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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221004BHJP
   A01B 69/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A01C11/02 330M
A01B69/02 A
A01B69/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019075486
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020171238
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】那須 和洋
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特許第5975913(JP,B2)
【文献】特開2001-028907(JP,A)
【文献】実開昭59-105810(JP,U)
【文献】特開2014-073116(JP,A)
【文献】特開平10-215612(JP,A)
【文献】特開2002-095309(JP,A)
【文献】特開2001-069809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00 - 11/04
A01B 69/00 - 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の機体フレームから機体左右両側方に延出されるマーカ取付ステーと、を備える作業車両であって、
前記マーカ取付ステーには、トレースマーカ及びマーカユニットのいずれか一方を選択的に取付可能であり、
前記トレースマーカは、前行程の作業跡に倣って作業走行する際の指針として機能し、
前記マーカユニットは、
次行程における作業走行の目印を圃場に付ける線引きマーカと、
前記トレースマーカを取付可能なトレースマーカ取付部と、を含むことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記線引きマーカは、
圃場に目印を付けるマーカ部材と、
前記マーカ部材を支持するマーカ支持部材と、を含み、
前記マーカ支持部材は、前記マーカ部材の高さを調節するための伸縮機構を有することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用田植機では、前行程の作業跡に倣って作業走行する際の指針となるトレースマーカが走行機体に設けられ、次行程における作業走行の目印を圃場に付ける線引きマーカが植付作業機に設けられている。また、近年では、トレースマーカ及び線引きマーカを走行機体に設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。線引きマーカを走行機体に設けた場合、作業者は、後ろを振り向かなくても線引きマーカの上げ下げ状態を目視で確認できるので、上げ状態の線引きマーカを電柱等にぶつけたり、下げ状態の線引きマーカを畦等にぶつけたりすることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5975913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の乗用田植機では、線引きマーカを走行機体に取り付けたいという要望があっても、植付作業機に設けられている線引きマーカをそのまま走行機体に移設することが困難であり、要望に柔軟に対応できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、前記走行機体の機体フレームから機体左右両側方に延出されるマーカ取付ステーと、を備える作業車両であって、前記マーカ取付ステーには、トレースマーカ及びマーカユニットのいずれか一方を選択的に取付可能であり、前記トレースマーカは、前行程の作業跡に倣って作業走行する際の指針として機能し、前記マーカユニットは、次行程における作業走行の目印を圃場に付ける線引きマーカと、前記トレースマーカを取付可能なトレースマーカ取付部と、を含むことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記線引きマーカは、圃場に目印を付けるマーカ部材と、前記マーカ部材を支持するマーカ支持部材と、を含み、前記マーカ支持部材は、前記マーカ部材の高さを調節するための伸縮機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、マーカ取付ステーには、トレースマーカと、線引きマーカ及びトレースマーカ取付部を含むマーカユニットとを選択的に取付可能なので、線引きマーカの取付位置に関する要望に柔軟に対応することができる。
