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特許7152480ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
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  • 特許-ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020519591
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2019018497
(87)【国際公開番号】W WO2019220994
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018094085
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】593227925
【氏名又は名称】カネカ ベルギー ナムローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】KANEKA BELGIUM N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中山 清敬
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/147919(WO,A1)
【文献】特開2009-280783(JP,A)
【文献】特開2008-106150(JP,A)
【文献】特開2005-298769(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
B29C44/00-44/60;67/20-67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は(A)、(B)および(C)の条件を満たし、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が(a)および(b)の条件を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む。
(B)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である。
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である。
(a)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である。
(b)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である。
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(前記式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、さらに(c)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(c)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点と低温側ピーク温度との差が2.5℃以上5.0℃未満である。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が100μm以上350μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中の前記プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体が10重量%以上35重量%以下であることを特徴とする、請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする前記ポリプロピレン系樹脂粒子を、水および無機ガス発泡剤とともに耐圧容器中に収容し、収容された原料を攪拌しながら耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出して得られることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする請求項6に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から成形されてなることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【請求項9】
請求項8に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
ISO844に準拠する方法で測定する50%歪時圧縮強度が、下記式(2)を満足することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
式(2)50%歪時圧縮強度(kPa)≧0.054×D+3.85×D+50
(前記式(2)中、Dは、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度である。)
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂粒子と、水と、無機ガス発泡剤とを、耐圧容器中に収容する工程1と、
収容された原料を撹拌しながら、(i)前記耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、(ii)前記発泡圧力よりも低い圧力域に、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出する工程2と、を有し、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、
(a)構造単位として、前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンに由来する構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含み、
(b)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のMFRが5g/10分以上10g/10分以下であり、かつ、
(c)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下であり、
前記工程2において、
前記耐圧容器内の温度が前記発泡温度-2℃に達した時点から、前記耐圧容器内を前記発泡温度まで加熱し、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記分散液を放出し始める時点までの保持時間が5分以上120分以下であり、
前記発泡温度が149℃以上158℃以下であり、
前記発泡圧力が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
前記無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする、請求項10記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を有する。また、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリスチレン系樹脂型内発泡成形体と比較すると、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率等に優れており、また、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリエチレン系樹脂型内発泡成形体と比較すると、寸法精度、耐熱性、圧縮強度等が優れている。
【0003】
これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いられている(特許文献1)。
【0004】
特に近年では、自動車の軽量化のために、一台あたりに使用されるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が増加しており、型内発泡成形加工工程において、生産効率の良いポリプロピレン系樹脂発泡粒子の需要が高まっている。
【0005】
具体的には、既存のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に比べて、成形工程における生産サイクル(成形サイクルとも呼ぶ)が短く、すなわち加熱時間や冷却時間が短くても、良好な表面性、融着性を発揮するポリプロピレン系樹脂発泡粒子が求められている。加えて、成形コストの観点から、成形工程における加熱のための水蒸気使用量が少なくてすむポリプロピレン系樹脂発泡粒子が求められている。また、自動車用途では衝撃吸収材として使用される場合が多いため、一定以上の圧縮強度を発揮することが求められている。
【0006】
このような課題を解決するために、特許文献2~9のように、さまざまな取り組みが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国公開特許公報「特開2013-155386」
【文献】日本国公開特許公報「特開2004-300179」
【文献】国際公開特許2006/054727
【文献】国際公開特許2008/139822
【文献】国際公開特許2009/051035
【文献】国際公開特許2009/001626
【文献】日本国公開特許公報「特開2010-144078」
【文献】国際公開特許2016-060162
【文献】国際公開特許2016-147919
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、水蒸気使用量の削減および生産サイクルの短縮の観点から、さらなる改善の余地があった。
【0009】
良好な表面性、融着性、および圧縮強度を維持しながら、水蒸気使用量の削減と生産サイクルの短縮とを同時に達成できるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体およびその製造方法は未だ開示されていない。
【0010】
本発明の一実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を成形するときにおいて、生産サイクルを短くし、水蒸気使用量を少なくすることができ、かつ、良好な表面性、融着性、および一定水準以上の圧縮強度を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を成形することができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題に鑑みて鋭意研究した結果、構造中にコモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を含有し、特定のMFRおよび融点を持つポリプロピレン系樹脂粒子を発泡して得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、示差走査熱量測定により求められるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の2つの融解ピーク温度がそれぞれ所定の温度となるよう調整され、発泡粒子のかさ密度に応じて適正な高温熱量比率を有し、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点とその樹脂粒子から得られる発泡粒子の低温側ピーク温度を所定の範囲に調整したポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に使用することにより、成形工程における水蒸気使用量の削減と成形サイクルの短縮とを同時に達成できるとともに、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性、融着性、および圧縮強度を従来と遜色なく維持できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、前記ポリプロピレン系樹脂粒子は(A)、(B)および(C)の条件を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が(a)および(b)の条件を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0013】
(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む。
【0014】
(B)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である。
【0015】
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である。
【0016】
(a)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である。
【0017】
(b)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である。
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(前記式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)
さらに、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、
ポリプロピレン系樹脂粒子と、水と、無機ガス発泡剤とを、耐圧容器中に収容する工程1と、
収容された原料を撹拌しながら、(i)前記耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、(ii)前記発泡圧力よりも低い圧力域に、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出する工程2と、を有し、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、
(a)構造単位として、前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンに由来する構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含み、
