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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221004BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019056627
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020161540
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】河原 啓之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】菊本 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-319957(JP,A)
【文献】特開2009-278027(JP,A)
【文献】特開2011-233745(JP,A)
【文献】特開平10-308430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第1開口とを有する第1チャンバと、
前記基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第2開口とを有する第2チャンバと、
前記基板を保持する第1保持部材を前記第1保持部材の上方に配置された第1移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバへ前記基板を搬入し、前記第2開口を介して前記第2チャンバから前記基板を搬出する第1搬送部と、
前記基板を保持する第2保持部材を前記第2保持部材の下方に配置された第2移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバから前記基板を搬出し前記第2開口を介して前記第2チャンバへ搬入することで、前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ移送する第2搬送部と
を備え、
前記第1開口および前記第2開口は、前記第2搬送部が配置された搬送空間に臨んで開口し、
前記搬送空間のうち、前記第2搬送部が前記第1チャンバから前記第2チャンバへ前記基板を移送するときに前記第2保持部材および前記基板が通過する空間を移送ゾーンと称するとき、
前記第1移動機構は、前記第2搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第1保持部材を前記移送ゾーンよりも上方に位置決め可能に構成され、
前記第2移動機構は、前記第1搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第2保持部材を前記移送ゾーンよりも下方に位置決め可能に構成される、
基板処理装置。
【請求項2】
処理対象となる基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第1開口とを有する第1チャンバと、
前記基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第2開口とを有する第2チャンバと、
前記基板を保持する第1保持部材を前記第1保持部材の上方に配置された第1移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバへ前記基板を搬入し、前記第2開口を介して前記第2チャンバから前記基板を搬出する第1搬送部と、
前記基板を保持する第2保持部材を前記第2保持部材の下方に配置された第2移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバから前記基板を搬出し前記第2開口を介して前記第2チャンバへ搬入することで、前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ移送する第2搬送部と、
前記第1搬送部および前記第2搬送部を制御する制御部と
を備え、
前記第1開口および前記第2開口は、前記第2搬送部が配置された搬送空間に臨んで開口し、
前記搬送空間のうち、前記第2搬送部が前記第1チャンバから前記第2チャンバへ前記基板を移送するときに前記第2保持部材および前記基板が通過する空間を移送ゾーンと称するとき、
前記制御部は、前記第2搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第1保持部材の前記移送ゾーンへの進入を規制し、前記第1搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第2保持部材の前記移送ゾーンへの進入を規制する、
基板処理装置。
【請求項3】
前記第1搬送部は、前記第1移動機構が前記第1保持部材を前記移送ゾーンよりも上方に位置決めした状態で前記第1移動機構を水平移動させる水平移動機構を有する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1チャンバと、当該第1チャンバから前記基板が移送される前記第2チャンバとを1組にした処理ユニットを複数備え、
前記処理ユニットごとに1基ずつ前記第2搬送部が設けられ、複数の前記処理ユニットに対して1基の前記第1搬送部が設けられる請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2搬送部は、前記第1チャンバで上面に液膜が形成された前記基板を水平姿勢で前記第2チャンバに移送し、
前記第1搬送部は、前記液膜が形成される前の前記基板を前記第1チャンバへ搬入し、前記液膜が除去された後の前記基板を前記第2チャンバから搬出する、
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1搬送部は、前記液膜が形成される前の前記基板および前記液膜が除去された後の前記基板をそれぞれ保持する複数の前記第1保持部材を有する請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第2チャンバは、前記内部空間内で、前記基板から前記液膜を除去し前記基板を乾燥させる乾燥処理を実行する請求項5または6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第2チャンバは、前記内部空間内で超臨界流体を用いた前記乾燥処理を実行する請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第2搬送部は、前記液膜が形成された前記基板を前記第1チャンバから搬出した後、前記基板を前記第2チャンバに搬入する前に、前記基板を保持する前記第2保持部材の上下を反転させる反転機構を有する請求項5ないし8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1チャンバの側面に設けられた前記第1開口と前記第2チャンバの側面に設けられた前記第2開口とが前記搬送空間を挟んで同じ高さで向き合って配置され、
