(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ヒストン脱アセチル化酵素の二環阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20221004BHJP
C07D 513/04 20060101ALI20221004BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221004BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221004BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221004BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221004BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221004BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20221004BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221004BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
C07D513/04 325
C07D487/04 140
C07D487/04 138
A61K31/444
A61K31/4439
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/28
A61P31/10
A61P31/00
A61P29/00
A61P7/00
A61P25/18
A61P35/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/22
A61P9/00
A61P35/02
A61P7/06
(21)【出願番号】P 2020506910
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 US2018045528
(87)【国際公開番号】W WO2019032528
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-22
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518005056
【氏名又は名称】ロダン・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】フラー,ネイサン・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,ジョン・エイ,ザ・サード
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/007755(WO,A1)
【文献】特開2008-094847(JP,A)
【文献】特表2014-523857(JP,A)
【文献】特表2009-536615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
C07D 513/04
C07D 487/04
A61K 31/444
A61K 31/4439
A61K 31/519
A61P 43/00
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 31/10
A61P 31/00
A61P 29/00
A61P 7/00
A61P 25/18
A61P 35/00
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/22
A61P 9/00
A61P 35/02
A61P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項2】
式:
【化2】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項3】
式:
【化3】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項4】
式:
【化4】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項5】
式:
【化5】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項6】
式:
【化6】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項7】
式:
【化7】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項8】
式:
【化8】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項9】
式:
【化9】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項10】
式:
【化10】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項11】
式:
【化11】
の化合物である、請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
【請求項12】
請求項1
~11のいずれか一項に記載の化合物、又はその医薬として許容される塩、及び医薬として許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項13】
神経障害、記憶若しくは認知機能の障害又は欠陥、消去学習障害(extinction learning disorder)、真菌疾患又は感染症、炎症性疾患、血液疾患、精神障害、及び腫瘍性疾患から選択される対象における病態
の治療
における使用のための、請求項1
~11のいずれか一項に記載の化合
物又はその医薬として許容される塩
を含む医薬組成物。
【請求項14】
前記病態が、
a.アルツハイマー病、ハンチントン病、発作誘発性記憶喪失、統合失調症、ルービンスタイン・テイビ症候群、レット症候群、脆弱X、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、ADHD、失読症、自閉症に伴う双極性障害並びに社会障害、認知障害及び学習障害、外傷性頭部外傷、注意欠陥障害、不安障害、条件付き恐怖反応、パニック障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症、社会不安障害、物質依存性回復、年齢関連記憶欠陥(AAMI)、年齢関連認知機能低下(ARCD)、運動失調、若しくはパーキンソン病
に伴う認知機能の障害又は欠陥;又は
b.急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び鎌状赤血球貧血から選択される血液疾患;又は
c.腫瘍性疾患;又は
d.恐怖消去及び心的外傷後ストレス障害から選択される消去学習障害、
である、請求項
13に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
前記病態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、フリードリヒ失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、パーキンソン病、又は物質依存回復である、請求項
14に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2017年8月7日出願の米国仮出願第62/541,807号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府支援の研究及び開発に関する記述
本発明は、米国立衛生研究所(NIH)により授与される中小企業イノベーション研究(SBIR)助成金1R43AG048651-01A1の下で、政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤は、転写を調節し、細胞増殖停止、分化及びアポトーシスを誘導することが示されている。HDAC阻害剤はまた、放射線及び化学療法薬を含む、癌の治療に用いられる治療薬の細胞毒性効果を高める。Marks,P.,Rifkind,R.A.,Richon,V.M.,Breslow,R.,Miller,T.,Kelly,W.K.ヒストン脱アセチル化酵素及び癌:原因及び治療法(Histone deacetylases and cancer:causes and therapies) Nat Rev Cancer,1,194-202,(2001);並びにMarks,P.A.,Richon,V.M.,Miller,T.,Kelly,W.K.ヒストン脱アセチル化阻害剤(Histone deacetylase inhibitors.Adv Cancer Res,91,137-168,(2004)。さらに、最近の証拠から、転写調節不全は、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、及び虚血などの特定の神経変性障害の分子病因に寄与し得ることが示されている。Langley,B.,Gensert,J.M.,Beal,M.F.,Ratan,R.R.中枢神経系におけるクロマチンリモデリング及びストレス耐性:新規かつ広範に有効な神経保護剤としてのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(Remodeling chromatin and stress resistance in the central nervous system:histone deacetylase inhibitors as novel and broadly effective neuroprotective agents) Curr Drug Targets CNS Neurol Disord,4,41-50,(2005)。最近の概説では、異常なヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)及びヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性が、神経変性に寄与する共通の基本的な機構を表し得るという証拠が要約されている。さらに、うつ病のマウスモデルを使用して、Nestlerは最近、うつ病におけるヒストン脱アセチル化阻害剤(HDAC5)の治療可能性を強調している。Tsankova,N.M.,Berton,O.,Renthal,W.,Kumar,A.,Neve,R.L.,Nestler,E.J.うつ病及び抗うつ作用のマウスモデルにおける海馬クロマチンの持続的調節(Sustained hippocampal chromatin regulation in a mouse model of depression and antidepressant action).Nat Neurosci,9,519-525,(2006)。
