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特許7152400シートを結合するためのシロキサンプラズマ高分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シートを結合するためのシロキサンプラズマ高分子
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221004BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20221004BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20221004BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20221004BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B32B27/00 101
B32B7/06
C09J5/00
C09J183/04
C09J7/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019531566
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017049019
(87)【国際公開番号】W WO2018044837
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】62/381,124
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ベルマン,ロバート アラン
(72)【発明者】
【氏名】フォン,ジアンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マズンダー,プランティック
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087417(JP,A)
【文献】特表2017-506170(JP,A)
【文献】特開2009-035720(JP,A)
【文献】特開2016-106047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 27/12
C09J 5/00
C09J 183/04
C09J 7/30
B29C 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合しており、
前記第1のシート結合面と結合される直前の前記第1のコーティング層結合面は、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有している、物品。
【請求項2】
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
物品を製造する方法において、
プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、および、
前記第1のシートの結合面が前記コーティング層結合面に結合される前に、該結合面を酸素、窒素、またはその組合せに暴露して、該コーティング層結合面の表面エネルギーを増加させる工程を有し、
該コーティング層結合面の表面エネルギーが、40mJ/mと75mJ/mの間まで増加させられる、方法。
【請求項4】
前記モノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
がアリールである、および/またはXがアルコキシである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記モノマーが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、およびジフェニルシランからなる群より選択される少なくとも1種類のモノマーを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記モノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、請求項3記載の方法。
【化1】
【請求項8】
前記モノマーがヘキサメチルジシロキサンである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、請求項3から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、請求項3から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合しており、
前記第1のシート結合面と結合される直前の前記第1のコーティング層結合面は、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有している、物品。
【請求項12】
前記ポリ(ジフェニルシロキサン)コーティング層が、前記第1のシート結合面および前記第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成され、該モノマーは、該第1のシート結合面および該第2のシート結合面の少なくとも一方の上に堆積されており、該モノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、請求項11記載の物品。
【化2】
【請求項13】
物品を製造する方法において、
第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法。
【請求項14】
前記モノマーが、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、請求項13記載の方法。
【化3】
【請求項15】
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、請求項13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/381124号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、担体上にシートを備えた物品および担体上のシートを加工する方法に関し、より詳しくは、ガラス担体上に可撓性ガラスシートを備えた物品およびガラス担体上の可撓性ガラスシートを加工する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
可撓性基板は、ロール・ツー・ロール加工を使用したより安価な装置の展望、およびより薄く、より軽く、より可撓性の耐久性ディスプレイを製造する可能性を提示する。しかしながら、高品質ディスプレイのロール・ツー・ロール加工に要求される技術、設備、および過程は、まだ十分には開発されていない。パネル製造業者は既に、ガラスの大型シートを加工するための工具類にかなり投資をしてきたので、シート・ツー・シート加工による、担体への可撓性基板の積層および表示装置の製造は、より薄く、より軽く、より可撓性のディスプレイの価値ある提案を開発するためのより短期の解決策を提示する。ディスプレイは、高分子シート、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)上で実証されており、その表示装置の製造は、PENがガラス担体に積層されたシート・ツー・シート式であった。しかしながら、PENの温度上限により、デバイス品質および使用できる過程が制限される。その上、高分子基板の高い透過率のために、ほぼ密封包装が要求される有機発光ダイオード(OLED)装置の環境劣化がもたらされる。薄膜被包は、この制限を克服するための展望を提示するが、大量で許容できる収率を提示することはまだ実証されていない。
【0004】
同じような方法で、1つ以上の薄いガラス基板に積層されたガラス担体を使用して、表示装置を製造することができる。その薄いガラスの低い透過率および改善された耐温度性と耐化学性によって、より高性能でより長い寿命の可撓性ディスプレイが可能になると期待されている。
【0005】
低温ポリシリコン(LTPS)デバイス製造プロセスにおいて、例えば、600℃以上に達する温度では、真空、およびウェットエッチング環境が使用されることがある。これらの条件により、使用できる材料が限定され、担体/薄いシートに高い要求が課せられる。したがって、望ましいことは、製造業者の既存の資本インフラを利用し、より高い加工温度で薄いガラスと担体との間の結合強度の損失または汚染をもたらさずに、薄いガラス、すなわち、厚さが0.3ミリメートル(mm)以下のガラスの加工を可能にする担体手法であって、プロセスの終わりに薄いガラスが担体から容易に剥離する担体手法である。
【0006】
商業上の利益の1つは、製造業者は、例えば、光起電(PV)構造、OLED、液晶ディスプレイ(LCD)、およびパターン化薄膜トランジスタ(TFT)電子機器のための薄いガラスシートの利点を得つつ、加工装置に既存の資本投資を利用できることである。その上、そのような手法により、結合を促進するための薄いガラスシートおよび担体の洗浄と表面処理のためのプロセスを含むプロセス柔軟性が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知の結合方法の試練は、ポリシリコンTFTを加工するために使用される高温である。携帯型ディスプレイ、ノート型およびデスクトップ型ディスプレイへのより高い画素密度、高解像度、および高リフレッシュ速度の要求、並びにOLEDディスプレイの幅広い利用により、パネル製造業者は、アモルファスシリコンTFTバックプレーンから酸化物TFTまたはポリシリコンTFTバックプレーンへと推し進められている。OLEDは電流駆動装置であるので、高移動度が望ましい。ポリシリコンTFTは、ドライバおよび他の構成部品の起動を統合する利点も提示する。ドーパント活性化には、より高い温度、理想的には600℃を超える温度が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記を踏まえて、高温加工(それが使用される半導体またはディスプレイ製造プロセスに適合しないであろうガス放出を生じずに)を含む、TFTおよびフラットパネルディスプレイ(FPD)加工の厳しさに耐えることができ、それでも、別の薄いシートを加工するためにその担体を再利用できるように、薄いシートの全域を担体から取り外せる(一度に全て、または区域ずつのいずれかで)、薄いシートと担体の物品が必要とされている。本明細書には、TFTおよびFPD加工(LTPS加工を含む)に耐えるのに十分に強力であるが、高温加工後でさえも、シートを担体から剥離できるほど十分に弱い一時的結合を生じるように、担体と薄いシートとの間の接着を制御する方法が記載されている。そのように制御された結合を利用して、再利用できる担体を有する物品、またあるいは、担体とシートとの間の制御された結合のパターン化区域を有する物品を製造することができる。より詳しくは、本開示は、薄いシートと担体との間の、室温のファンデルワールス結合および/または水素結合、および高温の共有結合の両方を制御するために、薄いシート、担体、またはその両方に設けられるコーティング層(様々な材料および関連する表面熱処理を含む)を提供する。さらにより詳しくは、本開示には、薄いシートを担体に結合する働きをするコーティング層を堆積させる方法、結合のためのコーティング層を調製し、そのコーティング層を薄いシートと担体の両方に結合させる方法が記載されている。これらの方法は、結合エネルギーが高過ぎないように(高すぎると、電子機器の加工後に構成部品が分離できなくなるであろう)、また結合エネルギーが低すぎないように(低すぎると、結合品質が損なわれ、それゆえ、電子機器の加工中に、薄いシートと担体との間の剥離またはその間への流体侵入の可能性が生じるであろう)、構成部品の間の結合を生じる。これらの方法は、低いガス放出性を示し、高温加工、例えば、LTPS TFT加工、並びに追加の加工工程、例えば、湿式洗浄およびドライエッチングに耐えるガラス物品も製造する。代わりの実施の形態において、前記コーティング層を使用して、さらなる加工オプションを与えるために、例えば、追加のデバイス加工のために物品を小片にダイシングした後でさえも、担体とシートとの間の密封性を維持するために、共有結合領域と共に、様々な制御された結合区域(真空処理、湿式処理、および/または超音波洗浄処理を含む様々な処理を通じて、担体と薄いシートが十分に結合したままである)を作り出すことができる。
【0009】
第1の態様では、物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層、
を備え、
第1のコーティング層結合面は第1のシート結合面と結合しており、第2のコーティング層結合面は第2のシート結合面と結合している、物品がある。
【0010】
第1の態様の一例において、そのコーティング層はポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる。
【0011】
第1の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する。
【0012】
第1の態様の別の例において、そのコーティング層は、100nm未満の厚さを有する。
【0013】
第1の態様の別の例において、そのコーティング層は、単層である。
【0014】
第1の態様の別の例において、その第1のシートは、200μm未満の厚さを有する。
