3)
実施形態1及び2は、インバータ100a及び100bがNPCインバータである形態であるのに対し、実施形態3は、インバータ100cがTNPCインバータである形態である。
【0052】
図6は、実施形態3に係るインバータ100cの構成例を示す回路図である。インバータ100cは、直列に接続されたトランジスタT1及びT4と、逆直列に接続されたトランジスタT2及びT3と、トランジスタT1、T2、T3及びT4を駆動するための駆動信号を生成する制御部2cと、これらの駆動信号に基づいてトランジスタT1、T2、T3及びT4を駆動する駆動装置1cとを備える。インバータ100cは、電源4からの直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を負荷3に印加する3レベルのTNPCインバータである。
【0053】
トランジスタT1のコレクタは、電源4のプラス側端子に接続されている。トランジスタT4のエミッタは、電源4のマイナス側端子に接続されている。トランジスタT1のエミッタ及びトランジスタT4のコレクタの接続点である出力点40は、トランジスタT3のコレクタに接続されている。電源4の電圧を分圧するコンデンサ41及び42の接続点である中性点43は、トランジスタT2のコレクタに接続されている。トランジスタT2及びT3はエミッタ同士が接続されている。即ち、トランジスタT1及びT3は直列に同極性で接続されている。
【0054】
出力点40は、インダクタL1を介して負荷3及びコンデンサC1の一端に接続されている。なお、出力点40をトランジスタT2のエミッタに接続し、中性点43をトランジスタT3のエミッタに接続してもよい。この場合、トランジスタT2及びT3はコレクタ同士が接続される。電源4の電圧が例えば750Vである場合、トランジスタT1及びT4のコレクタ・エミッタ間の耐圧は例えば1200Vである。トランジスタT2及びT3は、750Vの半分の電圧に耐えるものである。
【0055】
駆動装置1cは、第1AND回路A1cと、第2AND回路A2cとを有する。駆動装置1cは、また、第1AND回路A1c及び第2AND回路A2cそれぞれの出力信号に基づいてトランジスタT1及びT4を駆動する駆動回路Dr1及びDr4と、トランジスタT2及びT3それぞれの駆動信号に基づいてトランジスタT2及びT3を駆動する駆動回路Dr2及びDr3とを有する。
【0056】
第1AND回路A1cは、トランジスタT1の駆動信号と、トランジスタT3の駆動信号をNOT回路N3で極性反転させた信号と、トランジスタT4の駆動信号をNOT回路N4で極性反転させた信号とのANDをとる。第2AND回路A2cは、トランジスタT4の駆動信号と、トランジスタT2の駆動信号をNOT回路N2で極性反転させた信号と、トランジスタT1の駆動信号をNOT回路N1で極性反転させた信号とのANDをとる。
【0057】
制御部2cと実施形態1に係る制御部2aとの違いは、ソフトウェア処理上の差異のみである。その他、実施形態1及び2に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7は、実施形態3に係るインバータ100cにおける各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態を示す図表である。図5では、各トランジスタT1、T2、T3及びT4のオン状態を1、オフ状態を0として示してある。詳細については、前述の公知文献に詳しい。
【0059】
番号1から8までの状態は許容状態に区分される。トランジスタT1からT4までの全てがオフである番号1の状態は、インバータ100cが稼働していない状態に対応する。許容状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4は、全てがオフであるか、1つのみがオンであるか又は隣接する2つのみがオンであるかの何れかである。許容状態にあるトランジスタT1及びT4に印加される最大電圧は、電源4の電圧である。
【0060】
番号9から16までの状態は破壊状態に区分される。破壊状態にある各トランジスタT1、T2、T3及びT4は、隣接しない2つのトランジスタのみがオンであるか、3つ又は4つ全てのトランジスタがオンであるかの何れかである。番号16の状態では、トランジスタT1からT4までの全てがオンであるため、電源4がトランジスタT1及びT4によって短絡される。
【0061】
制御部2cは、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が常に許容状態にあるように駆動信号を生成する。しかしながら、外乱ノイズ、制御部2cによる制御の不具合又はハードウェアの不具合により、一時的に各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が破壊状態に陥る可能性がある。そこで、本実施形態3では、図6に示すように、第1AND回路A1c及び第2AND回路A2cそれぞれの出力信号に基づいて、駆動回路Dr1及びDr4がトランジスタT1及びT4を駆動するように構成する。
【0062】
図8は、実施形態3に係る駆動装置1cで駆動信号に基づいて駆動状態が決定されることを示す図表である。図8の左側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4について制御部2cが生成した駆動信号のオン/オフの状態を示すものであり、右側に示す表は、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態を示すものである。駆動信号の状態の番号及び駆動状態の番号それぞれを状態M_0及び状態M_1(Mは図7に示す状態の番号に対応する数値)で表すのは、実施形態2の図5の場合と同様である。