前記第2搬送部は、前記第1チャンバから前記第2チャンバへ前記基板を水平方向に移送する請求項1ないし9のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対し所定の処理を行う基板処理装置に関するものであり、特に複数の搬送機構による複数のチャンバへの基板の搬送を伴う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや表示パネル等を製造するための基板、例えば半導体基板、ガラス基板、樹脂基板等の処理においては、薬剤の飛散防止や雰囲気制御のために専用チャンバ内の閉空間で処理が行われることが一般的である。そのため、1枚の基板に対し複数種の処理が連続的に行われる基板処理装置では、複数のチャンバ間での基板の受け渡しが発生することとなる。
【0003】
このような基板を受け渡すための搬送機構としては例えば搬送ロボットが用いられ、搬送ロボットとしてこれまで種々の構成のものが提案されている。また、基板処理装置の稼働効率を高める目的で、あるいは基板保持の態様を処理内容に応じたものとする目的で、複数の搬送機構が併用される場合もある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の基板処理装置は、反転ユニットにより基板を反転させることで基板の両面を処理するものであり、反転前の基板を搬送する搬送ロボットと反転後の基板を搬送する搬送ロボットとが設けられている。また、特許文献2に記載の基板処理装置では、互いに異なる種類の処理液を用いる複数の処理工程が隔壁によってエリア分けされており、エリアごとに搬送ロボットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-166369号公報
【文献】特開平11-260886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、各搬送機構による基板の搬送経路は、基板の受け渡し部分においてのみ一部が重複するものの、基本的には平面視において重ならないように構成されている。このため装置全体のフットプリントが大きくなりがちである。装置のさらなる小型化を図るためには、平面視における搬送経路の重なりをより広範囲なものに拡大することが求められる。
【0007】
また、上記従来技術では、一連の処理を行うために複数の搬送機構が協調動作している。そのため、処理の進行状況によって一部の搬送機構が手待ち状態となることがある。処理のスループットをより高めるためには、複数の搬送機構が個別に動作することのできる余地を拡大する必要がある。
【0008】
このように、複数の搬送機構による基板の搬送経路を互いにオーバーラップさせつつそれぞれが個別に動作する局面を増大させるために、複数の搬送機構間での干渉が起きないようにする方策が求められる。しかしながら、上記従来技術にはそのような観点からの具体的な言及はなく、この意味において改善の余地が残されている。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の搬送機構による複数のチャンバへの基板の搬送を伴う基板処理装置において、それらの搬送機構による基板の搬送経路を互いにオーバーラップさせつつ、それぞれが比較的高い自由度で個別に動作することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る基板処理装置の一の態様は、上記目的を達成するため、処理対象となる基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第1開口とを有する第1チャンバと、前記基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第2開口とを有する第2チャンバと、前記基板を保持する第1保持部材を前記第1保持部材の上方に配置された第1移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバへ前記基板を搬入し、前記第2開口を介して前記第2チャンバから前記基板を搬出する第1搬送部と、前記基板を保持する第2保持部材を前記第2保持部材の下方に配置された第2移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバから前記基板を搬出し前記第2開口を介して前記第2チャンバへ搬入することで、前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ移送する第2搬送部とを備える。
【0011】
ここで、前記第1開口および前記第2開口は、前記第2搬送部が配置された搬送空間に臨んで開口し、前記搬送空間のうち、前記第2搬送部が前記第1チャンバから前記第2チャンバへ前記基板を移送するときに前記第2保持部材および前記基板が通過する空間を移送ゾーンと称するとき、前記第1移動機構は、前記第2搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第1保持部材を前記移送ゾーンよりも上方に位置決め可能に構成され、前記第2移動機構は、前記第1搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第2保持部材を前記移送ゾーンよりも下方に位置決め可能に構成されている。
【0012】
この発明に係る基板処理装置の他の一の態様は、上記目的を達成するため、処理対象となる基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第1開口とを有する第1チャンバと、前記基板を収容可能な内部空間と前記内部空間に対し前記基板を出し入れするための第2開口とを有する第2チャンバと、前記基板を保持する第1保持部材を前記第1保持部材の上方に配置された第1移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバへ前記基板を搬入し、前記第2開口を介して前記第2チャンバから前記基板を搬出する第1搬送部と、前記基板を保持する第2保持部材を前記第2保持部材の下方に配置された第2移動機構により移動させて、前記第1開口を介して前記第1チャンバから前記基板を搬出し前記第2開口を介して前記第2チャンバへ搬入することで、前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ移送する第2搬送部と、前記第1搬送部および前記第2搬送部を制御する制御部とを備えている。
【0013】
ここで、前記第1開口および前記第2開口は、前記第2搬送部が配置された搬送空間に臨んで開口し、前記搬送空間のうち、前記第2搬送部が前記第1チャンバから前記第2チャンバへ前記基板を移送するときに前記第2保持部材および前記基板が通過する空間を移送ゾーンと称するとき、前記制御部は、前記第2搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第1保持部材の前記移送ゾーンへの進入を規制し、前記第1搬送部が前記第1開口または前記第2開口にアクセスする時に前記第2保持部材の前記移送ゾーンへの進入を規制する。