【0015】
第1の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシート結合面に結合されている。
【0016】
第1の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシート結合面に結合されており、物品を600℃の温度に暴露する前であって、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面は窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理された。
【0017】
第1の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシート結合面に結合されており、物品を600℃の温度に暴露する前であって、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面は窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理された。
【0018】
第1の態様の別の例において、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面を窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理した後、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である。
【0019】
第1の態様の別の例において、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面を窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理した後、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが5未満である。
【0020】
第1の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートである。
【0021】
第1の態様の別の例において、第2のシートはガラスシートである。
【0022】
第1の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートであり、第2のシートはガラスシートである。
【0023】
第2の態様では、プラズマ重合した有機シロキサン化合物が、第1のシート結合面および第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成される、第1の態様の物品が提供される。
【0024】
第2の態様の一例において、そのモノマーは、低圧プラズマ化学的気相成長法(CVD)または大気圧プラズマCVDを使用して、第1のシート結合面および第2のシート結合面の少なくとも一方の上に堆積される。
【0025】
第3の態様では、そのモノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、第2の態様の物品が提供される。
【0026】
第3の態様の一例において、Rはアリールである。
【0027】
第3の態様の別の例において、Xはアルコキシである。
【0028】
第3の態様の別の例において、Rはアリールであり、Xはアルコキシである。
【0029】
第3の態様の別の例において、そのモノマーは、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、またはジフェニルシランである。
【0030】
第4の態様では、そのモノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、態様2の物品が提供される。
【0031】
【化1】
【0032】
第4の態様の一例において、そのモノマーは、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0033】
第5の態様では、そのコーティング層が、底部コーティング層および上部コーティング層からなり、その底部コーティング層は上部コーティング層と第2のシートとの間にある、第1の態様の物品が提供される。
【0034】
第5の態様の一例において、その底部コーティング層は、10nmと80nmの間の厚さを有し、その上部コーティング層は、10nmと50nmの間の厚さを有する。
【0035】
第6の態様では、物品を製造する方法において、
プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層を第2のシートの結合面上に形成する工程であって、そのコーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
そのコーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法がある。
【0036】
第6の態様の一例において、そのモノマーは、低圧プラズマCVDまたは大気圧プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上に堆積される。
【0037】
第6の態様の一例において、そのコーティング層は、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる。
【0038】
第6の態様の別の例において、そのコーティング層は、100nm未満の厚さを有する。
【0039】
第6の態様の別の例において、そのコーティング層は、単層である。
【0040】
第6の態様の別の例において、その第1のシートは、200μm未満の厚さを有する。
【0041】
第6の態様の別の例において、そのコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシートの結合面に結合されている。
【0042】
第6の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートである。
【0043】
第6の態様の別の例において、第2のシートはガラスシートである。
【0044】
第6の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートであり、第2のシートはガラスシートである。
【0045】
第7の態様では、第1のシートの結合面がコーティング層結合面に結合される前に、そのコーティング層結合面の表面エネルギーを増加させる工程をさらに含む、第6の態様の方法が提供される。
【0046】
第7の態様の一例において、そのコーティング層結合面の表面エネルギーは、その結合面を酸素、窒素、またはその組合せに暴露することによって、増加させられる。
【0047】
第7の態様の別の例において、そのコーティング層結合面の表面エネルギーは、40mJ/mと75mJ/mの間まで増加させられる。
【0048】
第8の態様では、そのモノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、第6の態様の方法が提供される。
【0049】
第8の態様の一例において、Rはアリールである。
【0050】
第8の態様の別の例において、Xはアルコキシである。
【0051】
第8の態様の別の例において、Rはアリールであり、Xはアルコキシである。
【0052】
第8の態様の別の例において、そのモノマーは、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、またはジフェニルシランである。
【0053】
第9の態様では、そのモノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、態様6の方法が提供される。
【0054】
【化2】
【0055】
第9の態様の一例において、そのモノマーは、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0056】
第10の態様では、そのコーティング層が、底部コーティング層および上部コーティング層からなり、その底部コーティング層は上部コーティング層と第2のシートとの間にある、第6の態様の方法が提供される。
【0057】
第10の態様の別の例において、その底部コーティング層は、10nmと80nmの間の厚さを有し、その上部コーティング層は、10nmと50nmの間の厚さを有する。
【0058】
第11の態様では、第1のシートおよびコーティング層が結合される前に、そのコーティング層に熱アニール処理を施す工程をさらに含む、態様6の方法が提供される。
【0059】
第11の態様の一例において、そのコーティング層は、窒素雰囲気において熱アニール処理に施される。
【0060】
第11の態様の別の例において、そのコーティング層は、少なくとも300℃の温度で熱アニール処理に施される。
【0061】
第11の態様の別の例において、そのコーティング層は、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施される。
【0062】
第11の態様の別の例において、そのコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシートの結合面に結合されている。
【0063】
第11の態様の別の例において、そのコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシートの結合面に結合されている。
【0064】
第11の態様の別の例において、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である。
【0065】
第11の態様の別の例において、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが5未満である。
【0066】
第12の態様では、物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層、
を備え、
第1のコーティング層結合面は第1のシート結合面と結合しており、第2のコーティング層結合面は第2のシート結合面と結合している、物品がある。
【0067】
第12の態様の一例において、その第1のコーティング層結合面は、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する。
【0068】
第12の態様の別の例において、そのコーティング層は、100nm未満の厚さを有する。
【0069】
第12の態様の別の例において、そのコーティング層は、モノマーの堆積によって形成される単層である。
【0070】
第12の態様の別の例において、その第1のシートは、200μm未満の厚さを有する。
【0071】
第12の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシート結合面に結合されており、物品を600℃の温度に暴露する前であって、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面は窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理された。
【0072】
第12の態様の別の例において、その第1のコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシート結合面に結合されており、物品を600℃の温度に暴露する前であって、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面は窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理された。
【0073】
第12の態様の別の例において、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面を窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理した後、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である。
【0074】
第12の態様の別の例において、第1のコーティング層結合面が第1のシート結合面に結合される前に、第1のコーティング層結合面を窒素雰囲気において400℃の温度でアニール処理した後、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが5未満である。
【0075】
第12の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートである。
【0076】
第12の態様の別の例において、第2のシートはガラスシートである。
【0077】
第12の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートであり、第2のシートはガラスシートである。
【0078】
第13の態様では、ポリ(ジフェニルシロキサン)コーティング層が、第1のシート結合面および第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成される、第12の態様の物品が提供される。
【0079】
第13の態様の一例において、そのモノマーは、低圧プラズマCVDまたは大気圧プラズマCVDを使用して、第1のシート結合面および第2のシート結合面の少なくとも一方の上に堆積される。
【0080】
