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特許7152427戻りコンクリートから骨材を製造する方法
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  • 特許-戻りコンクリートから骨材を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】戻りコンクリートから骨材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20060101AFI20221004BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20221004BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C04B18/16
C04B14/02 Z
B09B5/00 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019568061
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018064836
(87)【国際公開番号】W WO2018224523
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】102017000063208
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501292728
【氏名又は名称】マペイ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】MAPEI S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ、 ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ブロッチ、 アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】スクインジ、 マルコ
(72)【発明者】
【氏名】カーボン、 フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスキ、 ヴィットーリオ
(72)【発明者】
【氏名】ザンビアンチ、 パオロ アントーニオ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247680(JP,A)
【文献】特開2005-342558(JP,A)
【文献】特開2004-276575(JP,A)
【文献】特開2008-110909(JP,A)
【文献】特表2014-505006(JP,A)
【文献】特開2009-126761(JP,A)
【文献】特開2014-181147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C02F 11/00-11/20
B28C 7/00-7/16
B09B 5/00
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)戻りコンクリートを強力ミキサーに装填する工程、
b)有機または無機凝集剤混合物を、単独でまたは組み合わせて添加する工程、
c)戻りコンクリートが凝固して、
i)実質的に乾燥しており、セメントペーストを含まない、戻りコンクリートに含まれていた元の天然骨材から主としてなる、より大きな粒径の画分、および
ii)水、凝固剤混合物、新鮮なセメントおよび混合物の微細な画分(砂およびシルト)を含有する塊から主としてなる、より小さい粒径の画分、になるまで、20秒~5分間、好ましくは30秒~3分間、最も好ましくは1分~2分間混合する工程、
d)混合物を、振動、回転またはサイクロン篩に通して分離し、少なくとも2つの粒径クラス、1つは実質的に乾燥しており、セメントペーストを含まない、戻りコンクリートに含まれる元の天然骨材から主としてなるより大きな粒径を有する画分、および1つは水、凝固剤混合物、新鮮なセメント、および混合物の微細画分(砂およびシルト)を含む塊から主としてなるより小さな粒径を有する画分に分ける工程、
を含む、戻りコンクリートから骨材を製造する方法。
【請求項2】
