(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】平型導体用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20221004BHJP
H01R 12/79 20110101ALI20221004BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R12/79
(21)【出願番号】P 2019186768
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】水澤 翔一
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 寛之
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-015126(JP,A)
【文献】特開2017-045546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる平型導体が接続される平型導体用電気コネクタであって、
上記平型導体が前方へ向けて挿入されるように少なくとも後方へ向けて開放された空間として受入部が形成されたハウジングと、
前後方向に対して直角な方向を端子配列方向として、上記ハウジングに配列保持される複数の端子と、
前後方向及び端子配列方向の両方向に直角なコネクタ厚さ方向で平型導体の挿入位置に対して一方側に設けられ、前後方向に沿った姿勢で上記ハウジングからの上記平型導体の抜出を阻止する閉位置と、閉位置における姿勢よりも角度をもった姿勢で上記ハウジングからの上記平型導体の抜出を許容する開位置との間で移動可能な可動部材とを備える平型導体用電気コネクタにおいて、
上記ハウジングの一部あるいは該ハウジングに取り付けられた部材により形成され、閉位置にある可動部材の移動を規制可能な規制部を有し、
上記可動部材は、
端子配列方向で上記平型導体に形成された被係止部と対応する位置に係止腕部を有し、
上記係止腕部は、端子配列方向で上記端子の配列範囲外の位置に、
上記閉位置で前後方向に延びコネクタ厚さ方向に弾性変位可能な弾性腕部と、上記平型導体
の上記被係止部に対して該平型導体の抜出方向で係止可能な係止部と、上記規制部に対して上記抜出方向で当接可能な被規制部とを有しており、
上記規制部及び上記被規制部の少なくとも一方は、後方へ向かうにつれてコネクタ厚さ方向での他方側へ傾斜する斜面を有しており、
上記平型導体の挿入が完了した状態では、上記係止部が上記平型導体の被係止部の後方位置で該被係止部に対して上記抜出方向で係止可能に位置し、
上記平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときには、上記平型導体の被係止部が上記係止部に係止するとともに、上記被規制部が上記規制部に当接することにより、少なくともコネクタ厚さ方向での上記他方側へ向けた反力を上記規制部から受けることを特徴とする平型導体用電気コネクタ。
【請求項2】
上記係止部は、上記弾性腕部の後部からコネクタ厚さ方向での他方側へ向けて突出して形成されており、
上記被規制部は、上記弾性腕部の後部に形成されているか、あるいは、該弾性腕部の後部から端子配列方向に突出して形成されていることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項3】
上記規制部及び上記被規制部が、上記斜面を有しており、
上記平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときに、上記規制部と上記被規制部とが上記斜面同士で接面するようになっていることとする請求項1又は請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項4】
上記被規制部は、端子配列方向での上記係止部と同じ位置に形成されていることとする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体が接続される平型導体用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる平型導体用電気コネクタは、例えば、特許文献1に開示されたコネクタが知られている。特許文献1には、回路基板を実装面に対して平行な一方向である前後方向を挿抜方向として平型導体が挿抜されるコネクタが開示されている。該コネクタは、前後方向に対して直角な一方向を長手方向として延びるハウジングと、該長手方向を端子配列方向として上記ハウジングに配列保持される複数の端子と、後述する閉位置と開位置の間で回動可能に上記ハウジングで支持される可動部材とを有している。
【0003】
ハウジングは、平型導体を受け入れるために後方へ開口した受入部が形成されており、端子配列方向での両端に位置する側壁には、可動部材の後述の被規制部を収容するための規制部が、上方に開口する凹部として形成されている。
【0004】
可動部材は、略板状をなしており、回路基板の実装面に対して略平行な姿勢で平型導体の挿入を許容するとともに挿入後の抜けを防止する閉位置と、該実装面に対して角度をなし平型導体の抜出を許容する開位置との間で回動可能となっている。該可動部材は、閉位置にあるときの後端側位置に、端子配列方向で外方へ突出する軸部を有しており、該軸部を回動中心として回動する。また、該可動部材は、端子配列方向での端子配列範囲の外側に、上記閉位置で後方へ向けて延びる係止腕部を有している。該係止腕部は、閉位置にて上下方向(実装面に対し直角をなし該実装面から離れる方向を「上方」とし、近づく方向を「下方」とする)に弾性変位可能な弾性腕部と、該弾性腕部の後部から下方へ向けて突出する係止部と、上記係止部の側面から端子配列方向で外方へ向けて突出する被規制部とを有している。上記係止部は、上記閉位置にて、平型導体の両側縁に形成された被係止部に対して後方から係止可能となっている。該係止部の前面、すなわち係止面は、前後方向に対して直角な平面をなしている。
【0005】
