(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】移動中の基板の表面処理を行う設備のための処理ユニット、同設備および実施方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20221004BHJP
C23C 16/513 20060101ALI20221004BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/513
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2019525853
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 FR2017053005
(87)【国際公開番号】W WO2018091797
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519151079
【氏名又は名称】コーティング プラズマ イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラード ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】フィスター セドリック
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-181850(JP,A)
【文献】特開2013-037811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動中の基板(SUB)の表面処理を行う設備のための処理ユニット(1A)であって、前記設備はさらに、
前記基板
(SUB)用の支持体(2)と、
特に前記支持体
(2)と合致する対向電極とを備え、
前記処理ユニット
(1A)は、
前記対向電極と協働して放電を生成するのに適した少なくとも1つの
ハウジング側電極を収容する、少なくとも1つのハウジング(50)と、
少なくとも1種のプラズマ生成ガスを含む第1ガス、すなわち処理ガスを、前記支持体
(2)に向けて噴射する第1噴射手段(20,21,22)とを備え、
前記第1噴射手段
(20,21,22)は、
前記第1ガスの供給源と連通するよう構成され、前記
第1ガスの流れの第1の方向を規定する主軸(A20)を有する第1ガス導入部材(20)と、
前記支持体
(2)に対向して設けられる、第1ガス噴射部材(21)と、
前記
第1ガス導入部材
(20)と前記
第1ガス噴射部材
(21)とを連結する
第1中間チャンバ(22)とを含み、
該
第1中間チャンバ
(22)は、
前記
第1ガス導入部材(20)から延び、稼働中に前記第1ガスが前記第1の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第2の方向に流れる上流領域(24)であって、その流入口(25E,26E)からその流出口(25S,26S)に向かって前記第1ガスの流路断面が縦断面視(XX)および横断面視(YY)の両方において大きくなる上流領域(24)と、
前記上流領域(24)と前記
第1ガス噴射部材(21)の間を延び、稼働中に前記第1ガスが前記第2の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第3の方向に流れる下流領域(27)であって、その流入口(28E,29E)からその流出口(28S,29S)に向かって前記第1ガスの流路断面が横断面(YY)視で大きくなるものの、該流出口(28S,29S)近傍においては前記第1ガスの流路断面が縦断面(XX)視で小さくなる下流領域(27)とを含むことを特徴とする、処理ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の処理ユニットにおいて、
前記
第1中間チャンバ
(22)は、横断面(YY)視で、前記
処理ユニット(1A)の中央軸(A1)を中心として対称であり、前記上流領域(24)は、前記中央軸の両側に延びる2つの上流導管(25,26)によって形成され、前記下流領域(27)は、前記中央軸の両側に延び、前記上流導管
(25,26)がそれぞれ延設された2つの下流導管(28,29)によって形成されることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理ユニットにおいて、
前記
第1中間チャンバ(22)は、前記
第1ガス導入部材(20)に面した上流面(231)と、該上流面(231)から延びる複数の側面(232)とを有する、特に三角形状の中央コア(23)の周囲に形成されることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記
第1ガス噴射部材(21)は、前記
処理ユニット
(1A)の全幅にわたって延び、具体的には1つのスロットによって形成されることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記
処理ユニット
(1A)はさらに、前記支持体
(2)に向けて第2ガスを噴射する第2噴射手段(30,31,32)を備え、前記第2噴射手段
(30,31,32)は、前記支持体
(2)に対向して設けられる、第2ガス噴射部材(31)を含み、前記第2ガス噴射部材
(31)は、縦断面視において、前記第1ガス噴射部材(21)に向かって傾斜していることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の処理ユニットにおいて、
前記第2噴射手段(30,31,32)はさらに、前記第2ガスの供給源と連通するよう構成され
た第2ガス導入部材(30)と、前記
第2ガス導入部材
(30)と前記
第2ガス噴射部材
(31)とを連結する
第2中間チャンバ(32)とを備え、
該
第2中間チャンバ
(32)は、
前記
第2ガス導入部材(30)から延び、稼働中、前記第2ガスが特に前記第1の方向に対して傾斜した第2の方向に流れる上流領域(36)であって、その流入口(36E)からその流出口(36S)に向かって前記第2ガスの流路断面が縦断面および/または横断面視で大きくなる上流領域(36)と、
前記上流領域(36)と前記
第2ガス噴射部材(31)との間を延び、稼働中に前記第2ガスが前記第2
の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第3方向に流れる下流領域(39)であって、その流入口(39E)からその流出口(39S)に向かって前記第2ガスの流路断面が横断面視で大きくなるものの、該流出口(39S)近傍においては前記第2ガスの流路断面が縦断面視で小さくなる下流領域(39)とを含むことを特徴とする、処理ユニット。