また、請求項2の発明によれば、マーカ支持部材は、マーカ部材の高さを調節するための伸縮機構を有するので、機体高さや圃場状態に応じてマーカ部材の高さを適切に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の全体側面図であり、マーカユニット(線引きマーカ上昇状態)が取り付けられた状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の全体平面図であり、マーカユニット(線引きマーカ上昇状態)が取り付けられた状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の全体平面図であり、マーカユニット(線引きマーカ格納状態)が取り付けられた状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の要部斜視図であり、マーカ取付ステーに取り付けられたマーカユニットの基部を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の要部斜視図であり、マーカ取付ステーに取り付けられたマーカユニット(線引きマーカ上昇状態)を示す図である。
図6】マーカユニットの伸縮機構を示す図であり、(a)は縮小状態の伸縮機構を示す上面側斜視図、(b)は縮小状態を示す下面側斜視図である。
図7】マーカユニットの伸縮機構を示す図であり、(a)は伸長状態の伸縮機構を示す上面側斜視図、(b)は伸長状態を示す下面側斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の要部正面図であり、マーカ取付ステーに取り付けられたトレースマーカを示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の要部平面図であり、マーカ取付ステーに取り付けられたトレースマーカを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1図3において、Pは乗用田植機(作業車両)であって、該乗用田植機Pは、走行機体1と、走行機体1の後部に昇降リンク機構2を介して昇降可能に連結される植付作業機3と、を備える。
【0009】
走行機体1は、機体フレーム4と、機体フレーム4の前側に搭載されるエンジン(図示せず)を覆うボンネット5と、エンジンから出力される動力を走行動力及び作業動力に変速するミッションケース6と、ミッションケース6から出力される走行動力で回転駆動される前輪7及び後輪8と、作業者が乗車する操縦部9と、操縦部9の床面を構成するフロアステップ10と、フロアステップ10から左右外側方に延出される延長ステップ11と、延長ステップ11の前方に配置される施肥タンク保持ステー12と、を備える。
【0010】
植付作業機3は、昇降リンク機構2の後端部にローリング可能に連結される作業機フレーム13と、作業機フレーム13の上方に配置される苗載台14と、苗載台14に載置される苗を掻き取って田面に植え付ける植付機構15と、を備える。
【0011】
なお、本実施形態の乗用田植機Pは、施肥タンク保持ステー12で保持される施肥タンク16と、植付作業機3に設けられる施肥ノズル(図示せず)と、施肥タンク16内の液状肥料を施肥ノズルに供給する施肥ポンプ(図示せず)と、を含む施肥装置を備えており、植付作業と同時に施肥作業を行うことができる。
【0012】
乗用田植機Pは、整然とした植付作業を行うための補助装置としてマーカ装置を備える。本実施形態の乗用田植機Pは、マーカ装置としてトレースマーカ21及び線引きマーカ22を備える。
【0013】
トレースマーカ21は、前行程の作業跡に倣って作業走行する際の指針となる。具体的に説明すると、乗用田植機Pは、走行機体1から左右外側方に延出する左右一対のトレースマーカ21を備えており、前行程で植え付けた複数の植付条のうち、今回の行程に最も近い植付条の上方をトレースマーカ21のトレース部21aが通過するように走行機体1を走行させることにより、前工程で植え付けた植付条と今回の行程で植え付ける植付条との条間を適正かつ均等に維持することが可能になる。
【0014】
