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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20221004BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20221004BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/00 G
B60C11/03 100A
B60C11/12 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019110822
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203504
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】弓井 慶太
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116194(JP,A)
【文献】特表2011-509213(JP,A)
【文献】特表2013-539735(JP,A)
【文献】特開2017-185889(JP,A)
【文献】特開2017-124712(JP,A)
【文献】特開2003-159911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数のリブ状陸部と、を有し、
前記リブ状陸部に、狭窄ネック部と気室部とを有する共鳴器が、トレッド周方向に複数個配列され、
前記狭窄ネック部は、一端が、前記リブ状陸部を区画する前記周方向主溝に開口し、該一端からトレッド幅方向に延び、他端が、前記リブ状陸部内で終端する、幅方向サイプであり、
前記気室部は、前記幅方向サイプの前記他端と連通し、トレッド周方向に延び、両端が前記リブ状陸部内で終端し、サイプ底側にサイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる第1の拡幅部を有する、周方向サイプであり、
前記周方向サイプは、前記幅方向サイプの他端から、トレッド周方向両側に延び
前記周方向主溝の深さが、5~9mmであることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記周方向サイプは、トレッド周方向に沿って延び、又は、トレッド周方向に対して45°未満の傾斜角度で傾斜して延びる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記幅方向サイプは、トレッド幅方向に沿って延び、又は、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記周方向サイプは、前記第1の拡幅部における最大幅が、前記トレッド踏面での開口幅の2~10倍である、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる第2の拡幅部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる第2の拡幅部を有し、
前記第1の拡幅部と前記第2の拡幅部とが連通し、
前記第1の拡幅部と前記第2の拡幅部とが連通した部分において、前記第2の拡幅部のタイヤ径方向の大きさは、前記第1の拡幅部のタイヤ径方向の大きさと同一であり、又は、前記第2の拡幅部のタイヤ径方向の大きさは、前記第1の拡幅部のタイヤ径方向の大きさよりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記気室部は、前記第1の拡幅部のタイヤ径方向外側に、サイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる踏面側拡幅部をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行時のタイヤの静粛性を向上させる技術として、タイヤのトレッド踏面に共鳴器を設けて気柱共鳴音を低減させることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-090824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、気柱共鳴音を低減することはできるものの、トレッド周方向に配列した共鳴器自体がパターンノイズの発生源となり、タイヤの静粛性が十分に得られないおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、パターンノイズの発生を抑制しつつも、気柱共鳴音を低減して、静粛性を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数のリブ状陸部と、を有し、
前記リブ状陸部に、狭窄ネック部と気室部とを有する共鳴器が、トレッド周方向に複数個配列され、
前記狭窄ネック部は、一端が、前記リブ状陸部を区画する前記周方向主溝に開口し、該一端からトレッド幅方向に延び、他端が、前記リブ状陸部内で終端する、幅方向サイプであり、
前記気室部は、前記幅方向サイプの前記他端と連通し、トレッド周方向に延び、両端が前記リブ状陸部内で終端し、サイプ底側にサイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる第1の拡幅部を有する、周方向サイプであることを特徴とする。
本発明の空気入りタイヤによれば、パターンノイズの発生を抑制しつつも、気柱共鳴音を低減して、静粛性を向上させることができる。
【0007】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなるトレッド表面の、トレッド周方向全域にわたる面をいう。
また、「周方向主溝」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm以上のものをいう。
また、「周方向サイプ」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm未満のものをいう。
また、「幅方向サイプ」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm未満のものをいう。
また、「トレッド端」とは、上記トレッド踏面のタイヤ幅方向両側の最外側点をいう。
また、「リブ状陸部」とは、陸部が、トレッド幅方向に延びる幅方向溝や幅方向サイプによってトレッド周方向に完全に分断されていない陸部をいう。
