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  • 特許-無水歯磨剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】無水歯磨剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20221004BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221004BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221004BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q11/00
A61K8/19
A61K8/81
A61K8/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019533088
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017083351
(87)【国際公開番号】W WO2018114825
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】1621685.5
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーン,シャザダ ヤッサー
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104288466(CN,A)
【文献】国際公開第2010/054494(WO,A1)
【文献】特表2004-510802(JP,A)
【文献】特表2004-506663(JP,A)
【文献】米国特許第06458340(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
500ppmから2000ppmのフッ化物を与えるのに十分なフッ化物イオン源、
2重量%から8重量%の酢酸アルカリ土類金属塩、酢酸亜鉛及びこれらの2つ以上の組合せから選択される酢酸塩、及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩、硝酸亜鉛及びこれらの2つ以上の組合せから選択される硝酸塩
0.3重量%から1.0重量%のカルボキシビニルポリマー、並びに
35重量%から75重量%の、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される湿潤剤
を含む、非水性歯磨剤組成物。
【請求項2】
酸塩が酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである、請求項1に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項3】
酸塩が酢酸ストロンチウムである、請求項2に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項4】
酸塩が硝酸ストロンチウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項5】
酸塩が硝酸ストロンチウムである、請求項4に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項6】
カルボキシビニルポリマーが、ポリアリルスクロース又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のコポリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項7】
湿潤剤がグリセリンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項8】
ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の非水性歯磨剤組成物。
【請求項9】
研磨剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の非水性歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯磨剤組成物に関し、特に非水性(無水)歯磨剤組成物に関する。本発明による非水性組成物は、歯磨製剤で望ましい他の成分と併用するための好適な媒体又は基剤をもたらす。このような成分としては、硝酸カリウム、フッ化第一スズ、又はフッ化ナトリウムなどの非水性歯磨製剤中で不安定で不適合となり得る成分、及び/又は生体活性ガラスなどの水性歯磨剤組成物中で不安定で不適合な成分が挙げられる。本発明による非水性歯磨剤組成物は、酢酸ストロンチウムなどの酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸ストロンチウムなどの硝酸アルカリ土類金属塩、カルボキシビニルポリマー、並びに湿潤剤を含む。
【背景技術】
【0002】
非水性歯磨剤組成物は当該分野で公知であり、水系の標準的な歯磨剤組成物で生じる不適合性又は安定性の問題を解決する手段として提案されてきた。
【0003】