(b)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のMFRが5g/10分以上10g/10分以下であり、かつ、
(c)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下であり、
前記工程2において、
前記耐圧容器内の温度が前記発泡温度-2℃に達した時点から、前記耐圧容器内を前記発泡温度まで加熱し、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記分散液を放出し始める時点までの保持時間が5分以上120分以下であり、
前記発泡温度が149℃以上158℃以下であり、
前記発泡圧力が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用すれば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を成形するときにおいて、水蒸気使用量の削減と成形サイクルの短縮とを同時に達成でき、良好な表面性、融着性、および圧縮強度を有する型内発泡成形体を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子の示差走査熱量測定(DSC)において、ポリプロピレン系樹脂粒子を、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温したときに得られる、2回目昇温時のDSC曲線の一例である。tがポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点である。
図2】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)より得られるDSC曲線の一例であり、DSC曲線は、2つの融解ピークを有する。温度100℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、DSC曲線の低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとし、点CからY軸に平行な直線を線分ABへ上げて交わる点をDとしたとき、線分ADと線分CDとDSC曲線で囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線で囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0021】
また、本明細書において特記しない限り、構造単位として、X単量体に由来する構造単位と、X単量体に由来する構造単位と、・・・およびX単量体(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X-X-・・・-X共重合体」とも称する。X-X-・・・-X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。なお、「X-X-・・・-X共重合体」は、「X・X・ ・・・ ・X共重合体」と表記する場合もある。
【0022】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は(A)、(B)および(C)の条件を満たし、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が(a)および(b)の条件を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0023】
(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む。
【0024】
(B)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である。
【0025】
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である。
【0026】
(a)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である。
【0027】
(b)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である。
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(前記式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂粒子は、基材樹脂がポリプロピレン系樹脂である。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂は必須成分として1-ブテンが共重合されたポリプロピレンが含まれる。
【0029】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂粒子における「基材樹脂」とは、ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれる樹脂100重量%中、50重量%以上を占める樹脂を意図する。本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれる樹脂」とは、ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれるポリプロピレン系樹脂、並びに、ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれ得るポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂およびエラストマー、を意図する。ポリプロピレン系樹脂粒子は、当該ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれる樹脂100重量%中、ポリプロピレン系樹脂を50重量%以上含み、好ましくは60重量%以上含み、より好ましくは70重量%以上含み、さらに好ましくは80重量%以上含み、特に好ましくは90重量%以上含む。
【0030】
本発明の一実施形態において、1-ブテンが共重合されたポリプロピレン系樹脂は、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を含んでいれば、当該ポリプロピレン系樹脂と共重合可能な他のコモノマーからなる構造単位を含んでいても良い。ポリプロピレン系樹脂は、このような他のコモノマーとして、例えば、エチレン、または、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ブテン等の炭素数4~12のα-オレフィンの1種以上を含んでも良く、好ましくは他のコモノマーはエチレンである。これら他のコモノマーは、1種を単独でポリプロピレン系樹脂に共重合されていても良いし、複数種の組み合わせで共重合されていても良い。
【0031】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂は、1-ブテンからなる構造単位を含んでいれば、1種の単独のポリプロピレン系樹脂でも良いし、1-ブテンからなる構造単位を含んでいるポリプロピレン系樹脂と1-ブテンからなる構造単位を含んでいないポリプロピレン系樹脂との2種類以上のポリプロピレン系樹脂を混合して使用しても良い。1-ブテンからなる構造単位を含んでいないポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、および1-ブテン以外のα-オレフィンをコモノマーとして含むポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。また、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0032】
また、ポリプロピレン系樹脂は、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を混合して使用する方が好ましい。当該構成によると、ポリプロピレン系樹脂粒子中の1-ブテンからなる構造単位の量、MFR(メルトフローレート)、および融点を調整し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(単に発泡粒子と称することもある)の示差走査熱量測定で求められる2つのピーク温度を所定の範囲にコントロールし易い、という利点を有する。
【0033】
2種類以上のポリプロピレン系樹脂を混合して使用する場合、(i)1-ブテンからなる構造単位を含むポリプロピレン系樹脂と、(ii)ポリプロピレンホモポリマーおよび/またはエチレン-プロピレンランダム共重合体のようなα-オレフィンをコポリマーとして含むポリプロピレン系樹脂と、を混合して使用すればよい。具体的な組み合わせとしては、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とポリプロピレンホモポリマー;、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とエチレン-プロピレンランダム共重合体;、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とエチレン-プロピレンブロック共重合体;、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とポリプロピレンホモポリマー;、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とエチレン-プロピレンランダム共重合体;、および、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体とエチレン-プロピレンブロック共重合体;などのような組み合わせが挙げられる。
【0034】
なお、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体は、エチレンからなる構造単位と、プロピレンからなる構造単位と、1-ブテンからなる構造単位とがランダム(順不同)に結合しているのであって、エチレン、プロピレン、1-ブテンの順に結合しているのではない。従って、「エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体」は、「プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体」と表記してもよく、「プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体」と表記してもよい。
【0035】
2種類以上のポリプロピレン系樹脂を混合して使用する場合、一定以上の圧縮強度を発揮するという観点から、使用するポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種が、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体であることが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子は、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体を含むことが好ましい、ともいえる。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂とエチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体との混合比率に特に制限はない。型内発泡成形するときの成形サイクルを短縮し易く、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(単に型内発泡成形体と称することもある)の表面性および融着性などを悪化させることなく、高い機械的強度を維持することができるという観点から、ポリプロピレン系樹脂65重量%以上90重量%以下とエチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体を10重量%以上35重量%以下とを混合することが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中のプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体が10重量%以上35重量%以下であることが好ましい。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体が、(a)10重量%以上の場合、冷却時間短縮の効果が発揮され易く、(b)35重量%を以下の場合、本発明の効果が発揮され易くなる。
【0040】
本発明の一実施形態においては、必要に応じて、発泡核剤、親水性化合物、および着色剤、ならびにその他、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤および安定剤のような樹脂安定剤等の添加剤を用いることができ、これらとポリプロピレン系樹脂との混合物によりポリプロピレン系樹脂粒子を構成する。
【0041】
本発明の一実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡するときに発泡核となりうる発泡核剤をポリプロピレン系樹脂に添加することが好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態で用いられる発泡核剤として、具体的には、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸塩、アルミナ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、長石アパタイト、および硫酸バリウム等が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、タルク、ケイ酸マグネシウム、カオリン、ハロイサイト、デッカイト、ケイ酸アルミニウム、およびゼオライトなどが挙げられる。なお、これら発泡核剤は1種を単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0043】