特許文献1のコネクタでは、可動部材が閉位置にあるときに、平型導体がハウジングの受入部に前方へ向けて挿入され、その挿入過程において、平型導体はその前端で可動部材の係止部に当接して弾性腕部を上方へ弾性変位させて前方へ進行する。該平型導体の挿入が完了すると、係止腕部が自由状態に戻り、係止部が平型導体の被係止部よりも後方に位置し、該係止部の前面(前後方向に対して直角な平面)で被係止部に対して係止可能に位置することにより、該平型導体の不用意な抜出が防止される。また、上記閉位置では、可動部材の被規制部がハウジングの規制部内に収容され、該規制部の後縁部(被規制部よりも後方位置で上下方向に延びる縁部)に対して前方から当接可能に位置する。この結果、平型導体の不用意な抜出がより確実に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のコネクタでは、平型導体の挿入が完了した状態で、すなわち、可動部材が閉位置にある状態で平型導体が後方へ向けて不用意に引かれたとき、平型導体の被係止部が可動部材の係止部に対して前方から係止するとともに、可動部材の被規制部がハウジングの規制部に対して前方から当接する。このとき、仮に、上記被係止部が上記係止部に繰り返し係止することにより該係止部の下端が摩耗して、該係止部の前面に、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面が形成されることがあった場合、係止部が平型導体の後方へ向けた力、すなわち抜出力を上記斜面で受けると、上記係止部には、後方へ向けた分力と上方へ向けた分力が生じる。その結果、この上方へ向けた分力により上記弾性腕部が上方へ弾性変形して、上記被係止部が上方へ移動して上記係止部から外れることも有り得る。また、上記弾性腕部の弾性変形に伴い、仮に上記被規制部も上方へ移動して上記規制部外へ外れたときには、平型導体がコネクタから抜出されることも考え得る。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、コネクタからの平型導体の抜出を良好に防止できる平型導体用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る平型導体用電気コネクタは、前後方向に延びる平型導体が接続される平型導体用電気コネクタであって、上記平型導体が前方へ向けて挿入されるように少なくとも後方へ向けて開放された空間として受入部が形成されたハウジングと、前後方向に対して直角な方向を端子配列方向として、上記ハウジングに配列保持される複数の端子と、前後方向及び端子配列方向の両方向に直角なコネクタ厚さ方向で平型導体の挿入位置に対して一方側に設けられ、前後方向に沿った姿勢で上記ハウジングからの上記平型導体の抜出を阻止する閉位置と、閉位置における姿勢よりも角度をもった姿勢で上記ハウジングからの上記平型導体の抜出を許容する開位置との間で移動可能な可動部材とを備える。
【0010】
かかる平型導体用電気コネクタにおいて、本発明では、上記ハウジングの一部あるいは該ハウジングに取り付けられた部材により形成され、閉位置にある可動部材の移動を規制可能な規制部を有し、上記可動部材は、端子配列方向で上記端子の配列範囲外の位置に、上記平型導体に形成された被係止部に対して該平型導体の抜出方向で係止可能な係止部と、上記規制部に対して上記抜出方向で当接可能な被規制部とを有しており、上記規制部及び上記被規制部の少なくとも一方は、後方へ向かうにつれてコネクタ厚さ方向での他方側へ傾斜する斜面を有しており、上記平型導体の挿入が完了した状態では、上記係止部が上記平型導体の被係止部の後方位置で該被係止部に対して上記抜出方向で係止可能に位置し、上記平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときには、上記平型導体の被係止部が上記係止部に係止するとともに、上記被規制部が上記規制部に当接することにより、少なくともコネクタ厚さ方向での上記他方側へ向けた反力を上記規制部から受けることを特徴としている。
【0011】
本発明では、平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときに、可動部材の係止部に平型導体の被係止部が係止するとともに、ハウジングの一部あるいはハウジングに取り付けられた部材により形成された規制部に可動部材の被規制部が当接する。規制部及び被規制部の少なくとも一方は後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面を有しているので、被係止部は、少なくともコネクタ厚さ方向での上記他方側へ向けた反力を規制部から受ける。したがって、仮に可動部材の係止部の前面(係止面)が平型導体の被係止部との係止により削れたとしても、被規制部が規制部から上記他方側へ向けた反力を受けているので、平型導体が後方へ向けて引かれても、規制部ひいては係止部がコネクタ厚さ方向で一方側へ向けて移動することはない。この結果、規制部と被規制部との当接状態及び係止部と被係止部との係止状態が良好に維持され、平型導体の不用意な抜出が防止される。
【0012】
本発明において、上記可動部材は、端子配列方向で上記平型導体の上記被係止部と対応する位置に係止腕部を有し、上記係止腕部は、上記閉位置で前後方向に延びコネクタ厚さ方向に弾性変位可能な弾性腕部と、上記係止部と、上記被規制部とを有しており、上記係止部は、上記弾性腕部の後部からコネクタ厚さ方向での他方側へ向けて突出して形成されており、上記被規制部は、上記弾性腕部の後部に形成されているか、あるいは、該弾性腕部の後部から端子配列方向に突出して形成されていることとしてもよい。
【0013】
本発明において、上記規制部及び上記被規制部が、上記斜面を有しており、上記平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときに、上記規制部と上記被規制部とが上記斜面同士で接面するようになっていることとしてもよい。規制部と被規制部とが斜面同士で接面することにより、規制部と被規制部との当接可能な面積を大きく確保でき、両者をより確実に当接させることができる。その結果、コネクタ厚さ方向での他方側へ向けた規制部からの反力が被規制部に作用しやすくなる。