【0008】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0009】
本発明の空気入りタイヤは、前記周方向サイプは、前記幅方向サイプの他端から、トレッド周方向両側に延びることが好ましい。
この構成によれば、トレッド幅方向に対するエッジ成分をバランス良く配置し得る。
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、前記周方向サイプは、トレッド周方向に沿って延び、又は、トレッド周方向に対して45°未満の傾斜角度で傾斜して延びることが好ましい。
この構成によれば、パターンノイズをより一層低減することができる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、前記幅方向サイプは、トレッド幅方向に沿って延び、又は、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びることが好ましい。
この構成によれば、トレッド周方向に対するエッジ成分を増大させることができる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤは、前記周方向サイプは、前記第1の拡幅部における最大幅が、前記トレッド踏面での開口幅の2~10倍であることが好ましい。
上記の範囲とすることにより、摩耗進展時に、排水性及び操縦安定性を高い次元で両立させることができる。
【0013】
本発明の空気入りタイヤは、前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる第2の拡幅部を有することが好ましい。
この構成によれば、サイプ底側にて、狭窄ネック部と気室部との連通部分を大きく確保して、気柱共鳴音の低減効果をより確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パターンノイズの発生を抑制しつつも、気柱共鳴音を低減して、静粛性を向上させた、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図2】共鳴器の一例を模式的に示す斜視図である。
図3】共鳴器の他の例を模式的に示す斜視図である。
図4】共鳴器の別の例を模式的に示す斜視図である。
図5】共鳴器のさらに別の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
ここで、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)の内部構造等については、従来のものと同様の構造とすることができる。一例としては、該タイヤは、一対のビード部と、該一対のビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に配置されたトレッド部とを有するものとすることができる。また、該タイヤは、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を有するものとすることができる。
以下、特に断りのない限り、寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の寸法等を指す。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【0018】
図1に示すように、本例のタイヤは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に延びる複数本(図示例では3本)の周方向主溝2(2a、2b、2c)と、複数本の周方向主溝2のうちトレッド幅方向に隣接する周方向主溝2間に、又は、周方向主溝2(2a、2c)とトレッド端TEとにより、区画される複数(図示例では4つ)のリブ状陸部3(3a、3b、3c、3d)と、を有している。この例では、1つの周方向主溝2bは、タイヤ赤道面CL上に位置しており、他の周方向主溝2a、2cは、それぞれタイヤ赤道面CLを境界としたトレッド幅方向の一方の半部、他方の半部に位置している。そして、この例では、各トレッド幅方向半部に2つずつのリブ状陸部3が配置されている。図示のように、リブ状陸部3b、3cは、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部であり、リブ状陸部3a、3dは、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部である。
【0019】
図1に示した例では、周方向主溝2の本数は、3本であるが、2本又は4本以上とすることもできる。従って、リブ状陸部3の個数も、3つ又は5つ以上とすることができる。また、本例では、全ての陸部がリブ状陸部3であるが、少なくとも1つの陸部がリブ状陸部であれば良く、一部の陸部は、非リブ状陸部、すなわちブロック状陸部であっても良い。
【0020】
周方向主溝2の溝幅(開口幅(溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、周方向主溝2の本数にもよるため特には限定されないが、例えば、通常の乗用車用タイヤの場合は、2~18mmとすることができる。同様に、周方向主溝2の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば5~9mmとすることができる。
【0021】
図示例では、トレッド踏面1の平面視において、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1つの周方向主溝2がトレッド周方向に対して傾斜して延びていても良く、その場合、トレッド周方向に対して、例えば5°以下の角度で傾斜して延びるものとすることができる。また、図示例では、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1つの周方向主溝2が、ジグザグ状、湾曲状などの形状を呈してトレッド周方向に延びていても良い。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のタイヤは、各リブ状陸部3に、狭窄ネック部4と気室部5とを有する共鳴器6がトレッド周方向に複数個配列されている。本例で、共鳴器6は、いわゆるヘルムホルツ型の共鳴器である。例えば、ヘルムホルツ型の共鳴器6の共鳴周波数fは、狭窄ネック部4の長さをl、断面積をS、該断面積を有する円の半径をrとし、気室部5の容積をV、音速をcとするとき、以下の数式で表わすことができる。
(式1)