【請求項7】
請求項5または6に記載の処理ユニットにおいて、
前記第1ガス噴射部材
(21)と前記第2ガス噴射部材
(31)のそれぞれの主軸は、20°~70°の角度(α31)を形成することを特徴とする、処理ユニット。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記第1ガス噴射部材(21)と前記第2ガス噴射部材(31)のそれぞれの流出口は、10ミリメートル未満の間隔(d3)で離間することを特徴とする、処理ユニット。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記ハウジング(50)と前記第2ガス噴射部材(31)のそれぞれの流出口は、20ミリメートル未満の間隔(d2)で離間することを特徴とする、処理ユニット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記
処理ユニット
(1A)は、上流側および下流側の下端部がそれぞれ、0.5~10ミリメートルの曲率半径で丸められた形状を有することを特徴とする、処理ユニット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記
ハウジング側電極は、そのハウジング
(50)内に固く固定された状態で収容され、この
ハウジング側電極とこれらの壁とは、0.5~10ミリメートルの曲率半径で丸められた形状を有する端部を備えることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
縦断面(XX)視で、前記
第1ガス導入部材(20)は、稼働中の基板
(SUB)の進行方向において、前記
第1ガス噴射部材(21)の前方、すなわち下流側に配置されることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の処理ユニットにおいて、
前記
処理ユニット
(1A)は、中実のブロック状に製造され、前記支持体(2)に面した前記
処理ユニット
(1A)の底壁(16)は、中実であって、該底壁
(16)と前記支持体
(2)との間に縦方向において一定である間隔(d1)を有し、該間隔
(d1)は、特に5ミリメートル未満であることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項14】
移動中の基板(SUB)の表面処理を行う設備であって、
前記基板
(SUB)用の支持体(2)と、
特に前記支持体
(2)と合致する対向電極と、
前記基板
(SUB)の進行方向において押圧ロールの下流側に配置された処理アセンブリであって、請求項1~13のいずれか1つに記載の処理ユニット(1
A)を少なくとも1つ含む処理アセンブリと、
各処理ユニット
(1A)における第1噴射手段を提供できる少なくとも1つの処理ガス源と、選択的に、第2噴射手段を提供できる少なくとも1つの補助ガス源とを備える。
【請求項15】
請求項14に記載の表面処理設備を用いた方法であって、
前記設備は、請求項5~13のいずれか1つに記載の処理ユニット
(1A)を備え、前記基板
(SUB)を移動させ、処理ガスを該基板
(SUB)に向けて噴射し、補助ガスを、少なくともその一部を該基板
(SUB)の近傍において押しつけるように前記基板
(SUB)に向けて噴射する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動中の基板の表面処理を行うための設備に装備されるよう構成された処理ユニットに関する。本発明は、より正確には、混合ガス中で生成されたプラズマに基板を曝すことにより、基板の表面状態を改変させ、かつ/または前記表面に堆積物を形成する設備に関する。本発明は、特に、大気圧に近い圧力で使用でき、ロール状のポリマーフィルムの連続表面処理(「ロールツーロール」方式)に適した設備に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマにより基板の表面特性を改変および改良することを目的とした設備が既に知られている。対象となる特性は、例えば、この基板の表面エネルギーまたは接着特性であってもよい。本発明に関する基板は、特に、ポリマーフィルム、金属フィルム、紙または布地といった絶縁体であってもよい。
【0003】
基板の表面に薄い固体層を堆積することを目的としてこれら公知の設備を用いる場合、この表面は、ガス中での放電により生成されるプラズマに曝される。これと同時またはこの後、処理された基板は、活性ガス化合物を含有し、この固体薄膜の堆積を可能にする混合ガスに曝される。
【0004】
また、混合ガス中の放電によって基板を処理するための連続的な実施方法も知られている。この方法において、基板は、特にチャンバ内で毎分数百メートルの速度で移動する。このチャンバは、放電を生成するために必要な電極とは別に、活性混合ガスを噴射する装置と、ガス流出物を排出する手段とを含む。
【0005】
本発明は、より詳細には、実質的に大気圧で動作するプラズマ処理設備に関する。この種の設備では、十分な処理均質性を得るためにプラズマ領域内でガスを循環させることが重要となる。この処理均質性は、基板の幅にわたって、つまり、基板の進行方向に垂直な方向において、特に重要である。
【0006】
本発明のような処理設備は、まず、プラズマ生成ガスを、任意にドーパント等の補助ガスとともに、噴射する手段を含む。先行技術による設備は、孔またはスロットが穿たれた管のような、様々な性質や形態の噴射手段を含む。このような設備は、対向電極と協働して放電を生成するよう構成された少なくとも1つの電極をさらに備える。複数の電極を設ける場合には、これらを基板の進行方向に順番に配置する。
【0007】
国際公開第2016/128259号には、各電極の近傍にドーパントを集中させるために、孔が穿たれた噴射管と、複数の電極とを備えた処理ヘッドが記載されている。プラズマ生成ガスは電極の後方に噴射される一方、ドーピングガスは基板表面近傍に噴射される。この構成では、プラズマ生成ガスおよびドーパントを電極の後方に噴射する一般的な解決法に比べて、効果的な改善がもたらされる。一方、噴射手段と電極との間の空間には、乱流や、ガスが再循環する領域が生じる。それゆえ、ドーパントは、電極と基板との間に集中する代わりに、前記ヘッドの容積内に再分散しやすくなる。さらに、プラズマ堆積の場合には、このような再循環が粉末の生成を促進してしまう。また、電力が増加すると、プラズマは、電極の垂直方向端部まで延び、効率が低下する。これは、この特定の箇所では、プラズマが基板を処理する役割を果たすことができないからである。
