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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】現場監視装置および現場監視システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20221004BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20221004BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E02F9/26 B
F15B11/08 A
E02F9/24 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019153651
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031968
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土江 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-049792(JP,A)
【文献】特開2018-170702(JP,A)
【文献】特開2019-056301(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
F15B 11/08
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警告を出力する警告装置と、
仕切り物体の位置を検出する仕切り物体検出装置と、
仕切り物体を配置すべき境界を表す情報の入力を受け付ける境界入力装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
各前記境界について、当該境界が、当該境界に対応する位置に前記仕切り物体が配置されている配置済境界であるか、または、当該境界に対応する位置に前記仕切り物体が配置されていない未配置境界であるかを判定する、判定部と、
前記未配置境界が少なくとも1つ存在する場合に、前記警告装置に前記警告を出力させる、警告内容決定部と、
を備える、
現場監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現場監視装置であって、
前記制御装置は、
前記境界入力装置により前記境界を表す前記情報が入力されることに応じて、前記判定部に判定処理を実行させる判定指令部
を備える、現場監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載の現場監視装置であって、
前記境界入力装置は、作業領域の入力を受け付ける作業領域入力装置であり、
前記制御装置は、前記作業領域の境界のうちから前記仕切り物体を配置すべき前記境界を抽出する、作業領域境界演算部を備える、
現場監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の現場監視装置であって、
作業機械の位置を検出する機械位置検出装置を備え、
前記制御装置は、前記判定部に判定処理を実行させる判定指令部を備え、
前記判定指令部は、前記作業機械が前記作業領域内に位置していない場合には、前記判定部に判定処理を実行させない、
現場監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の現場監視装置であって、
前記判定指令部は、前記作業機械が前記作業領域外から前記作業領域内へと移動した場合に、前記判定部に判定処理を実行させる、現場監視装置。
【請求項6】
請求項3に記載の現場監視装置であって、
前記作業領域の前記境界のうちから、前記仕切り物体を配置すべき前記境界を選択するための情報の入力を受け付ける境界選択装置を備える、現場監視装置。
【請求項7】
請求項1に記載の現場監視装置であって、
前記警告装置は、作業機械に搭載されるか、または作業現場に配置される、
現場監視装置。
【請求項8】
請求項1に記載の現場監視装置であって、
前記仕切り物体検出装置は、物体を検出する物体検出装置であり、
前記制御装置は、前記仕切り物体を識別するための情報を記憶する、仕切り情報保持部を備える、
現場監視装置。
【請求項9】
請求項1に記載の現場監視装置であって、
前記警告は、前記未配置境界を識別するための情報を含む、
現場監視装置。
【請求項10】
請求項1に記載の現場監視装置と、作業機械とを備える、現場監視システムであって、
前記作業機械は、操作レバーと、前記操作レバーの操作量を検出する操作量検出装置とを備え、
前記制御装置は、
前記操作量が所定の閾値以下である状態が所定時間以上継続した後、前記操作量が所定の閾値を上回った場合に、前記判定部に判定処理を実行させる判定指令部
を備える、
現場監視システム。
【請求項11】
請求項1に記載の現場監視装置と、作業機械とを備える、現場監視システムであって、
前記作業機械は、操作レバーを備え、
前記作業機械は、前記操作レバーの操作によって操作可能な操作可能状態、および、前記操作レバーの操作によっては操作不可能な作業待機状態のいずれかにあることができ、
前記制御装置は、前記作業機械が前記作業待機状態から前記操作可能状態へと遷移した場合に、前記判定部に判定処理を実行させる判定指令部を備える、現場監視システム。
【請求項12】
請求項1に記載の現場監視装置と、作業機械とを備える、現場監視システムであって、
前記作業機械は、
操作レバーと、
前記操作レバーの操作量を検出する操作量検出装置と、
アクチュエータのスプールに印加されるパイロット圧を制御する、パイロット圧制御弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記操作量に基づいて、前記パイロット圧制御弁に対する出力値を決定する、操作量出力演算部と、
前記パイロット圧制御弁に対する制御指令を出力する出力部と、
前記制御指令に応じて、前記パイロット圧制御弁を駆動する電流を生成する、電流生成部と、
を備え、
前記出力部は、
前記未配置境界が存在しないか、または、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が所定の出力上限値以下である場合には、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値に基づいて前記制御指令を出力し、
前記未配置境界が少なくとも1つ存在し、かつ、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が前記所定の出力上限値を上回っている場合には、所定の出力上限値に基づいて前記制御指令を出力する、
現場監視システム。
【請求項13】
請求項1に記載の現場監視装置と、作業機械とを備える、現場監視システムであって、
前記作業機械は、
操作レバーと、
前記操作レバーの操作量を検出する操作量検出装置と、
可動部と、
複数の動作方向に前記可動部を移動させるアクチュエータと、