【0014】
このように構成された発明では、前記した「搬送機構」としての機能を有する第1搬送部および第2搬送部により、複数のチャンバに対する基板の搬送が実行される。具体的には、基板はまず第1チャンバへ搬送され、次に第2チャンバへ移送され最終的に第2チャンバから搬出される。このうち第1チャンバへの基板の搬入および第2チャンバからの基板の搬出は第1搬送部が担い、第1チャンバから第2チャンバへの基板の移送は第2搬送部が担う。したがって、第2搬送部が基板を第1チャンバから第2チャンバへ移送する際の経路である移送ゾーンには、第1保持部材も必要に応じ進入することになる。
【0015】
2つの搬送部を有する構成においては、第1チャンバおよび第2チャンバへのアクセスにおいて両者が干渉することがあり得る。しかしながら、本発明では、第1搬送部において、第1搬送部において基板を保持する第1保持部材を移動させる第1移動機構は、第1保持機構よりも上方に配置される。一方、第2搬送部において第2保持部材を移動させる第2移動機構は、第2保持部材よりも下方に配置されている。
【0016】
第1移動機構と第1保持部材とは直接連結されていてもよく、また適宜の連結部材を介して連結されていてもよい。連結部材による当該連結は、連結部材の一端が第1保持部材の上面または側面の特定箇所に連結し、他端が第1移動機構に連結する構成とすることができる。連結時においては、連結部材のいずれの部位も第1保持部材の下端の高さと同じかそれよりも上方に位置するようにして連結がなされる。
【0017】
同様に、第2移動機構と第2保持部材とは直接連結されていてもよく、また適宜の連結部材を介して連結されていてもよい。連結部材による当該連結は、連結部材の一端が第2保持部材の上面または側面の特定箇所に連結し、他端が第2移動機構に連結する構成とすることができる。連結時においては、連結部材のいずれの部位も第2保持部材の下端の高さと同じかそれよりも上方に位置するようにして連結がなされる。
【0018】
第1搬送部は移送ゾーンの上方から第1保持部材を移送ゾーンへ進入させることができる一方、第2搬送部は移送ゾーンの下方から第2保持部材を移送ゾーンへ進入させることができる。つまり、第1チャンバと第2チャンバとの間の移送ゾーンを挟んで上方側に第1保持部材の移動経路があり、下方側に第2保持部材の移動経路がある。したがって、平面視において第1保持部材の移動経路と第2保持部材の移動経路とを大きくオーバーラップさせることが可能である。
【0019】
そして、第1保持部材と第2保持部材との干渉が生じ得る移送ゾーンにおいては、いずれか一方のみが選択的に進入し、両者がともに移送ゾーンに進入することは回避されている。移送ゾーン以外の空間領域においては、第1搬送部と第2搬送部とはそれぞれ独立に動作しても相互の干渉は生じない。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本発明によれば、それぞれが第1チャンバおよび第2チャンバにアクセスして基板を搬送する第1保持部材と第2保持部材とが、第1チャンバと第2チャンバとの間の移送ゾーンを挟んで上下に設定された移動経路を移動する。このため、平面視において両者の移動経路を大きくオーバーラップさせることで装置のフットプリントを小さくすることが可能である。そして、移送ゾーンへは第1保持部材および第2保持部材のいずれか一方のみが進入を許されるので、これらの移送ゾーンにおける干渉を確実に防止しつつ、移送ゾーン以外では他方に規制されない互いに独立した動作を行わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明に係る基板処理装置の一実施形態の全体構成を示す平面図である。
図2】1つの処理ユニットの構造を模式的に示す側面図である。
図3】1つの処理ユニットの構造を模式的に示す側面図である。
図4】基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】この基板処理装置における処理の概要を示すフローチャートである。
図6】この基板処理装置における基板の搬送経路を模式的に示す図である。
図7】この基板処理装置における基板の搬送経路を模式的に示す図である。
図8】この基板処理装置における基板の搬送経路を模式的に示す図である。
図9】この基板処理装置における基板の搬送経路を模式的に示す図である。
図10】ウェット搬送ロボットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明に係る基板処理装置の実施形態について説明する。この基板処理装置は、外部から搬入される基板に対し湿式処理を実施した後、基板を乾燥させて搬出するための処理装置である。例えば、適宜の洗浄液により基板をウェット洗浄した後、超臨界流体を用いた乾燥処理を行うという用途に、この基板処理装置を好適に適用可能である。そこで、以下では、当該基板処理装置が基板に対する一連の処理としてウェット洗浄処理および超臨界乾燥処理を実行する場合を例に挙げて説明する。ただし、以下に説明する装置レイアウトや各部の構成は、このような処理に限定されず、各種の処理に利用することが可能である。
【0023】
図1はこの発明に係る基板処理装置の一実施形態の全体構成を示す平面図である。基板処理装置1は、主要構成としてインデクサ部2と、1組または複数組の(この例では3組の)処理ユニット3と、ドライ搬送ロボット4と、制御ユニット5とを備えている。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(-Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
【0024】
インデクサ部2には、インデクサロボット21および受け渡しステージ22が設けられている。また、インデクサ部2の(-X)側側面には、複数枚の基板Sを収容したカセットCが1個または複数個装着可能となっている。インデクサロボット21はカセットCに収容されている未処理の基板Sを1枚ずつ取り出して受け渡しステージ22に載置する。また、処理ユニット3での処理後、受け渡しステージ22に載置された基板SをカセットCに収容する。図に矢印で示すように、インデクサロボット21は各カセットCへのアクセスのためにY方向に移動可能となっている。
【0025】
この例の基板処理装置1には、X方向に並べて配置された3組の処理ユニット3が設けられている。これらの処理ユニット3の構成および機能は同一である。各処理ユニット3は、洗浄チャンバ31、乾燥チャンバ32,32、流体ボックス33およびウェット搬送ロボット34をそれぞれ備えている。洗浄チャンバ31はその内部空間に基板Sを受け入れて洗浄処理を実行する。乾燥チャンバ32は、洗浄後の基板Sを受け入れて乾燥処理を実行する。流体ボックス33は、これらの処理に使用される各種の処理流体を貯留する。ウェット搬送ロボット34は、洗浄チャンバ31で洗浄された基板Sを乾燥チャンバ32に移送し乾燥処理に供する。
【0026】