本発明の一実施形態において、発泡核剤の含有量は、気泡径が均一になりやすいことから、ポリプロピレン系樹脂系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下が好ましく、0.01重量部以上1重量部以下がより好ましく、0.01重量部以上0.3重量部以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率大きくする(かさ密度を小さくする)効果および気泡径を大きくする効果があることから、ポリプロピレン系樹脂に親水性化合物を添加することは、好ましい態様である。
【0045】
本発明の一実施形態で用いられる親水性化合物としては、具体的には、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、メラミン、イソシアヌル酸、およびメラミン・イソシアヌル酸縮合物等の吸水性有機物を挙げることができる。
【0046】
本発明の一実施形態において、親水性化合物の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がより好ましく、0.05重量部以上1重量部以下がより好ましい。
【0047】
親水性化合物の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、(a)0.01重量部以上では、発泡倍率向上効果および気泡径を大きくする効果が得られやすく、(b)5重量部以下では、得られる型内発泡成形体の圧縮強度が向上する傾向がある。
【0048】
本発明の一実施形態で用いられる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、群青、シアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料カドミウム黄、酸化クロム、酸化鉄、ペリレン系顔料、およびアンスラキノン系顔料等が挙げられる。これら着色剤は、1種を単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0049】
本発明の一実施形態における着色剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上10重量部以下が好ましく、0.01重量部以上8重量部以下がより好ましく、0.01重量部以上6重量部以下がより好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂と前記の添加剤とを混合する方法としては、ブレンダー、バンバリーミキサーあるいは押出機等で混合する方法が挙げられる。添加剤は、ポリプロピレン系樹脂に直接添加してもよく、マスターバッチ化、つまり、予めその他の樹脂に添加剤を高濃度で含有させたマスターバッチ樹脂としてポリプロピレン系樹脂に添加してもよい。
【0051】
前記マスターバッチ樹脂を作製するときに用いられる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。マスターバッチ樹脂と混合するポリプロピレン系樹脂と相溶性がよいという観点からポリプロピレン系樹脂を用いてマスターバッチ化することが最も好ましい。
【0052】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関し、まず、基材樹脂を含むポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法(造粒工程)が挙げられる。
【0053】
ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法としては、押出機を用いる方法が挙げられる。具体的には、例えば、(i)ポリプロピレン系樹脂を押出機に投入して溶融混練し、(ii)溶融混練して得られた基材樹脂(溶融混練物)を押出機の先端に設置されるダイスを通して押出し、(iii)押出された溶融混練物を水中を通す等により冷却した後、(iv)冷却された溶融混練物をカッターにて細断することにより、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状とすることができる。あるいは、前記(ii)において基材樹脂(溶融混練物)をダイスから直接水中に押出し、押出し直後に当該溶融混練物を粒子形状に裁断し、冷却してもよい。このように、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練することにより、より均一な基材樹脂が得られる。なお、ポリプロピレン系樹脂を押出機に投入する前に、必要に応じて、他の樹脂、ならびに発泡核剤、親水性化合物、着色剤、および樹脂安定剤等の添加剤をブレンドし、ブレンド物を溶融混練して得られた基材樹脂を、押出し、冷却、細断することで所望の粒子形状としてもよい。あるいは、ポリプロピレン系樹脂を押出機に投入し、必要に応じて、発泡核剤、親水性化合物および着色剤等の添加剤を押出機の途中からフィードし、押出機内で混合し、溶融混練して基材樹脂を得ることもできる。
【0054】
前記ポリプロピレン系樹脂(基材樹脂)粒子の一粒の重量としては、0.2mg/粒以上10mg/粒以下が好ましく、0.5mg/粒以上5mg/粒以下がより好ましい。
【0055】
ポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の重量が0.2mg/粒以上であると、ハンドリング性およびカッティング性が良好であり、10mg/粒以下であると、型内発泡成形工程において金型充填性が良好である。
【0056】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして含まれる1-ブテンからなる構造単位は、0.1重量%以上3.0重量%未満が好ましく、0.2重量%以上2.8重量%未満がより好ましく、0.3重量%以上2.5重量%以下がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、1-ブテンからなる構造単位が0.1重量%未満であれば、冷却時間短縮効果が得られず、さらに得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が十分な圧縮強度を発揮しない傾向にある。ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、1-ブテンからなる構造単位が3.0重量%以上では、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性が悪くなる傾向にあり、良好な表面性を得るためには、成形時の加熱時間を延ばす必要があり、結果として水蒸気使用量、成形サイクルにおいて不利になる。
【0057】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂に「コモノマーとして含まれる任意の単量体Xからなる構造単位」を、ポリプロピレン系樹脂における「Xコモノマー」と称する場合もある。
【0058】
ポリプロピレン系樹脂にコモノマーとして含まれる、エチレンからなる構造単位(エチレンコモノマー)、および1-ブテンからなる構造単位(1-ブテンコモノマー)の量の測定方法は、実施例にて詳述する。コモノマー量の測定は、共重合組成の定量ともいえる。なお、コモノマー量の測定には、ポリプロピレン系樹脂だけではなく、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体に対して適用することもできる。従って、コモノマー量の測定において、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を解析して測定してもよい。
【0059】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレート(MFR)は、5g/10分以上10g/10分以下が好ましく、5.5g/10分以上9g/10分以下が好ましく、6g/10分以上8.5g/10分以下がより好ましい。MFRが5g/10分未満であれば、得られる型内発泡成形体の表面性が悪化する、つまり、成形体の表面に凹凸、収縮あるいはシワが発生する。このため、良好な表面性を得るためには加熱時間を長くする必要があり、水蒸気使用量の削減が困難となる。MFRが10g/10分を超えると、型内発泡成形工程の成形サイクルが長くなる傾向がある。
【0060】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂、もしくはポリプロピレン系樹脂粒子のMFRの測定は、MFR測定器を用い、ISO1131に準拠する、荷重2.16kg、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。当該MFR測定機としては、INSTRON社製CEAST Melt Flow Testerを使用することができる。
【0061】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂粒子の融点tは、得られる型内発泡成形体の機械的強度と型内発泡成形時の使用水蒸気量の観点から、146.5℃以上149.4℃以下が好ましく、146.5℃以上149.0℃以下がより好ましく、146.6℃以上148.7℃以下がより好ましい。融点が146.5℃より低くなると、機械的強度が一定水準を満足しない可能性が高く、149.4℃より高くなると、水蒸気使用量の削減が困難になる。
【0062】
ここで、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点tとは、公知の方法により、示差走査熱量測定(DSC)により求められ、ポリプロピレン系樹脂粒子5~6mgを、40℃から220℃まで、10℃/分の昇温速度で加熱し、その後220℃から40℃まで10℃/分の降温速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の昇温速度で加熱した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度であり、図1にtとして示されている。なお、tの測定にはポリプロピレン系樹脂発泡粒子、もしくはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を使用しても良い。示差走査熱量計DSCとしては、METTLER TOLEDO N.V.社製、DSC822e型を使用することができる。
【0063】
ポリプロピレン系樹脂粒子を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、当該ポリプロピレン系樹脂粒子の構造は変化するが、ポリプロピレン系樹脂粒子の組成は変化しない。また、ポリプロピレン系樹脂粒子を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の構造は変化するが、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の組成は変化しない。したがって、
(i)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を解析して得られたコモノマー量、融点、またはMFRの値は、それぞれ、それらの原料であるポリプロピレン系樹脂粒子のコモノマー由来の成分の含有率、融点、またはMFRの値であるとみなすことができ、
(ii)ポリプロピレン系樹脂に含まれているポリプロピレン系樹脂の種類が判明している場合には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を解析することにより、それらの原料であるポリプロピレン系樹脂粒子に含まれるポリプロピレン系樹脂における、複数種のポリプロピレン系樹脂の混合比を、求めることができる。
【0064】
前記「複数種のポリプロピレン系樹脂の混合比」としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂とエチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体との混合比率、等が挙げられる。
【0065】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の融点は、ポリプロピレン系樹脂粒子に代えて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体をそれぞれ使用する以外は、ポリプロピレン系樹脂(X)の融点と同様の方法(DSC)で測定して得られた値とする。
【0066】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のMFRは、次のように測定することができる:(A1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士が接触しないように減圧可能なオーブンの中にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を静置する;(A2)次に、-0.05~-0.10MPa・Gの圧力下で、かつ、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点+20~35℃の温度下で30分間処理することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の内部の空気を除きながら、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をポリプロピレン系樹脂に戻す;(A3)そして、オーブンから上記ポリプロピレン系樹脂を取り出し、ポリプロピレン系樹脂を十分に冷却する;(A4)その後、ポリプロピレン系樹脂粒子と同じ方法により、上記ポリプロピレン系樹脂のMFRを測定する。
【0067】
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体のMFRは、次のように測定することができる:(B1)ミキサーなどを用いてポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を粉砕する;(B2)次に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の代わりに粉砕されたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を用いる以外は、上述したポリプロピレン系樹脂発泡粒子と同じ処理((A1)および(A2))を行い、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体をポリプロピレン系樹脂に戻す;(B3)そして、オーブンから上記ポリプロピレン系樹脂を取り出し、ポリプロピレン系樹脂を十分に冷却する;(B4)その後、ポリプロピレン系樹脂粒子と同じ方法により、上記ポリプロピレン系樹脂のMFRを測定する。