【0004】
アクセサリードメインの構造に基づいて、4つのクラスに分類された18個の既知のヒトヒストン脱アセチル化酵素が存在する。クラスIには、HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8が含まれ、酵母RPD3と相同性を有する。HDAC4、HDAC5、HDAC7、及びHDAC9は、クラスIIaに属し、酵母と相同性を有する。HDAC6及びHDAC10は、2つの触媒部位を含有し、クラスIIbとして分類されている。クラスIII(サーチュイン(sirtuin))には、SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、及びSIRT7が含まれる。HDAC11は、HDACファミリーの別の最近同定されたメンバーであり、クラスIとクラスIIの両方の脱アセチル化酵素によって共有される保存された残基をその触媒中心に有し、時にはクラスIVに入れられる。
【0005】
これとは対照的に、HDACは、長期記憶のプロセスの強力な負の調節因子であることが示されている。非特異的HDAC阻害剤は、シナプス可塑性だけでなく、長期記憶を高める(Levensonら,2004,J.Biol.Chem.279:40545-40559;Lattalら,2007,Behav Neurosci 121:1125-1131;Vecseyら,2007,J.Neurosci 27:6128;Bredy,2008,Learn Mem 15:460-467;Guanら,2009,Nature 459:55-60;Malvaezら,2010,Biol.Psychiatry 67:36-43;Roozendaalら,2010,J.Neurosci.30:5037-5046)。例えば、HDAC阻害が、長期記憶につながらない学習事象を、重要な長期記憶をもたらす学習事象に変換することができる(Stefankoら,2009,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:9447-9452)。さらに、HDAC阻害はまた、通常記憶が失敗する時点を越えて持続する長期記憶の形態を生じさせることができる。HDAC阻害剤は、アルツハイマー病の遺伝モデルにおいて認知障害を改善することが示されている(Fischerら,2007,Nature 447:178-182;Kilgoreら,2010,Neuropsychopharmacology 35:870-880)。これらの証明は、HDAC阻害を介する記憶調節が多くの記憶障害及び認知障害に対する重要な治療可能性を有することを示唆している。
【0006】
現在、2つの最近の研究において、長期記憶内の個々のHDACの役割が検討されている。Kilgoreら 2010,Neuropsychopharmacology 35:870-880は、酪酸ナトリウムなどの非特異的HDAC阻害剤が、クラスI HDAC(HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8)を阻害するが、クラスIIa HDACファミリーメンバー(HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC9)にはほとんど影響を及ぼさないことを明らかにした。これは、クラスI HDACの阻害は、多くの研究で観察された認知の強化に重要であり得ることを示唆している。実際に、HDAC1ではなく、HDAC2の前脳及びニューロン特異的過剰発現は、樹状突起棘の密度、シナプス密度、シナプス可塑性及び記憶形成を減少させた(Guanら,2009,Nature,459:55-60)。これとは対照的に、HDAC2ノックアウトマウスは、ニューロンにおいてシナプス密度の増加、シナプス可塑性の増加及び樹状突起の密度の増加を示した。これらのHDAC2欠損マウスはまた、一続きの学習行動パラダイムにおける学習及び記憶の強化を示した。この研究は、HDAC2がシナプス形成とシナプス可塑性に重要な調節因子であることを実証している。また、Guanらは、SAHA(HDAC1,2,3,6、8阻害剤)によるマウスの慢性治療が、HDAC2欠損マウスで見られる効果を再現し、HDAC2過剰発現マウスにおいて認知欠陥を忌避したことを示した。
【0007】
HDAC2の(選択的又は他のクラスI HDACの阻害と組み合わせた)阻害は、魅力的な治療標的である。このような阻害は、神経細胞集団におけるシナプス及び樹状突起密度の増加を通して、認知を高め、学習プロセスを促進するための可能性を有する。加えて、HDAC2の阻害はまた、広範囲の他の疾患及び障害を治療するのに治療的に有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
開示されるのは、HDAC(例えば、HDAC2)の活性に関連する病態の治療に有用である化合物及びその医薬として許容される塩、並びに医薬組成物である。例えば、表1を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の特定の化合物の利点の1つは、それらが強化された安全性パラメータを有することである。例えば、特定の化合物の下のフェニル環上に追加のフッ素原子を含めると、安全性がほぼ2倍増加し、ヒトの赤血球及び骨髄前駆細胞に対してあまり影響を及ぼさないことが示された。例えば、表4、コンパレータ1対化合物10、コンパレータ2対化合物3、コンパレータ5対化合物1、及びコンパレータ6対化合物2を参照されたい。位置異性体間(化合物8とコンパレータ4を比較)及びフッ素と水素の置換(化合物6とコンパレータ3を比較)に同様の結果が見られた。
【発明の効果】
【0010】
開示される化合物によって治療可能である病態には、神経障害、記憶若しくは認知機能の障害又は欠陥、消去学習障害(extinction learning disorder)、真菌疾患又は感染症、炎症性疾患、血液疾患、腫瘍性疾患、精神障害、及び記憶喪失が含まれるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
1.化合物
本明細書に提供されるのは、
【化1】
から選択される式を有する化合物又はその医薬として許容される塩である。
【0012】
本開示に含まれる化合物の他の例を実施例の節に提供する。これらの化合物の医薬として許容される塩及び中性形態が含まれる。
【0013】
2.定義
本明細書で使用する用語「対象」及び「患者」は互換的に使用することができ、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、及びネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、及びヤギなど)並びに実験動物(例えば、ラット、マウス、及びモルモットなど)を意味する。典型的には、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0014】
本明細書に記載の化合物の医薬として許容される塩及び中性形態が含まれる。医薬における使用のために、化合物の塩は、非毒性の「医薬として許容される塩」を指す。医薬として許容される塩の形態には、医薬として許容される酸性/アニオン性又は塩基性/カチオン性の塩が含まれる。医薬として許容される塩基性/カチオン性の塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ジエタノールアミン、n-メチル-D-グルカミン、L-リジン、L-アルギニン、アンモニウム、エタノールアミン、ピペラジン及びトリエタノールアミン塩が含まれる。医薬として許容される酸性/アニオン性の塩には、例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、炭酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸、マロン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、およびトシル酸塩が含まれる。
【0015】
用語「医薬として許容される担体」は、それが製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体、アジュバント、又はビヒクルを指す。本明細書に記載の組成物において使用され得る医薬として許容される担体、アジュバント又はビヒクルには、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングルコール及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
用語「治療(treatment)」、「治療する」及び「治療(treating)」は、本明細書に記載されているように、疾患若しくは障害、又はその1以上の症状を反転させること、緩和すること、発症の可能性を低下させること、又は進行を阻害することを指す。いくつかの実施形態において、1以上の症状が発症した後に治療が施され得る、すなわち、治療的処置。他の実施形態において、治療は、症状のない状態で施され得る。例えば、治療は、(例えば、症状の履歴に照らして、及び/又は遺伝的又は他の感受性因子に照らして)症状の開始に先立って、影響を受けやすい個人に施すことができる、すなわち、予防的処置。治療はまた、例えば、再発を防止又は遅延するために、症状が消散した後に継続され得る。
【0017】
用語「有効量」又は「治療有効量」には、対象の生物学的又は医学的応答を誘発する本明細書に記載の化合物の量、例えば、提供される化合物の0.01~100mg/kg体重/日、例えば、0.1~100mg/kg体重/日が含まれる。
【0018】
3.使用、製剤化及び投与
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、HDACの活性に関連する病態を治療するのに有用である。このような病態には、例えば、以下に記載されるものが含まれる。
【0019】