前記作業機械の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記アクチュエータの前記動作方向に対応する方向にスプールを移動させるために、前記スプールの両側にそれぞれ印加されるパイロット圧を制御する、複数のパイロット圧制御弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記操作量に基づいて、各前記パイロット圧制御弁に対する出力値を決定する、操作量出力演算部と、
各前記パイロット圧制御弁に対する制御指令を出力する出力部と、
前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が、前記可動部を前記未配置境界に近づく方向に移動させるものであるか否かを、前記操作レバーの操作方向と、前記姿勢とに基づいて判定する、出力制限決定部と、
前記制御指令に応じて、前記パイロット圧制御弁を駆動する電流を生成する、電流生成部と、
を備え、
前記出力部は、
前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が前記可動部を前記未配置境界に近づく方向に移動させるものではないか、または、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が所定の出力上限値以下である場合には、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値に基づいて前記制御指令を出力し、
前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が前記可動部を前記未配置境界に近づく方向に移動させるものであり、かつ、前記操作量出力演算部によって決定された前記出力値が所定の出力上限値を上回っている場合には、所定の出力上限値に基づいて前記制御指令を出力する、
現場監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現場監視装置および現場監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、工事現場等の作業現場において、作業機械と移動する障害物等との接触を未然に防ぐよう監視するための構成が知られている。具体例として、特許文献1および2に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1には、人を含む障害物と作業機械との接触を防ぐため、作業機械が障害物を検知し、障害物と作業機械の上部旋回体との位置関係に応じて旋回動作を制限する仕組みが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、作業機械等に人が近づくことを禁止する侵入禁止区域(以下、作業領域)の監視装置について記載されている。特許文献2によれば、作業領域を識別するための可搬可能な物体(以下、仕切り)で囲まれた作業領域の監視装置において、認識していた仕切りが検出できなくなること、または侵入を許可しない人が作業領域内で検出された場合、侵入者を警告する仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-199989号公報
【文献】特開2017-4184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、現場監視を行うべき領域を適切に設定することができないという課題があった。この課題は、とくに時々刻々と作業領域を含めた作業環境が変化する状況下において顕著となる。
【0007】
たとえば特許文献1の技術は、移動する他の機械や人が作業機械と接触しうる距離になって初めて動作するため、現場監視を行うべき領域を予め設定することができず、障害物が多い作業現場では作業機械の作業を頻繁に中断させる恐れがある。
【0008】
また、特許文献2の技術では、作業領域に応じて適切な位置に予めカラーコーン等を配置することが前提となっている。このため、カラーコーンが適切に配置されていない場合や、作業領域が時々刻々と変化する場合には対応できない。
【0009】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、現場監視を行うべき領域を適切に設定することができる現場監視装置および現場監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る現場監視装置の一例は、
警告を出力する警告装置と、
仕切り物体の位置を検出する仕切り物体検出装置と、
仕切り物体を配置すべき境界を表す情報の入力を受け付ける境界入力装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
各前記境界について、当該境界が、当該境界に対応する位置に前記仕切り物体が配置されている配置済境界であるか、または、当該境界に対応する位置に前記仕切り物体が配置されていない未配置境界であるかを判定する、判定部と、
前記未配置境界が少なくとも1つ存在する場合に、前記警告装置に前記警告を出力させる、警告内容決定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る現場監視装置および現場監視システムによれば、現場監視を行うべき領域を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態1に係る現場監視装置の構成を示すシステムブロック図。
図2】実施例1に係る作業環境の例。
図3図2における座標系の定義例。
図4】警告装置が出力する警告の例。
図5】実施例2に係る作業機械の構成。
図6】実施例2に係る現場監視システムの構成を示すシステムブロック図。
図7図6の現場監視システムが実行する処理の例を説明するフローチャート。
図8図7のステップ411において動作制限を設定する処理の例を説明するフローチャート。
図9図7のステップ411における未配置境界に対する可動部の運動の例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施例を、添付図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る現場監視装置の構成を示すシステムブロック図である。現場監視装置は、作業領域の境界を監視し、仕切り物体(三角コーン等)が配置されていない場合に警告を出力するための装置である。現場監視装置は、作業領域入力装置101と、周辺物体検出装置102と、制御装置103と、警告装置104とを備える。制御装置103は、仕切り情報保持部105と、作業領域境界演算部106と、運用環境判定部107と、警告内容決定部108とを備える。
【0014】
作業領域入力装置101は、作業領域の入力を受け付ける。作業領域とは、現場監視を行うべき領域を意味し、たとえば現場作業等が行われる地形的領域を表す。また、本実施例では、作業領域入力装置101は、これらの境界のうち、少なくとも仕切り物体を配置すべき境界を表す情報の入力を受け付ける、境界入力装置として機能する。
【0015】
図2に、実施例1に係る作業環境の例を示す。作業領域504の内部に、作業機械501が配置されている。作業領域504は多角形であり、図2の例では頂点A,B,C,Dによって画定される長方形である。このため図2には4つの境界が示されており、それぞれ、辺AB,BC,CD,DAの線分として定義される。また、図2には作業機械501を基準とした前後左右方向が示されている。