第13の態様の別の例において、そのモノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである。
【0081】
【化3】
【0082】
第14の態様では、そのコーティング層が、底部コーティング層および上部コーティング層からなり、その底部コーティング層は上部コーティング層と第2のシートとの間にある、第12の態様の物品が提供される。
【0083】
第14の態様の別の例において、その底部コーティング層は、10nmと80nmの間の厚さを有し、その上部コーティング層は、10nmと50nmの間の厚さを有する。
【0084】
第15の態様では、物品を製造する方法において、
第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層を第2のシートの結合面上に形成する工程であって、そのコーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
そのコーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法がある。
【0085】
第15の態様の一例において、そのモノマーは、低圧プラズマCVDまたは大気圧プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上に堆積される。
【0086】
第15の態様の別の例において、そのモノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである。
【0087】
【化4】
【0088】
第15の態様の別の例において、そのコーティング層は、100nm未満の厚さを有する。
【0089】
第15の態様の別の例において、そのコーティング層は、単層である。
【0090】
第15の態様の別の例において、その第1のシートは、200μm未満の厚さを有する。
【0091】
第15の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートである。
【0092】
第15の態様の別の例において、第2のシートはガラスシートである。
【0093】
第15の態様の別の例において、第1のシートはガラスシートであり、第2のシートはガラスシートである。
【0094】
第16の態様では、そのコーティング層が、底部コーティング層および上部コーティング層からなり、その底部コーティング層は上部コーティング層と第2のシートとの間にある、第15の態様の方法が提供される。
【0095】
第16の態様の別の例において、その底部コーティング層は、10nmと80nmの間の厚さを有し、その上部コーティング層は、10nmと50nmの間の厚さを有する。
【0096】
第17の態様では、第1のシートおよびコーティング層が結合される前に、そのコーティング層に熱アニール処理を施す工程をさらに含む、態様15の方法が提供される。
【0097】
第17の態様の一例において、そのコーティング層は、窒素雰囲気において熱アニール処理に施される。
【0098】
第17の態様の別の例において、そのコーティング層は、少なくとも300℃の温度で熱アニール処理に施される。
【0099】
第17の態様の別の例において、そのコーティング層は、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施される。
【0100】
第17の態様の別の例において、そのコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシートの結合面に結合されている。
【0101】
第17の態様の別の例において、そのコーティング層結合面は、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した後に、600mJ/m未満の結合エネルギーで第1のシートの結合面に結合されている。
【0102】
第17の態様の別の例において、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である。
【0103】
第17の態様の別の例において、窒素雰囲気において10分間に亘り物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが5未満である。
【0104】
先の態様のどの1つも、単独で、または先に述べられたその態様の例のどの1つ以上との組合せで設けられてもよい;すなわち、第1の態様は、単独で、または先に述べられた第1の態様の例のどの1つ以上との組合せで設けられてもよく、第2の態様は、単独で、または先に述べられた第2の態様の例のどの1つ以上との組合せで設けられてもよく;その他も同様である。
【0105】
添付図面は、本開示の原理のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、例として、その原理と作動を説明する働きをする。本明細書および図面に開示された様々な特徴は、いずれと全ての組合せで使用しても差し支えないことが理解されよう。非限定例として、様々な特徴は、明細書において態様として先に述べられたように、互いと組み合わされてもよい。
【0106】
本明細書に開示された実施の形態の先と他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読んだときに、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】間のコーティング層により薄いシートに結合された担体を有する物品の概略側面図
図2図1の物品の分解された部分的な切り欠き図
図3】堆積された状態および加工が施された際の、プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンコーティング層の厚さのグラフ
図4】担体および対応するカバーウエハー上のプラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンコーティング層の表面エネルギーのグラフ
図5】N-Oプラズマ処理された、プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンコーティング層により担体に結合された薄いガラスに関する結合エネルギーおよびブリスター区域の変化パーセントのグラフ
図6】堆積された状態および流動窒素中で10分間に亘りアニール処理された後の担体および対応するカバーウエハー上のプラズマ重合したジフェニルシリコーンコーティング層の表面エネルギーのグラフ
図7】表面活性化および結合の前に、流動窒素中で10分間に亘りアニール処理された後の、N-Oプラズマ処理された、プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンにより担体に結合された薄いガラスに関する結合エネルギーおよびブリスター区域の変化パーセントのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0108】
ここで、添付図面を参照して、以下に例示の実施の形態をより詳しく記載する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部分を称するために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。しかしながら、請求項の主題は、多くの異なる形態で具体化でき、ここに述べられた実施の形態に限定されると解釈すべきではない。
【0109】
ここに用いられているような方向の用語(例えば、上方、下方、左右、前、後、上部、底部)は、描かれた図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0110】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと、ここに表現することができる。そのような範囲が表現された場合、別の実施の形態は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が「約」という先行詞を使用して近似として表現されている場合、特定の値は別の実施の形態を形成することが理解されよう。複数の範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点と関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0111】
第2のシート上の第1のシートを加工することができる解決策が与えられ、それによって、第1のシート、例えば、薄いガラスシートの少なくとも複数の部分(全てまでも含む)が、その薄いシート上で加工されたデバイスが第2のシート、例えば、担体から取り外せるように、「非結合」状態のままである。有利な表面形状特徴を維持するために、その担体は、典型的に、ディスプレイ等級のガラス基板である。したがって、ある状況において、担体を一度使用した後に単に廃棄することは、無駄が多く、高くつく。それゆえ、ディスプレイの製造費を低下させるために、複数の薄いシート基板を加工するために、担体を再利用できることが望ましい。本開示は、高温加工を含む、TFTなどの製造ラインの苛酷な環境を通じて薄いシートを加工できる物品および方法であって、その高温加工は、約400℃以上の温度での加工であり、製造されているデバイスのタイプに応じて様々であろう、例えば、アモルファスシリコンまたはアモルファスインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)のバックプレーン加工におけるような約450℃まで、結晶質IGZO加工におけるような約500~550℃まで、またはLTPSおよびTFTプロセスに典型的なような約600~650℃までの温度-それでも、薄いシートまたは担体に損傷(例えば、担体および薄いシートの一方が2片以上に割れるまたは壊れる)を与えずに、薄いシートを担体から容易に取り外すことができ、それによって、担体を再利用できる物品および方法を述べる。
【0112】
ガラス物品
図1および2に示されるように、ガラス物品2は、厚さ8を有し、厚さ28を有する第1のシート20(例えば、薄いガラスシート、例えば、以下に限られないが、例えば、10~50μm、50~100μm、100~150μm、150~300μm、300、250、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10μmを含む、約300μm以下の厚さを有するもの)、厚さ38を有するコーティング層30、および厚さ18を有する第2のシート10を備える。
【0113】
ガラス物品2は、より厚いシート、例えば、約0.4mm以上程度、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1.0mmのシートのために設計された装置における第1のシート20の加工を可能にするように構成されているが、第1のシート20自体は、約300μm以下である。厚さ8は、厚さ18、28、および38の合計であり、この厚さは、1つの装置、例えば、基板シート上に電子機器の構成部品を配置するために設計された装置が加工するように設計されたより厚いシートの厚さと等しくて差し支えない。一例において、加工装置は、700μmのシートのために設計されており、その第1のシートが約300μmの厚さ28を有する場合、ひいては、厚さ38が取るに足らないと考えて、厚さ18は、約400μmと選択されるであろう。すなわち、コーティング層30は、一定の縮尺で描かれておらず、むしろ、説明のためだけに、大幅に誇張されている。その上、図2において、コーティング層30は、切り取られて示されている。そのコーティング層は、再利用できる担体を提供するときに、結合面14上に均一に配置することができる。典型的に、厚さ38は、ナノメートルの幅で、例えば、2nmから1μm、5nmから250nm、10から50nm、または20から100nm、もしくは約30、40、50、60、70、80、または90nmであろう。コーティング層の存在は、表面化学分析により、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF SIMS)により検出されるであろう。
【0114】
第2のシート10は、第一面12、結合面14、および周囲16を有する。第2のシート10は、ガラスを含むどの適切な材料のものであってもよい。他の例において、この第2のシートは、非ガラス材料、例えば、セラミック、ガラスセラミック、シリコンウエハー、または金属であって差し支えない(表面エネルギーおよび/または結合は、ガラス担体に関して下記に記載されるものと同様の様式で制御されるであろうから)。第2のシート10は、ガラスから製造されている場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含むどの適切な組成のものであってよく、その最終用途に応じて、アルカリ含有または無アルカリのいずれであってもよい。厚さ18は、約0.2から3mm、またはそれより大きくてもよく、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.65、0.7、1.0、2.0、または3mm、もしくはそれより大きくてもよく、上述したように、厚さ28、および厚さ38が無視できない場合、厚さ38に依存する。1つの実施の形態において、第2のシート10は、図示されるように、一層から作られても、互いに結合された多数の層(多数の薄いシートを含む)から作られてもよい。さらに、担体は、第1世代のサイズ以上、例えば、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第8世代以上(例えば、100mm×100mmから3メートル×3メートル以上のシートサイズ)のサイズのものであってよい。
