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7152406炭素材料用分散剤、該炭素材料用分散剤を含有する分散物、全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー、全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、全固体リチウムイオン二次電池用電極及び全固体リチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】炭素材料用分散剤、該炭素材料用分散剤を含有する分散物、全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー、全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、全固体リチウムイオン二次電池用電極及び全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20221004BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221004BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221004BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221004BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20221004BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20221004BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20221004BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20221004BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0562
C08F220/18
C08F220/34
C08F226/10
B01F23/50
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019539461
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031403
(87)【国際公開番号】W WO2019044716
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017166725
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石田 智信
(72)【発明者】
【氏名】森 宏一
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃平
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122290(WO,A1)
【文献】特開2015-149177(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136090(WO,A1)
【文献】特開2011-100665(JP,A)
【文献】国際公開第2014/088070(WO,A1)
【文献】特開2011-070908(JP,A)
【文献】特開2016-021390(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194759(WO,A1)
【文献】特開2016-212990(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
H01M 10/05-10/0587
C08F 220/18-116/10
H01G 11/00-11/86
B01F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子を含む基を有する共重合体を含有する炭素材料用分散剤であって、前記共重合体中の窒素含有量が0.01重量%以上5重量%以下、前記共重合体のSP値が8.0~12(cal/cm1/2であり、
前記窒素原子を含む基を有する共重合体が、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)と、窒素原子含有ビニルモノマー(b)との共重合体(A)を含有し、
前記窒素原子含有ビニルモノマー(b)が、下記一般式(2)で示されるモノマー(b1)であり、
前記窒素原子含有ビニルモノマー(b)が、少なくとも2種類の前記モノマー(b1)を含有する
炭素材料用分散剤。
【化1】
[R は水素原子又はメチル基;X は炭素数2~4のオキシアルキレン基 ;R は、p=0のとき炭素数8~32のアルキル基であり、p=1~20のとき炭素数1~32のアルキル基;pは0~20の整数であり、pが2以上の場合、複数のX は同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[一般式(2)におけるR は、水素原子又はメチル基である。;X は、エステル基、アミド基 、カルボニル基及び脂肪族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基であり、qは0又は1の整数である。;X は、炭素数2~4のアルキレン基であり、rは0又は1の整数である。;一般式(2)におけるアミノ基に含まれるR 及びR は、同一でも異なっていてもよい炭素数1~4である炭化水素基であって、結合して環を形成してもよい。一般式(2)におけるアミノ基がR とR を結合してなる環状アミノ基である場合、前記環状アミノ基は、炭素数4若しくは5の炭化水素基及び0~2個のカルボニル基を含有する。]
【請求項2】
前記窒素原子含有ビニルモノマー(b)が、N-ビニルピロリドンを含有する請求項に記載の炭素材料用分散剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭素材料用分散剤と、
炭素材料と、
比誘電率が1.5以上6.4以下の低極性溶媒、及び/又は、比誘電率が1.5以上6.4以下の炭化水素系樹脂である低極性媒体とを含有する分散物。
【請求項4】
前記炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンファイバー(CF)、アセチレンブラック(AB)、フラーレン及び天然黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種類の炭素材料である請求項に記載の分散物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを混合することにより請求項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーを調製する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項8】
請求項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用電極を用いた全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料用分散剤、該炭素材料用分散剤を含有する分散物、該分散物を含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー、該全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーを調製する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、全固体リチウムイオン電池用電極及び該全固体リチウムイオン電池用電極を用いた全固体リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料として、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンファイバー(CF)、アセチレンブラック(AB)及びフラーレン等は、着色顔料、遮光材料、導電材料として、印刷インキ、インクジェットインキ、筆記具用インキ、塗料、プラスチック形成材料等の幅広い分野で使用されている。一般的に、これらの用途への要求品質を満たすには、炭素材料を溶媒やフィルム、塗膜及び成型体等の中に均一に分散させることが重要となる。これらの炭素材料は、溶媒等他の分子との親和性が小さく、有機溶媒や樹脂中に均一に分散させることは容易ではなく、分散剤を用いることが一般的である。しかしながら、従来から知られているポリビニルピロリドン(PVP)等の分散剤は、N-メチルピロリドン等の高極性溶媒中に溶解して分散性能を示すことが知られている。一方、低極性の溶媒中では溶解しないため、分散性能を示さないことが課題であり、炭素材料の分散媒や炭素材料が分散した材料の用途が限られていた。
