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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】脂肪アミンの微生物生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20221004BHJP
   C12P 13/00 20060101ALI20221004BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P13/00
C12N15/53
C12N15/54
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019124897
(22)【出願日】2019-07-04
(62)【分割の表示】P 2016536609の分割
【原出願日】2014-12-05
(65)【公開番号】P2019205440
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2019-07-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】61/912,184
(32)【優先日】2013-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】デル カーデイレ スティーブン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ホム ルイス ジー.
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/075483(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035513(US,A1)
【文献】特表2009-529890(JP,A)
【文献】特表2008-501323(JP,A)
【文献】BMC Microbiology 2003.3:2,pp.1-10
【文献】Accession POA9Q7; P17547,uniprot[online]2012年 6月13日,retrieved on 2020-08-07,retrieved from Internet,URL,https://www.uniprot.org/uniprot/P0A9Q7.txt?=version=68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、脂肪アミンの生産のための組換え細菌細胞:
(i) 外因性に発現されるトランスアミナーゼ
(ii)外因性に発現されるカルボン酸レダクターゼ(CAR)、および、
(iii)外因性に発現されるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)。
【請求項2】
トランスアミナーゼが、大腸菌由来のygjGである、請求項1記載の組換え細菌細胞。
【請求項3】
FadEの活性が、減弱されている、請求項1記載の組換え細菌細胞。
【請求項4】
アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.1.1.1)をさらに含む、請求項1記載の組換え細菌細胞。
【請求項5】
過剰発現される外因性グルタミン酸デヒドロゲナーゼ酵素をさらに含む、請求項1記載の組換え細菌細胞。
【請求項6】
以下を含む、脂肪アミンを調製するための方法:
外因性に発現されるトランスアミナーゼ(EC 2.6.1)、外因性に発現されるカルボン酸レダクターゼ(CAR)および外因性に発現されるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)を含む組換え細菌細胞を、炭素源を含有する発酵ブロス中で培養する工程。
【請求項7】
脂肪アミンを単離する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年12月5日に提出された米国仮出願第61/912,184号の恩典を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、脂肪アミンおよびその誘導体の生産のための組換え微生物に関する。インビボで脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成タンパク質を発現する組換え宿主細胞も、さらに企図している。さらに、これらの生合成タンパク質を発現する宿主細胞を使用することによって脂肪アミンを生産する方法も範囲に含まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
脂肪アミンは、脂肪酸、オレフィン、またはアルコールの窒素誘導体である。それらは天然の脂肪および油から、または合成原材料もしくは石油化学原材料から作られる。今日、これらの化合物は主として、獣脂または植物油(例えば、ココナッツ油、カノーラ油およびナタネ油)などのトリグリセリドの化学修飾を通じて生産されている。
【0004】
市販の脂肪アミンは、C8~C22の範囲にわたる、複数の炭素鎖の混合物または特定の鎖長の炭素鎖のいずれかからできている。一般にそれらは、脂肪アルキル基またはメチル基によって置換されたアンモニア分子の水素原子の数に応じて、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンに分類される。脂肪アミンは、物理的または化学的な結合のいずれかを通じて表面に強く付着する陽イオン界面活性化合物であることが知られている。脂肪アミンを反応性中間体として用いて、多くの商品が調製されている。例えば、それらは、界面活性剤として、ならびにシャンプーおよびコンディショナーといったパーソナルケア製品の構成成分として有用である。脂肪アミンの最大の市場は、柔軟仕上げ剤および洗剤におけるものである。脂肪アミンはまた、発泡剤および湿潤剤、繊維業界およびプラスチック業界における帯電防止剤、潤滑剤、塗料増粘剤、油分野の化学物質、アスファルト乳化剤、石油添加剤、腐食防止剤、ガソリンおよび燃料油の添加剤、浮遊剤、色素湿潤剤、エポキシ硬化剤、除草剤などとしても用いられている(Visek K. (2003) Fatty Amines; Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(非特許文献1)を参照されたい)。
【0005】
微生物発酵を介する脂肪アミンの生産には、より均一な組成物が得られる、より低コストで製造できる、および環境影響が軽減されるといった、いくつかの利点がある。加えて、それは、現在用いられている天然の脂肪および油ならびに合成性または石油化学性の原材料よりも優れた多様な新たな原料の可能性も開くと考えられる。脂肪アミンの微生物生産のための効率的な方法は、現時点では存在しない。本開示はこの需要に応える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Visek K. (2003) Fatty Amines; Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology
【発明の概要】
【0007】
概要
本開示の1つの局面は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための遺伝子操作された代謝経路を含む、脂肪アミンの生産のための組換え微生物を提供する。本明細書において、組換え微生物は、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素を含む、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための遺伝子操作された代謝経路を有する。1つの態様において、外因性生合成酵素は、YgjGなどのプトレシンアミノトランスフェラーゼである。もう1つの態様において、外因性生合成酵素は、PuuEなどのGABAアミノトランスフェラーゼである。YgjGは、組換え微生物または組換え微生物細胞において発現されるygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。同様に、PuuEは、組換え微生物または組換え微生物細胞において発現されるpuuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、外因性生合成酵素は、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)由来のメチルアミン(amethylamine)デヒドロゲナーゼなどのアミンデヒドロゲナーゼである。これらの組換え微生物または組換え微生物細胞は、インビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する。脂肪アミンは組換え微生物または組換え微生物細胞によって培養培地中に放出される。1つの態様において、組換え微生物または微生物細胞は組換え細菌細胞である。
【0008】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための第1の遺伝子操作された代謝経路を含む、脂肪アミンの生産のための組換え微生物を提供する。組換え微生物は、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素を含む、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための第1の遺伝子操作された代謝経路(前記)を有する。1つの態様において、組換え微生物は、アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換するための、もう1つまたは第2の遺伝子操作された代謝経路を有する。第2の遺伝子操作された代謝経路は任意選択的である。本明細書において、アシル-ACPまたはアシル-CoAは、チオエステラーゼ活性を有する生合成酵素によって脂肪酸に変換される。1つの態様において、チオエステラーゼ活性を有する生合成酵素は、組換え微生物または微生物細胞において発現されるtesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。これらの組換え微生物または組換え微生物細胞は、インビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する。脂肪アミンは組換え微生物または組換え微生物細胞によって培養培地中に放出される。1つの態様において、組換え微生物または微生物細胞は組換え細菌細胞である。
【0009】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための第1の遺伝子操作された代謝経路を含む、脂肪アミンの生産のための組換え微生物を提供する。組換え微生物は、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素を含む、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための第1の遺伝子操作された代謝経路(前記)を有する。1つの態様において、組換え微生物は、アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換するための、もう1つまたは第2の遺伝子操作された代謝経路(前記)を有する。もう1つの態様において、組換え微生物は、脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するための、なおもう1つまたは第3の遺伝子操作された代謝経路を含む。この第3の遺伝子操作された代謝経路は任意選択的であり、第2の遺伝子操作された代謝経路とは独立である。本明細書において、脂肪酸は、カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する生合成酵素によって脂肪アルデヒドに変換される。1つの態様において、CAR活性を有する生合成酵素は、組換え微生物または微生物細胞において発現されるcarB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。これらの組換え微生物または組換え微生物細胞は、インビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する。脂肪アミンは組換え微生物または組換え微生物細胞によって培養培地中に放出される。1つの態様において、組換え微生物または微生物細胞は組換え細菌細胞である。
【0010】
本開示のもう1つの局面は、チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;カルボン酸レダクターゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;および、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子を含む、脂肪アミンの生産のための組換え細菌細胞であって、インビボまたは細菌細胞内で脂肪アミンを産生する組換え細菌細胞を提供する。脂肪アミンは組換え細菌細胞によって培養培地中に放出される。本明細書において、チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素はアシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換する。カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する外因性生合成酵素は、脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換する。アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する。1つの態様において、チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、tesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、CAR活性を有する外因性生合成酵素は、carB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。さらにもう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、YgjGなどのプトレシンアミノトランスフェラーゼまたはPuuEなどのGABAアミノトランスフェラーゼである。YgjGは、ygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。PuuEは、puuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。なおもう1つの態様において、アミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、パラコッカス・デニトリフィカンス由来のメチルアミンデヒドロゲナーゼなどのメチルアミンデヒドロゲナーゼである。
【0011】
本開示のもう1つの局面は、アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換するチオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するカルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;および、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子を含む、脂肪アミンの生産のための組換え細菌細胞であって、インビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する組換え細菌細胞を提供する。1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、YgjGなどのプトレシンアミノトランスフェラーゼである。もう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、PuuEなどのGABAアミノトランスフェラーゼである。YgjGは、組換え細菌細胞において発現されるygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。同様に、PuuEは、組換え細菌細胞において発現されるpuuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、パラコッカス・デニトリフィカンスのメチルアミンデヒドロゲナーゼなどのアミンデヒドロゲナーゼである。1つの態様において、チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、tesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、CAR活性を有する外因性生合成酵素は、carB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。組換え細菌細胞はインビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する。脂肪アミンは組換え細菌細胞によって培養培地中に放出される。
【0012】
本開示はさらに、アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換するための第1の遺伝子操作された経路;脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するための第2の遺伝子操作された代謝経路;および、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための第3の遺伝子操作された代謝経路を含む、脂肪アミンの生産のための組換え細菌細胞であって、インビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する組換え細菌細胞を企図している。1つの態様において、アシル-ACPまたはアシル-CoAは、チオエステラーゼ活性を有する外因性に発現された生合成酵素によって脂肪酸に変換される;脂肪酸は、カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する外因性に発現された生合成酵素によって脂肪アルデヒドに変換される;そして、脂肪アルデヒドは、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性に発現された生合成酵素によって脂肪アミンに変換される。1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、YgjGなどのプトレシンアミノトランスフェラーゼである。もう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、PuuEなどのGABAアミノトランスフェラーゼである。YgjGは、組換え細菌細胞において発現されるygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。同様に、PuuEは、組換え細菌細胞において発現されるpuuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、パラコッカス・デニトリフィカンス由来のメチルアミンデヒドロゲナーゼなどのアミンデヒドロゲナーゼである。1つの態様において、チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素は、tesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。もう1つの態様において、CAR活性を有する外因性生合成酵素は、carB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる。組換え細菌細胞はインビボまたは細胞内で脂肪アミンを産生する。脂肪アミンは組換え細菌細胞によって培養培地中に放出される。
【0013】
本開示のもう1つの局面は、エシェリキア(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、藍藻植物(Cyanophyta)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ザイモモナス(Zymomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、フザリウム(Fusarium)、ヒューミコーラ(Humicola)、リゾムコール(Rhizomucor)、クリベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophtora)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、プレウロタス(Pleurotus)、トラメテス(Trametes)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ステノトロホモナス(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、およびストレプトミセス(Streptomyces)を非限定的に含む、脂肪アミンの生産のための組換え微生物を提供する。1つの態様において、エシェリキアは大腸菌(Escherichia coli)である。もう1つの態様において、藍藻植物は、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis)、シアノセイス(Cyanothece)、およびノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)を非限定的に含む。さらにもう1つの態様において、藍藻植物は、シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)PCC7942、シネコシスティス種PCC6803、およびシネココッカス種PCC7001を非限定的に含む。
【0014】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アミンを生産する方法であって、組換え微生物を、炭素源を含有する発酵ブロス中で培養する段階を含む方法を提供する。微生物は、インビボで脂肪アミンを生産するための少なくとも1つの遺伝子操作された代謝経路(前記)を包含する。本開示のもう1つの局面は、組換え細菌細胞において脂肪アミンを生産する方法であって、脂肪アミンを生産するための遺伝子操作された代謝経路(前記)を発現する細胞を、発酵ブロス中で炭素源の存在下で培養する段階;および、発酵ブロス中に収集された脂肪アミンを採取する段階、を含む方法を提供する。
【0015】
本開示は、アミンの生産のための組換え微生物細胞(前記)を含む細胞培養物をさらに範囲に含む。1つの態様において、細胞培養物は、アミンの生産のための組換え細菌細胞を包含する。もう1つの態様において、組換え微生物細胞は組換え細菌細胞である。