【0115】
第1のシート20は、第一面22、結合面24、および周囲26を有する。周囲16(第2のシート)および26は、どの適切な形状のものであってよく、互いに同じであっても、互いに異なってもよい。さらに、第1のシート20は、ガラス、セラミック、シリコンウエハー、ガラスセラミック、または金属を含むどの適切な材料のものであってもよい。第2のシート10について先に記載したように、第1のシート20は、ガラスから製造されている場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含むどの適切な組成のものであってよく、その最終用途に応じて、アルカリ含有または無アルカリのいずれであってもよい。この薄いシートの熱膨張係数は、高温での加工中に物品のどのような反りも減少させるために、担体のものと実質的に同じに一致させることができる。第1のシート20の厚さ28は、先に述べたように、300μm以下である。さらに、この第1のシートは、第1世代のサイズ以上、例えば、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第8世代以上(例えば、100mm×100mmから3メートル×3メートル以上のシートサイズ)のサイズのものであってよい。
【0116】
ガラス物品2は、既存の装置による加工に合う厚さを有することができ、同様に、加工が行われる苛酷な環境に耐えることができる。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)加工は、湿式超音波、真空、および高温(例えば、400℃以上)加工を含むであろう。あるプロセスについて、先に述べたように、その温度は、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、そして700℃以上であることがある。
【0117】
物品2が加工される苛酷な環境に耐えるために、結合面14は、第1のシート20が第2のシート10から分離しないような十分な強度で結合面24に結合されるべきである。そしてこの強度は、加工中に第1のシート20が第2のシート10から分離しないように、加工中ずっと維持されるべきである。さらに、第1のシート20を第2のシート10から取り外すために(例えば、第2のシート10を再利用できるように)、結合面14は、最初に設計された結合力、および/または、例えば、その物品が高温、例えば、400℃以上から700℃以上の温度での加工を経る場合に起こるような最初に設計された結合力の変更により生じる結合力のいずれによっても、結合面24に強すぎるほど結合されるべきではない。これらの目的の両方を達成するように、結合面14と結合面24との間の結合強度を制御するために、コーティング層30を使用してもよい。この制御された結合力は、第1のシート20および第2のシート10の極性と非極性の表面エネルギー成分を調節することによって制御される全付着エネルギーに対するファンデルワールス(および/または水素結合)および共有引力(c(covalent attractive)エネルギーを制御することによって達成される。この制御された結合は、例えば、400℃以上の温度、そしてある場合には、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、そして700℃以上の加工温度を含むFPD加工に耐えるのに十分に強力であり、そしてシートを分離するのに十分であるが第1のシート20および/または第2のシート10に著しい損傷を与えない力の印加により剥離可能なままである。例えば、その力は、第1のシート20または第2のシート10のいずれも割らないべきである。そのような剥離により、第1のシート20およびその上に製造されたデバイスを取り外すことができ、担体として第2のシート10を再利用することもできる。
【0118】
コーティング層30は、第1のシート20と第2のシート10との間の固体層として示されているが、その必要はない。例えば、コーティング層30は、0.1nmから1μm厚程度(例えば、1nmから10nm、10nmから50nm、100nm、250nm、500nmから1μm)であってよく、結合面14の全体部分を完全に覆わなくてもよい。例えば、被覆率は、結合面14の100%以下、1%から100%、10%から100%、20%から90%、または50%から90%であってよい。他の実施の形態において、コーティング層30は、50nm厚まで、または他の実施の形態において、100nmより250nm厚までであってよい。コーティング層30は、第2のシート10および第1のシート20の一方または他方とたとえ接触していなくても、第2のシート10と第1のシート20との間に配置されると考えてよい。コーティング層30の別の態様において、その層は、結合面14が結合面24に結合する能力を変更し、それによって、第2のシート10と第1のシート20との間の結合強度を制御する。コーティング層30の材料と厚さ、並びに結合前の結合面14、24の処理を使用して、第2のシート10と第1のシート20との間の結合強度(付着エネルギー)を制御することができる。
【0119】
コーティング層の組成
コーティング層の例としては、有機シロキサン、特に有機シロキサン高分子が挙げられる。そのような有機シロキサン高分子は、薄いシートまたは担体の少なくとも一方の上に酸素・ケイ素結合を有するモノマーを堆積させることにより、または酸化剤の存在下でケイ素含有モノマーを堆積させることにより、形成することができる。酸素・ケイ素結合を有するモノマーを堆積させるときにも、酸化剤を使用して差し支えない。
【0120】
有機シロキサン高分子を形成するのに適したモノマーの一群に、下記に示されるような、式(RSi(Xの化合物があり、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せ(すなわち、アリールアルキル)であり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、前駆体基または離脱基であり;nは、1、2または3である。前駆体基の例としては、ヒドロキシおよびアルコキシが挙げられる。離脱基の例としては、水素、ハロゲン、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびその組合せ(すなわち、アリールアルキル)が挙げられる。前記化合物がフェニルシランまたはジフェニルシランである場合など、Xが離脱基である場合、有機シロキサン高分子は、これらのモノマーを酸化剤、例えば、空気、酸素、亜酸化窒素、二酸化炭素、水蒸気、または過酸化水素と反応させることによって、製造することができる。この反応は、堆積前に、プラズマ中で行うことができる。この群のモノマーによる好ましい化合物の例に、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、またはジフェニルシランがある。
【0121】
好ましい実施の形態において、Rはアリールである。別の好ましい実施の形態において、Xはアルコキシである。別の好ましい実施の形態において、Rはアリールであり、Xはアルコキシである。さらに別の好ましい実施の形態において、前記モノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物であり、ここで、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せ(すなわち、アリールアルキル)である。そのモノマーが、ジメトキシジフェニルシランまたはジエトキシジフェニルシラン(両方ともメトキシまたは両方ともエトキシであるXおよびXに対応する)であることが好ましい。そのようなモノマーを堆積させて、ポリ(ジフェニルシロキサン)である有機シロキサン高分子を得ることが好ましい。
【0122】
【化5】
【0123】
有機シロキサン高分子を形成するのに適したモノマーの別の群に、下記の構造を有するジシロキサン化合物があり、ここで、R~Rは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せ(すなわち、アリールアルキル)である。好ましい実施の形態において、そのモノマーはヘキサメチルジシロキサンである。
【0124】
【化6】
【0125】
前記コーティング層は、単層からなり得る。そのコーティング層が、100nm未満、例えば、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、または10nm未満の厚さを有することが好ましい。
【0126】
そのコーティング層は、複数の層、例えば、2層からなっても差し支えない。そのコーティング層は、底部コーティング層および上部コーティング層からなることができ、その底部コーティング層は担体に結合するのに適しており、その上部コーティング層は、薄いシートに結合するのに適している。その底部コーティング層は、50nm未満、例えば、40nm未満、30nm未満、20nm未満、または10nm未満であることが好ましい。その上部コーティング層は、30nm未満、例えば、20nm未満、または10nm未満であることが好ましい。その底部コーティング層がより多くエラストマー系有機ケイ素を有することが好ましいのに対し、上部コーティング層がより多くのシロキサンの存在を有することが好ましい。
【0127】
コーティング層の堆積
コーティング層を提供する被覆方法の例に、化学的気相成長(CVD)技術、および同様の方法がある。CVD技術の具体例としては、CVD、低圧CVD、大気圧CVD、プラズマ支援CVD(PECVD)、大気圧プラズマCVD、原子層堆積(ALD)、プラズマALD、および化学ビームエピタキシーが挙げられる。被覆方法の別の例は、湿式化学の使用によるものであり、これは、ある場合に使用されることがある。
【0128】
反応性ガス混合物は、有機シランまたは有機シロキサンモノマーを含有するが、この混合物は、制御された量の酸化剤、例えば、空気、酸素、亜酸化窒素、二酸化炭素、水蒸気、または過酸化水素、および/または不活性ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンも含むことがある。
【0129】
コーティング層の表面エネルギー
このコーティング層は、1つの表面(極性および分散成分を含む)について測定して、約40から約75mJ/mの範囲にある表面エネルギーを有する結合面を与えることができ、それにより、その表面により弱い結合が生じる。
【0130】
一般に、コーティング層の表面エネルギーは、堆積された際、および/または、例えば、窒素による活性化によりさらに処理された際に、測定することができる。この固体表面の表面エネルギーは、空気中の固体表面上に個別に堆積された3つの液体-水、ジヨードメタンおよびヘキサデカン-の静的接触角を測定することによって、間接的に測定される。ここに開示された表面エネルギーは、Wuモデル(S.Wu, J.Polym. Sci. C, 34, 19, 1971参照)にしたがって決定した。Wuモデルにおいて、全成分、極性成分、および分散成分を含む表面エネルギーは、3つの試験液体:水、ジヨードメタンおよびヘキサデカンの3つの接触角に理論モデルを合わせることによって測定される。3つの液体の接触角値から、回帰分析を行って、固体表面エネルギーの極性成分と分散成分を計算する。表面エネルギー値を計算するために使用される理論モデルは、3つの液体の3つの接触角値および固体表面(下付文字「S」により示される)並びに3つの試験液体の表面エネルギーの分散成分と極性成分を関連付ける以下の3つの独立した式を含む:
【0131】
【数1】
【0132】
【数2】
【0133】
【数3】
【0134】
式中、下付文字「W」、「D」および「H」は、それぞれ、水、ジヨードメタンおよびヘキサデカンを表し、上付き文字「d」および「p」は、それぞれ、表面エネルギーの分散成分と極性成分を表す。ジヨードメタンおよびヘキサデカンは、実質的に非極性液体であるので、先の一連の式は、以下に変換される:
【0135】
【数4】
【0136】
【数5】
【0137】
【数6】
【0138】
先の一連の3つの式(4~6)から、回帰分析によって、固体表面の2つの未知のパラメータである分散と極性の表面エネルギー成分
が計算される。しかしながら、この手法では、固体表面の表面エネルギーを測定できる限界最大値がある。この限界最大値は水の表面張力であり、それは73mJ/mである。固体表面の表面エネルギーが水の表面張力よりもかなり大きい場合、その表面は、水で十分に濡れ、それによって、接触角が0に近づく。したがって、表面エネルギーのこの値を超えると、全ての計算された表面エネルギー値は、実際の表面エネルギー値にかかわらず、約73~75mJ/mに相当するであろう。例えば、2つの固体表面の実際の表面エネルギーが75mJ/mおよび150mJ/mである場合、液体の接触角を使用して計算された値は、両方の表面について、約75mJ/mとなる。
【0139】
したがって、ここに開示された全ての接触角は、空気中の固体表面上に液滴を配置し、固体表面と、接触線での液体空気界面との間の角度を測定することによって測定される。それゆえ、表面エネルギー値が40mJ/mから75mJ/mであると主張された場合、これらの値は、実際の表面エネルギー値ではなく、上述した方法に基づく計算された表面エネルギー値に対応することを理解すべきである(計算値がその値に近づくと、75mJ/mより大きくなり得る)。