f=(c/2π)×(S/(l+1.3r)V)1/2
後述するように、本実施形態では、狭窄ネック部4及び気室部5は、それぞれ、幅方向サイプ及び周方向サイプであり、これらは接地時に一部が閉塞する場合が多いため、1つ以上の補正係数を用いて、上記(式1)を適宜変更することも好ましい。一例としては、以下の(式2)を用いることができる。
(式2)
f=(c/2π)×(S/(l+1.3r)V)1/2+C1
(ただし、C1は補正係数)
【0023】
なお、図示例では、各リブ状陸部3に、共鳴器6を設けているが、いずれか1つ以上のリブ状陸部3に、共鳴器6を設けていれば良い。例えば、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cにのみ共鳴器6を設けても良いし、あるいは、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dにのみ共鳴器6を設けても良い。また、例えば、タイヤ赤道面CL上にリブ状陸部3を有する場合には、該タイヤ赤道面CL上のリブ状陸部3のみに共鳴器6を設けることもできる。
【0024】
図示例では、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cにおいては、共鳴器6は2列設けられ、一方の列の共鳴器6は、該共鳴器6の狭窄ネック部4が該リブ状陸部3b、3cを区画する一方側の周方向主溝2bに連通し、他方の列の共鳴器6は、該共鳴器6の狭窄ネック部4が該リブ状陸部3b、3cを区画する他方側の周方向主溝2a、2cに連通している。一方で、周方向主溝2間に区画されるリブ状陸部3に共鳴器6を設ける場合には、共鳴器6を一列のみ設けることもでき、この場合、共鳴器6の狭窄ネック部4をいずれか一方の周方向主溝2に連通させることができる。
また、図示例では、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dにおいては、共鳴器6は1列設けられ、共鳴器6の狭窄ネック部4が該リブ状陸部3a、3dを区画する周方向主溝2a、2cに連通している。
【0025】
図示例では、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cのそれぞれにおいては、一方の列の共鳴器6と、他方の列の共鳴器6とは、狭窄ネック部4(後述するように、幅方向サイプである)のトレッド周方向位置が互いにトレッド幅方向に投影した際に重ならないように(本例では、他方の列の共鳴器6の狭窄ネック部4が、一方の列のトレッド周方向に隣接する2つの共鳴器6の狭窄ネック部4の丁度トレッド周方向の中央に位置するように)配置されている。これにより、共鳴器6によるパターンノイズをより一層抑制することができる。なお、一方の列と他方の列とで狭窄ネック部4のトレッド周方向位置が同じであっても良く、また、異ならせる場合にも、他方の列の共鳴器6の狭窄ネック部4が、一方の列のトレッド周方向に隣接する2つの共鳴器6の狭窄ネック部4のトレッド周方向の間のいずれかに位置すれば良く、丁度中央でなくても良い。
また、図示例では、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dのそれぞれの共鳴器6と、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cのそれぞれの2列の共鳴器6のうち、同じ周方向主溝2a又は2cに連通する上記他方の列の共鳴器6とが、狭窄ネック部4のトレッド周方向位置が互いにトレッド幅方向に投影した際に重ならないように配置されている。これにより、共鳴器6によるパターンノイズをより一層抑制することができる。一方で、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dのそれぞれの共鳴器6と、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cの2列の共鳴器6のうち、同じ周方向主溝2a、2cに連通する上記他方の列の共鳴器6とのトレッド周方向の位置を揃えることもできる。
図示例では、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dのそれぞれの共鳴器6と、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cのそれぞれの2列の共鳴器6のうち、タイヤ赤道面CL上の周方向溝2bに連通する上記一方の列の共鳴器6とを、トレッド周方向の位相を揃えて配置させている。一方で、トレッド端TEに隣接するリブ状陸部3a、3dのそれぞれの共鳴器6と、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cのそれぞれの2列の共鳴器6のうち、タイヤ赤道面CL上の周方向溝2bに連通する上記一方の列の共鳴器6とが、狭窄ネック部4のトレッド周方向位置が互いにトレッド幅方向に投影した際に重ならないように配置することもできる。
また、図1に示すトレッドパターンにおいて、トレッド幅方向に隣接する共鳴器6の幅方向サイプ4は、互いにトレッド周方向の位置が異なっている。これにより、パターンノイズをさらに抑制することができる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態において、狭窄ネック部4は、トレッド幅方向に延びる幅方向サイプである。図示例で、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、一端が、リブ状陸部3を区画する周方向主溝2に開口し、該一端からトレッド幅方向に延び、他端が、リブ状陸部3内で終端している。なお、図示例では、各狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、トレッド幅方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも一部(一部又は全部)の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、トレッド幅方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。狭窄ネック部(幅方向サイプ)4がトレッド幅方向に対して傾斜して延びることにより、パターンノイズをより一層抑制することができる。
【0027】