最近の報告は、ニューロンの分化、記憶形成、薬物中毒、及びうつ病などの中枢神経系(「CNS」)の機能におけるヒストンアセチル化の重要性を詳述している(Citrome,Psychopharmacol.Bull.2003,37,補遺2,74-88;Johannessen,CNS Drug Rev.2003,9,199-216;Tsankovaら,2006,Nat.Neurosci.9,519-525)。このように、一態様において、提供される化合物及び組成物は、神経障害を治療するのに有用であり得る。神経障害の例には、(i)慢性神経変性疾患、例えば、家族性及び散発性筋萎縮性側索硬化症(それぞれ、FALS及びALS)、家族性及び散発性パーキンソン病、ハンチントン病、家族性及び散発性アルツハイマー病、多発性硬化症、筋ジストロフィー、オリーブ橋小脳萎縮症、多系統萎縮症、ウィルソン病、進行性核上性麻痺、びまん性レビー小体病、皮質変性症、進行性家族性ミオクロニーてんかん、線条体黒質変性症、捻転ジストニア、家族性振戦、ダウン症候群、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、ハレルフォルデン・スパッツ病、糖尿病性末梢神経障害、ボクサー痴呆、AIDS痴呆、年齢関連認知症、年齢関連記憶欠陥、及びアミロイドーシス関連神経変性疾患、例えば、伝達性海綿状脳症に関連しているプリオンタンパク質(PrP)によって引き起こされるもの(クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群、スクレイピー、及びクールー)、並びに過剰のシスタチンCの蓄積によって引き起こされるもの(遺伝性シスタチンCアンギオパチー);並びに(ii)急性神経変性障害、例えば、外傷性脳損傷(例えば、手術関連脳傷害)、脳浮腫、末梢神経損傷、脊髄傷害、リー病、ギラン・バレー症候群、リソソーム貯蔵障害、例えば、リポフスチン沈着症、アルパース病、不穏下肢症候群、CNS変性の結果としてのめまい;例えば、青斑核及び小脳におけるニューロンの変性、薬物誘発性運動障害を含む慢性アルコール又は薬物乱用と共に生じる病状;認知欠陥及び運動欠陥につながる小脳ニューロン及び皮質ニューロンの変性を含む老化と共に生じる病状;並びに運動欠陥につながる大脳基底核のニューロンの変性を含む慢性アンフェタミン乱用で生じる病状;脳卒中、局所虚血、血管不全、低酸素性虚血性脳症、高血糖、低血糖又は直接的外傷などの限局性外傷に起因する病理学的変化;治療薬及び治療の負の副作用として生じる病状(例えば、グルタミン酸受容体のNMDAクラスのアンタゴニストの抗痙攣用量に応答した帯状及び嗅内皮質ニューロンの変性)並びにウェルニッケ-コルサコフ関連痴呆が含まれる。感覚ニューロンに影響を与える神経障害には、フリードライヒ失調症、糖尿病、末梢神経障害、及び網膜神経変性が含まれる。他の神経障害には、脊髄損傷に伴う神経傷害又は外傷が含まれる。大脳辺縁系及び皮質系の神経障害には、脳アミロイドーシス、ピック萎縮、及びレット症候群が含まれる。別の態様において、神経学的障害には、情動障害及び不安などの気分障害、性格欠陥及び人格障害などの社会的行動の障害;精神遅滞及び認知症などの学習、記憶、及び知性の障害が含まれる。このように、一態様において、開示される化合物及び組成物は、統合失調症、せん妄、注意欠陥障害(ADD)、統合失調性感情障害、アルツハイマー病、ルービンスタイン・テイビ症候群、うつ病、躁病、注意欠陥障害、薬物中毒、認知症、興奮、無関心、不安、精神病、人格障害、双極性障害、単極性情動障害、強迫性障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害、神経過敏、青年期の行為障害及び脱抑制を治療するのに有用であり得る。
【0020】
転写は、長期記憶のプロセスの重要な工程であると考えられている(Alberini,2009,Physiol.Rev.89,121-145)。転写は、ヒストン-DNA相互作用を調節するヒストンアセチル化などの特定のクロマチン修飾によって促進される(Kouzarides,2007,Cell,128:693-705)。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)及びヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)などの修飾酵素は、ヒストン尾部でのアセチル化状態を制御する。一般的に、ヒストンアセチル化は遺伝子発現を促進するが、ヒストン脱アセチル化は遺伝子サイレンシングにつながる。多くの研究により、強力なHAT、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)結合タンパク質(CBP)が、シナプス可塑性の長く続く形態及び長期記憶に必要であることが示されている(総説については、Barrett,2008,Learn Mem 15:460-467を参照されたい)。そのため、一態様において、提供される化合物及び組成物は、認知機能を促進し、学習及び記憶形成を増強するのに有用であり得る。
【0021】
本明細書に記載の化合物及び組成物はまた、真菌性の疾患又は感染症を治療するために使用され得る。
【0022】
別の態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、脳卒中、関節リウマチ、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎及び外傷性脳傷害などの炎症性疾患を治療するために使用され得る(Leoniら,PNAS,99(5);2995-3000(2002);Suuronenら,J.Neurochem.87;407-416(2003)及びDrug Discovery Today,10:197-204(2005)。
【0023】
さらに別の態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、新生物細胞の増殖によって引き起こされる癌を治療するために使用され得る。このような癌には、例えば、固形腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などが含まれる。一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物によって治療され得る癌には、心臓癌、肺癌、胃腸癌、尿生殖路癌、肝臓癌、神経系癌、婦人科癌、血液癌、皮膚癌、及び副腎癌が含まれるが、これらに限定されない。一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫から選択される心臓癌を治療するのに有用である。別の態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌腫、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、及び中皮腫から選択される肺癌の治療に有用である。一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、及び大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)から選択される胃腸癌を治療するのに有用である。一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、及び精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫)から選択される泌尿生殖器癌の治療に有用である。一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、及び血管腫から選択される肝臓癌を治療するのに有用である。
【0024】
いくつかの態様において、本明細書に記載の化合物は、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨大細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液性線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫瘍から選択される骨の癌の治療に関連する。
【0025】
一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、及び脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)から選択される神経系癌の治療に有用である。
【0026】
一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌]、顆粒膜莢膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、房状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、及び卵管(細胞腫)から選択される婦人科癌の治療に有用である。
【0027】
一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、及び乾癬から選択される皮膚癌の治療に有用である。
【0028】
一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、神経芽細胞腫から選択される副腎癌の治療に有用である。
【0029】
一態様において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及び有毛細胞白血病などの急性白血病並びに慢性白血病を含む白血病;皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫、大細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのリンパ腫;バーキットリンパ腫;中皮腫、原発中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発性骨髄腫;脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、及び軟部組織肉腫などの幼年期の固形腫瘍、頭頸部癌などの成人の一般的な固形腫瘍(例えば、口腔、咽頭及び食道)、泌尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸癌)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫及び他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌及び甲状腺癌を含むが、これらに限定されない癌の治療に有用である。