【0140】
コーティング層のアニール処理
コーティング層を堆積させた後、その層を必要に応じてアニール処理することができる。このアニール処理は、コーティング層内の部分的に重合した材料を除去する働きをすることができる。この除去により、例えば、高温での第1のシートおよび第2のシートの加工中に、コーティング層のガス放出を著しく減少させることができる。ガス放出のこの減少により、高温でのより強力な結合をもたらすことができ、それにより、薄いシートの加工をより成功させることが可能になる。アニール処理は、急速熱処理システム(RTP)内で行うことができる。アニール処理は、100℃超、例えば、200℃超、300℃超、400℃超、500℃超、または600℃超の温度であり得る。アニール処理は、例えば、窒素、酸素、または空気を含む雰囲気内で行うことができる。アニール処理は、少なくとも15秒、例えば、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、少なくとも5分、少なくとも6分、少なくとも7分、少なくとも8分、少なくとも9分、または少なくとも10分に亘り得る。アニール処理の時間と温度は、コーティング層の組成に応じて様々であってよい。特定のアニール処理の時間および温度が特定の組成に十分であるか否かは、ガス放出試験1を使用して決定されるであろう。すなわち、コーティング層の特定の組成について、時間・温度アニール処理サイクルを実施し、次いで、ガス放出試験1(下記に記載されている)を行うことができる。カバーの表面エネルギーの変化(ガス放出試験1における)が10mJ/m未満である場合、ひいては、その時間・温度アニール処理サイクルは、ガス放出を最小にするのに十分である。あるいは、特定のアニール処理の時間および温度の充足性(ガス放出を最小にするための)は、その試験時間に亘り特定の試験温度に暴露したときのコーティング層の厚さの変化を観察することによって、分析してもよい。より詳しくは、その上にコーティング層が堆積された基板を、充足性について試験するために、特定の時間・温度アニール処理過程にかける。その時間・温度アニール処理過程を経た後、その基板およびコーティング層(コーティング層を覆うために別の基板がそこに結合されていない)を所望の時間・温度デバイス加工サイクルにかける。所望の時間・温度デバイス加工サイクル後、コーティング層の厚さの変化が最小である場合、ひいては、そのアニール処理は、ガス放出を最小にするのに十分である。アニール処理の時間・温度サイクルの大雑把な開始点を見つけるために、コーティング層として使用すべき材料の熱質量分析が考えられるであろう。ほとんどの材料の厚さ減少(または材料損失)が生じる、予測されるデバイス加工温度辺りの温度が、良好な出発温度であろう。次に、最小のガス放出をもたらす最も効果的な組合せが何により与えられるか見つけるために、時間と温度を変えることができる。一般に、アニール処理温度が上昇するにつれて、十分なアニール処理効果を与えるための時間が減少する。同様に、アニール処理温度が低下するにつれて、十分なアニール処理効果を与えるための時間が増加する。
【0141】
コーティング層の表面活性化
結合のための所望の表面エネルギーは、最初に堆積された有機シロキサンコーティング層の表面エネルギーによって達成されないであろう。それゆえ、堆積された層をさらに処理してもよい。例えば、コーティング層が堆積された後、そのコーティング層に追加の結合能力を加えるために、1つ以上の官能基を必要に応じて加えることができる。例えば、官能基を加えると、コーティング層と薄いシートとの間の結合の追加の部位を与えることができる。その官能基は、プラズマ、例えば、大気圧または低圧プラズマを使用して、加えることができる。その官能基は、極性であることが好ましく、前駆体、例えば、水素、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、アンモニア、アクリル酸、アリルアミン、アリルアルコール、またはその混合物を使用して加えることができる。
【0142】
コーティング層に対する第1のシートまたは第2のシートの結合エネルギー
一般に、2つの表面間の付着エネルギー(すなわち、結合エネルギー)は、ダブルカンチレバービーム法またはウェッジ試験によって測定することができる。これらの試験は、コーティング層/第1のシートまたは第2のシートの界面での接着ボンドジョイント上での力および影響を質的様式でシミュレートする。ウェッジ試験は、一般に、結合エネルギーを測定するために使用される。例えば、ASTM D5041、Standard Test Method for Fracture Strength in Cleavage of Adhesives in Bonded Joints、およびASTM D3762、Standard Test Method for Adhesive-Bonded Surface Durability of Aluminumは、楔で2枚の基板の結合を測定するための標準試験方法である。
【0143】
一例として、その試験方法の要約は、試験が行われる温度と相対湿度、例えば、研究室内での温度と相対湿度を記録する工程を含み得る。第1のシートは、第1のシートと第2のシートとの間の結合を壊す、すなわち、剥離の開始のために、ガラス物品の角で穏やかに最初に剥離されるか、分離される。第2のシートからの第1のシートの剥離を開始するために、鋭いカミソリの刃、例えば、厚さが228±20μmのGEMブランドのカミソリの刃を使用することができる。剥離の開始部の形成の際に、結合を疲労させるために、瞬間的な持続圧力が必要なことがある。剥離部分およびシート間の分離が増加するように剥離前縁が伝播するのを観察できるまで、アルミニウムタブが取り外された平らなカミソリの刃をゆっくりと挿入する。平らなカミソリの刃は、剥離開始を誘発するために、著しく挿入する必要がない。剥離開始部が一旦形成されたら、ガラス物品は、剥離区域が安定化するように少なくとも5分間に亘り静置される。高湿度の環境、例えば、相対湿度が50%を超える環境では、より長い静置時間が必要であろう。
【0144】
剥離開始部が生じたガラス物品を顕微鏡で評価して、剥離長さを記録する。剥離長さは、第2のシートからの第1のシートの端部分離点から、カミソリの刃の最も近い非先細部分まで測定される。剥離長さは、記録され、結合エネルギーを計算するために以下の式に用いられる。
【0145】
【数7】
【0146】
式中、γは結合エネルギーを表し、tは刃物、カミソリの刃または楔の厚さを表し、Eは第1のシート(例えば、薄いガラスシート)のヤング率を表し、tw1は第1のシートの厚さを表し、Eは第2のシート(例えば、ガラス担体)のヤング率を表し、tw2は第2のシートの厚さを表し、Lは、上述したような刃物、カミソリの刃または楔の挿入の際の、第1のシートと第2のシートとの間の剥離長さである。
【0147】
その結合エネルギーは、シリコンウエハー結合におけるように挙動すると理解され、その場合、最初に水素結合されたウエハーの対が加熱されて、シラノール-シラノール水素結合の多くまたは全てをSi-O-Si共有結合に転化させる。最初の室温での水素結合により、約100~200mJ/m程度の結合エネルギーが生じ、これにより結合した表面の分離は可能であるが、高温加工(400から800℃程度)中に達成されるような完全に共有結合したウエハー対は、約2000~3000mJ/mの付着エネルギーを有し、これでは、結合した表面の分離はできない;その代わりに、2つのウエハーはモノリスとして機能する。他方で、両方の表面が、下にある基板の影響を遮蔽するのに十分に大きい厚さの低表面エネルギー材料、例えば、フルオロポリマーで完全に被覆されると、その付着エネルギーは、その被覆材料のものとなるであろうし、非常に低くなり、結合面の間の付着が低くなるか、なくなるであろう。それにより、薄いシートは、担体上で加工できないであろう。2つの極端な例を考える:(a)シラノール基で飽和した2つの標準洗浄1(当該技術分野で公知のSC1)で洗浄したガラス面を、水素結合により(それにより、付着エネルギーは約100~200mJ/mである)室温で互いに結合した、その後、シラノール基を共有Si-O-Si結合(それにより、付着エネルギーは2000~3000mJ/mになる)に転化させる温度に加熱した。この後者の付着エネルギーは高すぎて、ガラス面の対を取り外せない;および(b)低い表面付着エネルギー(表面当たり約12~20mJ/m)を有するフルオロポリマーで完全に被覆された2つのガラス面を室温で結合させ、高温に加熱した。この後者の場合(b)では、ガラス面は低温では結合しないだけでなく(ガラス面が合わされときの、約24~40mJ/mの全付着エネルギーは低すぎるので)、極性反応基が少なすぎるので、それらは、高温でも結合しない。これら2つの極端な例の間、例えば、50~1000mJ/mの間に、所望の程度の制御された結合を生じることのできる、ある範囲の付着エネルギーが存在する。その結果、本願の発明者等は、これらの2つの極端な例の間の結合エネルギーをもたらし、よって、苛酷なFPD加工を通じて互いに結合された一対のガラス基板(例えば、ガラス担体および薄いガラスシート)を維持するのに十分であるだけでなく、加工が完了した後に第1のシート(例えば、薄いシート)を第2のシート(例えば、担体)から取り外せる程度(例えば、400℃以上から700℃の高温加工の後でさえも)の制御された結合を生じることができる、コーティング層を提供する様々な方法を発見した。さらに、第1のシートの第2のシートからの取外しは、機械力により、少なくとも第1のシートに著しい損傷を与えない様式で、好ましくは第2のシートにも著しい損傷を与えないように、行うことができる。
【0148】
選り抜きの表面改質剤、すなわち、コーティング層、および/または結合前の表面の熱または窒素処理を使用することによって、適切な結合エネルギーを達成することができる。この適切な結合エネルギーは、結合面14および結合面24のいずれか一方または両方の化学修飾剤の選択により達成されることがあり、その化学修飾剤は、ファンデルワールス(および/または水素結合、これらの用語は、明細書を通じて交換可能に使用される)付着エネルギー、並びに高温加工(例えば、400℃以上から700℃までの程度)により生じる、起こり得る共有結合付着エネルギーの両方を制御する。
【0149】
特定の加熱条件後に、薄いシート、例えば、薄いガラスシートに対する改質層の結合エネルギーを試験した。特定の表面改質層により、薄いシートが担体に結合したままとなり、それでも加工後に薄いシートを担体から剥離できるか否かを確かめるために、以下の試験を行った。物品(表面改質層を介して担体に結合した薄いシート)を炉に入れ、この炉を、毎秒4℃の速度で所望の加工試験温度まで昇温させた。次に、物品を10分間に亘り炉(所望の加工試験温度に維持した)内に保持した。次に、この炉を45分以内で約150℃に冷却し、試料を取り出した。次に、その物品を、先に述べた結合エネルギー試験にしたがって結合エネルギーについて試験した。
【0150】
ガラス物品の製造
ガラス物品を製造するために、コーティング層が、シートの内の1つ、好ましくは第2のシート上に案内される。所望であれば、コーティング層に、表面エネルギーを増加させ、コーティング層の結合性能を改善するために、表面活性化およびアニール処理などの工程を施しても差し支えない。他方のシートは、第1のシートであることが好ましいが、この他方のシートを結合するために、他方のシートをコーティング層に接触させる。コーティング層が十分に高い表面エネルギーを有する場合、他方のガラスシートをコーティング層に案内すると、そのガラスシートが自己成長(self-propagating)結合によりコーティング層に結合される。自己成長結合は、組立時間および/または費用を減少させる上で都合よい。しかしながら、自己成長結合が生じない場合、薄いガラスシートは、例えば、複数のシートを互いにローラでプレスすることによって、または結合のために2片の材料を一緒にするための、積層の技術分野で公知の他の技術によって、積層などの追加の技術を使用して、コーティング層に結合することができる。
【0151】
コーティング層のガス放出
典型的なウエハー結合用途に使用される高分子接着剤は、一般に、10~100μm厚であり、その温度限界で、またはその近くで質量の約5%を失う。厚い高分子膜から発生するそのような物質について、質量分析法により質量損失またはガス放出の量を数量化することは容易である。他方で、10から100nm厚以下程度の薄い表面処理、例えば、先に記載されたプラズマ重合したコーティング層、並びに熱分解シリコーン油の薄層からのガス放出を測定することは、より難題である。そのような物質について、質量分析法は、十分な感度がない。しかしながら、ガス放出を測定するための他の方法が数多くある。
【0152】
本開示によるガス放出は、以下のガス放出試験により測定される。この試験にしたがって、少量のガス放出を測定することは、組み立てられた物品、すなわち、薄いガラスシートが試験すべきコーティング層を介してガラス担体に結合されたものに基づき、ガス放出を決定するために、ブリスター区域の変化パーセントを使用する。ガラス物品の加熱中、担体と薄いシートとの間に形成されるブリスターは、コーティング層のガス放出を示す。薄いシートの下のガス放出は、薄いシートと担体との間の強力な接着により制限されるであろう。それでもなお、10nm厚以下の層(例えば、プラズマ重合した材料、自己組織化単分子層(SAM)、および熱分解シリコーン油表面処理)は、より小さい絶対質量損失にもかかわらず、熱処理中にブリスターをまだ形成するであろう。そして、薄いシートと担体との間のブリスターの形成により、薄いシート上でのデバイス加工中に、パターン生成、フォトリソグラフィー加工、および/またはアライメントに関する問題が生じるであろう。その上、薄いシートと担体との間の結合区域の境界での泡立ちにより、あるプロセスからのプロセス流体が後続プロセスを汚染するという問題が生じるであろう。5以上のブリスター区域の変化%は、重大であり、ガス放出を示し、望ましくない。他方で、1以下のブリスター区域の変化%は、取るに足らず、ガス放出がないことを示す。
