(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】密閉式燃料タンクシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20221004BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F02M25/08 H
F02M37/00 301H
(21)【出願番号】P 2019063974
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110562(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207963(WO,A1)
【文献】特開平07-217504(JP,A)
【文献】特開2017-044113(JP,A)
【文献】特開昭61-258963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を貯蔵する燃料タンクと、
前記燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガス中の燃料粒子を内部に吸着保持するキャニスタと、
前記燃料タンクと前記キャニスタとを連通する燃料蒸発ガス通路と、
前記燃料蒸発ガス通路に設けられて前記燃料蒸発ガス通路を封鎖する電磁式の封鎖弁と、
一端側が前記燃料タンクに取り付けられ、他端側の給油口にタンクキャップが取り付けられるインレットパイプと、
前記燃料タンク内の圧力を検出する圧力センサと、
前記タンクキャップの他端側を覆う開閉可能なリッドと、
前記リッドが閉じられているときに前記リッドをロックするリッドロック装置と、
前記燃料タンクへの給油要求を検知する給油要求検知器と、
制御装置と、
を備える密閉式燃料タンクシステムであって、
前記制御装置は、
前記燃料タンクへの給油要求を検知したときの前記燃料タンク内の圧力が所定の負圧値未満であれば、前記封鎖弁の開度を全閉状態から開方向に変化させ、前記燃料タンク内の圧力が前記負圧値以上となって前記封鎖弁を全閉状態に戻してから、前記リッドロック装置による前記リッドのロックを解除するように構成される、
密閉式燃料タンクシステム。
【請求項2】
前記リッドの開閉状態を検出するリッド開閉センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記リッドのロックが解除されて前記リッドが開かれてから、前記リッドが閉じられたことを検出するまでの期間において、前記燃料タンク内の圧力が前記負圧値未満であれば、前記封鎖弁の開度を全閉状態から開方向に変化させるように構成される、
請求項1に記載の密閉式燃料タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉式燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の密閉式燃料タンクシステムとして、給油要求を検知したときに燃料タンクを封鎖している封鎖弁を一旦開弁した後、封鎖弁を閉弁してリッドを開き、その後に燃料タンク内の圧力が所定の正圧値以上になったときは、燃料タンク内の燃料蒸発ガスがインレットパイプを逆流して給油口から排出されるのを抑制するために、封鎖弁を開弁して燃料タンク内の圧力を低下させるように構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の密閉式燃料タンクシステムの場合、封鎖弁の閉弁中に燃料タンク内の圧力が何らかの要因で負圧になったときには、封鎖弁が開弁されることがないので、インレットパイプの給油口に取り付けられたタンクキャップが給油口に張り付いてしまって、給油作業時などにタンクキャップが取り外し難くなるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、タンクキャップが取り外し難くなるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様による密閉式燃料タンクシステムは、燃料を貯蔵する燃料タンクと、燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガス中の燃料粒子を内部に吸着保持するキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通する燃料蒸発ガス通路と、燃料蒸発ガス通路に設けられて燃料蒸発ガス通路を封鎖する電磁式の封鎖弁と、一端側が燃料タンクに取り付けられ、他端側の給油口にタンクキャップが取り付けられるインレットパイプと、燃料タンク内の圧力を検出する圧力検出器と、制御装置と、を備える。