【0030】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の病態を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の化合物又は医薬として許容される塩、又はその組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0031】
また提供されるのは、本明細書に記載の病態を治療するための本明細書に記載の化合物、又はその医薬として許容される塩、又は提供される組成物のうちの1以上である。
【0032】
また提供されるのは、本明細書に記載の病態を治療するための医薬の製造のための、本明細書に記載の化合物、又はその医薬として許容される塩のうちの1以上の使用である。
【0033】
記載の化合物、又は医薬として許容される塩又は組成物のうちの1以上での治療が始まる前に、記載の病態の1以上に罹患している対象も選択され得る。
【0034】
本開示はまた、本明細書に記載の化合物を含む医薬として許容される組成物、又はその医薬として許容される塩、及び医薬として許容される担体を提供する。これらの組成物は、上記の病態のうちの1以上を治療するために使用することができる。
【0035】
本明細書に記載の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、口腔投与、経膣投与又は移植リザーバーを介する投与であり得る。本明細書で使用する用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液細胞内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内への注射又は注入技術が含まれる。化合物の局所又は経皮投与のための液体剤形、注射用調製物、固体分散体形態、及び剤形が、本明細書に含まれる。
【0036】
任意の特定の患者に特異的な投与量及び治療計画は、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、治療する医師の判断、及び治療される特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することも理解すべきである。該組成物に提供される化合物の量も、該組成物中の特定の化合物に依存する。
【0037】
実施例
一般情報
スポットを、UV光(254及び365nm)により可視化した。カラム及びフラッシュクロマトグラフィーによる精製を、シリカゲル(200~300メッシュ)を用いて行った。溶媒系は溶媒の比として報告する。
【0038】
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance III 400MHz又はBrukerフーリエ300MHzにて記録した。1H化学シフトを、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS=0.00ppm)を用いて、ppmのδ値で報告する。例えば、表1に提供されたデータを参照されたい。
【0039】
LCMSスペクトルを、ESI(+)イオン化モードを用いて、Agilent 1200シリーズ6110又は6120質量分析計で取得した。(カラム:ES(+)又は(-)イオン化モード;T=30℃;流速=1.5mL/分;検出波長:220nmで動作するC18(50×4.6mm、5μm)。例えば、表1に提供されるデータを参照されたい。
【0040】
【0041】
中間体101の合成
0℃でDMF(5500mL)中の中間体100(350g、3.00モル)の溶液に、NaH(360g、9.00モル)を添加し、混合物をこの温度で30分間撹拌した。DMF(1500mL)中のプロパルギルブロミド(1.43kg、12.0モル)の溶液を添加し、反応混合物を室温に温め、4時間撹拌した。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、EtOAc(2000mLで3回)で抽出した。合わせた有機層を飽和水性NaCl(2000mLで2回)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色の油状物として中間体101(245g、42.5%)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)1.48(s、9H)、2.22(t、2H、J=4.8Hz)、4.17(s、4H)。
【0042】
中間体102の合成
脱気した乾燥1,2-ジクロロエタン(2200mL)中の中間体101(270g、1.40モル)及びCp*RuCl(cod)(13.5g、35.6ミリモル)の溶液に、脱気した乾燥1,2-ジクロロエタン(500mL)中のクロロアセトニトリル(157g、2.10モル)の溶液をAr雰囲気下で、室温で15分かけて添加した。次いで、反応混合物を60℃に温め、0.5時間撹拌し、その後、溶媒を蒸発させ、粗残留物を、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、オフホワイト固体として中間体102(210g、56.0%)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)1.52(s、9H)、4.67~4.73(m、6H)、7.40(d、1H、J=19.2Hz)、8.50(d、1H、J=15.6Hz)。MS 269.1[M+H]+。
【0043】
中間体103の合成
MeOH(4000mL)中の中間体102(210g、784ミリモル)の溶液を、Pd/C(21.0g)で処理し、反応混合物をH2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮し、オフホワイト固体として中間体103(120g、65.6%)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)1.53(s、9H)、2.98(s、3H)、4.86~4.90(m、4H)、7.53~7.60(m、1H)、8.62~8.67(m、1H)。MS 235.1[M+H]+。
【0044】
中間体104の合成
4NのHCl(600mL、EtOAc中のHCl)の溶液を、EtOAc(600mL)中の中間体103(120g、513ミリモル)の0℃溶液に滴加した。次いで、反応混合物を室温に温め、1時間撹拌した。溶媒を濾過により除去し、白色固体として中間体104を得た。1H NMR(DMSO_d6、400MHz):δ(ppm)2.75(s、3H)、4.73~4.80(m、4H)、7.97(s、1H)、8.20(s、1H)。MS 135.1[M+H]+。
【0045】
中間体105の合成
DMSO中の中間体104(513ミリモル)、中間体A3(151g、308ミリモル)及びNa2CO3(272g、2.57モル)の混合物を、室温で3時間撹拌した。反応がLCMSに従って完了に達した後に、反応混合物を冷水に注ぎ、EtOAcで抽出し、層を分離した。次いで、有機層を真空で濃縮し、残留物をEtOAcで粉砕し、次いで、濾過して、黄色固体として中間体105(80.0g、化合物5から38%)を得た。1H NMR(DMSO_d6、400MHz):δ(ppm)2.49(s、3H)、4.70~4.96(m、4H)、7.29~7.35(m、2H)、7.45~7.49(m、1H)、7.50~7.51(m、1H)、8.08~8.14(m、1H)、8.46(d、2H、J=8.4Hz)、10.11(brs、1H)。MS 412.1[M+H]+。
【0046】
化合物1の合成
MeOH(2500mL)中の中間体105(80.0g、195ミリモル)及びPd/C(8.00g)の混合物を、H2雰囲気下、室温で1時間撹拌した。1時間後、Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去した。濾液を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、灰色固体として化合物1(52.0g、70.3%)を得た。1H NMR(DMSO_d6、400MHz):δ(ppm)2.48(s、3H)、4.77(s、4H)、5.28(s、2H)、7.16~7.18(m、2H)、7.28~7.31(m、2H)、7.40~7.42(m、1H)、7.92~7.94(m、1H)、8.45(s、1H)、8.56(s、1H)。MS 382.1[M+H]+。
【0047】
中間体A2の合成
ジオキサン/H2O(6000mL/600mL)中の中間体A1(300g、1.73モル)、4-フルオロフェニルボロン酸(265g、1.91ミリモル)及びCs2CO3(1.13kg、3.46モル)の混合物を、N2雰囲気下でPd(PPh3)4(72.6g、86.3ミリモル)で処理した。混合物を95℃で2時間撹拌し、次いで、真空で濃縮した。残留物をEtOAc(4000mL)に取り、得られた溶液をブライン(1000mLで3回)で洗浄した。合わせた有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、次いで、真空で濃縮した。粗残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として中間体A2(240g、粗)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)6.90~6.96(m、1H)、6.99~7.04(m、1H)、7.23~7.26(m、1H)、8.02~8.08(m、1H)、8.47(d、1H、J=8.4Hz)。MS 252.0[M+H]+。
【0048】
中間体A3の合成
カルボノクロリド酸フェニル(354g、2.27モル)を、室温でピリジン(4800mL)中の中間体A2(240g、粗)の撹拌溶液に滴加した。添加が完了した後、反応混合物を50℃に加熱し、一晩撹拌した。次いで、混合物を真空で濃縮し、粗残留物をMTBEでの再結晶により精製し、黄色の固体として中間体A3(240g、化合物A1から28.2%)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)6.97~7.02(m、1H)、7.08~7.39(m、11H)、8.13(d、1H、J=8.4Hz)、8.24~8.30(m、1H)、8.67(d、1H、J=8.8Hz)。MS 492.1[M+H]+。
【0049】
【0050】
107の合成