【0003】
例えば、従来のリチウムイオン二次電池に用いられる材料としては、電池製造過程において活物質や導電助剤等の材料の分散性に優れる高極性溶媒に、分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を溶解させたものが用いられてきた(例えば、特許文献1)。
一方、従来のリチウムイオン二次電池は電解質として有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものを用いるため、異常時に発火する恐れがある。そこで、近年は有機溶媒を用いない電解質として固体電解質を用いることで、発火のリスクを抑制した全固体リチウムイオン二次電池の開発が進められている。しかし、全固体リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質は高極性溶媒に接触すると変質して、イオン伝導性能を低下させることが知られている(例えば、特許文献2)。そのため、全固体リチウムイオン二次電池の製造には低極性溶媒を用いることが好ましい。
【0004】
しかし、従来のリチウムイオン二次電池の製造で分散剤として一般的に用いられているポリビニルピロリドン(PVP)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)は低極性溶媒には溶解しないため、分散剤として使用できない点に課題がある。低極性溶媒への溶解性と分散性を両立する分散剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-178327号公報
【文献】特開2014-093263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電助剤等の炭素材料の低極性溶媒及び低極性媒体に対する親和性を高め、凝集を抑制して炭素材料に対する分散均一性及び分散安定性を高めることができる炭素材料用分散剤を提供することを目的とする。大電流での充電特性及び放電特性、サイクル特性及び電極の導電性に優れた全固体リチウムイオン二次電池用電極を備えた全固体リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を行った結果、本願発明をするに至った。
すなわち、本発明は、窒素原子を含む基を有する共重合体を含有する炭素材料用分散剤であって、上記共重合体中の窒素含有量が0.01重量%以上5重量%以下、上記共重合体のSP値が8.0~12(cal/cm1/2である炭素材料用分散剤;上記炭素材料用分散剤と、炭素材料と、比誘電率が1.5以上6.4以下の低極性溶媒、及び/又は、比誘電率が1.5以上6.4以下の炭化水素系樹脂である低極性媒体とを含有する分散物;上記分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー;上記分散物と、導電助剤と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを混合することにより上記全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーを調製する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法;上記分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極;上記全固体リチウムイオン二次電池用電極を用いた全固体リチウムイオン二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電助剤等の炭素材料の低極性溶媒及び低極性媒体に対する親和性を高め、凝集を抑制して炭素材料に対する分散均一性及び分散安定性を高めることができる炭素材料用分散剤を提供することができる。そして、この炭素材料用分散剤を用いて作製される全固体リチウムイオン二次電池の電池性能を向上させることができる。また、大電流での充電特性及び放電特性、サイクル特性及び電極の導電性に優れた全固体リチウムイオン二次電池用電極を備えた全固体リチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<炭素材料用分散剤>
本発明の炭素材料用分散剤について、説明する。
本発明の炭素材料用分散剤は、窒素原子を含む基を有する共重合体を含有する。上記共重合体中の窒素含有量は0.01重量%以上5重量%以下、上記共重合体のSP値は8.0~12(cal/cm1/2である。
【0010】
窒素原子を含む基を有する共重合体は、少なくとも1種類以上の共重合性モノマー(X)を構成単量体として含有する組成物であることが好ましい。共重合性モノマー(X)としては、ビニル基を有する化合物(以下、ビニル化合物)である。上記共重合性モノマーは、極性官能基を有する共重合性モノマーを重合単位としてさらに含むことができる。極性官能基を有する共重合性モノマーは、上述のビニル化合物と共重合されて重合単位として重合体に含まれる。また、上記共重合体の側鎖又は末端に極性官能基を提供することができるモノマーであることが好ましい。
ビニル化合物としては、分子中にビニル基(アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を除く。)を少なくとも1個含む化合物である。このようなビニル化合物の例としては、n-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジメトキシメチルビニルシラン、メジチルジビニルシラン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、3-メチル-1-ペンテン、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、トリフェニルビニルシラン、9-ビニルアントラセン、5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、4-ビニルビフェニル、9-ビニルカルバゾール、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、1-ビニルナフタレン、2-ビニロキシテトラヒドロピラン等が挙げられる。