【0016】
図2の例では作業領域は2次元形式で表され、各境界は線分に対応するが、作業領域を3次元形式で表してもよく、その場合には各境界が面分に対応してもよい。3次元形式で表す場合には、たとえば辺ABに対応する境界は、辺ABおよびその鉛直上方向の領域を含む面分とすることができる。
【0017】
図3は、図2における座標系の定義例を示す。図3の例では、座標系の原点は頂点Dと一致し、X軸は辺CDと平行であり、頂点Cのある方向を正とする。また、Y軸は辺DAと平行であり、頂点Aのある方向を正とする。
【0018】
また、座標系の定義方法は任意である。図3の例では、作業現場に対して固定された座標系(作業現場座標系)を用いているが、作業機械501の車体に対して固定された座標系(車体座標系)を用いてもよいし、他の座標系を用いてもよい。さらに、図3の例では2次元座標を用いているが、3次元座標を用いてもよく、その場合にはZ軸は鉛直上方向を正としてもよい。
【0019】
各境界を表す情報は、たとえば境界が線分である場合には、境界の両端の位置(たとえば2次元座標値)を表す情報を含む。具体例として、頂点Aの位置は座標(0,d)であり、頂点Bの位置は座標(w,d)であり、頂点Cの位置は座標(w,0)であり、頂点Dの位置は座標(0,0)である。ただしdおよびwはいずれも正の実数である。この場合には、辺ABについて、その両端の位置が、{(0,d),(w,d)}として作業領域入力装置101に入力される。他の辺についても同様である。
【0020】
なお、現実的には作業領域504は平面ではなく高さを有する立体的な空間であり、各境界は線分ではなく鉛直方向に延びる面分であるが、実施例1ではこれらをすべて水平面に投影した図形上で(すなわち2次元座標で)表すことができるものとする。なお、座標を3次元で表すようにしてもよい。
【0021】
作業機械501は、作業領域504の外部に出ずに動作する。このため、人等(人および障害物等を含む。以下同じ)が作業領域504の外部にいる間は、人等と作業機械501とが接触する可能性はないものとする。
【0022】
これらの境界は、仕切り物体を配置すべき境界と、その必要のない境界とに分類される。ただし、境界の少なくとも1つは、仕切り物体を配置すべき境界である。図2の例では、辺ABおよび辺BCは作業員通路502に面しており、人等が自由に通過可能な境界である。このような境界は、人等が誤って立ち入る可能性があるので、これを防ぐために仕切り物体を配置すべき境界である。一方、辺CDおよび辺DAには壁503が存在しており、この壁503が人等の立ち入りを阻むので、仕切り物体を配置する必要はない。各境界が仕切り物体を配置すべき境界であるか否かは、状況に応じて現場監視装置の使用者等が適宜決定可能である。
【0023】
図2の例では、3つの仕切り物体512が配置されている。仕切り物体512aは頂点Bに配置され、仕切り物体512bは辺BC上に配置され、仕切り物体512cは頂点Cに配置されている。仕切り物体の構成は任意であるが、たとえば公知の三角コーンを用いてもよい。
【0024】
図2の例では、仕切り物体512は辺BC上には適切に設置されているが、辺ABの中央周辺には配置されておらず、不適切と考えられる。そこで、本実施例に係る現場監視装置は、辺ABについて仕切り物体512が配置されていないことを検出し、警告することにより仕切り物体512の適切な配置を促す。
【0025】
周辺物体検出装置102は、作業現場周辺に配置された仕切り物体512を検出する。周辺物体検出装置102は、たとえば画像認識技術を用いて構成することができ、具体例としてはステレオカメラとGNSS(Global Navigation Satellite System)とを組み合わせて構成することができる。または、測距技術(LIDAR等)、RF技術(RFIDタグ等)を用いて構成することができる。
【0026】
周辺物体検出装置102は、特定の仕切り物体512のみを検出する、仕切り物体検出装置として構成されてもよい。その場合には仕切り情報保持部105は省略してもよい。または、周辺物体検出装置102は、仕切り物体512に限らず多様な物体を検出する物体検出装置として構成されてもよい。その場合には、多様な物体のうちから仕切り物体512を識別するための情報が、仕切り情報保持部105に記憶されていてもよい。仕切り物体512を識別するための情報の例としては、仕切り物体512の形状、色、等が挙げられる。このような仕切り情報保持部105を用いることにより、仕切り物体512として用いる物体の形状、色、等が柔軟に選定可能となる。
【0027】
制御装置103は、現場監視装置の動作を制御する。制御装置103は、たとえば演算手段および記憶手段を備える公知のコンピュータとしての構成を有する。制御装置103の記憶手段には、制御装置103の動作を規定するプログラムが記憶されていてもよい。その場合には、制御装置103の演算手段がこのプログラムを実行することにより、制御手段が本明細書に記載される機能を実現してもよい。制御装置103が複数のコンピュータから構成される場合には、そのそれぞれが上述の構成を有してもよい。
【0028】
制御装置103の配置場所は任意である。作業機械501に搭載されてもよいし、作業現場に固定されて設置されてもよいし、持ち運び可能に構成されてもよい。また、複数の場所に分散して配置されてもよい。
【0029】
警告装置104は、警告を出力する。警告は、たとえば作業領域504の境界に仕切り物体512が適切に配置されていないことを示す情報を含む。警告装置104の配置場所は任意である。たとえば作業機械501に搭載されてもよいし、作業現場の作業者が携帯してもよいし、作業現場に配置されてもよい。
【0030】
図4に、警告装置104が出力する警告の例を示す。この例では、警告は、モニタ等の表示装置における画面表示である。この例では、各境界の位置が表示されるとともに、辺ABに対応する境界に仕切り物体512が存在しないことが示されており、これによって、表示装置を見た使用者は、仕切り物体512が適切に配置されていないことを知ることができる。
【0031】
警告装置104は、作業機械501に搭載される場合には、作業機械501のオペレータ向けのモニタとして構成することができる。作業者が携帯する場合には、情報端末のモニタとして構成することができる。作業現場に配置する場合には、所定場所に固定設置することができる。このように警告装置104を配置することにより、警告を確実に伝達することができる。出力される警告の態様は任意であり、たとえば表示装置による記号、図形またはメッセージの表示を含んでもよいし、音声出力装置による警告音またはメッセージの再生を含んでもよいし、通信装置による電子的信号の送信を含んでもよい。
【0032】
仕切り情報保持部105は、上述のように、仕切り物体512を識別するための情報を記憶していてもよい。
【0033】
作業領域境界演算部106は、作業領域の境界のうちから、仕切り物体512を配置すべき境界を抽出する。たとえば図2の例では、作業領域504の境界である辺AB,BC,CD,CDのうちから、仕切り物体512を配置すべき境界として辺ABおよび辺BCを抽出する。
【0034】
