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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】振動発生器
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045268
(22)【出願日】2020-03-16
(62)【分割の表示】P 2018107695の分割
【原出願日】2014-05-21
(65)【公開番号】P2020093260
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-03-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(72)【発明者】
【氏名】平林 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】古屋 美幸
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200460(JP,A)
【文献】特開平06-022530(JP,A)
【文献】特開平07-170712(JP,A)
【文献】特開2015-220955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00- 3/04
H02K 33/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルに対向するマグネットと、
前記マグネットが載置された2つの磁性体と、
前記コイルと前記2つの磁性体を支持するハウジングと、を備え、
前記2つの磁性体のうち、一方の磁性体は前記マグネットを保持するヨークであり、前記一方の磁性体は、複数の突出部と、取付部とを備え、
前記一方の磁性体は、前記マグネットと前記2つの磁性体のうちの他方の磁性体とに挟まれており、
前記他方の磁性体はプレートであり、
前記マグネットの複数の側部は前記複数の突出部の内側にあり、前記複数の突出部により前記マグネットの複数の側部は前記一方の磁性体に固定されており、
前記他方の磁性体は前記一方の磁性体に位置決めされており、
前記取付部は前記ハウジングに嵌合している、振動発生器。
【請求項2】
前記マグネットは前記複数の突出部により位置決めされており、
前記他方の磁性体に設けられた突起部が前記一方の磁性体に嵌合している、請求項1に記載の振動発生器。
【請求項3】
前記複数の突出部は前記マグネットの移動に対するストッパである、請求項1または2に記載の振動発生器。
【請求項4】
前記マグネットは直方体形状を有しており、
前記マグネットの複数の側部に対して前記複数の突出部がそれぞれ配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の振動発生器。
【請求項5】
前記マグネットの複数の側部のうち、一方の側部に対して前記複数の突出部のうち2つの突出部が配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の振動発生器。
【請求項6】
前記取付部には位置決め突起が形成されており、
前記位置決め突起が前記ハウジングの穴部にはめ込まれている、請求項5に記載の振動発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動発生器に関し、特に、コイルに電流を流して振動子を運動させることで振動を発生させる振動発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子を運動させて振動を発生させる振動発生器としては、マグネットを含む振動子を、ばね部を介して、筐体により支持した構造を有するものが種々用いられている。この種の振動発生器は、マグネットの下方にマグネットに対面するように配置されたコイルを備えている。振動子は、コイルが通電されて磁場が発生するのに伴って、ばね部を変形させながら運動する。
【0003】
下記特許文献1には、磁界によって一方向に往復運動する振動体が板ばねで支持されている構造を有する振動発生装置が開示されている。この振動発生装置は、非磁性のハウジングの周壁面の内側に、底面に取り付けられたコイルに対向する振動体と、振動体と周壁面との間に振動体を支持するように配置された帯状の板ばねとを備えているものである。板ばねは、その長手方向の一端である接続部で振動体の座面に固着され、他端である取付部でケースの周壁面に固着されている。
【0004】
同様の構造を有する振動発生装置は、下記特許文献2や特許文献3にも開示されている。
【0005】
下記特許文献4には、板ばねにより振動子を支持した構造を有する振動発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-169544号公報
