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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20221004BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20221004BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0566
H01M4/62 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020528864
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2019002583
(87)【国際公開番号】W WO2019172637
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0028232
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115462
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115459
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115455
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167032
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ユン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519441(JP,A)
【文献】特開平07-235309(JP,A)
【文献】特開2014-175135(JP,A)
【文献】特開2012-021123(JP,A)
【文献】特開2007-265731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133992(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101418406(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 12/06-12/08
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池において、
電池内の正極、負極、分離膜及び電解質に含まれたナトリウムの含有量が500ppm以下であり、
前記正極に含まれたバインダー内のナトリウムの含有量が前記リチウム二次電池全体基準に450ppm以下であり、
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、
前記バインダーの含有量は、前記正極活物質層の全体重量を基準に5ないし10重量%であり、
前記正極に含まれたバインダーは、リチウム化されたポリアクリル酸、及び前記リチウム化されたポリアクリル酸とポリビニルアルコールのランダム共重合体からなる群より選択される1種以上である、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記電池に含まれた正極内のナトリウムの含有量が前記リチウム二次電池全体基準に450ppm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記電池に含まれた電解液内のナトリウムの含有量が前記リチウム二次電池全体基準に25ppm以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記電池に含まれた負極内のナトリウムの含有量が前記リチウム二次電池全体基準に15ppm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウム二次電池に含まれた正極;リチウム負極;前記正極とリチウム負極との間に介在された分離膜;及び電解液;を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記リチウム二次電池に含まれた正極;リチウム負極;及び電解液;に含まれたナトリウムの含有量が500ppm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属電池、リチウム金属イオン電池、リチウム-硫黄電池及びリチウム空気電池からなる群より選択されるものである、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月9日付け韓国特許出願第10-2018-0028232号、2018年9月28日付け韓国特許出願第10-2018-0115455号、2018年9月28日付け韓国特許出願第10-2018-0115459号、2018年9月28日付け韓国特許出願第10-2018-0115462号及び2018年12月21日付け韓国特許出願第10-2018-0167032号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池に関し、電池内に含まれた不純物の含有量を最小化することによって電池の性能が向上したリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器への技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池の中で高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。
【0004】
また、二次電池が化石燃料を用いる既存のガソリン車両、ディーゼル車両などの大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としても注目を集めるにつれて、最近では、それの使用量がさらに増加すると予想されているので、電池の性能や寿命特性を向上させるようとする研究が着実に進められている。