【0008】
特開2016-062812号に記載の設備では、プラズマ生成ガスがスロットを用いて噴射される一方、噴射手段の壁部のうちの1つは、電極が配置された絶縁板によって形成される。この構成では、ガスの乱流および再循環現象をある程度まで低減することができる。一方、特に支持ローラ上を走行するフレキシブル基板の場合、この設備を用いて行うプラズマ処理は制御が難しいことが分かっている。
【0009】
米国特許出願公開第2005/001527号には、プラズマ処理装置が記載されている。この装置では、処理ガスが、基板に向けて噴射される前に、上部に導入され、その後、基板の移動に垂直な方向に中間チャンバに沿って流れるようになっている。この装置は、互いに隣接する電極を備え、これらの電極間に誘電材料が挿入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記に鑑み、本発明の1つの目的は、上述の先行技術の欠点を少なくとも部分的に解決することである。
【0011】
本発明の別の目的は、それを備えた設備が、基板の幅にわたって、つまり該基板の進行方向に対して垂直な方向において、良好な処理均質性を提供することを可能にする処理ユニットを提案することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、移動中の基板の表面近傍に、任意のドーパントを集中させることができる形状を有するユニットを提案することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、フレキシブル基板を高速で処理できるように、プラズマ処理効果を最大限に得られるユニットを提案することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、大気圧に近い圧力で、基板の表面処理(特に「ロールツーロール」方式)を確実に行うとともに、先行技術に比べてドーパントガスの消費量を大幅に低減できるユニットを提案することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、それを備えた設備の制御を容易にし、かつ実施を比較的簡単にするユニットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、前記目的の少なくとも1つは、移動中の基板(SUB)の表面処理を行う設備のための処理ユニット(1A)によって達成される。該設備はさらに、
前記基板用の支持体(2)と、
特に前記支持体と合致する対向電極とを備え、
前記処理ユニットは、
前記対向電極と協働して放電を生成するのに適した少なくとも1つの電極を収容する、少なくとも1つのハウジング(50)と、
少なくとも1種のプラズマ生成ガスを含む第1ガス、すなわち処理ガスを、前記支持体に向けて噴射する第1噴射手段(20,21,22)とを備え、
前記第1噴射手段は、
前記第1ガスの供給源と連通するよう構成され、前記ガスの流れの第1の方向を規定する主軸(A20)を有する第1ガス導入部材(20)と、
前記支持体に対向して設けられる、第1ガス噴射部材(21)と、
前記導入部材と前記噴射部材とを連結する中間チャンバ(22)とを含み、
該中間チャンバは、
前記導入部材(20)から延び、稼働中に前記第1ガスが前記第1の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第2の方向に流れる上流領域(24)であって、その流入口(25E,26E)からその流出口(25S,26S)に向かって前記第1ガスの流路断面が縦断面視(XX)および/または横断面視(YY)において大きくなる上流領域(24)と、
前記上流領域(24)と前記噴射部材(21)の間を延び、稼働中に前記第1ガスが前記第2の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第3の方向に流れる下流領域(27)であって、その流入口(28E,29E)からその流出口(28S,29S)に向かって前記第1ガスの流路断面が横断面(YY)視で大きくなるものの、該流出口(28S,29S)近傍においては前記第1ガスの流路断面が縦断面(XX)視で小さくなる下流領域(27)とを含む、ことを特徴とする。
【0017】
プラズマ処理設備は、本発明による1つまたは複数の処理ユニットと、処理対象の基板が押圧される支持ロールとを備える。前記ユニットまたは各ユニットは、ガスの噴射と、プラズマの生成とを行う。基板は、処理されるべく、支持ロールと各ユニットとの間を通過する。
【0018】
本発明によれば、前記中間チャンバを設けることが特に好適である。稼働中、処理ガスは、均質化機能を実現する中間チャンバに入る前に、まず導入部材内を流れる。このチャンバでは、このガスの主な方向は様々に変化する。さらに、このガスの流路断面は、特に横断面視で大きくなるなど、様々に変化する。その結果、特に、横方向寸法、つまり基板の処理幅全体にわたって均質な分布が得られる。
【0019】
まず第一に、本発明による中間均質化チャンバは、特開2016-062812号公報に記載の装置よりもはるかに優れた性能を提供する。なぜなら、この文献では、流入管と流出口スロットとの間に位置する、特に簡素なほぼ平行六面体の形状を有するチャンバを挿入するからである。この条件下では、そのようなチャンバに頼らない直接噴射の場合よりも、均質分布を確実に向上できる。一方、前記スロットの中央と端部との間ではガスの流出速度差はなくならない。なぜなら、このチャンバ形状は望ましくないガスの再循環を引き起こすからである。
【0020】
尚、米国特許出願公開第2005/001527号は、横断面視で、下流領域の流路断面を変化させることについては全く言及していない。また、この文献では、下流領域は、その流出口近傍で減少しない一定の断面を有する。最後に、ガス流方向、すなわち垂直方向は、この文献に記載された中間チャンバに沿って、ほぼ不変である。
【0021】
本発明によれば、前記目的の少なくとも1つは、移動中の基板(SUB)の表面処理を行う設備のための処理ユニット(1A)によっても達成される。該設備はさらに、
前記基板用の支持体(2)と、
特に前記支持体と合致する対向電極とを備え、
前記処理ユニットは、
前記対向電極と協働して放電を生成するのに適した少なくとも1つの電極を収容する、少なくとも1つのハウジング(50)と、
少なくとも1種のプラズマ生成ガスを含む第1ガス、すなわち処理ガスを、前記支持体に向けて噴射する第1噴射手段(20,21,22)であって、前記支持体に対向して設けられる第1ガス噴射部材(21)を含む第1噴射手段と、