【文献】特開2013-183583号公報
【文献】特開2013-192995号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0169072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、取付部と振動子とを接続する中間部が、対向する2つの側壁の間に設けられている振動発生器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、振動発生器は、コイルと、コイルに対向するマグネットと、マグネットが載置された2つの磁性体と、コイルと2つの磁性体を支持するハウジングと、を備え、2つの磁性体のうち、一方の磁性体はマグネットを保持するヨークであり、一方の磁性体は、複数の突出部と、取付部とを備え、一方の磁性体は、マグネットと2つの磁性体のうちの他方の磁性体とに挟まれており、他方の磁性体はプレートであり、マグネットの複数の側部は複数の突出部の内側にあり、複数の突出部によりマグネットの複数の側部は一方の磁性体に固定されており、他方の磁性体は一方の磁性体に位置決めされており、取付部はハウジングに嵌合している。
【0009】
好ましくは、マグネットは複数の突出部により位置決めされており、他方の磁性体に設けられた突起部が一方の磁性体に嵌合している。
【0010】
好ましくは、複数の突出部はマグネットの移動に対するストッパである。
【0011】
好ましくは、マグネットは直方体形状を有しており、マグネットの複数の側部に対して複数の突出部がそれぞれ配置されている。
【0012】
好ましくは、マグネットの複数の側部のうち、一方の側部に対して複数の突出部のうち2つの突出部が配置されている。
【0013】
好ましくは、取付部には位置決め突起が形成されており、位置決め突起がハウジングの穴部にはめ込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態における振動発生器の側断面図である。
図2】振動発生器の振動子の取り付け構造を説明する斜視図である。
図3】振動ユニットを示す斜視図である。
図4】振動ユニット及びケースの分解斜視図である。
図5】板金部材の展開図を示す。
図6】第2の実施の形態における振動発生器の側断面図である。
図7】振動ユニットを示す斜視図である。
図8】板金部材を示す斜視図である。
図9】板金部材の展開図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態における振動発生器について説明する。
【0016】
振動発生器は、マグネットを含む振動子がケース(筐体)に対して変位可能に、ケースに支持されている構造を有している。振動子の近くには、コイルが配置されている。振動子は、ケースに対する位置及び姿勢のうち少なくとも一方を変化させるための磁場を発生させる。振動発生器は、コイルの励磁に応じて振動子を往復運動させることで振動力を発生する、いわゆるリニアタイプのものである。
【0017】
[第1の実施の形態]
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態における振動発生器の側断面図である。図2は、振動発生器の振動子の取り付け構造を説明する斜視図である。
【0019】
図1においては、図2のA-A線における断面が示されている。
【0020】
振動発生器1は、全体として、上下の寸法が比較的小さい薄型の略直方体形状に形成されている。以下の説明において、振動発生器1について、図1で示されるX軸方向を左右方向(原点から見てX軸で正となる方向が右方向)、Z軸方向を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上方向)ということがある。また、図2で示されるY軸方向(図1のXZ平面に垂直な方向)を、前後方向ということがある(原点から見てY軸で正となる方向が後方向)ということがある。
【0021】
振動発生器1は、例えば、左右方向、前後方向のそれぞれの外形寸法が10ミリメートル~20ミリメートル程度しかない、小型のものである。振動発生器1は、前後左右の側面及び上面がケース2により構成され、回路基板6により底面が覆われた、箱形の外形を有している。
【0022】
[振動発生器1の全体構造]
【0023】
図1に示されるように、振動発生器1は、大まかに、ハウジング2の内部に振動子11と振動子11を往復運動させるためのコイル5とが収納されている構造を有している。ハウジング2の下方には、回路基板6が設けられている。振動発生器1は、コイル5の励磁に応じて振動子11が往復運動することで、振動力を発生させる。
【0024】
本実施の形態において、振動子11は、振動子保持部15により、ハウジング2に対して変位可能に支持されている。振動子11と振動子保持部15とで1つの振動ユニット10が構成されており、振動ユニット10がハウジング2に保持されている。