そして制御装置は、燃料タンク内の圧力が所定の負圧値未満であれば、封鎖弁の開度を全閉状態から開方向に変化させるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のこの態様によれば、タンクキャップが取り外し難くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による密閉式燃料タンクシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるリッドロック装置の主要な構成部品、及びリッドロック装置の動作について説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による封鎖弁の制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による密閉式燃料タンクシステム100の概略構成図である。
【0011】
密閉式燃料タンクシステム100は、燃料タンク1と、燃料供給装置2と、インレットパイプ3と、リッド4と、リッドロック装置5と、燃料蒸発ガス処理装置6と、電子制御ユニット200と、を備える。
【0012】
燃料タンク1は、液体燃料を貯蔵するためのタンクである。本実施形態による燃料タンク1には、車両に搭載された内燃機関10に供給するための燃料が貯蔵されている。燃料タンク1の内部には、燃料タンク1内の圧力(以下「タンク内圧」という。)P[kPa]を検出するタンク内圧センサ201と、燃料タンク1内に貯蔵されている燃料の表面高さ(液位)を検出することにより燃料タンク1内に貯蔵されている燃料の残量を検出する液位センサ202と、が設けられる。なお、タンク内圧センサ201によって検出される圧力はゲージ圧である。
【0013】
燃料供給装置2は、燃料タンク1内の燃料を燃料供給先に供給するための装置である。本実施形態による燃料供給装置2は、燃料供給先としての内燃機関10に燃料を供給することができるように構成される。具体的には本実施形態による燃料供給装置2は、燃料タンク1内に設けられた燃料ポンプ21と、内燃機関10の吸気マニホールド11に設けられて内燃機関10の燃焼室に供給するための燃料を噴射するインジェクタ22と、燃料ポンプ21とインジェクタ22とを接続する燃料供給通路23と、を備える。燃料ポンプ21を駆動することで、燃料タンク1内の燃料が燃料供給通路23を介してインジェクタ22に供給される。
【0014】
インレットパイプ3は、外部の燃料を燃料タンク1内に供給するための給油用の通路であって、その一端側が燃料タンク1に接続され、他端側がガソリンスタンド等に設置された給油ノズルを挿入するための給油口となっている。インレットパイプ3の給油口には、給油作業者によって着脱可能なタンクキャップ7が取り付けられる。
【0015】
リッド4は、タンクキャップ7が取り付けられたインレットパイプ3の給油口の外側を覆う開閉可能な蓋体である。リッド4の裏側には、リッド4が閉状態のときにリッド4を開方向に向けて押圧する図示しないリッド押圧部材が取り付けられていると共に、後述するリッドロック装置5のロックシャフト54を係合させるための係合部材41が設けられている。本実施形態によるリッド4は、車両のボデー8に開閉可能に取り付けられており、リッド4の近傍の車両のボデー8の内側には、リッド4の開閉状態を検出するためのリッド開閉センサ203が取り付けられている。
【0016】
リッドロック装置5は、機械的にリッド4をロックしてリッド4が開かないようにするための装置である。リッドロック装置5については、
図1に加えて
図2を参照して説明する。
【0017】
図2は、リッドロック装置5の主要な構成部品、及びリッドロック装置5の動作について説明するための図である。
【0018】
リッドロック装置5は、モータ51と、モータ51の出力軸51aに形成されたウォームギヤ52と、ウォームギヤ52と噛み合う半円状のホイールギヤ53と、ホイールギヤ53に連結されて軸方向(図中上下方向)に移動可能なロックシャフト54と、を備える。ロックシャフト54の基端側(図中下側)には、図示しないコイルスプリングが取り付けられており、このコイルスプリングによって、ロックシャフト54は常時、図中上方向に押圧されている。