【0016】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路および脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成酵素を有する組換え微生物であって、生合成酵素がアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する、組換え微生物を提供する。1つの態様において、生合成酵素はプトレシンアミノトランスフェラーゼまたはGABAアミノトランスフェラーゼである。もう1つの態様において、生合成酵素はアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼである。
【0017】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路、および脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成酵素を含む脂肪アミン生産のための遺伝子操作された代謝経路を有する組換え微生物であって、微生物細胞である組換え微生物を提供する。1つの局面において、微生物細胞は組換え細胞である。微生物細胞には、エシェリキア、バチルス、藍藻植物、ラクトバチルス、ザイモモナス、ロドコッカス、シュードモナス、アスペルギルス、トリコデルマ、ニューロスポラ、フザリウム、ヒューミコーラ、リゾムコール、クリベロミセス、ピキア、ムコール、ミセリオフトラ、ペニシリウム、ファネロカエテ、プレウロタス、トラメテス、クリソスポリウム、サッカロミセス、ステノトロホモナス、シゾサッカロミセス、ヤロウイア、およびストレプトミセスが非限定的に含まれる。1つの態様において、エシェリキアは大腸菌である。もう1つの態様において、藍藻植物は、プロクロロコッカス、シネココッカス、シネコシスティス、シアノセイス、およびノストック・パンクチフォルメを非限定的に含む。さらにもう1つの態様において、藍藻植物は、シネココッカス・エロンガタスPCC7942、シネコシスティス種PCC6803、およびシネココッカス種PCC7001である。
【0018】
本開示のもう1つの局面は、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路および脂肪アミン生産のための遺伝子操作された代謝経路を有する組換え微生物を提供する。1つの態様において、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路は、脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するチオエステラーゼおよび/またはカルボン酸レダクターゼ(CAR)を含み、一方、脂肪アミン生産のための遺伝子操作された代謝経路は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼを含む。いくつかの態様において、チオエステラーゼは、リーダー配列を伴うかまたは伴わない、tesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされ、一方、カルボン酸レダクターゼ(CAR)はcarB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされ、これらの両方がその微生物において発現される。1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼは、プトレシンアミノトランスフェラーゼまたはGABAアミノトランスフェラーゼである。1つの態様において、プトレシンアミノトランスフェラーゼは、その微生物において発現されるygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされるYgjGである。もう1つの態様において、GABAアミノトランスフェラーゼは、その微生物において発現されるpuuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされるPuuEである。さらにもう1つの態様において、アミンデヒドロゲナーゼは、パラコッカス・デニトリフィカンス由来のメチルアミンデヒドロゲナーゼである。1つの態様において、脂肪アミンは微生物によって上清中または培養培地中に放出される。もう1つの態様において、脂肪アミンは微生物の内部から収集され、この場合にはそれを発酵手順の最中または後に抽出することができる。
【0019】
本開示は、組換え微生物を炭素源を含有する発酵ブロス中で培養する段階を含む、脂肪アミンを生産する方法であって、組換え微生物が脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路および脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成酵素を含み、生合成酵素がアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を含み、かつ微生物がインビボで脂肪アミンを産生する方法をさらに企図している。
【0020】
本開示は、チオエステラーゼおよびカルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する1つまたは複数の酵素の発現;ならびにアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素の発現を含む、脂肪アミンを産生する組換え微生物細胞を、さらに範囲に含む。1つの態様において、生合成酵素は、YgjGなどのプトレシンアミノトランスフェラーゼまたはPuuEなどのGABAアミノトランスフェラーゼである。もう1つの態様において、生合成酵素は、パラコッカス・デニトリフィカンス由来のメチルアミンデヒドロゲナーゼなどのアミンデヒドロゲナーゼである。なおもう1つの態様において、生合成酵素はアミンオキシダーゼである。
【0021】
さらに、本開示のもう1つの局面は、組換え微生物において脂肪アミンを生産するための方法を提供する。本方法は、微生物細胞(前記)を発酵培地中で炭素源の存在下で培養する段階;および、上清中または発酵培地中に収集された脂肪アミンを採取する段階を含む。組換え微生物細胞は、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路および脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成酵素を含み、生合成酵素はアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する。もう1つの局面において、組換え微生物細胞は、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された代謝経路、および脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する生合成酵素を含むアミン生産のための遺伝子操作された代謝経路を含み、生合成酵素はアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する。
【0022】
本開示のもう1つの局面は、石油化学原材料ではない炭素源に由来する脂肪アミンを提供する。例えば、本開示は、再生可能な原料、例えばCO2、CO、グルコース、スクロース、キシロース、アラビノース、グリセロール、マンノース、またはそれらの混合物などに由来する脂肪アミンを提供する。脂肪アミンの由来となりうる本明細書において提供される他の原料には、デンプン、セルロース性バイオマス、糖蜜、およびセルロース性バイオマスの加水分解に由来する糖質混合物を含む他の糖質源、または植物油もしくは天然油の処理に由来する廃棄材料が含まれる。
[本発明1001]
脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための遺伝子操作された代謝経路を含む、脂肪アミンの生産のための組換え微生物であって、該代謝経路が、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素を含む、インビボで脂肪アミンを産生する該微生物。
[本発明1002]
脂肪アミンが前記微生物によって培養培地中に放出される、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1003]
外因性生合成酵素がプトレシンアミノトランスフェラーゼまたはGABAアミノトランスフェラーゼである、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1004]
プトレシンアミノトランスフェラーゼがYgjGである、本発明1003の組換え微生物。
[本発明1005]
YgjGが、前記微生物において発現されるygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1004の組換え微生物。
[本発明1006]
GABAアミノトランスフェラーゼがPuuEである、本発明1003の組換え微生物。
[本発明1007]
PuuEが、前記微生物において発現されるpuuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1006の組換え微生物。
[本発明1008]
外因性生合成酵素がアミンデヒドロゲナーゼである、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1009]
アミンデヒドロゲナーゼが、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)のメチルアミンデヒドロゲナーゼである、本発明1008の組換え微生物。
[本発明1010]
アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換するためのもう1つの遺伝子操作された代謝経路をさらに含む、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1011]
アシル-ACPまたはアシル-CoAが、チオエステラーゼ活性を有する生合成酵素によって脂肪酸に変換される、本発明1010の組換え微生物。
[本発明1012]
チオエステラーゼ活性を有する生合成酵素が、前記微生物において発現されるtesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1011の組換え微生物。
[本発明1013]
脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するためのもう1つの遺伝子操作された代謝経路をさらに含む、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1014]
脂肪酸が、カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する生合成酵素によって脂肪アルデヒドに変換される、本発明1013の組換え微生物。
[本発明1015]
CAR活性を有する生合成酵素が、前記微生物において発現されるcarB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1014の組換え微生物。
[本発明1016]
組換え微生物細胞である、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1017]
組換え細菌細胞である、本発明1016の組換え微生物細胞。
[本発明1018]
エシェリキア(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、藍藻植物(Cyanophyta)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ザイモモナス(Zymomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、フザリウム(Fusarium)、ヒューミコーラ(Humicola)、リゾムコール(Rhizomucor)、クリベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophtora)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、プレウロタス(Pleurotus)、トラメテス(Trametes)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ステノトロホモナス(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、およびストレプトミセス(Streptomyces)からなる群より選択される、本発明1016の組換え微生物細胞。
[本発明1019]
エシェリキアが大腸菌(Escherichia coli)である、本発明1018の組換え微生物細胞。
[本発明1020]
藍藻植物が、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis)、シアノセイス(Cyanothece)、およびノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)からなる群より選択される、本発明1018の組換え微生物細胞。
[本発明1021]
藍藻植物が、シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)PCC7942、シネコシスティス種PCC6803、およびシネココッカス種PCC7001からなる群より選択される、本発明1018の組換え微生物細胞。
[本発明1022]
本発明1001の組換え微生物を、炭素源を含有する発酵ブロス中で培養する段階を含む、脂肪アミンを生産する方法。
[本発明1023]
(i)チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;
(ii)カルボン酸レダクターゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子;および
(iii)アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素をコードする1つまたは複数の発現された遺伝子
を含む、脂肪アミンの生産のための組換え細菌細胞であって、インビボで脂肪アミンを産生する組換え細菌細胞。
[本発明1024]
脂肪アミンが前記細菌細胞によって培養培地中に放出される、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1025]
チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素がアシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換する、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1026]
カルボン酸レダクターゼ活性を有する外因性生合成酵素が脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換する、本発明1025の組換え細菌細胞。
[本発明1027]
アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素が脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する、本発明1026の組換え細菌細胞。
[本発明1028]
チオエステラーゼ活性を有する外因性生合成酵素が、tesA遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1029]
カルボン酸レダクターゼ活性を有する外因性生合成酵素が、carB遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1030]
アミノトランスフェラーゼ活性を有する外因性生合成酵素がプトレシンアミノトランスフェラーゼまたはGABAアミノトランスフェラーゼである、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1031]
プトレシンアミノトランスフェラーゼがYgjGである、本発明1030の組換え細菌細胞。
[本発明1032]
YgjGが、ygjG遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1031の組換え細菌細胞。
[本発明1033]
GABAアミノトランスフェラーゼがPuuEである、本発明1030の組換え細菌細胞。
[本発明1034]
PuuEが、puuE遺伝子をコードする核酸配列によってコードされる、本発明1033の組換え細菌細胞。
[本発明1035]
アミンデヒドロゲナーゼ活性を有する外因性生合成酵素がメチルアミンデヒドロゲナーゼである、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1036]
メチルアミンデヒドロゲナーゼがパラコッカス・デニトリフィカンスに由来する、本発明1035の組換え細菌細胞。
[本発明1037]
エシェリキア、バチルス、藍藻植物、ラクトバチルス、ザイモモナス、ロドコッカス、シュードモナス、アスペルギルス、トリコデルマ、ニューロスポラ、フザリウム、ヒューミコーラ、リゾムコール、クリベロミセス、ピキア、ムコール、ミセリオフトラ、ペニシリウム、ファネロカエテ、プレウロタス、トラメテス、クリソスポリウム、サッカロミセス、ステノトロホモナス、シゾサッカロミセス、ヤロウイア、およびストレプトミセスからなる群より選択される、本発明1023の組換え細菌細胞。
[本発明1038]
エシェリキアが大腸菌である、本発明1037の組換え細菌細胞。
[本発明1039]
藍藻植物が、プロクロロコッカス、シネココッカス、シネコシスティス、シアノセイス、およびノストック・パンクチフォルメからなる群より選択される、本発明1037の組換え細菌細胞。
[本発明1040]
藍藻植物が、シネココッカス・エロンガタスPCC7942、シネコシスティス種PCC6803、およびシネココッカス種PCC7001からなる群より選択される、本発明1037の組換え細菌細胞。
[本発明1041]
本発明1023の細菌細胞を含む、細胞培養物。
[本発明1042]
本発明1023の細菌細胞を、炭素源を含有する発酵ブロス中で培養する段階を含む、脂肪アミンを生産する方法。
[本発明1043]
(i)本発明1023の細胞を、発酵ブロス中で炭素源の存在下で培養する段階;および
(ii)発酵ブロス中に収集された脂肪アミンを採取する段階
を含む、細菌細胞において脂肪アミンを生産する方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示は、好ましい態様を例示する役割を果たす添付の図面と併せて読むと、最も良く理解される。しかし、本開示が、図面中に開示された具体的な態様に限定されないことは理解されよう。
図1】チオエステラーゼ、カルボン酸レダクターゼおよびアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼの発現を介して生じた特有の脂肪アミンピーク(矢印で示されている、中央パネルの7.61分を参照)を示している、微生物細胞抽出物のMS/GCクロマトグラフである(中央の列)。上の列はF16陰性対照である;中央の列はF16-YG試料である;下の列はYG陰性対照である。上の列および中央の列におけるそのほかのピークは脂肪アルコールである。
図2】F16-YG試料(上の列)の溶出プロフィールを、1-ドデシルアミン標準品(下の列)と比較して示している、もう1つのMS/GCクロマトグラフを描写している。上の列および中央の列におけるそのほかのピークは脂肪アルコールである。
図3】F16-YG試料(上の列)および1-ドデシルアミン標準品(下の列)からの7.6分でのピークのイオン断片化パターンを示している。C11H24N、C10H22N、C9H20Nを含む、1-ドデシルアミンの特徴的なイオン断片の分子構造も、上の列に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
全体的概観
本開示は、新たなクラスの再生可能な化学製品である脂肪アミンの微生物生産に関する。脂肪アミンは、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するための遺伝子操作された代謝経路を発現する微生物を通じて生産される。そのため、微生物は、脂肪アミンをインビボで産生するために、少なくとも1つの外因性生合成酵素を発現する。外因性生合成酵素は、アミノトランスフェラーゼ活性もしくはアミンデヒドロゲナーゼ活性;またはカルボン酸レダクターゼ(CAR)活性;またはチオエステラーゼ活性、またはそれらの組み合わせを有してよい。代替的な形態の酵素活性も本明細書において企図している。
【0025】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって明らかに別様に規定されている場合を除き、複数形の指示物も含む。したがって、例えば、「1つの宿主細胞」への言及は2つまたはそれを上回るそのような宿主細胞を含み、「1つの脂肪アミン」への言及は1つもしくは複数の脂肪アミン、またはアミンの混合物への言及を含み、「1つの核酸配列」への言及は1つまたは複数の核酸配列を含み、「1つの酵素」への言及は1つまたは複数の酵素を含み、他についても同様である。
【0026】
「遺伝子操作された代謝経路」という用語は、ある特定の物質(すなわち、前駆体、中間体または最終生成物)を細胞内で生産させる(またはその生産量を増加させる)ために細胞において発現される少なくとも1つの生合成酵素によって触媒される、1つまたは複数の遺伝的に操作された、または最適化された化学反応のことを指す。1つの態様において、生合成酵素は外因性生合成酵素である。もう1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、細胞による所望の最終生成物の生産を可能にする。もう1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、細胞による所望の前駆体の生産を可能にする。もう1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、細胞による所望の中間体の生産を可能にする。
【0027】
「インビボ」という用語は、特定の生成物を生成させる文脈で用いられる場合、「細胞内」のことを指す。例えば、インビボでの脂肪アミンの生成とは、細胞内での脂肪アミンの生成を意味する。
【0028】
本明細書において言及される配列アクセッション番号は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health, U.S.A.)によって管理されているNCBI(National Center for Biotechnology Information)によって提供されるデータベースから(これらは本明細書において「NCBIアクセッション番号」として、または代替的には「GenBankアクセッション番号」として識別される)、ならびにSwiss Institute of Bioinformaticsによって提供されるUniProt Knowledgebase(UniProtKB)およびSwiss-Protデータベースから(これらは本明細書において「UniProtKBアクセッション番号」として識別される)入手した。