【0005】
最近では、高い不純物含有量が二次電池の性能と寿命特性に影響を与える要因のうち1つとして認識されており、このとき、二次電池内の不純物としてはアルカリ金属、具体的にはNa金属であってよい。
【0006】
リチウム無機酸化物が正極活物質、グラファイト(graphite)が負極である既存のリチウムイオン電池(LIB)でも、特に正極内に存在するNaイオンがLiイオンの移動度を低下させ、電極物性に悪影響を与えるという結果が報告されている。
【0007】
特に、リチウム金属(Li metal)を負極とするリチウム金属電池(代表的な例:Li-S電池)では正極、リチウム負極、電解質、分離膜などに含まれているアルカリ金属イオンの存在が問題視されていることが公知となっている。
【0008】
特許文献1は、リチウムイオン電池に含まれた正極活物質の素材として使用可能なリチウム金属酸化物粉末を製造するための炭酸塩前駆体化合物に含まれた不純物であるナトリウムと硫黄の含有量を特定の含有量の範囲に限定するが、ナトリウム対硫黄のモル比(Na/S、0.4<Na/S<2);ナトリウムの含有量(Nawt)及び硫黄の含有量(Swt)の合計(0.4wt%超過1.6wt%未満);及びナトリウムの含有量(Nawt)及び硫黄の含有量(Swt)の合計においてナトリウムの含有量(0.1~0.7wt%)を具体的な数値範囲に提示し、不純物の含有量を制限することによって、電気化学的性能を改善する方策を開示している。
【0009】
また、特許文献2は、リチウム二次電池の正極物質を製造するための素材として使用可能な化合物に含まれたナトリウムの含有量を2,000ppm未満に限定することにより、最終生成物、すなわち、正極物質用化合物の品質を保障することができることを開示している。
【0010】
これにより、リチウム負極を含むリチウム金属電池を構成する構成要素内のナトリウムのようなアルカリ金属の含有量を制御し、電池の性能及び寿命を改善させることができるより改善されたリチウム金属電池の開発が持続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第2017-0065635号公報
【文献】韓国公開特許第2008-0043347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、前述の問題点を解決するために多角的に研究を行った結果、リチウム二次電池内におけるナトリウムの含有量を全体的に減少させ、且つリチウム二次電池の各構成要素に含まれたナトリウムの含有量を最小化させることによって、リチウム二次電池の性能及び寿命特性を改善させることができることを確認した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、リチウム二次電池に含まれたナトリウムの含有量が制御されたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明はリチウム二次電池において、電池内のナトリウムの含有量が500ppm以下のリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るリチウム二次電池は、ナトリウムの含有量を最小化することによって、電池の性能と寿命特性が改善されることができる。
【0016】
また、前記リチウム二次電池の正極バインダー内に含まれたナトリウムの含有量を最小化することによって、充放電サイクルの増加に伴う容量の低下及びクーロン効率の低下現象を防止することができる。
【0017】
また、前記リチウム二次電池の電解液に含まれたナトリウムの含有量を最小化することによって、充放電サイクルの増加に伴う容量の低下及びクーロン効率の低下現象を防止することができるだけではなく、リチウム効率の低下も防止することができる。
【0018】
また、前記リチウム二次電池の正極添加剤内に含まれたナトリウムの含有量を最小化することによって、充放電サイクルの増加に伴う容量の低下及びクーロン効率の低下現象を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われる用語や単語は通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0020】
したがって、本明細書に記載された図面と実施例に記載された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらを代替することができる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0021】
リチウム二次電池
本発明は、アルカリ金属の含有量が最小化されたリチウム二次電池に関する。例えば、前記リチウム二次電池としては、リチウム金属電池、リチウム金属イオン電池、リチウム-硫黄電池、リチウム空気電池などがあるが、リチウムを負極として用いる電池であれば、これらに制限されるものではない。
【0022】
前記アルカリ金属は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及びルビジウム(Rb)のうち1種以上を含むことができる。
【0023】
前記アルカリ金属は、リチウム二次電池において不純物として認識され、電池内の含有量が多いほど充放電寿命による容量の低下現象とともに、クーロン効率も急激に下落する問題がある。
【0024】
このように、リチウム二次電池に含まれたアルカリ金属の含有量は、電池性能の向上と直接的な相関関係があるところ、本発明は、リチウム二次電池に含まれたアルカリ金属の含有量を最小化することができるように構成されたリチウム二次電池に関する。
【0025】
本発明に係るリチウム二次電池では、アルカリ金属の中でもナトリウムの含有量が電池の性能にさらに大きな影響を与えることができるところ、ナトリウムの含有量が最小化されたリチウム二次電池を提供する。
【0026】
本発明に係るリチウム二次電池は、電池内のナトリウムの含有量が500ppm以下であってもよい。前記ナトリウムはナトリウムイオン(Na)の形態であってもよい。