線引きマーカ22は、次行程における作業走行の目印を圃場に付ける。具体的に説明すると、乗用田植機Pは、走行機体1又は植付作業機3から左右外側方に延出する左右一対の線引きマーカ22と、線引きマーカ22を次工程に目印を付ける下降姿勢と上方に退避する上昇姿勢とに昇降させる左右一対のマーカ昇降機構23と、を備えており、乗用田植機Pが枕地旋回する毎に下降させる線引きマーカ22を交互に切り換えることにより、次工程に目印を付ける。そして、次行程においては、前行程で付けられた目印にセンタポール24が重なるように走行機体1を走行させることにより、前工程で植え付けた植付条と今回の行程で植え付ける植付条との条間を適正かつ均等に維持することが可能になる。
【0015】
標準仕様の乗用田植機Pでは、通常、走行機体1の左右両側部にトレースマーカ21が取り付けられ、植付作業機3の左右両側部に線引きマーカ22が取り付けられるが、近年では、トレースマーカ21及び線引きマーカ22を走行機体1の左右両側部に設けることが提案されている。線引きマーカを走行機体に設けた場合、作業者は、後ろを振り向かなくても線引きマーカの上げ下げ状態を目視で確認できるので、上げ状態の線引きマーカを電柱等にぶつけたり、下げ状態の線引きマーカを畦等にぶつけたりすることを防止できる。本発明は、線引きマーカ22の取付位置に関する要望に柔軟に対応できる乗用田植機Pの提供を目的とする。
【0016】
図4図5図8及び図9に示すように、走行機体1の左右両側部には、マーカ取付ステー25が設けられている。マーカ取付ステー25は、機体フレーム4から左右外側方に延出されるパイプ形状のステー本体25aと、ステー本体25aの外端上面部に溶着される位置決めプレート25bと、を備える。マーカ取付ステー25は、図8及び図9に示すように、本来はトレースマーカ21を取り付けるためのものであるが、トレースマーカ21を取り外せば、線引きマーカ22及びトレースマーカ取付部26を備えるマーカユニット27を取り付けることができる。
【0017】
このような乗用田植機Pによれば、マーカ取付ステー25にトレースマーカ21のみを取り付けた状態(図8及び図9参照:線引きマーカ22は植付作業機3に取り付け)と、マーカ取付ステー25にトレースマーカ21B(トレースマーカ21よりも張り出し量が小さい)及び線引きマーカ22を取り付けた状態(図1図5参照)と、を現出させることができるので、線引きマーカ22の取付位置に関する要望に柔軟に対応することが可能になる。
【0018】
図8及び図9に示すように、本実施形態のトレースマーカ21は、上下方向に貫通するボルトB1を介してマーカ取付ステー25の位置決めプレート25bに固定される筒状の固定部21bと、固定部21bから外側方に延出する延出部21cと、延出部21cの外端部から上下方向に延出するトレース部21aと、を備える。前述したように、植付作業走行時には、前行程で植え付けた複数の植付条のうち、今回の行程に最も近い植付条の上方をトレースマーカ21のトレース部21aが通過するように走行機体1を走行させる。
【0019】
図1図5に示すように、本実施形態のマーカユニット27は、マーカ取付ステー25に取り付けられる延長ブラケット28と、延長ブラケット28にマーカ折畳機構29及びマーカ昇降機構23を介して取り付けられる線引きマーカ22と、トレースマーカ21Bを取付可能なトレースマーカ取付部26と、を備える。
【0020】
延長ブラケット28は、マーカ取付ステー25に連結状に取り付けられる連結パイプ30と、連結パイプ30の先端部に一体的に設けられる正面視コ字状のマーカブラケット31、を備える。連結パイプ30は、マーカ取付ステー25に嵌入される嵌入部30aと、上下方向に貫通するボルトB1を介してマーカ取付ステー25の位置決めプレート25bに固定される固定部30bと、固定部30bから外側方に延出する延出部30cと、を備える。図5に示すように、マーカブラケット31は、トレースマーカ21Bを取付可能なトレースマーカ取付部26を含む。なお、本実施形態では、張り出し量の異なる2種類のトレースマーカ21、21Bを用いるが、張り出し量を調整可能な1種類のトレースマーカ(図示せず)を用いてもよい。
【0021】
図2に示すように、延長ブラケット28の張り出し量は、マーカブラケット31が施肥タンク16の外側端よりも外側方に位置するように設定される。このような延長ブラケット28によれば、線引きマーカ22の折り畳みや昇降に際して線引きマーカ22が施肥タンク16に干渉することを防止できる。
【0022】
マーカ折畳機構29は、線引きマーカ22の支持ベース32をマーカブラケット31に前後回動自在に連結する回動支軸33と、延長ブラケット28側に設けられる第1スプリングステー34と、支持ベース32側に設けられる第2スプリングステー35と、第1スプリングステー34と第2スプリングステー35との間に介設される上下一対の支点超えスプリング36(引張コイルスプリング)と、を備える。