第2ガス、すなわち補助ガスを、前記支持体に向けて噴射する第2噴射手段(30,31,32)であって、前記支持体に対向して設けられる第2ガス噴射部材(31)を含む第2噴射手段とを備え、
前記第2ガス噴射部材(31)は、縦断面視において、前記第1ガス噴射部材(21)に向かって傾斜していることを特徴とする。
【0022】
本発明の別の構成によれば、
前記中間チャンバは、横断面(YY)視で、前記ユニット(1A)の中央軸(A1)を中心として対称であり、前記上流領域(24)は、前記中央軸の両側に延びる2つの上流導管(25,26)によって形成され、前記下流領域(27)は、前記中央軸の両側に延び、上流導管がそれぞれ延設された2つの下流導管(28,29)によって形成され、
前記中間チャンバ(22)は、前記導入部材(20)に面した上流面(231)と、該上流面(231)から延びる複数の側面(232)とを有する、特に三角形状の中央コア(23)の周囲に形成され、
前記噴射部材(21)は、実質的に前記ユニットの全幅にわたって延び、具体的には1つのスロットによって形成され、
このユニットはさらに、前記支持体に向けて第2ガスを噴射する第2噴射手段(30,31,32)を備え、前記第2噴射手段は、前記支持体に対向して設けられる、前記第2ガス噴射部材(31)を含み、前記第2ガス噴射部材は、縦断面視において、前記第1ガス噴射部材(21)に向かって傾斜し、
前記第2噴射手段(30,31,32)はさらに、前記第2ガスの供給源と連通するよう構成された前記第2ガス導入部材(30)と、該導入部材と前記噴射部材とを連結する中間チャンバ(32)とを備え、
該中間チャンバは、
前記導入部材(30)から延び、稼働中、前記第1ガスが特に前記第1の方向に対して傾斜した第2の方向に流れる上流領域(36)であって、その流入口(36E)からその流出口(36S)に向かって前記第1ガスの流路断面が縦断面および/または横断面視で大きくなる上流領域(36)と、
前記上流領域(26)と噴射部材(31)との間を延び、前記第1ガスが稼働中、前記第2の方向に対して傾斜した方向、具体的には垂直方向である第3の方向に流れる下流領域(39)であって、その流入口(39E)からその流出口(39S)に向かって前記第1ガスの流路断面が横断面視で大きくなるものの、該流出口(39S)近傍においては前記第1ガスの流路断面が縦断面視で小さくなる下流領域(39)とを含み、
前記第1ガス噴射部材と前記第2ガス噴射部材のそれぞれの主軸は、20°~70°、特に40°~50°、とりわけ約45°の角度(α31)を形成し、
前記第1ガス噴射部材と前記第2ガス噴射部材のそれぞれの流出口は、10ミリメートル未満、特に4ミリメートル未満の間隔(d3)で離間し、
前記ハウジングと前記第2ガス噴射部材のそれぞれの流出口は、20ミリメートル未満、特に15ミリメートル未満の間隔(d2)で離間し、
前記ユニットは、上流側および下流側の下端部がそれぞれ、0.5~10ミリメートルの曲率半径で丸められた形状を有し、
前記電極は、そのハウジング内に固く固定された状態で収容され、この電極とこれらの壁とは、0.5~10ミリメートルの曲率半径で丸められた形状を有する端部を備え、
縦断面(XX)視で、前記導入部材(20)は、稼働中の基板の進行方向において、噴射部材(21)の前方、すなわち下流側に配置され、
前記ユニットは、中実のブロック状に製造され、前記支持体に面したその底壁は、実質的に中実であって、該底壁と前記支持体との間に縦方向において実質的に一定である間隔(d1)を有し、該間隔は、特に5ミリメートル未満、特に2ミリメートル未満であり、
このユニットは、特に機械加工され、具体的には接着や溶接等による永久固定手段によって互いに接続された、複数の別個の構成要素を備え、
このユニットは1つの構成要素であり、組立接合部を有さず、具体的にはラピッドプロトタイピング、光造形法、または三次元印刷によって製造される。
【0023】
これらのさらなる特徴は、上述の主要な目的のうちの1つによって、または1つ以上を技術的に互換可能に組み合わせることにより、実現されうる。
【0024】
本発明の他の主題は、移動中の基板(SUB)の表面処理を行う設備であって、
前記基板用の支持体と、
特に前記支持体と合致する対向電極と、
前記基板の進行方向において押圧ロールの下流側に配置された処理アセンブリであって、前記処理ユニットを少なくとも1つ含む処理アセンブリと、
各処理ユニットにおける第1噴射手段を提供できる少なくとも1つの処理ガス源と、選択的に、第2噴射手段を提供できる少なくとも1つの補助ガス源とを備える。
【0025】
好適には、前記アセンブリは、複数の処理ユニットを備え、これらのユニットは、少なくとも2つの異なる処理ガス源および/または2つの異なる補助ガス源と連通する。
【0026】
本発明の別の構成によれば、
これら複数の処理ユニットは基板の進行方向から見て前後に並んで配置され、
これらいくつかの処理ユニットは、基板の進行方向から見て横並びに配置され、
横並びに配置される処理ユニットは、相互固定手段、具体的には例えばほぞとほぞ穴のような、取外し可能な固定手段を備える。
【0027】
本発明の他の主題は、前記表面処理設備を用いた方法であって、前記基板を移動させ、処理ガスを該基板に向けて噴射し、補助ガスを、少なくともその一部を該基板の近傍において押しつけるように該基板に向けて噴射する、方法である。
【0028】
好適には、前記第1ガスは、1m/s~20m/sの速度で、特に基板の移動速度と同じ速度で、噴射部材の流出口を流れるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明による処理ユニットを備えた表面処理設備を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明によるこれらの処理ユニットのうちの1つを拡大して示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2の処理ユニットが装備された均質化チャンバをより具体的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の変形実施形態による処理ユニットを示す、
図2と同様の正面図である。
【
図6】
図6は、基板の進行方向から見て横並びに配置された一連の処理ユニットを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、非限定的な例としてのみ提供する添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【0031】