米国特許第4,988,500号(The Procter & Gamble Company)では、カルボキシビニルポリマー、中和剤、過酸化物又は過ホウ酸化合物、及び無水湿潤剤を含む無水口腔組成物が記載されている。しかし、許容できる粘度特性を有する歯磨剤組成物を得るには、カルボキシビニルポリマーを中和する必要がある。
【0004】
米国特許第4,647,451号(Colgate-Palmolive Company)では、多糖類ガム及びグリセリン湿潤剤を含む無水歯磨剤が記載されている。ポリエチレングリコールを分散剤として添加してもよい。
【0005】
米国特許第5,670,137号(L'Oreal)では、グリセリン、1つ以上の疎水性鎖を有する1つ以上のヒドロキシエチルセルロース、及び平均粒径が40nm未満の1つ以上の焼成シリカを含む無水媒体を含有する歯磨剤組成物が記載されている。
【0006】
米国特許第5,882,630号(SmithKline Beecham)では、カルボキシビニルポリマー、湿潤剤、ポリエチレングリコール、及び研磨剤を含む無水歯磨剤が記載されている。好適なカルボキシビニルポリマーとして記載されているものとしては、ポリアリルスクロースで架橋されたアクリル酸のコポリマーが挙げられ、例えばCarbopol 974及び934などがあり、Carbopol 974が好ましい。
【0007】
国際公開第96/03108号(SmithKline Beecham plc)では、ヒドロキシエチルセルロースポリマー、湿潤剤、ポリエチレングリコール、及び歯科的に許容できる研磨剤を含む非水性歯磨剤組成物が記載されている。
【0008】
先行技術に記載されている組成物により歯磨剤組成物で認められる製剤の問題にいくぶんか対処可能であるが、例えば許容できる流動特性を示す非水性歯磨剤組成物の提供など、代替物に対する必要性は依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4,988,500号
【文献】米国特許第4,647,451号
【文献】米国特許第5,670,137号
【文献】米国特許第5,882,630号
【文献】国際公開第96/03108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩、カルボキシビニルポリマー、並びに湿潤剤を含む非水性歯磨剤組成物を提供する。
【0012】
本発明は、酢酸ストロンチウムなどの酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸ストロンチウムなどの硝酸アルカリ土類金属塩がカルボキシビニルポリマー並びに湿潤剤を含む非水性基剤の安定化に寄与するという予想外の知見に基づく。有利には、本知見により組成物中に不適合な材料を加えることが可能となる。本発明による非水性歯磨剤組成物では、酢酸アルカリ土類金属塩又は硝酸アルカリ土類金属塩を含有しない組成物に比べ、物理的安定性が向上することが示される。理論にこだわらないが、酢酸アルカリ土類金属又は硝酸アルカリ土類金属はカルボキシビニルポリマーと共に、組成物中で湿潤剤材料を増粘する役目を共に果たし、歯磨剤の構造的完全性の維持に寄与すると考えられる。酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムなどの異なる塩を含み、製造直後又は後の保存中のいずれかに粘性が低くなる傾向がある他の非水性組成物とは異なり、酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩を含有する本発明による非水性歯磨剤組成物は良好な粘度を示し、粘性が低くなる性質は認められない(かつ保存中に粘性が低くなる性質を示すこともない)。有利には、本発明の非水性歯磨剤組成物は良好な有効期間という利点を有する。
【0013】
酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩は、本組成物中に存在する研磨剤などの任意の固形材料を懸濁化させるのに必要な必要流動特性も付与するものと考えられる。
【0014】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点は、当業者には本開示を読むことで明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による非水性組成物中の酢酸ストロンチウムの量の増加が粘度に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される「歯磨剤組成物」という用語は、別途明記しない限り、ペースト製剤又はゲル製剤を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「を含む(comprising)」という語は通常の意味(すなわち、特に言及したすべての特徴に加え、任意の、付加的な、又は不特定の特徴も含む)に加え、「よりなる(consisting of)」及び「実質的に~よりなる(consisting essentially of)」も含む。
【0018】
本明細書で使用される「約」という語は、組成物のパラメータの値に適用される場合、組成物の化学的又は物理的特性に実質的な影響を与えることなく、値の計算又は測定が若干の不正確性を許容することを示す。
【0019】