THF(250mL)中の2-クロロ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-b]ピリジン塩酸塩(11g、57.9ミリモル)、TEA(17.5g、173.7ミリモル)及び(Boc)2O(13.9g、63.7ミリモル)の混合物を、室温で3時間撹拌した。次いで、反応混合物をDCM(500mL)に注ぎ、ブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:EtOAc=100:1~10:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として107(13.5g、92%)を得た。MS 255.2[M+H]+。
【0051】
108の合成
エタノール(20mL)中の107(13.5g、53.1ミリモル)、酢酸カリウム(10.4g、106.2ミリモル)、dppf(883mg、1.59ミリモル)及び酢酸パラジウム(677mg、2.66ミリモル)の混合物を、1.5MPaで、CO雰囲気下で、100℃で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、セライトを通して濾過した。濾液を真空で濃縮し、残留物をDCM(500mL)に溶解し、ブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=8:1~3:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として108(13.4g、86%)を得た。MS 292.1[M+H]+。
【0052】
109の合成
エタノール(260mL)中の108(13.4g、45.9ミリモル)及びNaBH4(10.4g、275.3ミリモル)の混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を真空で濃縮し、残留物をDCM(500mL)で溶解し、ブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~20:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として109(8.6g、75%)を得た。MS 251.4[M+H]+。
【0053】
110の合成
室温でDMF(200mL)中の109(8.6g、34.4ミリモル)の混合物に、NaH(鉱油中60%)(4.1g、103.2ミリモル)を添加した。得られた混合物を、室温で30分間撹拌し、MeI(14.6g、103.2ミリモル)を滴加した。得られた反応混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで、溶液を水(300mL)で希釈し、EtOAc(200mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=8:1~3:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、オフホワイト固体として110(8.0g、88%)を得た。MS 265.3[M+H]+。
【0054】
111の合成
氷浴中のDCM(70mL)中の110(7.6g、28.8ミリモル)の溶液に、TFA(38mL)を滴加した。得られた溶液を、室温で1時間撹拌し、溶媒を真空で除去し、粗生成物として111を得た。MS 165.2[M+H]+。
【0055】
112の合成
DMSO(200mL)中の111(28.8ミリモル、最後の工程からの粗生成物)、A3(11.8g、24ミリモル)及びNa2CO3(25.4g、240ミリモル)の混合物を、室温で16時間撹拌した。LCMSによって示されるように、反応が完了に達したら、溶液を水(300mL)で希釈し、次いで、EtOAc(200mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=1:1~EtOAc)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として112(7.0g、66%)を得た。MS 442.2[M+H]+。
【0056】
化合物2の合成
DCM/MeOH(140mL/140mL)中の112(7.0g、15.9ミリモル)及びPd/C(2.3g)の混合物を、H2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去した。濾液を濃縮し、残留物を、MTBEで再結晶させ、淡黄色固体として化合物2(4.5g、69%)を得た。MS 412.1[M+H]+。
【0057】
【0058】
化合物3の合成
化合物3を1と同様の方法で合成し、オフホワイト固体として3(28mg、22%)を得た。MS 388[M+H]+。
【0059】
【0060】
114の合成
氷浴で冷却したDCM(100mL)中のプロパ-2-イン-1-アミン(5.0g、90.9ミリモル)及びEt3N(18.4g、181.8ミリモル)の溶液に、(Boc)2O(23.8g、109.1ミリモル)を滴加した。(Boc)2Oの添加完了後、得られた混合物を室温に温め、室温で16時間撹拌した。反応が完了したら、混合物をDCM(200mL)で希釈し、次いで、ブライン(100mLで3回)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=100:1~10:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色油として114(10g、71%)を得た。MS 178.3[M+23]+、100.3[M-56]+。
【0061】
101の合成
DMF(200mL)中の114(10g、64.5ミリモル)の溶液に、NaH(鉱油中60%)(2.84g、71ミリモル)をゆっくり添加し、反応混合物を氷浴で冷却した。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、3-ブロモプロパ-1-エン(9.2g、77.4ミリモル)を上記混合物に添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、反応物を水(500mL)でクエンチし、t-BuOMe(250mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(200mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=100:1~10:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色油状物として101(12g、96%)を得た。MS 138.1[M-56]+。
【0062】
102の合成
DCE(40mL)中の2-クロロアセトニトリル(3.13g、41.4ミリモル)及びCp*RuCl(cod)](394mg、1.0ミリモル)の溶液に、DCE(80mL)中の101(4.0g、20.7ミリモル)の溶液をN2雰囲気下で30分間かけて滴加した。得られた反応混合物を40℃で16時間撹拌した。次いで、溶媒を真空で除去し、粗残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=10:1~2:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄褐色固体として102(2.1g、22%)を得た。MS 269.3[M+H]+。
【0063】
115の合成
DMF(30mL)中の102(1.50g、5.6ミリモル)、3-フルオロアゼチジン塩酸塩(932mg、8.4ミリモル)及びK2CO3(2.32g、16.8ミリモル)の混合物を、50℃で3時間撹拌した。次いで、混合物を水(60mL)で希釈し、EtOAc(30mLで4回)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン(30mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~30:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として115(1.4g、81%)を得た。MS 308.2[M+H]+。
【0064】
116の合成
DCM(4mL)中の115(200mg、0.65ミリモル)の溶液に、TFA(2mL)を添加し、得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応が終了したことをLCMSが示したときに、溶媒を真空で除去し、粗生成物として116を得、これを次の工程でさらに精製することなく使用した。MS 208.2[M+H]+。
【0065】
117の合成
DMSO(40mL)中のA3(265mg、0.54ミリモル)及び116(0.65ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の混合物を、室温で10分間撹拌し、次いで、Na2CO3(458mg、4.32ミリモル)を添加した。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、水(80mL)で希釈し、EtOAc(40mLで4回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~50:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として117(200mg、76%)を得た。MS 485.2 [M+H]+。
【0066】
化合物4の合成
MeOH(8mL)中の117(200mg、0.41ミリモル)及びPd/C(200mg)の混合物を、H2雰囲気下、室温で1時間撹拌した。Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮して、粗製残留物を得、これを分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により3回精製し、黄色固体として化合物4(26mg、14%)を得た。
【0067】
【0068】
A2の合成
ジオキサン/H2O(100mL/10mL)中の6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-アミン(4.58g、26.4ミリモル)、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(5.00g、31.7ミリモル)及びCs2CO3(25.73g、79.2ミリモル)の混合物を、N2雰囲気下でPd(PPh3)4(1.10g、0.95ミリモル)で処理した。混合物を100℃で2時間撹拌し、次いで、真空で濃縮した。残留物をEtOAc(200mL)に溶解し、溶液をブライン(100mLで3回)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=7:1~5:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体としてA2(4.0g、61%)を得た。MS 252.1[M+H]+。