図1に、本発明による複数の処理ユニット1A~1Dにより形成された処理アセンブリを備えたプラズマ表面処理設備を示す。処理ユニットは
図2以降においてより詳細に示す。この設備は、基本的には、前述のユニットとは別に、基板SUBの支持体を形成するドラム2と、押圧ロール3と、これらのブロックを覆う密閉カバー4とを備える。
【0032】
ドラム2は、それ自体で公知であり、稼働中は矢印f2で示す方向に回転する。その直径をD2で示し、縦方向寸法をL2で示す。このドラムは、矢印S1、S2の方向に移動して本発明による処理が施される基板SUBの支持体を形成する。以下、縦方向は基板の進行方向とし、横方向あるいは水平方向はこの進行方向に垂直な方向である。さらに、慣例により、正面図(縦断面図ともいう)は、
図2および
図5に示すように、縦方向が紙面に含まれる図である。側面図(横断面図ともいう)は、
図3に示すように、縦方向が紙面後方から前方へ延びる図である。
【0033】
本実施形態では、ドラム2は、後述する電極と協働する対向電極としても機能する。そのため、このドラムは、好適には、それ自体で公知の方法によって絶縁層で覆われている。しかしながら、この対向電極は、前記設備のその他の構成要素によって形成されてもよい。例として、基板はポリプロピレン製で、その厚さは20~100μmである。
【0034】
ドラム2は、その上流部分において、基板の移動に対し、好適には、それ自体で公知のタイプの押圧ロール3(当業者は「ニップ」ともいう)と関連する。以下により詳細に説明するように、二次ロール3は、稼働中、矢印f3で示す方向に回転する。これにより、基板がドラムに押圧されるため、基板とドラムとの間における空気層の形成が回避される。このことは、基板の処理における局所的な不具合を防止する。二次ロールの直径D3は、ドラムの直径D2よりもはるかに小さく、その縦方向寸法L3は、例えば、ドラムの縦方向寸法L2と同等である。
【0035】
様々な(好適には同一の)処理ユニットは、中実のブロック1A~1Dの形で製造される。以下に、これらブロックのうちの1つである1Aの構造について説明するが、他のブロックの構造も同様である。
【0036】
ブロック1Aは、上壁11と、互いに平行な前壁、すなわち上流壁12と後壁、すなわち下流壁13とで形成された周壁と、互いに平行な側壁14および15とを有する。例として、壁14と壁15の間の間隔によって規定される第1の寸法は、通常1000mm~2000mmであるが、かなり小さい値、例えば20mmであってもよいものとする。例として、壁12と壁13との間の間隔によって規定される第2の寸法は、50mm~200mmである。各ブロックは、後述するカバー4の側壁に、好ましくは取り外し可能に、任意の適切な手段によって固定される。
【0037】
また、このブロック1Aは、ドラム2に面した底壁16を有する。実質的に中実であるこの壁16は、第1ガスと第2ガスをそれぞれ噴射する第1噴射手段および第2噴射手段の流出口を区画する。さらに、この壁は、中空部分がハウジングになっており、少なくとも1つの電極を収容するようになっている。以下に、これらの噴射手段ならびにハウジングおよび電極について、より詳細に説明する。
【0038】
底壁16は、ドラム2から間隔d1だけ離間しており、この間隔は、好適には、縦方向の進行方向において一定である。このため、この底壁は、R16=R2+d1(R2はドラム半径、すなわちD2/2であり、d1は前記間隔)である曲率半径R16を有する。基板がプレートなどの平坦な支持体上を移動する場合、ブロックの底部もまた平坦であり、支持体における対向面と平行に延びる。この間隔d1は、好ましくは5ミリメートル未満、さらに好ましくは2ミリメートル未満、特に好ましくは約1ミリメートルである。
【0039】
一定の間隔(d1)を設けることにより、ブロックと基板表面との間に設けられる空間内において、処理ガスが実質的に再循環することが回避される。また、この特徴により、前記特開2016-062812号に関連する欠点がかなりのレベルまで改善される。これは、この文献の教示によれば、絶縁板と基板の間の空間が変化する結果、プラズマ電力密度が位置によってばらつくためである。したがって、本発明によって実施されるプラズマ処理は、特開2016-062812号の設備での処理よりも、その制御が実質的に容易である。
【0040】
ブロックの上流壁12と底壁16の接合部は、第1の端部(上流端部17ともいう)を規定する。同様に、下流壁13と底壁16の接合部は、第2の端部(下流端部17’ともいう)を規定する。好適には、これらの端部17および17’は、通常、0.5mm~10mm(ミリメートル)の曲率半径で丸められている。この丸められた形状により、とりわけガスの再循環が防止される。
【0041】
第1噴射手段は、基本的に、導入部材20と、噴射部材21と、中間チャンバ22とを備える。これら部材20および21はそれぞれ、その上流端から下流端まで、実質的に一定の流路断面を有する。好適には、噴射部材のガス流路断面は、導入部材の流路断面よりも大きい。導入部材の全断面積は、例えば0.07~1.2cm2であり、噴射部材の全断面積は、例えば、0.3~2cm2である。つまり、全噴射断面積と全導入断面積との比は、例えば1.5~10である。
【0042】
XX軸方向縦断面視で、導入部材20は、稼働中の基板の進行方向において、噴射部材21の前方、すなわち下流側に配置される。R20をドラム2の中心と導入部材とを通る円の半径とすると、これら2つの部材20および21の間隔は、R20に垂直な直線D20で示される。この間隔は、例えば、0mm~150mmである。2つの部材20および21の間のこのオフセットにより、チャンバ22の容積が増加し、均質化が向上する。
【0043】
通常、
図4の斜視図に示すように、導入部材は、1つの短い管状通路20の形であってもよい。ブロックが極めて広幅の場合は、いくつかの管状導入通路を規則的に分布させることもできる。さらに、噴射部材21は、壁14、15の間に直線状またはジグザグ状に分布した一連の短い管状通路の形をとってもよい。好ましくは、この噴射部材21は、前記壁14、15の間を横方向に延びる単一のスロットで形成される。
【0044】
導入部材20の上流側出口は、第1ガスの供給源(その性質を以下に詳細に説明する)と連通しており、一方、噴射部材21の下流側出口は基板に面して配置される。噴射部材21の主軸A21は、ドラム2に対して半径方向に延びている。換言すれば、この軸は、移動する基板に対して実質的に垂直に延びている。
【0045】
特に
図3および