【0027】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極;リチウム負極;前記正極とリチウム負極との間に介在された分離膜;及び電解液;を含むことができ、ナトリウムは前記正極、リチウム負極及び電解液に含まれることができる。
【0028】
したがって、本発明のリチウム二次電池においてナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池の正極、リチウム負極及び電解液内に含まれたナトリウムの含有量であってもよい。より具体的には、前記ナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池の正極に含まれたバインダー、リチウム負極及び電解液内に含まれたナトリウムの含有量を意味することである。
【0029】
前記ナトリウムの含有量は500ppm以下の範囲内で、その数値が小さいほど電池の寿命及び容量の面で有利であることができる。例えば、前記ナトリウムの含有量は500ppm以下、450ppm以下、または400ppm以下、または350ppm以下、または300ppm以下、または250ppm以下、または200ppm以下、または150ppm以下、または100ppm以下、または90ppm以下、または80ppm以下、または70ppm以下、または60ppm以下、または50ppm以下、または40ppm以下、30ppm以下、または25ppm以下、または20ppm以下、または15ppm以下であってもよい。
【0030】
前記リチウム二次電池においてナトリウムの含有量が前記範囲を超えて含まれる場合、電池内で不純物として認識されるナトリウムの含有量が過度で充放電寿命による容量の低下現象とともに、クーロン効率も急激に下落する問題がある。
【0031】
具体的に、正極、リチウム負極及び電解液内に含まれた過量のナトリウムは、リチウム負極の方に移動してリチウムの表面で不要な副反応が起こりながら、リチウム負極表面の均一な反応活性を妨害することができる。また、リチウムの不均一な反応は、表面での電解液の副反応及び消耗が急激に伴う現象が発生するので、電池の寿命に悪影響を与えることができる。
【0032】
前記リチウム二次電池に含まれた構成のうちナトリウムが含まれている正極、リチウム負極及び電解液の中で正極に含まれたナトリウムの含有量が相対的に多いことがあるので、前記リチウム二次電池の正極のナトリウムの含有量が少ないほど電池の寿命及び容量の面で有利であることがある。
【0033】
また、前記リチウム二次電池の正極に含まれた構成の中でも、バインダーに含まれた正極のナトリウムの含有量が正極活物質または導電材に比べて相対的に多いことがあるので、正極バインダーに含まれたナトリウムの含有量が少ないほど電池の寿命及び容量の面で有利であることがある。
【0034】
以下、本発明に係るリチウム二次電池においてナトリウムが含まれている構成要素である正極、リチウム負極及び電解液について、それぞれに含まれたナトリウムの含有量と連携してより詳細に説明する。
【0035】
正極
本発明において、リチウム二次電池の正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含むことができ、前記正極活物質層は正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができ、選択的に正極添加剤をさらに含むことができる。
【0036】
前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち正極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に450ppm以下であってもよい。例えば、リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量が、リチウム二次電池全体を基準に500ppmであれば、このうち正極に含まれたナトリウムの含有量はリチウム二次電池全体を基準に450ppm以下であってもよい。
【0037】
具体的に、前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち正極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体に比べて450ppm以下、または350ppm以下、または250ppm以下、または150ppm以下、または50ppm以下、または40ppm以下、または30ppm以下、または20ppm以下、または15ppm以下、または10ppm以下、または5ppm以下、または2ppm以下であってもよい。
【0038】
前記リチウム二次電池全体基準に前記正極に含まれたナトリウムの含有量は、前記範囲内で少ないほど電池の性能と寿命特性に有利であることができ、逆に、前記正極に含まれたナトリウムの含有量が増加するほどナトリウムイオンがリチウム負極の方に移動することになり、リチウムの表面で不要な副反応が起こりながら、リチウム負極表面の均一な反応活性を妨害することができる。また、リチウムの不均一な反応は、表面での電解液の副反応及び消費が急激に伴う現象が発生するので、電池の寿命に悪影響を与えることができる。
【0039】
本発明において、前記正極集電体は正極活物質層を支持し、当該電池に化学的変化を誘発することなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0040】
前記正極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0041】
本発明において、前記正極集電体上に形成された正極活物質層は正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0042】
本発明の正極において正極活物質層を構成する要素のうち前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物、及びリチウムマンガン酸化物からなる群より選択された1つ以上を含むことができるが、必ずこれらに限定されず、当該技術分野において利用可能な全ての正極活物質を用いることができる。
【0043】