より具体的には、箱型の洗浄チャンバ31の側面のうち(+Y)側の面に開口311が設けられており、該開口311を通して基板Sの出し入れが行われる。洗浄チャンバ31内では、適宜の洗浄液(例えば純水、脱イオン水など)による基板Sの洗浄処理と、洗浄後に基板Sの表面に残る洗浄液をより表面張力の小さい流体、例えばイソプロピルアルコール(IPA)への置換処理とが実行される。
【0027】
基板Sが表面に微細なパターンを形成されたものである場合、洗浄後の基板Sを直接乾燥させると洗浄液の表面張力に起因するパターン崩壊が生じることがある。洗浄液をより低表面張力の流体に置換してから乾燥させることで、この問題を回避することができる。基板に対する洗浄処理、置換処理およびこれらの処理を実行するための装置やチャンバの構成については公知であるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
基板Sは表面に低表面張力流体による液膜が形成された状態で、かつ水平姿勢で、ウェット搬送ロボット34により洗浄チャンバ31から搬出される。ウェット搬送ロボット34は、ロボット本体341に対して鉛直軸回りに回動自在かつ水平方向に伸縮自在のハンド342を有しており、ハンド342が基板Sの下面を保持した状態で移動することにより基板Sを搬送する。例えば図示しない吸着機構をハンド342に設けることで、基板Sを確実に保持することができる。洗浄チャンバ31から搬出された基板Sは乾燥チャンバ32の1つに搬入される。
【0029】
箱型の乾燥チャンバ32の側面のうち(-Y)側の面には開口321が設けられており、該開口321を通して基板Sの出し入れが行われる。乾燥チャンバ32内では、表面に液膜が形成された基板Sから液膜を除去し基板を乾燥させる乾燥処理が実行される。基板表面のパターンが極めて微細なものである場合、その倒壊を防止することのできる程度に表面張力が小さく、かつ常温、常圧で液体として利用可能な適当な物質が存在しないまたは入手困難であることがあり得る。
【0030】
このような場合に適用可能な乾燥処理として、超臨界乾燥処理を用いることができる。その原理は公知であるので詳しく説明しないが、超臨界乾燥処理は、高温、高圧下で超臨界流体となった物質の表面張力が極めて低いことを利用して基板Sの残存液体を置換し乾燥させるものである。この目的に利用可能な物質としては、例えば比較的低温、低圧で超臨界状態となる二酸化炭素がある。さらに、超臨界状態となった二酸化炭素はIPAやアセトン等の有機溶剤に対して高い可溶性を有するため、これらを置換するための流体として好適である。
【0031】
液膜が形成された基板Sが搬入された乾燥チャンバ32では、気密状態で二酸化炭素が導入され所定の温度および圧力が与えられることで、超臨界流体となった二酸化炭素が基板S表面の液膜を置換する。その後、チャンバ内が減圧されることにより二酸化炭素が揮発し、基板Sは乾燥状態となる。二酸化炭素が超臨界状態から直接気化することで、パターン倒壊の原因となる気液界面が生じることは回避される。これにより、微細なパターンも倒壊させることなく基板Sを乾燥させることができる。
【0032】
上記した各処理に使用される流体、すなわち洗浄液、有機溶剤、二酸化炭素等は、各処理ユニット3に設けられた流体ボックス33から洗浄チャンバ31および乾燥チャンバ32へ供給される。なお、この例では各チャンバでの処理の所要時間に応じそれらの稼働効率を向上させるために、各処理ユニット3において1つの洗浄チャンバ31と2つの乾燥チャンバ32とが組み合わされている。しかしながら、洗浄チャンバと乾燥チャンバとが少なくとも1つずつあればよく、組み合わせ数は任意である。また、流体ボックスが洗浄処理用と乾燥処理用とで個別に設けられてもよく、複数の処理ユニットに対して1つの流体ボックスが設けられてもよい。
【0033】
各処理ユニット3への未処理基板の搬入および各処理ユニット3からの処理済み基板の搬出は、ドライ搬送ロボット4により実行される。ドライ搬送ロボット4は、X方向に延びるガイドレール111に沿って水平移動自在のロボット本体401と、ロボット本体401の下部に設けられたハンド421,422とを備えている。ハンド421,422のそれぞれは、ロボット本体401に対して鉛直軸回りに回動自在かつ水平方向に伸縮自在となっており、基板Sの下面を保持した状態で移動することにより基板Sを搬送することが可能である。2つのハンド421,422は保持すべき基板の状態によって使い分けられる。すなわち、ハンド421は未処理基板を保持する際に使用され、ハンド422は処理済みの基板を保持する際に使用される。
【0034】
ロボット本体401のX方向への移動と、ロボット本体401に対するハンド421,422の移動との組み合わせにより、基板Sの搬送が実現される。より具体的には、受け渡しステージ22に載置された未処理基板Sをハンド421が保持し、いずれかの処理ユニット3の洗浄チャンバ31内へ搬入する。また、いずれかの乾燥チャンバ32で乾燥処理が終了した処理済み基板Sをハンド422が保持して搬出し、受け渡しステージ22まで搬送する。
【0035】
図2および図3は1つの処理ユニットの構造を模式的に示す側面図である。このうち図2はウェット搬送ロボット34がチャンバにアクセスするときの状態を示し、図3はドライ搬送ロボット4がチャンバにアクセスするときの状態を示している。なお、図を見やすくするために、ドライ搬送ロボット4については1つのハンドのみを図示している。また、チャンバ内の構造物についても記載を省略している。
【0036】
基板処理装置1では、図2に示すように、装置の外郭をなす筐体11の(-Y)側に洗浄チャンバ31が設けられ、その(+Y)側側面に開口311が設けられている。開口311には開閉自在のシャッタ312が取り付けられており、その閉状態(実線で示す)ではチャンバ内部空間S1が気密状態となり、開状態(点線で示す)では開口311を通して基板Sの出し入れが可能な状態となる。
【0037】
また、筐体11の(+Y)側には乾燥チャンバ32が設けられ、その(-Y)側側面に開口321が設けられている。開口321には開閉自在のシャッタ322が取り付けられており、その閉状態(実線で示す)ではチャンバ内部空間S2が気密状態となり、開状態(点線で示す)では開口321を通して基板Sの出し入れが可能な状態となる。このように、洗浄チャンバ31と乾燥チャンバ32とは、筐体11内においてウェット搬送ロボット34が配置された空間(以下、「搬送空間」と称する)S3を挟んでそれぞれの開口311,321が向かい合うように配置されている。
【0038】
ウェット搬送ロボット34では、洗浄チャンバ31と乾燥チャンバ32とに挟まれた搬送空間S3において筐体11の底部に固定されたロボット本体341から上向きに、昇降自在の昇降軸343が設けられ、その上部にハンド342が取り付けられている。ハンド342は、鉛直軸回りの回転と伸縮による水平方向の移動との組み合わせにより基板Sを搬送する。
【0039】