【0025】
回路基板6は、例えば両面にパターンが設けられたプリント配線基板である。回路基板6のパターン上には、コイル5の巻回端部が接続された端子6aが設けられている。回路基板6に設けられたパターンを介してコイル5に通電することで、振動発生器1が駆動される。
【0026】
ハウジング2は、ケース3とプレート4とに分かれている。プレート4は、回路基板6の上面の略全域を覆うように、長方形の板状に形成されている。プレート4と回路基板6とは、例えば粘着シートや接着剤などを介して、互いに固定されている。換言すると、回路基板6は、プレート4に沿うように接続されている。プレート4には、端子6aが上方に露出するように、開口部4aが設けられている。プレート4の縁には、平面部から略90度上方に曲げられて回路基板6上の部位と共にL字形状の断面をなすように形成された側壁4bが設けられている。プレート4は、ケース3と共に、振動子11やコイル5などを覆っている。
【0027】
本実施の形態において、ケース3及びプレート4は、非磁性材料を用いて構成されている。ケース3及びプレート4は、例えば非磁性ステンレス鋼など、非磁性の金属材料を用いて構成されている。なお、ケース3及びプレート4は、金属材料を用いたものに限られず、例えば樹脂製のものであってもよい。
【0028】
コイル5は、例えば導線を巻回してなる、全体として平板状の空芯コイルである。すなわち、コイル5は、巻回軸方向の寸法が、巻回軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい薄型コイルである。なお、コイル5は、金属箔を巻回したものをスライスしてなるものであったり、シートコイルを積層したものであったりしてもよい。また、コイル5の形状は、平面視で、楕円形や円形であってもよいし、四角形形状などの多角形形状であってもよい。
【0029】
コイル5は、巻回軸方向が上下方向となるようにして、プレート4の上面に配置されている。コイル5は、平面視で、振動発生器1の中央部に、振動子11に対して面対向に配置されている。コイル5とプレート4とは、絶縁されている。コイル5の2つの巻回端部は、共にコイル5の内側から開口部4aを介して回路基板6の上面側に配線され、端子6aに接続されている。
【0030】
ケース3は、全体として、底面部が開口する直方体形状を有している。ケース3は、例えば非磁性材を用いて構成されている。ケース3の角部(各側壁3c間の部位)は、平面視で、R面状部分を挟んで繋がっている。ケース3の上面3aのうち、側壁3c近傍には、部分的に穴部3bが形成されている。
【0031】
図1に示されるように、ケース3は、回路基板6の上方から、回路基板6の上面を覆うように配置される。ケース3は、各側壁3cが、各側壁4bに対して接着又は溶接などがされることで、プレート4に固定されている。すなわち、プレート4は、ケース3に取り付けられている。各側壁3cは、プレート4の側壁4bのそれぞれの内側面に接触するように配置される。なお、ケース3は、側壁4bにはめ込まれたりその他の方法を用いたりしてプレート4に固定されていてもよい。
【0032】
このように、振動発生器1は、ケース3とプレート4とで構成される箱形のハウジング2で囲まれた構造を有しているので、振動発生器1自身の剛性が高くなる。したがって、振動発生器1は、確実に振動を発生することができる。また、振動発生器1は、外部機器等への取り付け作業時において取り扱いやすいものとなる。
【0033】
[振動ユニット10の構造]
【0034】
図3は、振動ユニット10を示す斜視図である。図4は、振動ユニット10及びケース3の分解斜視図である。
【0035】
図3及び図4において、振動ユニット10を下方から見た状態、すなわち振動ユニット10のうちコイル5に対面する側が示されている。
【0036】
図3に示されるように、振動ユニット10は、振動子11と、振動子11を支持する振動子保持部15とに分かれている。振動子保持部15の一部は、後述するようにハウジング2に対して固定されており、これにより、振動子11がハウジング2に対して変位可能に支持されている。
【0037】
図4に示されるように、振動ユニット10は、板金部材10aと、マグネット13と、ヨーク14とを組み合わせて構成されている。このうち、板金部材10aの一部であるマグネット保持部12と、マグネット13と、ヨーク14とで、振動子11が構成されている。振動子保持部15は、板金部材10aのうち、マグネット保持部12を除く部分で構成されている。
【0038】
振動子保持部15は、取付部16と中間部17とを有している。取付部16は、ケース3とプレート4とで挟持され、ケース3に固定されている。中間部17は、取付部16とマグネット保持部12とを接続する。中間部17は、板ばねとして機能するような形状を有しており、中間部17により、振動子11が取付部16に対して変位可能に支持されている。