例えば、Li1-b(前記式において、0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか1つで表される化合物を用いることができる。
【0044】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;BはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;DはO、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;EはCo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;FはF、S、P、またはこれらの組み合わせであり;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり;QはTi、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;IはCr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0045】
特に、リチウム-硫黄電池において用いられる正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄系化合物またはこれらの混合物であってもよいが、これに限定されるものではない。前記硫黄系化合物は具体的に、Li(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C:x=2.5ないし50、n≧2)などであってもよい。
【0046】
本発明の正極において正極活物質層を構成する要素のうち前記バインダーは、正極を形成するスラリー組成物を集電体によく付着するために含む物質であって、溶媒によく溶解し、正極活物質と導電材との導電ネットワークをよく構成することができる物質を用いる。特別な制限がない限り、当該業界において公知の全てのバインダーを用いることができ、好ましくはポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピルレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群より選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を用いることができる。
【0047】
本発明において、正極に含まれたナトリウムの含有量は正極バインダーに含まれたナトリウムの含有量として、ナトリウムの含有量を最小化することができるバインダー物質を選択して用いることが有利である。
【0048】
例えば、前記正極に含まれたバインダーは、リチウム化されたポリアクリル酸(lithiated poly(acrylic acid)、Li-PAA)、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol)、PVA)、前記リチウム化されたポリアクリル酸とポリビニルアルコールのランダム共重合体及びスチレンブタジエンゴム(SBR:Styrene Butadiene Rubber)系バインダーからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0049】
前記リチウム化されたポリアクリル酸は、ポリアクリル酸の水素をLiOHで中和させてLiに置換したリチウム置換性高分子である。このとき、適用されたLiOHの純度がNaの含有量に大きな影響を与え、前記LiOHの純度が高いほどLiOH内のNaの含有量が少なくて生成されたリチウム置換性高分子、すなわち、バインダー内のNaの含有量を減少させることができる。また、前記のような置換作業をするとき、一般のガラス反応器を用いる場合、ガラスの内外部に存在するNaが強塩基または強酸の素材によって溶け出す場合があるので、プラスチック反応器を用いることが好ましい。
【0050】
前記ポリビニルアルコールは、一般的にポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)にNaOHを添加して加水分解させるものと知られているが、このとき、NaOHがNaの含有量に影響を与えることができる。したがって、水と適切なアルコールなどの混合溶媒を用いて加水分解後の高分子を洗浄(rinsing)または透析(dialysis)してNaイオンを除去することができる。または、NaOHの代わりにLiOHで加水分解することもできる。
【0051】
前記SBRのようなゴム系エマルジョンバインダーは、乳化重合を行う際に添加する乳化剤が通常ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)が一般的であるが、ドデシル硫酸リチウム(lithium dodecyl sulfate)に変更して重合するとNaイオンを最小化することができる。
【0052】
前記バインダーの含有量は、前記正極活物質層の全体重量を基準に3ないし10重量%、好ましくは5ないし10重量%、より好ましくは7ないし10重量%であってもよい。前記バインダーの含有量が前記範囲未満であると、正極の物理的性質が低下し、正極活物質と導電材が脱落することができ、前記範囲を超えると、正極で活物質と導電材との比率が相対的に減少し、電池容量が減少することができるので、上述の範囲内で適正含有量を決定することが好ましい。
【0053】
本発明の正極において正極活物質層を構成する要素のうち前記導電材は、電気伝導性を向上させるためのものであり、リチウム二次電池において化学変化を起こさない電子伝導性物質であれば特に制限はない。
【0054】
一般的に、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電材などを用いることができ、現在導電材として市販されている商品では、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)又はガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製など)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製)、バルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製)、及びスーパーP(MMM社製)などがある。例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。