図4に示すように、中間チャンバ22は、中実のシェル状に製造された中央コア23の周囲に形成される。従って、ガスはシェル内に侵入できないため、以下に詳述するように、シェルに沿って流れざるを得ない。このコアは、
図3の断面において、ほぼ三角形状を有する。コアは、図において水平であり、流入管に面したいわゆる上流面231と、この上流面から延びる側面232を有する。
【0046】
図3の横断面に示すように、中間チャンバ22は、ブロックの中心軸A1に対して対称である。このチャンバは、まず、流入路20から延びる上流領域24を備える。この領域は、支持体2に対してほぼ接線方向、つまり図における水平方向に延びる2つの導管25および26によって形成される。これら導管の流入口25Eおよび26Eにより、流入路20が延設される一方、流出口25Sおよび26Sは、後述の下流領域27に設けられる。
【0047】
稼働中、第1ガスは、まず最初に、流入路20の主軸A20に相当する第1の方向、つまり実質的に垂直に流れる。その後、このガスは、これらの導管25および26において実質的に水平に、つまり前記第1の方向に対してほぼ垂直な第2の方向に進行する。また、第1ガスの流路断面は、この上流領域における各導管の流入口から流出口に向かって大きくなる。この断面の増加は、縦断面視(
図2および
図4に見られるXX軸方向)および横断面視(
図3および
図4に見られるYY軸方向)において見られる。変形例として、この流路断面を、これら2つのXX、YY方向の一方においてのみ増加させてもよいが、両方向において同時に増加させるのが特に好適である。
【0048】
中間チャンバ22は、さらに、前記上流領域24から延びる下流領域27を備える。この領域は、支持体2に対してほぼ半径方向に、つまり図における垂直方向に延びる、2つの導管28および29によって形成される。これら導管の流入口28Eおよび29Eにより、上流導管25および26が延設される一方、流出口28Sおよび29Sは、噴射スロット21に設けられる。
【0049】
稼働中、上流領域の流出口において、第1ガスは、特にほぼ直角にチャンバの下流領域へ戻される。その後、このガスは、導管28および29において実質的に垂直に、つまり上述の第1の方向に対してほぼ垂直である第3の方向を流れる。図中、中間チャンバ内のガスの進行を、連続する矢印Gによって表す。
【0050】
さらに、YY軸方向横断面視、つまり
図3において、第1ガスの流路断面は、この下流領域における各導管28または29の流入口28Eまたは29Eから、流出口28Sまたは29Sに向かって大きくなる。一方、XX軸方向縦断面視、すなわち
図2において、第1ガスの流路断面は、この下流領域における各導管28または29の流出口28Sまたは29S近傍において小さくなる。断面が減少する部分は、各下流導管28、29と噴射スロット21との接合部に対応する。
【0051】
理論に従うことを望まずに、第1ガスは、円筒状の流れを維持したまま、流入路20内に導入されることが考えられる。その後、第1ガスは、チャンバ22内に導入されて膨張し、円筒形状ではなくなる。次いで、このガスは噴射スロット21に向かって徐々に押し出され、その結果、シート状のガスとなってユニット1から出てくる。
【0052】
第2噴射手段は、上述の第1噴射手段と同様の構造を有する。したがって、この第2手段における、第1手段と同様の機械的要素には、10を足した同一の参照番号を付している。
【0053】
この第2噴射手段は、基本的に、導入部材30と、噴射部材31と、中間チャンバ32を備える。これら部材30および31はそれぞれ、その上流端から下流端まで、実質的に一定の流路断面を有する。好適には、噴射部材のガス流路断面は、導入部材の流路断面よりも大きい。全導入断面積は、例えば0.07~1.2cm2であり、全噴射断面積は、例えば、0.3~2cm2である。部材30の上流側出口は、第2ガスの供給源(その性質を以下に詳細に説明する)と連通しており、一方、噴射部材31の下流側出口は基板に面して配置される。
【0054】
本発明の特に好適な特徴によれば、噴射部材31の主軸A31は、ドラム2の半径に対して、基板の進行方向の上流側に傾斜している。換言すれば、この噴射部材31は、第1ガスの噴射部材21に向かって斜めに延びている。軸A21とA31とで形成される角度α31は20°~70°、好ましくは40°~50°、特に約45°である。さらに、噴射部材21、31のそれぞれの流出口の間隔d3は、好適には10mm未満、好ましくは4mm未満である。この間隔d3は、これらの流出口の中心間で算出される。以下に説明するように、このような形状とすることは好適である。
【0055】
中間チャンバ32は、上述のチャンバ22とほぼ同一の構造および機能を有する。しかし、このチャンバ32の形状および寸法は、チャンバ22と比較して、特に処理ユニット1Aの全体の大きさに適合するように変更できる。中間チャンバ32は、前記中央コア23と同様の中央コア(図示せず)の周囲に形成されている。
【0056】
このチャンバ32は、まず、流入路30から延びる上流領域を備える。この領域は、2つの導管によって形成され、そのうちの1つである導管36のみを
図2に示す。各導管の流入口(そのうち36Eのみを
図2に示す)によって、流入路30が延設される。さらに、各上流導管の流出口(そのうち36Sのみを
図2に示す)は、2つの導管によって形成される下流領域に設けられるが、そのうちの1つである導管39のみを
図2に示す。各下流導管の流入口(そのうち39Eのみを
図2に示す)によって、導管が延設される一方、流出口(そのうち39Sのみを
図2に示す)は噴射スロット31に設けられる。
【0057】
ブロック1Aはまた、中空部分が少なくとも1つのハウジング50になっており、それぞれ対応する電極(図示せず)を収容するようになっている。図示の例では、ハウジングは1つであるが、複数のハウジングを基板の進行方向において前後に配置してもよい。 このハウジング50は、好適には、ブロックの側壁の少なくとも1つ、すなわち
図3の紙面における前側および/または後側に設けられる。これにより、ユーザはこのハウジングに容易にアクセスでき、ユーザは、電極を専用のハウジング内に直接設置できる。
【0058】
電極は、例えば棒状の細長い形状を有し、正方形の断面を有する。好適には、この電極は丸められた端部を有する。これらは、ハウジング50の壁の丸められた端部50’に固く固定された状態で協働する。これらの丸められた端部の曲率半径は、例えば0.5mm~10mmである。好適には、電極の端部を金属化しないことで、これら端部の近傍におけるプラズマの移動を防止する。その結果、プラズマが電極と基板との間で好適に集中する。
【0059】