【0153】
手作業結合によるクラス1000のクリーンルーム内での結合した薄いガラスの平均ブリスター区域は、約1%である。結合した担体におけるブリスター%は、担体、薄いガラスシート、および表面調製の清浄度の関数である。これらの初期欠陥は、熱処理後のブリスター成長の核形成部位としての機能を果たすので、1%未満の熱処理の際のブリスター区域のどの変化も、試料調製のばらつき内である。この試験を行うために、透過原稿ユニットを備えた市販のデスクトップ型スキャナー(Epson Expression 10000XL Photo)を使用して、結合直後の薄いシートと担体を結合する区域の第1の走査画像を作成した。508dpi(50μm/画素)および24ビットRGBを使用し、標準Epsonソフトウェアを使用して部品を走査した。この画像処理ソフトウェアは、最初に、必要に応じて、試料の異なる区分の画像を1つの画像に綴じ、スキャナー・アーチファクトを除去する(スキャナーに試料を用いずに行った検定標準走査を使用することにより)ことによって、画像を調製する。次に、その結合区域を、標準的な画像処理技術、例えば、閾値化、ホールフィリング、縮小処理/膨張処理、およびブロブ解析を使用して解析する。Epson Expression 10000XL Photoプリンタの代わりに、Epson Expression 11000XL Photoも同様に使用してよい。透過モードにおいて、結合区域のブリスターは、走査画像で目に見え、ブリスター区域の値を決定することができる。次に、ブリスター区域を全結合区域(すなわち、薄いシートと担体との間の全重複区域)と比較して、全結合区域に対する結合区域内のブリスター区域の面積%を計算する。次に、それらの試料を、10分までに亘り、300℃、400℃、500℃、および600℃の試験限界温度で、N雰囲気内においてModular Process Technology(MPT、カリフォルニア州、サンノゼに事業所がある)から得られるMPT-RTP600s Rapid Thermal Processingシステム内で熱処理する。具体的に、実施した時間・温度サイクルは、以下を含んだ:物品を、室温および大気圧で加熱室に入れる工程;次に、加熱室を毎分9℃の速度で試験限界温度に加熱した;約10分間に亘り加熱室を試験限界温度に維持した;次に、加熱室を炉の冷める速度で200℃に冷却した;加熱室から物品を取り出し、物品を室温まで冷ませた;次いで、物品をオプティカルスキャナーで2回目に走査した。次に、第2の走査からのブリスター区域%を先のように計算し、第1の走査からのブリスター区域%と比較して、ブリスター区域の変化%を決定した。先に述べたように、5%以上のブリスター区域の変化は、重大であり、ガス放出を示す。ブリスター区域の変化%は、ブリスター区域の元のばらつき%のために、測定基準として選択した。すなわち、ほとんどのコーティング層は、薄いシートと担体を調製した後であって、それらを結合する前の、取扱いと清浄度のために、第1の走査において約2%のブリスター区域を有する。しかしながら、材料間でばらつきが生じることがある。
【0154】
ブリスター区域の変化パーセントにより例示されるような、測定されたブリスター区域%も、第1のシートの結合面と接触していないコーティング層の結合面の全表面積のパーセントとして特徴付けることができる。上述したように、第1のシートと接触していないコーティング層の結合面の全表面積のパーセントは、ガラス物品が、毎分約400℃から約600℃の範囲の速度で、室温から、500℃、600℃、650℃、そして700℃まで室内で加熱し、次に、10分間に亘り試験温度に保持し、その後、ガラス物品を室温まで冷ますことによる温度サイクルを施した後に、5%未満、3%未満、1%未満、そして0.5%未満までであることが好ましい。ここに記載されたコーティング層により、ガラス物品に上述した温度サイクルおよび熱試験を施した後に、第1のシートを2片以上に割らずに、第1のシートを第2のシートから分離することができる。
【0155】
ガラス物品の加工
必要に応じて、結合表面の調製と共に、コーティング層を使用すると、制御された結合区域、すなわち、物品をFPDタイプのプロセス(真空および湿式プロセスを含む)で加工するのに十分な、第1のシートと第2のシートとの間の室温結合を提供できる結合区域であり、なおかつ、物品の高温加工、例えば、FPDタイプの加工またはLTPS加工後に、第1のシートを第2のシートから取り外せる(それらのシートに損傷を与えずに)ように第1のシートと第2のシートとの間の共有結合を制御する(高温でさえも)結合区域を達成することができる。FPD加工に適した再利用できる担体を提供するであろう、潜在的な結合面の調製、および様々な結合エネルギーを有するコーティング層を評価するために、一連の試験を使用して、各々の適合性を評価した。異なるFPD用途には異なる要件があるが、LTPSおよび酸化物TFTプロセスは、現段階では最も厳しいと思われる。それゆえ、これらのプロセスは、物品2の所望の用途であるので、それらのプロセスの工程を代表する試験を選択した。酸化物TFTプロセスにおいて、約400℃のアニール処理が使用されるのに対し、LTPS加工では、600℃を超える結晶化およびドーパント活性化工程が使用される。したがって、以下の試験は、特定の結合面の調製およびコーティング層により、FPD加工中ずっと薄いシートを担体に結合したままにする一方で、そのような加工(400℃以上から700℃までの温度での加工を含む)後に、薄いシートを担体から取り外せる(薄いシートおよび/または担体に損傷を与えずに)傾向を評価するために行った。
【実施例
【0156】
実施例1
酸素およびジメトキシジフェニルシランからの低圧プラズマ放電で、0.7mmの担体(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる、Corning(登録商標)EAGLE XG(登録商標)無アルカリディスプレイ用ガラスから製造された)上にジフェニルシリコーンプラズマ高分子コーティング層(ポリ(ジェニルシロキサン)としても知られている)を堆積させた。堆積は、150℃で気化器中に0.1ミリリットル毎分(mL/分)のジメトキシジフェニルシランを流すことによる50ミリトル(mT)(約6.7Pa)の反応室圧力、40標準立方センチメートル毎分(sccm)のO、2つのRF駆動電極に、13.56MHzのRFの周波数での25~50ワット(W)のバイアスを印加して、壁を150℃に加熱したPlasma-Treat PTS 150システム(カリフォルニア州、ベルモント所在のPlasmatreat USA Inc.から入手できる低圧高温壁CVD反応装置)内で行った。このシステムにおいて、RFが反応室内の一対の電極を駆動し、基板が、電極間の放電の浮遊電位にある。
【0157】
比較例1
酸素およびフェニルトリエトキシシランからの低圧プラズマ放電で、担体(0.7mm厚の「Corning」「EAGLE XG」無アルカリディスプレイ用ガラスから製造した)上にフェニルシリコーンプラズマ高分子コーティング層(ポリ(フェニルシロキサン)としても知られている)を堆積させた。堆積は、150℃、0.1mL/分のフェニル-トリエトキシシランによる50mT(約6.7Pa)、40sccmのO流、および13.56MHzのRFの周波数での25~50Wのバイアスで、Plasma-Treat PTS 150システム内で行った。
【0158】
実施例1および比較例1の試験
コーティング層の熱安定性
表示の温度での流動窒素中の10分間の加工に対してコーティング層の厚さをプロットすることにより明示されるような、プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンコーティング層の熱安定性が、図3に示されている。図3から、加工温度が300℃を超えると、プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンは、堆積された状態ではあまり熱安定性ではないことが分かる。詳しくは、両方の材料は、300℃を超える、特に400℃以上の温度での流動窒素中の10分の加熱の際に、著しい膜厚損失を示した。
【0159】
コーティング層の品質
熱的不安定性は、図4に示されるような著しい量のガス放出をもたらす。この図は、試験1において論じたような、表示の温度での流動窒素中の10分間の加工に対して被覆された担体およびカバーウエハーの表面エネルギーをプロットしたグラフである。詳しくは、試験1によれば、ガス放出は、10mJ/m超の表面エネルギーの変化により示されるのに対し、5mJ/m未満の表面エネルギーの変化は、ガス放出のないことと一致する。このグラフには示されていないが、フェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンのカバーの各々の表面エネルギーは、室温(約16℃)で、約75mJ/m、すなわち、裸ガラスのものであった。図4から分かるように、フェニルシリコーンカバー(白丸のデータ点)は、加工温度が室温(約16℃)から300℃および600℃に移動したときに、10mJ/m超の表面エネルギーの変化を経た。室温での約75mJ/mから300℃での約50mJ/mへのフェニルシリコーンカバーの表面エネルギーの減少は、材料が担体から剥がれ、カバー上に堆積されていることと一致する。300℃から600℃へのフェニルシリコーンカバーの表面エネルギーの増加は、カバー上に以前に堆積された(担体から剥がれた)材料が、そのようなより高い温度で焼き払われていることと一致する。同様に、ジフェニルシリコーンカバー(白い正方形のデータ点)も、加工温度が300℃から600℃に移動するときに、10mJ/m超の表面エネルギーの変化を示した。しかしながら、室温から300℃への移動では、ジフェニルシリコーンカバーの表面エネルギー(白い正方形のデータ点)は、約75mJ/mとほぼ同じままであった。このように、少なくとも300℃までと、400℃未満の温度で、ジフェニルシリコーンは、ガス放出がほとんどまたは全くなく、堆積された状態で使用できる。
【0160】
表面活性化
プラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンの表面は、表1に示されるように、窒素、または窒素と酸素の混合物へのプラズマ暴露によって容易に改変された。このプラズマ活性化により、そのコーティングの表面エネルギーが、N・O混合物で、フェニルシリコーンについての40mJ/mから、裸ガラスの表面エネルギー近くまで上昇した。この表面改質は、Oxford PlasmaLab 100内で行ったが、低圧または大気圧放電によっても行うことができたであろう。このプラズマ処理は、2つの逐次工程で行うことができる。詳しくは、水素プラズマ(30秒間、10sccmのC流、50sccmのH流、5mT(約0.67Pa)の圧力の反応室、1500Wのコイル、13.56MHzの周波数での50WのRF)による処理の直後に、プラズマを消さずに、Nプラズマ処理(5mT(約0.67Pa)の反応室圧、40sccmのN流、1500Wのコイル、13.56MHzの周波数での50Wのバイアス、5秒間)、またはN・Oプラズマ処理(5秒間、35sccmのN流、5sccmのO2流、15mT(約2.0Pa)の反応室圧、800Wのコイル、13.56MHzの周波数での50W RFのバイアス)のいずれかが続く。表面エネルギーを裸ガラスのものの近くまで上昇させることによって、薄いガラスシートは、高速自己成長結合によって担体と室温で結合した。
【0161】
表1には、フェニルシリコーン層およびジフェニルシリコーン層の、接触角(水「W」、ヘキサデカン「HD」およびジヨードメタン「DIM」)および表面エネルギー(Wuモデルにより測定して(先に記載の)、分散成分「D」、極性成分「P」、および全「T」)が示されている。詳しくは、表1には、裸の担体、被覆されたが未処理の担体、および窒素、または窒素と酸素により処理された被覆層に関する、接触角および表面エネルギーが示されている。それゆえ、例えば、表1の第一行目は、裸の担体が、8.37のW接触角、19.67のHD接触角、24.67のDIM接触角、および75.92mJ/mの全表面エネルギー(その内、分散成分が34.56mJ/mであり、極性成分が41.36mJ/mである)を有したことを示している。同様に、表1の第二行目は、フェニルシリコーンで被覆されたが未処理の担体が、81.63のW接触角、2.83のHD接触角、53.2のDIM接触角、および40.09mJ/mの全表面エネルギー(その内、分散成分が30.36mJ/mであり、極性成分が9.73mJ/mである)を有したことを示している。
【0162】
【表1】
【0163】
結合品質