具体的には、図2に示すように、基板Sを保持するハンド342が洗浄チャンバ31の開口311の高さに位置決めされた状態で、ハンド342が図に示す中央位置よりも(-Y)方向側に水平移動することにより、洗浄チャンバ31の内部空間S1への進退が実現される。また、ハンド342が乾燥チャンバ32の開口321の高さに位置決めされた状態でハンド342が中央位置よりも(+Y)方向に水平移動することにより、乾燥チャンバ32の内部空間S2への進退が実現される。
【0040】
これを可能にするための構成として、図3に示すように、ウェット搬送ロボット34は、ハンド342を回動、伸縮させるためのハンド駆動機構346、ハンド342を支持する昇降軸343を昇降させるための昇降機構347、およびハンド342により基板Sを吸着保持させるための吸着機構348等を備える。
【0041】
いずれも詳細な構造については図示を省略するが、ハンド駆動機構346は、例えば、ハンド342を回動させるための回動モータと、ハンド342を水平移動させるためのモータおよびラック・アンド・ピニオン機構を有する水平移動機構とを備える。吸着機構348は、例えば、基板Sと接触しこれを吸着するための接触部と、接触部に吸着力を付与するためのポンプと、接触部とポンプとを連結する配管とを備える。
【0042】
洗浄チャンバ31の開口311と乾燥チャンバ32の開口321との間で開口高さを揃えておけば、洗浄チャンバ31から乾燥チャンバ32への基板Sの移送に際してハンド342は水平移動するだけで済む。特に上面に液膜が形成された基板Sについては、このように水平移動だけで移送が完了することは液膜維持の観点から有利である。
【0043】
液膜が形成された基板Sを搬送するウェット搬送ロボット34は、使用される化学物質に対する耐蝕性と、基板Sから落下する液体が内部に侵入するのを防止する防滴性とが必要とされる。この実施形態では純水やDIWを洗浄液として用い、また液膜形成には比較的腐食性の低いIPAを用いるので、高い耐蝕性を必要としない。
【0044】
ドライ搬送ロボット4はX方向に移動可能となっている。具体的には、筐体11に固定されたフレーム110に対し、X方向に延びるガイドレール111が取り付けられている。そして、ガイドレール111に対し、ドライ搬送ロボット4がX方向に走行自在に取り付けられている。ドライ搬送ロボット4は、ガイドレールに係合しX方向に走行する走行ブロック402と、走行ブロック402から下向きに延びるブーム部材403と、ブーム部材403に対し昇降自在に取り付けられた昇降部材404とを備えている。
【0045】
ロボット本体401は昇降部材404に取り付けられており、昇降部材404とともに昇降する。ロボット本体401の下部にはハンド421(422)が取り付けられている。ロボット本体401は、ハンド421(422)を鉛直軸回りに回動させ、また水平移動させる。
【0046】
これを可能とするための構成として、図3に示すように、ドライ搬送ロボット4は、ハンド421,422を回動、伸縮させるためのハンド駆動機構476、昇降ブロック404を昇降させることでロボット本体401とともにハンド421,422を昇降させるための昇降機構477、ハンド421,422により基板Sを吸着保持させるための吸着機構478、および走行ブロック402をX方向に走行させる走行機構479等を備える。
【0047】
いずれも詳細な構造については図示を省略するが、ハンド駆動機構476は、例えば、ハンド421,422をそれぞれ回動させるための複数の回動モータと、ハンド421,422を水平移動させるためのモータおよびラック・アンド・ピニオン機構とを有する水平移動機構とを備える。昇降機構477は、例えば、ハンド421,422を昇降させるための複数の昇降軸と、これら昇降軸を昇降させるためのモータおよびピニオン機構とを備える。吸着機構478は、例えば、基板Sと接触しこれを吸着するための接触部と、接触部に吸着力を付与するためのポンプと、接触部とポンプとを連結する配管とを備える。走行機構479は、例えば、走行ブロック402をX方向に走行させるためのモータおよびラック・アンド・ピニオン機構を備える。
【0048】
図2に示すように、ウェット搬送ロボット34が洗浄チャンバ31または乾燥チャンバ32にアクセスしているとき、ロボット本体401は上方に退避している。これにより、ハンド421(422)がウェット搬送ロボット34の動作に干渉することが回避されている。一方、図3に示すように、ハンド421(422)が開口311,321と同じ高さになるまでロボット本体401が下降することで、ハンド421(422)の洗浄チャンバ31または乾燥チャンバ32へのアクセスが可能になる。この場合には、ウェット搬送ロボット34がハンド342を下方へ退避させることで、ドライ搬送ロボット4への干渉が回避される。
【0049】
ドライ搬送ロボット4は、未処理の基板Sを洗浄チャンバ31に搬入する機能と、乾燥処理後の基板Sを乾燥チャンバ32から搬出する機能とを担う。このため、取り扱う基板Sはいずれも乾燥状態のものである。また、ドライ搬送ロボット4は濡れた基板Sを扱うウェット搬送ロボット34よりも上方に配置されているため、基板Sから落下した液体がドライ搬送ロボット4に付着するおそれは少ない。したがって、ハンド421,422やロボット本体401に高い防滴性は必要とされない。
【0050】
ただし、処理に使用される化学物質の蒸気が空間S3の雰囲気中に放散されこれに曝されるおそれがあるため、それに耐え得る程度の耐蝕性を有していることが好ましい。また、未処理の基板Sと処理後の基板Sとではその清浄度のレベルが異なるため、これらの基板Sを扱うハンドが区別されることが好ましい。このように、未処理あるいは処理済みの乾燥状態の基板Sを搬送する場合と、液膜が形成されたウェット状態の基板Sを搬送する場合とで求められる仕様が異なるため、それぞれの搬送に適合したドライ搬送ロボット4とウェット搬送ロボット34とが併用される。
【0051】
図4は基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。基板処理装置1の動作を司る制御ユニット5は、予め用意された制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)51を備えている。上記した基板処理装置1の各部は、CPU51により実行される制御プログラムに基づき動作する。制御ユニット5にはさらに、CPU51が実行すべき制御プログラムや各種の設定データ等を長期的に記憶するストレージ52、CPU51による制御プログラムの実行において必要なデータを一時的に記憶するメモリ53、外部装置やオペレータとの間で情報交換を行うためのインターフェース54等が設けられている。これら各構成は、一般的なパーソナルコンピュータが有するハードウェアと概ね同じものとすることができる。すなわち、適宜の制御プログラムを準備することで、公知の構成を有するパーソナルコンピュータを制御ユニット5として利用可能である。
【0052】
制御ユニット5により制御される各部の構成は概ね以下の通りである。洗浄チャンバ31では、開口311に設けられたシャッタ312を開閉駆動するためのシャッタ開閉機構316、および、予め定められた処理レシピに従い洗浄処理を実行する処理実行部317が設けられており、これらは制御ユニット5からの制御指令に応じて動作する。乾燥チャンバ32においても同様に、シャッタ322を開閉駆動するためのシャッタ開閉機構326、および、予め定められた処理レシピに従い乾燥処理を実行する処理実行部327が、制御ユニット5からの制御指令に応じて動作する。