更に極性官能基として、(メタ)アクリル酸エステル化合物[(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。)]を少なくとも1個含むビニル化合物が挙げられる。直鎖の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-イコシル(メタ)アクリレート、n-テトラコシル(メタ)アクリレート、n-トリアコンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキサトリアコンチル(メタ)アクリレート、n-ドトリアコンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、分岐の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチル-n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチル-n-テトラデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-n-オクチル-n-ノニル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、1-n-ヘキシル-n-トリデシル、2-エチル-n-ヘプタデシル、イソイコシル(メタ)アクリレート、1-n-オクチル-n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、2-n-デシル-n-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-n-ドデシル-n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、イソトリアコンチル(メタ)アクリレート、2-n-テトラデシル-n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、2-n-ヘキサデシル-n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、2-n-ヘプタデシル-n-イコシル(メタ)アクリレート、2-n-ヘキサデシル-n-ドコシル(メタ)アクリレート、2-オクチルノニル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、1-ヘキシルトリデシル(メタ)アクリレート、2-エチル-n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソトリコンチル(メタ)アクリレート、2-n-テトラデシル-n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、2-n-ヘプタデシル-n-イコシル(メタ)アクリレート、2-n-ヘキサデシル-n-ドコシル(メタ)アクリレート、2-n-イコシル-n-ドコシル(メタ)アクリレート、2-n-テトラコシル-n-ヘキサコシル(メタ)アクリレート、2-メチル-n-ペンタコンチル(メタ)アクリレート、2-n-テトラデシル-n-テトラコンチル(メタ)アクリレート、2-n-ドデシル-n-ヘキサテトラコンチル(メタ)アクリレート、1-n-オクタコシル-n-トリコンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにこれらのビニル化合物のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)2~20モル付加物等が挙げられる。
また、水酸基を少なくとも1個含むビニル化合物が挙げられ、例としては、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、アミド基を少なくとも1個含むビニル化合物が挙げられ、例としては、窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等、アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等;N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、アミノ基を少なくとも1個含むビニル化合物が挙げられ、例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
さらに窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[N-ビニル-モルホリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート、N-ビニル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0011】
窒素原子を含む基を有する共重合体は、上記ビニル化合物の中でも、炭素材料の分散性の観点から、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)(以下、モノマー(a)ともいう)と、窒素原子含有ビニルモノマー(b)(以下、モノマー(b)ともいう)との共重合体(A)(以下、単に共重合体(A)ともいう)を含有する化合物が好ましく、窒素原子含有ビニルモノマー(b)が、下記一般式(2)で示されるモノマー(b1)であることがより好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)は、下記を満足することが好ましい。
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基;Xは炭素数2~4のオキシアルキレン基;Rは、p=0のとき炭素数8~32のアルキル基であり、p=1~20のとき炭素数1~32のアルキル基;pは0~20の整数であり、pが2以上の場合、複数のXは同一でも異なっていてもよく、(X部分の結合はランダムでもブロックでもよい。
【0014】
一般式(1)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち本発明の炭素材料用分散剤の後述する低極性溶媒及び低極性媒体に対する溶解性(以下、単に本発明の炭素材料用分散剤の溶解性ともいう)の観点からメチル基であることが好ましい。
【0015】
一般式(1)におけるXは、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、あるいは、これらの基の水素原子の一部をハロゲン原子又は水酸基等で置換した基等を挙げることができる。
【0016】
また、一般式(1)におけるXにおける、炭素数2~4のオキシアルキレン基を構成する炭素数2~4のアルキレン基としては、本発明の炭素材料用分散剤の物性に影響を与えない限り、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよいが、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点から直鎖状であることが好ましい。
【0017】
pが2以上の場合のXは、同一種類でも異なる種類の炭素数2~4のオキシアルキレン基であってもよい。
【0018】
一般式(1)におけるpは0~20の整数であり、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点から、0~10の整数であることが好ましく、0~5の整数であることがより好ましい。pが2以上の場合、(X)pの部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0019】
一般式(1)におけるRは、p=0のとき炭素数8~32のアルキル基であり、p=1~20のとき炭素数1~32のアルキル基である。
p=0のときにおけるRは、炭素数8~32のアルキル基である。炭素数8~32の直鎖アルキル基としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、分岐アルキル基としては、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、イソデシル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、2-エチル-n-ドデシル基、2-メチル-n-テトラデシル基、イソヘキサデシル基、2-オクチルノニル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-エチルペンタデシル基、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル基、イソオクタデシル基、1-ヘキシルトリデシル基、2-エチルヘプタデシル基、2-オクチルウンデシル基、イソイコシル基、1-ウンデシルドデシル基、1-オクチルペンタデシル基、2-デシルトリデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-(1,4,4-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-ヘプチル基、2-ドデシルペンタデシル基、イソトリコンチル基、2-テトラデシルヘプタデシル基、2-ヘキサデシルヘプタデシル基、1-ヘプチルトリコンチル基、2-ヘプタデシルイコシル基、1-オクタデシルイコシル基、2-ヘキサデシルドコシル基、2-(1,4,4-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-トリコンチル基、2-イコシルドコシル基、1-イコシルテトラコシル基等が挙げられ、これら単量体のアルキル基は直鎖のもの側鎖を有するものいずれでも良い。これらの中でも、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点から炭素数10~24のアルキル基が好ましい。