【0014】
本発明において、上記被規制部は、端子配列方向での上記係止部と同じ位置に形成されていることしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、規制部及び被規制部の少なくとも一方が後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面を有しており、平型導体の挿入が完了した状態で該平型導体に対して後方への抜出力が作用したときに、被規制部が規制部に当接することにより、被規制部が規制部から少なくともコネクタ厚さ方向での他方側へ向けた反力を受けるようになっているので、規制部ひいては係止部がコネクタ厚さ方向での一方側へ向けて移動することが抑制される。したがって、規制部と被規制部との当接状態及び係止部と被係止部との係止状態が良好に維持され、平型導体の不用意な抜出が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】挿入前の平型導体とともに示す本発明の第一実施形態のコネクタの斜視図である。
【
図2】
図1のコネクタを、可動部材を上方に分離して示す斜視図である。
【
図3】
図3の可動部材を前方かつ下方から見た斜視図である。
【
図4】平型導体挿入前のコネクタの断面を示し、(A)は第二端子の位置、(B)は可動部材の係止腕部の位置、(C)は可動部材の被規制部の位置での縦断面図である。
【
図5】平型導体挿入後のコネクタの断面を示し、(A)は第二端子の位置、(B)は可動部材の係止腕部の位置、(C)は可動部材の被規制部の位置での縦断面図である。
【
図6】平型導体挿入後に平型導体が後方に引かれたときのコネクタの断面を示し、(A)は第二端子の位置、(B)は可動部材の係止腕部の位置、(C)は可動部材の被規制部の位置での縦断面図である。
【
図7】
図6の状態から平型導体がさらに後方に引かれたときのコネクタの断面を示し、(A)は第二端子の位置、(B)は可動部材の係止腕部の位置、(C)は可動部材の被規制部の位置での縦断面図である。
【
図8】平型導体抜出直前のコネクタの断面を示し、(A)は第二端子の位置、(B)は可動部材の係止腕部の位置、(C)は可動部材の被規制部の位置での縦断面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態における可動部材の係止腕部の位置での断面を示し、(A)は平型導体挿入後、(B)は(A)の状態から平型導体が後方に引かれたとき、(C)は(B)の状態から平型導体がさらに後方に引かれたときの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る平型導体用電気コネクタ1(以下「コネクタ1」という)を平型導体Fとともに示した斜視図である。コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に実装され、該実装面に対して平行な前後方向(X軸方向)を挿抜方向として、平型導体Fが挿抜可能に接続されるようになっている。該コネクタ1は、平型導体Fが接続されることにより、回路基板と平型導体Fとを電気的に導通させる。本実施形態では、X軸方向(前後方向)にて、X1方向を前方、X2方向を後方とする。また、回路基板の実装面に平行な面内(XY平面内)で前後方向(X軸方向)に対して直角をなすY軸方向をコネクタ幅方向とし、回路基板の実装面に対して直角なZ軸方向(上下方向)をコネクタ厚さ方向とする。
【0019】
平型導体Fは、前後方向(X軸方向)に延びコネクタ幅方向(Y軸方向)を幅方向とする帯状をなし、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)がコネクタ幅方向に配列され形成されている。該回路部は、平型導体Fの絶縁層内で埋設されて前後方向に延びており、平型導体Fの前端位置まで達している。また、上記回路部は、その前端側部分だけが平型導体Fの上面に露呈しており、後述するコネクタ1の第一端子20及び第二端子30と接触可能となっている。
【0020】
また、平型導体Fは、上記前端側部分の両側縁に切欠部F2が形成されており、該切欠部F2の前方に位置する耳部F3の後端縁は、コネクタ1の後述する係止部45Aと係止可能な被係止部F3Aとして機能する(
図5(B)、
図6(B)及び
図7(B)参照)。
【0021】
コネクタ1は、電気絶縁材製のハウジング10と、該ハウジング10に一体モールド成形により配列保持される複数の金属製の第一端子20及び第二端子30(
図2参照)と、後述する閉位置と開位置との間でハウジング10に対して回動可能な電気絶縁材製の可動部材40と、ハウジング10に一体モールド成形により保持される金具50とを備えており、平型導体Fが後方から挿入接続されるようになっている。以下、第一端子20と第二端子30とを区別する必要がない場合には、両端子を「端子20,30」と総称する。
【0022】
コネクタ1の詳細な構成の説明に先立って、まず、コネクタ1に対する平型導体Fの挿入及び抜出の動作の概要について説明しておく。コネクタ1の可動部材40は、平型導体Fの挿入を許容するとともに抜出を阻止する閉位置と、上記平型導体Fの抜出を許容する開位置との間で回動することにより移動可能となっている。コネクタ1への平型導体Fの挿入前においては、
図1に示されているように、コネクタ1の可動部材40は、回路基板の実装面(図示せず)及びハウジング10に対して平行で前後方向に沿った姿勢をなす閉位置に位置している。平型導体Fは、その前端縁で端子20,30と当接して該端子20,30の当接部分を弾性変位せしめて、所定位置(正規の挿入位置)までの挿入を可能とする。
【0023】
平型導体Fが挿入接続された後においても、コネクタ1の使用状態では、可動部材40は閉位置に維持されており、後述するように、可動部材40の係止部45Aと平型導体Fの被係止部F3Aとが係止可能に位置することにより、平型導体Fの後方(X2方向)への移動が阻止され、平型導体Fの不用意な抜出が防止される(