前記強力ミキサーが、プラウ、ハンマー、パドル、スクリューまたはそれらの組み合わせからなる混合要素を有する、単軸または二軸、連続または不連続、水平枢軸タイプである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強力ミキサーが、パドルまたはブレードからなる混合要素を有する、単一シャフトまたはツインシャフト、連続または不連続の上下方向の軸タイプである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程d)の篩が、実質的に乾燥しており、セメントペーストを含まない、戻りコンクリートに含まれていた元の天然骨材から主としてなる、より大きな粒径の画分を、5mm~40mmの範囲の粒径を有する2つ以上の画分に分離する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水、凝固剤混合物、新鮮なセメントおよび混合物の微細画分(砂およびシルト)を含有する塊からなる、より小さい画分が、5mm未満の粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程b)の添加は、ホッパー内で測定された戻りコンクリートの重量およびスランプに基づいて自動的に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
無機凝集剤と組み合わされた有機凝集剤が、工程b)で添加される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有機凝集剤が固体形態または液体形態のいずれかのアニオン性またはカチオン性基で修飾されたポリアクリルアミドから選択され、無機凝集剤が固体形態または液体形態のいずれかのAl(III)またはFe(III)塩から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機凝集剤の用量が、処理される戻りコンクリート1立方メートル当たり0.1~10kg、好ましくは0.2~3kg、最も好ましくは0.4~2kgの範囲である請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
無機凝集剤の用量が、処理される戻りコンクリート1立方メートル当たり0.5~15kg、好ましくは0.6~10kg、最も好ましくは1~7kgの範囲である請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程d)が向空気流通流下で振動ふるいを用いて行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設目的に使用されないコンクリート残渣から、またはより一般的には、何らかの理由で使用されず、ミキサー車内の製造設備に戻されるセメント混合物から骨材を製造する方法に関する。本発明はまた、前記方法によって得られる材料、およびコンクリート製造または他の用途のための骨材としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、世界で最も広く使用されている材料である。毎年2,300万トンのコンクリートが製造されていると推定されており、その大部分は広く流通しているコンクリート製造施設においてである。コンクリートは、ミキサー車で前記施設から使用場所に輸送され、そこで排出され、セットされる。
【0003】
非常に多くの場合、積載コンクリートは完全には排出されず、半立方メートル~3・4立方メートルの範囲の残留物が残り、これはミキサー車内の製造設備に戻される。正確なコンクリート打設に必要な量を超えるこの過剰の理由は、クライアントが作業の正確な実施を中断し、遅延させる可能性のある不足の危険よりもむしろ材料の過剰を注文することを好むという事実によるものである。別の場合としては、供給されるコンクリートが製品仕様(スランプ、温度等)に適合しないことがあり、このような場合には材料は顧客によって拒絶され、セメントミキサはコンクリートの全負荷(8立方メートルまで)で製造設備に戻る。
【0004】
未納入コンクリートの割合は「戻りコンクリート」と呼ばれ、国によって異なる。返品されたコンクリートは、欧州や日本では生産量の2~3%であると推定されるのに対し、米国では5%に増加している。これらの数値は、年間60万トンを超えると推定される相当量のコンクリートが使用されていないことを示している。
【0005】
製造後2~3時間でセメント水和プロセスにより作業性の漸進的な悪化およびコンクリート硬化反応の開始を引き起こし、その結果、コンクリートはミキサー車から排出され、施設に残留しなければならず、したがって、重大な管理上および環境上の問題を構成するので、製造施設に新鮮に戻ったコンクリートをリサイクルし、他の顧客に配送することは常に可能であるとは限らない。実際、ほとんどの場合、戻りコンクリートは特別な廃棄物として処分され、その結果、資源の浪費、大きな環境影響、および高いコストが生じる。
