(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】回転式切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 25/00 20060101AFI20221004BHJP
F16K 5/04 20060101ALI20221004BHJP
F16K 11/085 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16K25/00
F16K5/04 A
F16K11/085 Z
(21)【出願番号】P 2019058505
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】393030534
【氏名又は名称】リンナイ精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】梅村 鎮基
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 一幸
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168969(JP,A)
【文献】実開昭57-112170(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 11/00-11/24
F16K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の周面を持つ弁室と、弁室の軸方向一端に連通する軸方向ポートと、弁室の周面の周方向一部に開口する少なくとも1つの径方向ポートとを有する弁筐と、弁室内に回転自在に設けられた円筒状の周壁部を持つ弁体とを備え、弁体の軸方向一端は、弁体の内部空間と軸方向ポートとを常時連通するように開放され、弁体の周壁部に、弁体の回転で弁体の内部空間と径方向ポートとを連通可能な弁開口が形成された回転式切換弁であって、
径方向ポートの弁室に対する開口端の周囲に設けられた環状のパッキン装着溝に、弁体の周壁部外周面に接する環状のパッキンが装着され、
パッキン装着溝の外周側溝壁は、弁筐に一体に形成され、径方向ポートの弁室に対する開口端を囲うパッキン装着溝の内周側溝壁と、パッキンの弁室側と反対の基端部を受けるパッキン装着溝の底壁とを有する、弁筐とは別体の環状のパッキン装着部材が設けられ、パッキン装着部材が径方向ポートにおいて弁筐に嵌合固定されるものにおいて、
パッキン装着部材の弁筐に対する固定手段は、弁筐及びパッキン装着部材以外の部品を用いずに構成されることを特徴とする回転式切換弁。
【請求項2】
弁筐の径方向ポートの周壁面に凹溝が形成され、パッキン装着部材に、凹溝に弾性的に入り込んで係合する爪部が設けられ、凹溝と爪部とで固定手段が構成されることを特徴とする請求項1記載の回転式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の周面を持つ弁室と、弁室の軸方向一端に連通する軸方向ポートと、弁室の周面の周方向一部に開口する少なくとも1つの径方向ポートとを有する弁筐と、弁室内に回転自在に設けられた円筒状の周壁部を持つ弁体とを備え、弁体の軸方向一端は、弁体の内部空間と軸方向ポートとを常時連通するように開放され、弁体の周壁部に、弁体の回転で弁体の内部空間と径方向ポートとを連通可能な弁開口が形成された回転式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、この種の回転式切換弁においては、径方向ポートの弁室に対する開口端の周囲に設けられた環状のパッキン装着溝に、弁体の周壁部外周面に接する環状のパッキンが装着され、径方向ポートから弁体の周壁部外周面と弁室の周面との間の隙間に流体が漏れ出ることをパッキンで防止できるようにしている。
【0003】
尚、パッキン装着溝の外周側溝壁と、径方向ポートの弁室に対する開口端を囲うパッキン装着溝の内周側溝壁と、パッキンの弁室側と反対の基端部を受けるパッキン装着溝の底壁とを弁筐に一体に形成することも可能である。然し、これでは、パッキンを弁室側からパッキン装着溝に装着することが必要になり、組立性が悪くなる。
【0004】
そこで、従来、パッキン装着溝の外周側溝壁は、弁筐に一体に形成するが、パッキン装着溝の内周側溝壁と底壁は、弁筐とは別体で、径方向ポートにおいて弁筐に嵌合固定な環状のパッキン装着部材に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、パッキン装着部材に形成した内周側溝壁にパッキンを外嵌させた状態でパッキン装着部材を径方向ポートに外方から挿入するだけで、パッキンを組み付けることができ、組立性が向上する。
【0005】