また、p=1~20のときにおけるRは、炭素数1~32のアルキル基である。上述した炭素数8~32のアルキル基以外のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基が挙げられる。
【0020】
一般式(1)で示される化合物として、炭素材料の分散性の観点から、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-イコシル(メタ)アクリレート、n-イコシル(メタ)アクリレート、n-テトラコシル(メタ)アクリレート、n-トリアコンチル(メタ)アクリレート、n-ドトリアコンチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0021】
【化2】
【0022】
一般式(2)は、以下を満足することが好ましい。
一般式(2)におけるRは、水素原子又はメチル基である。;Xは、エステル基、アミド基、カルボニル基及び脂肪族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基であり、qは0又は1の整数である。;Xは、炭素数2~4のアルキレン基であり、rは0又は1の整数である。;一般式(2)におけるアミノ基に含まれるR及びRは、同一でも異なっていてもよい炭素数1~4である炭化水素基であって、結合して環を形成してもよい。一般式(2)におけるアミノ基がRとRを結合してなる環状アミノ基である場合、上記環状アミノ基は、炭素数4若しくは5の炭化水素基及び0~2個のカルボニル基を含有する。
【0023】
一般式(2)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0024】
一般式(2)におけるXは、エステル基、アミド基、カルボニル基及び脂肪族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基であり、qは0又は1の整数である。Xは、電気化学的安定性の観点からエステル基又はアミド基又はカルボニル基であることが好ましい。
【0025】
一般式(2)におけるXは、炭素数2~4のアルキレン基であり、rは0又は1の整数である。炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば
エチレン基(ジメチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、あるいは、これらの基の水素原子の一部をハロゲン原子又は水酸基等で置換した基等を挙げることができる。これら中でも、炭素材料の分散性の観点から炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基であることが好ましい。また、炭素数2~4のアルキレン基としては、本発明の炭素材料用分散剤の物性に影響を与えない限り、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。
【0026】
一般式(2)におけるアミノ基に含まれるR及びRは、同一でも異なっていてもよい炭素数1~4である炭化水素基であって、結合して環を形成してもよい。一般式(2)におけるアミノ基がRとRを結合してなる環状アミノ基である場合、上記環状アミノ基は、炭素数4若しくは5の炭化水素基及び0~2個のカルボニル基を含有する。
【0027】
一般式(2)で示される化合物として、電気化学的安定性と炭素材料の分散性との観点から、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニルピロリドンであることが好ましい。炭素材料の分散性の観点から、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジルエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニル2,2,6,6-テトラメチルピペリジルであることがより好ましく、N-ビニルピロリドンであることがさらに好ましい。
【0028】
共重合体(A)は、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性と炭素材料の分散性の観点から、窒素含有ビニルモノマー(b)が少なくとも2種類のモノマー(b1)を含有することが好ましい。
【0029】
共重合体(A)はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性と炭素材料の分散性との両立の観点からランダム共重合体であることが好ましい。また共重合体(A)は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0030】
共重合体(A)は、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性と炭素材料の分散性の両立の観点から、モノマー(a)及びモノマー(b)に加え、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)(以下、モノマー(c)ともいう)を構成単位として含有することが好ましい。
【0031】
モノマー(c)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクレート及びブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマー(c)のうち、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点からメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0032】
共重合体(A)を構成するモノマー(a)の割合は、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、70~90重量%であることが好ましく、80~90重量%であることがより好ましい。本発明の炭素材料用分散剤の溶解性又は炭素材料の分散性が向上し、これを分散物として用いた電池の電池性能を向上することができる。
【0033】
共重合体(A)を構成するモノマー(b)の割合は、炭素材料の分散性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、1~30重量%であることが好ましく、1~20重量%であることがより好ましく、1~15重量%であることがさらに好ましい。
【0034】
共重合体(A)を構成するモノマー(c)の割合は、本発明の炭素材料用分散剤の溶解性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、5~20重量%であることが好ましく、5~15重量%であることがより好ましい。
【0035】
窒素原子を含む基を有する共重合体は、公知の製造方法によって得ることができる。具体的には例えば、上記のモノマー(a)~(c)を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより共重合体(A)を得る方法が挙げられる。 溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン及び鉱物油等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、工業化の観点から25~140℃であることが好ましく、50~120℃であることがより好ましい。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により窒素原子を含む基を有する共重合体を得ることができる。
【0036】