【0006】
最近、産業廃棄物を埋立地に送ることを思いとどまらせる新しいヨーロッパの法律が発布され、ヨーロッパ指令2008/98/CEは、埋立地は廃棄物処理の最後の選択肢とみなされなければならず、建設廃棄物の回収およびリサイクルは2020年までに少なくとも70%増加されなければならないと述べている。これらの理由のために、戻りコンクリートの処分を回避することにかなりの関心があり、その回復のための多くの処理が提案されている。
DE3906645には戻りコンクリートを洗浄するための装置が記載されており、この装置は戻りコンクリートを大量の水と混合するミキサーからなる。セメントから分離された粗骨材および砂は、洗浄タンク内のスクリューによってミキサーから引き出され、貯蔵領域に移され、新しいコンクリートを製造するために再使用される。セメントの希釈懸濁液および他の微細な画分を沈降させ、清澄化された水を、新しいコンクリートの製造のための混合水として部分的に再使用することができる。このシステムは粗骨材および砂の回収およびリサイクルを可能にするが、かなりの欠点を示す。第1に、廃棄物の生成は排除されない。実際、形成された沈降スラッジは回収することができず、タンクから定期的に除去し、廃棄しなければならない。第2に、コンクリートを洗浄するためには、コンクリート1立方メートル当たり1~2立方メートルの範囲の大量の水が必要である。セメント水和反応を妨害する懸濁液中に溶解した塩および固体が存在するために、そのような水の一部のみが再循環させ、再使用することができる。したがって、新たなコンクリートの製造のための混合水として再利用できない過剰な水は、排出前に適切に処理されなければならず、さらなるコスト増加につながる。
【0007】
大量の遊離水を吸収し、固定化することができる物質の使用に基づいて、戻りコンクリートを処理する多くの方法が最近提案されている。戻りコンクリートを含むミキサー車に前記物質または物質の混合物を直接添加し、数分間、典型的には3~10分間セメントミキサを混合することによって、前記物質は戻りコンクリートから遊離水を吸収し、膨潤し、その構造中にセメントおよび混合物のより微細な画分を組み込む「ゲル」を形成し、ミキサー車ドラムの回転の影響下で、「ゲル」によって形成された複合材料、セメントペーストおよび微細な画分はより粗い骨材を覆い、様々な厚さのミリメートル層を形成する。その結果、戻りコンクリートは、中央コアを構成する骨材とセメント質ゲルでできた外側コーティングとによって形成された、様々なサイズの多数の球状顆粒に変換される。
【0008】
顆粒形成プロセスが完了すると、このように形成された材料は、ミキサー車ドラムの回転方向を逆にすることによって地面に排出される。新鮮な顆粒はセメントの水和および硬化反応を完了させるために、蓄積および貯蔵されるのに十分にコンパクトである。一旦硬化されると、戻りコンクリートから製造された粒状材料は、道路床材料として、または骨材として再使用されて、天然骨材に部分的にまたは完全に取って代わる新しいコンクリートを製造することができる。
【0009】
これらの処理方法は、廃棄物を生成しないという大きな利点を有する。実際、ミキサー車内に存在する全ての戻りコンクリートはいかなる種類の液体または固体残渣も残さずに、新しい粒状材料に変換される。
【0010】
日本実用新案3147832号では、処理に有用な吸水性物質が(メタ)アクリル酸およびその塩、アクリルアミド、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、スチレンスルホン酸塩および無水マレイン酸のようなモノマーの共重合によって形成される粉末コポリマーからなる。使用をより安全にし、バッチ処理を容易にするために、吸水性物質は、戻りコンクリートを含むミキサー車のドラムに挿入される密封水溶性紙袋に封入される。各々がセメントおよび吸水性ポリマーを含有する混合物で被覆された骨材によって構成される一組の顆粒からなる製造された材料は、路盤材料として使用することができる。
【0011】