作業領域境界演算部106を備えることにより、現場監視装置の使用者は、境界をより柔軟に定義することができる。たとえば、作業領域として長方形ABCDを入力した後に、壁が存在する辺CDおよび辺DAを除外するよう指定することができる。
【0035】
ここで、仕切り物体512を配置すべき境界とそうでない境界とを区別するために作業領域境界演算部106が必要とする情報は、任意の構成で提供することができる。たとえば、現場監視システムは施工計画を表す情報を記憶していてもよく、施工計画には壁503の位置を含んでもよく、その場合には、作業領域境界演算部106は施工計画に基づいて自動的に壁503の位置を取得することができる。あるいは、現場監視装置の使用者が、各辺に壁が存在するか否かを指定してもよい。図2の例では、辺CDおよび辺DAには壁が存在しているため、これらの境界に仕切り物体512を配置する必要はないと判断される。
【0036】
運用環境判定部107は、仕切り物体512を配置すべき境界のそれぞれについて、当該境界に対応する位置に仕切り物体512が配置されているか否かを判定する、判定部として機能する。以下、本明細書において、ある境界に対応する位置に仕切り物体512が配置されている場合には、その境界を「配置済境界」と称し、そうでない場合(すなわちある境界に対応する位置に仕切り物体512が配置されていない場合)には、その境界を「未配置境界」と称する場合がある。
【0037】
以下は、境界および仕切り物体512の位置を2次元座標で表す場合の例であるが、3次元座標で表す場合にも適宜拡張可能である。たとえば、単にZ座標を無視し、XY座標のみで演算を行ってもよい。
【0038】
ここで、判定基準は任意に設計可能であるが、たとえば、その境界の両端近傍(たとえば両端から所定距離内)に、それぞれ仕切り物体512が存在するか否かを基準としてもよい。この所定距離は当業者または現場監視装置の使用者が任意に設定可能である。
【0039】
図2の例では、辺ABについて、頂点A近傍には仕切り物体512が存在しないので、辺ABは未配置境界であると判定される。一方、辺BCについて、頂点B近傍には仕切り物体512aが存在しており、かつ、頂点C近傍には仕切り物体512cが存在しているので、辺BCは配置済境界であると判定される。(なお、辺CDおよび辺DAは、上述のように仕切り物体512を配置すべき境界ではないので、本実施例における運用環境判定部107の処理対象外である。)
【0040】
また、このような境界両端近傍の仕切り物体512に加え、両端以外の位置にある仕切り物体512を考慮するよう構成してもよい。たとえば、両端近傍に仕切り物体512が配置されていることに加え、さらに両端近傍を除く位置に仕切り物体512が配置されている場合に、その境界を配置済境界であると判定するように構成してもよい。
【0041】
この「両端近傍を除く位置」(以下、簡明のため単に「中央付近」と略記する)の具体的な判定方法は、任意に設計可能であるが、たとえば次のようにすることができる。まず、すべての仕切り物体512のうち、いずれかの境界の端部近傍に存在するものをすべて除外する。残る仕切り物体512のそれぞれについて、最も距離が近い境界を特定する。たとえば図2の仕切り物体512bの場合には、最も距離が近い境界は辺BCとなる。そして、その仕切り物体512がその境界から所定距離内に位置しているか、または作業領域504の外側方向に位置していれば、その境界の両端近傍を除く位置にその仕切り物体512が配置されていると判定される。
【0042】
このような判定方法によれば、両端近傍の仕切り物体512aおよび512bと、中央付近の仕切り物体512cとで、異なる判定基準を用いることができる。すなわち、両端近傍の仕切り物体512aおよび512bは、両端近傍に配置される必要があるが、中央付近の仕切り物体512cは、両端までの距離は問わず、また領域外側に離れた位置であってもよい。ただし、上述の基準では、この中央付近の仕切り物体512cは、領域内側に入り込んだ位置にあってはならないということになる。このように、両端では厳密な判定を行い、中央付近では安全側に余裕を持たせた判定とすることができる。
【0043】
警告内容決定部108は、未配置境界が少なくとも1つ存在する場合に、警告装置104に警告を出力させる。警告の内容はたとえば図4に示すものであり、この例では未配置境界を識別するための情報を含んでいる。すなわち、図4のような表示により、辺ABは未配置境界であるが、他の境界はそうではないということが識別可能である。このような警告内容とすると、仕切り物体512を配置すべき場所を迅速に把握できる。
【0044】
以上説明するように、本発明の実施例1に係る現場監視装置によれば、作業領域の境界に、既知の物体である仕切りが設置されているか否かが判定される。もし仕切りが設置されていない場合には警告が出力されるので、作業現場作業員に仕切りの設置を促すことができる。
【0045】
とくに、作業領域の境界を適宜入力することができ、これに基づいて仕切り物体512の監視を行うことができるので、現場監視を行うべき領域を適切に設定することができる。とくに、作業領域が時々刻々と変化する場合であっても、その都度新たな境界の情報を入力することにより対応可能である。
【0046】
実施例1では、作業現場に作業機械501が配置されていない状態であっても、現場監視装置は単独で機能することができる。しかしながら、現場監視装置と作業機械501とが現場監視システムを構成してもよい。
【0047】
[実施例2]
実施例2では、現場監視装置と作業機械501とが協働して現場監視システムを構成する。
図5に、実施例2に係る作業機械501の構成を示す。この例では作業機械501はショベルである。作業機械501は、バケット201、アーム202、ブーム203、キャブ204、上部旋回体205および下部走行体206を備える。また、図5には作業機械501を基準とした前後上下方向が示されている。図5の前後方向は図2の前後方向と対応する。キャブ204は上部旋回体205の一部として構成されてもよい。
【0048】
作業機械501は、操作レバーと、操作レバーの操作量を検出する操作量検出装置(たとえば図6に示す操作量検出装置301)とを備える。操作レバーはたとえばキャブ204に搭載されており、作業機械501のオペレータは、操作レバーを操作することによって複数のアクチュエータを複数の動作方向に操作することができる。具体的には、バケット201のクラウドおよびダンプ、アーム202のクラウドおよびダンプ、ブーム203の上げおよび下げ、上部旋回体205の右旋回および左旋回、下部走行体206の前進、後進、左折および右折、等を操作できる。
【0049】
作業機械501は、アクチュエータと、方向制御弁と、パイロット圧制御弁とを備える。アクチュエータはスプールを備え、複数の動作方向に作業機械501の可動部(たとえばバケット201)を移動させる。方向制御弁は、アクチュエータへの圧油の供給および排出を、スプール位置に応じて制御する。パイロット圧制御弁は、スプールに印加されるパイロット圧を制御する。
【0050】
操作レバーの操作方向は、アクチュエータの動作方向に対応し、操作レバーの傾きは、アクチュエータの動作方向に対応したパイロット圧に対応している。パイロット圧が大きいほど、方向制御弁のスプール位置が大きくずれ、スプール位置に対応した方向に、アクチュエータへ供給される圧油の流量が大きくなる。