【0039】
以下、振動ユニット10の構造及び振動ユニット10のケース3への取り付け構造について、より具体的に説明する。
【0040】
図4に示されるように、ケース3の上面3aのうち、2つの側壁3cの近傍となる2箇所には、穴部3bが形成されている。本実施の形態において、取付部16は、ケース3の4つの側壁3c(前側壁3ca、右側壁3cb、後側壁3cc、左側壁3cd)のうち、前側壁3caの近傍と、右側壁3cbの近傍とに設けられている。各穴部3bは、例えば貫通孔であるが、上面3aの内面から凹んでいる有底の凹部であってもよい。
【0041】
図5は、板金部材10aの展開図を示す。
【0042】
図5においては、後述のようにマグネット保持部12に施されているダボ加工等の図示は省略されている。
【0043】
図5に示されるように、取付部16と、中間部17と、マグネット保持部12とは、同一の板金部材10aを用いて一体に形成されている。マグネット保持部12は、折曲げ部17aを介して中間部17の先端に接続されている。板金部材10aは、非磁性の、弾性を有する金属板である。具体的には、板金部材10aとしては、例えば、オーステナイト系ばね用ステンレス鋼や、リン青銅などの薄板材が用いられる。図5に示されるような平板状の板金部材10aを板金加工により折り曲げることで、図4に示されるような形状の板金部材10aが形成される。
【0044】
板金部材10aは、中間部17の一端が取付部16に接続され、他端がマグネット保持部12に接続された形状を有している。中間部17は、振動ユニット10がハウジング2内に収納された状態でケース3の内側面に添うように、前後方向又は左右方向が長手方向となる帯形状を有している。具体的には、中間部17は、右側壁3cbから、後側壁3ccの側を通り、左側壁3cdにかけて、側壁3cの内面に沿うように形成されている。中間部17は、上下方向が帯の幅方向となり、前後方向又は左右方向が上下方向が板厚方向となるように形成されている。これにより、中間部17は、主に上下方向に対して垂直な方向に湾曲するような可撓性を有している。
【0045】
取付部16は、上下方向の幅がケース3の内側面の上下方向の寸法と略等しい帯状に形成されている。すなわち、取付部16の上下方向の寸法は、中間部17のそれよりも大きくなっている。取付部16は、振動ユニット10がハウジング2内に収納された状態でケース3の内側面に添うように、前後方向又は左右方向が長手方向となる帯形状を有している。具体的には、取付部16は、前側壁3caの内面と右側壁3cbの内面との2面に沿うように、途中で折り曲げられて形成されている。取付部16は、右側壁3cb側の端部で中間部17に接続されている。
【0046】
取付部16及び中間部17は、振動ユニット10がハウジング2内に収納された状態でケース3の各側壁3c間のR面状部分(コーナー部)に添って湾曲するように、曲げ加工が行われて形成されている。
【0047】
マグネット保持部12は、水平面に略平行な板形状を有している。マグネット保持部12は、中間部17の先端の折曲げ部17aにおいて90度曲げられて形成されている。
【0048】
板金部材10aの板金加工時において、その板金加工により、マグネット保持部12に複数のダボ(突起部)12a及び開口12bが形成される。
【0049】
ダボ12aは、ダボ出し加工により形成される。本実施の形態において、5個のダボ12aがマグネット保持部12の底面から下方に突出するように形成される。ダボ12aは、マグネット保持部12にマグネット13を載置する際、マグネット13の側部に近接する位置に配置されており、マグネット13を位置決めする。
【0050】
開口12bは、マグネット保持部12のうち、マグネット13が配置される領域の2箇所に形成される。開口12bは、後述するようにヨーク14に形成されている複数のダボ14a(突起部)がはまり込むように形成されている。
【0051】
ヨーク14は、例えば鉄などの軟磁性の金属材料から形成された、平面視で長方形のプレートである。ヨーク14の底面には、ダボ出し加工により2つのダボ14aが下方に突出するように形成されている。ヨーク14は、2つのダボ14aのそれぞれが2つの開口12bのそれぞれに嵌合するようにして、マグネット保持部12に取り付けられる。これにより、ヨーク14は、マグネット保持部12に対して位置決めされた状態で取り付けられる。
【0052】
なお、ヨーク14の底面に、ダボ12aが形成されていることでマグネット保持部12の上面側に形成された窪みのうちいくつかに嵌合するように突起部を設けることで、マグネット保持部12に対してヨーク14が位置決めされるようにしてもよい。このような突起部は、開口12bに嵌合するダボ14aに替えて設けられていてもよく、この場合、開口12bは設けられていなくてもよい。また、このような突起部は、開口12bに嵌合するダボ14aに加えて設けられていてもよい。