国際公開第2012/084716号パンフレットは、硬化促進剤および超吸収性ポリマーを新鮮なセメント組成物に添加し、顆粒状材料が形成されるまで全体を混合することを含む、戻りコンクリートから骨材を製造するための方法を開示している。クレイムされた硬化促進剤にはケイ酸ナトリウム、およびセメントの存在下でアルミン酸塩水和物を形成することができる物質、例えばアルミン酸カルシウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミナセメントまたはそれらの混合物が含まれ、一方、超吸収性ポリマーの場合、アクリル酸で変性されたポリアクリルアミドをベースとするものは特に有効であると記載されている。硬化促進剤および超吸収性ポリマーは、別々に添加するか、あるいは単一の製品に混合することができる。このようにして形成された粒状材料は、路盤材料、コンクリート骨材、道路及び庭の装飾要素、及び天然石の代替物として使用することができる。
【0012】
国際公開第2016/198384号パンフレットは、戻りコンクリートを含む新鮮なセメント質混合物を、セルロース、キトサン、コラーゲン、ポリアクリルアミドおよびポリアクリル酸のコポリマー、ポリアミン、ポリビニルアルコール、多糖類、乳酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリレート、エチレングリコール、エチレンオキシド、アクリル酸、無機凝集剤および無機凝集剤を含むペレット化剤と混合することによって骨材を製造する方法を開示している。得られた新鮮な粒状材料はその硬化および硬化のために必要とされる限り、適切な専用領域に排出され、蓄積される。硬化期間は温度に依存し、2つの区間の間に収まる。すなわち、顆粒が軟らかすぎるために処理できない最低値t1と、顆粒が不可逆的な凝集のために処理できなくなる最高値t2である。材料は手動で、または適切な機械的手段で処理することができ、これにより、材料を破砕し、コンクリート製造施設内の他の保管区域に輸送することができる。
【0013】
国際公開第2016/071298号パンフレットは、非硬化セメント組成物、特に戻りコンクリートから骨材を製造する方法に関し、この方法は非硬化セメント組成物に吸水剤及び結晶化不活性化剤を添加し、粒状材料が形成されるまで混合することを含む。記載された吸水剤には、天然または合成の超吸収性ポリマー、およびフィロシリケート、特にバーミキュライトが含まれる。記載された結晶化不活性化剤には、乳酸、クエン酸およびリンゴ酸が含まれる。
【0014】
今日までに提案された全ての方法は複数の欠点を示し、産業分野におけるそれらの適用を強く制限し、戻りコンクリートの回収を妨げ、その結果、埋立地への輸送は、依然として最も一般的な慣行である。特に、製造された顆粒状材料は、新鮮な顆粒がそれらの変態および貯蔵領域への移動のために十分な機械的強度を発現させるまで蓄積されなければならない。さらに、適切な処理時間はWO2016/198384に詳細に記載されているように、環境条件と密接に相関している。冬季および寒冷気候の国では、加工前の材料の滞留時間は非常に長くなり得る。特許出願WO2016/198384の図3のグラフに示されるように、0℃で貯蔵された戻りコンクリートから製造された粒状セメント質材料の場合、硬化時間は2~3日である。このことは戻りコンクリートから製造された物質を一時的に貯蔵するための広い領域が必要であることを意味し、このような領域はコンクリート製造施設では必ずしも準備可能ではない。逆に、反対の気候条件では、必要とされる硬化時間が粒状材料の効果的な加工を可能にするには短すぎる可能性がある。例えば、戻りコンクリートから製造された粒状材料が、午後2時に、夏季や赤道地帯の代表的な状態である35℃で保管する場合には、深夜までではなく、また翌日午前5時以降ではなく取り扱わなければならず、これは夜間に人員がいなければならないことを意味し、ランニングコストの増大につながる。時間外労働の必要性は、また金曜日の午後に製造される粒状材料の場合にも生じ、通常の気候条件(10~25℃)下で貯蔵される場合には、コンクリート製造施設が通常は閉鎖される土曜日と日曜日との間で取り扱われなければならない。
【0015】
上述のプロセスで生じる戻りコンクリートからの粒状材料の製造の第2の重要な側面は、製造される粒状物がより微細な画分は別として、元のコンクリートの製造に使用される骨材(砂利、チッピングおよび砂)の粒径分布曲線に非常に類似する分散した粒径分布を常に有することである。このことは、粒状物質がいったん硬化すると、明確な粒径クラスに分割されるコンクリート製造に通常使用される天然骨材と一緒に貯蔵することができず、必然的に別々に貯蔵しなければならず、したがって設備内部にさらなる空間を必要とすることを意味している。さらに、粒状材料の粒径分布は元の骨材の粒径分布に非常に似ており、最大限の粒子充填を容易にし、その結果、粒状材料は、流動する傾向が非常に低く、したがって、供給パイプを詰まらせるので、コンクリート製造設備内のバッチ中のサイロに保管することができない。