【0055】
前記導電材の含有量は2ないし10重量%、好ましくは3~10重量%、より好ましくは5~10重量%であってもよい。正極に含まれる導電材の含有量が前記範囲未満であると、電極内の硫黄のうち反応しない部分が増加することになり、結局は容量減少を生じさせ、前記範囲を超えると、高効率放電特性と充放電サイクル寿命に悪影響を与えることになるので、上述の範囲内で適正含有量を決定することが好ましい。
【0056】
負極
本発明において、リチウム二次電池の負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質層を含むことができ、前記負極活物質層は負極活物質、バインダー及び導電材を含むことができ、選択的に負極添加剤をさらに含むことができる。
【0057】
前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち負極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に15ppm以下であってもよい。例えば、リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量が、リチウム二次電池全体を基準に500ppmであれば、このうち負極に含まれたナトリウムの含有量は、リチウム二次電池全体を基準に15ppmであってもよい。
【0058】
具体的に、前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち、前記リチウム二次電池全体基準に負極に含まれたナトリウムの含有量は、15ppm以下、または12ppm以下、または10ppm以下、または8ppm以下、または6ppm以下、または4ppm以下、または2ppm以下、または1ppm以下であってもよい。
【0059】
前記リチウム二次電池全体基準に、前記負極に含まれたナトリウムの含有量が少ないほど電池の性能と寿命特性に有利であることができ、逆に、前記負極に含まれたナトリウムの含有量が増加するほど充放電サイクルが進められることによって電池の容量及びクーロン効率が低下することができる。
【0060】
本発明の負極において負極活物質層を構成する要素のうち前記負極活物質としては、リチウム金属またはリチウム合金を用いることができる。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群より選択される金属の合金であってもよい。
【0061】
前記負極活物質を除いた集電体、バインダー、導電材、添加物などの構成は、正極で用いられた集電体、バインダー、導電材、添加物を適用することもできる。
【0062】
分離膜
本発明において、リチウム二次電池の分離膜は、正極と負極を物理的に分離する機能を有する分離膜であって、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解質の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0063】
また、前記分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極との間にリチウムイオンの輸送を可能にする。このような分離膜は気孔度30~50%の多孔性であり、非導電性または絶縁性である物質からなってもよい。
【0064】
前記分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜を用いることができる。前記分離膜の気孔径は一般的に0.01ないし10μmであり、厚さは一般的に5ないし20μmであってもよい。
【0065】
前記分離膜としては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系高分子;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などを用いることができる。電解質として固体高分子電解質が用いられる場合は、固体高分子電解質が電解質を兼ねることもできる。
【0066】
前記分離膜の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を用いることができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層分離膜、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層分離膜、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層分離膜などのような混合多層膜が挙げられる。
【0067】
分離膜それ自体は、ナトリウムを含んでいない。しかし、電池駆動時にナトリウムを含んでいるリチウム二次電池の他の構成、すなわち、正極、負極及び電解質に含まれたナトリウムが分離膜に浸透され、分離膜にナトリウムが含まれることができる。
【0068】
前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち分離膜に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に10ppm以下であってもよい。例えば、リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量が、リチウム二次電池全体を基準に500ppmであれば、このうち分離膜に含まれたナトリウムの含有量はリチウム二次電池全体を基準に10ppmであってもよい。
【0069】