【0069】
A3の合成
ピリジン(60mL)中のA2(4.0g、15.94ミリモル)の撹拌溶液を、カルボノクロリド酸フェニル(7.50g、47.81ミリモル)を0℃で滴下処理した。添加が完了した後、反応混合物を50℃で4時間撹拌した。次いで、混合物を真空で濃縮し、粗残留物をシリカゲル(PE:DCM=3:2~1:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体としてA3(7.1g、91%)を得た。MS 492.1[M+H]+。
【0070】
118の合成
THF(150mL)中のtert-ブチル3-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(15.0g、81.1ミリモル)及びDMF-DMA(29.0g、243.3ミリモル)の溶液を、70℃で16時間撹拌した。溶液を真空で濃縮し、粗生成物として118を得、これを次の工程に直接使用した。MS 241.1[M+H]+。
【0071】
119の合成
EtOH(100mL)中の118(81.1ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の溶液に、Et3N(40.4g、0.4モル)及びアセトイミドアミド塩酸塩(30.1g、0.32モル)を添加した。得られた溶液を80℃で24時間撹拌した。溶媒を真空で除去した後、残留物を水(100mL)で希釈し、DCM(50mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:DCM=10:1~1:2)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、褐色固体として119(10.5g、55%)を得た。MS 236.2[M+H]+。
【0072】
120の合成
ジオキサン/HCl(4N、10mL)中の119(600mg、2.55ミリモル)の溶液を、室温で1時間撹拌した。溶液を真空で濃縮し、白色固体として120(340mg、77%)を得、これをさらに精製せずに使用した。MS 136.2[M+H]+。
【0073】
121の合成
DMSO(5mL)中のA3(231mg、0.47ミリモル)及び120(160mg、0.94ミリモル)の混合物を、室温で10分間撹拌した。次いで、Na2CO3(399mg、3.76ミリモル)を上記混合物に添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSによって示されるように、反応が完了した後、反応混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAc(10mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。粗残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~50:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として121(120mg、62%)を得た。MS 413.2[M+H]+。
【0074】
化合物5の合成
MeOH(5mL)中の121(120mg、0.29ミリモル)及びPd/C(120mg)の混合物を、H2雰囲気下で、30分間室温で撹拌した。Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮し、得られた粗残留物を分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により精製し、白色固体として化合物5(52mg、47%)を得た。MS 383.2[M+H]+、405.0[M+Na]+。
【0075】
【0076】
A4の合成
THF(60mL)中の6-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-アミン(5.0g、23.0ミリモル)及びEt3N(6.9g、69.0ミリモル)の撹拌溶液を、0℃でカルボノクロリド酸フェニル(10.8g、69.0ミリモル)で滴下処理した。添加が完了した後、混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、真空で濃縮した。得られた粗残留物を石油エーテルから再結晶させ、淡黄色固体としてA4(10.2g、97%)を得た。MS 458.0、460.0[M+H]+。
【0077】
122及び122-Aの合成
DMF(150mL)中のtert-ブチル4,6-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピラゾール-5(2H)-カルボキシラート(15.0g、71.8ミリモル)の溶液に、NaH(鉱油中60%)(8.6g、215.4ミリモル)を添加し、反応混合物を氷浴で冷却した。添加が完了したら、得られた混合物を室温に温め、室温で30分間撹拌した。この時点で、1-ブロモ-2-メトキシエタン(19.8g、143.6ミリモル)を反応混合物に添加し、撹拌を室温で2時間続けた。次いで、反応混合物を水(300mL)でクエンチし、EtOAc(150mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~30:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色油として122と122-A(19.0g、99%)の混合物を得た。MS 268.2[M+H]+。
【0078】
123及び123-Aの合成
氷浴で冷却したDCM(60mL)中の122及び122-A(6.5g、24.3ミリモル)の溶液に、TFA(30mL)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、溶媒を真空で除去し、粗生成物の混合物として123及び123-Aを得、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。MS 168.1[M+H]+。
【0079】
124及び124-Aの合成
DMSO(200mL)中の123及び123-A(24.3ミリモル、最後の工程からの粗生成物)並びにA4(9.3g、20.3ミリモル)の溶液に、Na2CO3(21.5g、203ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。次いで、混合物を水(400mL)で希釈し、EtOAc(200mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~30:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として124及び124-A(4.5g、50%)の混合物を得た。MS 411.0、413.1[M+H]+。
【0080】
125及び125-Aの合成
ジオキサン/H2O(10mL/2mL)中の124及び124-A(500mg、1.22ミリモル)、5-クロロチオフェン-2-イルボロン酸(237mg、1.46ミリモル)及びK2CO3(169mg、1.23ミリモル)の混合物を、N2雰囲気下でPd(PPh3)4(45mg、0.06ミリモル)で処理した。反応混合物を50℃で3時間撹拌し、次いで、真空で濃縮した。残留物をEtOAc(30mL)に取り、得られた溶液をブライン(10mLで3回)で洗浄した。次いで、有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗残留物を分取用TLC(DCM:MeOH=20:1)により精製し、黄色固体として125と125-A(450mg、82%)の混合物を得た。MS 449.2[M+H]+。
【0081】
化合物6及び化合物6Aの合成
DCM/MeOH(6mL/6mL)中の125及び125-A(450mg、1.0ミリモル)並びにラネーNi(100mg)の混合物を、H2雰囲気下で、室温で1時間撹拌した。ラネーNiを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を真空で濃縮し、残留物を分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により精製した。次いで、位置異性体の混合物を、キラルHPLC(カラム:キラルセルOD-3;溶媒:MeOH;流速:2mL/分;RTI843=3.477分、RT1843A=4.142分)により分離し、白色固体として化合物6(99mg、24%)(MS 419.2[M+H]+)、並びに白色固体として化合物6A(50mg、12%)を得た。MS 419.2[M+H]+。
【0082】
【0083】
118の合成
THF(10mL)中のtert-ブチル3-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(600mg、3.24ミリモル)及びDMF-DMA(1.2g、9.72ミリモル)の溶液を、70℃で16時間撹拌した。溶液を真空で濃縮し、粗生成物として118を得て、これを次の工程で直接使用した。MS 241.1[M+H]+。
【0084】
126の合成
EtOH(10mL)中の118(3.24ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の溶液に、Et3N(1.6g、16.2モル)及びプロピオンイミドアミド塩酸塩(1.4g、13.0ミリモル)を添加した。得られた溶液を80℃で20時間撹拌し、その後、溶媒を真空で除去し、残留物を水(10mL)で希釈し、次いで、混合物をDCM(10mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:DCM=10:1~1:2)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、褐色固体として126(450mg、56%)を得た。MS 250.2[M+H]+。
【0085】
127の合成
DCM(6mL)中の126(300mg、1.2ミリモル)の溶液を、TFA(3mL)で処理し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。1時間後、LCMSによって示されるように、反応が完了し、反応混合物を真空で濃縮し、粗生成物として127を得、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。MS 150.2[M+H]+。