【0016】
第3の重要な側面は、戻りコンクリートの場合に、現場に戻る際にミキサー車内で直接行われる造粒プロセスに関するものである。5~15分の範囲である造粒プロセスを完了するのに必要な時間とは別に、その継続時間はミキサー車の戻りコンクリート積載量に依存するので、粉砕物をグランド上に排出するのに必要な時間も考慮しなければならない。排出段階は戻りコンクリートの初期処理量が1~2立方メートルである場合、10~15分間継続することができ、最大戻りコンクリート処理量が8~10立方メートルである場合、セメントミキサが現場から戻る場合、40分を超えることができる。この間中、ミキサー車は塞がっており、新しいコンクリートを積載するのに利用できず、したがって、生産設備の生産性を著しく制限する。
【0017】
今日までに開発された戻りコンクリート処理方法の別の不利な側面は、製造される粒状材料の品質に関連する。実際、新しい顆粒の外側コーティングを構成するセメントペーストは多孔質であり、かなりの量の水を吸収する。その結果、前記骨材が新しいコンクリートの製造のために天然骨材の代わりに使用される場合、混合水は、より高い水吸収を補うためにかなり増加されなければならない。新しい骨材による新しいコンクリートの水/セメント比の増加は、常に新しいコンクリートの機械的性質および耐久性の低下をもたらす。この態様は今日までに開発された戻りコンクリート処理方法によって得られた粒状材料から、高い機械的特性および良好な耐久性を有するコンクリートを製造する可能性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、これまでに提案された方法の全ての欠点を排除する、戻りコンクリートを処理するための新規な方法に関する。特に、本発明の方法は戻りコンクリートを新しい骨材に変換し、今日までに提案された方法とは異なり、粒子サイズに基づいて直ちに選別し、最終現場で直ちに貯蔵することができるので、中間硬化プロセスを必要としない。プロセスが専用ユニットで行われるので、ミキサー車は、製造プロセスにいかなるペナルティも課すことなく、コンクリートの新たな積載を行うために直ちに利用可能である。さらに、この新規な方法は、水を使用せず、いかなる種類の液体または固体廃棄物も生成しない。最後に、本発明の方法によって製造された骨材の品質は、今日までに提案されたシステムで得られた粒状材料の品質よりもはるかに良好である。このことは、高い機械的性質及び高い耐久性を特徴とするコンクリートの製造に用いることができることを意味する。
【0019】
本発明はまた、前記方法によって得られる骨材、およびセメント混合物の製造へのそれらの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の方法は、これまでに提案された全ての方法に記載されているような戻りコンクリートの粒状化に基づいていない。ここで、驚くべきことに、戻りコンクリートを有機または無機凝集剤混合物の存在下で強力に混合することによって、骨材を微細画分および水から分離することができ、骨材は実質的に乾燥し、セメント材料でコーティングされていない、それらの元の形態および状態で直ちに回収することができることが見出された。この骨材「剥離」プロセスは、表面層が接着する粗い骨材で表される中心コアによって各々が形成される一組の顆粒からなる材料を得ることをクレイムし、該層がセメントペーストおよび混合物の微細画分からなる先に引用した文献に記載されている造粒プロセスとは反対のものである。強力混合プロセスを経た後に本発明の方法によって製造された「剥がされた」天然骨材は、混合物の残りから完全に分離され、実質的に乾燥しており、セメントペーストでコーティングされておらず、直ちにふるい分けされ、所望の粒径に基づいて選別され、施設の骨材貯蔵所に送られる。
【0021】