本発明の歯磨剤組成物は非水性、すなわち実質的に水を含有しないものである。これは、組成物に水を添加しないこと、水性担体を使用しないこと、及び可能ならばそれらの水和形態の成分の使用を避けることにより達成される。好適には、組成物中で使用するために選択される成分は無水形態である。組成物の個々の成分は遊離水及び/又は結合水を少量含むことがあることを認識しているが、組成物全体では依然として実質的に水を含有しないことが不可欠である。歯磨剤組成物に一般に使用される種類の水性担体は本発明では回避される。これらの水性担体としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及び着色剤水溶液が挙げられる。本発明の組成物中の水(遊離水及び結合水の両方)の総量は最小限に維持される。好適には本発明の組成物は、組成物の0.5重量%未満の水、好適には組成物の0.2重量%未満の水、さらに好適には組成物の0.0重量%の水を含む。
【0020】
本発明による組成物は、酢酸アルカリ土類金属塩若しくは硝酸アルカリ土類金属塩又はこれらの組合せを含む。本発明で使用する酢酸アルカリ土類金属塩又は硝酸アルカリ土類金属塩は、組成物に土類金属イオンを供給する十分な溶解性を有する。
【0021】
1つの態様において、硝酸アルカリ土類金属塩は硝酸ストロンチウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである。1つの態様において、硝酸アルカリ土類金属塩は硝酸ストロンチウムである。
【0022】
1つの態様において、酢酸アルカリ土類金属塩は酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである。1つの態様において、酢酸アルカリ土類金属は酢酸ストロンチウムである。
【0023】
酢酸ストロンチウムは象牙質過敏症の治療に使用される細管閉塞剤として当該分野で公知であり、通常、水性歯磨製剤中に製剤化されている。しかし、本発明における酢酸ストロンチウムは(本発明で使用する他の酢酸塩及び硝酸塩も)主に増粘剤又は架橋剤として使用している。理論にこだわらないが、酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩はカルボキシビニルポリマーと共に、湿潤剤成分を増粘し、非水性組成物を安定化する役目を果たす。
【0024】
酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩は組成物の約1重量%から約15重量%、好適には組成物の約1.5重量%から約10重量%、より好適には組成物の約2重量%から約8重量%の範囲の量で存在する。最も好適には、酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩は組成物の8重量%未満、例えば組成物の約2重量%から約6重量%の量で存在する。
【0025】
本発明による組成物はカルボキシビニルポリマーを含む。本発明の歯磨剤組成物に使用する好適なカルボキシビニルポリマーとしては、ポリアリルスクロースで架橋されたアクリル酸のコポリマー、例えばCarbopol 974及び934又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のコポリマー、例えばNoveon AA-1が挙げられる。カルボポールポリマーはB.F. Goodrich Companyにより製造されている。1つの実施形態では、カルボキシビニルポリマーはCarbopol 974である。カルボキシビニルポリマーは組成物の約0.1重量%から約7.5重量%、好適には約0.3重量%から約1.0重量%の範囲の量で、より好適には組成物の約0.85重量%の量で存在してもよい。
【0026】
本発明による組成物は湿潤剤を含む。本発明に使用する好適な湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、及びプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、湿潤剤はグリセリンである。市販されているグリセリンは約0.5重量%から約2.0重量%のグリセリンに結合する水を含有し得ることがよく知られている。通常、この量は約0.5重量%から約1.0重量%である。この少量の水はグリセリンに結合しており、したがって他の成分はこの少量の水を利用できない。当業者であればやはり、グリセリンを含む組成物を非水性であると判断するであろう。いずれにしても、湿潤剤はできるだけ無水であることが必要であり、好ましくは固体形態で使用される必要がある。湿潤剤は製剤を最高100%とするために使用されるので、湿潤剤は歯磨剤組成物の約20重量%から約90重量%の範囲の量で存在してもよい。好適には、湿潤剤は組成物の約35重量%から約75重量%、より好適には歯磨剤組成物の約45重量%から約70重量%の量で存在する。
【0027】
好適には、本発明の組成物はポリエチレングリコールを含む。ポリエチレングリコールは、製剤の粘着性を減少させ滑らかな質感の製品とするために選択されている。好適には、ポリエチレングリコールはPEG 300及びPEG 400より選択される。1つの実施形態では、ポリエチレングリコールはPEG 400である。
【0028】
有利には、ポリエチレングリコールは組成物の約0.1重量%から約40重量%、好適には歯磨剤組成物の約15重量%から約25重量%の範囲の量で存在する。