【0063】
状態1_0から状態8_0までのうち、トランジスタT1の駆動に係る第1AND回路A1cの出力が1(オン)となるべき状態は、状態2_0及び6_0である。これらの状態では、トランジスタT1の駆動信号と、トランジスタT3及びT4それぞれの駆動信号を反転した信号とによって第1AND回路A1cの出力が1になる。また、トランジスタT4の駆動に係る第2AND回路A2cの出力が1(オン)となるべき状態は、状態5_0及び8_0である。これらの状態ではトランジスタT4の駆動信号と、トランジスタT1及びT2それぞれの駆動信号を反転した信号とによって第2AND回路A2cの出力が1になる。状態1_0、3_0、4_0及び7_0については、駆動信号の状態が、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態にそのまま反映される。
【0064】
状態9_0、11_0及び13_0~16_0おけるトランジスタT1の駆動信号の1(オン)は、第1AND回路A1cにより、状態9_1、11_1及び13_1~16_1における駆動状態の0(オフ)に反映される。同様に、状態10_0~14_0及び16_0おけるトランジスタT4の駆動信号の1(オン)は、第2AND回路A2cにより、状態10_1~14_1及び16_1おける駆動状態の0(オフ)に反映される。状態9_1から16_1までの駆動状態は、図7に示す許容状態に含まれる。即ち、破壊状態に対応する駆動信号に基づいて、各トランジスタT1、T2、T3及びT4は許容状態に駆動される。
【0065】
以上のように実施形態3によれば、電源4のプラス側端子にコレクタが接続されるトランジスタT1と、トランジスタT2と、トランジスタT3と、電源4のマイナス側端子にエミッタが接続されるトランジスタT4とを駆動するための駆動信号に基づいて、中性点クランプ型のインバータ100cに含まれるこれらのスイッチング素子が駆動される。トランジスタT1を駆動するための駆動信号と、トランジスタT2、トランジスタT3及びトランジスタT4のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第1AND回路A1cに入力され、第1AND回路A1cの出力信号に基づいてトランジスタT1が駆動される。また、トランジスタT4を駆動するための駆動信号と、トランジスタT1、トランジスタT2及びトランジスタT3のうちの少なくとも1つを駆動するための駆動信号又は該駆動信号の極性を反転した信号とが第2AND回路A2cに入力され、第2AND回路A2cの出力信号に基づいてトランジスタT4が駆動される。これにより、駆動信号によってトランジスタT1及びトランジスタT4それぞれがオンに駆動されるべき状態の一部において、第1及び第4スイッチング素子が強制的にオフに駆動される。従って、3レベルのインバータ100cに含まれる各トランジスタT1、T2、T3及びT4をより安全に駆動することが可能となる。
【0066】
また、実施形態3によれば、トランジスタT1のエミッタ及びトランジスタT4のコレクタが出力点40に接続され、出力点40と中性点43との間にトランジスタT2及びT3が逆直列に接続される。特に、トランジスタT1とトランジスタT3とは同極性で直列的に接続される。第1AND回路A1cには、トランジスタT1の駆動信号と、トランジスタT3及びT4それぞれの駆動信号の極性を反転した信号とが入力される。第2AND回路A2cには、トランジスタT4の駆動信号と、トランジスタT2及びT1それぞれの駆動信号の極性を反転した信号とが入力される。これにより、トランジスタT3及びT4の何れかがオンであるときにトランジスタT1が強制的にオフに駆動され、トランジスタT2及びT1の駆動信号の何れかがオンであるときにトランジスタT4が強制的にオフに駆動される。従って、各トランジスタT1、T2、T3及びT4の駆動状態が破壊状態に陥るのを完全に防止することが可能となる。
【0067】
更に、実施形態3によれば、3レベルのインバータ100cに含まれるトランジスタT1、トランジスタT2、トランジスタT3及びトランジスタT4を安全に駆動することが可能な駆動装置1cをNPCインバータに適用することができる。
【0068】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
100a、100b、100c インバータ
T1、T2、T3、T4 トランジスタ
D1、D2、D3、D4 ダイオード
1a、1b、1c 駆動装置
A1a、A1b、A1c 第1AND回路
A2a、A2b、A2c 第2AND回路
N1、N2、N3、N4 NOT回路
Dr1、Dr2、Dr3、Dr4 駆動回路
R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42 抵抗器
2a、2b、2c 制御部
3 負荷
L1 インダクタ
C1 コンデンサ
4 電源
40 出力点
41、42 コンデンサ
43 中性点
44 第1ダイオード
45 第2ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8