図5(B)、
図6(B)及び
図7(B)参照)。また、コネクタ1の不使用時となる平型導体Fの抜出時には、可動部材40が回動されて閉位置における姿勢よりも角度をもった起立姿勢をなす開位置(
図8(A)~(C)参照)にもたらされることにより、平型導体Fの被係止部F3Aに対する可動部材40の係止部45Aの係止状態が解除されて、平型導体Fの後方への移動、すなわち平型導体Fの抜出が許容される。本実施形態では、閉位置から開位置への可動部材40の回動角はほぼ90度をなしている。
【0024】
本実施形態では、可動部材40はコネクタ幅方向に延びる回動軸線まわりに回動するだけで閉位置と開位置との間を移動するようになっているが、可動部材40の移動形態はこれに限られず、例えば、スライド移動を伴って回動するようになっていてもよい。
【0025】
コネクタ1の構成の説明に戻る。
図2は、
図1のコネクタについてハウジング10から閉位置の姿勢の可動部材40を上方に分離した状態で示す斜視図である。
図3は、
図2の可動部材40を前方かつ下方から見た斜視図である。
図4は、平型導体挿入前のコネクタの断面を示し、(A)は第二端子30の位置、(B)は可動部材40の係止腕部45の位置、(C)は可動部材の被規制部としての被規制突部45Bの位置での縦断面図である。
【0026】
図2に示されているように、ハウジング10は、上方から見て、コネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする四角枠状をなしており、互いに平行をなしコネクタ幅方向に延びる前方枠部10Aおよび後方枠部10Bと、コネクタ幅方向で対称に位置し前方枠部10A及び後方枠部10Bの端部同士を連結して前後方向に延びる一対の側方枠部10Cとを有している。
【0027】
前方枠部10Aは、
図2に見られるように、回路基板(図示せず)に面して下部をなしコネクタ幅方向で端子配列範囲にわたって延びる前方基部11と、該前方基部11から上方へ垂立するとともにコネクタ幅方向で端子配列範囲にわたって形成されている前壁12とを有している(
図4(A)参照)。前方枠部10Aの前方基部11及び前壁12は、第一端子20及び第二端子30を一体モールド成形により配列保持している。前壁12の上面は、閉位置にある可動部材40の下面が当接可能に対向しており(
図4(A)参照)、可動部材40の下方への過剰な変位を規制するようになっている。後方枠部10Bは、コネクタ幅方向で端子配列範囲にわたって延びており、上記前方枠部10Aと相俟って第二端子30を一体モールド成形により配列保持している。
【0028】
側方枠部10Cは、
図2に見られるように、前方基部11及び後方枠部10Bのコネクタ幅方向での端部同士を連結する板状の側方基部14と、コネクタ幅方向での該側方基部14よりも外側に位置し該側方基部14に連結されている側壁15と、該側壁15よりもコネクタ幅方向で内方(端子配列範囲側)に位置し側方基部14から上方へ向けて突出する側方突出部16とを有している。
【0029】
側壁15は、
図1及び
図2に見られるように、略後半部が他部よりもコネクタ幅方向内方へ突出しており、該略後半部の前後方向中間域には、後述するように、可動部材40の後述の第二外軸部47Bを収容する軸収容部18が上下方向へ向けて貫通するとともにコネクタ幅方向内方へ開放されて形成されている。
【0030】
側方突出部16は、
図2に見られるように、側方基部14の前端寄りに位置する前方規制突部16Aと該前方規制突部16Aよりも後方に位置する後方規制突部16Bとを有している。可動部材40が閉位置にもたらされたときに、
図4(C)に見られるように、前方規制突部16Aと後方規制突部16Bとの間の空間には、該可動部材40の後述する被規制突部45Bが収容されるようになっている。閉位置にて、前方規制突部16Aはその後面によって被規制突部45Bの前方への移動を規制可能となっている。また、後方規制突部16Bは、
図4(C)に見られるように、上記空間へ向けて前方へ突出する規制部16B-1を有している。該規制部16B-1の下部の前面は、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する規制面16B-1Aが形成されている。後述するように、規制部16B-1は、可動部材40の被規制突部45Bに対して規制面16B-1Aで当接することにより、閉位置にある可動部材40の後方への移動及び開位置へ向けた回動を規制可能となっている。
【0031】
側壁15の後端側(X2側)には、
図2に見られるように、ハウジング10を上下方向(Z軸方向)に見たときに、可動部材40の後述の第二外軸部47Bを含む範囲に、該第二外軸部47Bを収容する軸収容部18が形成されている。該軸収容部18は、既述したように、側壁15の略後半部の前後方向中間域を上下方向へ向けて貫通するとともにコネクタ幅方向内方へ開放された空間として形成されている。
【0032】
ハウジング10には、受入部17A、収容凹部17B及び底孔部17Cをもつ空間17が形成されている(
図8(A)をも参照)。すなわち、
図8(A)を参照すると判るように、上記空間17は、前方へ向けて挿入された平型導体Fを受け入れるための受入部17Aと、該受入部17Aの上方に位置し閉位置にある可動部材40を収容するための収容凹部17Bと、受入部17Aの下方に位置する底孔部17Cとを有している。
【0033】
受入部17Aは、上下方向(Z軸方向)では、後方枠部10Bよりも上方かつ閉位置の可動部材40の後述の覆板部42よりも下方に位置し、前後方向(X軸方向)ではコネクタ1の後端からハウジング10の前壁12の後面にわたり、コネクタ幅方向(Y軸方向)では、二つの側方突出部16同士間にわたって形成されている。該受入部17Aは、後方へ向けて開放されているとともに上方にも開放されていて、平型導体Fの前端側部分を後方から受入可能となっている。また、該受入部17Aが後方のみならず上方にも開放されていることにより、該受入部17Aの後部にて平型導体Fを斜め姿勢でも受入可能となっている。