【0029】
酵素分類(EC)番号は、国際生化学分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(IUBMB)の命名委員会(Nomenclature Committee)によって確立されており、その記述はWorld Wide WebのIUBMB Enzyme Nomenclatureウェブサイトで入手可能である。EC番号は、酵素により触媒される反応に応じて酵素を分類する。例えば、異なる酵素(例えば、異なる生物に由来する)が同じ反応を触媒するならば、それらは同じEC番号に分類される。加えて、収束進化を通じて、異なるタンパク質フォールドが同一の反応を触媒しうるようになり、そのため同一のEC番号が割り当てられることもある(Omelchenko et al. (2010) Biol. Direct 5:31を参照)。進化の上では関係がなく、同じ生化学反応を触媒しうるタンパク質は、相似酵素(すなわち、相同酵素とは対照的なものとして)と呼ばれることがある。EC番号は、例えば、タンパク質をそのアミノ酸配列によって特定するUniProt識別子とは異なる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオチド」という用語は、複素環塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなるポリヌクレオチドの単量体単位のことを指す。天然の塩基(グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U))は、典型的にはプリンまたはピリミジンの誘導体であるが、天然および非天然の塩基類似体も含まれることが理解されるべきである。天然の糖は、ペントース(五炭糖)デオキシリボース(DNAを形成する)またはリボース(RNAを形成する)であるが、天然および非天然の糖類似体も含まれることが理解されるべきである。核酸は、典型的にはリン酸結合を介して連結されて核酸またはポリヌクレオチドを形成するが、多くの他の結合も当技術分野において公知である(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェートなど)。
【0031】
「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)の重合体のことを指し、それらは一本鎖でも二本鎖でもよく、非天然または改変ヌクレオチドを含むこともできる。「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書において、任意の長さの重合型のヌクレオチドを指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は分子の一次構造を指しており、それ故、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。これらの用語は、同等のものとして、メチル化および/またはキャッピングされたポリヌクレオチドなどの、ただしそれらに限定はされないヌクレオチド類似体および修飾ポリヌクレオチドでできたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含む。ポリヌクレオチドは、プラスミド、ウイルス、染色体、EST、cDNA、mRNA、およびrRNAを非限定的に含む、任意の形態にあってよい。
【0032】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指して互換的に用いられる。「組換えポリペプチド」という用語は、一般に、発現されるタンパク質をコードするcDNAまたはRNAが、適した発現ベクター中に挿入され、それが続いてポリペプチドを産生させる目的で宿主細胞を形質転換させるために用いられる、組換え手法によって作製されるポリペプチドのことを指す。同様に、「組換えポリヌクレオチド」または「組換え核酸」または「組換えDNA」という用語は、当業者に公知の組換え手法によって作製される。
【0033】
本明細書で用いる場合、「ホモログ」および「相同な」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して少なくとも約50%同一である配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドのことを指す。好ましくは、相同なポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、対応するアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する。本明細書で用いる場合、配列「相同性」および配列「同一性」という用語は、互換的に用いられる。
【0034】
当業者は、2つまたはそれを上回るの配列の間の相同性を決定するための方法を熟知しているであろう。手短に述べると、2つの配列間の「相同性」の計算は、以下のように行うことができる。配列を、最適な比較のために整列させる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。1つの好ましい態様において、比較のために整列させる第1の配列の長さは、第2の配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約100%である。続いて、第1および第2の配列の対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合には、その分子はその位置で同一である。2つの配列間の%相同性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列が共通に持つ同一な位置の数の関数である。2つの配列間での配列の比較および%相同性の決定は、BLAST(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol, 215(3):403-410)などの数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。2つのアミノ酸配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunschのアルゴリズムを用い、Blossum 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる(Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol., 48:444-453)。また、2つのヌクレオチド配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いNWSgapdna.CMP行列、ならびに40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる。当業者は、初期の相同性計算を行い、それに応じてアルゴリズムパラメーターを調整することができる。好ましいパラメーターのセット(および、分子が添付の特許請求の範囲の相同性の限度内にあるか否かを判定するためにどのパラメーターを適用すべきかを実施者が分かっていない場合に用いるべきセット)では、Blossum 62スコアリング行列を、ギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5で用いる。配列アラインメントのそのほかの方法は、バイオテクノロジーの技術分野で公知である(例えば、Rosenberg (2005) BMC Bioinformatics, 6:278;Altschul, et al. (2005) FEBS J., 272(20):5101-5109を参照されたい)。
【0035】
「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する条件を述べている。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、バイオテクノロジーの教科書に見ることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1 - 6.3.6.を参照されたい。これには水性および非水性の方法が記載されており、いずれの方法を用いることもできる)。本明細書において言及する具体的なハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである:(1)低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃の後に、0.2×SSC、0.1%SDS中、少なくとも50℃で2回洗浄(低ストリンジェンシー条件の場合、洗浄の温度は55℃まで上げることができる);(2)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6×SSC、約45℃の後に、0.2×SSC、0.1%SDS中、60℃での1回または複数回の洗浄;(3)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6×SSC、約45℃の後に、0.2.X SSC、0.1%SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄;および(4)超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、65℃の後に、0.2×SSC、1%SDS、65℃での1回または複数回の洗浄。別に指定する場合を除き、一般には超高ストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件である。
【0036】
「内因性」という用語は、「内部で生じる」ことを意味する。そのため、「内因性」ポリペプチドとは、宿主細胞のネイティブ性ゲノムによってコードされるポリペプチドのことを指す。例えば、内因性ポリペプチドは、組換え細胞が遺伝子操作により作製される(または導き出される)親微生物細胞(例えば、親宿主細胞)のゲノムによってコードされるポリペプチドを指すことができる。
【0037】
「外因性」という用語は、「外側から生じる」ことを意味する。そのため、「外因性」ポリペプチドとは、細胞のネイティブ性ゲノムによってはコードされないポリペプチドのことを指す。そのような外因性ポリペプチドは細胞内に移行しており、異なる細胞型もしくは種からクローニングされるかもしくはそれから導き出されることもあれば;または、同じ細胞型もしくは種からクローニングされるかもしくはそれから導き出されることもある。例えば、「外因性生合成酵素」は、特定の酵素活性を有する酵素をコードする外因性ポリペプチドの一例である。もう一つの例では、変異体(すなわち、突然変異体または改変)ポリペプチドは、外因性ポリペプチドの一例である。同様に、非天然の核酸分子も、細胞に導入されると、細胞にとって外因性であると判断される。また、「外因性」という用語を、非ネイティブ性状態にある組換え宿主細胞内に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質に言及して用いることもできる。例えば、「外因性」ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルまたは配列の点での改変というように、対応する野生型宿主細胞内に天然に存在する野生型配列に比して改変されていてもよい。同様に、天然に存在する核酸分子も、特定の細胞にとっては外因性である場合がある。例えば、細胞Xから単離されたあるコード配列の全体は、そのコード配列が細胞Yに導入されると、たとえXとYが同じ細胞型であったとしても、細胞Yに対しては外因性核酸である。
【0038】
「過剰発現された」という用語は、ある遺伝子が、その遺伝子の内因性転写速度と比較して高い速度で転写されるようになっていることを意味する。いくつかの例では、過剰発現は、対応するタンパク質の翻訳の速度が、そのタンパク質の内因性翻訳速度と比較して上昇していることをさらに含む。いくつかの例では、「過剰発現する」という用語は、細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドを、対応する野生型細胞において同一条件下で通常発現されるよりも高い濃度で発現することを意味する。過剰発現を検査するための方法は当技術分野において周知であり、例えば、転写されたRNAのレベルをrtPCRを用いて評価すること、およびタンパク質レベルをSDS pageゲル分析を用いて評価することができる。
【0039】
「異種」という用語は、「異なる生物、異なる細胞型、および/または異なる種に由来する」ことを意味する。本明細書で用いる場合、「異種」という用語は、典型的には、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたはタンパク質に関連しており、ある所与の生物、細胞型または種に天然では存在しないポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質のことを指す。例えば、ある植物由来のポリヌクレオチド配列を微生物宿主細胞に組換え法によって導入することができるが、そうするとその植物ポリヌクレオチドはその組換え微生物宿主細胞にとって異種となる。同様に、シアノバクテリア由来のポリヌクレオチド配列をエシェリキア属の微生物宿主細胞に組換え法によって導入することができ、そうするとシアノバクテリア由来のポリヌクレオチドはその組換え微生物宿主細胞にとって異種となる。同様に、「異種生合成酵素」も異種ポリペプチドの一例であり、この場合にポリペプチドはある特定の酵素活性を有する酵素をコードする。
【0040】
本明細書で用いる場合、ポリペプチドの「断片」という用語は、完全長ポリペプチドまたはタンパク質のより短い部分のことを指し、そのサイズは、2アミノ酸残基から、アミノ酸配列全体から1アミノ酸残基を差し引いたものまでの範囲にわたる。本開示のある態様において、断片とは、ポリペプチドまたはタンパク質のあるドメイン(例えば、基質結合ドメインまたは触媒ドメイン)のアミノ酸配列全体のことを指す。
【0041】
「突然変異誘発」という用語は、生物の遺伝情報を安定的な様式で変化させる工程のことを指す。核酸配列をコードするタンパク質の突然変異誘発により、突然変異体タンパク質が生じる。また、突然変異誘発とは、タンパク質活性の改変をもたらす非コード性核酸配列の変化のことも指す。
【0042】
「突然変異」とは、本明細書で用いる場合、遺伝子のある核酸位置、またはポリペプチドもしくはタンパク質のあるアミノ酸位置における永続的変化のことを指す。突然変異には置換、付加、挿入および欠失が含まれる。例えば、アミノ酸位置における突然変異は、1つの種類のアミノ酸の、別の種類のアミノ酸による置換でありうる(例えば、セリン(S)はアラニン(A)によって置換されてよい;リジン(L)はT(トレオニン)によって置換されてよい;など)。そのため、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている1つまたは複数の突然変異を有しうる。例えば、生合成ポリペプチドまたはタンパク質は、そのアミノ酸配列中に1つまたは複数の突然変異を有しうる。
【0043】
本明細書で用いる「生合成酵素」という用語は、脂肪酸誘導体生合成(例えば、脂肪酸、脂肪アルデヒド、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪エステルなど)に関係する酵素活性を有するタンパク質のことを指す。本明細書で用いる生合成酵素の一例は、脂肪アルデヒド前駆体を脂肪アミンに変換することができる酵素(例えば、脂肪アミン生成性生合成酵素)である。本明細書で用いる生合成酵素のもう1つの例は、脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換することができる酵素(例えば、脂肪アルデヒド生成性生合成酵素)である。本明細書で用いる生合成酵素のさらにもう1つの例は、アシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸に変換することができる酵素(例えば、脂肪酸生成性生合成酵素)である。細胞が生合成酵素によって形質転換されている場合、それはその生合成酵素を発現する細胞(例えば、組換え細胞)である。1つの態様において、脂肪アミン生成性生合成酵素を発現する細胞によって産生される脂肪アミン関連化合物の力価および/または収量は、対応する野生型細胞(すなわち、脂肪アミン生成性生合成酵素を発現しない対応する細胞)のそれの少なくとも2倍である。もう1つの態様において、脂肪アミン生成性生合成酵素を発現する細胞によって産生される脂肪アミン関連化合物の力価および/または収量は、対応する野生型細胞のそれよりも少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍上回る。1つの態様において、脂肪アミン生成性生合成酵素を発現する細胞によって産生される脂肪アミン関連化合物の力価および/または収量は、対応する野生型細胞のそれよりも少なくとも約1パーセント、少なくとも約2パーセント、少なくとも約3パーセント、少なくとも約4パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約6パーセント、少なくとも約7パーセント、少なくとも約8パーセント、少なくとも約9パーセント、または約10パーセント上回る。もう1つの態様において、脂肪アミン生成性生合成酵素の発現に起因して組換え細胞において産生される脂肪アミン関連化合物の力価および/または収量は、野生型細胞のそれよりも少なくとも約20パーセント~少なくとも約100パーセント上回る。もう1つの態様において、脂肪アミン生成性生合成酵素の発現に起因して組換え細胞において産生される脂肪アミン関連化合物の力価および/または収量は、野生型細胞のそれよりも少なくとも約20パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約35パーセント、少なくとも約40パーセント、少なくとも約45パーセント少なくとも約50パーセント、少なくとも約55パーセント、少なくとも約60パーセント、少なくとも約65パーセント、少なくとも約70パーセント、少なくとも約75パーセント、少なくとも約80パーセント、少なくとも約85パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセント、少なくとも約97パーセント、少なくとも約98パーセント、または少なくとも約100パーセント上回る。
【0044】
本明細書で用いる場合、「遺伝子」という用語は、RNA産物またはタンパク質産物のいずれかをコードする核酸配列、ならびに、そのRNAもしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、プロモーター配列またはエンハンサー配列が非限定的に含まれる)またはそのRNAもしくはタンパク質に影響を及ぼす配列をコードする機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、リボソーム結合部位または翻訳制御配列が非限定的に含まれる)のことを指す。
【0045】
発現制御配列は当技術分野において公知であり、これには例えば、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写終結因子、配列内リボソーム進入部位(IRES)などが含まれる。発現制御配列は、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al. (1987) Science, 236: 1237-1245)。例示的な発現制御配列は、バイオテクノロジーの教科書に記載されている(例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)を参照されたい)。本開示の方法において、1つまたは複数の発現制御配列は、1つまたは複数のポリヌクレオチド配列と機能的に連結されている。「機能的に連結された」という用語は、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が発現制御配列に結合した時に遺伝子発現を可能にするような様式で、ポリヌクレオチド配列と前記発現制御配列が接続されていることを意味する。機能的に連結されたプロモーターは、転写および翻訳の方向の観点では、選択されたポリヌクレオチド配列の上流に位置する。機能的に連結されたエンハンサーは、選択されたポリヌクレオチドの上流、内部または下流に位置することができる。
【0046】
本明細書で用いる場合、「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸、すなわちポリヌクレオチド配列を輸送しうる核酸分子のことを指す。有用なベクターの一種は、エピソーム(すなわち、染色体外での複製が可能な核酸)である。有用なベクターは、それに連結された核酸の自律複製および/または発現を可能にするものである。機能的に連結された遺伝子の発現を導くことができるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、ベクター形態では染色体に結合していない環状二本鎖DNAループ全般を指す「プラスミド」の形態にあることが多い。他の有用な発現ベクターは、直鎖形態で提供される。同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、および当技術分野において今後公知となる他の形態の発現ベクターも同じく含まれる。いくつかの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーターをさらに含む。いくつかの態様において、プロモーターは、発生段階調節性(developmentally-regulated)プロモーター、オルガネラ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成性プロモーター、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは典型的には、ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製モイエティー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;およびポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列から選択される、少なくとも1つの配列を含む。ある態様において、ヌクレオチド配列は宿主細胞のゲノムDNAに安定的に組み込まれており、ヌクレオチド配列の発現は、調節プロモーター領域の制御下にある。本明細書で用いられる発現ベクターは、本明細書に記載の特定のポリヌクレオチド配列を、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。本明細書に記載の発現ベクターは、本明細書に述べるようなポリヌクレオチド配列によってコードされる融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生させるために宿主細胞に導入することができる。