ここで、上記従来例では、径方向ポートの外端部に取付けられる、弁筐とは別体の口金部材によりパッキン装着部材を外方から押えることで、パッキン装着部材を弁筐に固定している。これでは、口金部材が必要になると共に、口金部材と弁筐との間をシールするシール部材も必要になり、部品点数が増してコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、パッキン装着部材を用いて、且つ、コストダウンを図ることができるようにした回転式切換弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状の周面を持つ弁室と、弁室の軸方向一端に連通する軸方向ポートと、弁室の周面の周方向一部に開口する少なくとも1つの径方向ポートとを有する弁筐と、弁室内に回転自在に設けられた円筒状の周壁部を持つ弁体とを備え、弁体の軸方向一端は、弁体の内部空間と軸方向ポートとを常時連通するように開放され、弁体の周壁部に、弁体の回転で弁体の内部空間と径方向ポートとを連通可能な弁開口が形成された回転式切換弁であって、径方向ポートの弁室に対する開口端の周囲に設けられた環状のパッキン装着溝に、弁体の周壁部外周面に接する環状のパッキンが装着され、パッキン装着溝の外周側溝壁は、弁筐に一体に形成され、径方向ポートの弁室に対する開口端を囲うパッキン装着溝の内周側溝壁と、パッキンの弁室側と反対の基端部を受けるパッキン装着溝の底壁とを有する、弁筐とは別体の環状のパッキン装着部材が設けられ、パッキン装着部材が径方向ポートにおいて弁筐に嵌合固定されるものにおいて、パッキン装着部材の弁筐に対する固定手段は、弁筐及びパッキン装着部材以外の部品を用いずに構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、弁筐及びパッキン装着部材以外の部品を用いずに構成される固定手段でパッキン装着部材が弁筐に固定されるため、部品点数が増加せず、上記従来例のものに比しコストダウンを図ることができる。
【0010】
尚、固定手段としては、圧入、熱変形、接着等を例示できるが、これらは多少とも手間がかかる。これに対し、弁筐の径方向ポートの周壁面に凹溝を形成し、パッキン装着部材に、凹溝に弾性的に入り込んで係合する爪部を設けて、凹溝と爪部とで固定手段を構成すれば、パッキン装着部材を径方向ポートに外方から挿入するだけでワンタッチでパッキン装着部材を固定でき、組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の回転式切換弁の切断側面図。
【
図3】実施形態の回転式切換弁に設けられる弁体の斜視図。
【
図4】実施形態の回転式切換弁に設けられるパッキン及びパッキン装着部材の斜視図。
【
図5】実施形態の回転式切換弁に設けられる弁筐の上半部を切除した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、
図2に示す本発明の実施形態の回転式切換弁は、円筒状の周面を持つ弁室11と、弁室11の軸方向一端(
図1の下端)に連通する軸方向ポート12と、弁室11の周面の周方向2箇所に開口する第1と第2の一対の径方向ポート13
1,13
2とを有する弁筐1を備えている。尚、この回転式切換弁は、第1径方向ポート13
1から軸方向ポート12に流す第1の流体と第2径方向ポート13
2から軸方向ポート12に流す第2の流体との混合割合を切換える混合弁、或いは、軸方向ポート12に流入する流体の第1径方向ポート13
1と第2径方向ポート13
2とへの分配割合を切換える分配弁として用いるものである。
【0013】
回転式切換弁は、更に、弁室11内に回転自在に設けられた円筒状の周壁部21を持つ弁体2を備えている。
図3も参照して、弁体2の軸方向一端は、弁体2の内部空間と軸方向ポート12とを常時連通するように開放されている。また、弁体2の周壁部21には、弁体2の回転で弁体2の内部空間と第1と第2の各径方向ポート13
1,13
2とを連通可能な単一の弁開口22が形成されている。弁体2の軸方向他端の端壁には、弁軸23が立設されている。そして、弁軸23を弁筐1の外面に搭載したモータ3に連結して、モータ3により弁体2を回転させるようにしている。
【0014】
また、弁体2の軸方向他端の端壁の外周部の1箇所には、弁室11の軸方向他端面に形成した円弧状溝14に挿入されるストッパ突起24が突設されている。そして、円弧状溝14の両端にストッパ突起24が当接することで、弁体2の回転範囲が制限されるようにしている。
【0015】
弁体2には、更に、弁開口22の周方向中間部を通る弁体2の直径方向に沿って軸方向に延在する補強リブ25が設けられている。ここで、弁開口22が存在しない周方向部分の周壁部21が第1と第2の各径方向ポート131,132に対向して各径方向ポート131,132を閉鎖したときに、各径方向ポート131,132に対向する周壁部21の部分が各径方向ポート131,132の流体圧に押されて径方向内方に撓むと、各径方向ポート131,132のシール不良を生ずる。補強リブ25は、後述する如く各径方向ポート131,132のシール不良を防止するのに役立つ。
【0016】
ところで、弁小型化のため、弁体2の径も小さくすると、弁体2での通路抵抗が大きくなる。そこで、弁開口22の軸方向一端側(