【0051】
パイロット圧制御弁は、1つのアクチュエータに対して複数配置されてもよく、各パイロット圧制御弁は、アクチュエータの動作方向に対応する方向にスプールを移動させるために、スプールの両側(または両端)にそれぞれ印加されるパイロット圧を制御する。
【0052】
また、非作業中にオペレータが不用意に操作レバーに接触し、意図しない機械動作が発生することを防ぐため、作業機械501は、操作レバーの操作によっては動作しない状態に設定することができるものであってもよい。すなわち、作業機械501は、操作レバーの操作によって操作可能な操作可能状態、および、操作レバーの操作によっては操作不可能な作業待機状態のいずれかにあることができる。
【0053】
作業機械501は、操作レバーの操作を無効化するための所定の無効化操作が行われることに応じて、操作可能状態から作業待機状態へと遷移してもよい。たとえば、キャブ204にシャットオフレバーが搭載されてもよい。シャットオフレバーには、パイロット圧遮断位置と遮断解除位置の2つの位置があり、オペレータがパイロット圧遮断位置にシャットオフレバーを移動させた状態では、作業機械501は作業待機状態となり、操作レバーの操作が無効になる。一方、シャットオフレバーが遮断解除位置にある状態では、作業機械501は操作可能状態となり、操作レバーの操作に応じてショベルが動作する。
【0054】
図6は、実施例2に係る現場監視システムの構成を示すシステムブロック図である。現場監視システムは、操作量検出装置301と、パイロット圧制御弁302(この例では302aおよび302bの2つ)と、機械位置検出装置303と、作業待機状態検出装置304と、作業領域入力装置305と、境界選択装置306と、周辺物体検出装置307と、制御装置308と、警告装置309と、姿勢検出装置320と、方向制御弁330と、アクチュエータ331とを備える。
【0055】
制御装置308は、作業領域境界演算部310と、仕切り情報保持部311と、運用環境判定部312と、警告内容決定部313と、操作量出力演算部314と、出力部315と、電流生成部316と、判定指令部317と、出力制限決定部318とを備える。制御装置308は、現場監視システムの動作を制御する。制御装置308は、たとえば演算手段および記憶手段を備える公知のコンピュータとしての構成を有する。制御装置308の記憶手段には、制御装置308の動作を規定するプログラムが記憶されていてもよい。その場合には、制御装置308の演算手段がこのプログラムを実行することにより、制御手段が本明細書に記載される機能を実現してもよい。制御装置308が複数のコンピュータから構成される場合には、そのそれぞれが上述の構成を有してもよい。
【0056】
各構成要素の配置は任意であるが、たとえば、操作量検出装置301、機械位置検出装置303、作業待機状態検出装置304、姿勢検出装置320、パイロット圧制御弁302、方向制御弁330、およびアクチュエータ331は作業機械501に搭載される。また、たとえば、作業領域入力装置305、境界選択装置306、周辺物体検出装置307、および警告装置309は、作業現場に設置されて現場監視装置を構成する。なお実施例1と同様に、警告装置309の配置は任意に変更可能である。
【0057】
制御装置308は、たとえばその一部が作業機械501に搭載され、別の一部が現場監視装置の一部として作業現場に設置される。より具体的な例としては、操作量出力演算部314と、出力部315と、電流生成部316とが作業機械501に搭載され、作業領域境界演算部310と、仕切り情報保持部311と、運用環境判定部312と、警告内容決定部313と、判定指令部317と、出力制限決定部318とは作業現場に設置されて現場監視装置を構成する。
【0058】
なお、制御装置308が複数の場所に分散して設置される場合には、各要素間で情報の送受信を行うための通信ネットワーク、情報の授受を行うためのプログラム、等が設けられてもよい。これはたとえば公知の無線通信技術を用いて実現可能である。
【0059】
実施例2(図6)において、実施例1(図1)と同一の名称の構成要素は、同一の構成および同一の機能を備えていてもよい。すなわち、図6の作業領域入力装置305、周辺物体検出装置307、警告装置309、作業領域境界演算部310、仕切り情報保持部311、運用環境判定部312、および警告内容決定部313は、それぞれ、図1の作業領域入力装置101、周辺物体検出装置102、警告装置104、作業領域境界演算部106、仕切り情報保持部105、運用環境判定部107、および警告内容決定部108と同一の構成および同一の機能を備えていてもよい。また、さらに追加の機能を備えてもよく、たとえば作業領域境界演算部310、運用環境判定部312、警告内容決定部313は、制御装置308の他の構成要素と情報の送受信または授受を行うよう構成されてもよい。
【0060】
図7は、実施例2に係る現場監視システムが実行する処理の例を説明するフローチャートである。この処理は、仕切り物体512を配置すべき境界を表す情報の入力を、現場監視システムが受け付けることに応じて、ステップ401において開始される。
【0061】
たとえば図2および図3に関連して実施例1で説明したように、作業領域504の境界である辺AB,BC,CD,CDの情報が入力される。その後、境界選択装置306が、これらの辺のうちから、仕切り物体512を配置すべき境界(たとえば辺ABおよびBC)を選択するための情報の入力を受け付け、これを作業領域境界演算部310に送信する。この情報に応じ、作業領域境界演算部310は、辺AB,BC,CD,CDのうちから、仕切り物体512を配置すべき境界として、辺ABおよびBCを抽出する。
【0062】
ここでの情報入力作業は、作業機械501のオペレータが行ってもよいし、オペレータとは別の作業者等が、作業現場の作業環境に合わせて実施しても良い。
【0063】
境界選択装置306および作業領域境界演算部310を備えることにより、作業領域504の各境界と、それらのうちとくに仕切り物体512を配置すべき境界とを、区別して入力することができるので、境界をより柔軟に定義することができる。
【0064】
ただし、境界選択装置306を省略することも可能である。仮に境界選択装置306が設けられない場合には、作業領域境界演算部310は、作業領域504の境界がすべて仕切り物体512を配置すべき境界であるものとして抽出してもよい。
【0065】
続くステップ402~406は、判定指令部317によって実行される処理である。ステップ401で作業領域入力装置101により境界を表す情報が入力されることに応じて、判定指令部317は、運用環境判定部312に判定処理を実行させる。以下に説明するように、ステップ402~406により、様々な状況に応じて適切に判定処理を実行することができる。たとえば、仕切り物体512の設置を変更する頻度や、仕切り物体512が重要となる状況に合わせて、仕切り物体512の有無を判定することができる。これにより、無用に頻繁に判定が実施され、警告が頻発することでオペレータを煩わせるという事態を防ぐことができる。
【0066】