【0019】
図2の左側に示すように、リッドロック装置5がロック状態のときは、ロックシャフト54の先端54aがリッド4の裏側に設けられた係合部材41の係合溝41aに係合しており、これにより、リッド4が開かないようになっている。
【0020】
このロック状態のときに、モータ51を駆動して出力軸51aを回転させると、その出力軸51aに形成されたウォームギヤ52と噛み合う半円状のホイールギヤ53が図中反時計回りに回転し、これにより、ホイールギヤ53と連結されたロックシャフト54がコイルスプリングの押圧力に抗して図中下側、すなわちリッドロック装置5の内部側に引き込まれる。その結果、
図2の右側に示すように、ロックシャフト54の先端54aが係合溝41aから引き抜かれてアンロック状態となり、リッド押圧部材(図示せず)によってリッド4が開方向に押圧されて、リッド4が自動的に開くようになっている。
【0021】
このようにしてリッド4が開くと、ロックシャフト54がコイルスプリングの押圧力によって、図中上側に移動する。そしてリッド4を閉じるときには、リッド4が閉じられる過程でロックシャフト54の先端54aが係合部材41の傾斜壁41bと当接し、これにより、傾斜壁41bによってロックシャフト54がコイルスプリングの押圧力に抗してリッドロック装置5の内部側に一旦引き込まれた後、ロックシャフト54の先端54aが係合溝41aに達すると、ロックシャフト54がコイルスプリングの押圧力によって、図中上側に再度移動し、ロックシャフト54の先端54aが係合溝41aに係合してロック状態となる。
【0022】
図1に戻り、燃料蒸発ガス処理装置6は、燃料タンク1内で発生した燃料蒸発ガスが、大気中に放出されるのを抑制するための装置であって、燃料蒸発ガス通路61と、封鎖弁62と、圧力制御弁63と、キャニスタ64と、大気連通路65と、パージ通路66と、パージ弁67と、を備える。
【0023】
燃料蒸発ガス通路61は、燃料タンク1の内部と、キャニスタ64の内部と、を連通させるための通路である。燃料タンク1の内部で生じた燃料蒸発ガスは、燃料タンク1とキャニスタ64との内部圧力差によって、燃料蒸発ガス通路61を介してキャニスタ64の内部に導入される。
【0024】
封鎖弁62は、燃料蒸発ガス通路61に設けられる常閉型の電磁弁であり、その開閉は、電子制御ユニット200によって行われる。封鎖弁62は、その開度を単に全閉状態と全開状態とに制御できるものであってもよいし、全閉状態と全開状態との間で段階的に制御できるものであってもよい。この封鎖弁62によって、燃料タンク1を密閉することができる。
【0025】
圧力制御弁63は、燃料タンク1の耐久性を確保するために、燃料蒸発ガス通路61に封鎖弁62と並列に設けられた機械式のリリーフ弁であって、正方向リリーフ弁と逆方向リリーフ弁とを備える。正方向リリーフ弁は、タンク内圧がキャニスタ64内の圧力に比べて大幅に高くなったときに自動的に開弁するように構成される。一方で逆方向リリーフ弁は、例えばタンク内圧が負圧となって、キャニスタ64内の圧力に比べて大幅に低くなった場合に自動的に開弁するように構成される。本実施形態では正方向リリーフ弁の開弁圧は20[kPa]に設定され、逆方向リリーフ弁の開弁圧は15[kPa]に設定される。これにより、タンク内圧が過剰に高くなったり、又は過剰に低くなったりするのを防止することができるので、燃料タンク1の変形等を抑制して燃料タンク1の耐久性を確保することができる。
【0026】
キャニスタ64は、その内部に例えば活性炭などの燃料吸着材64aが充填されたものである。燃料吸着材64aは、燃料蒸発ガス通路61を介してキャニスタ64の内部に流入してきた燃料蒸発ガス中の燃料粒子(炭化水素)を一時的に吸着し、保持する。燃料粒子が取り除かれたガスは、キャニスタ64に設けられた大気開放口64bに接続された大気連通路65を介して、キャニスタ64の外部(大気)に排出される。
【0027】
大気連通路65は、一端がキャニスタ64の大気開放口64bに接続され、開放端となっている他端がリッド4の内側に配置される通路である。前述したように、キャニスタ64によって燃料粒子が取り除かれたガスは、この大気連通路65の他端から大気に排出される。その一方で、後述するように、パージ制御が実施されたときやタンク内圧が負圧となっているときに封鎖弁62が開かれたときには、この大気連通路65の他端から空気が吸い込まれることなる。そのため、大気連通路65には、吸い込まれた空気中の異物を取り除くためのエアクリーナ68が設けられている。