【0086】
128の合成
DMSO(10mL)中のA3(294mg、0.6ミリモル)及び127(1.2ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の混合物を、室温で10分間撹拌した。次いで、Na2CO3(636mg、6.0ミリモル)を添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSによって示されるように、反応が完了した後、反応混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAc(10mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~50:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として128(136mg、53%)を得た。MS 427.2[M+H]+。
【0087】
化合物7の合成
MeOH(5mL)中の128(120mg、0.28ミリモル)及びラネーNi(120mg)の混合物を、H2雰囲気下で、室温で1時間撹拌した。次いで、ラネーNiを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮し、粗残留物を分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により精製して、黄色固体として化合物7(80mg、72%)を得た。MS 397.1[M+H]+。
【0088】
【0089】
129及び129-Aの合成
ジオキサン/H2O(10mL/2mL)中の124及び124-A(350mg、0.85ミリモル)、2-フルオロフェニルボロン酸(143mg、1.02ミリモル)並びにK2CO3(352mg、2.55ミリモル)の混合物を、N2雰囲気下でPd(PPh3)4(49mg、0.04ミリモル)で処理した。反応混合物を90℃で3時間撹拌し、次いで、真空で濃縮した。粗残留物をEtOAc(30mL)に取り、得られた溶液をブライン(10mLで3回)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物を分取TLC(PE:EA=5:1)により精製し、黄色固体として129と129-Aの混合物(300mg、83%)を得た。MS 427.2[M+H]+。
【0090】
化合物8及び化合物8Aの合成
DCM/MeOH(5mL/5mL)中の129及び129-A(300mg、0.70ミリモル)並びにPd/C(80mg)の混合物を、H2雰囲気下で、室温で1時間撹拌した。次いで、Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮し、粗残留物を分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により精製した。次いで、位置異性体の混合物を、キラルHPLC(カラム:キラルセルOJ-3;溶媒:MeOH;流速:2mL/分;RT1849=1.201分、RT1849A=2.244分)を用いて分離し、黄色固体として8(105mg、37%)(MS 397.2[M+H]+)を得、かつ黄色固体として8A(98mg、35%)を得た。MS 397.2[M+H]+。
【0091】
【0092】
130の合成
ジオキサン/H2O(10mL/1mL)中の6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-アミン(0.5g、2.9ミリモル)、2-フルオロフェニルボロン酸(487mg、3.48ミリモル)及びK2CO3(1.20g、8.7ミリモル)の混合物を、N2雰囲気下でPd(PPh3)4(17mg、0.01ミリモル)で処理した。反応混合物を90℃で2時間撹拌し、次いで、真空で濃縮した。粗残留物をEtOAc(200mL)に取り、得られた溶液をブライン(100mLで3回)で洗浄した。次いで、有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=10:1~3:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として130(301mg、45%)を得た。MS 234.2[M+H]+。
【0093】
131の合成
ピリジン(10mL)中の130(301mg、1.3ミリモル)の撹拌溶液に、カルボノクロリド酸フェニル(608mg、3.9ミリモル)を滴加し、反応混合物を氷浴で冷却した。得られた反応混合物を、55℃で4時間撹拌し、反応混合物を真空で濃縮した。得られた粗残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=8:1~3:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として131(500mg、82%)を得た。MS 474.2[M+H]+。
【0094】
132の合成
氷浴冷却したフラスコ中のMeOH(30mL)をNaH(鉱油中60%)(940mg、23.5ミリモル)で処理し、反応混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、化合物102(2.1g、7.8ミリモル)を添加し、反応混合物を35℃で16時間撹拌した。この時点で、反応混合物を水(30mL)でクエンチし、DCM(10mLで3回)で抽出し、合わせた有機層をブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。得られた粗残留物をシリカゲル(PE:EtOAc=100:1~10:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、ベージュ色の固体として132(1.8g、94%)を得た。MS 265.1[M+H]+。
【0095】
133の合成
DCM(6mL)中の132(220mg、0.83ミリモル)の溶液にTFA(2mL)を滴加し、反応混合物を氷浴中で冷却した。反応物を室温で1時間撹拌し、その後、溶媒を真空で除去し、粗生成物として133を得、これを次の工程で直接使用した。MS 165.1[M+H]+。
【0096】
134の合成
DMSO(10mL)中の131(313mg、0.64ミリモル)及び133(0.83ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の混合物を、Na2CO3(678mg、6.4ミリモル)で処理し、次いで、反応混合物を室温で2時間撹拌した。この時点で、反応混合物を水(20mL)で希釈し、EtOAc(20mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル(EAからEA:MeOH=50:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として134(200mg、74%)を得た。MS 424.0[M+H]+。
【0097】
化合物9の合成
DCM/MeOH(4mL/4mL)中の134(200mg、0.47ミリモル)及びPd/C(200mg)の混合物を、H2雰囲気下で、室温で1時間撹拌した。次いで、Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮し、得られた粗残留物を分取TLC(DCM:MeOH=10:1)により精製し、黄色固体として化合物9(105mg、57%)を得た。MS 394.2[M+H]+。
【0098】
【0099】
135及び135-Aの合成
DMF(5mL)中のtert-ブチル4,6-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピラゾール-5(2H)-カルボキシレート(250mg、1.2ミリモル)の溶液に、NaH(96mg、2.4ミリモル(鉱油中60%))を添加し、反応混合物を氷浴で冷却した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、その後、ヨードエタン(374mg、2.4ミリモル)を添加し、得られた反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、反応混合物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(10mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮し、粗生成物として135及び135-Aを得た。MS 238.2 [M+H]+。
【0100】
136及び136-Aの合成
DCM(6mL)中の135及び135-A(1.2ミリモル、最後の工程からの粗生成物)の溶液に、TFA(2mL)を滴加し、反応混合物を氷浴で冷却した。反応混合物を、室温で1時間撹拌し、その後、溶媒を真空で除去し、粗生成物として136及び136-Aを得て、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。MS 138.2[M+H]+。
【0101】
137の合成
DMSO(10mL)中の136と136-A(1.2ミリモル、最後の工程からの粗生成物)及びA3(491mg、1.0ミリモル)の混合物を、室温で10分間撹拌し、次いで、Na2CO3(848mg、8.0モル)を添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、反応混合物を水(20mL)で希釈し、EtOAc(20mLで3回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mLで3回)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、次いで、真空で濃縮した。粗残留物をシリカゲル(DCM:MeOH=100:1~50:1)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、位置異性体137と137-Aの混合物である粗生成物を得た。粗生成物をさらに分取TLC(DCM:MeOH=30:1)により精製し、黄色固体として137(150mg、36%)を得た。MS 415.1[M+H]+。
【0102】
化合物10の合成