【0053】
マグネット13は、薄型の直方体形状を有している。マグネット13としては、例えばネオジム磁石が用いられるが、これに限定されるものではない。マグネット13は、例えば、コイル5に対向する底面側部分において、N極とS極とが前後方向に分かれるように2極に着磁されている。マグネット13は、5つのダボ12aにより位置決めされた状態で、マグネット保持部12に載置される。
【0054】
マグネット13は、マグネット13の磁気吸引力によってヨーク14を吸引する。そのため、マグネット13及びヨーク14は、マグネット保持部12を強固に挟持するようにして、マグネット保持部12に固定される。マグネット13は、ダボ12aにより位置決めされた状態でマグネット保持部12に固定される。このようにマグネット13がマグネット保持部12に固定された状態で、ダボ12aは、マグネット13の移動(動き)を規制するストッパとしても機能する。
【0055】
なお、マグネット13やヨーク14は、上述のような磁気吸引力だけではなく、接着などの方法によりマグネット保持部12に取り付けられていてもよい。
【0056】
ここで、取付部16の下端部の2箇所には、例えば2つの位置決め突起16aが形成されている。各位置決め突起16aは、ケース3の穴部3bに対応する位置に、穴部3bにはめ込み可能に形成されている。各位置決め突起16aが穴部3bのそれぞれにはめ込まれることで、振動ユニット10が、ケース3に対して、位置決めされた状態で装着される。ケース3とプレート4を嵌合させてハウジング2を形成する際、取付部16のうち位置決め突起16aが形成された側とは反対側の端部(下端部)が、プレート4の底面により上方に押圧される状態となる。このようにして、振動子保持部15は、ケース3とプレート4によって挟持される。
【0057】
なお、位置決め突起16aは、取付部16の上端部にのみ形成されているが、取付部16の下端部にのみ形成されていてもよいし、上端部と下端部との両端に形成されていてもよい。例えば取付部16の上端部と下端部とのそれぞれに位置決め突起16aが形成されているとき、プレート4にもケース3の穴部3bと同様の穴部を形成し、取付部16の上端部の位置決め突起16aをケース3の穴部3bに嵌合させ、取付部16の下端部の位置決め突起をプレート4の穴部に嵌合させた状態で、振動子保持部15がケース3とプレート4とで挟持されるようにすればよい。
【0058】
また、板金部材10aは、非磁性の金属材料に限定されない。板金部材10aは、非磁性の金属材料に替えて、軟磁性体の金属材料を用いて構成するようにしてもよい。例えば、ばね鋼や、マルテンサイト系ばね用ステンレス鋼であるSUS420J2CSPなどを用いることができる。このように軟磁性体の金属材料を用いた場合、マグネット保持部12もヨークとして機能することになる。また、このようにヨークとして機能するようにマグネット保持部を軟磁性体の金属材料を用いて構成する場合、マグネット保持部12とは別のヨークを設けなくてもよい。
【0059】
[振動発生器1の動作]
【0060】
振動発生器1において、コイル5は、振動子11をケース3に対して往復運動させるための磁場を発生する。すなわち、コイル5に電流が流れると、コイル5が励磁し、上下方向に磁場が生じる。磁場が生じると、マグネット13がこの磁場の影響を受けて反発・吸引の力が生じる。磁場の方向及びマグネット13の磁極の配置に応じて、振動子11に前方又は後方へ変位させる力が作用する。そのため、振動子11は、中間部17を撓ませながら、前後方向(図2の矢印Dで示す方向)のいずれかに変位する。したがって、コイル5に交流が流されることにより、その交流に応じて、振動子11は、平面視で、ケース3に対して、前後方向に往復直線運動を行う。これにより、振動発生器1が振動力を発生する。
【0061】
なお、磁場の発生に応じて振動子11の姿勢変化が生じることで振動力が発生するように、コイル、マグネット、及びホルダ等の形状や配置が設定されていてもよい。
【0062】
以上説明したように、第1の実施の形態では、マグネット保持部12と、中間部17と、取付部16とが、1つの部材である板金部材10aで一体に構成されている。振動ユニット10は、金属板である板金部材10aに板金加工を行ってマグネット13及びヨーク14を取り付けることで構成されるので、安価に製造可能である。
【0063】
また、取付部16には2つの位置決め突起16aが形成されており、この位置決め突起16aをケース3の穴部3bにはめ込むことで、振動子保持部15をケース3に対して容易に位置決めできる。そして、位置決め突起16aが形成された側とは反対側の下端部をプレート4で押圧し、振動子保持部15がケース3とプレート4とによって挟持されるようにして、ケース3とプレート4を嵌合させてハウジング2を形成できる。したがって、振動子保持部15をケース3に固定する際に溶接等の方法を用いる必要がなく、容易にかつ確実に振動子保持部15をケース3に固定することができるので、振動発生器1の製造コストを低減することができる。