【0028】
パージ通路66は、キャニスタ64の内部と、内燃機関10の吸気通路12(詳細にはスロットル弁13よりも吸気流れ方向下流側の吸気通路)の内部と、を連通させるための通路である。
【0029】
パージ弁67は、パージ通路66に設けられた常閉型の電磁弁であり、その開閉は、電子制御ユニット200によって行われる。
【0030】
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バスによって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、CPU(マイクロプロセッサ)、入力ポート及び出力ポートを備える。
【0031】
電子制御ユニット200には、前述したタンク内圧センサ201や液位センサ202、リッド開閉センサ203などの各種センサからの出力信号が入力される。また電子制御ユニット200には、燃料タンク1への給油要求を検知するための給油スイッチ204からの出力信号が入力される。給油スイッチ204は、本実施形態では車両の室内に設けられており、給油作業を行うときにリッド4のロックを解除するために例えばドライバ等によって操作されるスイッチである。
【0032】
そして電子制御ユニット200は、入力されたこれらの出力信号等に基づいて、リッドロック装置5のモータ51や封鎖弁62、パージ弁67などを制御する。
【0033】
ところで、キャニスタ64の内部に充填された燃料吸着材64aに吸着可能な燃料粒子量には上限がある。そのため、燃料吸着材64aに吸着された燃料粒子量(以下「吸着燃料粒子量」という。)が、所定の吸着上限量に達すると、それ以上の燃料粒子を燃料吸着材64aによって吸着することができなくなる。したがって、吸着燃料粒子量が吸着上限量に達している状態で、燃料蒸発ガス通路61を介して燃料蒸発ガスがキャニスタ64の内部に流入してくると、燃料蒸発ガスがキャニスタ64の大気開放口64bから大気連通路65を介してそのまま外部に漏れてしまうことになる。
【0034】
そのため、電子制御ユニット200は、内燃機関10の運転中に、定期的に、又は吸着燃料粒子量が吸着上限量に達するおそれがあると判断したときに、パージ弁67を開いて燃料吸着材64aから燃料粒子を脱離させるパージ制御を実施している。
【0035】
内燃機関10の運転中にパージ弁67を開くことで、吸気通路12内で生じる吸入負圧によって、大気連通路65を介して大気開放口64bからキャニスタ64に内部に空気を吸い込むことができる。そして吸い込んだ空気を、燃料吸着材64aが充填されたキャニスタ64の内部、及びパージ通路66を経由させて、吸気通路12に導入することができる。
【0036】
これにより、大気開放口64bからキャニスタ64に内部に吸い込んだ空気によって、燃料吸着材64aに吸着された燃料粒子を燃料吸着材64aから脱離させることができる。そして燃料吸着材64aから脱離させた燃料粒子を、吸い込んだ空気と共に吸気通路12に導入して、内燃機関10で燃焼させることができる。すなわち、キャニスタ64内の燃料粒子をキャニスタ64内から排出して、内燃機関10で燃焼させることができる。
【0037】
このように、内燃機関10の運転中においては、必要に応じてパージ弁67を開くことによって、燃料吸着材64aから燃料粒子を脱離させることができるので、吸着燃料粒子量が吸着上限量に達してしまうのを抑制することができる。すなわち、燃料蒸発ガスがキャニスタ64の大気開放口64bから大気連通路65を介して外部に漏れてしまうのを抑制することができる。
【0038】
しかしながら、燃料蒸発ガスは、内燃機関10の停止中においても燃料タンク1内で発生するため、内燃機関10の停止時間が長くなると、吸着燃料粒子量が吸着上限量に達してしまい、燃料蒸発ガス通路61を介してキャニスタ64の内部に流入した燃料蒸発ガスが、キャニスタ64の大気開放口64bから大気連通路65を介して外部に漏れ出すおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態による密閉式燃料タンクシステム100のように、燃料蒸発ガス通路61に常閉型の封鎖弁62を設けることで、内燃機関10の停止中に燃料タンク1内で発生した燃料蒸発ガスがキャニスタ64に流入することがないので、内燃機関10の停止中に燃料蒸発ガスがキャニスタ64の大気開放口64bから大気連通路65を介して外部に漏れ出すのを抑制できる。
【0040】