【0034】
収容凹部17Bは、受入部17Aの上方に位置し該受入部17Aと連通し、上記コネクタ幅方向で二つの側壁15同士間に形成されている。該収容凹部17Bは、上方へ向けて開放されていて、閉位置にもたらされた可動部材40を収容可能となっている。上記収容凹部17Bは、前後方向では、後述する第二端子30の第二接触腕部31の後端近傍の位置からハウジング10の前端までにわたって形成されている。本実施形態では、収容凹部17Bが受入部17Aの上方に位置することとしたが、この「上方に位置する」とは、収容凹部17Bが受入部17Aと上下方向で一部重複して形成されている状態をも含む。
【0035】
また、底孔部17Cは、ハウジング10の四角枠状部分(前方枠部10A、後方枠部10B及び側方枠部10Cから成る部分)で囲まれるとともに上下方向に貫通した空間で形成されている。
【0036】
本実施形態では、端子は互いに形状が異なる2種の第一端子20及び第二端子30とから成っている。
図2に見られるように、第一端子20と第二端子30とはコネクタ幅方向を端子配列方向として交互に配列されている。
【0037】
第一端子20は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)での寸法を端子幅方向とする帯状の圧延金属板を板厚方向に屈曲して作られている。第一端子20は、前後方向(X軸方向)に延び上下方向(Z軸方向)に弾性変位可能な第一接触腕部21と、該第一接触腕部21よりも下方に位置し前方へ延びる第一接続部22と、上下方向に延び第一接触腕部21の前端と第一接続部22の後端とを連結する第一連結部(図示せず)とを有し、全体として略クランク状をなしている。
【0038】
第一接触腕部21は、後方へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延びており、後端寄りの位置にて下方へ向けて突出するように屈曲形成された第一接触部21Aを有している。平型導体Fがコネクタ1へ挿入されたときには、上方に向けた第一接触腕部21の弾性変位のもとで、該第一接触部21Aが平型導体Fの対応回路部と接触可能となっている。
【0039】
第一接続部22は、その前端側部分がハウジング10の前方枠部10Aから前方へ延出しており、その下面で回路基板(図示せず)の回路部と半田接続されるようになっている。また、第一接続部22の後端側部分及び第一連結部(図示せず)は、ハウジング10の前方枠部10Aによって一体モールド成形で保持されている。
【0040】
第二端子30は、
図2に見られるように、第一端子20と同様に、コネクタ幅方向での寸法を端子幅方向とする帯状の圧延金属板を板厚方向に屈曲して作られており、前後方向に延び上下方向に弾性変位可能な第二接触腕部31と、該第二接触腕部31よりも下方位置で前後方向に延び前端部及び後端部でハウジング10により保持される被保持腕部32と、上下方向に延び第二接触腕部31及び被保持腕部32の前端同士を連結する湾曲した第二連結部33と、該被保持腕部32から後方へ向けて延びる第二接続部34が形成されている。
【0041】
第二端子30は、第二接触腕部31、被保持腕部32及び第二連結部33を有することで後方(X2方向)へ向けて開口した横U字状部分を形成しており(
図4(A)をも参照)、後述するように、該横U字状部分で後方からの平型導体Fの受入れを可能としているとともに、平型導体Fの受入時に第二接触腕部31が弾性変位することにより該第二接触腕部31と被保持腕部32とで平型導体Fを挟圧可能としている。
【0042】
第二接触腕部31は、
図4(A)に見られるように、第二連結部33の上端から後方へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延びており、後端寄りの位置にて下方へ向けて突出するように屈曲形成された第二接触部31Aを有している。第二接触部31Aは、第一端子20の第一接触部21Aよりも後方に位置しており、平型導体Fの対応回路部と接続されるようになっている。
【0043】
被保持腕部32は、第二連結部33の下端から後方に向け第二接触腕部31と並行して延びていてハウジング10の後方枠部10Bの位置まで達している。該被保持腕部32の後端寄り部分は、ハウジング10の後方枠部10Bによって一体モールド成形で保持されている。また、該被保持腕部32の前端寄りの部分及び第二連結部33は、前方枠部10Aによって一体モールド成形で保持されている。つまり、被保持腕部32は、
図4(A)に見られるように、ハウジング10によって両持ち梁状に保持されている。
【0044】
第二接続部34は、
図4(A)に見られるように、後方枠部10Bから後方へ向けて延出しており、その下面で回路基板(図示せず)の回路部と半田接続されるようになっている。
【0045】
可動部材40は、該可動部材40を閉位置の姿勢で示す
図1に見られるように、前後方向(X軸方向)とコネクタ幅方向(Y軸方向)にひろがる略板状をなす本体部41と、可動部材40が閉位置にあるときの本体部41の後端側(X2側)に形成された突条部46、外軸部47及び内軸部48とを有している。
【0046】
本体部41は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向での端子配列範囲にわたって延び閉位置にて端子20,30を上方から覆う覆板部42(
図1及び
図3をも参照)と、該覆板部42の両側外方位置で後方へ向けて延びる端腕部43と、覆板部42と端腕部43の前端同士を連繋する連繋部44と、連繋部44から後方へ向けて片持ち梁状に延びる係止腕部45とを有している。
【0047】
端腕部43は、
図2に見られるように、可動部材40が閉位置の姿勢にあるときの後端部(開位置にあるときの下端部)が、外軸部47と内軸部48とを連結している。
【0048】
係止腕部45は、可動部材40が閉位置にある
図4(B)に見られるように、前後方向に延び上下方向に弾性変位可能な弾性腕部45Cと、該弾性腕部45C後端部から下方へ向けて突出する係止部45Aと、弾性腕部45Cの後端寄り位置で該弾性腕部45C及び係止部45Aから端子配列方向で外方に突出する被規制突部45Bとを有している(