好ましくは、電極および基板の対向する壁部間の間隔が実質的に一定であり、前記数値d1と実質的に等しい。好適には、小幅で平坦な棒状の電極が用いられる。したがって、この電極と基板の間の間隔の変動はさほど重要ではない。この構成により、電極と基板の間の間隔における閾値や不連続性を回避することができ、ガスの顕著な再循環を防止できる。これらの条件下では、このガスの実質的な層流が確保される。
【0060】
さらに、導管31およびハウジング50のそれぞれの流出口の間の最小間隔d2は、好適には20mm未満であり、好ましくは15mm未満である。これにより、基板表面近傍において、補助ガス、特に補助ガスに含まれるドーパントの最大限の集中を維持することができる。
【0061】
好適には、各電極の外面を小さくして、プラズマ生成領域における乱流の発生を防止する。この電極は、好ましくは、導電性基板の処理を可能にするセラミック材料で製造される。あるいは、電極は、金属材料等のその他の適当な材料で製造されてもよい。この電極は、電源(図示せず)に接続される。
【0062】
ハウジング内の適切な位置に電極を保持するために、任意の適当な手段(図示せず)が設けられる。好適には、各電極は、特に、例えばスナップ嵌め等により取り外し可能に固定される。そうすれば、任意の電極を、特に故障の場合に、他の同様の電極に交換できる。この電極はまた、種類の異なる電極に交換してもよい。「異なる電極」という表現は、種類によって以下のパラメータ、つまり、電極の全体寸法、電極の材料、電極の形状の少なくとも1つが異なることを意味する。
【0063】
各ブロックは、ポリマー、複合材、木材またはセラミック等の絶縁材料から製造される。優先的には、ブロックを構成する材料は、セラミック粉末強化複合材である。この材料は、機械加工の容易さと、耐熱性および機械的強度とを兼ね備えることを可能にする。デジタルモデリングによって規定できる各チャンバ22および32の形状は、その後、ブロックの製造時に統合される。
【0064】
第1の変形例では、ブロックは、いくつかの構成要素から形成されるが、これらの構成要素は、その後、互いに接着または溶接される。この場合、チャンバは機械加工されてもよい。好適な変形例として、ブロックは1つの構成要素から形成される。この場合、チャンバは、ラピッドプロトタイピング、光造形法、または三次元印刷(「3D印刷」ともいう)等の方法によって同時に製造される。このような製造方法により、ユニット、特にその噴射チャンバ内部に、接着剤の接合部や組立品の接合部ができるのを回避することができる。
【0065】
図1の処理設備は、制御された処理雰囲気を提供することができる、いわゆる密閉カバー4をさらに備える。このカバー4は、断面視において、扇状に広がるU字形状を有している。カバー4は、
図1に示すように、上壁、すなわちウェブ41、2つの前壁、すなわち翼状部42および43、ならびに2つの側壁44および45を備える。ドラムの回転方向において、翼状部42を上流翼状部といい、翼状部43を下流翼状部という。
【0066】
好適には、ある特徴的な寸法は、完全に定義された数値範囲内から選択される。
・カバー4の上流壁42の端縁と押圧ロール3との最小間隔d’1は、15ミリメートル未満、好ましくは5ミリメートル未満に選択される。
・カバー4の上流壁42と処理ユニットとの最小間隔は、20ミリメートル未満、好ましくは2ミリメートル未満に選択される。この間隔を隔てて、上述の壁42がブロック1Aの上端部から離間する。
・処理ユニットの上流端と支持体の間の最小間隔は、5ミリメートル未満、好ましくは2ミリメートル未満に選択される。
・第1の処理ブロック(例えば、ブロック1A)と、後続の処理ブロック(例えば、ブロック1B)の間の最小間隔は、d’1~10mmの間、好ましくはd’1~2×d’1(d’1は前記の通り)の間で選択される。処理ブロックが1つの場合、この間隔を隔てて、この処理ブロックと、密閉カバーに面する下流壁とが離間する。
【0067】
好適には、処理ガスの一部は、噴射部材21からユニットの上流側に向かって再循環される。このようにして再循環された処理ガスの全てまたは一部は、その後、本発明においてカバーの上流前壁の端縁、押圧ロール、支持体、および処理ユニットの上流端によって規定される、再循環容積内に導入される。この端縁を押圧ロールのできるだけ近くに位置づけることにより、この再循環容積内に存在する処理ガスによる外気の追い出しが容易になる。換言すれば、外気が、この再循環容積内へ、ひいては処理領域へ有意に侵入することが防止される。
【0068】
以下に、本発明による設備の様々な実施可能性について説明する。
【0069】
一般的に、第1ガスおよび第2ガスは、上述の第1および第2噴射手段によって、移動中の基板の方へ向けられる。第1ガス(処理ガスともいう)は、窒素、アルゴンまたはヘリウム等の少なくとも1種のプラズマ生成ガスを含む。本実施形態では、この処理ガスは、基本的に前述のプラズマ生成ガスからなる。本実施形態では、第2ガス(補助ガスともいう)は、それ自体で公知の種類の他のガスまたは気化化合物(ドーパントともいう)を含む。
【0070】
好適には、噴射スロット21の幅、つまりXX方向寸法は、流入口に導入されるプラズマ生成ガスの流れに応じて算出される。この幅は、ガス放電の速度が1m/s~20m/sとなる大きさである。好ましくは、このガス速度は、基板の移動速度と同程度である。通常、プラズマ生成ガスの流量が50m3/h、スロットの(XX方向)長さが20センチメートルであれば、幅は1.5ミリメートルである。
【0071】
変形例として、処理ガスは、プラズマ生成ガスとは別に、前記ドーパント等の他の化合物を含んでもよい。補助ガスは、ドーパントとは別に、プラズマ生成ガスの一部、またはスプレーやミスト等の他の成分を含んでもよい。
【0072】
導管21を介して噴射されたプラズマ生成ガスは、まず、底壁16と基板SUBとの間で下流側へ流れる。ドーパントは、第2噴射部材31を介して基板の方へ向けられる。噴射導管21、31の位置、特に相互の傾斜角度により、プレス効果で基板の近傍にドーパントを集中させることができる。この効果は、処理速度を最大化できるため、特に好適である。堆積の場合には、電極上での不要な粉末形成を低減することができる。これは、前記国際公開第2016/128259号における欠点を大幅に改善することができる。
【0073】
尚、
図1~
図4の実施形態では、第1ガス噴射手段および第2ガス噴射手段が中間均質化チャンバを備えた状態で、このプレス効果が得られる。しかし、このプレス効果は、
図1~
図4のものとは異なる噴射手段、特に中間チャンバを有しない噴射手段においても得ることができる。