図2は、共鳴器の一例を模式的に示す斜視図である。図2に模式的に示すように、本例の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、サイプ底側にサイプ幅(サイプの延在方向に対して垂直に測ったサイプ幅)がトレッド踏面1側より大きくなる第2の拡幅部4bを有する。より具体的には、本例の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、サイプの深さ方向に、サイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分4aと、該サイプ幅一定部分4aよりサイプ幅が大きくなる第2の拡幅部4bと、を有している。第2の拡幅部4bのサイプ幅(最大幅)は、特には限定されないが、幅方向サイプ4のトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分4aのサイプ幅)の2~10倍とすることが好ましい。本例では、第2の拡幅部4bは、断面矩形状であり、サイプの深さ方向にサイプ幅が一定であるが、一定でないものとすることもできる。例えば、断面円形状、断面楕円形状(サイプ深さ方向がサイプ幅方向より大きくても小さくても良い)、断面三角形状等とすることもできる。第2の拡幅部4bのサイプの深さ方向の延在長さは、特には限定されないが、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の深さの20~50%とすることができる。
なお、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、第2の拡幅部4bを設けない構成とすることもでき、すなわち、サイプの深さ方向にサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分4aのみで構成することもできる。あるいは、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、第2の拡幅部4bを幅方向サイプ4の深さ方向に複数有する構成とすることもできる。また、第2の拡幅部4bを設ける場合において、本例では、サイプ底が第2の拡幅部4bとなっているが、必ずしもサイプ底が第2の拡幅部4bである必要はなく、例えば、トレッド踏面1側のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分4aと、サイプ底のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分4aとの間に、第2の拡幅部4bが設けられた構成とすることもできる。この場合、サイプ底のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分4aは、少なくとも一部がウェアインジケータよりタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。
また、本例では、第2の拡幅部4bよりタイヤ径方向外側の部分は、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分4aとしているが、当該分は、サイプ幅が変化する部分とすることもできる。
【0028】
図1に戻って、本実施形態において、気室部5は、トレッド周方向に延びる、周方向サイプである。図示例で、気室部(周方向サイプ)5は、幅方向サイプ4の上記他端と連通し、両端がリブ状陸部3内で終端している。なお、図1に示すように、トレッド周方向に配列された複数の共鳴器6のうち、トレッド周方向に隣接する2つの共鳴器6について、気室部(周方向サイプ)5同士は連通していない。
なお、図示例では、気室部(周方向サイプ)5は、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも一部(一部又は全部)の気室部(周方向サイプ)5は、トレッド周方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド周方向に対して45°未満の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
また、図示例では、トレッド幅方向中央側のリブ状陸部3b、3cでは、上記一方の列共鳴器6の周方向サイプ5と上記他方の列の共鳴器6の周方向サイプ5とは、トレッド幅方向に投影した際に一部が重なり合うように配置されている。これにより、トレッド周方向全域にわたって、周方向サイプ5によるトレッド幅方向に対するエッジ成分を確保することができる。一方で、上記一方の列の共鳴器6の周方向サイプ5と上記他方の列の共鳴器6の周方向サイプ5とが、トレッド幅方向に投影した際に互いに重なる部分を有しない構成とすることもできる。
【0029】
図2に模式的に示すように、本例の気室部(周方向サイプ)5は、サイプ底側にサイプ幅(サイプの延在方向に対して垂直に測ったサイプ幅)がトレッド踏面1側より大きくなる第1の拡幅部5bを有する。より具体的には、本例の気室部(周方向サイプ)5は、サイプの深さ方向にサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分5aと、該サイプ幅一定部分5aよりサイプ幅が大きくなる第1の拡幅部5bとを有している。第1の拡幅部5bのサイプ幅(最大幅)は、特には限定されないが、周方向サイプ5のトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5aのサイプ幅)の2~10倍とすることが好ましい。本例では、第1の拡幅部5bは、断面円形状であるが、他の形状とすることもでき、例えば、断面楕円形状(サイプ深さ方向がサイプ幅方向より大きくても小さくても良い)、断面三角形状、断面矩形状等とすることもできる。第1の拡幅部5bのサイプの深さ方向の延在長さは、特には限定されないが、気室部(周方向サイプ)5の深さの20~50%とすることができる。また、本例では、サイプ底が第1の拡幅部5bとなっているが、必ずしもサイプ底が第1の拡幅部5bである必要はなく、例えば、トレッド踏面1側のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分5aとサイプ底のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分5aとの間に、第1の拡幅部5bが設けられた構成とすることもできる。この場合、サイプ底のサイプ幅が開口幅と同じ幅で一定であるサイプ幅一定部分5aは、少なくとも一部がウェアインジケータよりタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。