窒素原子を含む基を有する共重合体の重量平均分子量(以下、Mwと略記する場合がある)は、1万~30万であることが好ましく、2.5万~25万であることがより好ましく、分散安定性の観点から5万~20万であることがさらに好ましい。共重合体の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(以下、Mpと略記する場合がある)の1/4以下に相当する部分のピーク面積が全ピーク面積の11.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、分散安定性の観点から9.0%以下であることがさらに好ましい。なお、分子量分布曲線におけるピーク面積は、分子量分布曲線の積分値から計算することができる。
【0037】
なお、窒素原子を含む基を有する共重合体のMw及びMpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定することができる。
<Mw及びMpの測定条件>
装置:「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度:40℃
試料溶液:0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0038】
窒素原子を含む基を有する共重合体のSP値は、溶解性の観点から8.0~12(cal/cm1/2、好ましくは8.5~11(cal/cm1/2、より好ましくは8.5~10.5(cal/cm1/2、特に好ましくは9.0~10.0(cal/cm1/2である。
【0039】
ここで、本発明で示すSP値とは、25℃における溶解度パラメータ値であって、物質に固有の値であり、物質の溶解性を予測するための1つの指標である。SP値は、数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。そして、2種類の物質を混合する場合に、両者のSP値の差が小さいほど、溶解度が大きくなる。
【0040】
窒素原子を含む基を有する共重合体のSP値(溶解度パラメーター)は、窒素原子を含む基を有する共重合体を形成する各モノマーのSP値とモル比との積として算出されるものである。例えば、共重合体がX、Yの2種類のモノマーから形成されるものである場合、各モノマーのモル比をx、y(モル%)、SP値をSPx、SPyとすると、この共重合体のSP値は、下記関係式(1)で表される。
関係式(1):SP=[(x×SPx)+(y×SPy)]
各モノマーのSP値は、そのモノマーの分子構造中の原子又は原子団に対して、Fedorsによって提案された[Polym.Eng.Sci.Vol.114.p114(1974)]から蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)を求め、下記関係式(2)から算出される。但し、重合開裂する二重結合については、開裂した状態をその分子構造とする。
関係式(2):σ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0041】
窒素原子を含む基を有する共重合体の窒素含有量は、ANTEK社製ANTEK7000全窒素分析計を用いる方法で、測定することができる。
試料溶液中の窒素濃度が約100ppmとなるように試料を100mLメスフラスコに1mgの桁まで精秤し、キシレン等の窒素を含まない希釈溶剤で100mLになるよう希釈する。メスフラスコをよく振り、試料を完全に溶解させる。
キノリンを検量線用標準試薬とし、窒素濃度が約50ppm、約100ppm、約150ppmとなるようキシレンで希釈して検量線用標準液を調製する。
調製した窒素濃度の異なる検量線用標準液3種類を全窒素分析計による測定を行い、検量線を作成する。続いて調製した試料溶液を全窒素分析計による測定を行う。
測定結果から、下記の式用いて試料の窒素含量を計算する。(Aを検量線から求めた試料溶液中の窒素濃度(ppm)、Sを資料の採取量(g)とする。)
窒素含量(重量%)=A/S×1/100
【0042】
窒素原子を含む基を有する共重合体中の窒素含有量は、炭素材料の分散性の観点から共重合体の重量を基準として0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%であり、より好ましくは0.05~2重量%であり、さらに好ましくは0.05~0.7重量%である。
窒素含有量が0.01重量%未満である場合は、炭素材料の分散性が不十分になる傾向があり好ましくない。一方、窒素含有量が5重量%を超える場合は、炭素材料の分散性が不十分になる傾向があり好ましくない。
【0043】
<分散物>
本発明は、本発明の炭素材料用分散剤と、炭素材料と、比誘電率が1.5以上6.4以下の低極性溶媒、及び/又は、比誘電率が1.5以上6.4以下の炭化水素系樹脂である低極性媒体とを含有する分散物でもある。
本発明の分散物は、本発明の炭素材料用分散剤を含有するため、低極性溶媒及び低極性媒体への分散性に優れ、低極性溶媒及び低極性媒体中の炭素材料の分散安定性にも優れる。
また、本発明の分散物は、ハンドリング性向上の観点から、以下に示す任意の低極性溶媒又は低極性媒体を含有する。
【0044】
本発明で使用可能な低極性溶媒としては、20℃において水100gに対する溶解度が1g未満の溶媒等が挙げられる。ここで低極性溶媒とは、一般に非極性あるいは比誘電率が10未満の溶媒を意味する。ヘプタン等のアルカン系溶媒のほか、酪酸ブチルやブチルエーテル等の、エステル基やエーテル基の両端がC4以上の炭素数である溶媒を用いることができる。
【0045】
これらの中でも、本発明において使用する低極性溶媒は、比誘電率が1.5以上6.4以下の溶媒を使用することが固体電解質との反応抑制の観点から好ましい。比誘電率とは、有機溶媒の極性の強さを表す指標のひとつである。比誘電率の測定では、水分含量5ppm以下の有機溶媒を測定サンプルとして50mL使用する。キーコム社製E4980AプレシジョンLCRメータと電極としてキーコム社製DPT-013-050を用い、周波数1MHzの交流電圧を印加して、25℃における比誘電率を測定する。
【0046】
本発明で使用可能な有機溶媒としては、乾燥によって除去できる媒体であれば特に限定されないが、例えば、好ましくは比誘電率が1.5以上6.4以下の有機溶媒であるジブチルエーテル、エステル系溶媒(酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチル、プロピオン酸オクチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸アミル、酪酸ヘキシル、酪酸ヘプチル、酪酸オクチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸ブチル、吉草酸アミル、吉草酸ヘキシル、吉草酸ヘプチル、吉草酸オクチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプロン酸ブチル、カプロン酸アミル、カプロン酸ヘキシル、カプロン酸ヘプチル、カプロン酸オクチル、エナント酸エチル、エナント酸プロピル、エナント酸ブチル、エナント酸アミル、エナント酸ヘキシル、エナント酸ヘプチル、エナント酸オクチル等)、アルカン系溶媒(ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン等)、トルエン、キシレン、ベンゼン、パラフィン、四塩化炭素等が挙げられ、更に好ましくは、有機溶媒と固体電解質との反応抑制と融点と沸点との観点から、ブチルエステル(酪酸ブチル、プロピオン酸ブチル、吉草酸ブチル)及びアルカン系溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン)が挙げられる。
【0047】
本発明において使用する低極性媒体は、比誘電率が1.5以上6.4以下の炭化水素系樹脂である低極性媒体を使用することが固体電解質との反応抑制の観点から好ましい。
【0048】
このような低極性媒体としては、例えば、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン及びポリブチレン等のポリオレフィン、ポリブタジエン及び天然ゴム等のポリジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン及びポリテトラフルオロエチレン等のビニル重合体、スチレンブタジエンゴム、スチレンエチレンブチレンゴム、スチレンエチレンプロピレンゴム、スチレンエチレンブチレンゴム、スチレンエチレンプロピレンゴム等のエラストマー等が挙げられる。
【0049】