具体的に、前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち正極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に10ppm以下、または8ppm以下、または6ppm以下、または5ppm以下、または4ppm以下、または3ppm以下、または2ppm以下、または1ppm以下であってもよい。
【0070】
前記リチウム二次電池全体基準に、前記分離膜に含まれたナトリウムの含有量が少ないほど電池の性能と寿命特性に有利であることができ、逆に、前記負極に含まれたナトリウムの含有量が増加するほど充放電サイクルが進められることによって電池の容量及びクーロン効率が低下することができる。
【0071】
電解質
本発明において、リチウム二次電池に含まれた電解液は、非水性溶媒とリチウム塩を含むことができ、選択的に添加剤をさらに含むこともできる。前記電解液において純度の高い非水性溶媒、リチウム塩、添加物を用いるほどナトリウムイオンの含有量を減少させることができる。
【0072】
前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち負極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に25ppm以下であってもよい。例えば、リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量が、リチウム二次電池全体を基準に500ppmであれば、このうち負極に含まれたナトリウムの含有量は、リチウム二次電池全体を基準に25ppmであってもよい。
【0073】
前記リチウム二次電池に含まれたナトリウムの全体含有量のうち負極に含まれたナトリウムの含有量は、前記リチウム二次電池全体基準に25ppm以下、または20ppm以下、または15ppm以下、または10ppm以下、または8ppm以下、または6ppm以下、または4ppm以下、または3ppm以下であってもよい。
【0074】
前記リチウム二次電池全体基準に、前記電解液に含まれたナトリウムの含有量が少ないほど電池の寿命特性とリチウム効率の面で有利であることができる。逆に、前記電解液に含まれたナトリウムの含有量が増加するほど電池の寿命特性とリチウム効率が低下することができる。具体的に、ナトリウムイオンがリチウム負極の方に移動するようになり、リチウム表面で不要な副反応が起こりながら、リチウム負極表面の均一な反応活性を妨害することができる。また、リチウムの不均一な反応は、表面での電解液の副反応及び消耗が急激に伴う現象が発生するので、電池の寿命に悪影響を与えることができる。
【0075】
前記非水性溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割をする非水性溶媒であれば、特に限定されない。
【0076】
例えば、前記非水性溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を用いることができる。
【0077】
前記カーボネート溶媒としては、具体的にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)などを用いることができる。
【0078】
前記エステル系溶媒としては、具体的にメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)などを用いることができる。
【0079】
前記エーテル系溶媒としては、具体的にジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどを用いることができる。前記ケトン系溶媒としては、具体的にシクロヘキサノンなどを用いることができる。前記アルコール系溶媒としては、具体的にエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。前記非プロトン性溶媒としては、具体的にアセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などを用いることができる。前記非水性有機溶媒は単独で、または1つ以上混合して用いることができ、1つ以上混合して用いられる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができ、特に、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンの1:1体積比の混合液が好ましいことがある。
【0080】
前述した電解液の溶媒の中でも、リチウム金属イオン電池はカーボネート系溶媒を用いることができ、前記リチウム-硫黄電池ではエーテル系溶媒を用いることができる。
【0081】
前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiN(CaF2a+1SO)(CbF2b+1SO)(ただし、a及びbは自然数、好ましくは1≦a≦20であり、1≦b≦20である)、LiCl、LiI及びLiB(Cからなる群より選択される1種以上であってもよい。好ましくは、前記リチウム塩のうちLiFSI及びLiTFSIから1種以上を用いる場合、ナトリウムの含有量を最小化することに有利であることができる。
【0082】
本発明のリチウム二次電池の形状は特に制限されず、電池として作動することができる円筒形、積層形、コイン形などの様々な形状とすることができる。
【0083】
また、本発明は、前記リチウム二次電池を単位電池に含む電池モジュールを提供し、前記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0084】
前記電池パックは高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0085】
前記中大型デバイスの例としては、電気的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle;HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-inHybrid Electric Vehicle;PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前述のように、本発明に係るリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及び電解質に含まれたナトリウムの含有量の最小化により電池の寿命特性及び容量が改善されることができる。