【0047】
「組換え細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、少なくとも1つの生合成酵素を外因性に発現するように改変された細胞のことを指す。1つの特定の態様において、生合成酵素は脂肪アルデヒド前駆体を脂肪アミンに変換することができる。したがって、1つの態様において、組換え細胞は、組換え細胞が脂肪アミンまたは脂肪アミン由来化合物を産生する比活性を高めることができる生合成酵素を包含する。組換え細胞は、細菌、ウイルスまたは真菌などの微生物または微生物細胞に由来することができる。組換え細胞は、脂肪アミンを産生させるために用いることができる。いくつかの態様において、組換え細胞は、各ポリヌクレオチドが生合成酵素活性を有するポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを外因性に発現し、ここで組換え細胞は、炭素源の存在下で、そのポリヌクレオチドを発現させるのに有効な条件下で培養された場合に、脂肪アミン関連組成物を産生する。
【0048】
本明細書で用いる場合、「微生物」という用語は、微細な生物のことを指す。微生物の例は、細菌、ウイルスまたは真菌である。1つの態様において、微生物は細菌細胞である。もう1つの態様において、微生物は原核生物または原核細胞である。なおもう1つの態様において、微生物は酵母細胞などの真菌細胞である。もう1つの態様において、微生物はウイルス細胞である。1つの関連した態様において、「組換え微生物」は、遺伝的に改変されていて、外因性および/または異種性の核酸配列を発現または包含する微生物である。もう1つの関連した態様において、「組換え微生物」は、遺伝的に改変されていて、少なくとも1つの外因性に発現されたタンパク質(例えば、外因性生合成酵素)を含む遺伝子操作された代謝経路を発現する微生物である。
【0049】
「アシル-ACP」という用語は、アルキル鎖のカルボニル炭素とアシルキャリアータンパク質(ACP)のホスホパンテテイニルモイエティーのスルフヒドリル基との間に形成されるアシルチオエステルのことを指す。ホスホパンテテイニルモイエティーは、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの1つであるホロ-アシルキャリアータンパク質シンターゼ(ACPS)の作用により、ACP上の保存的なセリン残基に翻訳後に連結される。いくつかの態様において、アシル-ACPは完全飽和アシル-ACPの合成における中間体である。他の態様において、アシル-ACPは不飽和アシル-ACPの合成における中間体である。いくつかの態様において、炭素鎖は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26個の炭素を有すると考えられる。これらのアシル-ACPはそれぞれ、それらを脂肪酸誘導体に変換する酵素の基質である。
【0050】
「アシル-CoA」という用語は、補酵素A(CoA)が生体細胞内で脂肪酸の末端に結びついた場合に形成される一時的化合物である。これは、脂肪酸の代謝に関与する一群の補酵素のことを指す。いくつかの態様において、炭素鎖は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26個の炭素を有すると考えられる。これらのアシル-CoAはそれぞれ、それらを脂肪酸誘導体に変換する酵素の基質である。
【0051】
「脂肪アルデヒド生成のための代謝経路」という用語は、脂肪アルデヒドを生成する任意の生合成経路を意味する。脂肪アルデヒド生成のための代謝経路は、脂肪アルデヒドを生成する任意の数の酵素を含んでよい。
【0052】
「脂肪アミン生成のための代謝経路」という用語は、脂肪アミンを生成する任意の生合成経路を意味する。脂肪アミン生成のための代謝経路は、脂肪アミンを生成する少なくとも1つの酵素を含んでよい。
【0053】
本明細書で用いる場合、「脂肪アミン」とは、式RNH2を有するアミンを意味する。本明細書で言及する脂肪アミンは、例えば、脂肪酸もしくは脂肪アルデヒド、または脂肪アシル-ACPに由来する脂肪アルデヒドから作られる任意の脂肪アミンでありうる。いくつかの態様において、R基は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または少なくとも19炭素長である。代替的または追加的に、R基は、24もしくはそれ未満、23もしくはそれ未満、22もしくはそれ未満、20もしくはそれ未満、19もしくはそれ未満、18もしくはそれ未満、17もしくはそれ未満、16もしくはそれ未満、15もしくはそれ未満、14もしくはそれ未満、13もしくはそれ未満、12もしくはそれ未満、11もしくはそれ未満、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、または6もしくはそれ未満の炭素長である。したがって、R基は、上記の終点の任意の2つを境界とするR基を有しうる。例えば、R基は、6~16炭素長、10~14炭素長、または12~18炭素長でありうる。いくつかの態様において、脂肪アミン組成物は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、およびC24脂肪アミンのうち1つまたは複数を含む。他の態様において、脂肪アミン組成物は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アミンのうち1つまたは複数を含む。さらに他の態様において、脂肪アミン組成物は、C12、C14、C16およびC18脂肪アミン;C12、C14およびC16脂肪アミン;C14、C16およびC18脂肪アミン;または、C12およびC14脂肪アミンを含む。脂肪アミンのR基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。分枝鎖は複数の分枝点を有してよく、環状分枝を含んでもよい。いくつかの態様において、分枝脂肪アミンは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23またはC24分枝脂肪アミンである。分枝性または非分枝性脂肪アミンのR基は、飽和性でも不飽和性でもよい。不飽和性である場合には、R基は1つまたは複数の不飽和点を有しうる。いくつかの態様において、不飽和脂肪アミンは、一不飽和脂肪アミンである。ある態様において、不飽和脂肪アミンは、C6:1、C7:1、C8:1、C9:1、C10:1、C11:1、C12:1、C13:1、C14:1、C15:1、C16:1、C17:1、C18:1、C19:1、C20:1、C21:1、C22:1、C23:1またはC24:1不飽和脂肪アミンである。ある態様において、不飽和脂肪アミンは、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、またはC18:1不飽和脂肪アミンである。他の態様において、不飽和脂肪アミンはω-7位置で不飽和性である。ある態様において、不飽和脂肪アミンはシス二重結合を有する。脂肪アミンは、脂肪アルキル基またはメチル基によって置換されたアンモニア分子の水素原子の数に応じて、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンに分類される。洗剤として、水処理において、浮遊剤として、石油において、腐食防止剤として、繊維において、ゴムにおいて、などに用いうる脂肪アミンの例には、ジメチルアルキルアミン(C10、C12、C14、C16またはC18)およびジアルキルメチルアミン(C10)などの第三級アミン;ならびにジメチルアルキルアミン(C8~C18、C12~C18、C12~C14、またはC16~C18)などの第三級アミン配合物がある。
【0054】
「クローン」という用語は、典型的には、単一の共通の祖先、例えば、単一の細菌細胞から生じたクローン化された細菌コロニーの細菌の子孫であり、祖先と本質的に遺伝的に同一である、細胞または細胞群のことを指す。
【0055】
本明細書で用いる場合、「培養物」という用語は、典型的には、生細胞を含む液体培地のことを指す。1つの態様において、培養物は、制御された条件下で所定の培地中で再生する細胞を含み、これには例えば、選択された炭素源および窒素を含む液体培地中で増殖させた組換え宿主細胞の培養物がある。「培養すること」または「培養(cultivation)」は、宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)の集団を、液体培地または固体培地中で、適した条件下で増殖させることを指す。いくつかの態様において、培養することとは、基質の最終生成物への発酵性生物変換のことを指す。培養培地は周知であり、そのような培地の個々の構成成分は、販売元から入手可能である(例えば、DIFCO培地およびBBL培地)。1つの例では、水性栄養培地は、窒素、塩および炭素の複合的な供給源を含む「富栄養培地」、例えば、10g/Lのペプトンおよび10g/Lの酵母エキスを含むYP培地などである。もう1つの例では、栄養培地は、微量元素、栄養分、および塩で構成される「最少培地」である。
【0056】
例えば、組換え宿主細胞における酵素活性に関する、「改変された活性」または「変更された活性レベル」とは、親宿主細胞またはネイティブ性宿主細胞を基準として判定した、酵素活性における1つまたは複数の特性の差異のことを指す。典型的には、活性のそのような差異は、組換え宿主細胞(すなわち、改変された活性を有する)と、対応する野生型宿主細胞との間で、特に組換え宿主細胞の培養物を対応する野生型宿主細胞の培養物と比較することによって判定される。活性の改変は、例えば、組換え宿主細胞によって発現されるタンパク質の量の改変(例えば、タンパク質をコードするDNA配列のコピー数の増加もしくは減少、タンパク質をコードするmRNA転写物の数の増加もしくは減少、および/またはmRNAからのタンパク質のタンパク質翻訳の量の増加もしくは減少の結果として);タンパク質の構造の変化(例えば、一次構造に対する変化、例えば、基質特異性の変化、観察される速度論的パラメーターの変化をもたらすタンパク質のコード配列に対する変化など);および、タンパク質安定性の変化(例えば、タンパク質の分解の増加もしくは減少)の結果でありうる。場合によっては、ポリペプチドのコード配列は、特定の宿主細胞における発現のためにコドンが最適化されている。例えば、大腸菌における発現のために、1つまたは複数のコドンを、それに応じて最適化することができる(例えば、Grosjean et al. (1982) Gene 18:199-209を参照されたい)。
【0057】
本明細書で用いる「調節配列」という用語は、典型的には、そのタンパク質の発現を最終的に制御するタンパク質をコードするDNA配列と機能的に連結された、DNA中の塩基の配列のことを指す。調節配列の例には、RNAプロモーター配列、転写因子結合配列、転写終結配列、転写のモジュレーター(エンハンサーエレメントなど)、RNA安定性に影響を及ぼすヌクレオチド配列、および翻訳調節配列(例えば、リボソーム結合部位(例えば、原核生物におけるShine-Dalgarno配列、または真核生物におけるKozak配列)、開始コドン、終止コドンなど)が非限定的に含まれる。本明細書で用いる場合、「前記ヌクレオチド配列の発現が野生型ヌクレオチド配列に比して改変されている」という語句は、内因性ヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性、または異種もしくは非ネイティブ性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性のレベルの上昇または低下を意味する。「変更された発現のレベル」および「改変された発現のレベル」という用語は互換的に用いられ、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは炭化水素が、遺伝子操作された宿主細胞において、同じ条件下での対応する野生型細胞におけるその濃度と比較して異なる濃度で存在することを意味する。本明細書で用いる場合、ポリヌクレオチドに関して「発現する」という用語は、それが機能するようにさせることである。ポリペプチド(またはタンパク質)をコードするポリヌクレオチドは、発現されると、転写され、翻訳されて、そのポリペプチド(またはタンパク質)を産生すると考えられる。
【0058】
本明細書で用いる場合、「力価」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たりで生産される脂肪アミンまたは脂肪アミン関連化合物の数量のことを指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、脂肪アミンは、約25mg/L、約50mg/L、約75mg/L、約100mg/L、約125mg/L、約150mg/L、約175mg/L、約200mg/L、約225mg/L、約250mg/L、約275mg/L、約300mg/L、約325mg/L、約350mg/L、約375mg/L、約400mg/L、約425mg/L、約450mg/L、約475mg/L、約500mg/L、約525mg/L、約550mg/L、約575mg/L、約600mg/L、約625mg/L、約650mg/L、約675mg/L、約700mg/L、約725mg/L、約750mg/L、約775mg/L、約800mg/L、約825mg/L、約850mg/L、約875mg/L、約900mg/L、約925mg/L、約950mg/L、約975mg/L、約1000mg/L、約1050mg/L、約1075mg/L、約1 100mg/L、約1125mg/L、約1150mg/L、約1175mg/L、約1200mg/L、約1225mg/L、約1250mg/L、約1275mg/L、約1300mg/L、約1325mg/L、約1350mg/L、約1375mg/L、約1400mg/L、約1425mg/L、約1450mg/L、約1475mg/L、約1500mg/L、約1525mg/L、約1550mg/L、約1575mg/L、約1600mg/L、約1625mg/L、約1650mg/L、約1675mg/L、約1700mg/L、約1725mg/L、約1750mg/L、約1775mg/L、約1800mg/L、約1825mg/L、約1850mg/L、約1875mg/L、約1900mg/L、約1925mg/L、約1950mg/L、約1975mg/L、約2000mg/L(2g/L)、3g/L、5g/L、10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の力価で生産される。他の態様において、脂肪アミンは、100g/Lを上回る、200g/Lを上回る、または300g/Lを上回る力価で生産される。本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アミンの好ましい力価は、5g/L~200g/L、10g/L~150g/L、20g/L~120g/L、および30g/L~100g/Lである。力価は、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される特定の脂肪アミンまたは脂肪アミンの組み合わせのことを指してよい。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞において脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる生合成タンパク質の発現は、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる生合成タンパク質の発現を欠く対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較して、より高い力価での生産をもたらす。1つの態様において、より高い力価は少なくとも約5g/L~約200g/Lの範囲にわたる。
【0059】
本明細書で用いる場合、「宿主細胞によって産生される脂肪アミンを含む脂肪アミン関連化合物の収量」という用語は、投入炭素源が宿主細胞において産物に変換される効率のことを指す。本開示の方法による脂肪アミンまたは脂肪アミン関連化合物を産生するように遺伝子操作された宿主細胞は、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%、少なくとも約26%、少なくとも約27%、少なくとも約28%、少なくとも約29%、または少なくとも約30%、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の収量を有する。他の態様において、脂肪アミンは、約30%を上回る、約35%を上回る、約40%を上回る、約45%を上回る、約50%を上回る、約55%を上回る、約60%を上回る、約65%を上回る、約70%を上回る、約75%を上回る、約80%を上回る、約85%を上回る、約90%を上回る、またはそれ以上の収量で生産される。代替的または追加的に、収量は、約30%もしくはそれ未満、約27%もしくはそれ未満、約25%もしくはそれ未満、または約22%もしくはそれ未満である。もう1つの態様において、収量は、約50%もしくはそれ未満、または45%もしくはそれ未満、または35%もしくはそれ未満である。もう1つの態様において、収量は、約95%もしくはそれ未満、または90%もしくはそれ未満、または85%もしくはそれ未満、または80%もしくはそれ未満、または75%もしくはそれ未満、または70%もしくはそれ未満、または65%もしくはそれ未満、または60%もしくはそれ未満、または55%もしくはそれ未満、または50%もしくはそれ未満である。したがって、収量は上記の終点の任意の2つを境界とすることができる。例えば、本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アミンまたは脂肪アミン関連化合物の収量は、約5%~約15%、約10%~約25%、約10%~約22%、約15%~約27%、約18%~約22%、約20%~約28%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、または約90%~約100%であってよい。収量は、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される特定の脂肪アミンまたは脂肪アミン関連化合物または脂肪アミンの組み合わせのことを指してよい。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞において脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる生合成タンパク質の発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する宿主細胞と比較して、脂肪アミン、または脂肪アミンの組成物もしくは配合物を含む脂肪アミン由来化合物のより高い力価での生産をもたらす。1つの態様において、より高い力価は、理論的収量の約10%~約100%の範囲にわたる。
【0060】
本明細書で用いる場合、「生産性」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たり・単位時間当たりに生産される1つまたは複数の脂肪アミン、または脂肪アミンの組成物もしくは配合物を含む脂肪アミン関連化合物の数量のことを指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、組換え宿主細胞によって生産される脂肪アミンの組成物もしくは配合物を含む脂肪アミン関連化合物の生産性は、少なくとも100mg/L/時、少なくとも200mg/L/時、少なくとも300mg/L/時、少なくとも400mg/L/時、少なくとも500mg/L/時、少なくとも600mg/L/時、少なくとも700mg/L/時、少なくとも800mg/L/時、少なくとも900mg/L/時、少なくとも1000mg/L/時、少なくとも1100mg/L/時、少なくとも1200mg/L/時、少なくとも1300mg/L/時、少なくとも1400mg/L/時、少なくとも1500mg/L/時、少なくとも1600mg/L/時、少なくとも1700mg/L/時、少なくとも1800mg/L/時、少なくとも1900mg/L/時、少なくとも2000mg/L/時、少なくとも2100mg/L/時、少なくとも2200mg/L/時、少なくとも2300mg/L/時、少なくとも2400mg/L/時、2500mg/L/時、または10g/L/時もの高さである(細胞量に依存する)。例えば、組換え宿主細胞によって生産される脂肪アミンの組成物もしくは配合物を含む脂肪アミン関連化合物の生産性は、500mg/L/時~2500mg/L/時、または700mg/L/時~2000mg/L/時から選択される。生産性は、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される、脂肪アミンの組成物または脂肪アミンの配合物または脂肪アミンの組み合わせを含む、特定の脂肪アミン関連化合物のことを指してよい。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞において脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる生合成タンパク質の発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較して、脂肪アミンならびにそれらの組成物および配合物を含む脂肪アミン由来化合物の、より高い生産性での生産をもたらす。1つの態様において、より高い生産性は、約0.3g/L/時~約3/L/時の範囲にわたる。
【0061】
本明細書で用いる場合、「総脂肪種」、「総脂肪アミン生成物」、および「脂肪アミン誘導体」という用語は、GC-FIDによって評価されるような、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる生合成タンパク質を発現する宿主細胞によって産生されうる脂肪アミンの量に関して、本明細書において互換的に用いることができる。
【0062】
本明細書で用いる場合、「グルコース利用率」という用語は、グラム数/リットル/時(g/L/hr)として報告される、培養物によって単位時間当たりに用いられるグルコースの量のことを指す。
【0063】