【0053】
また、ウェット搬送ロボット34では、ハンド駆動機構346、昇降機構347、および吸着機構348等が、制御ユニット5からの制御指令に応じて動作する。また、ドライ搬送ロボット4では、ハンド駆動機構476、昇降機構477、吸着機構478、および走行機構479等が、制御ユニット5からの制御指令に応じて動作する。
【0054】
さらに、流体ボックス33では、洗浄チャンバ31および乾燥チャンバ32における処理に使用される各種の流体をこれらのチャンバに供給する流体供給機構336が、制御ユニット5からの制御指令に応じて動作する。
【0055】
図5はこの基板処理装置における処理の概要を示すフローチャートである。この処理は、制御ユニット5に設けられたCPU51が予め作成された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。基板処理装置1に未処理の基板Sが収容されたカセットCが少なくとも1つ装着された状態で、処理が開始される。
【0056】
最初に、カセットCから未処理の基板Sが1枚取り出される(ステップS101)。具体的には、インデクサロボット21が1つのカセットCから基板Sを取り出して、受け渡しステージ22に載置する。
【0057】
基板Sはドライ搬送ロボット4により洗浄チャンバ31へ搬入される(ステップS102)。具体的には、ドライ搬送ロボット4がガイドレール111に沿ってその(-X)側端部まで移動して、受け渡しステージ22に載置された基板Sをハンド421により保持する。その状態でドライ搬送ロボット4が(+X)方向へ移動し、いずれかの洗浄チャンバ31の近傍位置に位置決めされる。そして、シャッタ311が開かれた洗浄チャンバ31の内部空間S1にハンド421が進入して基板Sを搬入する。
【0058】
洗浄チャンバ31内では、搬入された基板Sに対する洗浄処理が行われる(ステップS103)。具体的には、流体ボックス33の流体供給機構から供給される洗浄液が基板Sに供給されることで基板Sが洗浄され、さらに低表面張力流体としてIPAが基板Sの表面に供給されて液膜が形成される。
【0059】
こうして液膜が形成された基板Sは洗浄チャンバ31から乾燥チャンバ32へ移送される(ステップS104)。すなわち、シャッタ312が開かれた洗浄チャンバ31に対してウェット搬送ロボット34のハンド342が進入し、液膜が形成されている基板Sを水平姿勢で保持して搬出する。さらに、ハンド342はシャッタ322が開かれた乾燥チャンバ32に進入して基板Sを乾燥チャンバ32の内部空間S2に搬入する。
【0060】
乾燥チャンバ32内では、搬入された基板Sに対する乾燥処理が行われる(ステップS105)。具体的には、シャッタ322が閉じられて内部空間S2が気密状態とされた後、内部空間SPに液相状態の二酸化炭素が導入される。液体の二酸化炭素は基板S上の液膜を構成するIPAをよく溶解するため、基板S上においてIPAは二酸化炭素に置換される。さらに、チャンバ内が所定の温度、圧力に調整されることにより、二酸化炭素が超臨界流体となる。この状態からチャンバ内が急速に減圧されることで、超臨界状態の二酸化炭素が液相を介することなく気化し、基板Sの表面から除去される。微細パターンの内部まで浸透した超臨界流体が気液界面を形成することなく除去されることで、パターン倒壊を招くことなく基板Sを乾燥させることができる。
【0061】
乾燥処理後の基板Sは乾燥チャンバ32から搬出され(ステップS106)、カセットCへ収容される(ステップS107)。具体的には、ドライ搬送ロボット4のハンド422が開口321を通して乾燥チャンバ32の内部空間S2へ進入し、処理済みの基板Sを搬出する。ドライ搬送ロボット4は(-X)方向に水平移動し、基板Sを受け渡しステージ22に載置する。基板Sはインデクサロボット21によりカセットCに収容される。これにより1枚の基板Sに対する処理が完結する。
【0062】
引き続き処理すべき未処理の基板Sがある場合には(ステップS108においてYES)、ステップS101に戻り、カセットCに収容されている他の未処理基板Sに対し上記と同様の処理が繰り返される。処理すべき全ての基板Sについて処理が終了すれば(ステップS108においてNO)、この処理は終了となる。
【0063】
複数の処理ユニット3のそれぞれが上記処理を実行することで、同時に複数枚の基板Sに対する処理を実行することができる。また、1つの処理ユニット3においても、上記各処理ステップを並行して実施することが可能である。例えば、乾燥チャンバ32内で1つの基板Sに対し乾燥処理を実行しつつ、他の基板Sに対し洗浄チャンバ31内での洗浄処理を実行することが可能である。また例えば、ウェット搬送ロボット34が洗浄チャンバ31から基板Sを取り出している間に、ドライ搬送ロボット4が次に処理すべき基板Sを搬送するようにすることができる。このように、各チャンバでの処理と搬送ロボットによる搬送とを組み合わせて複数の基板Sを効率よく処理することで、処理のスループット向上を図ることが可能である。
【0064】
このような動作を実現するに当たって問題となるのは搬送ロボット同士の干渉である。すなわち、上記したウェット搬送ロボット34およびドライ搬送ロボット4による基板Sの搬送動作では、洗浄チャンバ31へのアクセスはいずれも開口311を介して行われ、乾燥チャンバ32へのアクセスはいずれも開口321を介して行われる。このため、2つの搬送ロボット34,4による基板Sの搬送経路は、特にチャンバ開口311,321の周辺において互いに重なり合っている。したがって、ウェット搬送ロボット34とドライ搬送ロボット4とがそれぞれ独立して動作すると、搬送経路の重なり部分において干渉が生じ得る。この実施形態では、以下の構成によってこの問題の解消が図られている。
【0065】
図6ないし図9はこの基板処理装置における基板の搬送経路を模式的に示す図である。より具体的には、図6はインデクサロボット21、ウェット搬送ロボット34およびドライ搬送ロボット4により搬送される基板Sの経路を模式的に示す図である。また、図7はドライ搬送ロボット4が基板Sを搬送する際にハンド421,422および基板Sが通過する空間を表す平面図である。また、図8はウェット搬送ロボット34が基板Sを搬送する際にハンド342および基板Sが通過する空間を表す平面図であり、図9はその側面図である。なお、これらの図においては、図を見やすくするため、説明に直接関係しない一部構成の図示の省略や、符号の記載の省略を行っている。
【0066】
図6に破線矢印で示すように、インデクサロボット21は各カセットCから受け渡しステージ22への基板Sの搬送および受け渡しステージ22からカセットCへの基板Sの搬送を担う。ドライ搬送ロボット4は、実線矢印で示すように受け渡しステージ22から各洗浄チャンバ31へ未処理の基板Sを搬送する。また、白抜き矢印で示すように各乾燥チャンバ32から受け渡しステージ22へ処理済みの基板Sを搬送する。また、ウェット搬送ロボット34は、点線矢印で示すように、各処理ユニット3内で洗浄チャンバ31から乾燥チャンバ32への基板Sの搬送を担う。このとき搬送される基板Sは、その上面にIPAによる液膜が形成されたものである。