一方で、内燃機関10の停止中には、燃料タンク1への給油作業が行われることがある。給油作業時には、まず、リッド4のロックを解除するために、車両のドライバ等によって車両の室内に設けられた給油スイッチ204が操作される。そしてその後に、給油作業者(例えばドライバ)によってタンクキャップ7が取り外されて、燃料タンク1への給油が行われることになる。
【0041】
この際、給油スイッチ204が操作された後、給油作業がすぐに行われずにしばらく放置される場合がある。
【0042】
このような場合において、封鎖弁62が閉弁されていると、給油スイッチ204が操作された後の放置中に内燃機関10の余熱等によって燃料タンク1内で燃料蒸発ガスが発生し、タンク内圧Pが上昇することがある。そうすると、タンクキャップ7を取り外したときに、燃料タンク1内の燃料蒸発ガスがインレットパイプ3を逆流して給油口から排出され、異臭が発生するおそれがある。
【0043】
また逆に、外気温度が低いときなどは、給油スイッチ204が操作された後の放置中に燃料タンク1内の燃料蒸発ガスが凝縮してタンク内圧Pが低下し、タンク内圧Pが負圧になることがある。また何らかの要因によって、給油スイッチ204が操作された直後であってもタンク内圧Pが負圧になっていることも考えられる。このようにタンク内圧Pが負圧になっていると、タンクキャップ7が給油口に張り付いてしまって、給油作業時にタンクキャップ7を給油口から取り外し難くなるおそれがある。
【0044】
そこで本実施形態では、給油スイッチ204が操作されたときは、タンク内圧Pが大気圧近傍の所定の圧力範囲内(後述する負圧値Plから正圧値Phの範囲内)に収まるように封鎖弁62を制御することとした。以下、この本実施形態による封鎖弁の制御について説明する。
【0045】
図3は、電子制御ユニット200によって実施される本実施形態による封鎖弁の制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット200は、本ルーチンを所定の演算周期で繰り返し実行する。
【0046】
ステップS1において、電子制御ユニット200は、給油スイッチ操作フラグF1が0に設定されているか否かを判定する。給油スイッチ操作フラグF1は、給油スイッチ204が操作されたときに(給油スイッチ204がONにされたときに)、1に設定されるフラグであって、初期値は0に設定されている。電子制御ユニット200は、給油スイッチ操作フラグF1が0に設定されていれば、ステップS2の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、給油スイッチ操作フラグF1が1に設定されていれば、ステップS4の処理に進む。
【0047】
ステップS2において、電子制御ユニット200は、給油スイッチ204が操作されたか否かを判定する。電子制御ユニット200は、給油スイッチ204が操作されていればに、ステップS3の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、給油スイッチ204が操作されていなければ、今回の処理を終了する。
【0048】
ステップS3において、電子制御ユニット200は、給油スイッチ操作フラグF1を1に設定する。
【0049】
ステップS4において、電子制御ユニット200は、タンク内圧センサ201によって検出されたタンク内圧Pを読み込む。
【0050】
ステップS5において、電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが所定の負圧値Pl[kPa]未満であるか否かを判定する。本実施形態では負圧値Plを、-1.8[kPa]に設定している。電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが負圧値Pl未満であれば、給油作業時にタンクキャップ7を給油口から取り外し難くなるおそれがあると判断して、ステップS6の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが負圧値Pl以上であれば、ステップS7の処理に進む。
【0051】
ステップS6において、電子制御ユニット200は、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させる。本実施形態では電子制御ユニット200は、封鎖弁62の開度を全開とする。これにより、燃料タンク1内の負圧によって、大気連通路65を介して大気開放口64bからキャニスタ64に内部に空気を吸い込むことができる。そして吸い込んだ空気を、キャニスタ64の内部、及び燃料蒸発ガス通路61を経由させて、燃料タンク1内に導入することができる。そのため、タンク内圧Pを、大気圧近傍の圧力まで上昇させることができる。