本発明の分散物は、導電助剤として、炭素材料を含有する。
炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンファイバー(CF)、アセチレンブラック(AB)、フラーレン、天然黒鉛等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。電極内部抵抗低減の観点から、カーボンナノチューブ(CNT)の使用が好ましい。
【0050】
<全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー>
本発明は、本発明の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーでもある。
全固体リチウムイオン二次電池用電極(正極及び負極)を作製するために、前段階として全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーを調製する。
【0051】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーは、本発明の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質と、バインダーとを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製「UH-50」)を用いて30秒間攪拌混合して得ることが好ましい。
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー100質量部に対して、本発明の炭素材料用分散剤の含有量は、0.1~10質量部であることが好ましく、炭素材料の分散性と充放電特性の両立の観点から好ましくは0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0052】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー100質量部に対して、導電助剤としての炭素材料は、0.1~10質量部であることが好ましく、充放電における入出力特性と充放電容量の両立の観点から0.1~5質量部であることがより好ましい。炭素材料の濃度が低いと電極の内部抵抗が増大することにより充放電における入出力性能が低下するおそれがある。また、高すぎると電極の単位面積当たりの活物質量が少なくなり、充放電容量が低下してしまうおそれがある。
【0053】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーは、固体電解質を含有する。
固体電解質としては、硫化物系固体電解質、チタン酸リチウムランタン、LISICON、thio-LISICON、タンタル酸リチウムランタンバリウム、ヨウ化リチウム-酸化アルミニウムコンポジット、リン酸リチウムオキシナイトライドガラスが挙げられる。
【0054】
固体電解質は、硫化物系固体電解質であることが好ましく、Li、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質(硫化物系固体電解質)であることがより好ましく、Li、P、S及びハロゲン元素を含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質(硫化物系固体電解質)であることがさらに好ましい。
【0055】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーは、正極活物質又は負極活物質を含有する。
正極活物質としては特に限定はされないが、全固体リチウムイオン二次電池に用いる場合には、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物及び導電性高分子等を使用することができる。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウム、マンガン等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料等が挙げられる。また、コーティング装置を用いて、LiNbOで表面をコーティングした正極活物質を使用することもできる。
【0056】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー100質量部に対して、正極活物質は30~60質量部であることが好ましく、塗工適性の観点から、30~50質量部であることがより好ましい。
【0057】
負極活物質としては特に限定はされないが、全固体リチウムイオン二次電池に用いる場合には、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属リチウム又はその合金、スズ合金、シリコン合金、LiXFe、LiXFe、LiXWO等(Xは任意の正数)の金属酸化物、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛系カーボン等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維等の炭素系材料が用いられる。
【0058】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー100質量部に対して、負極活物質は20~50質量部であることが好ましく、塗工適性の観点から20~40質量部であることがより好ましい。
【0059】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーの調製用溶媒としては、本発明の炭素材料用分散剤に任意に配合することができる、低極性溶媒を用いることができる。
このような低極性溶媒としては、比誘電率が6.0以下であることが好ましく、比誘電率が5.5以下であることがより好ましく、充放電特性保持の観点から、比誘電率が5.1以下であることがさらに好ましい。
比誘電率が6.4を上回る溶媒では、固体電解質構成成分の分解反応を生じるため良好な電池性能が得られないおそれがある。
【0060】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーは、バインダーを含有することが好ましい。
バインダ-としては、特に限定されないが、結着用樹脂、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ブタジエンゴム(BR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。高温耐久性の観点から、バインダーとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、若しくはカルボキシメチルセルロース等、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0061】
全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリー100質量部に対して、バインダーは0.5~20質量部であることが好ましく、塗工適性の観点から1~10質量部であることがより好ましい。
【0062】
<全固体リチウムイオン二次電池用電極>
本発明は、本発明の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを含有する全固体リチウムイオン二次電池用電極でもある。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極では、固体電解質のイオン伝導性を阻害せずに炭素材料の分散安定化を図ることができるので、電気化学的安定性に優れる。
【0063】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極は、本発明の分散物と、固体電解質と、正極活物質又は負極活物質とを混合することにより、本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極スラリーを調製する工程を含むことにより得ることができる。このような本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極の製造方法も本発明の一態様である。
【0064】