【0029】
さらなる態様では、本発明の歯磨剤組成物は水性環境で不安定な又は不適合な材料をさらに含む。このような材料の例としては国際公開第96/10985号、国際公開第97/27158号、及び国際公開第99/13852号で開示されている種類のシリカベースの生体活性ガラスが挙げられる。水性環境では、このような生体活性ガラスはpHを有意に増加させるイオンを放出するが、これは歯磨剤内に含まれる任意の賦形剤の安定性に(特に長期保存について)悪影響を及ぼす可能性がある。本発明の無水歯磨剤中にシリカベースの生体活性ガラスを製剤化することで、歯磨剤内でイオンの放出を妨げ、これによりpHを制御し歯磨剤の長期保存安定性を向上させる。
【0030】
さらなる態様では、本発明の歯磨剤組成物は、例えば酢酸アルカリ土類金属塩又は硝酸アルカリ土類金属塩の非存在下で、本明細書における比較実施例1による組成物中のように、非水性歯磨剤組成物中で不安定で不適合なことがある1つ以上の材料を含む。これらの材料としては、例えば、硝酸カリウム又はフッ化ナトリウム若しくはフッ化第一スズなどのフッ化アルカリ金属塩及びこれらの組合せが挙げられる。
【0031】
好適には、本発明による組成物は研磨剤を含む。本発明に使用する研磨剤としては、例えば、シリカ、オルトリン酸亜鉛、炭酸水素ナトリウム(重曹)、プラスチック粒子、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、及びピロリン酸カルシウム又はこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
好適には、研磨剤はシリカ研磨剤である。好適には、シリカ研磨剤は天然非晶質シリカ、例えば珪藻土であり、又は沈降シリカなどの合成非晶質シリカ、例えばRhone Poulencが製造する「Tixosil 53B」であり、又はシリカキセロゲルなどのシリカゲルであり、又はこれらの混合物である。
【0033】
一般的に、本発明の歯磨剤組成物中での使用に好適な研磨剤の量は、当該分野で周知の技術に従い、洗浄及び研磨の許容できるレベルとなるように経験的に決定される。研磨剤は、好適には組成物の約1重量%から約60重量%、好適には組成物の約2重量%から約30重量%、又は組成物の約3重量%から約10重量%の量で存在する。
【0034】
1つの態様において、本発明による組成物は増粘剤を含む。好適には、増粘剤はSident 22Sなどの増粘シリカであり、Sident 22SはDegussa Ltdにより製造されている。増粘剤は、好適には組成物の約0.01重量%から約20重量%、好適には組成物の約5重量%から約15重量%の量で存在する。
【0035】
1つの態様において、本発明による組成物は増粘シリカを含む。1つの態様において、本発明による組成物は任意のさらなる/追加の増粘剤を実質的に含まない。
【0036】
通常、界面活性物質を歯磨剤製品に添加して、洗浄性及び/又は起泡性を得る。歯磨製剤中に使用される従来の界面活性剤は、水溶液ではなく固形粉末として添加できれば、いずれも本発明に使用してもよい。
【0037】
好適な界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエトキシ化ソルビトールエステル、特にポリエトキシ化ソルビトールモノエステル、例としてPEG(40)ジイソステアリン酸ソルビタン及びICI社により「Tween」の商品名で販売されている製品;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの重縮合体(ポロキサマー)、例としてBASF-Wyandotteにより「Pluronic」の商品名で販売されている製品;プロピレングリコールの縮合体;ポリエトキシ化硬化ヒマシ油、例としてクレモホール;及びソルビタン脂肪エステルが挙げられる。
【0039】
好適なアニオン性界面活性剤としては、例えば、Albright and Wilsonにより販売され「SLS」として知られるラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。これは、本発明において粉末形態で得ることができ、使用される。さらに好適なアニオン性界面活性剤は、Croda chemicalsにより製造され「Adinol CT 95」の商品名で販売されているココイルメチルタウリンナトリウムである。
【0040】
好適な両性界面活性剤としては、例えばベタインが挙げられる。ベタイン化合物は構造的に、メチレン部位で引き離された、カルボキシレート官能基などのアニオン性官能基及び四級窒素官能基などのカチオン性官能基を含有している。これらのものとしては、セチルベタイン及びベヘニルベタインなどのn-アルキルベタイン及びココアミドプロピルベタインなどのn-アルキルアミドベタインが挙げられる。1つの実施形態では、ベタインはTego Betainの商品名で販売されているココアミドプロピルベタインである。
【0041】
有利には、界面活性剤は組成物の約0.005重量%から約20重量%、好適には組成物の約0.1重量%から約10重量%、より好適には組成物の約0.1重量%から約5重量%の範囲の量で存在する。
【0042】