【0087】
前記リチウム二次電池は、負極としてリチウム金属を用いる電池をすべて含むことができ、例えば、リチウム-硫黄電池であってもよい。
【0088】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0089】
実施例1
正極は、Al箔上に正極活物質層形成用スラリーを用いてマチスコーター(mathis coater)によって正極活物質層形成用塗膜を形成した後、50℃で2時間加熱し、乾燥させて製造した。このとき、前記正極活物質層形成用スラリーは正極活物質、導電材及びバインダーを90:5:5の重量比で混合して製造した。前記正極活物質はS/CNT複合体、導電材は気相成長炭素繊維(VGCF:vapor grown carbon fiber)、バインダーはAD-BO2/CMCを用いた。前記AD-BO2/CMCは2種のバインダー、すなわち、AD-BO2(スチレン-ブタジエンゴムバインダー粒子(styrene-butadiene rubber binder particle))及びカルボキシメチルセルロース(CMC:carboxymethyl cellulose)が3.5:1.5の重量比で複合されたバインダーである。
【0090】
分離膜は、気孔度が50%である多孔性ポリエチレン高分子分離膜を用いた。
【0091】
電解液としてTEが溶解した電解液を用いた。前記TEは、2-メチルTHF(2-メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran))/エチレングリコールエチルメチルエーテル(EGEME:ethylene glycol ethyl methyl ether)の混合溶媒にLiN(CFSOとLiNOが塩と添加剤でそれぞれ含まれた電解液である。
【0092】
前記正極において電解液と硫黄の重量比(電解液/S)は2.5を維持するようにした。
【0093】
負極は、リチウム金属負極を用いた。
【0094】
前記正極と負極との間に分離膜を介在し、これを電池ケースに収納した後、前記電解液を注入してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0095】
実施例2
実施例1と同様に行うが、前記正極活物質、導電材及びバインダーを87:5:8の重量比で混合して製造された正極活物質層形成用スラリーを用い、前記バインダーとしてLi-PAA/PVAを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記Li-PAA/PVAはリチウムに置換されたポリアクリル酸[poly(acrylic acid)、PAA]とポリビニルアルコール[poly(vinyl alcohol)、PVA]の混合バインダーである。このとき、Li-PAAに用いられたPAAは、45万と125万の分子量をそれぞれ有するPAAを混合したものである。PAAをLiOH(またはLiOH・HO)で中和させ(60~80℃で撹拌)、pH7.5~8.5を合わせると、90%以上のリチウムが置換されたLi-PAAを製造することができる。PVAはけん化度と分子量に応じて分散効果に多少の差があり、実施例で適用されたPVAのけん化度は85%であり、重合度は300である。
【0096】
実施例3
実施例1と同様に行うが、前記正極活物質、導電材及びバインダーを87:5:8の重量比で混合して製造された正極活物質層形成用スラリーを用い、前記バインダーとしてLI-PAA(EC:Electrochemical Grade)/PVAを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記LI-PAA(EC)/PVAは、リチウムに置換されたポリアクリル酸[poly(acrylic acid)とポリビニルアルコール[poly(vinyl alcohol)]の混合バインダーである。PAA中和時に高純度のLiOH・HO)を用いることにより、製造されたLI-PAA(EC)内のNaの含有量を最小化したものである。
【0097】
実施例4
実施例1と同様に行うが、バインダーとしてAD-BO2_LDS/HP Li-AGを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記AD-BO2_LDS/HP Li-AGは、AD-BO2_LDSとHP Li-AG(スキトモセイカ社)の混合バインダーである。前記AD-BO2_LDSは実施例1のAD-BO2と同一のゴムバインダーであるが、製造時に添加される乳化剤をドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)(SDS)の代わりに、ドデシル硫酸リチウム(lithium dodecyl sulfate)(LSD)を用いてNaの含有量を減少させたものであり、前記HP Li-AG(スキトモセイカ社)はPVAとLi-PAAが共重合体からなる水系バインダーである。
【0098】
実施例5
実施例4と同様に行うが、電解液としてHP TEを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記HP TEは高純度TEを意味し、HP TEに含まれたNaの含有量は5ppmである。
【0099】
実施例6
実施例1と同様に行うが、正極バインダーはAD-BO2/CMCの代わりにBM451B/Li-CMCを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記BM451B/Li-CMCに含まれたNaの含有量は483ppmである。前記BM451B/Li-CMCはBM451B(ZEON社)とCMCの混合バインダーで前記BM451B(ZEON社)はSBR系バインダーであり、Li-CMCは既存のNa-CMCをHClで酸処理-ろ過/LiOHで中和過程を3回繰り返して多くの部分がLiに置換し、その他に残存しているNaの量が9%から0.5%水準に減量された。