【0064】
[第2の実施の形態]
【0065】
第2の実施の形態における振動発生器1の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第2の実施の形態においては、ヨークが振動子保持部と同一の磁性材を用いて形成されている点が第1の実施の形態と異なる。
【0066】
図6は、第2の実施の形態における振動発生器1の側断面図である。
【0067】
図6においては、図1と同じ断面における断面図が示されている。
【0068】
図6に示されるように、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態の振動ユニット10とは構成が異なる振動ユニット210が用いられているほかは、第2の実施の形態と同様に構成された部材が用いられている。振動ユニット210は、振動子211と、第1の実施の形態の振動ユニット10におけるそれと同様に構成された振動子保持部15とを有している。
【0069】
図7は、振動ユニット210を示す斜視図である。図8は、板金部材210aを示す斜視図である。
【0070】
振動ユニット210は、マグネット13と、板金部材210aとで構成されている。図7に示されるように、振動ユニット210は、マグネット13を有する振動子211を振動子保持部15で保持した構成を有している。
【0071】
図8に示されるように、板金部材210aは、振動子保持部15と、マグネット保持部212と、ヨーク214とを有している。振動子保持部15と、マグネット保持部212と、ヨーク214とは、同一の部材を用いて一体に構成されている。本実施の形態において、板金部材210aは、軟磁性体を有する金属材料、例えばばね鋼やマルテンサイト系ばね用ステンレス鋼であるSUS420J2CSPなどの金属板である。マグネット13は、ダボ212aにより位置決めされた状態で、マグネット保持部212及びヨーク214に磁気吸引力により吸着し、マグネット保持部212に固定される。
【0072】
図9は、板金部材210aの展開図を示す。
【0073】
図9において、マグネット保持部212に形成される突起部や穴部等の図示は省略されている。
【0074】
図9に示されるように、板金部材210aにおいて、マグネット保持部212になる部分は、第1の実施の形態のマグネット保持部12になる部分と比較して大きく確保されている。板金部材210aのその他の部分は、上述の第1の実施の形態の板金部材10aと略同様に構成されている。
【0075】
板金部材210aのうち、上記のように大きく確保された部分は、マグネット保持部212と、マグネット保持部212に連接するヨーク214とになる。すなわち、マグネット保持部212となる部分だけ残して、他の部分を、マグネット保持部212のうちマグネット13が配置される側とは反対側(上面側)に向けて折り返し、マグネット保持部212に重ねる加工が行われる。このようにマグネット保持部212の上面側に折り返された部分がヨーク214となり、マグネット保持部212の上方に、マグネット保持部212に接するようにヨーク214が配置された構造が得られる。このように、ヨーク214は、マグネット保持部212及び振動子保持部15と一体に構成されている。
【0076】
なお、第2の実施の形態において、マグネット保持部212に比較して、ヨーク214となる部分の表面積は大きくなっている。そのため、ヨーク214は、板金部材210aのうちマグネット保持部212となる部分を残した他の部分を、いわゆるつづら折り状に折り畳むようにして、複数層の金属板が折り重なるように構成されている。第2の実施の形態では、図6に示されるように、例えば、マグネット保持部212とヨーク214とを合わせて、合計3層の金属版が折り重なっている構成が得られる。なお、つづら折りの向きや態様は、適宜設定すればよい。つづら折りに替えて、同一方向に繰り返し折り曲げるような巻き方により複数の金属版が折り重なるようにすることでヨークを形成するようにしてもよい。また、金属版が一度折り畳まれて、マグネット保持部212とヨーク214とを合わせて合計2層の金属版が重なっている構成が用いられていてもよい。
【0077】
ここで、図8に示されるように、マグネット保持部212の下面には、下方に突出する5つのダボ212aが形成されている。このダボ212aは、第1の実施の形態と同様に、マグネット13を位置決めし、かつ、振動発生器1の駆動時においてマグネット13の移動(動き)を規制するストッパとして機能する。
【0078】