正極は、例えば、本発明の分散物と、固体電解質と、正極活物質とを含有し、必要に応じて、バインダー、低極性溶媒を含有する正極スラリーを集電体上に塗布し、乾燥処理させることにより得ることができる。具体的には、ブレード法によって集電体上に上記正極スラリーを塗工し、自然乾燥させた後、100℃でのホットプレート上で30分間乾燥させて溶媒を取り除くことで、正極を作製することができる。
上記正極中における、正極活物質の含有量は、50質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~80質量%であることがより好ましい。
【0065】
負極は、例えば、本発明の分散物と、固体電解質と、負極活物質とを含有し、必要に応じて、バインダー、低極性溶媒を含有する負極スラリーを集電体上に塗布し、乾燥処理させることにより得ることができる。具体的には、ブレード法によって集電体上に上記負極スラリーを塗工し、自然乾燥させた後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させて溶媒を取り除くことで、負極を作製することができる。
上記負極中における、負極活物質の含有量は、40質量%~80質量%であることが好ましく、50質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0066】
集電体としては、特に限定されず、公知の集電体を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が挙げられる。軽量、耐食性、高導電性の観点から、アルミニウム、銅であることが好ましい。なお、正極と負極に用いる集電体は、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0067】
ここで、本発明の炭素材料用分散剤は、全固体リチウムイオン二次電池に限らず、非水溶液系リチウムイオン二次電池用の電極スラリーを作製する際にも用いることができ、非水溶液電解質として極性溶媒を用いた場合と同程度の性能を発揮することができる。
【0068】
<全固体リチウムイオン二次電池>
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池用電極を用いた全固体リチウムイオン二次電池でもある。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、このような構成を有するために、電池性能に優れる。
【0069】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法としては、例えば、上記方法により得られた負極の負極スラリーを塗布した面上に、アプリケーターを使用して、ブレード法によって固体電解質のスラリーを塗布する。その後、固体電解質のスラリーを乾燥させて固体電解質層を得る。
上記により得られる固体電解質層を有する負極を金型に入れてプレスし、固体電解質層からなるセパレート層を負極上に作製する。
このセパレート層の一方の面に上記方法により得られた正極を重ね、プレスすることにより、全固体リチウムイオン二次電池を得ることができる。
【実施例
【0070】
<炭素材料用分散剤の作製>
<製造例1>
温度調節装置、バキューム攪拌翼、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、反応溶媒である酪酸ブチルを加え、表1の製造例1に示す各種モノマー(a)としてデシルメタクリレート10質量部、ドデシルメタクリレート40質量部、テトラデシルメタクリレート20質量部及びオクタデシルメタクリレート20質量部、モノマー(b)としてN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート2重量部及びN-ビニルピロリドン3重量部、モノマー(c)としてメチルメタクリレートを5重量部加えた。続いて2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.18重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、30分撹拌して固形分濃度50重量%の共重合体(A-1)を得た。
【0071】
製造例1と同様の方法に従って、表1に記載の原料を配合することで、固形分濃度50重量%の製造例2~20に示す共重合体(A-2)~(A-20)を得た。以下、特に固形分濃度に言及せず指定した共重合体(A-1)~(A-20)の重量部は、固形分濃度100%の共重合体(A-1)~(A-20)の重量部と同じである。
【0072】
<比較製造例1~3>
製造例1と同様の方法に従って、表1に記載の原料を配合することで、固形分濃度50重量%の比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)を得た。以下、特に固形分濃度に言及せず指定した比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)の重量部は、固形分濃度100%の比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)の重量部と同じである。
【0073】
得られた共重合体(A-1)~(A-20)及び比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定した。
<Mwの測定条件>
装置:「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度:40℃
試料溶液:0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0074】
共重合体(A)が、低極性媒体に可溶であることとは、共重合体(A)の5重量%酪酸ブチル溶液の濁度が300度(ホルマジン)以下である。
濁度は次の方法で測定できる。共立理化学研究所製デジタル濁度計500Gを用い、測定波長660nm、液温25℃、大気圧下で測定する。対照液として低極性溶媒を測定用ガラスセルに10mL注液して濁度を測定し、この時の濁度を0度とする。測定サンプルは、共重合体(A)および比較用共重合体(A’)を固形分濃度5重量%となるように酪酸ブチルで希釈して作製する。測定サンプルは作成後、5分以内に測定する。
得られた固形分濃度50重量%の共重合体(A-1)~(A-20)及び固形分濃度50重量%の比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)について、濁度測定を行った。本願では、固形分濃度50重量%の共重合体(A-1)~(A-20)及び比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)各1.0部を、低極性溶媒である酪酸ブチル9.0部で希釈し共立理化学研究所製デジタル濁度計500G(TB-500G)を用いて25℃、大気圧下における濁度(ホルマジン)を測定した。表1に測定結果を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
共重合体(A-1)~(A-20)と比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)中に含まれる窒素含有量(重量%)及びSP値(cal/cm1/2を下記表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
以下、共重合体(A-1)~(A-20)を含有する炭素材料用分散剤を、「分散剤」(A-1)~(A-20)と、比較用共重合体(A’-1)~(A’-3)を含有する炭素材料用分散剤を、「比較用分散剤」(A’-1)~(A’-3)と記載する。
【0079】
<炭素材料の分散性評価>
○分散性評価用スラリー
(実施例1)
上記製造方法にて得られた分散剤(A-1)0.05重量部と、カーボンナノチューブ(VGCF-H(昭和電工社製))(CNT)1重量部とを分散媒である酪酸ブチル99重量部と共にポリプロピレン製容器に投入した。
この容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)を用いて1分間撹拌し、することによって、分散性評価用スラリー(B-1)を作製した。
【0080】
(実施例2~43)
実施例1と同様の方法により、表3に示す配合成分、配合部数に従って分散性評価用スラリー(B-2)~(B-43)を得た。