本明細書で用いる場合、「炭素源」という用語は、原核細胞または単純な真核細胞の増殖のための炭素の供給源として用いるのに適した基質または化合物のことを指す。炭素源は、重合体、糖質、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチド、および気体(例えば、COおよびCO2)を非限定的に含む、さまざまな形態をとりうる。例示的な炭素源には、単糖類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロースおよびアラビノースなど;オリゴ糖類、例えばフルクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖など;多糖類、例えばデンプン、セルロース、ペクチンおよびキシランなど;二糖類、例えばスクロース、マルトース、セロビオースおよびツラノースなど;セルロース系材料および異形物、例えばヘミセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなど;飽和または不飽和脂肪酸、コハク酸塩、乳酸塩および酢酸塩;アルコール、例えばエタノール、メタノールおよびグリセロールなど、またはそれらの混合物が非限定的に含まれる。また、炭素源が、光合成の生成物、例えばグルコースであってもよい。ある態様において、炭素源は、排ガス(flu gas)を元にした、COを含有するガス混合物である。もう1つの態様において、炭素源は、炭素含有材料、例えばバイオマス、石炭または天然ガスなどを再構成したものを元にした、COを含有するガス混合物である。他の態様において、炭素源は、合成ガス、メタンまたは天然ガスである。ある好ましい態様において、炭素源はバイオマスである。他の好ましい態様において、炭素源はグルコースである。他の好ましい態様において、炭素源はスクロースである。他の態様において、炭素源はグリセロールである。他の好ましい態様において、炭素源は、サトウキビ汁、サトウキビシロップ、またはコーンシロップである。他の好ましい態様において、炭素源は、再生可能な原料、例えば、CO2、CO、グルコース、スクロース、キシロース、アラビノース、グリセロール、マンノース、またはそれらの混合物に由来する。他の態様において、炭素源は、デンプン、セルロース性バイオマス、糖蜜、およびセルロース性バイオマスの加水分解に由来する糖質混合物を含む他の糖質源、または植物油もしくは天然油の処理に由来する廃棄材料を含む、再生可能な原料に由来する。
【0064】
本明細書で用いる場合、「バイオマス」という用語は、炭素源の由来となる任意の生体物質のことを指す。いくつかの態様において、バイオマスは処理されて、生物変換に適した炭素源となる。他の態様において、バイオマスは炭素源にするためのさらなる処理を必要としない。炭素源を、脂肪アミンを含む組成物に変換することができる。例示的なバイオマス源は、植物体または草木、例えばトウモロコシ、サトウキビ、またはアメリカクサキビである。もう1つの例示的なバイオマス源は、代謝廃棄産物、例えば動物性物質(例えば、牛糞肥料)である。さらなる例示的なバイオマス源には、藻類および他の海洋植物が含まれる。バイオマスにはまた、グリセロール、発酵廃棄物、エンシレージ、わら、木材、廃水、ゴミ、セルロース系都市廃棄物、および残飯(例えば、石けん、油、および脂肪酸)を非限定的に含む、工業、農業、林業および家庭からの廃棄物も含まれる。「バイオマス」という用語はまた、糖質(例えば、単糖類、二糖類または多糖類)などの炭素源のことも指すことができる。
【0065】
本明細書で用いる場合、生成物(脂肪アミンならびにその組成物および配合物など)に関する「単離された」という用語は、細胞構成成分、細胞培養培地、または化学前駆体もしくは合成前駆体から単離された生成物のことを指す。本明細書に記載の方法によって産生される脂肪アミンは、発酵ブロス中、さらには細胞質中で比較的不混和性でありうる。このため、脂肪アミンを、細胞内または細胞外のいずれかで有機相中に収集することができる。
【0066】
本明細書で用いる場合、「精製する」、「精製された」、または「精製」という用語は、例えば単離または分離による、分子のその環境からの除去または単離を意味する。「実質的に精製された」分子は、それらに付随する他の構成成分を少なくとも約60%含まない(例えば、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まない)。本明細書で用いる場合、これらの用語はまた、試料からの混入物の除去のことも指す。例えば、混入物の除去は、試料中の、脂肪アミンならびにそれらの組成物および配合物を含む脂肪アミン由来化合物のパーセンテージの増加をもたらすことができる。例えば、脂肪アミン由来化合物が組換え宿主細胞において産生される場合、脂肪アミン関連化合物は、宿主細胞タンパク質および/または他の宿主細胞材料の除去によって精製することができる。精製後に、試料中の脂肪アミンのパーセンテージは増加する。「精製する」、「精製された」、および「精製」という用語は、完全に純粋であることを必要としない相対的な用語である。したがって、例えば、脂肪アミン関連化合物が組換え宿主細胞において産生される場合、脂肪アミン化合物は、他の細胞構成成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、または他の炭化水素)から実質的に分離されている。
【0067】
本明細書で用いる場合、「減弱させる」という用語は、弱めること、減少させること、または縮小することを意味する。例えば、ポリペプチドは、その活性が減少するようにポリペプチドを改変することによって(例えば、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を改変することによって)、減弱させることができる。
【0068】
「脂肪アルデヒド生成性生合成酵素」または「脂肪アルデヒド生成酵素」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルデヒド前駆体を生成させる酵素活性を有するポリペプチドまたはタンパク質または酵素のことを指す。そのような酵素の例には、カルボン酸レダクターゼ(CAR)(例えば、CarB)および/またはチオエステラーゼ(TE)(例えば、TesA、'tesA);アシル-ACPレダクターゼ(AAR)(例えば、シネココッカス・エロンガタスPCC7942);アシル-CoAレダクターゼ(例えば、Acr1);ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)などが非限定的に含まれる。
【0069】
脂肪アルデヒド前駆体から脂肪アミンへ
本開示は、脂肪アミンの微生物生産に関する。本明細書に示されているように、脂肪アミンを生産するために、さまざまな生合成酵素を発現するように微生物をインビボで遺伝的に操作することができる。より具体的には、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換する代謝経路を発現するように、微生物を遺伝的に操作することができる。経路は、アミノトランスフェラーゼ(例えば、大腸菌由来のプトレシンアミノトランスフェラーゼ(YgjG)もしくはGABAアミノトランスフェラーゼ(PuuE))活性、またはアミンデヒドロゲナーゼ(例えば、パラコッカス・デニトリフィカンスのメチルアミンデヒドロゲナーゼ、もしくはシュードモナス種のキノヘモプロテインアミンデヒドロゲナーゼ)活性、または脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するアミンオキシダーゼ活性を有する少なくとも1つの生合成酵素を発現する。トランスアミナーゼはアミノトランスフェラーゼと同じ反応を遂行させ、これらの名称は互換的に用いられることがある。例えば、GABAアミノトランスフェラーゼは4-アミノ酪酸トランスアミナーゼとも称される。1つの態様において、アミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼは、外因性生合成酵素であるか、または細胞内で外因性に発現される。または、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するアミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性またはアミンオキシダーゼ活性を有する生合成酵素を発現する脂肪アミン生成のための遺伝子操作された経路と、脂肪アルデヒドを生成する外因性生合成酵素を発現する脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された経路とを組み合わせることによって、脂肪アミンを生産することもできる。そのような脂肪アルデヒド前駆体は、種々の過程および遺伝子操作された経路、例えば、脂肪アルデヒド生産のために利用される遺伝子操作されたカルボン酸レダクターゼ(CAR)経路(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,097,439号を参照されたい)または脂肪アルコール生産のために利用される遺伝子操作されたCARおよびチオエステラーゼ(TE)経路(米国特許第8,097,439号、前記を参照されたい)または脂肪アミン生産のために利用される遺伝子操作されたホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)およびCAR経路(参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20130035513号を参照されたい)または脂肪アルデヒド生産(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,268,599号を参照されたい)のため、もしくはアルカン生産(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,323,924号を参照されたい)のために利用される遺伝子操作されたアシル-ACPレダクターゼ(AAR)経路などを通じてインビボで生成させることができる。適したTEの一例は、'TesA(すなわち、細胞質中に保たれるように周辺質リーダー配列が除去されている大腸菌由来の短縮型チオエステラーゼ(それがアポストロフィの理由である))である;適したCARの一例はCarBである;適したAARの一例は、シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来の酵素である(下記の表6を参照されたい)。
【0070】
1つの態様において、適切な窒素源(例えば、グルタミン酸塩またはアンモニアまたは過酸化水素)の補充を伴う、脂肪アルデヒド生産のための遺伝子操作された経路および脂肪アミン生産のための遺伝子操作された経路と、アミノトランスフェラーゼ活性またはアミンデヒドロゲナーゼ活性またはアミンオキシダーゼ活性を有する生合成酵素の発現との共発現は、アルデヒド前駆体の対応するアミンへの変換を可能にする(プトレシンアミノトランスフェラーゼについては表1を参照;酵素反応の例については表2、3および4を参照)。アミノトランスフェラーゼ反応のための窒素供与体(例えば、グルタミン酸塩)の利用可能性は、グルタミン酸塩生合成の速度を高めるためにグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現させることによって任意で強化することができる。ネイティブ性の大腸菌グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、NADPHを酸化還元補因子として用いており、それ故にこの酵素を、代わりにNADHを用いることができるグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、B.テタイオタオミクロン(B. thetaiotaomicron)、B.フラジリス(B. fragilis)、B.ディスタソニス(B. distasonis)、B.オバータス(B. ovatus)、B.ヴルガトゥス(B. vulgatus)およびB.ユニフォルミス(B. Uniformis)を非限定的に含むバクテロイド種(Bacteroides spp.)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼなど)に置き換えることにより、細胞におけるNADPHの利用可能性を高めることができる。このことにより、NADPHに依存する他の生合成過程(例えば、脂肪酸生合成)のためのNADPHの供給増加をもたらすことができる。
【0071】
以下の表1(下記)は、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼを含む、アミンの生産のために有用なさまざまな生合成酵素に関するEC番号および名称を示している。酵素委員会番号または酵素分類番号(EC番号)は、それらが触媒する化学反応に基づく、酵素に関する数値分類スキームである。EC番号は酵素を技術的に特定するのではなくて、酵素により触媒される反応を特定する。例えば、異なる酵素(例えば、異なる生物に由来する)が同じ反応を触媒するならば、それらは同じEC番号を与えられる。加えて、収束進化を通じて、異なるタンパク質フォールドが同一の反応を触媒しうるようになり、そのため同一のEC番号が割り当てられることもある(すなわち、これらは非相同同機能酵素、またはNISEと呼ばれる)。表1に示されているように、プトレシンアミノトランスフェラーゼの酵素活性は、EC番号2.6.1.82に分類される。表1に示された酵素はすべて、結果としてアミンが生じる化学反応に関与し、それらのEC番号がEC 2.6.1に該当することから、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼと分類される(下記の表7も参照)。以下の表2(下記)は、脂肪アルデヒド前駆体から脂肪アミンを生成することができる、いくつかの種々の生合成酵素を示している。例えば、アミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼ、アミンオキシダーゼおよびアミンデヒドロゲナーゼは、脂肪アルデヒド前駆体が脂肪アミンに変換される反応を触媒する。1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、インビボでの脂肪アルデヒドの生産のためのアミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼを含む。もう1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、インビボでの脂肪アルデヒドの生産のためのアミンオキシダーゼを含む。もう1つの態様において、遺伝子操作された代謝経路は、インビボでの脂肪アルデヒドの生産のためのアミンデヒドロゲナーゼを含む。以下の表3(下記)は、プトレシンアミノトランスフェラーゼ、すなわち、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するものによって触媒される反応を示している。
【0072】
(表1)EC 2.6.1に該当する、アミンの生成に関与する酵素
【0073】
(表2)脂肪アミンを生成する酵素反応
【0074】
(表3)プトレシンアミノトランスフェラーゼの酵素反応
【0075】
本開示を例示する目的で、組換え宿主細胞を、アシル-ACPまたはアシル-CoAの遊離脂肪酸への変換を触媒するチオエステラーゼ(TE);および、遊離脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換するカルボン酸レダクターゼ(CAR)を発現するように遺伝子操作した。組換え宿主細胞を、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するためにプトレシンアミノトランスフェラーゼ(YgjG)を発現するように、さらに遺伝子操作した(実験結果については実施例1を参照;YgjGによって遂行される酵素反応については表3(前記)を参照;アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼの機構については表5(下記)を参照)。本明細書においては、ygjG遺伝子を大腸菌からクローニングし、発現ベクター中に連結させて発現プラスミドを作製した。第2の発現プラスミドは、carB遺伝子およびtesA遺伝子をクローニングして組み込むことによって行った。細胞を続いて両方のプラスミドによって形質転換させて、発酵ブロス中で炭素源とともに培養した。脂肪アミンの産生は確かめられたが、一方、対照細胞は脂肪アミンを産生しなかった(実施例1を参照)。酵素活性が脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換することができる限り、任意の適したアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼを用いて脂肪アミンを産生させることができる。細胞が天然に脂肪アルデヒドを発現する場合には、天然に存在する脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するために、実施例1に示されているように、外因性プトレシンアミノトランスフェラーゼ(YgjG)を発現するように細胞を遺伝子操作する。
【0076】
もう1つの態様において、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するために、アミノトランスフェラーゼの代わりにアミンデヒドロゲナーゼを用いることができる(アミンデヒドロゲナーゼによって遂行される酵素反応については表4(下記)を参照;および酵素の例については表7(下記)を参照)。これは、窒素源がアミノ酸ではなくアンモニアである場合に適用可能である。脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するために有用なアミンデヒドロゲナーゼの例は、EC番号、EC 1.4.9;EC 1.4.98;およびEC 1.4.99に該当する(下記の表7を参照)。例えば、アラニンデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、L-リジン-6-デヒドロゲナーゼ;およびメチルアミンデヒドロゲナーゼは、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するために用いうるアミンデヒドロゲナーゼの例である(下記の表7を参照)。
【0077】
なおもう1つの態様において、脂肪アルデヒドを脂肪アミンに変換するために、アミノトランスフェラーゼの代わりにアミンオキシダーゼを用いることもできる。
【0078】
(表4)アミンデヒドロゲナーゼ反応
【0079】
(表5)アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼの機構
【0080】
以下の表6および7(下記)は、さまざまな酵素活性およびそれらの対応する酵素分類(EC)番号を示している。
【0081】
(表6)酵素活性
【0082】
(表7)アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ(EC 2.6.1)およびアミンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.9、EC 1.4.98、EC 1.4.99)の例
【0083】
微生物宿主細胞およびそれらの培養物
本開示の微生物は微生物宿主細胞として機能し、本開示の少なくとも1つの外因性生合成酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列を包含する。1つの態様において、脂肪アミン組成物は、外因性生合成酵素(例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼ)を発現する宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アミンを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。もう1つの態様において、脂肪アミン組成物は、外因性生合成酵素の1つまたは複数(例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼと、1つまたは複数のアルデヒド生成酵素、例えばCAR(例えば、CarB)および/またはTE(例えば、TesA、'tesA)などとの組み合わせ)を発現する宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アミンを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。もう1つの態様において、脂肪アミン組成物は、外因性生合成酵素の1つまたは複数(例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼと、1つまたは複数のアルデヒド生成酵素、例えばアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(例えば、シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来との組み合わせ)を発現する宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アミンを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。もう1つの態様において、脂肪アミン組成物は、外因性生合成酵素の1つまたは複数(例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼと、1つまたは複数のアルデヒド生成酵素、例えばアシル-CoAレダクターゼ(例えば、Acrl)との組み合わせ)を発現する宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アミンを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。もう1つの態様において、脂肪アミン組成物は、外因性生合成酵素の1つまたは複数(例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼと、1つまたは複数のアルデヒド生成酵素、例えばホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)との組み合わせ)を発現する宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アミンを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。
【0084】
生合成酵素の発現は、脂肪アミンおよび/または脂肪アミン組成物またはそれらの配合物の収量が増加した、脂肪アミンの生産をもたらす。1つの態様において、宿主細胞におけるアミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼポリペプチドの発現は、脂肪アミンまたはそれらの組成物の高い収量をもたらす。もう1つの態様において、宿主細胞におけるアミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼポリペプチドと1つまたは複数のアルデヒド生成酵素の組み合わせの発現は、脂肪アミンおよびそれらの組成物の高い収量をもたらす。もう1つの態様において、宿主細胞におけるアミンオキシダーゼと1つまたは複数のアルデヒド生成酵素の組み合わせの発現は、脂肪アミンおよびそれらの組成物の高い収量をもたらす。いくつかの態様において、生合成酵素は細胞において外因性に発現される。
【0085】