【0074】
この点に関して、第1噴射手段は、YY軸方向に規則的に分布した複数の導管を備えていてもよい。
図5にブロックの上壁と底壁との間に延びるこれらの導管の1つを示す。その上流部は導入部材120を形成し、下流部は噴射部材121を形成する。さらに、第2噴射手段は、YY軸方向に規則的に分布した複数の導管を備えていてもよい。
図5にブロックの上壁と底壁との間に延びるこれらの導管の1つを示す。その上流部は導入部材130を形成し、下流部は噴射部材131を形成する。上流部130は導管120と平行である一方、下流部131は傾斜して導管120との間に角度α131を形成する。その数値は上述したα31と同程度である。
【0075】
第2ガスを噴射するための導管131が、第1ガスを噴射するための導管120に向かって傾斜していることによっても、前記のプレス効果が得られる。さらなる変形例として(図示せず)、噴射手段が、図示の形状とは異なる形状を有する中間チャンバ、とりわけ従来技術より公知のような簡単な形状の中間チャンバを備えてもよい。
【0076】
図1~
図5に示す変形例では、本発明による設備は、基板の進行方向において前後に並んで配置された複数のユニット1A~1Dを備える。好適な特徴によれば、ユニット毎に異なる処理ガスおよび/または補助ガスを噴射することができる。これにより、一度の通過で異なる処理動作を実行することができる。
【0077】
図6に、本発明のさらに別の変形実施形態を示す。この実施形態では、本発明の設備は、進行方向を基準にして横並びに、つまりYY軸方向に並んで配置された複数のユニット1a~1nを備える。これらの基本的な処理ユニットは、特定の固定手段を有さず、共通のハウジング内において横並びに配置されてもよい。また、
図6に示すように、隣接するユニットに、特に取外し可能な相互固定手段を装備してもよい。
図6では、第1のユニットに設けられたほぞ18b~18nと、隣接するユニットに設けられた相補的なほぞ溝19a~19(n-1)との協働によって固定されている。
【0078】
図6の実施形態は、特別な効果を有する。それは、個々の小さな処理ユニットを用いて、極めて広幅の基板を処理することができるからである。2からnまでの数(nは例えば約10個)の多数のユニットを並べて配置してもよい。したがって、YY方向寸法が20~30センチメートルである10個のユニットを並べて配置すると、YY方向の総処理寸法は2~3メートルとなる。尚、この
図6において、理解しやすいように、各ユニットは必ずしも実際の縮尺で示されてはいない。実際には、これらのユニットはより大きなYY軸方向寸法を有してもよい。
【0079】
YY軸方向の寸法が小さいユニットを設ければ、製造が容易になり、より便利に使用できる。さらに、ユニットの寸法を小さくすれば、大きなユニットに比べ、YY方向においてガスの十分な分配が確保される。最後に、この実施形態は、柔軟性の点においても好適である。実際には、同一の個々のユニットを多数製造し、処理対象のそれぞれの幅に応じて必要な数のユニットを組み立てる。
【0080】
(実施例)
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。この実施例は、プラズマ処理の種類と、処理後の表面エネルギーの測定とに関する。
【0081】
図1~
図4に示すような設備が用いられる。この設備は、直径400mmのドラムと、処理ブロック1Aのような7つの同一の処理ブロックとを備える。これらのブロックは、それぞれ総表面積400mm
2の第1噴射オリフィス21と、総表面積100mm
2の第2噴射オリフィス31とを備える。特徴的な寸法(d1)は、1ミリメートルである。
【0082】
幅550mm、厚さ20μm(マイクロメートル)のBOPPフィルムが搬送される。プラズマ生成ガス、すなわち第1ガスとしてN2を用い、反応ガス、すなわち第2ガスとしてC2H2を用いる。
【0083】
得られた表面エネルギーは、ASTM D-2578に従って較正された試験インキで処理後、測定される。処理前のフィルムの表面エネルギーは、30mN/mである。
【0084】
本発明による第1の実施形態では、プラズマ生成ガスは、それぞれ50m3/hの速度で、反応ガスは5L/hで噴射される。この構成では、表面エネルギーは600m/分で58mN/mであった。
【0085】
次に、比較として、本発明によらない第2の実施例を実施した。そのため、この設備は、上述の設備とは下記の3点で異なる。
・角度α31は135°である。
・チャンバ22および32は、直径5mmの円筒形キャビティに交換されている。
・間隔d20は、0mmである。
【0086】
この設備の他の構成要素およびガス流は、前記第1の実施形態と同様である。
【0087】
この場合、58mN/mの表面エネルギーをもたらす最大速度は、200m/分である。
【0088】
したがって、最適なガス分布および処理表面に対する反応性ガスの押圧により、同じ高処理品質でありながら、処理速度は3倍に増加した。
【符号の説明】
【0089】
1A~1D ブロック
2 ドラム
f2 2の回転
D2 2の直径
L2 2の長さ
SUB 基板
S1、S2 SUBの移動
3 ニップ(押圧ロール)
f3 3の回転
D3 3の直径
L3 3の長さ
11、16 1の上壁および底壁
12、13 1の上流壁および下流壁
14、15 1の側壁
d1 16から2までの間隔
17、17’ 1の端部
20 導入部材
21 噴射部材
d20 20から21までの間隔
A21 21の軸
22 チャンバ
23 中央コア
231 23の上流面
232 23の側面
24 22の上流領域
25、26 24の導管
25E、26E 25、26の流入口
25S、26S 25、26の流出口
27 2の下流領域
28、29 27の導管
28E、29E 28、29の流入口
28S、29S 28、29の流出口
30 導入部材
31 噴射部材
A31 31の軸
α31 A21とA31の間の角度
32 チャンバ
36 32の上流導管
36E、36S 36の流入口および流出口
39 32の下流導管
39E、39S 39の流入口および流出口
50 ハウジング
50’ 50の端部
d2 31から50までの間隔
d3 21から31までの間隔
4 密閉カバー
41 4の上壁
42、43 4の上流壁および下流壁
44、45 4の側壁
120 導入部材
121 噴射部材
130 導入部材
131 噴射部材
104 密閉カバー
V103 103の内部容積
α31 A21とA31の間の角度
1a~1n 処理ユニット(
図6)
14a~14n、50a~15n 側壁
18a~18n ほぞ
19a~19n ほぞ穴
20a~20n 導入部材