なお、表3~6における共重合体(A)の重量部数は固形分での重量部数である。
【0081】
(比較例1~3)
実施例1と同様の方法により、表3に示す配合成分、配合部数に従って比較分散性評価用スラリー(B’-1)~(B’-3)を得た。
【0082】
<溶媒中の分散性評価>
上記で得られた分散性評価用スラリー(B-1)~(B-43)及び比較分散性評価用スラリー(B’-1)~(B’-3)をガラス製のサンプル缶に投入し、室温下で30分間静置後の沈殿物の有無を目視で確認した。表3に結果を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
○樹脂中における分散性評価
(実施例44)
上記製造方法にて得られた分散剤(A-1)0.05重量部と、カーボンナノチューブ(VGCF-H(昭和電工社製))(CNT)0.5重量部とを分散媒である酪酸ブチル85重量部及びポリブタジエン10重量部と共にポリプロピレン製容器に投入した。
この容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)を用いて1分間撹拌し、することによって、分散性評価用スラリー(B-44)を作製した。
【0085】
(実施例45~74)
実施例44と同様の方法により、表4に示す配合成分、配合部数に従って分散性評価用スラリー(B-45)~(B-74)を得た。
【0086】
(比較例4~11)
実施例44と同様の方法により、表4に示す配合成分、配合部数に従って比較分散性評価用スラリー(B’-4)~(B’-11)を得た。
【0087】
<分散性評価>
上記で得られた分散性評価用スラリー(B-44)~(B-74)及び比較分散性評価用スラリー(B’-4)~(B’-11)をガラス製のサンプル缶に投入し、室温下で30分間静置後の凝集物の有無を目視で確認した。表4に結果を示す。
【0088】
【表4】
【0089】
<Li-P-S系固体電解質の作製>
国際公開第2015/115561号に記載の方法に従って、Li-P-S系固体電解質を作製した。具体的には、アルゴン雰囲気下(露点-70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて5分間混合した。なお、LiS及びPはモル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7に容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物固体電解質材料(Li-P-Sガラス、以下、75LiS・25Pともいう)6.20gを得た。
【0090】
<電池評価用、全固体リチウムイオン二次電池用正極スラリー(正極スラリーともいう)及び正極の作製>
(実施例75)
正極活物質として、平均粒径6μmのLiNi/3Mn/3Co/3O(NCMともいう、シグマアルドリッチ社製)、硫化物系固体電解質として上記で作製した75LiS・25P、バインダーとしてPVDF、導電助剤としてカーボンナノチューブ(VGCF-H(昭和電工社製))(CNT)、分散媒として酪酸ブチル及び分散剤(A-1)を、表5に記載の重量部に従って、ポリプロピレン製容器内に入れた。
上記の容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)を用いて30秒間撹拌し、次いで震盪機(柴田化学社製TTM-1)を用いて3分間震盪した。更に、この容器を、超音波分散装置を用いて30秒間撹拌し、次いで震盪機を用いて3分間震盪することによって、正極スラリー(C-1)を得た。
【0091】
(実施例76~95、比較例12~14)
実施例75と同様にして、正極スラリー(C-2)~(C-21)、比較用正極スラリー(C’-1)~(C’-3)を得た。
【表5】
【0092】
正極スラリー(C-1)~(C-21)及び比較用正極スラリー(C’-1)、(C’-3)を、アプリケーターを使用して、ブレード法によって集電体としてのカーボン塗工アルミニウム箔上に塗工した。
塗工したアルミニウム箔を自然乾燥させた後、100℃でのホットプレート上で30分間乾燥させて、正極(E-1)~(E-21)及び比較用正極(E’-1)、(E’-3)を作製した。
【0093】
<電池評価用、全固体リチウムイオン二次電池用負極スラリー(負極スラリーともいう)及び負極の作製>
(実施例96)
負極活物質として平均粒径10μmの天然黒鉛系カーボン(三菱ケミカル社製)、硫化物系固体電解質として75LiS・25P、バインダー及び分散剤(A-1)を表6に記載の重量部に従って、ポリプロピレン製容器内に入れた。
この容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)を用いて30秒間撹拌し、次いで震盪機(柴田化学社製TTM-1)を用いて30分間震盪することによって負極スラリー(D-1)を得た。
【0094】
(実施例97~116、比較例15~17)
実施例96と同様にして、負極スラリー(D-2)~(D-21)、比較用負極スラリー(D’-1)~(D’-3)を得た。
【0095】
【表6】
【0096】
負極スラリー(D-1)~(D-21)及び比較用負極スラリー(D’-1)~(D’-3)を、アプリケーターを使用して、ブレード法によって、集電体としての銅箔上に塗工した。
得られた塗工した銅箔を自然乾燥させた後、100℃のホットプレート上で30分間 乾燥させて、負極(F-1)~(F-21)及び比較用負極(F’-1)~(F’-3)を作製した。
【0097】
<全固体リチウムイオン二次電池の作製>
(実施例117)
硫化物系固体電解質として75LiS・25P、バインダーとしてブタジエンゴム系バインダーの5質量%酪酸ブチル溶液、分散剤をボリプロピレン製容器内に入れた。
この容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)を用いて30秒間撹拌し、次いで震盪機(柴田化学社製TTM-1)を用いて30分間震盪することによってスラリーを得た。
得られたスラリーを、アプリケーターを使用して、ブレード法によって、作製した負極(F-1)の負極スラリーを塗布した面上に塗布し、分散媒を蒸発乾燥させ、固体電解質層を得た。
【0098】
上記により得られた固体電解質層を有する負極(F-1)を、面積1cmの金型に入れて、10.0×10Paでプレスし、固体電解質層からなるセパレート層を負極(F-1)上に作製した。このセパレート層の一方の面に、作製した正極(E-1)を重ねて10.0×10Paでプレスし、全固体リチウムイオン電池(G-1)を作製した。
【0099】
(実施例118~137、比較例18~20)
実施例137と同様の方法により、表7に示す正極及び負極を用いて、全固体リチウムイオン電池(G-2)~(G-21)及び比較用全固体リチウムイオン電池(G’-1)~(G’-3)を作製した。
【0100】
<電池特性評価>
0.8mA(終止電流条件は、0.016mA)で4.1Vまでの充電と0.5mA(終止電流条件は、0.016mA)で3Vまでの放電を1サイクルとし、1サイクル目の放電容量を初期電池容量とした。その後、3.7Vまで充電し、4.8mAで放電した際の5秒後の電圧降下量から、初期電池抵抗を求めた。
【0101】
次いで、0.8mAで3.9Vまで充電し、10分間の休止後、3Vまで0.5mAで放電し、この充放電を100サイクル繰り返し、100サイクル目充放電時の放電容量を100サイクル後電池容量とした。その後、3.7Vまで充電し、4.8mAで放電した際の5秒後の電圧降下量から、100サイクル後電池抵抗を求めた。
【0102】
測定した初期電池容量及び100サイクル後電池容量を用い、次式により容量維持率を算出した:
容量維持率(%)=(100サイクル後電池容量)/(初期電池容量)×100
結果を以下の表7に示す。
【0103】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の炭素材料用分散剤を使用すると、導電助剤等の炭素材料の低極性溶媒及び低極性媒体に対する親和性を高め、凝集を抑制して炭素材料に対する分散均一性及び分散安定性を高めることができる。
このため、本発明の炭素材料用分散剤を用いて作製される全固体リチウムイオン二次電池は、大電流での充電特性及び放電特性、サイクル特性及び電極の導電性に優れており、蓄電池電源用等として有用である。