【0068】
本発明の一実施形態にポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、以下のような態様であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、(A)、(B)および(C)の条件を満たし、かつ、(a)および(b)の条件を満たす:(A)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む;(B)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である;(C)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である;(a)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である;(b)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である;
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(前記式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)。
【0069】
以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂粒子を用いて、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
【0070】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂粒子と、水と、無機ガス発泡剤とを、耐圧容器中に収容する工程1と、収容された原料を撹拌しながら、(i)前記耐圧容器内を、発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、(ii)前記発泡圧力よりも低い圧力域に、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出する工程2と、を有し、前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、(a)構造単位として、前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンに由来する構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含み、(b)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のMFRが5g/10分以上10g/10分以下であり、かつ、(c)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下であり、前記工程2において、前記耐圧容器内の温度が前記発泡温度-2℃に達した時点から、前記耐圧容器内を前記発泡温度まで加熱し、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記分散液を放出し始める時点までの保持時間が5分以上120分以下であり、前記発泡温度が149℃以上158℃以下であり、前記発泡圧力が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下である。
【0071】
ここで、前記「収容する」とは、「投入する」、「添加する」、および「仕込む」ともいえる。また、前記「収容された原料」とは、「収容されたポリプロピレン系樹脂粒子と水と無機ガス発泡剤とを含む混合液」ともいえる。さらに、(ii)において、「分散液」とは、「収容されたポリプロピレン系樹脂粒子と水と無機ガス発泡剤とを含む混合液」ともいえ、「耐圧容器中の内容物」ともいえる。「分散液」において、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散状態は特に限定されない。また、前記「保持時間」とは、「ポリプロピレン系樹脂粒子が耐圧容器内に保持される時間」ともいえる。本明細書において、圧力の単位「Pa・G」に付随された「G」は、当該圧力がゲージ圧で表されていることを示している。
【0072】
前記工程1は、ポリプロピレン系樹脂粒子と、水と、無機ガス発泡剤とを、耐圧容器中に収容する工程であり、ポリプロピレン系樹脂粒子、水および無機ガス発泡剤を耐圧容器中に収容する方法は特に制限されない。ポリプロピレン系樹脂粒子は、上述のようにして得られるポリプロピレン系樹脂粒子を使用すればよい。また、無機ガス発泡剤は、特に制限はないが、二酸化炭素、窒素、空気もしくは水から選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いることが好ましい。
【0073】
前記工程2では、収容された原料を撹拌することにより、ポリプロピレン系樹脂粒子と水と無機ガス発泡剤とを含む分散液が調製される。また、工程2は、収容された原料または分散液を攪拌しながら、(i)前記耐圧容器内を、発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、(ii)前記発泡圧力よりも低い圧力域に、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出する工程である。後述する方法により加熱し、かつ、加圧した後、分散液を放出することができる。
【0074】
本発明の一実施形態にかかるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする前記ポリプロピレン系樹脂粒子を、水および無機ガス発泡剤とともに耐圧容器中に収容し、収容された原料を攪拌しながら耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出して得られることが好ましい。
【0075】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、以下のような態様であってもよい。具体的には、(1)(i)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、並びに必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、撹拌しながら、必要に応じて耐圧容器内を真空引きする;(ii)次いで、耐圧容器内に発泡剤を添加し、かつ、耐圧容器内の圧力が、0.3MPa・G以上2.5MPa・G以下まで達するように発泡剤の添加量を調整する;(iii)その後、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで耐圧容器内を加熱する;(iv)加熱することによって、耐圧容器内の圧力が約1.0MPa・G以上5.0MPa・G以下まで上昇する;(v)必要に応じて、(v-i)耐圧容器内を加熱後、さらに(v-ii)発泡温度付近にて、発泡剤を耐圧容器内に追加することで、耐圧容器内を所望の発泡圧力に調整してもよい;(vi)次いで、発泡温度を保持するように密閉容器内の温度微調整を行いつつ、発泡圧力および発泡温度を一定時間保持する;(vii)次いで、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に分散液を放出することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
【0076】
また、別の好ましい態様としては、(2)(i)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、並びに必要に応じて分散剤等を仕込む;(ii)その後、仕込んだ原料を撹拌しながら、必要に応じて耐圧容器内を真空引きする;(iii)次いで、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで耐圧容器内を加熱しながら、発泡剤を耐圧容器内に導入してもよい。
【0077】
さらに、別の好ましい態様としては、(3)(i)耐圧容器内にポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、並びに必要に応じて分散剤等を仕込む;(ii)その後、発泡温度付近まで耐圧容器内を加熱する;(iii)次いで、発泡剤を耐圧容器内に導入し、耐圧容器内を加熱して発泡温度とし、発泡圧力および発泡温度を一定時間保持する;(iv)次いで、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に分散液を放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0078】
なお、低圧域に放出する前に、発泡剤として用いた物質を圧入することにより、耐圧容器内の内圧を高め、発泡時の圧力開放速度を調節し、更には、低圧域への放出中にも、発泡剤として用いた物質を耐圧容器内に導入して圧力を制御することにより、発泡倍率の調整を行うこともできる。
【0079】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる耐圧容器には、特に制限はなく、発泡粒子製造工程における容器内圧力、および容器内温度に耐えられるものであればよい。耐圧容器としては、例えば、密閉可能なオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0080】
本発明の一実施形態で用いられる水系分散媒としては、水のみを用いることが好ましいが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も使用できる。なお、本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子に親水性化合物を含有させる場合、水系分散媒中の水を発泡剤として作用させることができ、これにより発泡倍率を向上させることができる。
【0081】
前記発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、およびペンタン等の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、およびエタノール等のアルコール類、ならびに空気、窒素、二酸化炭素、および水等の無機ガス等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、特に環境負荷が小さく、燃焼危険性も無いことから、無機ガス発泡剤が好ましく、二酸化炭素、窒素、空気もしくは水から選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いることがより好ましい。
【0082】
また、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることがより好ましい。また、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることがより好ましい、ともいえる。当該構成によると、環境負荷が少なく、製造設備を高額な防爆仕様にする必要がないという利点を有する。
【0083】
本発明の一実施形態においては、水系分散媒中、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤および分散助剤を使用することが好ましい。前記「合着」は「融着」と称する場合もある。
【0084】
分散剤として、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、およびクレー等の無機系分散剤が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散助剤として、(i)カルボン酸塩型、(ii)アルキルスルホン酸塩、n-パラフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、(iii)硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、(iv)アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、およびアルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0085】
これらの中でも、分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムおよびカオリンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の分散剤であることが好ましい。これらの中でも、分散助剤としてn-パラフィンスルホン酸ナトリウムもしくは芳香族系スルホン酸ナトリウムを分散剤と併用することが好ましい。
【0086】
本発明の一実施形態においては、水系分散媒は、ポリプロピレン系樹脂粒子の水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、100重量部以上500重量部以下使用することが好ましい。また、分散剤および分散助剤の使用量は、それらの種類、ならびに、用いるポリプロピレン系樹脂粒子の種類および使用量によって異なるが、通常、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、分散剤が0.2重量部以上3重量部以下であることが好ましく、分散助剤が0.001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましい。
【0087】
所定の性能を発揮するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するときにおける発泡条件は、使用するポリプロピレン系樹脂および発泡剤、ポリプロピレン系樹脂粒子に含まれる添加剤、目標とする高温熱量比率およびかさ密度などにより変化するため一概には規定できない。本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、耐圧容器から分散液を放出するときの、耐圧容器内の温度(発泡温度)が149℃以上158℃以下、耐圧容器内の圧力(発泡圧力)が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下が好ましく、149.5℃以上157.5℃以下がより好ましい。