【0067】
このような搬送の過程においてハンドおよび基板が占める空間の軌跡をドットにより表したのが図7ないし図9である。図7においては、ドライ搬送ロボット4が3つ描かれているが、これらはそれぞれ、ドライ搬送ロボット4が受け渡しステージ22にアクセスしているとき、一の洗浄チャンバ31にアクセスしているとき、および一の乾燥チャンバ32にアクセスしているときの状態を示すためのものであり、前述の通りドライ搬送ロボット4は3つの処理ユニット3に対して1基設けられている。
【0068】
図7図8とを対比してわかるように、ウェット搬送ロボット34による基板Sの搬送経路と、ドライ搬送ロボット4による基板Sの搬送経路とは、平面視においてかなりの部分で重なりを有する。このことは、搬送経路のオーバーラップによる装置のフットプリント縮小という利点につながる。その一方で、搬送経路が分離されていないため、2種の搬送ロボットが同時に同一の空間に進入することによる干渉のリスクがある。
【0069】
この実施形態では、平面視における搬送経路のオーバーラップを進めることで装置の小型化を図りつつ、鉛直方向に搬送経路を分離することによって2種の搬送ロボットの干渉を防止している。図9(a)では、ウェット搬送ロボット34が洗浄チャンバ31から乾燥チャンバ32へ基板Sを移送する際に基板Sおよびハンド342が通過する空間領域がドットを付して示されている。この空間領域のうち搬送空間S3に含まれる領域(点線で囲まれる領域)を移送ゾーンZtと定義する。
【0070】
この移送ゾーンZtは、ドライ搬送ロボット4が洗浄チャンバ31へ基板Sを搬入する際および乾燥チャンバ32から基板Sを搬出する際にハンド421,422が進入する空間領域でもある。一方で、ウェット搬送ロボット34のハンド342は移送ゾーンZtとこれより下方の退避位置との間で昇降し、ドライ搬送ロボット4のハンド421,422は移送ゾーンZtとこれより上方の退避位置との間で昇降する。したがって、この移送ゾーンZtに両搬送ロボットが同時に進入することさえ避けるようにすれば、両搬送ロボットの干渉は生じない。
【0071】
具体的には、制御ユニット5がウェット搬送ロボット34およびドライ搬送ロボット4を制御するのに際して、一方の搬送ロボットのハンドが移送ゾーンZtに進入している期間には、他方の搬送ロボットのハンドの移送ゾーンZtへの進入を規制する、という規則を設ければよい。この規則が守られる限り、ドライ搬送ロボット4およびウェット搬送ロボット34の移送ゾーンZtへの進入は排他的に許容されることになる。したがって、ウェット搬送ロボット34とドライ搬送ロボット4とは個別の動作をしても互いに干渉することは避けられる。
【0072】
ドライ搬送ロボット4がX方向に移動する際にも、ハンド421,422を上下方向位置が移送ゾーンZtよりも上方となるようにしておく。こうすれば、ハンド421,422はウェット搬送ロボット34の上方を通過することとなるため、両者の干渉は生じない。したがって、例えばウェット搬送ロボット34による洗浄チャンバ31から乾燥チャンバ32への基板Sの移送と、ドライ搬送ロボット4による基板SのX方向への搬送とを同時に実行する動作シーケンスを設定することが可能である。
【0073】
なお、この考え方は、洗浄チャンバ31の開口311と乾燥チャンバ32の開口321とが同じ高さに配置されていない場合にも適用可能である。すなわち、図6(b)に示すように、洗浄チャンバ31の開口311と乾燥チャンバ32の開口321との間で鉛直方向位置が異なっている場合も有り得る。このような場合、ドットを付して示すように、基板Sおよびハンド342の移動の軌跡である移送ゾーンZtの形状は、上記例より複雑な形状となるものの同様に定義可能である。
【0074】
そして、この移送ゾーンZtに対して、一方の搬送ロボットのハンドのみを選択的に進入させるようにすることで、両搬送ロボットの干渉を防止することのできる動作シーケンスを実現可能である。より安全には、図9(b)に点線で囲んだ領域のように、移送ゾーンZtを含んでこれより広い空間領域に対し、2基の搬送ロボットのハンドを選択的に進入させるようにすることで、搬送ロボット間の干渉はより確実に防止される。
【0075】
以上説明したように、上記実施形態においては、洗浄チャンバ31が本発明の「第1チャンバ」として機能しており、開口311が本発明の「第1開口」に相当している。また、乾燥チャンバ32が本発明の「第2チャンバ」として機能しており、開口321が本発明の「第2開口」に相当している。
【0076】
また、上記実施形態では、ドライ搬送ロボット4が本発明の「第1搬送部」として機能している。そして、ハンド421,422が本発明の「第1保持部材」として、ハンド駆動機構476および昇降機構477が本発明の「第1移動機構」として、走行機構479が本発明の「水平移動機構」として、それぞれ機能している。一方、ウェット搬送ロボット34は本発明の「第2搬送部」として機能している。そして、ハンド342が本発明の「第2保持部材」として、ハンド駆動機構346および昇降機構347が本発明の「第2移動機構」として、それぞれ機能している。また、制御ユニット5が本発明の「制御部」として機能している。
【0077】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態のウェット搬送ロボット34は、洗浄チャンバ31内で表面に液膜が形成された基板Sを水平姿勢のまま乾燥チャンバ32へ搬送する。しかしながら、例えば超臨界流体を用いる乾燥処理においては、液膜が形成された状態で搬送されてきた基板を、乾燥チャンバに搬入する直前に上下に反転させるように構成された処理プロセスも提案されている。このような処理プロセスに対しても、上記したウェット搬送ロボットの構成の一部を以下のように変更することで対応可能である。
【0078】
図10はウェット搬送ロボットにおけるハンドの変形例を示す図である。図10(a)に示すように、この変形例のハンド345は、上記実施形態におけるウェット搬送ロボット34のハンド342に代えて使用可能なものである。このハンド345では、基板Sを保持する先端部345aと基部345bとが分離されており、これらがジョイント部345cにより接続されている。これにより、先端部345aは基部345bに対し回動自在となっている。ウェット搬送ロボット34には反転機構349がさらに設けられ、制御ユニット5からの制御指令に応じて反転機構349が作動することで、先端部345aが図10(a)に示す矢印方向に回動する。
【0079】
図10(b)に示すように、ハンド345は、洗浄チャンバ31で上面Saに液膜Lが形成された基板Wを吸着保持して水平姿勢のまま洗浄チャンバ31から搬出する。そして、基板Sを乾燥チャンバ32に搬入する直前に、反転機構349が先端部345aを上下方向に反転させる。これにより、液膜Lが形成されていた基板Sの上面Saが下面となり、液膜を構成する液体は下方へ落下する。基板Sはその後直ちに乾燥チャンバ32に搬送され、乾燥処理が施される。