図3をも参照)。該係止部45Aは、
図4(B)に示されているように、可動部材40が閉位置にあるとき、ハウジング10の受入部17A内へ上方から突入している。また、該係止部45Aは、
図4(B)に示されているように、可動部材40が閉位置にある状態で、平型導体Fの挿入過程にて該平型導体Fを前方へ案内するための案内面45A-1を後部に有しているとともに、平型導体Fの挿入後にて該平型導体Fに形成された被係止部F3Aに対して後方から係止可能な係止面45A-2を前部に有している(
図5(B)をも参照)。
【0049】
案内面45A-1は、
図4(B)に見られるように、可動部材40が閉位置にあるとき、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面をなしている。平型導体Fの挿入過程にて耳部F3の前端部が案内面45A-1に当接すると、その当接力を受けて弾性腕部45Cが上方へ向けて容易に弾性変位する。
【0050】
また、係止面45A-2は、
図4(B)に見られるように、可動部材40が閉位置にあるとき、コネクタ幅方向に見て、傾斜することなく上下方向に延びている。換言すると、該係止面45A-2は、閉位置にて前後方向に対して直角な面をなしている。したがって、閉位置にて係止面45A-2が平型導体Fの被係止部F3Aの後方に位置し、該被係止部F3Aに対して後方から確実に係止して、平型導体Fの不用意な抜けを防止することができる。
【0051】
被規制突部45Bの前面および後面は、
図4(C)に見られるように、ハウジング10の規制部16B-1の規制面16B-1Aと同じ向きそして同じ角度をもって、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面をなしている。該被規制突部45Bは、可動部材40が閉位置にもたらされたときに、ハウジング10の前方規制突部16Aと後方規制突部16Bとの間の空間に進入し、該前方規制突部16Aに対して後方から当接可能に位置し、前方への移動の規制を受けるようになっている。また、該被規制突部45Bの後面は、上記規制面16B-1Aに対して接面して当接可能な被規制面45B-1として形成されている。可動部材40が閉位置にあるときに、該被規制面45B-1が規制面16B-1Aに接面することにより、可動部材40の後方への移動及び開位置への回動が規制されるようになっている。また、該被規制突部45Bは、コネクタ幅方向に見て係止部45Aの一部を含む範囲に形成されており、該係止部45Aの強度を補強する役割も担っている。
【0052】
突条部46は、コネクタ幅方向にて第一端子20と対応する位置に間隔をもって複数形成されており、
図1ないし
図3に見られるように、可動部材40が閉位置にあるときの覆板部42の後端部の下面から突出するとともに後方へ向けて延びている。各突条部46は、
図3に見られるように、閉位置にあるときの該突条部46の略前半部の下面(受入部17A側の面)から没した第一溝部46Aが形成されている。該第一溝部46Aは、可動部材40が閉位置にある状態でコネクタ幅方向及び前後方向で第一端子20の第一接触腕部21の後端に対応する位置に形成されており、該閉位置にて該第一接触腕部21の後端を収容する。
【0053】
互いに隣接し合う突条部46同士間、換言すると、コネクタ幅方向にて第二端子30の第二接触腕部31の後端に対応する位置には、
図1ないし
図3に見られるように、閉位置での前後方向で突条部46の全域にわたって延びる第二溝部46Bが形成されている(
図4(A)をも参照)。
図4(A)に見られるように、該第二溝部46Bは、可動部材40が閉位置にもたらされたときに第二接触腕部31の後端を収容するようになっている。
【0054】
可動部材40の外軸部47は、
図2及び
図3に見られるように、回動軸線まわりの外周面が非円筒面をなしていて、閉位置における端腕部43の後端部の外面からコネクタ幅方向で外方へ向けて延びる第一外軸部47Aと、該第一外軸部47Aよりも細く該第一外軸部47Aからコネクタ幅方向で外方へ向けて延びる第二外軸部47Bとを有している。
【0055】
外軸部47の第一外軸部47A及び第二外軸部47Bのうち第二外軸部47Bはハウジング10の軸収容部18に収容されている。第二外軸部47Bは、軸収容部18内にて金具50の後述の移動規制部51の下方に位置しており、上方へ向けた所定量以上の移動の規制を該移動規制部51から受けるようになっている。
【0056】
内軸部48は、可動部材40が閉位置にある状態で、コネクタ幅方向にて係止腕部45を含む範囲にわたって該係止腕部45の後方側に位置し、端腕部43の後端部とコネクタ幅方向での最も外側に位置する突条部46とを連結している。該内軸部48は、回動軸線まわりの外周面が非円筒面をなしている。
【0057】
金具50は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向でのハウジング10の軸収容部18及び可動部材40の第二外軸部47Bに対応する位置で、ハウジング10の側壁15によって一体モールド成形により保持されている。該金具50は、圧延金属板製の帯条片をその板厚方向に屈曲して形成されており、その圧延面(板面)がコネクタ幅方向に対して平行をなした姿勢で側壁15に保持されている。
【0058】
金具50は、前後方向に延びる移動規制部51と、該移動規制部51の前端で屈曲されて下方に延びハウジング10に保持される前方被保持部(図示せず)と、該移動規制部51の後端からクランク状に延びハウジング10に保持される後方被保持部(図示せず)と、該後方被保持部から後方へ向けてハウジング10外に延出する固定部52とを有している。
【0059】
移動規制部51は、
図6(C)及び
図7(C)に見られるように、該ハウジング10の軸収容部18内に位置し、側壁15の上端寄り位置で前後方向に延びている。該移動規制部51は、可動部材40の第二外軸部47Bの上方に位置し、移動規制部51の下面(板面)で第二外軸部47Bに対向して当接可能となっており、この結果、ハウジングからの可動部材40の上方への抜けが防止されている。