また、本例では、第1の拡幅部5bよりタイヤ径方向外側の部分は、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分5aとしているが、当該分は、サイプ幅が変化する部分とすることもできる。
【0030】
図2に示す例では、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の第2の拡幅部4bのサイプの深さ方向の延在長さは、気室部(周方向サイプ)5の第1の拡幅部5bのサイプの深さ方向の延在長さと同じとなっているが、長くても短くても良い。
また、図2に示す例では、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の第2の拡幅部4bと、気室部(周方向サイプ)5の第1の拡幅部5bとが直接連通しているが、直接連通していなくても良く、例えば、図4図5の例について後述するように、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分4a、5aを介して互いに連通していても良い。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0031】
本実施形態の空気入りタイヤでは、リブ状陸部3に、狭窄ネック部4と気室部5とを有する共鳴器6が、トレッド周方向に複数個配列されている。また、本実施形態の空気入りタイヤでは、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、一端が、リブ状陸部3を区画する周方向主溝2に開口している。これにより、共鳴器6が狭窄ネック部4により連通された周方向主溝2で発生する気柱共鳴音を低減して、タイヤの静粛性を高めることができる。
また、本実施形態では、気室部5は、幅方向サイプ4の他端と連通し、トレッド周方向に延び、両端がリブ状陸部3内で終端し、サイプ底側にサイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる第1の拡幅部5bを有する。これにより、摩耗進展時においては、第1の拡幅部5bがトレッド踏面1に現われた際に、溝として機能することができ、摩耗により周方向主溝2の深さが小さくなった後でも、第1の拡幅部5bによっても排水性を確保することができる。また、摩耗進展時においては、周方向主溝2の深さが小さくなる分、該周方向主溝2により区画されるリブ状陸部3の剛性が増大して、操縦安定性を確保することができる。
さらに、本実施形態では、幅方向サイプを狭窄ネック部4とし、周方向サイプを気室部5としているため、例えば溝により気室部を形成する場合と比べて、パターンノイズの発生を抑制することができ、また、例えば幅方向溝や幅方向サイプの延在長さを長くして気室部5の体積を確保する場合と比べて、パターンノイズの発生を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、パターンノイズの発生を抑制しつつも、気柱共鳴音を低減して、静粛性を向上させることができる。
さらに、本実施形態においては、狭窄ネック部4は、幅方向サイプであり、また、気室部5は、周方向サイプである。新品時から摩耗初期にかけては、周方向主溝2の摩耗量がまだ少なく溝深さが確保されているため、主に周方向主溝2により排水性を確保することができる。一方で、狭窄ネック部4及び気室部5が溝でなくサイプであることから、新品時から摩耗初期にかけて、陸部の剛性を確保して操縦安定性を確保することもできる。特に、幅方向サイプ4がサイプ幅一定部分4aを有していることから、陸部の剛性をより一層確保して操縦安定性をより一層確保することができる。同様に、周方向サイプ5がサイプ幅一定部分5aを有していることから、陸部の剛性をより一層確保して操縦安定性をより一層確保することができる。
また、本実施形態では、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、一端からトレッド幅方向に延び、他端が、リブ状陸部3内で終端している。このため、陸部をブロック状に区画することなく、陸部の剛性を高めて操縦安定性を確保することができる。
このように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、新品時から摩耗初期において、操縦安定性及び排水性の両立を図ることもでき、また、摩耗進展時において、操縦安定性及び排水性の両立を図ることもできる。
【0032】
加えて、本実施形態では、周方向サイプ5は、幅方向サイプ4の他端から、トレッド周方向両側に延びている。これにより、トレッド幅方向に対するエッジ成分をバランス良く配置し得る。
【0033】
また、本実施形態では、周方向サイプ5は、トレッド周方向に沿って延び、又は、トレッド周方向に対して45°未満の傾斜角度で傾斜して延びている。上記の角度範囲とすることにより、共鳴器6によるパターンノイズの発生をさらに抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、幅方向サイプ4は、トレッド幅方向に沿って延び、又は、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びている。上記の角度範囲とすることにより、トレッド周方向に対するエッジ成分を増大させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、周方向サイプ5は、第1の拡幅部5bにおける最大幅が、トレッド踏面1での開口幅の2~10倍である(3~5倍とすることがより好ましい)。第1の拡幅部5bにおける最大幅が、トレッド踏面1での開口幅の2倍以上であることにより、摩耗進展時の排水性をより一層高めることができ、一方で、第1の拡幅部5bにおける最大幅が、トレッド踏面1での開口幅の10倍以下であることにより、摩耗進展時の操縦安定性を十分確保することができる。
【0036】
また、本実施形態では、幅方向サイプ4は、サイプ底側にサイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる第2の拡幅部4bを有する。これにより、サイプ底側にて、狭窄ネック部4と気室部5との連通部分を大きく確保して、気柱共鳴音の低減効果をより確実なものとすることができる。
本実施形態では、第2の拡幅部4bのサイプ幅は、幅方向サイプ4のトレッド踏面1での開口幅の2~10倍としている(2~3倍とすることがより好ましい)。第2の拡幅部4bのサイプ幅を、幅方向サイプ4のトレッド踏面1での開口幅の2倍以上とすることにより、サイプ底側にて、狭窄ネック部4と気室部5との連通部分を大きく確保して、気柱共鳴音の低減効果をより確実なものとする効果をさらに高めることができ、一方で、第2の拡幅部4bのサイプ幅を、幅方向サイプ4のトレッド踏面1での開口幅の10倍以下とすることにより、リブ状陸部3の剛性をより一層高めることができる。