【0023】
支持ベース32及び線引きマーカ22の前後回動範囲は、図2に示す作業位置と図3に示す格納位置との間に制限されており、支持ベース32及び線引きマーカ22は、作業位置、格納位置のいずれにおいても支点超えスプリング36の付勢力で位置保持される。
【0024】
図4及び図5に示すように、マーカ昇降機構23は、線引きマーカ22の基部を支持ベース32に上下回動自在に連結する回動支軸37と、回動支軸37に一体的に設けられるセクタギヤ38と、セクタギヤ38に噛合するピニオンギヤ(図示せず)を回転駆動させる電動モータ39と、マーカ昇降機構23を覆うカバー40と、を備えており、電動モータ39の駆動に応じて線引きマーカ22が昇降される。
【0025】
線引きマーカ22は、例えば図5に示すように、圃場に目印を付ける風車形状のマーカ部材41と、マーカ部材41を支持するマーカ支持部材42と、を備える。本実施形態のマーカ支持部材42は、マーカ下降時において、走行機体1から外側方に延出する側方延出部43と、側方延出部43の先端部から下方に延出する下方延出部44と、を備えており、下方延出部44の下端部にマーカ部材41が回転可能に設けられている。
【0026】
図5図7に示すように、マーカ支持部材42の下方延出部44には、マーカ部材41の高さを調節するための伸縮機構45が設けられている。このようなマーカ支持部材42によれば、機体高さや圃場状態に応じてマーカ部材41の高さを適切に調節することができる。特に、走行機体1に取り付ける線引きマーカ22と、植付作業機3に取り付ける線引きマーカ22とを兼用する場合、取付高さの違いに容易に対応できる。
【0027】
具体的に説明すると、下方延出部44は、側方延出部43の先端部に連結される第1ロッド46と、マーカ部材41が取り付けられる第2ロッド47と、第1ロッド46と第2ロッド47とを連結する伸縮機構45と、を備える。
【0028】
伸縮機構45は、互いにスライド可能に嵌合する断面視コ字状の第1レール部材48及び第2レール部材49と、第1レール部材48及び第2レール部材49に形成される長孔48a、49aの部分を表裏から挟み込む一対のプレート50、51と、長孔48a、49a及び一対のプレート50、51を貫通する一対のボルト52と、第1レール部材48に第1ロッド46を連結する第1連結部材53と、第2レール部材49に第2ロッド47を連結する第2連結部材54と、を備える。
【0029】
ボルト52の緊締状態では、一対のプレート50、51を介して第1レール部材48と第2レール部材49とが一体的に挟持され、互いのスライドが規制される。一方、ボルト52を弛緩させると、第1レール部材48と第2レール部材49との相対的なスライドが許容されるので、マーカ部材51の高さを変更することが可能になる。
【0030】
第1レール部材48には、マーカ部材51の高さ調節に際し、調節量の目安となる目印48bが複数形成されている。目印48bは、例えば、長さ方向に20mmピッチで7箇所に形成されており、第2レール部材49の先端を位置合わせすることにより、20mmピッチの高さ調節を正確に行うことが可能になる。
【0031】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1と、走行機体1の機体フレーム4から機体左右両側方に延出されるマーカ取付ステー25と、を備える乗用田植機Pであって、マーカ取付ステー25には、トレースマーカ21及びマーカユニット27のいずれか一方を選択的に取付可能であり、トレースマーカ21は、前行程の作業跡に倣って作業走行する際の指針として機能し、マーカユニット27は、次行程における作業走行の目印を圃場に付ける線引きマーカ22と、トレースマーカ21Bを取付可能なトレースマーカ取付部26と、を含むので、線引きマーカ22の取付位置に関する要望に柔軟に対応することができる。
【0032】
また、線引きマーカ22は、圃場に目印を付けるマーカ部材41と、マーカ部材41を支持するマーカ支持部材42と、を含み、マーカ支持部材42は、マーカ部材41の高さを調節するための伸縮機構43を有するので、機体高さや圃場状態に応じてマーカ部材41の高さを適切に調節することができる。
【符号の説明】
【0033】
P 乗用田植機
1 走行機体
3 植付作業機
4 機体フレーム
21 トレースマーカ
22 線引きマーカ
23 マーカ昇降機構
25 マーカ取付ステー
26 トレースマーカ取付部
27 マーカユニット
28 延長ブラケット
29 マーカ折畳機構
41 マーカ部材
42 マーカ支持部材
45 伸縮機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9