【0060】
固定部52は、側壁15から後方へ直状をなして延出している。該固定部52は、
図2に見られるように、その下面がハウジング10の下面とほぼ同じ高さに位置しており、回路基板の実装面上の対応部に半田接続により固定されるようになっている。
【0061】
次に、
図4ないし
図8に基づいて、コネクタ1と平型導体Fとの接続動作を説明する。
【0062】
まず、コネクタ1の第一端子20の第一接続部22そして第二端子30の第二接続部34を回路基板(図示せず)の対応回路部に半田接続するとともに、金具50の固定部52を回路基板の対応部に半田接続する。該第一接続部22、該第二接続部34及び該固定部52の半田接続により、コネクタ1が回路基板に取り付けられる。
【0063】
次に、
図4(A)~(C)に示されるように、可動部材40を閉位置にもたらした状態のコネクタ1の後方に、平型導体Fを回路基板(図示せず)の実装面に沿って前後方向に延びるように位置させる(
図1をも参照)。次に、平型導体Fを前方へ向けてコネクタ1の受入部17Aに挿入する。
【0064】
受入部17Aへの平型導体Fの挿入過程において、平型導体Fの前端は、まず、第二端子30の第二接触腕部31の第二接触部31Aに当接してその当接力の上方向分力で該第二接触部31Aを押し上げることにより上方へ弾性変位させる。さらに平型導体Fが挿入されると、該平型導体Fの前端は、第一端子20の第一接触腕部21の第一接触部21Aに当接して該第一接触部21Aを押し上げることにより上方へ弾性変位させる。
【0065】
平型導体Fの挿入が完了した状態においても、第一端子20の第一接触腕部21及び第二端子30の第二接触腕部31は弾性変位したままである(
図5(A)参照)。この結果、第一接触部21A及び第二接触部31Aが平型導体Fの回路部にそれぞれ接圧をもって接触した状態が維持される。
【0066】
また、受入部17Aへの平型導体Fの挿入過程において、平型導体Fの幅方向で両側端寄りに位置する耳部F3が可動部材40の係止腕部45に形成された係止部45Aの案内面45A-1に当接そして摺接し、平型導体Fが上下方向での正規の挿入位置に案内される。また、耳部F3が案内面45A-1との当接力の上下方向分力で弾性腕部45Cを上方へ向けて弾性変位させて平型導体Fの挿入を許容する位置にもたらす。
【0067】
さらに平型導体Fが挿入されて、耳部F3が係止部45Aの位置を通過すると、弾性腕部45Cは弾性変位量を減ずるように下方へ向け変位して自由状態に戻り、平型導体Fの切欠部F2内に突入する。この結果、
図5(B)に見られる平型導体Fの挿入完了状態で、平型導体Fの被係止部F3Aが係止部45Aの係止面45A-2の前方で該係止面45A-2に係止可能に位置し、平型導体Fの後方への抜出が阻止される。なお、弾性腕部45Cが完全に自由状態に戻ることは必須ではない。例えば、弾性腕部45Cが若干の弾性変位量を残した状態で、係止部45Aが平型導体Fの切欠部F2内に突入して被係止部F3Aと係止可能に位置するような構成にすることも可能である。
【0068】
図5(A)~(C)に示される状態、すなわちコネクタ1との接続状態にある平型導体Fが不用意に後方へ引かれたとき、
図6(A)~(C)に見られるように、平型導体Fは若干後方へ移動するが、平型導体Fの被係止部F3Aが可動部材40の係止部45Aの係止面45A-2に前方から係止することにより(
図6(B)参照)、それ以上の後方への移動が阻止される。また、被係止部F3Aと係止面45A-2との係止と同時に、
図6(C)に見られるように、可動部材40の被規制突部45Bがハウジング10の規制部16B-1に前方から当接する。具体的には、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面をなす被規制突部45Bの被規制面45B-1が、該被規制面45B-1と同じ角度で傾斜する斜面をなす規制部16B-1の規制面16B-1Aに接面する。したがって、被規制面45B-1は、該被規制面45B-1が規制面16B-1Aに対して前方から与える当接力(換言すると後方へ向かう当接力)に対する反力を、前方及び下方へ向けた分力として規制面から受ける。そして、この前方へ向けた反力が係止部45Aと被係止部F3Aとの係止状態の維持に寄与する。
【0069】
図6(A)~(C)の状態、すなわち被係止部F3Aが係止部45Aに係止するとともに被規制突部45Bが規制部16B-1に当接した状態で、平型導体Fがさらに強く後方へ引かれると(
図7(A)~(C)参照)、
図7(C)に見られるように、被規制突部45Bは、規制部16B-1から受ける下方へ向けた反力(分力)により、被規制面45B-1を規制面16B-1Aに摺接させながら下方へ向けて移動する。この被規制突部45Bの下方への移動は、
図7(B)に見られるように、弾性腕部45Cが下方へ向けて弾性変位することにより許容される。このように弾性腕部45Cが弾性変位する結果、係止部45Aも下方へ移動して平型導体Fの切欠部F2内へさらに深く進入することとなる。
【0070】
このように本実施形態では、平型導体Fが後方へ引かれたときに可動部材40の被規制突部45Bが下方へ向けた反力(分力)をハウジング10の規制部16B-1から受けるようになっているので、仮に係止部45Aの係止面45A-2が平型導体Fの被係止部F3Aとの係止により削れることがあったとしても、規制部16B-1ひいては係止部45Aが上方へ向けて移動することはない。この結果、規制部16B-1と被規制突部45Bとの当接状態及び係止部45Aと被係止部F3Aとの係止状態が良好に維持され、平型導体Fの不用意な抜出が良好に防止される。
【0071】
また、本実施形態では、弾性腕部45Cが弾性変位して係止部45Aが下方へ移動する結果、該係止部45Aはその根元部分(閉位置にて弾性腕部45Cに連結されている上端側部分)で被係止部F3Aに係止することが可能となる。本実施形態では、閉位置にて係止部45Aは下方へ向かうにつれて前後方向寸法が小さくなる形状をしているが(