【0037】
次に、共鳴器6の変形例について説明する。
【0038】
図3は、共鳴器の他の例を模式的に示す斜視図である。図3に示す共鳴器6は、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の構成については、図2に示した例と同様であるので、説明を省略する。図3に示す例では、気室部(周方向サイプ)5は、第1の拡幅部をサイプの深さ方向に2箇所有している。
このような構成とすることにより、摩耗進展時の2回にわたって、排水性を高めることができる。
図3に示す例では、トレッド踏面1側から順に、トレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1と、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b1と、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2と、サイプ底側の第1の拡幅部5b2と、を有している。第1の拡幅部5b1、5b2は、いずれもサイプ幅(最大幅)が、トレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)より大きい。さらに本例では、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b1のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b2のサイプ幅(最大幅)より大きい。一方で、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b1のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b2のサイプ幅(最大幅)と同じでも良いし、小さくても良い。
第1の拡幅部5b1、5b2のサイプ幅(最大幅)は、特には限定されないが、サイプのトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)の2~10倍とすることが好ましく、4~8倍とすることがより好ましい。
第1の拡幅部5b1、5b2のサイプの深さ方向の延在長さは、特には限定されないが、気室部(周方向サイプ)5の深さの10~30%とすることができる。
第1の拡幅部5b1、5b2のサイプの深さ方向の位置は特には限定されない。本例では、サイプ底が第1の拡幅部5b2となっているが、必ずしもサイプ底が第1の拡幅部5b2である必要はない。
なお、2つのサイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅は同じであっても良く、あるいは、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2のサイプ幅をトレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1のサイプ幅より大きくしても、又は、小さくしても良い。
本例では、2つの第1の拡幅部5b1、5b2は、いずれも断面円形状であるが、他の形状とすることもでき、例えば、断面楕円形状(サイプ深さ方向がサイプ幅方向より大きくても小さくても良い)、断面三角形状、断面矩形状等とすることもできる。
なお、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、トレッド幅方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
また、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の気室部(周方向サイプ)5は、トレッド周方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド周方向に対して45°未満の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
さらに、この変形例でも、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分5a1、5a2に代えてサイプ幅が変化する部分とすることもできる。
【0039】
図4は、共鳴器の別の例を模式的に示す斜視図である。図4に示す共鳴器6は、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の構成については、図2図3に示した例と同様であるので、説明を省略する。
図4に示す例では、気室部(周方向サイプ)5は、第1の拡幅部をサイプの深さ方向に2箇所有している。
図4に示す例では、第1の拡幅部5b3、5b4が周方向サイプ5の一端から延びて途中で(図示例では、該一端と幅方向サイプ4とのトレッド周方向の中間位置で)終端し、且つ、第1の拡幅部5b5、5b6が周方向サイプ5の他端から延びて途中で(図示例では、該他端と幅方向サイプ4とのトレッド周方向の中間位置で)終端している。
このような構成とすることにより、リブ状陸部3の剛性を高めることができる。
図4に示す例では、周方向サイプ5の一端側においては、トレッド踏面1側から順に、トレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1と、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b3と、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2と、サイプ底側の第1の拡幅部5b4と、を有している。
また、周方向サイプ5の他端側においては、トレッド踏面1側から順に、トレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1と、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b5と、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2と、サイプ底側の第1の拡幅部5b6と、を有している。