ステップ401の後、ステップ402において、現場監視システムは、作業機械501が作業領域504内に位置しているか否かを判定する。仕切り物体512が必要になるのは、作業領域504内で作業機械501が動作している間である。このため、作業領域504外に作業機械501が位置している場合には、仕切り物体512の有無を判定する必要がないと考えることもできる。ステップ402によれば、このような場合に不要な判定処理を省略することができる。
【0067】
作業機械501が作業領域504内に位置しているか否かの判定は、任意の方法で行うことができる。たとえば、現場監視システム(たとえば作業領域境界演算部310)は、各境界に垂直かつ作業領域504の内側方向を正とする法線ベクトルを算出してもよい。ここでは、辺ABに対して法線ベクトルNAB=(0,-1)が算出され、辺BCに対して法線ベクトルNBC=(-1,0)が算出される。このように、各境界に関する情報は、線分の一端の座標と、線分の他端の座標と、線分の法線ベクトルとの組で表すことができる。なお3次元座標を用いる場合には法線ベクトルも3次元で算出される。
【0068】
このように法線ベクトルを用いる場合には、判定方法の一例として次のような方法を用いることができる。まず、各境界について、作業機械501の位置から当該境界の中点までのベクトルと、当該境界の法線ベクトルとの内積を算出する。そして、各境界について内積の符号を判定する。すべての境界について内積が負(0である場合を含んでもよい)であれば、作業機械501は作業領域504内に位置していると判定される。一方、いずれかの境界について内積が正(0である場合を含んでもよい)であれば、作業機械501は作業領域504内に位置していないと判定される。
【0069】
この判定方法は一例であり、他の方法を用いてもよい。とくに、作業領域504が閉じた図形として入力されていれば、その内外を判定する方法は公知のアルゴリズム等を用いて適宜設計可能である。また、ステップ401で境界を表す情報を入力する際に、各境界の法線ベクトルも入力するよう構成してもよい。
【0070】
なお、本実施例のように作業領域504が作業現場に対して固定された座標系によって表される場合には、機械位置検出装置303が、座標系における作業機械501の位置を検出してもよい。機械位置検出装置303は、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite System)などを利用して車体位置を取得してもよい。一方、作業領域504が作業機械501との相対的位置関係によって定義されている場合には、作業機械501の位置は自明である場合があり、そのような場合には機械位置検出装置303は省略可能である。
【0071】
ステップ402において、作業機械501が作業領域504内に位置していないと判定された場合には、処理はステップ412に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312による判定処理(後述のステップ408)を実行させないことになる。そして、ステップ412において、現場監視システムは、警告および動作制限の解除を行う。すなわち、警告装置309によって出力されている警告を取り消す(すなわち警告が出力されていない状態とする)とともに、作業機械501の動作制限(ステップ411に関して後述)を解除する。たとえば、後述のステップ704における処理と同様の処理を実行する。
【0072】
一方、ステップ402において、作業機械501が作業領域504内に位置していると判定された場合には、ステップ403において、判定指令部317が、境界が変更されたか否かを判定する。たとえば、判定指令部317は作業領域入力装置305および境界選択装置306の出力を監視しており、ステップ403が前回実行された後に、作業領域504が変更されたか、または作業領域504のうち仕切り物体512を配置すべき境界が変更された場合には、境界が変更されたと判定する。
【0073】
境界が変更された場合には、処理は後述のステップ407に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312に判定処理(後述のステップ408)を実行させることになる。境界が変更された場合等には仕切り物体512の移動が必要になる場合があるが、そのような場合に確実に判定処理を実行(または再実行)させることができる。
【0074】
ステップ403において境界が変更されていないと判定された場合には、ステップ404において、判定指令部317が、操作量検出装置301によって検出された操作量に基づき、所定時間後の操作量増加があるか否かを判定する。たとえば、操作量が所定の閾値以下である状態(停止状態を含む)が所定時間以上継続しており、かつ、その後に操作量が所定の閾値(これら2種類の閾値は必ずしも同一でなくともよい)を上回った場合に、所定時間後の操作量増加があったと判定され、そうでない場合には、所定時間後の操作量増加はないと判定される。
【0075】
所定時間後の操作量増加があると判定された場合には、処理は後述のステップ407に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312に判定処理(後述のステップ408)を実行させることになる。このような処理によれば、小さく動作している状態またはゆっくりと動作している状態から、作業機械501がより大きくまたはより高速で動き始めるときに、仕切り物体512の有無が判定される。動作が小さいまたはゆっくりの作業機械501に作業者は近づきやすいことから、作業機械501が大きくまたは高速で動き始めた直後に作業者と接触する可能性が高くなるが、ステップ404の判定によりそのような場合に適切な警告を行うことができる。
【0076】
ステップ404において所定時間後の操作量増加がないと判定された場合には、判定指令部317は、ステップ405において、シャットオフレバーがパイロット圧遮断位置から遮断解除位置へと移動したか否かを判定する。すなわち、作業機械501が作業待機状態から操作可能状態へと遷移したか否かを判定する。より具体的な例としては、ステップ405が前回実行された際には作業機械501が作業待機状態にあり、かつ、ステップ405が今回実行された際に作業機械501が操作可能状態にある場合には、作業機械501が作業待機状態から操作可能状態へと遷移したと判定する。そうでない場合(すなわち、ステップ405が前回実行された際に作業機械501が操作可能状態にあったか、または、ステップ405が今回実行された際に作業機械501が作業待機状態にある場合)には、遷移していないと判定する。
【0077】
作業機械501が作業待機状態から操作可能状態へと遷移したと判定された場合には、処理は後述のステップ407に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312に判定処理(後述のステップ408)を実行させることになる。このような処理によれば、停止状態から作業機械501が動き始めるときに、仕切り物体512の有無が判定される。動作中の作業機械501よりも停止中の作業機械501に作業者は近づきやすいことから、作業機械501が動き始めた直後に作業者と接触する可能性が高くなるが、ステップ405の判定によりそのような場合に適切な警告を行うことができる。
【0078】