また、マグネット保持部212のうち、マグネット13が載置される範囲以外の箇所には、穴212bが形成されている。また、ヨーク214となる部位には、折り曲げられてヨーク214となったときに穴212bに嵌入するように形成されたダボ212cが設けられている。穴212bやダボ212cは、ダボ212aと同様に、板金加工時に、板金加工(プレス加工やダボ出し加工など)が行われて形成される。板金部材210aを折り曲げてヨーク214を形成するとき、ダボ212cが穴212bに嵌着するように板金加工が行われ、ヨーク214がマグネット保持部212に接合した構造が得られる。
【0079】
マグネット13は、ダボ212aにより位置決めされた状態で、マグネット保持部212及びヨーク214に磁気吸引力により吸着し、マグネット保持部212に固定される。これにより、一体となっているマグネット保持部212及びヨーク214と、マグネット13とで、振動子211が構成される。マグネット保持部212は、ヨーク214とマグネット13とで挟持された状態となる。
【0080】
第2の実施の形態においても、振動発生器1は、上述の第1の実施の形態と同様に動作する。振動ユニット210は、板金部材210aを板金加工で折り曲げるなどしたうえで、板金部材210aにマグネット13を吸着させることで構成されるので、部品点数が少なく、かつ、容易に製造できる。したがって、振動発生器1の製造コストをより低減することができる。
【0081】
[その他]
【0082】
マグネットとヨークとは、マグネット保持部の一部を挟持するように配置されていなくてもよい。例えば、マグネット保持部、マグネット保持部に接触するヨーク、及びヨークに接触するマグネット、が上方からこの順で重なるようにして配置されていてもよい。この場合、マグネット保持部が軟磁性体であって、マグネットの磁気に基づいてヨークに吸引されるように構成されていることが望ましい。このような構造は、ヨークとマグネットとが別の(一体でない)部品となるように構成されている場合にも採用することができる。
【0083】
また、上記のような構造は、ヨークとマグネット保持部とが共に1つの金属板を折り曲げることによって一体の部品となるように構成されている場合にも、採用することができる。例えば、ヨークが、マグネット保持部のうちマグネットが配置されている側とは反対の面に、マグネット保持部と連接するように配置されていてもよい。
【0084】
回路基板は設けられていなくてもよい。プレートは、ケースの底部の全面を覆わず、ケースの底部の一部のみに配置されていてもよい。
【0085】
振動子の具体的な形状や、振動子保持部の具体的な形状は、上述のものに限られない。
【0086】
振動子は、振動子の質量を大きくするために配置されたウエイトを有していてもよい。
【0087】
コイルが、振動を利用する機器のメイン基板などに取り付けられており、そのコイル実装済みのメイン基板に、振動ユニットが取り付けられたケースを取り付けることで、振動子が駆動可能な振動発生器が構成されていてもよい。換言すると、他の機器の基板上に搭載されているコイルを用いて、振動発生器が構成されていてもよい。
【0088】
振動発生器は、上記で例示したような小型のものに限られない。基本的構成を同一とする大型な振動発生器を構成してもよく、その場合であっても、上述と同様の効果を得られる。
【0089】
上述の特許文献1に記載の振動発生装置において、板ばねは、細長い帯状に形成されており、振動体の両側方に1つずつが配置されている。板ばねの長手方向の一端部は、振動体の側面の一部に固着されており、他端は、ケースの周壁面に固着されている。ここで、上記のような構造を用いた振動発生装置には、次のような問題がある。すなわち、このような振動発生装置を製造するには、板ばねを振動体に取り付ける作業と、板ばねをケースに取り付ける作業とが必要になる。板ばねを振動体やケースに取り付けるには、一般的には、レーザ溶接などの固着方法を用いることが必要であるが、例えばレーザ溶接でこのような作業を行うと、振動発生装置の製造コストが高くなる。特に、例えば携帯端末等の民生品に使用される部品については、製造コストの低減が強く要求されているところ、上記のような構造を採用すると、このような要求に応えることができなくなることがある。このような問題に関して、特許文献2から4のいずれにも、有効な解決策は開示されていない。上記実施の形態では、製造コストを低減可能な振動発生器を提供できる。
【0090】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 振動発生器
2 ハウジング
3 ケース
3b 穴部
4 プレート
5 コイル
6 回路基板
10,210 振動ユニット
11,211 振動子
12,212
12a,14a,212a,212c ダボ
13 マグネット
14,214 ヨーク
15 振動子保持部
16 取付部
16a 位置決め突起
17 中間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9