【0080】
液膜Lを形成していた液体のほとんどは乾燥チャンバ32への搬入前に落下するが、微細なパターンの細部には残留しており、これを例えば超臨界流体で置換してから乾燥させることで、パターン倒壊を防止しつつ基板Sを乾燥させることができる。この方法では、乾燥チャンバ32内に持ち込まれる液体の量を少なくすることが可能である。
【0081】
このような反転処理は、ハンド345を移送ゾーンZtよりも十分に下方へ退避させた状態で実行される。具体的には、反転の過程において、反転される先端部345およびそれに保持される基板Sが浮遊ゾーンZtに進入することがないように、ハンド345の高さが設定される。例えば、反転直前の基板Sの上面Saと移送ゾーンZtの下端とのZ方向距離が基板Sの半径よりも大きくなるようにしておけばよい。このようにすれば、反転の過程で基板Sまたはハンド345が移送ゾーンZtに進入することがないので、反転処理の実行中においてもドライ搬送ロボット4を移送ゾーンZtに進入させることが可能となる。
【0082】
なお、反転処理の実行中にドライ搬送ロボット4が洗浄チャンバ31または乾燥チャンバ32にアクセスすることがない処理プロセスであれば、反転処理時のハンド345の高さは、反転される先端部345aおよび基板Sが移送ゾーンZtの上端よりも上方に突出することが回避されていれば足りるとも考えられる。このようにすれば、少なくともドライ搬送ロボット4がX方向へ移動する際にウェット搬送ロボット34が干渉することは避けられる。
【0083】
このような反転処理を伴うプロセスとしては、上記した超臨界流体を用いる基板の乾燥処理の他、例えば基板の両面を処理するために基板の反転が必要となるものがある。上記構成は、このようなプロセスにも好適に適用可能である。
【0084】
また、上記実施形態は、「第1チャンバ」である洗浄チャンバ31で洗浄液を用いた洗浄処理を、「第2チャンバ」である乾燥チャンバ32で超臨界流体を用いた乾燥処理を行うものである。しかしながら、本発明の適用対象となる処理はこれらに限定されない。すなわち、2以上のチャンバで順次基板が処理される種々のプロセスにおける基板搬送に対し、本発明を適用することが可能である。特に、ウェット状態の基板をチャンバ間で搬送する必要のあるプロセスに好適である。また、処理に使用される化学物質の種類も上記に限定されず任意である。
【0085】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置において、例えば第1搬送部は、第1移動機構が第1保持部材を移送ゾーンよりも上方に位置決めした状態で第1移動機構を水平移動させる水平移動機構を有していてよい。このような構成によれば、第1保持部材により基板を保持した状態で第1移動機構を水平移動させることで、基板を水平方向に大きく移動させることができる。この場合においても、第1保持部材は移送ゾーンよりも上方を移動するため、第2搬送部の動作に影響を与えることは回避される。
【0086】
この場合さらに、第1チャンバと、当該第1チャンバから基板が移送される第2チャンバとを1組にした処理ユニットを複数備え、処理ユニットごとに1基ずつ第2搬送部が設けられ、複数の処理ユニットに対して1基の第1搬送部が設けられてもよい。このような構成によれば、各処理ユニット内での第1チャンバから第2チャンバへの基板の移送には専用の第2搬送部を用いることで、第1チャンバでの処理から第2チャンバでの処理への移行を素早く行うことができる。一方、外部からの処理前の基板の搬入および処理済みの基板の外部への搬出については処理ユニット間で共通の第1搬送部を用いることで、装置の小型化を図ることができる。
【0087】
また例えば、第2搬送部は、第1チャンバで上面に液膜が形成された基板を水平姿勢で第2チャンバに移送し、第1搬送部は、液膜が形成される前の基板を第1チャンバへ搬入し、液膜が除去された後の基板を第2チャンバから搬出するように構成されてよい。このような構成では、液膜が形成された基板と保持と、液膜が形成されていない基板の保持との間で第1搬送部と第2搬送部とを使い分けることが可能となる。第1搬送部が移送ゾーンよりも上方に配置されることで、仮に第2搬送部が保持する基板から液体が落下したとしても、第1搬送部やそれに保持される基板に付着することは避けられる。
【0088】
この場合さらに、第1搬送部は、液膜が形成される前の基板および液膜が除去された後の基板をそれぞれ保持する複数の第1保持部材を有する構成であってよい。このような構成によれば、処理前の基板と処理後の基板とを異なる第1保持部材で保持することで、例えば処理前の基板に付着していた異物が処理後の基板に付着するといった不具合を解消することができる。
【0089】
また例えば、第2チャンバは、内部空間内で、基板から液膜を除去し基板を乾燥させる乾燥処理を実行するものであってよい、例えば内部空間内で超臨界流体を用いた乾燥処理を実行するものであってよい。このような構成によれば、表面に液膜が形成された状態で基板がチャンバ間を搬送され、第2チャンバ内で乾燥処理が実行されるので、搬送中の基板表面が搬送空間の雰囲気に露出することが回避される。
【0090】
また例えば、第2搬送部は、液膜が形成された基板を第1チャンバから搬出した後、基板を第2チャンバに搬入する前に、基板を保持する第2保持部材の上下を反転させる反転機構を有するものであってよい。このような構成によれば、基板の表裏を反転させることで、基板表面の液膜除去や第2チャンバでの裏面処理等が可能となる。
【0091】
また例えば、第1チャンバの側面に設けられた第1開口と第2チャンバの側面に設けられた第2開口とが搬送空間を挟んで同じ高さで向き合って配置されていてもよい。このような構成によれば、第2搬送部は、第1チャンバから第2チャンバへの基板の移送を、単なる水平方向の移動によって実現することが可能である。特に基板に液膜が形成されている場合には、移送中の液膜の維持を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明は、複数のチャンバへの基板の搬送を複数の搬送機構を用いて行う基板処理装置全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 基板処理装置
3 処理ユニット
4 ドライ搬送ロボット(第1搬送部)
5 制御ユニット(制御部)
31洗浄チャンバ(第1チャンバ)
32 乾燥チャンバ(第2チャンバ)
34 ウェット搬送ロボット(第2搬送部)
311 開口(第1開口)
321 開口(第2開口)
342 ハンド(第2保持部材)
346 ハンド駆動機構(第2移動機構)
347 昇降機構(第2移動機構)
349 反転機構
421,422 ハンド(第1保持部材)
476 ハンド駆動機構(第1移動機構)
477 昇降機構(第1移動機構)
479 走行機構(水平移動機構)
S 基板
S1,S2 内部空間
S3 搬送空間
Zt 移送ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10