コーティング層の表面エネルギーを、例えば、被覆された担体のN・O処理によって、裸ガラスのものの近くまで上昇させた後、100μmの薄いガラスシート(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる、「Corning」Willow(登録商標)ガラスから製造された)をそれに結合した。示された温度での流動窒素中での、MPT-RTP600s Rapid Thermal Processingシステムを使用した10分の処理後の担体上のプラズマ重合したフェニルシリコーンおよびジフェニルシリコーンコーティング層の結合エネルギーおよびそれに結合した薄いガラスシートのブリスター区域の変化で示されるような、コーティング層と薄いガラスシートとの間の結合の品質が、図5に示されている。図から分かるように、結合エネルギーが減少すると、ブリスター区域が増加し、これは、コーティング層に結合した薄いガラスシートの表面の割合が減少することを示す。より詳しくは、フェニルシリコーンについて、試料が300℃を超える温度に加熱されたとき、例えば、400℃で加熱されたとき(ほぼ20%のブリスター区域の変化)、または500℃で加熱されたとき(15%を超えるブリスター区域の変化)、ブリスター区域の変化%(先の試験2による、白の菱形データ点により示されるような)は5%を軽く上回る。したがって、この材料は、約300℃の温度まで有用である。同様に、ジフェニルシリコーンについて、試料が400℃超に加熱されたとき、例えば、500℃で加熱されたとき(10%超のブリスター区域の変化)、または600℃で加熱されたとき(約25%のブリスター区域の変化)、ブリスター区域の変化%(先の試験2による、白の正方形データ点により示されるような)は5%を軽く上回る。したがって、この材料は、約400℃の温度まで有用である。
【0164】
アニール処理
ガス放出を減少させるために、表面改質層のどのような表面活性化も前に、被覆された担体にも、測定の前であって、薄いシートとの結合の前に、流動窒素中において400℃で10分間に亘りアニール処理を施した。図6は、最初のアニール処理工程の有無による、ジフェニルシリコーン(「DPSO」)のガス放出(試験1による)の比較を示している。より詳しくは、図6は、示された温度での流動窒素中の10分間の加熱後の、被覆された担体の表面エネルギーおよびカバーウエハーの表面エネルギーを示している。最初のアニール処理工程に行われた測定は、「400C outgas」または「outgas400C」で示され、最初のアニール処理工程が行われなかった測定は、堆積された状態について、「as dep」または「as deposited」で示されている。それゆえ、図6に示されるように、担体上に堆積された状態のDPSOの表面エネルギーは、担体が300℃から約600℃に及ぶ温度で加熱されたときに、50mJ/m辺りでほぼ一定のままである、黒の菱形データ点を参照のこと;堆積された状態のDPSOを有する担体上に配置されたカバーウエハーの表面エネルギー(試験1による)は、300℃で加熱された後の約75mJ/mから、400℃以上で加熱された後の約50mJ/mに減少する、白の菱形データ点を参照のこと;担体上に堆積され、次いで、10分間に亘り400℃での加熱の最初のアニール処理工程が施されたDPSOの表面エネルギーは、300℃で加熱された後に、約55mJ/mの表面エネルギーを有し、400℃から500℃で加熱された後の約50mJ/mの表面エネルギーを有し、600℃で加熱された後の約60mJ/mの表面エネルギーを有する、黒の正方形のデータ点を参照のこと;そして、DPSOが堆積された担体上に堆積され、次いで、10分間に亘り400℃でアニール処理されたカバーウエハーの表面エネルギー(試験1による)は、300℃で加熱された後の約65mJ/mから、600℃で加熱された後の約60mJ/mに変化する、白の正方形のデータ点を参照のこと。それゆえ、白の正方形のデータ点により示されるように、アニール処理されたDPSO上のカバーウエハーの表面エネルギーの変化は、300℃から600℃の範囲に亘り5mJ/m未満しか変化せず、これは、試験1のように、ガス放出がないことと一致する。
【0165】
アニール処理後の結合品質
図7は、図示された測定前に、流動窒素中において10分間に亘る400℃での最初のアニール処理工程を施した試料に関する結合エネルギーおよびブリスター区域の変化%(試験2による)を示している。すなわち、0.7mmの「EAGLE XG」担体に、プラズマ重合したフェニルシリコーンまたはプラズマ重合したジフェニルシリコーンのいずれかを被覆し、次いで、流動窒素中における10分間に亘る400℃での加熱を施し、次いで、その被覆された担体を、N・Oプラズマで表面活性化して、その表面エネルギーを裸ガラスのものの近くまで上昇させた後に、100μmの「Willow」Glass薄いガラスシートに結合して試験物品を形成した。次に、この試験物品に、流動窒素中において10分間に亘り示された温度でのMPT-RTP600s Rapid Thermal Processingシステム内における処理を行った。図7の測定は以下の事を示す:フェニルシリコーンが結合した試験物品の結合エネルギーは、急激に、すなわち、300℃で加熱したときの約700mJ/mから、600℃で加熱したときの約0mJ/mに減少する、黒の菱形データ点を参照のこと;フェニルシリコーンが結合した試験物品のブリスター区域の変化パーセントは、300℃で加熱したときに5%未満のままであったが、物品を400℃以上の温度で加熱したときに、10%超(ガス放出を示す)に急激に上昇する、白の菱形データ点を参照のこと;ジフェニルシリコーンが結合した試験物品の結合エネルギーは、約300℃から約600℃の範囲の温度で加熱したときに、約750mJ/mから約550mJ/mの範囲のままであり、薄いガラスシートは担体から剥離可能なままである、黒の正方形のデータ点を参照のこと;ジフェニルシリコーンが結合した試験物品のブリスター区域の変化パーセントは、300℃から600℃の範囲の温度で加熱したときに、10%未満のままである、白の正方形のデータ点を参照のこと。ジフェニルシリコーンが結合した試験物品について、特に500℃辺りで、ある程度のガス放出があったが、その試料は、それでも、試験中ずっと完全なままであり、600℃で加熱された後でさえも、剥離可能であった。これは、これらの試験物品のために調製されたジフェニルシリコーンは、少なくとも600℃までの温度を含む幅広い温度範囲に亘り、すなわち、LTPS加工のために、有用であろう。他方で、図7の試験物品のために調製されたフェニルシリコーンは、300℃までの温度を要求するデバイス、例えば、カラーフィルタやタッチセンサを加工するために有用であろう。
【0166】
実施例2
2つの別々の実験において、室温または100℃で誘電体バリア放電(DBD)タイプのリニア型大気圧プラズマ内において0.7mmの「EAGLE XG」担体上にプラズマ重合したヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)コーティング層を堆積させた(約100ワットと200ワットの間の電力、13.56MHzの周波数を使用し、約30または約50sccmの流量でHMDSOを運ぶための搬送ガスとしてのHe、0~10sccmのO流量、および主要ガスとしての余計なHe、室温または100℃の堆積、2mm辺りのプラズマヘッドと基板の距離を使用して)。2つの別々の実験に関する堆積におけるHMDSOおよびO流量、並びに原子間力顕微鏡(AFM)により測定される表面エネルギーおよび粗さが、表2に示されている。次に、被覆された担体を清浄な100μmの薄いガラスシート(「Corning」「Willow」ガラスから製造された)に結合し、N環境のRTP内において10分間に亘り600℃に曝した。堆積条件、表面エネルギー、結合エネルギーおよびブリスター区域の変化も、表2に示されている。この薄いガラスは、たった364mJ/mの結合エネルギーであることに留意すると、600℃の加工後でさえも、処理済み基板から容易に剥離できたであろう。600℃での加熱後のブリスター区域の8~9%の変化パーセントは、いくらかあるが、最小のガス放出と一致する。実施例2はクリーンルーム内で行われず、それによって、担体、薄いガラスシート、およびコーティング層は、加工中に粒子汚染に曝されたことに留意することが有益である。この実施例が、担体、薄いガラスシート、および/またはコーティング層への汚染が減少した、クリーンルーム内で行われた場合、薄いガラスシートと担体との間のより良好な結合品質により与えられる、核形成に対する障壁が増加しているので、ブリスター区域の変化はさらにより小さかったであろうと考えられる。
【0167】
【表2】
【0168】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに開示された実施の形態に、様々な改変および変更を行えることが当業者には明白であろう。記載された精神および様々な原理から実質的に逸脱せずに、上述した実施の形態に、多くの変更および改変が行われるであろう。そのような改変および変更の全ては、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。例えば、非限定的な実施の形態には以下が挙げられる。
【0169】
実施の形態1
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合している、物品。
【0170】
実施の形態2
前記プラズマ重合した有機シロキサン化合物が、前記第1のシート結合面および前記第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成される、実施の形態1の物品。
【0171】
実施の形態3
前記モノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、実施の形態2の物品。
【0172】
実施の形態4
がアリールである、および/またはXがアルコキシである、実施の形態3の物品。
【0173】
実施の形態5
前記モノマーが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、およびジフェニルシランからなる群より選択される少なくとも1種類のモノマーである、実施の形態3の物品。
【0174】
実施の形態6
前記モノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施の形態2の物品。
【0175】
【化7】
【0176】
実施の形態7
前記モノマーがヘキサメチルジシロキサンである、実施の形態6の物品。
【0177】
実施の形態8
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、実施の形態1の物品。
【0178】
実施の形態9
前記第1のコーティング層結合面が、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する、実施の形態1から8いずれか1つの物品。
【0179】
実施の形態10
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施の形態1から9いずれか1つの物品。
【0180】
実施の形態11
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施の形態1から10いずれか1つの物品。
【0181】
実施の形態12
前記第1のコーティング層結合面が、窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで前記第1のシート結合面に結合されている、実施の形態1から11いずれか1つの物品。
【0182】
実施の形態13
窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である、実施の形態1から12いずれか1つの物品。
【0183】
実施の形態14
物品を製造する方法において、
プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法。
【0184】
実施の形態15
前記第1のシートの結合面が前記コーティング層結合面に結合される前に、該結合面を酸素、窒素、またはその組合せに暴露して、該コーティング層結合面の表面エネルギーを増加させる工程をさらに含み、該コーティング層結合面の表面エネルギーが、40mJ/mと75mJ/mの間まで増加させられる、実施の形態14の方法。
【0185】
実施の形態16
前記モノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、実施の形態14の方法。
【0186】
実施の形態17
がアリールである、および/またはXがアルコキシである、実施の形態16の方法。
【0187】
実施の形態18
前記モノマーが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、およびジフェニルシランからなる群より選択される少なくとも1種類のモノマーを含む、実施の形態16の方法。
【0188】
実施の形態19
前記モノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施の形態14の方法。
【0189】
【化8】
【0190】
実施の形態20
前記モノマーがヘキサメチルジシロキサンである、実施の形態19の方法。
【0191】
実施の形態21
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、実施の形態14の方法。
【0192】
実施の形態22
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施の形態14から20いずれか1つの方法。
【0193】
実施の形態23
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施の形態14から21いずれか1つの方法。