有利には、本発明による歯磨剤はイオン性フッ素含有化合物をさらに含んでいてもよく、このイオン性フッ素含有化合物は、アルカリ金属フッ化物、フッ化アミンなどのイオン性フッ化物及びアルカリ金属モノフルオロホスフェートなどのイオン性モノフルオロホスフェートを含んでいてもよく、また、フッ化物が100ppmから3000ppm、好ましくは500ppmから2000ppmとなるように製剤中に組み入れてもよい。好ましくは、イオン性フッ化物又はモノフルオロホスフェートはアルカリ金属フッ化物又はモノフルオロホスフェートであり、例えば、それぞれフッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウムである。
【0043】
イオン性フッ素含有化合物を本発明の歯磨剤に組み入れる場合、研磨剤はイオン性フッ素含有化合物と適合するように選択するべきことはさらに認識されるであろう。
【0044】
本発明による歯磨剤は、歯磨製剤中に従来から使用されている他の作用剤を含んでいてもよく、例えば着色剤、ホワイトニング剤、例えば二酸化チタン、保存剤及び甘味剤、抗プラーク剤、例えばトリクロサン、クロルヘキシジン、若しくは塩化セチルピリジニウム、又は抗歯石剤、例えばピロリン酸塩、抗過敏症剤、例えばストロンチウム塩若しくはカリウム塩、例えば硝酸カリウムを含んでいてもよい。硝酸カリウムは、好適には組成物の約3重量%から約10重量%の範囲の量で存在してもよく、より好適には組成物の約5重量%の量で存在してもよい。口臭消臭剤、例えば炭酸水素ナトリウム及び歯のホワイトニング剤、例えば過酸化水素及びトリポリリン酸ナトリウムも適切なレベルで含有してもよい。
【0045】
一般的に、このような作用剤は組成物のうちのわずかな量又は割合であり、通常は組成物の約0.001重量%から約5重量%の範囲の量である。1つの実施形態では、トリポリリン酸ナトリウムは組成物の約5重量%の量で存在する。本発明で使用される成分の発明的な組合せのため、水性(又は非水性)環境で多少不安定又は不適合な活性成分又は活性成分の組合せも本発明の組成物に添加してもよい。通常、組成物の約1.0重量%の典型的なレベルで、香味剤も組成物に添加してもよい。
【0046】
好適な甘味剤としてはサッカリン、シクラメート、及びアセスルファムKが挙げられ、組成物の約0.01重量%から約0.5重量%、好適には約0.05重量%から約0.5重量%の量で存在してもよい。タウマチンなどの補助甘味剤も含有していてもよく、組成物の約0.001重量%から約0.1重量%、好適には約0.005重量%から約0.05重量%のレベルで含有してもよい。タウマチンの好適な混合物はTate and Lyle plcにより「TALIN」の商品名で販売されている。
【0047】
本発明による歯磨剤は抗着色剤(antistain agent)を含有していてもよい。好適な抗着色剤としては、例えば、米国特許第4,256,731号に開示されているようなカルボン酸、米国特許第4,080,441号に開示されているようなアミノカルボン酸化合物、米国特許第4,118,474号に開示されているようなホスホノ酢酸、又は国際公開第93/16681号に開示されているようなポリビニルピロリドンが挙げられる。抗着色剤は歯磨剤組成物に組み入れてもよく、又は歯磨剤の後の使用のために別の組成物として提供してもよい。
【0048】
製剤のpHは、水と3:1の比で希釈した場合、好適には10.0未満であるはずである。
【0049】
好適には本発明による歯磨剤組成物は25℃で75,000cpsを超える粘度を有し、好適には約80,000cpsから約500,000cps、例えば約90,000cpsから約140,000cpsの粘度を有し、これは消費者の許容性にかなう従来の歯磨剤と同等の製品を生産するために必要である。歯磨剤の粘度はTF 20スピンドルブルックフィールド粘度計を使用して測定することができる。好適には、ブルックフィールドRVT又は相当するデジタル粘度計を使用し、TFスピンドルを用い、ヘリパススタンドを使用して20rpmで1分間25+/-2℃で測定してもよい。
【0050】
本発明による組成物は、従来の方法で酢酸アルカリ土類金属及び/又は硝酸アルカリ土類金属を湿潤剤、カルボキシビニルポリマー、及びポリエチレングリコール(存在する場合)と混合することにより調製することができる。組成物のその他の成分は、必要な割合で都合のよい任意の順序で添加してもよく、その後必要な場合はpHを調整してもよい。
【0051】
以下の実施例で本発明を説明する。
【実施例
【0052】
[実施例1~5](歯磨剤組成物)
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例6]粘度測定
方法
実施例1~5に記載した歯磨剤組成物の粘度は、製造1週間後にTF 20スピンドルブルックフィールド粘度計を使用して測定した。
【0055】
最小内径60mm、最小深度60mmの円筒状の容器を満たす十分なペーストサンプルを使用した。サンプル量は通常約500~600mlであった。スピンドルをサンプル表面まで下ろし、ヘリカルモーターのスイッチを入れ測定を行った。粘度計が定常状態に達し目盛値が一定となった時に数値の読取りを行った。
【0056】
結果
粘度測定値を図1に示す。この結果は、組成物の粘度が酢酸ストロンチウムの存在下で、用量依存的に増加したことを示している。
【0057】
結論