ステップ405において遷移していないと判定された場合には、判定指令部317は、ステップ406において、作業機械501が作業領域504外から作業領域504内へと移動したか否かを判定する。たとえば、ステップ406が前回実行された際には作業機械501が作業領域504外にあり、かつ、ステップ406が今回実行された際に作業機械501が作業領域504内にある場合には、作業機械501が作業領域504外から作業領域504内へと移動したと判定する。そうでない場合(ステップ406が前回実行された際に作業機械501が作業領域504内にあったか、または、ステップ406が今回実行された際に作業機械501が作業領域504外にある場合)には、移動していないと判定する。
【0079】
作業機械501が作業領域504外から作業領域504内へと移動したと判定された場合には、処理は後述のステップ407に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312に判定処理(後述のステップ408)を実行させることになる。このような処理によれば、すでに人等が存在する作業領域504に作業機械501が進入した時点で判定が行われるので、適切な時点で警告を行うことができる。
【0080】
一方、ステップ406において、作業機械501が作業領域504外から作業領域504内へと移動していないと判定された場合には、処理はステップ412に進む。この場合には、判定指令部317は、運用環境判定部312による判定処理(後述のステップ408)を実行させないことになる。そして、ステップ412において、現場監視システムは、上述のように警告および動作制限の解除を行う。
【0081】
なお、ステップ406では、作業機械501が作業領域504外から作業領域504内へと「初めて」移動したか否かを判定してもよい。すなわち、ステップ406から一度ステップ407へと分岐した後は、作業機械501の移動に関わらず、ステップ406からは常にステップ412へと分岐するようにしてもよい。
【0082】
このように、ステップ402~406によれば、判定指令部317が様々な条件に応じて運用環境判定部312に指示し、または指示を省略するので、柔軟な判定処理が可能となる。とくに、無用に頻繁に判定が実施され、警告が頻発することでオペレータを煩わせるという事態を防ぐことができる。また、従来技術に比べて、作業対象の検出条件をより詳細に定義できるため、監視環境の変化による悪影響を小さくすることができる。
【0083】
ステップ407において、周辺物体検出装置307が、仕切り物体512の位置を検出する。この際に、周辺物体検出装置307は、仕切り情報保持部311から必要な情報を取得してもよい。
【0084】
次に、ステップ408において、運用環境判定部312が、各前記境界について、当該境界が、配置済境界(対応する位置に仕切り物体512が配置されている境界)であるか、または、未配置境界(対応する位置に仕切り物体512が配置されていない境界)であるかを判定する。この判定は、たとえば実施例1の運用環境判定部107と同様に行われる。
【0085】
ステップ408において、すべての境界が配置済境界である場合には、処理はステップ412に進む。ステップ412において、現場監視システムは、上述のように警告および動作制限の解除を行う。
【0086】
未配置境界が少なくとも1つ存在する場合には、処理はステップ409に進む。ステップ409において、運用環境判定部312は、未配置境界に関する情報を抽出し、これを警告内容決定部313と出力制限決定部318に出力する。たとえば、辺ABが未配置境界であると判定された場合には、頂点Aの座標と、頂点Bの座標と、法線ベクトルNABとの組が出力される。
【0087】
次に、ステップ410において、警告内容決定部313が、警告装置309によって出力するための警告内容を決定する。これによって、たとえば図4のような警告が出力される。
【0088】
次に、ステップ411において、作業機械501の動作制限が設定される。動作制限とは、少なくとも一部のアクチュエータの動作に対する制限である。動作制限が設定されることにより、作業機械501のオペレータに対し、仕切り物体512の設置を強く促すことができる。
【0089】
作業機械501において、どのアクチュエータの動作を制限するか、各アクチュエータのどの動作を制限するか、各動作をどのように制限するかは、当業者が適宜設計可能であるが、一例を次に説明する。
【0090】
姿勢検出装置320が、作業機械501の姿勢を検出する。姿勢検出装置320は、所定の機構情報(たとえば事前に記憶される)と、ポテンショメータやIMU(Inertial Measurement Unit)などのセンサから取得する情報とに基づき、各関節の角度等を演算することができる。作業機械501の姿勢とは、たとえば1つ以上の可動部の位置によって表される。可動部とは、たとえば図5のバケット201であるが、これに限らず、上部旋回体205(またはその特定部位、たとえば後端)を含んでもよい。
【0091】
また、作業機械501の姿勢は、可動部を支持する部位の状態を含んでもよい。たとえば、図5のアーム202、ブーム203、上部旋回体205、下部走行体206、等の位置および向きを含んでもよい。
【0092】
操作量出力演算部314が、操作レバーの操作量に基づいて、各パイロット圧制御弁に対する出力値を決定する。そして、出力制限決定部318は、この出力値が、可動部を未配置境界に近づく方向に移動させるものであるか否かを判定する。この判定は、操作レバーの操作方向と、作業機械501の姿勢とに基づいて実行することが可能である。本実施例では、可動部が未配置境界に近づく方向に移動する場合に、作業機械501の動作制限が設定される。
【0093】
ここで、未配置境界に対する可動部の移動に基づいて動作制限を設定するための具体的処理は、当業者が適宜設計することができるが、一例を図8および図9を用いて説明する。
図8は、ステップ411において動作制限を設定する処理の例を説明するフローチャートである。図9は、未配置境界902に対する可動部901の運動の例を示す図である。可動部901は、図9の例では図5のバケット201であるが、同様の処理がアーム202、ブーム203、上部旋回体205および下部走行体206についても適用される。
【0094】
図8の処理は、ステップ701において開始される。ステップ701では、出力制限決定部318が、未配置境界のうち可動部901から最も近い境界を特定する。たとえば、機械位置検出装置303および姿勢検出装置320から取得される情報に基づいて、可動部901の座標を演算し、各未配置境界との距離を演算する。これによって、可動部901から最も近い距離にある未配置境界が、未配置境界902として特定される。なお、この距離の計算は2次元で行われてもよいし、3次元で行われてもよい。3次元で行う場合には、境界は各辺から鉛直方向に立ち上がる面分とすることができる。
【0095】
ステップ702において、出力制限決定部318は、ステップ701で特定された境界に対する可動部901の速度を算出する。速度はたとえば2次元または3次元のベクトルで表され、所定の固定情報(車体機構固有の情報等)と、操作レバーの操作量と、作業機械501の姿勢とに基づいて算出可能である。
【0096】