【0088】
発泡温度が149℃未満であると、高温熱量比率が高くなりすぎることに起因し、成形体の表面性が悪くなる傾向があり、良好な表面性を得るためには水蒸気での加熱時間を延長する必要が生じる。このため、使用水蒸気量が増える傾向がある。一方、発泡温度が158℃より高い温度では、高温熱量比率が低くなり過ぎ、成形サイクルが長くなり、成形体内部の融着が悪化する、つまり、成形体内部における発泡粒子同士の融着が不十分になることがある。
【0089】
また、発泡圧力が1.0MPa・G未満の場合は、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低くなり過ぎることがあり、発泡倍率のばらつきが大きくなることがある。発泡圧力が3.5MPa・Gを超える場合は、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が小さくなり過ぎ、良好な成形体が得られ難くなる傾向がある。
【0090】
以上のように、ポリプロピレン系樹脂粒子からポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る工程を「一段発泡工程」と称す場合があり、このようにして得たポリプロピレン樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0091】
従って、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、一段発泡工程ともいえ、一段発泡粒子の製造方法ともいえる。
【0092】
また、得られた一段発泡粒子に、無機ガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素、等)を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させること等により、一段発泡粒子よりも発泡倍率が向上したポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0093】
このように、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をさらに発泡させてより発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子とする工程を、「二段発泡工程」と称す場合がある。そして、このような二段発泡工程を経て得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0094】
本発明の一実施形態において、二段発泡工程における水蒸気の圧力は、二段発泡粒子の発泡倍率を考慮した上で、0.02MPa・G以上0.25MPa・G以下に調整することが好ましく、0.04MPa・G以上0.15MPa・G以下に調整することがより好ましい。
【0095】
二段発泡工程における水蒸気の圧力が0.02MPa・G以上であれば、発泡倍率が向上しやすく、0.25MPa・G以下であれば、得られる二段発泡粒子同士が合着しないので、その後の型内発泡成形に供することができる。
【0096】
一段発泡粒子に含浸する空気の内圧は、二段発泡粒子の発泡倍率および二段発泡工程の水蒸気圧力を考慮して適宜変化させることが望ましいが、0.05MPa・G以上0.70MPa・G以下であることが好ましい。
【0097】
一段発泡粒子に含浸する空気の内圧が0.05MPa・G以上では、発泡倍率を向上させることが容易である。一段発泡粒子に含浸する空気の内圧が0.70MPa・G以下では、二段発泡粒子が連泡化せず、型内発泡成形体の圧縮強度等の剛性を維持することができる。
【0098】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、10℃/分の昇温速度で昇温した示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry;DSC)により得られるDSC曲線において、図2に示されるように、2つの融解ピークを有し、低温側融解熱量(Ql)と高温側融解熱量(Qh)との2つの融解熱量を有する。
【0099】
2つの融解ピークを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、前述の水分散系でのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、発泡時の耐圧容器内温度(発泡温度)を適切な値に適宜調整し、当該発泡温度にて一定時間保持することにより容易に得られる。
【0100】
すなわち、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をt(℃)とする場合、発泡時の耐圧容器内温度(発泡温度)は、二酸化炭素を発泡剤として使用する場合には、t-5(℃)以上が好ましく、t-2(℃)以上t+8(℃)以下がより好ましく、t(℃)以上t+7(℃)以下の温度がさらに好ましい。空気を発泡剤として使用する場合は、発泡時の耐圧容器内温度(発泡温度)は、t-2(℃)以上が好ましく、t(℃)以上t+12(℃)以下がより好ましく、t+2(℃)以上t+11(℃)以下の温度がさらに好ましい。
【0101】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線の2つの融解ピークのうち、低温側ピーク温度は141.5℃以上145.5℃以下であり、高温側ピーク温度は161.5℃以上165℃以下である。
【0102】
低温側ピーク温度が141.5℃以上であれば、型内発泡成形時において成形体の内部がすぐに(加熱初期に)融着しないため、水蒸気が発泡粒子間を十分通過することが可能となり、発泡粒子が均一に加熱される。その結果、水蒸気での加熱時間を短縮することが可能である。低温側ピーク温度が145.5℃以下であれば、成形体の表面性が良好であり、加熱時間を長くする必要がない。
【0103】
高温側ピーク温度が161.5℃以上であると、得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が一定水準を上回ることが多く好ましい。高温側ピーク温度が165℃以下であると、得られる型内発泡成形体の融着および表面性が良好である。
【0104】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の全融解熱量(Q)、低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)は、図2を用いて、次のように定義される。
【0105】
低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)の和である全融解熱量Q[=Ql+Qh]は、得られるDSC曲線(図2)において、温度100℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、線分ABとDSC曲線とで囲まれた部分である。
【0106】
DSC曲線の低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとする。点CからY軸に平行な直線を線分ABへ向けて引いたとき、当該直線と線分ABとが交わる点をDとする。線分ADと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
【0107】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、高温側融解熱量(Qh)の全融解熱量に占める比率[={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)](「高温熱量比率」と称する場合がある)としては、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度により適正な範囲が異なり、かさ密度が10g/L以上35g/L以下の場合は高温熱量比率が23%以上35%以下、35g/L以上80g/L以下の場合は21%以上33%以下、80g/L以上300g/L以下の場合は17%以上30%以下である。高温熱量比率が前記範囲より低くなると、成形サイクルが長くなる傾向にあり、場合によっては成形体内部における融着が悪化し、さらに、得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の圧縮強度が低下するため好ましくない。高温熱量比率が前記範囲より高くなると成形体表面において粒間が占める割合が多くなり、表面性の良いポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得るためには成形時の加熱時間を延長する必要がある。このため、水蒸気使用量が増え、成形コストの観点から好ましくない。
【0108】
高温熱量比率が前記範囲にあれば、成形時の水蒸気使用量を少なくすることができ、短い成形サイクルでポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができ、そのポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は表面が美麗であると共に、圧縮強度が高く、融着性も良好である。
【0109】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温熱量比率は、例えば、前記耐圧容器内を前記発泡温度での保持時間(発泡温度よりも2℃低い温度に達した後から、発泡温度まで加熱し、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域にポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出し始めるまでの時間)、発泡温度(耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に分散液を放出し始めるときにおける耐圧容器内温度)、発泡圧力(発泡時における耐圧容器内の圧力)等により、適宜調整することができる。
【0110】
一般的には、保持時間を長くするか、発泡温度を低くするか、発泡圧力を低くすると、高温熱量比率あるいは高温側融解ピーク熱量が大きくなる傾向がある。また、保持時間を長くするほど、高温側ピーク温度がより高温側にシフトする傾向がある。保持時間は、5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。保持時間が短すぎると、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温熱量比率が安定しない(再現性が低下する)場合があり、保持時間が長すぎると、生産サイクルが長くなりすぎる場合がある。
【0111】
以上のことから、保持時間、発泡温度、発泡圧力を系統的に適宜変化させた実験を何回か試行することにより、所望の高温熱量比率となる条件を容易に見出すことができる。なお、発泡圧力の調節は、発泡剤の量により調節することができる。
【0112】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定において、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点とポリプロピレン系樹脂発泡粒子の低温側ピーク温度との差((ポリプロピレン系樹脂粒子の融点)-(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の低温側ピーク温度))が2.5℃以上5.0℃未満であることが好ましい。当該差が2.5℃以上であれば、成形体の良好な表面性が得られ、加熱時間を短縮でき、水蒸気使用量削減効果が得られる。当該差が5.0℃未満では、成形体内部の融着が良好であり、得られる成形体の機械的強度が維持できる。
【0113】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点とポリプロピレン系樹脂発泡粒子の低温側ピーク温度との差((ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点)-(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の低温側ピーク温度))が2.5℃以上5.0℃未満であることが好ましい。
【0114】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度には、特に制限はないが、10g/L以上300g/L以下が好ましい。かさ密度が300g/L以下である場合は、発泡圧力が低くなりすぎることがなく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の安定した生産が可能になる。かさ密度が10g/L以上である場合は、得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の機械的強度において実用的な値を維持できる。
【0115】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、100μm以上350μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。平均気泡径がこの範囲にあれば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面が美麗であると共に、機械的強度も高くなる傾向がある。
【0116】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、前述した発泡核剤の添加量により調製することも可能であるが、例えば、前述する高温熱量比率によっても制御することができる。高温熱量比率が20%未満では平均気泡径が大きくなり、高温熱量比率が40%を超えると平均気泡径が小さくなる傾向がある。
【0117】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、上述した本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子から成形されてなることが好ましい。当該構成によると、少ない水蒸気使用量、かつ短い生産サイクルで、良好な表面性、融着性、および圧縮強度を有する型内発泡成形体を得ることができる。
【0118】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来から知られている型内発泡成形法により、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とすることができる。