このデータによれば、酢酸ストロンチウム非存在下で硝酸カリウム及びフッ化ナトリウムを含む無水組成物(実施例1)が、酢酸ストロンチウムを含む組成物(実施例2~5)と比べて有意に低い粘度を示したことが示されている。理論にこだわらないが、酢酸ストロンチウムは、硝酸カリウム(及び/又はフッ化ナトリウム)などの材料を含み、組成物中に存在するポリアクリル酸(カルボポール)含有無水基剤とそれがなければ不適合になり得る組成物(実施例2~5に記載の組成物)を、増粘し、したがって安定化する役目を果たす。実施例1による歯磨剤組成物は75000cps未満の粘度を有し、外観及び消費者の許容性の観点から一般的にあまり望ましくないものと考えらえる。
【0058】
[実施例7~10](歯磨剤組成物)
【0059】
【表2】
【0060】
実施例8及び10は本発明の組成物ではないが、比較目的のためのみに本明細書に含める。
【0061】
[実施例11]粘度測定
方法
実施例7~10による歯磨剤組成物の粘度を測定した。実施例6で使用した同じ方法を使用した。
【0062】
結果
Sr(OAc)2を含む実施例7の組成物は最も高い粘度(119,000cps)を示し、Zn(OAc)2を含む実施例9の組成物は妥当な粘度(77,500cps)を示した。実施例8及び10の組成物はそれぞれNa(OAc)2及びK(OAc)2を含むが、有意により低い粘度(それぞれ25,000cps及び37,000cps)を示し、本発明の範囲外のものである。
【0063】
結論
このデータは、フッ化第一スズ及び酢酸ストロンチウム又は酢酸亜鉛(実施例7及び9)を含む無水組成物が、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムのいずれかを含む同様の組成物(実施例8及び10)に比べ、有意に高い粘度を示したことを明らかにしている。理論にこだわらないが、酢酸ストロンチウム又は酢酸亜鉛が存在すると組成物を増粘し、したがって安定化する役目を果たしたが、同様の有利な効果は酢酸ナトリウムでも酢酸カリウムでも認められなかった。
【0064】
[実施例12~14](歯磨剤組成物)
【0065】
【表3】
【0066】
[実施例15]粘度測定
方法
実施例12~14による歯磨剤組成物の粘度を測定した。実施例6で使用した同じ方法を使用した。
【0067】
結果
Sr(OAc)2及びSr(NO3)2を含む実施例12及び14の組成物はそれぞれ121000cps及び122000cpsと高い粘度を示したが、SrSO4を含む実施例13の組成物は有意により低い粘度(30000cps)を示し、本発明の範囲外のものである。
【0068】
結論
酢酸ストロンチウム又は硝酸ストロンチウムが存在すると組成物を増粘し、したがって安定化する役目を果たしたが、硫酸ストロンチウムは組成物を不安定化する逆の効果を有しているものと考えられた。
【0069】
理論にこだわらないが、Sr(NO3)2及びSr(OAc)2などのストロンチウムの可溶形態はグリセロールに溶解して、ストロンチウムイオンを遊離し、これらがカルボキシビニルポリマーを架橋し得るが、SrSO4は不溶性でカルボキシビニルポリマーを架橋する遊離のストロンチウムを有していない。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)酢酸アルカリ土類金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩、カルボキシビニルポリマー、並びに湿潤剤を含む、非水性歯磨剤組成物。
(2)酢酸アルカリ土類金属塩が酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである、(1)に記載の非水性歯磨剤組成物。
(3)酢酸アルカリ土類金属塩が酢酸ストロンチウムである、(2)に記載の非水性歯磨剤組成物。
(4)硝酸アルカリ土類金属塩が硝酸ストロンチウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、又はこれらの2つ以上の組合せである、(1)から(3)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
(5)硝酸アルカリ土類金属が硝酸ストロンチウムである、(4)に記載の非水性歯磨剤組成物。
(6)カルボキシビニルポリマーが、ポリアリルスクロース又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のコポリマーである、(1)から(5)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
(7)湿潤剤がグリセリン、ソルビトール、又はプロピレングリコールである、(1)から(6)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
(8)湿潤剤がグリセリンである、(7)に記載の非水性歯磨剤組成物。
(9)ポリエチレングリコールをさらに含む、(1)から(8)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
(10)研磨剤をさらに含む、(1)から(9)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
(11)25℃で約90,000cpsから約140,000cpsの粘度を有する、(1)から(10)のいずれかに記載の非水性歯磨剤組成物。
図1