砂、セメント及び水に代表される戻りコンクリートの残りの部分は凝固剤混合物及び強力な混合の影響下で、小さい凝集体(数ミリメートル)の混合物に変換され、それは後続のふるい分けプロセスにおいて、より粗い凝集体から分離される。凝固剤混合物の強力な凝集作用および等質で均一な粒度分布のために、この方法に由来する微細画分はまだ湿っており、凝集する傾向がほとんどまたは全くなく、したがって、その最終貯蔵の前に硬化段階を必要としないが、WO2016/198384に記載されているように、造粒プロセスでは硬化が必要である。その結果、微細な骨材の混合物はまた、施設の砂貯蔵所に直接送ることができ、そこでは、既に存在する乾燥材料との混合のために、それは均一に分散される。全工程はミキサー車が戻りコンクリートを排出する専用ユニット内で行われ、従って、ミキサー車は変態工程に関与せず、生産サイクルを不利にすることなく、コンクリートの新たな積載のために直ちに再使用することができる。本発明の方法は、請求項1に定義される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に定義される。この方法のスキームは、本発明による戻りコンクリート処理プロセスのスキームを示す図に要約されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による戻りコンクリート処理プロセスのスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ミキサー車は、戻りコンクリートを、配送されたコンクリートの量を測定するための積載セル上に配置され、ミックスのスランプを測定するためのシステムを伴った施設の積載ホッパー内に排出する。戻りコンクリートは次にミキサーに移され、そこで凝集剤混合物が添加され、その計量は処理される戻りコンクリートの量およびそのスランプ特性に基づいて調節される。強力ミキサーは水平軸ミキサーであり、ここで、凝集剤混合物が添加された戻りコンクリートは、元の骨材および凝固した微細画分に分けられる。回転シャフトによって与えられる高い剪断応力および凝集剤混合物の効果のために、水、混合物および戻りコンクリートの微細砂状画分からなるセメントペーストの塊は、粗骨材の表面上に堆積され、粗骨材がセメント「ゲル」の層で被覆された先の特許文献に記載されているような顆粒を生じる代わりに、表面から継続的に分離され、プロセスの終わりに、数ミリメートル(典型的には1~5ミリメートル)のサイズを有する凝集した凝集塊の形態で分離したままである。
【0024】
混合プロセスの継続時間は、20秒~5分、好ましくは30秒~3分、最も好ましくは1分~2分の範囲である。より短い時間は、凝集剤混合物が完全に作用することを可能にせず、一方、より長い時間は凝集プロセスを不安定化し、そして混合物を再凝集させる。ミキサーは、ハンマーまたはパドルミキサー、またはその両方を有する、シングルシャフトまたはツインシャフトタイプであり得る。シャフトの端部には、ミキサーに沿っての材料の前進を容易にするためにスクリューを取り付けることができる。
【0025】
強力ミキサーから出ると、粗骨材と、水、セメントペースト、微細画分および凝固剤混合物からなる微細画分の塊とからなる処理された戻りコンクリートの混合物は、種々の画分の分離のために篩い分けシステムに通される。粗い混合物は少なくとも2つの画分に分離される:第1の画分は5mmより大きい粗骨材に相当し、第2の画分は5mmより小さいより微細な画分に相当する。それは好ましくは3つの画分に分離される:第1の画分は10mmより大きい粗い骨材に相当し、中間画分は10mm~5mmのサイズを有する骨材に相当し、そしてより微細な画分は5mmより小さい骨材に相当する。しかしながら、収集される画分の数およびそれらの粒子サイズは、篩の数を増加させ、それらの開口を改変することによって、広い範囲内で変化させることができる。
【0026】
本発明による戻りコンクリートから骨材を製造する方法に使用される篩の種類は、選択された粒径に基づいて骨材を分離することができる、一般工業的な振動、回転またはサイクロン篩である。セパレータは、可変の幾何学的形状及び孔の大きさを有するプラスチック又は金属で作ることができる。分離された材料の品質はふるい分けプロセス中にふるい分け中の骨材の流れに対して向流の空気流が吹き込まれる場合に、さらに改善される。空気の作用は粗骨材の表面をさらに乾燥させ、セメント相および凝固材料の表面から残留物を放出し、分離プロセスを容易にし、骨材の品質を改善するように意図される。空気流は換気システムによって生成され、このシステムでは、冬季および寒い気候において材料の乾燥を容易にするために空気を加熱することもできる。
【0027】
より大きな画分、典型的には10mmを超える画分および5~10mmの範囲の画分は、表面上にセメントペーストをほとんど含まない。本発明による方法によって製造された骨材の表面に付着する凝固モルタルの残留部分は、強力ミキサーからの排出生産物の正しいふるい分けおよびそれに続く貯蔵をうまく行う可能性を決して損なうことがないよう、10mmより大きい骨材の総質量の1%まで、および中間サイズ(5~10mm)の骨材の総質量の5%までとすることができる。
【0028】