本開示の宿主細胞または微生物には、酵素活性に対する特定の突然変異または操作の効率を検討するための変更を含むように遺伝的に操作された宿主菌株または宿主細胞(すなわち、組換え細胞または微生物)が含まれる。どのネイティブ性酵素経路が元の宿主細胞に存在するかに応じて、さまざまな任意選択的な遺伝的操作および変更を、1つの宿主細胞から別のものまでに互換的に用いることができる。1つの態様において、宿主菌株は、アミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼポリペプチドと、アルデヒド生成性ポリペプチドとの組み合わせの発現を試験するために用いることができる。宿主菌株は、発酵の構成成分、炭素源(例えば、供給原料)、温度、圧力、培養物混入低減条件(reduced culture contamination condition)および酸素レベルを含む培養条件を非限定的に含む、具体的な変数を検討するためのいくつかの遺伝的変更を包含しうる。
【0086】
1つの態様において、宿主菌株は、任意でfadEおよびfhuAの欠失を含む。アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(FadE)は、脂肪酸を代謝するために重要な酵素である。これは、脂肪酸(アシル-CoA)の長鎖を分解してアセチル-CoA分子にする過程である、脂肪酸利用における第2の段階(β-酸化)を触媒する。より詳細には、細菌における脂肪酸分解のβ-酸化サイクルの第2の段階はアシル-CoAの2-エノイル-CoAへの酸化であり、これはFadEによって触媒される。FadEを欠いていると、大腸菌は脂肪酸を炭素源として増殖することができないが、酢酸塩によって増殖することはできる。あらゆる鎖長の脂肪酸を利用できないことは、fadE菌株、すなわち、FadE機能が破壊されているfadE突然変異型菌株について報告されている表現型とも合致している。fadE遺伝子を任意選択的にノックアウトまたは減弱させることができ、それにより、脂肪酸誘導体経路の中間体と考えられるアシル-CoAが、細胞内に蓄積して、その結果、すべてのアシル-CoAが脂肪酸誘導体へと効率的に変換されうることを確かめることができる。しかし、糖が炭素源として用いられる場合にはfadEの減弱化は任意選択的であり、これは、そのような条件下ではFadEの発現が抑制される可能性が高く、そのためFadEが少量でしか存在せず、エステルシンターゼまたはアシル-CoAを基質とする他の酵素と効率的に競合しないと考えられるためである。FadEは異化代謝産物抑制が原因となって抑制される。大腸菌および他の多くの微生物は脂肪酸よりも糖を消費することを選好するため、両方の供給源が利用可能である場合には、fadレギュロンを抑制することによって糖がまず消費される(D. Clark, J Bacteriol. (1981) 148(2):521-6)を参照されたい)。その上で、糖の欠如によってFadE発現が誘導される。fadレギュロン(FadEを含む)によって発現されるタンパク質がアップレギュレートされ、アシル-CoAと効率的に競合すると考えられるため、β酸化経路に向かうアシル-CoA中間体は失われる可能性がある。したがって、fadE遺伝子をノックアウトまたは減弱させることが有益となりうる。ほとんどの炭素源は主として糖を基にしているため、FadEを減弱させることは任意選択的である。遺伝子fhuAは、大腸菌の外膜にあるエネルギー共役輸送体・受容体であるTonAタンパク質をコードする(V. Braun (2009) J Bacteriol. 191(11):3431-3436)。その欠失は任意選択的である。fhuA欠失により、細胞をファージ攻撃に対してより抵抗性にすることができ、これはある特定の発酵条件では有益となる可能性がある。したがって、発酵実行中に混入が起こる可能性が低い宿主細胞では、fhuAを欠失させることが望ましいと考えられる。
【0087】
もう1つの態様において、宿主菌株(前記)はまた、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを含む、以下の遺伝子のうち1つまたは複数の任意選択的な過剰発現も含む。そのような遺伝子の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌(Vibrio cholera)由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のfabF(NP_350156)がある。脂肪酸生合成における酵素および調節因子をコードする、これらの遺伝子のうち1つまたは複数の過剰発現を、脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下で増大させるために役立てることができる。
【0088】
もう1つの態様においては、脂肪酸誘導体の生産のための宿主細胞として大腸菌株が用いられる。同様に、これらの宿主細胞も、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを非限定的に含む、脂肪アミンなどの脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下でさらに増大させるかまたは強化することのできる、1つまたは複数の生合成遺伝子(すなわち、脂肪酸生合成の酵素および調節因子をコードする遺伝子)の任意選択的な過剰発現を提供する。遺伝的変更の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム由来のfabF(NP_350156)が含まれる。
【0089】
いくつかの態様において、生合成酵素(例えば、アミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼと、アルデヒド生成酵素、例えばCARおよび/またはTEおよび/またはAARおよび/またはPPTアーゼの組み合わせ)を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、脂肪エステル、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪アルデヒド、二官能性脂肪酸誘導体、二酸(diacid)などの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体の産生を増加させることのできる、ある特定の酵素活性を含む遺伝子をさらに発現すると考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる、脂肪酸の生産のためのチオエステラーゼ活性(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のためのエステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)および/または脂肪アルコールアシル-CoAレダクターゼ(FAR)(E.C. 1.1.1.*)活性および/またはカルボン酸レダクターゼ(CAR)(EC 1.2.99.6)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルデヒドの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、アルカンおよびアルケンの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびデカルボニラーゼ活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-CoAレダクターゼ(E.C. 1.2.1.50)活性、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のための、エステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞はケトンの生産のためのOleA活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、内部オレフィンの生産のためのOleBCD活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、末端オレフィンの生成のためのチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性およびデカルボキシラーゼ活性を有する。微生物および微生物細胞における酵素活性の発現は、米国特許第8,097,439号;第8,110,093号;第8,110,670号;第8,183,028号;第8,268,599号;第8,283,143号;第8,232,924号;第8,372,610号;および第8,530,221号に教示されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
他の態様において、生合成酵素(例えば、アミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼと、アルデヒド生成酵素、例えばCARおよび/またはTEおよび/またはAARおよび/またはPPTアーゼの組み合わせ)を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、脂肪アミンなどの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体を生産する目的でアップレギュレートまたは過剰発現される、ある特定のネイティブ性酵素活性を含むと考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、チオエステラーゼ遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる脂肪酸の生産のためのネイティブ性チオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。
【0091】
本開示は、生合成酵素(例えば、アミノトランスフェラーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼと、アルデヒド生成酵素、例えばCARおよび/またはTEおよび/またはAARおよび/またはPPTアーゼの組み合わせ)をコードする遺伝子を発現する宿主菌株または微生物を含む。1つの態様において、少なくとも1つの生合成酵素は宿主細胞において外因性に発現される。例えば、宿主細胞は、脂肪アミンを産生するために外因性アミノトランスフェラーゼを発現してよい。もう1つの態様においては、1つまたは複数の生合成酵素が宿主細胞において外因性に発現される。例えば、宿主細胞は、脂肪アミンを産生するために外因性アミノトランスフェラーゼおよび外因性カルボン酸レダクターゼ(CAR)を発現してもよい。さらにもう1つの態様において、1つまたは複数の生合成酵素は、宿主細胞において、宿主細胞において過剰発現される1つまたは複数の生合成酵素と組み合わせて外因性に発現される。例えば、宿主細胞が、脂肪アミンを産生するために、外因性アミノトランスフェラーゼおよび外因性カルボン酸レダクターゼ(CAR)を、外因性および/または過剰発現されたチオエステラーゼ(thiosterase)と組み合わせて発現してもよい。チオエステラーゼは外因性に発現されたチオエステラーゼであってもよい。または、チオエステラーゼは、特に強力なプロモーターまたは当業者に周知である他の分子生物学手法を介して過剰発現されたかまたは転写的にアップレギュレートされたネイティブ性チオエステラーゼであってもよい。組換え宿主細胞は、脂肪アミンならびにそれらの組成物および配合物を産生する。脂肪アミンは典型的には、培養培地から回収される、かつ/または宿主細胞から単離される。1つの態様において、脂肪アミンは培養培地から回収される(細胞外)。もう1つの態様において、脂肪アミンは宿主細胞から単離される(細胞内)。もう1つの態様において、脂肪アミンは培養培地から回収され、かつ宿主細胞から単離される。宿主細胞によって産生された脂肪酸アミン組成物は、特定の脂肪酸アミンの分布、ならびに脂肪アミン組成物の構成成分の鎖長および飽和度を決定する目的で、当技術分野において公知の方法、例えばGC-FIDを用いて分析することができる。
【0092】
微生物(例えば、微生物細胞)として機能する宿主細胞の例には、エシェリキア、バチルス、ラクトバチルス、ザイモモナス、ロドコッカス、シュードモナス、アスペルギルス、トリコデルマ、ニューロスポラ、フザリウム、ヒューミコーラ、リゾムコール、クリベロミセス、ピキア、ムコール、ミセリオフトラ、ペニシリウム、ファネロカエテ、プレウロタス、トラメテス、クリソスポリウム、サッカロミセス、ステノトロホモナス、シゾサッカロミセス、ヤロウイア、またはストレプトミセスに由来する細胞が非限定的に含まれる。いくつかの態様において、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。他の態様において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌B細胞、大腸菌C細胞、大腸菌K細胞、または大腸菌W細胞である。他の態様において、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。
【0093】
さらに他の態様において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニディランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞は、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞はアクチノミセス(Actinomycetes)細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
【0094】
他の態様において、宿主細胞は、真核植物、藻類、シアノバクテリア、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、好極限性細菌、酵母、真菌、それらの遺伝子操作された生物、または合成生物に由来する細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は、光依存性であるかまたは炭素を固定する。いくつかの態様において、宿主細胞は独立栄養活性を有する。
【0095】
いくつかの態様において、宿主細胞は、光の存在下などにおいて光独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の非存在下において従属栄養性または混合栄養性である。ある態様において、宿主細胞は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、パニカム・ウィルガツム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエナ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス(Synechococcus)種PCC 7002、シネココッカス種PCC 7942、シネコシスティス(Synechocystis)種PCC 6803、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・リュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。
【0096】
1つの特定の態様において、微生物細胞は、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、シネココッカス、シネコシスティス、シアノセイス(Cyanothece)、およびノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)を非限定的に含むシアノバクテリアに由来する。もう1つの態様において、微生物細胞は、シネココッカス・エロンガタスPCC7942、シネコシスティス種PCC6803、およびシネココッカス種PCC7001を非限定的に含む、特定のシアノバクテリア種に由来する。
【0097】
組換え宿主細胞および培養物を作製する方法
当技術分野において周知のさまざまな方法を、脂肪アミンおよび/または脂肪アミン組成物もしくは配合物を産生するように宿主細胞を遺伝子操作するために用いることができる。本方法は、本明細書に述べるように、生合成酵素(例えば、アミノトランスフェラーゼもしくはアミンデヒドロゲナーゼ単独、またはアルデヒド生成酵素、例えばCARおよび/もしくはTEおよび/もしくはAARおよび/もしくはPPTアーゼなどとの組み合わせ)をコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターの使用を含む。当業者は、種々のウイルス性ベクターおよび非ウイルス性ベクターを本明細書に記載の方法に用いうることを理解するであろう。
【0098】
本開示のいくつかの態様において、ある特定の組成物における脂肪アミンの力価がより高いとは、組換え宿主細胞培養物によって産生されるある特定の種類の脂肪アミンまたは脂肪アミンの組み合わせの力価が、対応する野生型宿主細胞の対照培養物によって産生される同じ脂肪酸アミンまたは脂肪アミンの組み合わせの力価に比してより高いことをいう。いくつかの態様において、生合成ポリペプチド(例えば、アミノトランスフェラーゼもしくはアミンデヒドロゲナーゼ単独、またはアルデヒド生成酵素、例えばCARおよび/もしくはTEおよび/もしくはAARおよび/もしくはPPTアーゼなどとの組み合わせ)は、特定の生合成ポリペプチドをコードする特定のポリヌクレオチド配列と機能的に連結されたプロモーターを含みうる組換えベクターを手段として、宿主細胞に与えられる。ある態様において、プロモーターは、発生段階調節性、オルガネラ特異的、組織特異的、誘導性、構成性、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは典型的には、ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製モイエティー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;およびポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列から選択される、少なくとも1つの配列を含む。タンパク質をコードするオープンリーディングフレームおよび機能的に連結された調節配列を含むポリヌクレオチド配列を、組換え宿主細胞の染色体中に組み込むこと、組換え宿主細胞内に常在する1つもしくは複数のプラスミド発現系の中に組み入れること、またはその両方が可能である。
【0099】
発現ベクターは、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。本明細書に記載の発現ベクターは、本明細書に述べるようなポリヌクレオチド配列によってコードされる融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生させるために宿主細胞に導入することができる。原核生物、例えば大腸菌におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成性または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。原核細胞および真核細胞のいずれについても適した発現系が当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)を参照されたい)。ある態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5に由来するプロモーターと機能的に連結されている。1つの態様において、宿主細胞は酵母細胞である。この態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。ベクターは、外来性核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための、当技術分野で認知された種々の手法を介して原核細胞または真核細胞に導入することができる。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのために適した方法は、例えば、Sambrook et al.(前記)に見ることができる。
【0100】
細菌細胞の安定的な形質転換に関しては、用いる発現ベクターおよび形質転換手法に応じて、特定の割合の細胞が発現ベクターを取り込んで複製することが知られている。これらの形質転換体の同定および選択のために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、関心対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入することができる。選択マーカーには、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなど、ただしこれらには限定されない薬物に対する耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするベクターと同一ベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別個のベクター上で導入することもできる。導入された核酸によって安定的に形質転換された細胞は、適切な選択薬の存在下における増殖によって同定することができる。
【0101】
組換え宿主細胞の培養および発酵
本明細書で用いる場合、「発酵」という用語は、組換え宿主細胞の培養物を炭素源を含む培地中で繁殖させることによる、宿主細胞による有機材料の標的物質への変換、例えば、組換え宿主細胞による炭素源の脂肪アミンまたはその誘導体への変換のことを広く指す。本明細書で用いる場合、「生産を許容する条件」とは、宿主細胞が所望の産物、例えば脂肪アミンまたは脂肪アミンの組成物または配合物などを産生することを可能にする、あらゆる条件のことを意味する。同様に、ベクターのポリヌクレオチド配列が発現される条件とは、宿主細胞がポリペプチドを合成することを可能にする、あらゆる条件のことを意味する。適した条件には、例えば、発酵条件が含まれる。発酵条件は、温度範囲、通気レベル、供給速度および培地組成を非限定的に含む多くのパラメーターを含みうる。これらの条件のそれぞれは、個々に、または組み合わされて、宿主細胞が増殖することを可能にする。発酵は、好気性、嫌気性、またはそれらの変形物(微好気性など)であってよい。例示的な培養培地にはブロスまたはゲルが含まれる。一般に、培地は、宿主細胞によって直接代謝されうる炭素源を含む。加えて、炭素源の動態化(例えば、デンプンまたはセルロースの発酵性糖への解重合)およびその後の代謝を助長するために、培地中に酵素を用いることもできる。
【0102】