第1の拡幅部5b3、5b4、5b5、5b6は、いずれもサイプ幅(最大幅)が、サイプのトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)より大きい。さらに本例では、周方向サイプ5の一端側では、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b3のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b4のサイプ幅(最大幅)より大きい。一方で、周方向サイプ5の他端側では、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b5のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b6のサイプ幅(最大幅)より小さい。このような構成とすることにより、サイプ深さ方向の剛性段差を低減することができる。
なお、周方向サイプ5の一端側で、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b3のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b4のサイプ幅(最大幅)と同じでも良いし、小さくても良い。また、周方向サイプ5の他端側で、トレッド踏面1側の第1の拡幅部5b5のサイプ幅(最大幅)は、サイプ底側の第1の拡幅部5b6のサイプ幅(最大幅)と同じでも良いし、大きくても良い。第1の拡幅部5b3~5b6のサイプ幅(最大幅)の大小関係(同じ場合も含む)は、任意の組み合わせとすることができる。
第1の拡幅部5b3~5b6のサイプ幅(最大幅)は、特には限定されないが、サイプのトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)の2~10倍とすることが好ましく、4~8倍とすることがより好ましい。
第1の拡幅部5b3~5b6のサイプの深さ方向の延在長さは、特には限定されないが、気室部(周方向サイプ)5の深さの10~30%とすることができる。
第1の拡幅部5b3~5b6のサイプの深さ方向の位置は特には限定されない。本例では、サイプ底が第1の拡幅部5b4、5b6となっているが、必ずしもサイプ底が第1の拡幅部5b4、5b6である必要はない。
なお、2つのサイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅は同じであっても良く、あるいは、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2のサイプ幅をトレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1のサイプ幅より大きくしても、又は、小さくしても良い。
本例では、4つの第1の拡幅部5b3~5b6は、いずれも断面円形状であるが、他の形状とすることもでき、例えば、断面楕円形状(サイプ深さ方向がサイプ幅方向より大きくても小さくても良い)、断面三角形状、断面矩形状等とすることもできる。
なお、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、トレッド幅方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
また、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の気室部(周方向サイプ)5は、トレッド周方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド周方向に対して45°未満の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
さらに、この変形例でも、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分5a1、5a2に代えてサイプ幅が変化する部分とすることもできる。
【0040】
図5は、共鳴器のさらに別の例を模式的に示す斜視図である。図5に示す共鳴器6は、狭窄ネック部(幅方向サイプ)4の構成については、図2図4に示した例と同様であるので、説明を省略する。
図5に示す例では、気室部(周方向サイプ)5は、第1の拡幅部をサイプの深さ方向に1箇所有している。
図5に示す例では、第1の拡幅部5b7が周方向サイプ5の一端から延びて途中で(図示例では、幅方向サイプ4の位置で)終端し、且つ、第1の拡幅部5b8が周方向サイプ5の他端から延びて途中で(図示例では、幅方向サイプ4の位置で)終端している。
このような構成とすることによっても、リブ状陸部3の剛性を高めることができる。
図5に示す例では、周方向サイプ5の一端側においては、トレッド踏面1側から順に、トレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1と、第1の拡幅部5b7と、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2と、を有している。また、周方向サイプ5の他端側においては、トレッド踏面1側から順に、トレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1と、第1の拡幅部5b8と、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2と、を有している。
第1の拡幅部5b7、5b8は、いずれもサイプ幅(最大幅)が、サイプのトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)より大きい。さらに本例では、周方向サイプ5の一端側の第1の拡幅部5b7と、周方向サイプ5の他端側の第1の拡幅部5b8とのサイプ深さ方向の位置を異ならせている。このような構成とすることにより、サイプ深さ方向の剛性段差を低減することができる。なお、図示例では、周方向サイプ5の一端側の第1の拡幅部5b7は、周方向サイプ5の他端側の第1の拡幅部5b8よりトレッド踏面1側に位置しているが、サイプ底側に位置してもよい。あるいは、周方向サイプ5の一端側の第1の拡幅部5b7と、周方向サイプ5の他端側の第1の拡幅部5b8とのサイプ深さ方向の位置を揃えることもできる。
また、図示例では、周方向サイプ5の一端側の第1の拡幅部5b7のサイプ幅(最大幅)と周方向サイプ5の他端側の第1の拡幅部5b8のサイプ幅(最大幅)とは同じ大きさであるが、周方向サイプ5の一端側の第1の拡幅部5b7のサイプ幅(最大幅)を周方向サイプ5の他端側の第1の拡幅部5b8のサイプ幅(最大幅)より大きくすることも、小さくすることもできる。