ふるい分けシステムの出口において、生成された骨材の画分は、貯蔵倉庫に直接送られる。本発明による方法によって製造された粗骨材は典型的には5mmより大きいものであるが、その表面は乾燥しており、セメントペーストの表面堆積物が実質的になく、同じ粒径特性を有する天然骨材と共に直接貯蔵することができる。5mm未満であり、主に水、凝固剤混合物、新鮮なセメント、および混合物の微細画分(砂およびシルト)を含有する塊からなる微細画分は、砂貯蔵所に直接送られるのに十分に凝集性があり、そこで既に貯蔵されている材料の塊に分散される。貯蔵前の新鮮な状態での取り扱いを改善するために、生成されたばかりの微細画分を、任意に、前に生成された十分な量の乾燥砂または既に硬化された微細材料と混合することができる。
【0029】
有機凝集剤混合物はアニオン性およびカチオン性高分子電解質からなることができ、固体または液体のいずれかの形態でバッチ処理することができる。前記混合物の例は、数万~2000万ダルトンの範囲の可変電荷密度および分子量を有する、アニオン基またはカチオン基で修飾されたポリアクリルアミドである。固体品は、1000μm~0.1μm、好ましくは500μm~0.5μm、最も好ましくは200μm~1μmの範囲の可変粒径の粉末からなる。液体品はエマルジョンであり、ここで活性物質含量は10%~80%、好ましくは20%~70%、最も好ましくは25%~60%の範囲であることができる。他の有機凝集剤は、セルロースおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体などの高分子量多糖類によって代表される。有機凝集剤の典型的な用量は、処理される戻りコンクリート1立方メートル当たり0.1~10kg、好ましくは0.2~3kg、最も好ましくは0.4~2kgの範囲であり得る。前記混合物は、単独で、または他の無機凝集剤混合物と組み合わせて使用することができる。
【0030】
任意に上記の有機凝集剤と組み合わせて使用することができる無機凝集剤は、アルミニウム(III)および鉄(III)塩などの三価金属塩からなる。最も一般的に使用されているのは、硫酸アルミニウムAl(SO3、アルミン酸ナトリウムNaAlO2、アルミニウムカリウムKAl(SO4、ポリ塩化アルミニウムAln(OH)mCl3n-m、塩化第二鉄FeClおよび硫酸第二鉄Fe2(SO4である。無機凝集剤の典型的な用量は処理される戻りコンクリート1立方メートル当たり0.5kg~15kg、好ましくは0.6kg~10kg、最も好ましくは1kg~7kgの範囲であり、固体または液体の形態でバッチ処理することができる。
【0031】
本発明の有機および無機凝集剤混合物は、促進剤混合物および遅延剤混合物のような通常のコンクリート混合物と組み合わせて処方および使用することもできる。促進剤混合物の例には、硝酸カルシウム、ケイ酸塩水和物の混合物、チオシアン酸ナトリウム、エタノールアミン、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウムおよびそれらの混合物が挙げられる。遅延剤混合物の例としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸およびシュウ酸のアルカリ塩およびアルカリ土類塩、ならびにより一般的には他のα-ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【0032】
本発明による戻りコンクリートから骨材を製造する方法は、不連続的に又は連続的に行うことができる。不連続工程では、ミキサー車から排出された戻りコンクリートを秤量し、強力ミキサーに供給し、そこで凝固剤混合物の存在下で定着された時間処理する。強力な混合工程の終わりに、骨材の粗い混合物を篩ユニットに移し、分離された骨材をそれぞれの貯蔵倉庫に送る。
【0033】
不連続プロセスは、過度に大きくない強力ミキサーに入れることができる、半立方メートル~3立方メートルの範囲の少量の戻りコンクリートを処理するのに特に適している。より多量の場合、過度に大きな強力ミキサーの使用を回避するために、連続プロセスがより有利である。その場合、戻りコンクリートは、凝固剤混合物による正しい処理を効果的に実施するのに十分な滞留時間を可能にするような速度で、強力ミキサーに連続的に供給される。滞留時間を適切に計算することによって、強力ミキサーの容積を制限することができ、したがって、過度に大きく高価な不連続ミキサーの使用を回避することができる。骨材の粗混合物は、強力ミキサーからふるい分けシステムに運ばれ、ふるい分けシステムは再び連続的に、混合物を様々な粒径画分に分離する。連続プロセスの場合、シャフトに強力な混合成分(ハンマー、プラウまたはパドル)および混合物(スクリュー)の前進および移動のための部材成分が取り付けられた水平枢軸強力ミキサーが特に適している。