図9の例では、アームダンプとブーム上げという2種類の動作が複合した動作を想定しており、可動部901の速度は、複数のアクチュエータ動作によって発生する速度ベクトルの合成ベクトルとして表される。たとえば、アームダンプを行う操作レバーの操作量からアームの角速度を推定し、この角速度と姿勢情報とに基づいて、アームダンプ動作が可動部901に与える速度ベクトルVaを算出する。一方、ブーム上げを行う操作レバーの操作量からブーム上げの回転角速度を推定し、この回転角速度と姿勢情報とに基づいて、ブーム上げ動作が可動部901に与える速度ベクトルVbを算出する。これらの速度ベクトルVaおよびVbを合成した速度ベクトルVが、可動部901の速度ベクトルとなる。
【0097】
ステップ703において、可動部901が未配置境界902に近づく方向に移動するか否かを判定する。これはたとえばベクトルの内積を用いて判定可能である。具体例として、可動部901の速度ベクトルVと、未配置境界902の法線ベクトルN(ただし作業領域504の内側を向いているもの)との内積が負であれば、可動部901は未配置境界902に近づく方向に移動すると判定され、内積が0以上であれば、可動部901は未配置境界902に近づく方向には移動しないと判定される。
【0098】
このように、出力制限決定部318は、操作量出力演算部314によって決定された出力値が、可動部901を未配置境界902に近づく方向に移動させるものであるか否かを、操作レバーの操作方向と、姿勢とに基づいて判定する。
【0099】
可動部901が未配置境界902に近づく方向に移動しない場合には、ステップ704において、出力制限決定部318は、可動部901の当該動作に関わるすべてのアクチュエータについて、動作制限を解除する。これは、たとえば出力上限値を所定値Pmax(たとえば当該アクチュエータの定格値または最大出力値)に設定することによって行われる。なおPmaxの値はパイロット圧制御弁ごとに異なってもよい。図9の例では、アームダンプ動作の出力はPamaxまで可能となり、ブーム上げ動作の出力はPbmaxまで可能となる。
【0100】
一方、可動部901が未配置境界902に近づく方向に移動する場合には、ステップ705において、出力制限決定部318は、可動部901の当該動作に関わるすべてのアクチュエータについて、動作制限を設定する。これは、たとえば出力上限値を所定値Plimit(ただし0≦Plimit<Pmax)に設定することによって行われる。なおPlimitの値はパイロット圧制御弁ごとに異なってもよい。図9の例では、アームダンプ動作は出力Palimit以下に制限され、ブーム上げ動作は出力Pblimit以下に制限される。
【0101】
このようにして、ステップ411において、動作制限が設定または解除される。出力部315は、ステップ704または705において決定された出力上限値に基づき、各パイロット圧制御弁に対する制御指令を、電流生成部316に出力する。とくに、操作量出力演算部314によって決定された出力値が可動部901を未配置境界902に近づく方向に移動させるものではないか、または、操作量出力演算部314によって決定された出力値が所定値Plimit以下である場合には、操作量出力演算部314によって決定された出力値に基づいて制御指令を出力する。一方、操作量出力演算部314によって決定された出力値が可動部901を未配置境界902に近づく方向に移動させるものであり、かつ、当該出力値が所定値Plimitを上回っている場合には、所定値Plimitに基づいて制御指令を出力する。電流生成部316は、この制御指令を受信し、制御指令に応じて、パイロット圧制御弁を駆動する電流を生成する。
【0102】
ここで、仮に作業領域504内に人等が存在している場合、人等は、可動部901と、最も近い未配置境界902との間にいる可能性が高い。本実施例によれば、可動部901が、最も近い未配置境界902に向かう速度を制限できるので、可動部901と人等との接触をより確実に防止することができる。
【0103】
[その他の変形例]
以上説明した実施例1および2において、以下のような変形を施すことができる。
実施例2において、ステップ411では可動部の移動方向に応じて動作制限を設定した。変形例として、動作制限は可動部の移動方向に関わらず設定されてもよい。より具体的には、未配置境界が存在する場合には、常に出力上限値を所定値Plimitとしてもよい。すなわち、この変形例において、出力部は、未配置境界が存在しないか、または、操作量出力演算部314によって決定された出力値がPlimit以下である場合には、その出力値に基づいて制御指令を出力し、一方で、未配置境界が少なくとも1つ存在し、かつ、操作量出力演算部314によって決定された出力値がPlimitを上回っている場合には、Plimitに基づいて制御指令を出力することになる。なお、この場合のフローチャートは特に独立した図としては示さないが、図8のステップ705のみによって構成することができる。
【0104】
実施例2において、一部の処理を省略すると実施例1に相当する構成となる。たとえば、図7におけるステップ401、407~410、412が実施例1の処理を構成する。
【0105】
実施例1および2では、作業領域入力装置101および305は、仕切り物体512を配置すべき境界のみならず、すべての境界を表す情報の入力を受け付ける。変形例として、作業領域入力装置は、仕切り物体を配置すべき境界のみについて入力を受け付けてもよい。この場合には、作業領域境界演算部106および310と、境界選択装置306とは省略可能である。
【0106】
警告の内容は図4のようなものに限らない。たとえば、境界を識別する情報を含まないものであってもよい。単に仕切り物体が適切に配置されていない旨を示すメッセージまたは警告音のみであっても、仕切り物体の配置の再確認を促すことができる。
【0107】
判定指令部は単一の構成要素として構成される必要はない。実施例2(図7)の例では単一の判定指令部317がステップ402~406すべての判定を行うが、変形例として、ステップ402~406それぞれ個別に対応して、各々独立した判定指令部が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
101,305…作業領域入力装置(境界入力装置)
102,307…周辺物体検出装置(仕切り物体検出装置、物体検出装置)
103,308…制御装置
104,309…警告装置
105,311…仕切り情報保持部
106,310…作業領域境界演算部
107,312…運用環境判定部(判定部)
108,313…警告内容決定部
201…バケット(可動部)
202…アーム(可動部)
203…ブーム(可動部)
204…キャブ
205…上部旋回体(可動部)
206…下部走行体(可動部)
301…操作量検出装置
302(302a,302b)…パイロット圧制御弁
303…機械位置検出装置
304…作業待機状態検出装置
306…境界選択装置
314…操作量出力演算部
315…出力部
316…電流生成部
317…判定指令部
318…出力制限決定部
320…姿勢検出装置
330…方向制御弁
331…アクチュエータ
501…作業機械
502…作業員通路
503…壁
504…作業領域
512(512a,512b,512c)…仕切り物体
901…可動部
902…未配置境界
AB,BC…辺(仕切り物体を配置すべき境界)
CD,DA…辺(境界)
N…境界の法線ベクトル
V…速度ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9