図7(B)参照)、該係止部45Aにおいて前後方向寸法が大きい上記根元部分で被係止部F3Aに係止することにより、十分な強度をもって平型導体Fの抜出力に対抗できる。
【0072】
本実施形態では、規制部16B-1と被規制突部45Bの両方に斜面、すなわち規制面16B-1A及び被規制面45B-1が形成されており、これらの斜面同士で接面するようになっているので、規制部16B-1と被規制突部45Bとの当接可能な面積を大きく確保でき、両者をより確実に当接させることができる。その結果、下方へ向けた規制部16B-1からの反力が被規制突部45Bに作用しやすくなる。ただし、斜面が規制部と被規制部の両方に形成されることは必須ではなく、下方へ向けた反力を生じさせることができるのであれば、斜面が規制部と被規制部のいずれか一方にのみ形成されていることとしてもよい。
【0073】
図5(A)~(C)に示される状態、すなわちコネクタ1との接続状態にある平型導体Fをコネクタ1から意図して抜出する際には、閉位置にある可動部材40を回動させて、
図8(A)~(C)に示される開位置へもたらす。可動部材40が開位置にあるときには、該可動部材40の係止腕部45の係止部45Aは平型導体Fの切欠部F2から上方へ外れて位置する。つまり、平型導体Fの被係止部F3Aに対する係止部45Aの係止状態が解除されて、平型導体Fの後方への抜出が許容される。そして、この状態で、平型導体Fを後方へ引くと、該平型導体Fを容易にコネクタ1から抜出することができる。
【0074】
<第二実施形態>
第一実施形態では、可動部材40の係止腕部45に設けられる被規制部は係止部45Aよりもコネクタ幅方向で外方へ突出する被規制突部45Bとして形成されていて、コネクタ幅方向で係止部45Aと異なる位置にあることとしたが、第二実施形態では、被規制部がコネクタ幅方向で係止部と同じ位置に形成されており、この点で第一実施形態と異なる。
【0075】
以下、
図9(A)~(C)に基づいて第二実施形態について説明する。本実施形態に係るコネクタは、規制部及び被規制部を除き、第一実施形態のコネクタ1と同じ構成であるので、ここでは規制部及び被規制部の構成を中心に説明し、第一実施形態と同様の部分には、第一実施形態における符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
図9(A)~(C)は、可動部材40の係止腕部45の位置でのコネクタ1の断面を示し、(A)は平型導体Fの挿入後、(B)は(A)の状態から平型導体Fが後方に引かれたとき、(C)は(B)の状態から平型導体Fがさらに後方に引かれたときの縦断面図である。
【0077】
本実施形態では、被規制部45Dはコネクタ幅方向で係止部45Aと同位置にて係止腕部45に形成されている。
図9(A)~(C)に見られるように、被規制部45Dは、閉位置での弾性腕部45Cの後端部で係止部45Aよりも上方に位置しており、後方に向かうにつれて下方へ向けて傾斜する斜面をなす被規制面45D-1を有している。
【0078】
また、ハウジング10には、
図9(A)~(C)に見られるように、コネクタ幅方向での被規制部45Dと同位置、かつ、前後方向での被規制部45Dの後方位置に、該被規制部45Dと当接可能な規制部19が形成されている。該規制部19の前面は、被規制部45Dの被規制面45D-1と同じ向きそして同じ角度で傾斜する斜面をなす規制面19Aとして形成されている。
【0079】
平型導体Fがコネクタ1に接続された状態(
図9(A)参照)で、該平型導体Fが後方へ向けて不用意にひかれると、第一実施形態と同様に、平型導体Fの被係止部F3Aが可動部材40の係止部45Aの係止面45A-2に対して前方から係止する(
図9(B)参照)。また、このとき、
図9(B)に見られるように、可動部材40の被規制部45Dがハウジング10の規制部19に前方から当接する。具体的には、被規制部45Dの被規制面45D-1が規制部19の規制面19Aに接面する。したがって、被規制面45D-1は、該被規制面45D-1が規制面19Aに対して前方から与える当接力(換言すると後方へ向かう当接力)に対する反力を、前方及び下方へ向けた分力として規制面から受ける。この前方へ向けた反力が係止部45Aと被係止部F3Aとの係止状態の維持に寄与する。
【0080】
さらに、
図9(B)の状態で、平型導体Fがさらに強く後方へ引かれると、
図9(C)に見られるように、被規制部45Dは、規制部19から受ける下方へ向けた反力(分力)により、被規制面45D-1を規制面19Aに摺接させながら下方へ向けて移動する。この被規制部45Dの下方への移動は、
図9(C)に見られるように、弾性腕部45Cが下方へ向けて弾性変位することにより許容される。この結果、第一実施形態と同様、この弾性腕部45Cの弾性変位により、係止腕部45の係止部45Aも下方へ移動して平型導体Fの切欠部F2内へさらに深く進入し、平型導体Fの不用意な抜出が良好に防止される。
【0081】
第一及び第二実施形態では、規制部はハウジングに形成されていることとしたが、これに替えて、該ハウジングに取り付けられた部材に形成されていてもよい。
【0082】
また、第一及び第二実施形態では、可動部材に弾性変位可能な係止腕部が設けられていて、該係止腕部に係止部及び被規制部が形成されていることとしたが、これに替えて、可動部材に係止腕部を設けずに、係止部及び被規制部を可動部材の一部、例えば本体部に形成してもよい。
【0083】
本実施形態では、回路基板の実装面に対して平行な方向で平型導体が挿抜されるコネクタに本発明を適用した例を説明したが、これに替えて、回路基板の実装面に対して直角な方向で平型導体が挿抜されるコネクタに本発明を適用することもできる。また、本発明が適用されるコネクタが回路基板の実装面に実装される形式のコネクタであることは必須ではなく、本発明を他の形式のコネクタに適用することもできる。
【符号の説明】
【0084】
1 コネクタ
10 ハウジング
17A 受入部
19 規制部
20 第一端子
30 第二端子
40 可動部材
45 係止腕部
45C 弾性腕部
45B 被規制突部
45D 被規制部
F 平型導体
F3A 被係止部