【実施例
【0034】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に記載される。
【0035】
実施例1
表1に記載の特性を持つ2立方メートルの戻りコンクリートを、3立方メートルの使用可能容量のダブル二軸強力ミキサーに装填した。コンクリートをミキサーに装填した後、アニオン性ポリアクリルアミドをベースとする有機粉末凝集剤混合物2kgを添加し、これを1分30秒間混合した。混合が終わると、粗物質を排出し、5mmの開口を有する1つのセパレーターからなる振動篩中で分離した。こうして2つの画分が得られた:第1の画分は5mmより大きい骨材によって表され、第2の画分は5mm篩を通過し、底部に集められた材料であった。種々の画分の特性を表2に示す。
【0036】
表2の結果から分かるように、最も豊富な画分(生成した骨材の全質量の54%)は、塊の形態での、セメント、水、元のコンクリートのより微細な画分および凝集剤を含有する最も微細な画分(<5mmの画分)である。他の画分は主に、コンクリートを当初に構成した天然骨材(全体の46%)からなる。
【0037】
理解されるように、画分1は、セメント残渣を実質的に含まず(0.1%の残留モルタルのみが付着している)、凝固および分離プロセスの優れた効力が示されている。これらの特性は、骨材の他の特性、特に、質量体積および吸水率が元のコンクリートの製造に使用される天然骨材の質量体積および吸水率に非常に類似するという好ましい影響を及ぼす。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例2(比較)
この実施例では、国際公開第2012/084716号パンフレットに記載されている造粒方法によって製造された骨材の特性を比較として測定する。
表1に報告された特性を有する2立方メートルの戻りコンクリートを、硫酸アルミニウムAl2(SO3をベースにした13kgの粉末無機凝集剤を含むミキサー車で処理した。
セメントミキサー中で3分間撹拌した後、アニオン性ポリアクリルアミドをベースとする超吸収性混合物1kgを添加し、戻りコンクリートが粒状材料に変わるまで、撹拌をさらに4分間続けた。このようにして形成された粒状材料をミキサー車から排出し、約20センチメートルの厚さに広げた。
【0041】
放出の約3時間後、パドルを備えた小さな機械的装置で材料を穏やかに処理し、セメントの水和により顆粒間に形成された結合を切断した。この操作を最初の24時間内でさらに3回繰り返し、次いで粒状材料をパイル中で7日間硬化させた後、5mmメッシュの篩を通してふるい分けした。このように分離された2つの画分の特性を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示す結果から分かるように、表面に付着する13.5%のモルタル画分によって特徴付けられるより粗い粒子サイズに関する画分1は、実施例1の同じ画分よりもはるかに大きい。この特性は前記骨材の質量体積および吸水率に必然的に影響を及ぼし、これは、実施例1の画分1の値よりもはるかに悪い。
【0044】
実施例3
本実施例では、実施例1(本発明)および実施例2(比較)で製造した骨材を、天然骨材のみで製造した同様の比較混合物と比較して、コンクリート混合物の製造に使用した。この実施例では、天然骨材の粗骨材画分(>5mm)および中粗砂画分(<5mm)が戻りコンクリートから製造された骨材の画分によって完全に置き換えられた。戻りコンクリートから製造された骨材を有するコンクリートでは、骨材の粒度分布曲線のバランスをとるために、追加の割合の天然微細砂を添加することが必要であった。混合物の特性を以下の表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
理解されるように、本発明に従って製造された骨材で製造されたコンクリート(コンクリート2)は、国際公開第2012/084716号パンフレット(コンクリート3)に記載された造粒プロセスによって製造された骨材で製造されたコンクリートよりも、より少ない混合水しか必要とせず、より良好な機械的圧縮強度を発揮する。この相違は主に、様々な方法によって製造された骨材の異なる吸水特性によるものであり、本発明による方法によって製造された骨材の品質が、戻りコンクリートを処理する造粒方法によって製造された骨材の品質よりもはるかに良好であることが確認できた。
図1