【0119】
前記型内発泡成形法としては、例えば、以下のような方法が利用し得る。
【0120】
(i)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を無機ガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素等で加圧処理してポリプロピレン系樹脂発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の内圧を付与した後、金型にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、水蒸気でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させる方法。
【0121】
(ii)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させる方法。
【0122】
(iii)特に前処理することなくポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、水蒸気でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させる方法。
【0123】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度に特に制限はないが、15g/L以上350g/L以下が好ましく、20g/L以上300g/L以下がより好ましい態様といえる。
【0124】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、ISO844に準拠する方法で測定する50%歪時圧縮強度が式(2)を満たすことが重要である。
式(2):50%歪時圧縮強度(kPa)≧0.054×D+3.85×D+50
式(2)中、Dは、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度であり、単に成形体密度と称することもある。
【0125】
当該構成であれば、特に、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、十分な圧縮強度を有するため、強度の要求レベルが高い自動車内装部材、自動車バンパー用芯材等の自動車用部材等の用途に用いられる。特に自動車用途では、使用する部材により所定の圧縮強度が求められており、50%歪時圧縮強度が高いほど、所定の圧縮強度を発揮するための型内発泡成形体の密度を低く抑えることができる。すなわち、それぞれの部材あたりの重量を軽くすることができ、自動車の軽量化および燃費向上に寄与する。
【0126】
このようにして得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いることが可能である。
【0127】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0128】
〔1〕ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、ポリプロピレン系樹脂粒子は(A)、(B)および(C)の条件を満たし、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が(a)および(b)の条件を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0129】
(A)ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む。
【0130】
(B)ポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である。
【0131】
(C)ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である。
【0132】
(a)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である。
【0133】
(b)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である。
【0134】
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)
〔2〕ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、さらに(c)の条件を満たすことを特徴とする〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0135】
(c)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点と低温側ピーク温度との差が2.5℃以上5.0℃未満であることを特徴とする〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0136】
〔3〕ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が100μm以上350μm以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0137】
〔4〕ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中のプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体が10重量%以上35重量%以下であることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0138】
〔5〕ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂粒子を、水および無機ガス発泡剤とともに耐圧容器中に収容し、攪拌しながら耐圧容器内部を発泡温度まで加熱し、発泡圧力まで加圧した後、発泡圧力よりも低い圧力域にポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出して得られることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0139】
〔6〕使用する無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする〔5〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0140】
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から成形されてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【0141】
〔8〕〔7〕に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、ISO844に準拠する方法で測定する50%歪時圧縮強度が、下記式(2)を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
式(2)50%歪時圧縮強度(kPa)≧0.054×D+3.85×D+50
(式(2)中、Dは、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度である。)
〔9〕ポリプロピレン系樹脂粒子を水および無機ガス発泡剤とともに耐圧容器中に収容し、攪拌しながら耐圧容器内部を発泡温度まで加熱、発泡圧力まで加圧した後、発泡圧力よりも低い圧力域にポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
ポリプロピレン系樹脂粒子が、
ポリプロピレン系樹脂粒子100重量中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含み、かつMFRが5g/10分以上10g/10分以下、かつ融点が146.5℃以上149.4℃以下であり、
耐圧容器内の温度が、発泡温度よりも2℃低い温度に達した後から、発泡温度まで加熱し、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に分散液を放出し始めるまでの保持時間が5分以上120分以下であり、
発泡温度が149℃以上158℃以下であり、
発泡圧力が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【0142】
〔10〕使用する無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする〔9〕記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【0143】
さらに、本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0144】
〔1〕ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は(A)、(B)および(C)の条件を満たし、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が(a)および(b)の条件を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0145】
(A)前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンからなる構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含む。
【0146】
(B)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のメルトフローレートが5g/10分以上10g/10分以下である。
【0147】
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下である。
【0148】
(a)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られる1回目昇温時のDSC曲線が2つのピークを示し、低温側ピーク温度が141.5℃以上145.5℃以下、高温側ピーク温度が161.5℃以上165℃以下である。
【0149】
(b)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、
下記式(1)で求められる高温熱量比率が、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が10g/L以上35g/L未満の場合は23%以上35%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が35g/L以上80g/L未満の場合は21%以上33%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が80g/L以上300g/L未満の場合は17%以上30%以下である。
式(1)高温熱量比率={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)
(前記式(1)中、Qlは、1回目昇温時のDSC曲線から求められる低温側融解熱量、Qhは、高温側融解熱量である。)
〔2〕前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、さらに(c)の条件を満たすことを特徴とする〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0150】
(c)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定において、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点と低温側ピーク温度との差が2.5℃以上5.0℃未満であることを特徴とする、〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0151】
〔3〕前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が100μm以上350μm以下であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0152】
〔4〕前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体を含むことを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0153】
〔5〕前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中の前記プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体が10重量%以上35重量%以下であることを特徴とする、〔4〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0154】
〔6〕ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする前記ポリプロピレン系樹脂粒子を、水および無機ガス発泡剤とともに耐圧容器中に収容し、収容された原料を攪拌しながら耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出して得られることを特徴とする、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0155】
〔7〕前記無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする〔6〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0156】
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から成形されてなることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【0157】