MeOH(5mL)中の137(150mg、0.36ミリモル)とPd/C(150mg)の混合物を、H2雰囲気下で、室温で1時間撹拌した。次いで、Pd/Cを、セライトを通す濾過により除去し、濾液を濃縮し、残留物を分取TLC(DCM:MeOH=15:1)により精製し、黄色固体として化合物10(85mg、61%)を得た。MS 385.1[M+H]+。
【0103】
表1.化合物についての分光測定データ
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0104】
HDAC2及びHDAC1酵素アッセイ(HDAC2 IC50データ)
以下に、酵素HDAC2又はHDAC1によるペプチド基質の脱アセチル化を測定するためのアッセイプロトコルを記載する。酵素、基質、及び補因子を、マイクロタイタープレートのウェル中で組み合わせ、25℃で3時間インキュベートする。インキュベーションの終わりに、反応を、SDS含有緩衝液の添加によりクエンチする。基質及び生成物を分離し、Caliper Life Sciences社製のマイクロ流体ベースのLabChip 3000創薬システムを用いて電気泳動定量をする。このアッセイで使用するペプチド基質は、FAM-TSRHK(AC)KL-CONH2である(FAMはカルボキシフルオレセインである)。ペプチドは、キャピラリー電気泳動によって98%超の純度であるべきである。
【0105】
1.384ウェルプレートのウェルに、5μlの2×酵素緩衝液を添加する。Labcyte Echo 550を用いて、100nlの化合物を添加する。所望であれば、酵素及び化合物をこの時点でプレインキュベートすることができる。
2.5μlの2×基質緩衝液を添加する。
3.プレートを25℃で17時間インキュベートする。
4.40μLの1.55×停止緩衝液を添加することにより反応を終了する。
5.Caliper LabChip(登録商標)3000創薬システム上にジョブを作成する。
6.プレートをロードし、励起用の青色レーザー(480nm)及び検出(CCD2)用の緑色CCD(520nm)を用いて電気泳動を開始する。
反応時間=17時間;反応温度=25℃
【0106】
最終アッセイ反応混合物
100mMのHEPES、pH7.5、0.1%BSA、0.01%トリトンX-100、25mMのKCl
【0107】
1%DMSO(化合物から)、1μMのFAM-TSRHK(AC)KL-CONH2、5nMのHDAC酵素(特異的活性はロット間で変化し得、酵素濃度は、生成物への基質の約10~20%変換をもたらすように調整する必要があり得る)。
【0108】
各試料中に存在する基質及び生成物のペプチドを、LabChip3000キャピラリー電気泳動機器を用いて電気泳動により分離する。基質及び生成物のペプチドを分離すると、蛍光の2つのピークが観察される。基質及び生成物のピークの相対蛍光強度の変化は、測定されたパラメータであり、酵素活性を反映する。キャピラリー電気泳動図(RDA取得ファイル)を、HTS Well Analyzerソフトウェア(Caliper Life Sciences)を用いて分析する。各試料中の酵素活性を、合計に対する生成物の比(PSR):P/(S+P)として決定し、式中、Pは、生成物ペプチドのピーク高さであり、Sは基質ペプチドのピーク高さである。各化合物について、酵素活性を、様々な濃度(3倍希釈間隔だけ離間した化合物の12種の濃度)で測定する。陰性対照試料(0%-阻害剤の非存在下での阻害)及び陽性対照試料(100%-20mMのEDTAの存在下での阻害)を、4つの複製で構成し、各濃度での各化合物についての%阻害値を計算するために使用する。阻害率(Pinh)を、次式:Pinh=(PSR0%-PSRinh)/(PSR0%-PSR100%)×100を用いて計算し、式中、PSRinhは阻害剤の存在下での生成物合計比率であり、PSR0%は阻害剤の非存在下での平均生成物合計比率であり、かつPSR100%は100%阻害対照試料における平均生成物合計比率である。
【0109】
阻害剤のIC50値を、XL fit 4ソフトウェア(IBDS)を用いる4パラメータシグモイド用量応答モデルによって、阻害曲線(阻害剤濃度に対するPinh)をフィッティングすることにより決定する。
【0110】
特定の化合物についてのこのアッセイの結果を、以下の表2に報告する。表において、「A」は0.1μΜ未満のKd値を示し;「B」は0.1μΜ~0.5μΜのKd値を示し;「C」は0.5μΜ超~5.0μΜ以下のKd値を示し;かつ「D」は5.0μΜ超のKd値を示す。
【0111】
【0112】
SH-SY5Yの細胞溶解物におけるHDAC2酵素阻害アッセイ
細胞培養及び阻害剤処理
SH-SY5Y細胞(Sigma)を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを補足したイーグル改変必須培地で培養した。化合物投与の24時間前に、1500細胞/ウェルの密度で、白色384ウェルプレートに20μlの細胞を播種した。化合物を純粋なDMSOで連続希釈し、次いで、FBSを含まない培地に1:100v/vで希釈し、混合した。播種した細胞から培地を除去し、無血清培地(1%v/vの最終DMSO)中の希釈化合物を添加し、37℃で5時間インキュベートした。次いで、0.1%トリトンX-100を有する10μLのHDAC-Clo 2試薬を添加し、プレートを混合し、室温で100分間発色させた。次いで、0.4秒の積分時間を用いて、Spectramax LMaxルミノメーターでプレートを読み取った。100μMでのCI-994を100%阻害として定義し、DMSOのみを0%阻害として定義して、用量応答曲線を、正規化したデータを用いて構築した。
【0113】
特定の化合物についてのこのアッセイの結果を、以下の表3に報告する。表において、「A」は0.1μΜ~1μMのIC50値を示し;「B」は1.0μΜ~1.5μΜのIC50値を示し;「C」は1.5μΜ超のIC50値を示す。
【0114】
【0115】
赤血球及び骨髄CFUアッセイ
ヒト赤血球(CFU-E、BFU-E)、顆粒球-単球(CFU-GM)及び多能(CFU-GEMM)系統のクローン原性前駆細胞を、rhIL-3(10ng/mL)、rhGM-SCF(10ng/mL)、rhSCF(50ng/mL)及びEpo(3U/mL)を含有する半固体メチルセルロースベースの培地製剤中で評価した。
【0116】
細胞
正常骨髄(NorCal Biologics、California)由来で、ReaehBio公認の正常ヒト骨髄光密度細胞を、アッセイに必要になるまで液体窒素(-152℃)気相中で保存した。実験の日に、細胞を急速に解凍し、各バイアルの内容物を、10%ウシ胎児血清(IMDM+10%FBS)を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地10mLに希釈し、遠心分離(約1200rpm、10分間、室温)によって洗浄した。上清を捨て、細胞ペレットを既知量のIMDM+10%FBSに再懸濁した。骨髄試料について、細胞数(3%氷酢酸)及び生存率の評価(トリパンブルー排除試験)を行った。
【0117】
化合物
実験当日、化合物を10mMのストック濃度までDMSOに溶解した。2及び0.4mMの濃度に達するように、ストック濃度から連続希釈物を調製した。1:1000(v/v)でメチルセルロースベースの培地に添加すると、10、2及び0.4μΜの最終試験濃度に達した。また、5-FUを1.0、0.1及び0.01μg/mLで評価した。
【0118】
方法の概要
ヒト赤血球(CFU-E及びBFU-E)並びに骨髄(CFU-GM)系統のクローン原性前駆細胞を、上記のメチルセルロースベースの培地製剤に置いた。全ての化合物を培地に添加し、所望の最終濃度(10、2及び0.4μΜ)を得た。5-フルオロウラシル(Sigma Aldrich)を、前駆細胞増殖の陽性対照(コロニー増殖の阻害)として使用し、1.0、0.1、及び0.01μg/mLでヒト骨髄培養物に導入した。溶媒対照培養物(化合物を含有しないが、0.1%DMSOを含有する)、並びに標準対照(化合物も、DMSOも含有しない)も実験に加えた。
【0119】
ヒト骨髄及び赤血球前駆細胞アッセイを、培養物あたり2.0×104細胞で開始した。培養14日後に、骨髄及び赤血球コロニーを顕微鏡で評価し、訓練を受けた者がスコア化した。コロニーを、サイズ及び形態に基づいて次のカテゴリー:CFU-E、BFU-E、CFU-GM及びCFU-GEMMに分けた。
【0120】
CFC数の統計分析
3つの複製培養物の平均±1標準偏差を、各カテゴリーの前駆細胞(CFU-E、BFU-Eなど)について計算した。溶媒対照と処理培養物との間にコロニー数の差が生じたかどうかを評価するために、両側t検定を行った。コロニー列挙の主観の可能性により、0.01未満のp値を重要と考える。各化合物のコロニー増殖の50%阻害(IC50)の濃度を計算するために、XL fitソフトウェア(IDBS)を用いて対照コロニー増殖の割合に対する化合物濃度の対数をプロットして、用量応答曲線を作成した。用量応答、ワンサイトモデル式:y=A+[(B-A)/(1+((C/x)ΛD))](式中、A=初期値(ベースライン応答)、B=最大応答、C=中央(AとBの間で中間応答を引き起こす薬物濃度)及びD=中間点での曲線の傾き)を用いて、コロニー増殖の50%阻害濃度(IC50)をシグモイド曲線フィットに基づいて計算した。さらに、プロット及び追加の用量応答曲線を、GraphPadプリズム7.0を使用して作成した。
【0121】
コロニーの形態学的評価
溶媒対照の存在下でのコロニー、及び試験化合物の存在下でのコロニーを示す、様々な系統からの代表的な造血前駆細胞由来のコロニーの写真を撮った。
【0122】
赤血球(CFU-E及びBFU-E)、骨髄(CFU-GM)及び多能性(CFU-GEMM)コロニーの列挙を、訓練を受けた人が実施した。コロニーの種類の分布並びに一般的なコロニー及び細胞の形態を分析した。統計分析のために、化合物で処理した培養物中のコロニー数を、溶媒対照培養物と比較した。5-FUを、これらのアッセイにおいて毒性の陽性対照として使用し、この化合物について得られた阻害効果は、まさに予想されたとおりであった。実験を用いて、メチルセルロースベースの培地中でのヒト赤血球及び骨髄の前駆細胞増殖に対する試験化合物の潜在的効果を評価した。IC50値を、XL fitから算出した。赤血球及び骨髄の毒性の用量応答曲線を、XL fitによって作成した。最後に、非線形回帰曲線フィッティング及びIC50+95% CIを、プリズム7.0.-GEMMにより算出した。
【0123】
結果を表4に示す。
表4
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0124】
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