【0194】
実施の形態24
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、実施の形態14から22いずれか1つの方法。
【0195】
実施の形態25
前記コーティング層に、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施す工程を含む、実施の形態24の方法。
【0196】
実施の形態26
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合している、物品。
【0197】
実施の形態27
前記ポリ(ジフェニルシロキサン)コーティング層が、前記第1のシート結合面および前記第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成され、該モノマーは、該第1のシート結合面および該第2のシート結合面の少なくとも一方の上に堆積されており、該モノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施の形態26の物品。
【0198】
【化9】
【0199】
実施の形態28
前記第1のコーティング層結合面が、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する、実施の形態26の物品。
【0200】
実施の形態29
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施の形態26から28いずれか1つの物品。
【0201】
実施の形態30
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施の形態26から29いずれか1つの物品。
【0202】
実施の形態31
前記第1のコーティング層結合面が、窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで前記第1のシート結合面に結合されている、実施の形態26から30いずれか1つの物品。
【0203】
実施の形態32
窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である、実施の形態26から31いずれか1つの物品。
【0204】
実施の形態33
物品を製造する方法において、
第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法。
【0205】
実施の形態34
前記モノマーが、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施の形態33の方法。
【0206】
【化10】
【0207】
実施の形態35
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施の形態33または34の方法。
【0208】
実施の形態36
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施の形態33から35いずれか1つの方法。
【0209】
実施の形態37
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、実施の形態33から36いずれか1つの方法。
【0210】
実施の形態38
前記コーティング層に、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施す工程を含む、実施の形態37の方法。
【0211】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0212】
実施形態1
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合している、物品。
【0213】
実施形態2
前記プラズマ重合した有機シロキサン化合物が、前記第1のシート結合面および前記第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成される、実施形態1に記載の物品。
【0214】
実施形態3
前記モノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、実施形態2に記載の物品。
【0215】
実施形態4
がアリールである、および/またはXがアルコキシである、実施形態3に記載の物品。
【0216】
実施形態5
前記モノマーが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、およびジフェニルシランからなる群より選択される少なくとも1種類のモノマーである、実施形態3に記載の物品。
【0217】
実施形態6
前記モノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施形態2に記載の物品。
【0218】
【化11】
【0219】
実施形態7
前記モノマーがヘキサメチルジシロキサンである、実施形態6に記載の物品。
【0220】
実施形態8
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、実施形態1に記載の物品。
【0221】
実施形態9
前記第1のコーティング層結合面が、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の物品。
【0222】
実施形態10
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の物品。
【0223】
実施形態11
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の物品。
【0224】
実施形態12
前記第1のコーティング層結合面が、窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで前記第1のシート結合面に結合されている、実施形態1から8いずれか1つに記載の物品。
【0225】
実施形態13
窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である、実施形態1から8いずれか1つに記載の物品。
【0226】
実施形態14
物品を製造する方法において、
プラズマCVDを使用して、第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、プラズマ重合した有機シロキサン化合物から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法。
【0227】
実施形態15
前記第1のシートの結合面が前記コーティング層結合面に結合される前に、該結合面を酸素、窒素、またはその組合せに暴露して、該コーティング層結合面の表面エネルギーを増加させる工程をさらに含み、該コーティング層結合面の表面エネルギーが、40mJ/mと75mJ/mの間まで増加させられる、実施形態14に記載の方法。
【0228】
実施形態16
前記モノマーが、式(RSi(Xの化合物から作られ、式中、各Rは、独立して、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;mは、1、2または3であり;各Xは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せであり;nは、1、2または3である、実施形態14に記載の方法。
【0229】
実施形態17
がアリールである、および/またはXがアルコキシである、実施形態16に記載の方法。
【0230】
実施形態18
前記モノマーが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジブロモジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルシラン、フェニルシラン、およびジフェニルシランからなる群より選択される少なくとも1種類のモノマーを含む、実施形態16に記載の方法。
【0231】
実施形態19
前記モノマーが、下記の構造を有するジシロキサン化合物から作られ、式中、R~Rの各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施形態14に記載の方法。
【0232】
【化12】
【0233】
実施形態20
前記モノマーがヘキサメチルジシロキサンである、実施形態19に記載の方法。
【0234】
実施形態21
前記コーティング層がポリ(ジフェニルシロキサン)から作られる、実施形態14に記載の方法。
【0235】
実施形態22
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施形態14から20いずれか1つに記載の方法。
【0236】
実施形態23
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施形態14から20いずれか1つに記載の方法。
【0237】
実施形態24
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、実施形態14から20いずれか1つに記載の方法。
【0238】
実施形態25
前記コーティング層に、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施す工程を含む、実施形態24に記載の方法。
【0239】
実施形態26
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
第1のコーティング層結合面と第2のコーティング層結合面を有し、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層、
を備え、
前記第1のコーティング層結合面は前記第1のシート結合面と結合しており、前記第2のコーティング層結合面は前記第2のシート結合面と結合している、物品。
【0240】
実施形態27
前記ポリ(ジフェニルシロキサン)コーティング層が、前記第1のシート結合面および前記第2のシート結合面の少なくとも一方の上にモノマーを堆積させることによって形成され、該モノマーは、該第1のシート結合面および該第2のシート結合面の少なくとも一方の上に堆積されており、該モノマーは、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施形態26に記載の物品。
【0241】
【化13】
【0242】
実施形態28
前記第1のコーティング層結合面が、40mJ/mと75mJ/mの間の表面エネルギーを有する、実施形態26に記載の物品。
【0243】
実施形態29
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施形態26から28いずれか1つに記載の物品。
【0244】
実施形態30
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施形態26から28いずれか1つに記載の物品。
【0245】
実施形態31
前記第1のコーティング層結合面が、窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した後に、700mJ/m未満の結合エネルギーで前記第1のシート結合面に結合されている、実施形態26から28いずれか1つに記載の物品。
【0246】
実施形態32
窒素雰囲気において10分間に亘り前記物品を600℃の温度に暴露した場合、ブリスター区域の変化パーセントが10未満である、実施形態26から28いずれか1つに記載の物品。
【0247】
実施形態33
物品を製造する方法において、
第2のシートの結合面上にモノマーを堆積させることによって、ポリ(ジフェニルシロキサン)から作られたコーティング層を該第2のシートの結合面上に形成する工程であって、該コーティング層はコーティング層結合面を有する工程、および
前記コーティング層結合面を第1のシートの結合面に結合する工程、
を有してなる方法。
【0248】
実施形態34
前記モノマーが、下記の構造を有するジフェニルシラン化合物から作られ、式中、XおよびXは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはその組合せである、実施形態33に記載の方法。
【0249】
【化14】
【0250】
実施形態35
前記コーティング層が、100nm未満の厚さを有する、実施形態33または34に記載の方法。
【0251】
実施形態36
前記コーティング層が底部コーティング層および上部コーティング層からなり、該底部コーティング層は該上部コーティング層と前記第2のシートとの間にあり、該底部コーティング層は10nmと80nmの間の厚さを有し、該上部コーティング層は10nmと50nmの間の厚さを有する、実施形態33または34に記載の方法。
【0252】
実施形態37
前記第1のシートおよび前記コーティング層が結合される前に、該コーティング層に窒素雰囲気において少なくとも300℃の温度で熱アニール処理を施す工程をさらに含む、実施形態33または34に記載の方法。
【0253】
実施形態38
前記コーティング層に、少なくとも400℃の温度で熱アニール処理に施す工程を含む、実施形態37に記載の方法。
【符号の説明】
【0254】
2 物品
8、18、28、38 厚さ
10 第2のシート
12、22 第一面
14、24 結合面
16、26 周囲
20 第1のシート
30 コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7