小規模生産のためには、遺伝子操作された宿主細胞を、例えば約100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、1mL、5mL、10mL、15mL、25mL、50mL、75mL、100mL、500mL、1L、2L、5Lまたは10Lバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列、例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼもしくはアミンデヒドロゲナーゼもしくはアミンオキシダーゼポリペプチドを単独でコードするか、またはCARおよび/もしくはTEおよび/もしくはAARおよび/もしくはPPtアーゼポリペプチドをコードするアルデヒド生成性ポリヌクレオチド配列と組み合わせてコードするポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。大規模生産のためには、遺伝子操作された宿主細胞を、約10L、100L、1000L、10,000L、100,000L、および1,000,000Lまたはそれを上回るバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。1つの好ましい態様において、本明細書に記載の脂肪アミンおよび脂肪アミン組成物は、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境で見いだされ、培養培地から容易に単離することができる。もう1つの態様において、本明細書に記載の脂肪アミンおよび脂肪アミン組成物は、培養下で増殖させた組換え宿主細胞の細胞内環境で見いだされる。脂肪アミンまたはその誘導体が組換え宿主細胞によって分泌されて、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境に輸送されるか、または細胞外環境に受動的に移行してもよい。脂肪アミン組成物は、当技術分野において公知の慣行的な方法を用いて、組換え宿主細胞培養物から単離しうる。
【0103】
組換え宿主細胞のスクリーニング
本開示の1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチドの活性は、1つまたは複数のアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチド配列を(任意で1つまたは複数のアルデヒド生成性ポリペプチドと組み合わせて)包含する組換え宿主細胞を培養し、その後に、例えば、組換え宿主細胞によって産生された脂肪アミン組成物の特性;例えば、脂肪アミンならびにそれらの組成物および配合物の力価、収量および生産性を同定するためにスクリーニングを行うことによって判定される。もう1つの態様において、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチドの活性は、1つまたは複数のアミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリヌクレオチド配列を包含する組換え宿主細胞を培養し、その後に、例えば、組換え宿主細胞によって産生された脂肪アミン組成物の特性;例えば:脂肪アミンならびにそれらの組成物および配合物の力価、収量および生産性を同定するためにスクリーニングを行うことによって同定される。アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチドおよびそれらの断片を、当技術分野において公知の慣行的な方法を用いて、細胞におけるそれらの活性および/またはアミン由来化合物の産生の向上/増加に関してアッセイすることができる。例えば、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチドまたはそれらの断片を、ポリペプチドが機能してその酵素活性を遂行することを可能にする条件下で、インビボで基質(例えば、CARおよび/またはTEおよび/またはAARおよび/またはPPTアーゼを細胞内で共発現させることによって産生された脂肪アルデヒド)と接触させる。基質のレベルの低下、または脂肪アミンもしくは脂肪アミン組成物のレベルの上昇を測定することにより、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼの活性を判定することができる。または、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼポリペプチドまたはそれらの断片を発現する細胞に対して、やはりポリペプチドが機能してその酵素活性を遂行することを可能にする条件下で、脂肪アルデヒド基質を供給する。脂肪アミンまたは脂肪アミン組成物のレベルの上昇を測定することにより、アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼまたはアミンデヒドロゲナーゼまたはアミンオキシダーゼの活性を判定することができる。
【0104】
組換え宿主細胞に由来する生成物
本明細書で用いる場合、「現代炭素分率」すなわちfMとは、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology(NIST))標準物質(Standard Reference Material(SRM))4990Bおよび4990C、それぞれシュウ酸標準品HOxIおよびHOxIIとして知られるもの、によって定義されるものと同じ意味を有する。基本的定義はHOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に相当する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木とおおむね等しい。現在の生体生物圏(植物材料)については、fMはおよそ1.1である。
【0105】
生物的に産生された有機化合物を含むバイオ生成物(bioproduct)(例えば、本開示に従って生産された脂肪アミン組成物)、特に本明細書における生合成経路を用いて生産された脂肪アミン組成物誘導体が、再生可能資源から生産されており、これらはしたがって新規な組成物である。これらの新たなバイオ生成物は、石油化学炭素由来の有機化合物とは、二核種炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon-isotopic fingerprinting)または14C年代測定法(14C dating)に基づいて区別することができる。さらに、生物起源炭素の具体的な供給源(例えば、グルコースとグリセロールとの対比など)を、二核種炭素同位体フィンガープリント法によって判定することもできる(例えば、米国特許第7,169,588号を参照されたい)。バイオ生成物を石油ベースの有機化合物と区別しうることは、これらの材料の流通下でのトラッキングに有益である。例えば、生物学に基づく炭素同位体プロファイルと石油ベースの炭素同位体プロファイルの両方を含む有機化合物または化学物質を、石油ベースの材料だけでできた有機化合物および化学物質と区別することができる。それ故に、本明細書において生産されたバイオ生成物は、そのユニークな炭素同位体プロファイルに基づいて、流通下で追跡またはトラッキングすることができる。バイオ生成物は、各試料中の安定炭素同位体比(13C/12C)を比較することによって、石油ベースの有機化合物と区別することができる。所与のバイオ生成物における13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時点の大気中の二酸化炭素における13C/12C比の結果である。それはまた、厳密な代謝経路も反映する。地域的変動も起こる。石油、C3植物(広葉植物)、C4植物(イネ科草本)、および海洋炭酸塩はすべて、13C/12Cおよび対応するδ13C値の点で有意差を示す。C4植物およびC3植物はいずれも、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は、C4植物については約-7~約-13パーミル、C3植物については約-19~約-27パーミルである(例えば、Stuiver et al. (1977) Radiocarbon 19:355を参照されたい)。石炭および石油は一般に後者の範囲に含まれる。
δ13C(‰)=[(13C/12C)試料-(13C/12C)標準物質]/(13C/12C)標準物質×1000
【0106】
IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際的同位体研究所の協同で、一連の代替的RMが開発されている。PDBからのパーミル偏位の表記がδ13Cである。測定は、CO2に対して、高精度安定同位体比質量分析(high precision stable ratio mass spectrometry)(IRMS)により、質量44、45および46の分子イオンに関して行われる。本明細書に記載の組成物には、本明細書に記載の方法のいずれかによって生産された脂肪アミン組成物および生成物が含まれる。具体的には、脂肪アミン組成物および生成物は、約-28もしくはそれを上回る、約-27もしくはそれを上回る、-20もしくはそれを上回る、-18もしくはそれを上回る、-15もしくはそれを上回る、-13もしくはそれを上回る、-10もしくはそれを上回る、または-8もしくはそれを上回るδ13Cを有することができる。例えば、脂肪アミン組成物および生成物は、約-30~約-15、約-27~約-19、約-25~約-21、約-15~約-5、約-13~約-7、または約-13~約-10のδ13Cを有することができる。別の場合には、脂肪アミン組成物および生成物は、約-10、-11、-12、または-12.3のδ13Cを有することができる。また、本明細書における本開示に従って生産された脂肪アミン組成物および生成物は、各化合物における14Cの量を比較することによって、石油ベースの有機化合物と区別することもできる。14Cは5730年という核半減期を有するので、「古い(older)」炭素を含有する石油ベース燃料を、「新しい(newer)」炭素を含有するバイオ生成物と区別することができる(例えば、Currie, "Source Apportionment of Atmospheric Particles", Characterization of Environmental Particles, J. Buffle and H. P. van Leeuwen, Eds., 1 of Vol. I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series (Lewis Publishers, Inc.) 3-74, (1992)を参照されたい)。
【0107】
放射性炭素年代測定法における基本的仮定は、大気中の14C濃度の不変性が生体における14Cの不変性をもたらすというものである。しかし、1950年以降の大気圏内核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼により、14Cはもう1つの地球化学的時間特性(geochemical time characteristic)を獲得した。大気CO2における(したがって生体生物圏(living biosphere)における)その濃度は、1960年代中頃の核実験のピーク時にはおよそ2倍になった。それ以後は、7~10年というおよその緩和「半減期」で、約1.2×10~12という定常状態宇宙線起源(大気)ベースライン同位対比(14C/12C)へと徐々に戻りつつある。この後者の半減期は文字通りに解釈してはならない;そうではなくて、核時代の幕開け以降の大気および生物圏14Cの変動を追跡するには、詳細な大気核投入/減衰関数(atomospheric nuclear input/decay function)を用いなければならない。近年の生物圏炭素の年代測定(annual dating)に裏づけを与えるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは加速器質量分析(AMS)によって測定することができ、その結果は「現代炭素分率」(fM)という単位で与えられる。本明細書に記載の脂肪アミン組成物および生産物は、少なくとも約1のfM 14Cを有しうるバイオ生成物を含む。例えば、本明細書に記載のバイオ生成物は、少なくとも約1.01のfM 14C、約1~約1.5のfM 14C、約1.04~約1.18のfM 14C、または約1.111~約1.124のfM 14Cを有しうる。
【0108】
14Cのもう1つの測定値は、現代炭素パーセント(percent of modern carbon)(pMC)として知られている。14C年代値を用いる考古学者または地質学者にとっては、西暦1950年が0年前(zero years old)に相当する。これはまた、100pMCも表す。熱核兵器のピークであった1963年に、大気中の「爆弾由来炭素(bomb carbon)」は、正常レベルのほぼ2倍に達した。その出現以降、大気圏内でのその分布は概算されており、西暦1950年以降に生きる植物および動物については100pMCを上回る値を示す。これは時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5pMC付近である。これは、トウモロコシなどの新鮮なバイオマス材料が107.5pMCに近い14C特性を与えると考えられることを意味する。石油ベースの化合物はpMC値がゼロであると考えられる。化石炭素を現代炭素と混合すると、現代pMC含有量の希釈が起こることになる。107.5pMCが現代バイオマス材料の14C含有量を表し、0pMCが石油ベース生成物の14C含有量を表すと仮定すると、その材料について測定されるpMC値は、この2種類の構成成分の比率を反映することになる。例えば、現代の大豆に100%由来する材料は、107.5pMCに近い放射性炭素特性を与えると考えられる。この材料を石油ベース生成物で50%希釈したとすると、放射性炭素特性は約54pMCになると考えられる。生物学に基づく炭素含有量は、「100%」を107.5pMCに割り当て、「0%」を0pMCに割り当てることによって導き出される。例えば、99pMCと測定される試料は、93%の生物学に基づく炭素含有量換算値を与えることになる。この値は、生物学に基づく炭素結果平均値と呼ばれ、分析される材料内のすべての構成成分が現代生物材料または石油ベース材料のいずれかに由来すると仮定している。本明細書に述べたような1つまたは複数の脂肪酸誘導体を含むバイオ生成物は、少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100のpMCを有することができる。別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約50~約100;約60~約100;約70~約100;約80~約100;約85~約100;約87~約98;または約90~約95のpMCを有することができる。さらに別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約90、91、92、93、94、または94.2のpMCを有することができる。
【0109】
脂肪アミン組成物
脂肪アミンの構造は、1つまたは複数のC8~C24脂肪族アルキル基(R=C8~C24)および1つまたは複数のアミン(N)または第四級アンモニウムに基づく。脂肪族アルキル鎖は強疎水性であり、一方、アミンは親水性である。このため、脂肪アミンは分子として両親媒性を有する(疎水性実体と親水性実体の両方を含む)。水または他の溶媒中に溶解されると、脂肪アミンはミセルを形成するが、これは分子の一部が溶媒による反発を受けるためである。そのため、脂肪アミンは、物理的または化学的な結合のいずれかによって表面に強く付着し、それ故に表面特性を改変する、陽イオン界面活性化合物(すなわち、その親水性モイエティーを特徴とする界面活性剤)である。脂肪アミンの界面活性特性には、乳化、湿潤、発泡および増粘がある。加えて、脂肪アミンは、軟化、粘着、潤滑、腐食抑制、帯電防止特性および疎水化(hydrophobation)を含む吸着特性;ならびにイオン交換、脱色および凝集を含む反応特性も有する。
【0110】
本開示は、化学中間体として、加工助剤として、および数多くの製剤における機能的構成成分としてのものを含む多くの産業的用途に有用な、脂肪アミンおよびその誘導体の生産を企図している。脂肪アミンの例には、本宿主細胞において産生され、本明細書に述べたような脂肪アルデヒド前駆体に由来するものが含まれる。本明細書において生産される脂肪アミンおよび/または脂肪アミン組成物もしくは配合物は、個々に、または適した組み合わせもしくは配合物として用いることができる。本開示の脂肪アミンは、洗剤(洗浄剤、増粘剤、柔軟仕上げ剤);食器洗い液;発泡剤および湿潤剤;解乳化剤(医薬品、紙、石油);乳化剤(溶媒、溶媒洗浄剤、シリコーン、油、ワックスポリッシュ、革処理、トリグリセリド);界面活性剤;シャンプーおよびコンディショナー;繊維業界およびプラスチック業界における帯電防止剤(繊維、ポリマー、電子工学、静電スプレー、紙);燃料添加剤;潤滑剤および潤滑剤添加剤(グリース増粘剤、エンジン油);塗料増粘剤;選鉱;紙製造;石油生産および精錬(石油添加剤、油田化学物質);アスファルト乳化剤;腐食防止剤(酸、水処理、金属加工、石油);ガソリンおよび燃料油の添加剤;浮遊剤;エポキシ硬化剤;ならびに農業用化学物質および除草剤を非限定的に含む産業的用途に使い道がある。いくつかの局面において、本開示は、約C8~約C24の範囲にわたる、複数の炭素鎖の混合物または特定の鎖長の炭素鎖のいずれかからできている脂肪アミンを含む、脂肪アミン組成物を生産する方法に関する。1つの特定の局面において、本開示は、第一級脂肪アミン(RNH2)を包含する脂肪アミン組成物を生産する方法に関する。もう1つの局面において、第二級脂肪アミン(R2NH)および/または第三級脂肪アミン(トリアルキル(R3N)、ジアルキルメチル(R2NCH3)、および/またはアルキルジメチル(RN(CH3)2))も企図している。もう1つの局面において、本開示は、多くの工業製品の主な構成単位になりうるほか、ポリアミン、エトキシ化アミン、エトキシ化ジアミン、プロポキシ化アミン、アミン塩、アミンオキシド、アミド、エトキシ化アミド、およびニトリルといった数多くの化学誘導体の原材料ともなる第一級アミンの生産を範囲に含む。関連した局面において、本方法は、ポリアミン、エトキシ化アミン、エトキシ化ジアミン、プロポキシ化アミン、アミン塩、アミンオキシド、アミド、エトキシ化アミド、およびニトリルを非限定的に含む化学誘導体およびそれらの組成物を生産するために適した第一級アミンを非限定的に含む、脂肪アミンおよび脂肪アミン組成物を作製するために適した遺伝的に操作された生産宿主を範囲に含む。
【0111】
一般に、本開示の脂肪アミンまたは脂肪アミン組成物は、宿主細胞の細胞外環境から単離される。いくつかの態様において、脂肪アミンまたは脂肪アミン組成物は、宿主細胞から自発的に、部分的または完全に分泌される。代替的な態様において、脂肪アミンまたは脂肪アミン組成物は、任意で1つまたは複数の輸送タンパク質の助けを借りて、細胞外環境へと輸送される。さらに他の態様において、脂肪アミンまたは脂肪アミン組成物は、細胞外環境へと受動的に輸送される。
【0112】
本方法により、C8~C24脂肪アミンを含む脂肪アミンが生産される。いくつかの態様において、脂肪アミンは、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23および/またはC24脂肪アミンを含む。他の態様において、脂肪アミン組成物は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17およびC18脂肪アミンのうち1つまたは複数を含む。さらに他の態様において、脂肪アミン組成物は、C12、C14、C16およびC18脂肪アミン;C12、C14およびC16脂肪アミン;C14、C16およびC18脂肪アミン;またはC12およびC14脂肪アミンを含む。脂肪アミンのR基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。分枝鎖は複数の分枝点を有してよく、環状分枝を含んでもよい。いくつかの態様において、分枝脂肪アミンは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23またはC24分枝脂肪アミンである。分枝性または非分枝性脂肪アミンのR基は、飽和性でも不飽和性でもよい。不飽和性である場合には、R基は1つまたは複数の不飽和点を有しうる。いくつかの態様において、不飽和脂肪アミンは、一不飽和脂肪アミンである。ある態様において、不飽和脂肪アミンは、C6:1、C7:1、C8:1、C9:1、C10:1、C11:1、C12:1、C13:1、C14:1、C15:1、C16:1、C17:1、C18:1、C19:1、C20:1、C21:1、C22:1、C23:1またはC24:1不飽和脂肪アミンである。ある態様において、不飽和脂肪アミンは、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、またはC18:1不飽和脂肪アミンである。他の態様において、不飽和脂肪アミンはω-7位置で不飽和性である。ある態様において、不飽和脂肪アミンはシス二重結合を有する。
【0113】
1つの好ましい態様において、脂肪アミンは、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、およびオレイルアミンを非限定的に含む第一級アミンである。もう1つの態様において、脂肪アミンは第二級アミン、例えば、1-ドデシルアミン(ラウリルアミン)、1-ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、1-オクタデシルアミン(ステアリルアミン)などである。もう1つの態様において、脂肪アミンは第三級アミン、例えば、1-オクタデセン-9-イルアミン(オレイルアミン)などである。脂肪アミンの他の例には、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、およびオレイルジメチルアミンを非限定的に含むアルキルジメチルアミンがある。脂肪アミンのさらに他の例には、ジオクチルメチルアミン、ジデシルメチルアミン、ジドデシルメチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジヘキサデシルメチルアミン、およびジオクタデシルメチルアミンを非限定的に含むジアルキルメチルアミンがある。本開示は、脂肪アミド(例えば、ステアラミド、オレアミド、エルクアミド);第四級化合物(例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム);およびエトキシ化化合物(例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン)といった化学誘導体のために用いうる、本明細書に述べたような組換え宿主細胞によって産生される脂肪アミンを、さらに企図している。
【0114】
他の態様において、脂肪アミンは直鎖脂肪アミンを含む。他の態様において、脂肪アミンは分枝鎖脂肪アミンを含む。なお他の態様において、脂肪アミンは環状モイエティーを含む。いくつかの態様において、脂肪アミンは不飽和脂肪アミンである。他の態様において、脂肪アミンは一不飽和脂肪アミンである。なお他の態様において、脂肪アミンは飽和脂肪アミンである。もう1つの局面において、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかもしくは微生物のいずれかによって生産される脂肪アミン、または本明細書に記載の方法のいずれかもしくは微生物のいずれかによって生産される脂肪アミンを包含する界面活性剤を特徴とする。いくつかの態様において、脂肪アミンは、約-15.4またはそれを上回るδ13Cを有する。ある態様において、脂肪アミンは、約-15.4~約-10.9または約-13.92~約-13.84であるδ13Cを有する。いくつかの態様において、脂肪アミンは、少なくとも約1.003であるfM 14Cを有する。ある態様において、脂肪アミンは、少なくとも約1.01または少なくとも約1.5であるfM 14Cを有する。いくつかの態様において、脂肪アミンは、約1.111~約1.124であるfM 14Cを有する。