〔9〕〔8〕に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
ISO844に準拠する方法で測定する50%歪時圧縮強度が、下記式(2)を満足することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
式(2)50%歪時圧縮強度(kPa)≧0.054×D+3.85×D+50
(前記式(2)中、Dは、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度である。)
〔10〕ポリプロピレン系樹脂粒子と、水と、無機ガス発泡剤とを、耐圧容器中に収容する工程1と、
収容された原料を撹拌しながら、(i)前記耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、かつ、発泡圧力まで加圧した後、(ii)前記発泡圧力よりも低い圧力域に、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を放出する工程2と、を有し、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子は、
(a)構造単位として、前記ポリプロピレン系樹脂粒子100重量%中、コモノマーとして1-ブテンに由来する構造単位を0.1重量%以上3重量%未満含み、
(b)前記ポリプロピレン系樹脂粒子のMFRが5g/10分以上10g/10分以下であり、かつ、
(c)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点が146.5℃以上149.4℃以下であり、
前記工程2において、
前記耐圧容器内の温度が前記発泡温度-2℃に達した時点から、前記耐圧容器内を前記発泡温度まで加熱し、前記発泡圧力よりも低い圧力域に前記分散液を放出し始める時点までの保持時間が5分以上120分以下であり、
前記発泡温度が149℃以上158℃以下であり、
前記発泡圧力が1.0MPa・G以上3.5MPa・G以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【0158】
〔11〕前記無機ガス発泡剤が空気または二酸化炭素であることを特徴とする、〔10〕記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【実施例
【0159】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0160】
実施例および比較例において、使用した物質は、以下のとおりである。
【0161】
<ポリプロピレン系樹脂>
表1に示したポリプロピレン系樹脂A-1~A-6、およびポリプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体B-1~B-4を使用した。なお、「ポリプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体」は、上述した「プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体」を意図し、表1では、「エチレン1-ブテンポリプロピレン共重合体」と記載している。
【0162】
【表1】
<その他添加剤>
・タルク:IMERYS Talc社製、Luzenac 20M0
・グリセリン:Oleon N.V.社製、Glycerine 4812
・メラミン:BASF社製
・カーボンブラック:Schulman Plastics N.V.社製
但し、カーボンブラックは、含有濃度40重量%となるカーボンブラックマスターバッチ(40%カーボンMB)として使用した。マスターバッチ化において、使用した樹脂(基材樹脂)は、下記の通りである。
40%カーボンMB 基材樹脂:ポリプロピレン系樹脂A-1
・安定剤類:BASF社製、TINUVIN326、IRGANOX1010、IRGAFOS168、IRGANOX PS802、IRGANOX MD1024、Chimassorb2020
・ポリエチレングリコール:PEG#300、ライオン社製。
【0163】
なお、実施例および比較例における評価は、次の方法により行なった。
【0164】
(ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂粒子、もしくはポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融点t測定)
ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂粒子、もしくはポリプロプロピレン系樹脂発泡粒子の融点tの測定は、示差走査熱量計DSC(METTLER TOLEDO N.V.社製、DSC822e型)を用いて行った。具体的には以下の通りである。(1)測定するサンプル5~6mgを、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して樹脂を融解した後;(2)10℃/分の降温速度で220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後;(3)さらに10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温した。ときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られるDSC曲線のピーク(融解ピーク)の温度を融点として求められる値とした(図1のt参照)。なお、図2において、低温の融解ピーク温度を「低温側ピーク温度」とし、高温の融解ピーク温度を「高温側ピーク温度」と称する。
【0165】
(MFR測定)
ポリプロピレン系樹脂、もしくはポリプロピレン系樹脂粒子のMFRは、INSTRON社製CEAST Melt Flow Testerを使用し、ISO1131に準拠する、荷重2.16kg、230±0.2℃の条件下で測定した。
【0166】
(共重合組成の定量)
ポリプロピレン系樹脂にコモノマーとして含まれる、エチレンコモノマー、および1-ブテンコモノマー量が既知であるポリプロピレン系樹脂を180℃環境下でホットプレスし、厚さ約100μmのフィルムを作製した。作製したフィルムのIRスペクトル測定により、プロピレン由来の810cm-1における吸光度(I810)、エチレンコモノマー由来の733cm-1における吸光度(I733)、および1-ブテンコモノマー由来の766cm-1における吸光度(I766)を読み取った。
【0167】
次に、得られた結果を用いて、吸光度比(I733/I810)を横軸に、エチレンコモノマー量を縦軸にプロットすることにより、エチレンコモノマー量の検量線とした。同様に、吸光度比(I766/I810)を横軸に、ブテンコモノマー量を縦軸にプロットすることにより、1-ブテンコモノマー量の検量線とした。
【0168】
次いで、検量線作製時のサンプル調整方法(すなわち、上述したフィルムの作製方法)と同様にして、コモノマー量が未知のポリプロピレン系樹脂をホットプレスし、厚さ約100μmのフィルムを作製した。作製したフィルムのIRスペクトル測定により、I810、I733、I766を読み取った。先に作成した検量線に従い、エチレンコモノマー量、および1-ブテンコモノマー量を算出した。なお、検量線作製時のサンプル調整方法(すなわち、上述したフィルムの作製)は、ポリプロピレン系樹脂だけではなく、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体でもフィルムを作成することができる。したがって、コモノマー量の測定(すなわち、共重合組成の定量)において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、またはポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を解析して測定してもよい。
【0169】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度測定)
上述した方法により得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、80℃で12時間以上乾燥した後、23℃、湿度50%の室内で1日以上、静置し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の状態を調節(調整)した。当該状態を調整した発泡粒子を10Lのバケツに取り、粉面をすりきった後、重量w(g)を測定し、かさ密度[=w/10(g/L)]により算出した。
【0170】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡膜(セル膜)が破壊されないように充分注意して、得られた発泡粒子のほぼ中央を切断した。その切断面をマイクロスコープ(METTLER TOLEDO N.V.社製、DSC822e型)を用いて観察し、観察写真を撮影した。マイクロスコープによる当該観察写真において、表層部を除く部分に、長さ2000μmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡の数(nとする)を測定し、気泡径を[=2000/n(μm)]により算出した。当該操作を合計10個の発泡粒子において行い、それぞれ算出した気泡径の平均値を、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径(μm)とした。なお、平均気泡径のことを平均セル径と称することもある。
【0171】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温熱量比率の算出)
高温熱量比率[={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)]の測定は、示差走査熱量計(METTLER TOLEDO N.V.社製、DSC822e型)を用いて行なった。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子5~6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温するときに得られる、1回目昇温時のDSC曲線(図2参照)から、当該高温熱量比率を算出した。
【0172】
図2に示す通り、温度100℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、DSC曲線の低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとする。点CからY軸に平行な直線を線分ABへ向けて引いたとき、当該直線と線分ABとが交わる点をDとする。線分ADと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
【0173】
(成形性の評価)
ポリオレフィン発泡成形機(Erlenbach GmbH社製)を用い、縦380mm×横380mm×厚み60mmの平板状型内発泡成形体を得ることのできる金型内に、表2~4に記載の条件によりポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱成形させることにより、平板状ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。このとき、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、完全に型閉した。ついで0.15MPa・Gの水蒸気で金型内の空気を追い出しながらポリプロピレン系樹脂発泡粒子全体を温め(予備加熱工程)、その後、表2~4に記載の圧力の加熱水蒸気を用いてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を6秒間加熱成形(両面加熱工程)させることにより、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。加熱終了後は金型内部の水蒸気を除いた後、所定の水冷を行い、面圧計によって測定される圧力が0.05MPa・Gになるまで空冷した。成形サイクルは1回の成形における、成形開始から成形終了までの時間を表している。水冷時間は、ポリプロピレン系樹脂粒子の粒重量(mg/粒)によって異なり、下記の条件にて実施した。
0.75mg/粒~0.90mg/粒の場合、水冷時間50秒。
1.20mg/粒の場合、水冷時間60秒。
1.80mg/粒の場合、水冷時間80秒。
【0174】
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、80℃の乾燥機内で6時間養生(放置)し、乾燥を行い、再び室温に取出してから、23℃、湿度50%の室内で48時間放置した。その後、融着性、表面性評価、および当該ポリプロピレン系樹脂型内成形体の密度測定を行った。50%歪時圧縮強度測定には、表4に示した加熱条件における水準1で成形したポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であり、かつ、成形後に、80℃の乾燥機内で6時間養生(放置)し、乾燥を行い、その後、乾燥機から取り出してから、23℃、湿度50%の室内にて、7~10日放置したものを使用した。
【0175】
(成形可能加熱条件の評価)
表4は、実施例2および比較例2において、成形加熱条件を変更した場合(すなわち、水準1~5)の結果を示している。また、表4に記載の水準1~5の条件にて、各実施例及び比較例にて得られた一段発泡粒子または二段発泡粒子を用いて型内発泡成形を実施した。得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性および融着性がともに優れていた水準を成形可能加熱条件とした。そして、表2および表3において、下記の基準により成形可能加熱条件を記載した。
◎:水準1~5において表面性および融着性が優れていた。
〇:水準1~4において表面性および融着性が優れていた。
△:水準1~3において表面性および融着性が優れていた。
×:水準1~2において表面性および融着性が優れていた。
××:水準1においてのみ表面性および融着性が優れていた。
-:成形可能加熱条件がない。
【0176】
また、表2および表3において、「成形」の欄の「成形可能加熱条件」以外の項目は、「加熱条件(表4参照)」の欄に記載の各水準の条件にて、型内発泡成形したときの結果等を表している。
【0177】
(水蒸気使用量の評価)
水蒸気使用量は、ポリオレフィン発泡成形機(Erlenbach GmbH社製)に繋がっている水蒸気配管に流量計を取り付けて測定を行った。