【0100】
比較例1
バインダーとしてBM-451B/CMCを用い、電解液としてD2Eを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。前記BM-451B/CMCはBM-451B(ZEON社)とCMCの混合バインダーで前記BM-451B(ZEON社)はSBR系のバインダーである。前記D2Eは1,3-ジオキソラン(DOL:1,3-Dioxolane)、1,2-ジメトキシエタン(DME:1,2-Dimethoxyethane)、及びエチレングリコールエチルメチルエーテル(EGEME:Ethyleneglycol ethyl methyl ether)の混合溶媒にLiFSIとLiNOが含まれた電解液である。
【0101】
比較例2
実施例1と同様に行うが、電解液は、前記TE電解液の代わりに電解液添加剤としてNaIを添加させ、人為的にNaの含有量を調節して電解液を作製し、これを用いてリチウム-硫黄電池を製造した。前記電解液に含まれたNaの含有量は120ppmである。
【0102】
実験例1:Na含有量の測定
実施例1~6及び比較例1~2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄電池及びリチウム-硫黄電池を構成する正極、負極、分離膜及び電解液にそれぞれ含まれたNaの含有量を下記のような方法で測定した。
【0103】
[Na含有量の測定方法]
(1)正極及び負極の前処理
Naをはじめとした不純物の分析時に、試料0.1gをバイアル(vial)に分取した(メイン組成分析時は試料0.02gを分取した)。
【0104】
分取された試料に36ないし38%塩酸2mLを入れ、試料が完全に溶解するまで振って溶解させた。
【0105】
試料が明確に溶解されると、100℃のホットプレート(Hot plate)でバイアル(vial)を加熱して揮散させた。
【0106】
その後、試料を室温で冷却させた後、内部標準物質(1000mg/L、100μL、Sc)を添加し、最終10mLとなるように超純水で希釈し、ICP-OES(Optima 8300DV、Perkin-Elmer社)で分析した。
【0107】
(2)電解液及び分離膜の前処理
Naをはじめとした不純物の分析時に、試料0.2ないし0.5gを白金るつぼに分取した。
【0108】
96%硫酸2mLを入れ、ホットプレート(Hot plate)で430℃まで徐々に昇温させて炭化させた。
【0109】
白煙発生が止まると、常温で冷却させた後、電気炉で灰化(ashing)させた。灰化の条件は下記のStep1とStep2の通りである:
Step1:200℃まで1時間昇温、1時間維持;及び
Step2:400℃まで2時間昇温、2時間維持、650℃まで3時間昇温、3時間維持。
【0110】
その後、灰化残留物に65%硝酸1mLと過酸化水素0.1mLを添加し、試料を明確に溶解させた。
【0111】
内部標準物質(1000mg/L、100μL、Sc)を添加し、最終10mLとなるように超純水で希釈し、ICP-OES(Optima 8300DV、Perkin-Elmer社)で分析した。
【0112】
(3)ICP-OESの分析方法
標準溶液はブランク(blank)、1mg/L、4mg/L、10mg/Lで調製した後、検量線を作成した。標準溶液には、内部標準物質として10mg/L濃度のScが含まれるようにした。ICP-OES(Optima 8300DV、Perkin-Elmer社)を用いて、ラジアルビュー(Radial view)モードで測定した。
【0113】
測定の条件は以下の通りである。
【0114】
- プラズマガス流れ(Plasma gas flow):10-12L/min
- 補助ガス流れ(Auxiliary gas flow):0.2-0.4L/min
- 噴霧器ガス流れ(Nebulizer gas flow):0.8-0.9L/min
- RF出力(power):1300-1500W
- ポンプ流量(Pump flow rate):1.0-1.5mL/min
【0115】
Naの分析時に、測定波長は589.592nmで測定した(波長干渉がある場合、330.237nmあるいは588.995nmを選択することができる)。
【0116】
分析試料の測定濃度が検量線の範囲内に入らなければ追加希釈して測定した。
【0117】
実施例1ないし6及び比較例1ないし2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄電池及び前記リチウム-硫黄電池の正極、負極、分離膜及び電解液のそれぞれに含まれたNaの含有量を測定し、下記表1に示した。
【0118】
【表1】
【0119】
実験例2:寿命特性の測定
実施例及び比較例で製造されたリチウム-硫黄電池について、充放電サイクルによる電池の容量維持率を測定し、その結果を表2に記載した。
【0120】
<充放電サイクルの条件>
- サイクル温度:25℃
- Cレート(rate):0.1C(2.5回)→0.2C(3回)→0.3C充電/0.5C放電(定電流モード)
- Vカットオフ(cut-off):1.8ないし2.5V
【0121】
【表2】
【0122】
前記表2を参照すると、実施例1(Naの含有量:418.6ppm)でセルの劣化時間は比較例1(Naの含有量:536.1ppm)に比べて改善されたことが分かった。
【0123】
反面、実施例1(Naの含有量:418.6ppm)と実施例2(Naの含有量:31.4ppm)を比較すると、充放電サイクルが進められることによって、実施例1のセル発現容量は実施例2に比べて80ないし85%水準で低いと示された。
【0124】
しかし、実施例3(Naの含有量:27.0ppm)、実施例4(Naの含有量:20.0ppm)及び実施例5(Naの含有量:14.9ppm)の場合、電池の寿命及び発現容量が同時に向上することを確認し、電池内のNaの含有量を50ppm以下の水準に減少させることが好ましいことを確認した。
【0125】
このように、Naの含有量が減少することによって電池の寿命特性を低下させる結果から、Naの存在がリチウムイオンの移動を低下させ、効率を落とすということが分かる。