【実施例
【0115】
以下の具体的な実施例は、本開示を例証することを意図しており、特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0116】
実施例1:
窒素源(グルタミン酸塩)の補充とともに、チオエステラーゼ('tesA)およびカルボン酸レダクターゼ(CarB)をプトレシンアミノトランスフェラーゼ(ygjG)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させた。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換した。
【0117】
ygjG遺伝子は、以下のプライマーを用いるPCRを介して、大腸菌MG1655菌株からクローニングした。
【0118】
順方向プライマー:
【0119】
逆方向プライマー:
【0120】
続いて、ygjG遺伝子を発現ベクターpACYC(すなわち、高コピー発現ベクター)中に連結させて、プラスミドpACYC-ygjGを作製した。マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)carB遺伝子および大腸菌由来のチオエステラーゼ遺伝子('tesA)の変異体を含む第2のプラスミドを作製し、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05(すなわち、低コピープラスミド)と命名した。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(DVD2.1、これは大腸菌MG1655菌株由来のΔfadE ΔtonA fabB-A329V PT5-entDを含む)中に共形質転換によって導入し、菌株F16-YGを得た。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F16(pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05)および対照菌株YG(pACYC-ygjG)を得た。
【0121】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON(登録商標)X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導した(IPTGはlacオペロンの転写を誘発し、遺伝子がlacオペレーターの制御下にある場合にタンパク質発現を誘導するために用いられる)。誘導時に、5g/LのL-グルタミン酸塩も窒素源として添加した。各々のプラスミドに関する選択を行う目的で、pACYC-ygjGを含有する菌株は抗生物質カルベニシリンの存在下で増殖させ、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05を含有する菌株はスペクチノマイシンの存在下で増殖させた。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよび5g/LのL-グルタミン酸塩を加えた。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させた。
【0122】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加した。続いて試料を最大速度で15分間ボルテックス処理して、5分間遠心した。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析した(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。ygjG、carBおよび'tesAが外因性に発現されるF16-YG菌株により、7.6分での特有のピーク(図1、中央パネル)が生じたが、これはYG陰性対照およびF16陰性対照(図1の上および下のパネル)のいずれにおいても観察されなかった。F16-YG培養物からの7.6分時点での試料中のこの特有のピークは、NIST 05化合物ライブラリーによって1-ドデシルアミンと同定された。Sigma/Aldrichから購入した分析用標準品(製品番号325163)をF16-YG試料と連続して試験することにより、化合物の実体が1-ドデシルアミンであることが、その保持時間(図2)、ならびにm/z=142、156および170の特徴的な断片ならびに185での分子イオンを示すそのイオン断片化パターン(図3)によって確かめられた。
【0123】
実施例2:
窒素源(グルタミン酸塩)の補充とともに、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)をプトレシンアミノトランスフェラーゼ(ygjG)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させる。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換する。
【0124】
ygjG遺伝子を、以下のプライマーを用いるPCRを介して、大腸菌MG1655菌株からクローニングする。
【0125】
順方向プライマー:
【0126】
逆方向プライマー:
【0127】
続いて、ygjG遺伝子を発現ベクターpACYC中に連結させて、プラスミドpACYC-ygjGを作製する。シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のAARの遺伝子(aar)を含むpCLベースのプラスミドである第2のプラスミドを作製し、pCL1920-aarと命名する。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(前記)中に共形質転換によって導入し、菌株F17-YGを得る。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F17(pCL1920-aar)および対照菌株YG(pACYC-ygjG)を得る。
【0128】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON (登録商標)X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導する。誘導時に、5g/LのL-グルタミン酸塩も窒素源として添加する。各々のプラスミドに関する選択を行う目的で、pACYC-ygjGを含有する菌株は抗生物質カルベニシリン(0.05mg/mL)の存在下で増殖させ、pCL1920-aarを含有する菌株は0.1mg/mLのスペクチノマイシンの存在下で増殖させる。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよび5g/LのL-グルタミン酸塩を加える。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させる。
【0129】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加する。続いて試料を、必要に応じて、最大速度で約15分間ボルテックス処理して、約5分間遠心する。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析する(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。ygjGおよび/またはaarが外因性に発現されるF17-YG菌株により、実施例1において観察されたもの(前記)に類似の脂肪アミンに相当し、YG陰性対照およびF17陰性対照のいずれにおいても観察されない、1つまたは複数の特有のピークが生じると予想される。F17-YG培養物からの試料における任意の特有のピークを、NIST 05化合物ライブラリーによって脂肪アミンと同定することができる。生成された化合物の実体をその保持時間およびそのイオン断片化パターンによって確かめる目的で、比較のために、Sigma/Aldrichによる分析用標準品(製品番号325163)をF17-YG試料と連続して試験する。
【0130】
実施例3:
窒素源(グルタミン酸塩)の補充とともに、チオエステラーゼ(TesA)およびカルボン酸レダクターゼ(CarB)をGABAアミノトランスフェラーゼ(PuuE)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させる。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換する。puuE遺伝子を、適した順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いるPCRを介して、大腸菌菌株からクローニングする(実施例1および2、前記における教示と同様に)。続いてpuuE遺伝子を、発現ベクター(例えば、pACYC、前記)中に連結させて、プラスミドpACYC-puuEを作製する。第2のプラスミドを作製し、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05と命名することができるが、これはマイコバクテリウム・スメグマチスcarB遺伝子および大腸菌由来のチオエステラーゼ遺伝子の変異体('tesA)を含有する第2の発現ベクターである(実施例1、前記を参照)。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(前記)中に共形質転換によって導入し、菌株F18-PUを得る。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F18(pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05)および対照菌株PU(pACYC-puuE)を得る。
【0131】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON(登録商標) X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導する。誘導時に、5g/LのL-グルタミン酸塩も窒素源として添加する。各々のプラスミドに関する選択を行う目的で、pACYC-puuEを含有する菌株は抗生物質カルベニシリン(0.05mg/mL)の存在下で増殖させ、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05を含有する菌株は0.1mg/mLのスペクチノマイシンの存在下で増殖させる。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよび5g/LのL-グルタミン酸塩を加える。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させる。
【0132】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加する。続いて試料を、必要に応じて、最大速度で約15分間ボルテックス処理して、5分間遠心する。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析する(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。puuE、carBおよび/または'tesAが外因性に発現されるF18-PU菌株により、PU陰性対照およびF18陰性対照のいずれにおいても観察されない、1つまたは複数の特有のピークが生じると予想される。F18-PU培養物からの試料において予想される特有のピークを、NIST 05化合物ライブラリーによって同定する。新規脂肪アミン化合物の実体を確かめる目的で、Sigma/Aldrichによる分析用標準品(製品番号325163)をF18-PU試料と連続して試験する。
【0133】
実施例4:
窒素源(グルタミン酸塩)の補充とともに、AARをGABAアミノトランスフェラーゼ(PuuE)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させる。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換する。
【0134】
puuE遺伝子を、適した順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いるPCRを介して、大腸菌菌株からクローニングする(実施例1、前記における教示と同様に)。続いてpuuE遺伝子を、発現ベクター(例えば、pACYC、前記)中に連結させて、プラスミドpACYC-puuEを作製する。第2のプラスミドを作製してpCL1920-aarと命名することができるが、これはシネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のAARの遺伝子(aar)を含有するもう1つの発現ベクターである。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(前記)中に共形質転換によって導入し、菌株F19-PUを得る。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F19(pCL1920-aar)および対照菌株PU(pACYC-puuE)を得る。
【0135】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON (登録商標)X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導する。誘導時に、5g/LのL-グルタミン酸塩も窒素源として添加する。各々のプラスミドに関する選択を行う目的で、pACYC-puuEを含有する菌株は抗生物質カルベニシリン(0.05mg/mL)の存在下で増殖させ、pCL1920-aarを含有する菌株は0.1mg/mLのスペクチノマイシンの存在下で増殖させる。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよび5g/LのL-グルタミン酸塩を加える。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させる。
【0136】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加する。続いて試料を、必要に応じて、最大速度で約15分間ボルテックス処理して、約5分間遠心する。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析する(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。puuEおよび/またはaarが外因性に発現されるF19-PU菌株により、PU陰性対照およびF19陰性対照のいずれにおいても観察されない、1つまたは複数の特有のピークが生じると予想される。F19-PU培養物からの試料において予想される特有のピークを、NIST 05化合物ライブラリーによって同定する。新規脂肪アミン化合物の実体を確かめる目的で、Sigma/Aldrichによる分析用標準品(製品番号325163)をF19-PU試料と連続して試験する。
【0137】
実施例5
窒素源(アンモニア)の補充とともに、チオエステラーゼ(TesA)およびカルボン酸レダクターゼ(CarB)をアミンデヒドロゲナーゼ(例えば、パラコッカス・デニトリフィカンスのメチルアミンデヒドロゲナーゼまたはシュードモナス種のキノヘモタンパク質アミンデヒドロゲナーゼ)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させる。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換する。
【0138】
パラコッカス・デニトリフィカンスまたはシュードモナス種由来のアミンデヒドロゲナーゼ(AD)遺伝子を、適した順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いるPCRを介して、大腸菌菌株からクローニングする(実施例1、前記における教示と同様に)。続いてAD遺伝子を、発現ベクター(例えば、pACYC、前記)中に連結させて、プラスミドpACYC-ADを作製する。第2のプラスミドを作製し、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05と命名することができるが、これはマイコバクテリウム・スメグマチスcarB遺伝子および大腸菌由来のチオエステラーゼ遺伝子の変異体('tesA)を含有するもう1つの発現ベクターである(実施例1、前記を参照)。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(前記)中に共形質転換によって導入し、菌株F20-ADを得る。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F20(pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05)および対照菌株AD(pACYC-AD)を得る。
【0139】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON (登録商標)X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導する。誘導時に、およそ0.5~1g/Lのアンモニアも窒素源として添加する。各々のプラスミドに関する選択を行う目的で、pACYC-ADを含有する菌株は抗生物質カルベニシリン(0.05mg/mL)の存在下で増殖させ、pCL1920-CarB-18-cTesA2-13C05を含有する菌株は0.1mg/mLのスペクチノマイシンの存在下で増殖させる。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよびおよそ0.5~1g/Lのアンモニアを加える。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させる。
【0140】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加する。続いて試料を、必要に応じて、最大速度で約15分間ボルテックス処理して、5分間遠心する。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析する(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。AD、carBおよび/または'tesAが外因性に発現されるF20-AD菌株により、PU陰性対照およびF20陰性対照のいずれにおいても観察されない、1つまたは複数の特有のピークが生じると予想される。F20-AD培養物からの試料において予想される特有のピークを、NIST 05化合物ライブラリーによって同定する。新規脂肪アミン化合物の実体を確かめる目的で、Sigma/Aldrichによる分析用標準品(製品番号325163)をF20-AD試料と連続して試験する。
【0141】
実施例6:
窒素源(アンモニア)の補充とともに、AARをアミンデヒドロゲナーゼ(例えば、パラコッカス・デニトリフィカンスのメチルアミンデヒドロゲナーゼまたはシュードモナス種のキノヘモタンパク質アミンデヒドロゲナーゼ)と共発現させることによって、脂肪アルデヒド前駆体および対応する脂肪アミンをインビボで生成させる。脂肪アルデヒド前駆体を対応するアミンに変換する。
【0142】
アミンデヒドロゲナーゼ(AD)遺伝子を、適した順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いるPCRを介して、大腸菌菌株からクローニングする(実施例1、前記における教示と同様に)。続いてAD遺伝子を、発現ベクター(例えば、pACYC、前記)中に連結させて、プラスミドpACYC-ADを作製する。第2のプラスミドを作製し、pCL1920-aarと命名することができるが、これはシネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のAARの遺伝子(aar)を含有するもう1つのベクターである。この2つのプラスミドを、脂肪アミンを産生しない大腸菌菌株(前記)中に共形質転換によって導入し、菌株F21-ADを得る。また、対照として用いるために宿主細胞をプラスミドのそれぞれによっても別々に形質転換して、対照菌株F21(pCL1920-aar)および対照菌株AD(pACYC-AD)を得る。
【0143】
これらの細胞を、3%(w/v)グルコース、0.5%(v/v)TRITON (登録商標)X-100、0.1M bis-tris、pH 7.0を加えたM9最少培地中にて32℃で増殖させ、OD600がほぼ1.0になった時点で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導する。誘導時に、およそ0.5~1g/Lのアンモニアも窒素源として添加する。各々のプラスミドに関する選択を行う目的でpACYC-ADを含有する菌株は抗生物質カルベニシリン(0.05mg/mL)の存在下で増殖させ、pCL1920-aarを含有する菌株は0.1mg/mLのスペクチノマイシンの存在下で増殖させる。一晩増殖させた後、3種の菌株の培養物にさらに10g/Lのグルコースおよびおよそ0.5~1g/Lのアンモニアを加える。培養物の1mLアリコートを、誘導から24時間後に凍結させる。
【0144】
試料を分析用に調製するために、0.5mLの酢酸エチルを培養物の各アリコートに添加する。続いて試料を、必要に応じて、最大速度で約15分間ボルテックス処理して、約5分間遠心する。有機相を、ガスクロマトグラフ質量分析(Agilent 6890のGCMS)によりEIモードで分析する(すなわち、方法:アルカン1スプリットレスCTC)。ADおよび/またはaarが外因性に発現されるF21-AD菌株により、AD陰性対照およびF21陰性対照のいずれにおいても観察されない、1つまたは複数の特有のピークが生じると予想される。F21-AD培養物からの試料において予想される特有のピークを、NIST 05化合物ライブラリーによって同定する。新規脂肪アミン化合物の実体を確かめる目的で、Sigma/Aldrichによる分析用標準品(製品番号325163)をF21-AD試料と連続して試験する。
【0145】
当業者には明らかであろうが、上記の諸局面および諸態様のさまざまな改変物および変形物を、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく作製することができる。そのような改変物および変形物は本開示の範囲内にある。
図1
図2
図3
【配列表】
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