【0052】
ステップS7において、電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが所定の正圧値Ph[kPa]よりも大きいか否かを判定する。本実施形態では正圧値Phを、1.8[kPa]に設定している。電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが正圧値Phよりも大きければ、給油作業時にタンクキャップ7を給油口から取り外したときに、燃料タンク1内の燃料蒸発ガスがインレットパイプ3を逆流して給油口から排出されるおそれがあると判断して、ステップS8の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが正圧値Ph以下であれば、ステップS9の処理に進む。
【0053】
ステップS8において、電子制御ユニット200は、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させる。本実施形態では電子制御ユニット200は、封鎖弁62の開度を全開とする。これにより、燃料タンク1とキャニスタ64との内部圧力差によって、燃料タンク1内の燃料蒸発ガスを、燃料蒸発ガス通路61を介してキャニスタ64の内部に導入することができる。そのため、タンク内圧Pを、大気圧近傍の圧力まで低下させることができる。
【0054】
ステップS9において、電子制御ユニット200は、リッドオープンフラグF2が0に設定されているか否かを判定する。リッドオープンフラグF2は、リッド4のロックが解除されてリッド4が自動的に開かれたときに1に設定されるフラグであって、初期値は0に設定されている。電子制御ユニット200は、リッドオープンフラグF2が0に設定されていれば(すなわちリッド4が閉じられていれば)、ステップS10の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、リッドオープンフラグF2が1に設定されていれば(すなわちリッド4が開かれていれば)、ステップS12の処理に進む。
【0055】
ステップS10において、電子制御ユニット200は、封鎖弁62を閉弁すると共にリッドロック装置5のモータ51を駆動してリッド4のロックを解除する。リッド4のロックを解除することで、前述したようにリッド押圧部材(図示せず)によってリッド4が開方向に押圧されて、リッド4が自動的に開く。
【0056】
このように、タンク内圧Pが所定の圧力範囲内(負圧値Plから正圧値Phの範囲内)に収まってからリッド4のロックを解除して、給油作業者による給油作業を許可するようにすることで、タンクキャップ7を取り外したときに、燃料タンク1内の燃料蒸発ガスがインレットパイプ3を逆流して給油口から排出されて異臭が発生したり、又はタンクキャップ7が給油口に張り付いてしまって、タンクキャップ7を給油口から取り外し難くなったりするのを抑制することができる。
【0057】
ステップS11において、電子制御ユニット200は、リッドオープンフラグF2を1に設定する。この際、リッド開閉センサ203の出力信号に基づいて、リッド4が開かれたことを検出してからリッドオープンフラグF2を1に設定するようにしてもよい。
【0058】
ステップS12において、電子制御ユニット200は、リッド開閉センサ203の出力信号に基づいて、リッド4が閉じられたか否かを判定する。電子制御ユニット200は、リッド4が閉じられていれば、ステップS13の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、リッド4が開かれていれば、今回の処理を終了する。
【0059】
これにより、リッド4のロック解除された後も、リッドが閉じられたことが検出されるまで(すなわち給油作業の完了が検出されるまで)の間は、タンク内圧Pが所定の圧力範囲内(負圧値Plから正圧値Phの範囲内)に制御されるので、例えばリッド4のロックが解除された後にしばらくタンクキャップ7の取り外しが行われなかったとしても、タンクキャップ7を取り外したときに、燃料タンク1内の燃料蒸発ガスがインレットパイプ3を逆流して給油口から排出されて異臭が発生したり、又はタンクキャップ7が給油口に張り付いてしまって、タンクキャップ7を給油口から取り外し難くなったりするのを抑制することができる。