図1、
図3の下端側、即ち、軸方向ポート12側)に隣接する弁体2の周壁部21の部分を、弁開口22の周方向範囲よりも狭い、補強リブ25を中心とした所定の周方向範囲の周壁部分21aを除いて切り欠いている。周壁部21を切り欠いた部分は、
図3に2点鎖線で示されている。これによれば、周壁部21を切り欠いた部分では、周壁部21の厚み分だけ軸方向ポート12との間の通路面積が大きくなり、弁体2の小径化による弁体2での通路抵抗の増加を抑制することができる。
【0017】
尚、弁開口22が存在しない周方向部分の周壁部21が第1と第2の各径方向ポート131,132に対向したときに、この周壁部21の部分に作用する各径方向ポート131,132の流体圧は、補強リブ25を介して上記周壁部分21aで受けることができる。そのため、各径方向ポート131,132に対向する周壁部21の部分の撓みでシール不良を生ずることを防止できる。
【0018】
第1と第2の各径方向ポート131,132の弁室11に対する開口端の周囲には、環状のパッキン装着溝4が設けられている。そして、各パッキン装着溝4に、弁体2の周壁部21の外周面に接する環状の各パッキン5が装着されている。尚、各パッキン装着溝4及び各パッキン5は、弁室11側から見た形状がほぼ方形の環状になっている。
【0019】
また、本実施形態において、各パッキン装着溝4の外周側溝壁41は、弁筐1に一体に形成されている。一方、各径方向ポート131,132の弁室11に対する開口端を囲う各パッキン装着溝4の内周側溝壁42と、各パッキン5の弁室11側と反対の基端部51を受ける各パッキン装着溝4の底壁43とは、弁筐1とは別体で、各径方向ポート131,132において弁筐1に嵌合固定される環状の各パッキン装着部材6に形成されている。
【0020】
図4を参照して、各パッキン装着部材6の上記底壁43となる部分から外方にのびる筒部61の周方向4箇所には、筒部61の径方向に弾性変形可能で、外方の端部が筒部61外面側に盛上った爪部62が設けられている。また、
図5に示す如く、各径方向ポート13
1,13
2の周面には、各爪部62に対応する凹溝131が形成されている。そして、各パッキン装着部材6に形成した内周側溝壁42に各パッキン5を外嵌させた状態で、各パッキン装着部材6を各径方向ポート13
1,13
2に外方から挿入したときに、各パッキン装着部材6が所定のセット位置に到達したところで、各爪部62が凹溝131に弾性的に入り込んで係合し、各パッキン装着部材6が各径方向ポート13
1,13
2において弁筐1に嵌合固定されるようにしている。
【0021】
尚、各パッキン5の基端部51は、外周側に屈曲するフランジ状に形成されている。また、各径方向ポート131,132の周面に、各パッキン装着溝4の外周側溝壁41となる部分の基端に位置させて、外方を向く段差132を形成している。そして、各パッキン装着部材6が上記セット位置に到達したとき、各パッキン5のフランジ状基端部51が段差132と底壁43との間に挟まれるようにしている。
【0022】
また、各パッキン装着部材6の筒部61の先端部外面の対角位置には、突条63が突設されている。一方、各径方向ポート131,132の周面の対角位置には、突条63が係合可能な各径方向ポート131,132の長手方向にのびる溝部133が形成されている。そして、溝部133への突条63の係合で各パッキン装着部材6が位相決めされるようにしている。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、弁筐1及び各パッキン装着部材6以外の部品を用いずに構成される、各パッキン装着部材6の弁筐1に対する固定手段を、各径方向ポート131,132の周面に形成した凹溝131と各パッキン装着部材6に設けた爪部62とで構成しているが、圧入、熱変形、接着等で固定手段を構成することも可能である。但し、上記実施形態によれば、各パッキン装着部材6を各径方向ポート131,132に外方から挿入するだけで、凹溝131に爪部62が係合してワンタッチで各パッキン装着部材6を固定できるため、組立性が向上し有利である。
【0024】
また、上記実施形態では、弁筐1に第1と第2の2つの径方向ポート131,132が設けられているが、単一の径方向ポートを設けて、軸方向ポートと径方向ポートとの間の連通、遮断や両ポート間に流れる流体の流量の切換えを行う回転式切換弁にも同様に本発明を適用できる。更に、上記実施形態の回転式切換弁は、モータ3により弁体2を回転させる電動式であるが、手動式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…弁筐、11…弁室、12…軸方向ポート、131,132…径方向ポート、131…凹溝、2…弁体、21…周壁部、22…弁開口、4…パッキン装着溝、41…パッキン装着溝の外周側溝壁、42…パッキン装着溝の内周側溝壁、43…パッキン装着溝の底壁、5…パッキン、51…パッキンの基端部、6…パッキン装着部材、62…爪部。