【0178】
(融着性)
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の厚み方向にカッターで深さ5mm程度の切り込みを入れた後、切り込み部に沿って型内発泡成形体を割り、破断面を目視観察した。発泡粒子界面ではなく、発泡粒子内部が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
○:発泡粒子内部破断の割合が80%以上。
△:発泡粒子内部破断の割合が60%以上80%未満。
×:発泡粒子内部破断の割合が60%未満(融着度合いが低い為、破断面に現れる発泡粒子界面割合が40%超)。
【0179】
(表面性)
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の縦380mm×横380mmの面を目視で観察し、以下の基準にて、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面性を判定した。
○:粒間(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間の空間(隙間))がほとんどなく、成形体表面に凹凸が目立たず、シワおよび収縮もなく美麗である。
△:粒間、表面凹凸、収縮あるいはシワが若干見られる。
×:観察面全体に明らかに粒間、表面凹凸、収縮あるいはシワが目立つ。
【0180】
(成形体密度(D))
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の重量を体積で除し、単位がg/Lになるよう換算した。
【0181】
(圧縮強度測定用テストピースの成形体密度)
加熱条件水準1で成形されたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の中央付近から、縦50mm×横50mm×厚み50mmのテストピースを切り出した。テストピースの重量W(g)を測定し、テストピースの縦、横、厚み寸法をノギスで測定して体積V(cm)を算出し、成形体密度をW/Vにて求めた。但し、単位がg/Lとなるように換算した。
【0182】
(50%歪時圧縮強度)
成形体密度を測定したテストピースに対して、ISO844に準拠し、引張圧縮試験機(INSTRON社製、Series5560)を用いて、厚みの10%(5mm/分)の速度で圧縮したときの50%圧縮時の圧縮応力を測定した。
【0183】
(実施例1~21、比較例1~10、12~35)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]
表1に記載のポリプロピレン系樹脂に対して、表2または表3に記載の配合量となるように添加剤を混合した。その後、混合物を二軸押出機(Coperion社製、ZSK18)を用いて、樹脂温度215~225℃にて溶融混練し、溶融混練物を得た。溶融混練物を、押出機から押出した。押出された溶融混練物(ストランド)を水槽で水冷後、切断して、ポリプロピレン系樹脂粒子(0.75~1.80mg/粒)を製造した。
【0184】
[一段発泡粒子の作製]
<二酸化炭素を発泡剤として使用する場合>
内容量10Lの耐圧容器中に、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水200重量部、分散剤としてのパウダー状塩基性第3リン酸カルシウム1.5重量部、分散助剤としてのn-パラフィンスルホン酸ソーダ0.06重量部、および無機ガス発泡剤として二酸化炭素を5~7.5重量部を収容した。収容された原料を攪拌しながら、表2または表3に示す発泡温度-2℃まで耐圧容器内の温度を昇温した。次に、耐圧容器内の加熱を継続して10分経過後、二酸化炭素を耐圧容器内に追加圧入して、耐圧容器内を加圧し、表2または表3に示す発泡圧力に調整した。発泡温度および発泡圧力にて、耐圧容器内(耐圧容器内の内容物)を20分間保持しながら、発泡温度まで昇温させた。その後、耐圧容器下部のバルブを開いて、ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を開孔径4.0mmφのオリフィス板を通して、発泡圧力よりも低い圧力域(大気圧下)に放出することによってポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。
【0185】
<空気を発泡剤として使用する場合>
内容量10Lの耐圧容器中に、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水200重量部、分散剤としてのパウダー状塩基性第3リン酸カルシウム1.5重量部、および分散助剤としてのn-パラフィンスルホン酸ソーダ0.06重量部を収容した。収容された原料を攪拌しながら、表2または3に記載した発泡温度-2℃まで耐圧容器内の温度を昇温した。次に、耐圧容器内の加熱を継続して10分経過後、無機ガス発泡剤として空気を耐圧容器内に圧入して、耐圧容器内を加圧し、表2または3に記載した発泡圧力に調整した。発泡温度および発泡圧力にて、耐圧容器内(耐圧容器内の内容物)を20分間保持した。その後、耐圧容器下部のバルブを開いて、ポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散液を開孔径4.0mmφのオリフィス板を通して、発泡圧力よりも低い圧力域(大気圧下)に放出することによってポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。
【0186】
いずれの場合も、発泡温度-2℃に達した時点、から、耐圧容器内を発泡温度まで加熱し、発泡圧力よりも低い圧力域に分散液を放出し始める時点までの保持時間は30分で実施した。得られた一段発泡粒子を1%塩酸溶液で洗浄し、十分に水洗した後、乾燥させ、高温熱量比率、気泡径およびかさ密度の測定を行った。その結果を、表2および表3に示す。
【0187】
[二段発泡粒子の作成]
得られた一段発泡粒子を耐圧容器に入れ、空気で一段発泡粒子に加圧して、一段発泡粒子の内圧を表2または表3記載の内圧に調整した後、表2または表3に記載の水蒸気圧力で一段発泡粒子を加熱して、二段発泡粒子を得た。
【0188】
[ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の作製]
得られた一段発泡粒子または二段発泡粒子を、縦380mm×横380mm×厚み60mmの平板状型内発泡成形体を得ることのできる金型内に、表2または表3記載の圧縮空気圧力で加圧しながら充填、もしくは表2または表3に記載した内圧を付与した発泡粒子を表2または3に記載のクラッキングを取り充填した。充填した発泡粒子を水蒸気にて加熱成形させることにより、縦380mm×横380mm×厚み60mmの平板状ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。
【0189】
このとき、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、完全に型閉した。その後、0.15MPa・Gの水蒸気で金型内の空気を追い出し、次に、表2または表3記載の水蒸気圧力を用いて6秒間加熱成形(両面加熱工程)させることにより、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。詳細な加熱条件における水準1~4は、表4に記載した。具体的に、予備加熱工程は2秒、一方加熱工程は3秒または7秒、逆一方加熱工程は3もしくは7秒、両面加熱工程は前記の通り6秒とした。各加熱水準で成形し、良好な表面性かつ融着性が得られるものを、表2および表3の成形可能加熱条件に記載した。
【0190】
加熱工程の後、水にて表2および表3に記載の時間冷却し(前記の通り、ポリプロピレン系樹脂粒子の粒重量によって異なる)、型内成形体の面圧が0.05MPa・Gになるまで空冷した。成形後、80℃の乾燥機内にて6時間乾燥させた後、23℃にて48時間静置し、成形性評価を行った。
【表2】
【表3】
【表4】
結果、実施例は請求項の範囲にすべて含まれるため、全ての課題が解決されている。同じ成形体密度で比較した場合、実施例では加熱時間が短い水準4で成形が可能であるため、水蒸気使用量が少なくて済み、対応する比較例に対して成形サイクルが短く、十分な50%歪時圧縮強度を発現していることが判る。
【0191】
表4に加熱条件による水蒸気使用量を示しているが、両面加熱圧力を下げたとしても(たとえば加熱水準1と加熱水準3を比較しても)、水蒸気使用量削減効果はわずかであり、加熱水準4や5のように加熱時間を短縮することで水蒸気使用量削減効果が大きくなることがわかる。
【0192】
比較例1~7は、条件(A)の下限および条件(C)の上限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1のみで成形条件に幅がない。
【0193】
比較例8は、条件(A)の下限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1および2のみで、成形条件の幅が狭い。
【0194】
比較例9は、条件(A)の上限を満たさず、成形可能加熱条件がない。
【0195】
比較例10、12、13は、条件(A)の上限および条件(C)の下限を満たさず、水準1~3で成形可能であるが、使用水蒸気量の削減が難しく、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度が一定水準に満たない。
【0196】
比較例14は、条件(A)の下限および条件(C)の下限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1のみで、成形条件の幅が狭い。
【0197】
比較例15は、条件(A)の下限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1のみであり、使用水蒸気量の削減が難しく、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度が一定水準に満たない。
【0198】
比較例16~18は、条件(B)の下限を満たさず、成形可能加熱条件がない。
【0199】
比較例19および20、条件(B)の上限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1および2のみで、成形条件の幅が狭い。
【0200】
比較例21および23は、条件(A)~(C)は満足するものの、条件(b)の下限を満たさず、水準1~3で成形可能であるが、使用水蒸気量の削減が難しく、成形サイクルが長くなってしまう。比較例25は成形条件の幅が狭く、同じく水蒸気量削減が困難で、成形サイクルが長い。
【0201】
比較例22、24、および26は、条件(A)~(C)は満足するものの、条件(b)の上限を満たさず、成形可能加熱条件がない。
【0202】
比較例27および28は、条件(C)の下限を満たさず、水準1~3で成形可能であるが、使用水蒸気量の削減が難しく、実施例2や比較例2に比べると成形サイクルが長くなってしまう。また、比較例28は、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度が一定水準に満たない。
【0203】
比較例29は、条件(A)の下限および条件(C)の上限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1のみで成形条件に幅がない。
【0204】
比較例30は、条件(C)上限を満たさず、成形可能加熱条件が水準1のみで成形条件に幅がない。
【0205】
比較例31は、条件(A)~(C)は満たしているものの、条件(a)および(c)を満たさず、成形可能加熱条件が水準1および2のみで、成形条件の幅が狭い。
【0206】
比較例32は、条件(A)~(C)は満たしているものの、条件(a)~(c)を満たさず、成形可能加熱条件が水準1~3ではあるが、使用水蒸気量の削減が難しく、成形サイクルが長い。
【0207】
比較例33は、比較例32と同じポリプロピレン系樹脂発泡粒子を水準4で成形したものである。この加熱条件では、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の内部の融着が悪く、成形体表面の粒子間の隙間もやや多く表面性に劣るものであった。
【0208】
比較例34は、条件(A)~(C)を満たしているものの、条件(a)を満たさず、成形可能加熱条件が水準1および2のみであり、使用水蒸気量の削減が難しい。
【0209】
比較例35は、比較例34と同じポリプロピレン系樹脂発泡粒子を水準4で成形したものである。この加熱条件では、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体端部の融着が悪く、成形体表面の粒子間の隙間もやや多く表面性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を成形するときにおいて、水蒸気使用量の削減と成形サイクルの短縮とを同時に達成できまる。また、良好な表面性、融着性、および圧縮強度を有する型内発泡成形体の製造に活用することができる。具体的には、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材、緩衝包装材、および通い箱など様々な用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0211】
:融点(ポリプロピレン系樹脂(あるいは基材樹脂)の2回目昇温時のDSC曲線におけるピーク温度)
点A:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、温度100℃での吸熱量
点B:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、高温側融解が終了する温度での吸熱量
点C:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点
点D:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、点CからY軸に平行な直線を線分ABへ上げて交わる点
Ql:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、低温側融解熱量
Qh:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目昇温時のDSC曲線における、高温側融解熱量
図1
図2