【0060】
ステップS13において、電子制御ユニット200は、給油スイッチ操作フラグF1、及びリッドオープンフラグF2をそれぞれ0に戻す。
【0061】
以上説明した本実施形態による密閉式燃料タンクシステム100は、液体燃料を貯蔵する燃料タンク1と、燃料タンク1内で発生した燃料蒸発ガス中の燃料粒子を内部に吸着保持するキャニスタ64と、燃料タンク1とキャニスタ64とを連通する燃料蒸発ガス通路61と、燃料蒸発ガス通路61に設けられて燃料蒸発ガス通路61を封鎖する電磁式の封鎖弁62と、一端側が燃料タンク1に取り付けられ、他端側の給油口にタンクキャップ7が取り付けられるインレットパイプ3と、タンク内圧P(燃料タンク1内の圧力)を検出するタンク内圧センサ201(圧力検出器)と、電子制御ユニット200(制御装置)と、を備える。そして電子制御ユニット200は、タンク内圧Pが所定の負圧値Pl未満であれば、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させるように構成されている。
【0062】
これにより、タンク内圧Pが所定の負圧値Pl未満になったときには、封鎖弁62が開弁されて燃料タンク1内の圧力を上昇させることができる。そのため、タンクキャップ7が給油口に張り付いてしまうのを抑制して、給油作業時などにタンクキャップ7が給油口から取り外し難くなるのを抑制できる。
【0063】
また本実施形態による電子制御ユニット200は、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させたときは、タンク内圧Pが負圧値Pl以上になってから、封鎖弁62を全閉状態に戻すように構成されている。これにより、封鎖弁62の開弁時間を最低限に抑えることができるので、燃料タンク1からの燃料蒸発ガスの流出量を最低限に抑えることができる。そのため、例えばキャニスタ64の燃料吸着材64aの吸着上限量を比較的に少なくすることができるので、キャニスタ64の小型化を図ることができる。
【0064】
また本実施形態による密閉式燃料タンクシステム100は、タンクキャップ7の他端側を覆う開閉可能なリッド4と、リッド4が閉じられているときにリッド4をロックするリッドロック装置5と、燃料タンク1への給油要求を検知する給油スイッチ204(給油要求検知器)と、をさらに備えている。そして電子制御ユニット200は、より詳細には、燃料タンク1への給油要求を検知したとき(すなわち給油スイッチ204が操作されたとき)のタンク内圧Pが負圧値Pl未満であれば、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させ、タンク内圧Pが負圧値Pl以上となって封鎖弁62を全閉状態に戻してから、リッドロック装置5によるリッド4のロックを解除するように構成されている。
【0065】
これにより、給油スイッチ204が操作されたとしても、タンク内圧Pが負圧値Pl未満となっている間はリッド4のロックが解除されることがない。そのため、タンクキャップ7が給油口に張り付いている状態のときに給油作業者によってタンクキャップ7の取り外しが行われることを抑制することができる。
【0066】
また本実施形態による密閉式燃料タンクシステム100は、リッド4の開閉状態を検出するリッド開閉センサ203をさらに備えている。そして電子制御ユニット200は、より詳細には、リッド4のロックが解除されてリッド4が開かれてから、リッド4が閉じられたことを検出するまでの期間において、タンク内圧Pが負圧値Pl未満であれば、封鎖弁62の開度を全閉状態から開方向に変化させるように構成されている。
【0067】
これにより、リッド4のロックを解除した後、しばらく給油作業が行われずに燃料タンク1内の燃料蒸発ガスが凝縮してタンク内圧が低下してタンク内圧Pが所定の負圧値Pl未満になったとしても、封鎖弁62が開弁されて燃料タンク1内の圧力を上昇させることができる。そのため、タンクキャップ7が給油口に張り付いてしまうのを抑制して、給油作業時にタンクキャップ7が給油口から取り外し難くなるのを抑制できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0069】
1 燃料タンク
3 インレットパイプ
7 タンクキャップ
61 燃料蒸発ガス通路
62 封鎖弁
64 キャニスタ
100 密閉式燃料タンクシステム
200 電子制御ユニット(制御装置)
201 タンク内圧センサ(圧力センサ)