第1の拡幅部5b7、5b8のサイプ幅(最大幅)は、特には限定されないが、サイプのトレッド踏面1での開口幅(本例ではすなわち、サイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅)の2~10倍とすることが好ましく、4~8倍とすることがより好ましい。
第1の拡幅部5b7、5b8のサイプの深さ方向の延在長さは、特には限定されないが、気室部(周方向サイプ)5の深さの20~50%とすることができる。
第1の拡幅部5b7、5b8のサイプの深さ方向の位置は特には限定されない。本例では、サイプ底がサイプ幅一定部分5a2となっているが、必ずしもサイプ底がサイプ幅一定部分5a2である必要はない。周方向サイプ5の一端側及び/又は他端側の第1の拡幅部5b7、5b8をサイプ底にすることもできる。
なお、2つのサイプ幅一定部分5a1、5a2のサイプ幅は同じであっても良く、あるいは、サイプ底側のサイプ幅一定部分5a2のサイプ幅をトレッド踏面1側のサイプ幅一定部分5a1のサイプ幅より大きくしても、又は、小さくしても良い。
本例では、2つの第1の拡幅部5b3~5b6は、いずれも断面円形状であるが、他の形状とすることもでき、例えば、断面楕円形状(サイプ深さ方向がサイプ幅方向より大きくても小さくても良い)、断面三角形状、断面矩形状等とすることもできる。
なお、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の狭窄ネック部(幅方向サイプ)4は、トレッド幅方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
また、この変形例においても、少なくとも一部(一部又は全部)の気室部(周方向サイプ)5は、トレッド周方向に対して傾斜して延びることもでき、その場合、トレッド周方向に対して45°未満の角度で傾斜していることが好ましく、30°以下の角度で傾斜していることがより好ましい。
さらに、この変形例でも、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分5a1、5a2に代えてサイプ幅が変化する部分とすることもできる。
【0041】
以上の各例において、周方向サイプは、幅方向サイプの他端から、トレッド周方向両側に延びることが好ましい。トレッド幅方向に対するエッジ成分をバランス良く配置し得るからである。
【0042】
また、周方向サイプは、トレッド周方向に沿って延び、又は、トレッド周方向に対して45°未満の傾斜角度で傾斜して延びることが好ましく、30°以下の傾斜角度で傾斜していることがより好ましい。上記の角度範囲とすることにより、共鳴器6によるパターンノイズの発生をより抑制することができるからである。また、トレッド幅方向に対するエッジ成分を増大させることができるからである。この観点からは、トレッド周方向に対する傾斜角度が小さい方が好ましく、トレッド周方向に沿って延びることが最も好ましい。一方で、トレッド周方向に対するエッジ成分も増大させる観点からは、トレッド周方向に対する傾斜角度が大きいことが好ましいが、トレッド周方向に対して、45°未満の傾斜角度とすることが好ましい。
【0043】
また、幅方向サイプは、トレッド幅方向に沿って延び、又は、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びることが好ましく、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びることがより好ましい。トレッド周方向に対するエッジ成分を増大させることができるからである。この観点からは、トレッド幅方向に対する傾斜角度が小さい方が好ましく、トレッド幅方向に沿って延びることが最も好ましい。一方で、トレッド幅方向に対するエッジ成分も増大させる観点やパターンノイズの発生をより抑制する観点からは、トレッド幅方向に対する傾斜角度が大きい方が好ましいが、トレッド幅方向に対して、45°以下の傾斜角度とすることが好ましい。
【0044】
また、周方向サイプは、第1の拡幅部における最大幅が、トレッド踏面での開口幅の2~10倍であることが好ましい。第1の拡幅部における最大幅が、トレッド踏面での開口幅の2倍以上であることにより、摩耗進展時の排水性をより一層高めることができ、一方で、第1の拡幅部における最大幅が、トレッド踏面での開口幅の10倍以下であることにより、摩耗進展時の操縦安定性を十分に確保することができるからである。同様の理由により、周方向サイプは、第1の拡幅部における最大幅が、トレッド踏面での開口幅の3~5倍であることがより好ましい。
【0045】
また、幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅がトレッド踏面側より大きくなる第2の拡幅部を有することが好ましい。サイプ底側にて、狭窄ネック部と気室部との連通部分を大きく確保して、気柱共鳴音の低減効果をより確実なものとすることができるからである。
【0046】
第2の拡幅部のサイプ幅は、サイプのトレッド踏面での開口幅の2~10倍とすることが好ましい。第2の拡幅部のサイプ幅を、サイプのトレッド踏面での開口幅の2倍以上とすることにより、サイプ底側にて、狭窄ネック部と気室部との連通部分を大きく確保して、気柱共鳴音の低減効果をより確実なものとする効果をさらに高めることができ、一方で、第2の拡幅部のサイプ幅を、サイプのトレッド踏面での開口幅の10倍以下とすることにより、リブ状陸部の剛性をより一層高めることができるからである。同様の理由により、第2の拡幅部のサイプ幅は、サイプのトレッド踏面での開口幅の2~3倍とすることがより好ましい。
【0047】
なお、幅方向サイプ4及び周方向サイプ4は、それぞれの形状に対応する形状を有するブレードを用いて形成することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図2図5に示した例では、第1の拡幅部を周方向サイプの深さ方向に1つ設けた例を示したが、2つ以上設けることもできる。また、例えば、図3図4に示した例では、第1の拡幅部を周方向サイプの深さ方向に2つ設けた例を示したが、3つ以上設けることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1:トレッド踏面、
2:周方向主溝、
3:リブ状陸部、
4:狭窄ネック部(幅方向サイプ)、
4a:サイプ幅一定部分、
4b:第2の拡幅部、
5:気室部(周方向サイプ)、
5a、5a1、5a2:サイプ幅一定部分、
5b、5b1~5b8:第1の拡幅部、
6:共鳴器、
CL:タイヤ赤道面、
TE:トレッド端、
図1
図2
図3
図4
図5